IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エンジンの制御装置 図1
  • 特許-エンジンの制御装置 図2
  • 特許-エンジンの制御装置 図3
  • 特許-エンジンの制御装置 図4
  • 特許-エンジンの制御装置 図5
  • 特許-エンジンの制御装置 図6
  • 特許-エンジンの制御装置 図7
  • 特許-エンジンの制御装置 図8
  • 特許-エンジンの制御装置 図9
  • 特許-エンジンの制御装置 図10
  • 特許-エンジンの制御装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 21/08 20060101AFI20240717BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20240717BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F02D21/08 L
F02D41/04
F02D45/00 369
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020212878
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022099109
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】計 恵
(72)【発明者】
【氏名】丸山 慶士
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-262035(JP,A)
【文献】特開2017-180279(JP,A)
【文献】特開2016-121537(JP,A)
【文献】特開2005-016408(JP,A)
【文献】特開2007-292060(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/08-47/10
F02D 13/00-28/00、41/00-45/00
F02M 26/00-26/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高オクタン価の燃料及び当該高オクタン価の燃料よりもオクタン価の低い低オクタン価の燃料の双方の使用が可能なエンジンと、
前記燃料のオクタン価を検出するオクタン価検出装置と、
前記エンジンに出力が要求されるエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出装置と、
前記エンジンの燃焼室にEGRガスの供給が可能なEGR装置と、
を備え、前記オクタン価検出装置及び前記エンジン負荷検出装置の各々の検出値に基づいて前記EGR装置を制御し、それによってEGR率を調整する、エンジンの制御装置であって、
所定の第1オクタン価以上のオクタン価が検出された場合には、前記高オクタン価の燃料に対応したEGR率となるように調整し、前記第1オクタン価よりも低いオクタン価が検出された場合には、前記低オクタン価の燃料に対応したEGR率となるように調整し、
検出されるエンジン負荷が全負荷である時に、前記第1オクタン価よりも高い所定の第2オクタン価が検出された場合には、前記第1オクタン価以上のオクタン価が検出されて調整されるEGR率に対して、EGR率を低下させることを特徴とする、エンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの制御装置において、
検出されるエンジン負荷が全負荷よりも低い時は、前記第2オクタン価が検出された場合でもEGR率を低下させない、エンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンの制御装置において、
前記第2オクタン価の検出によって低く設定されるEGR率は、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に前記低オクタン価の燃料に対応するように調整されるEGR率よりも、少なくとも前記エンジンの所定の低回転領域において低く設定されている、エンジンの制御装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置において、
前記燃焼室に形成される混合気が点火され、それによって、一部の混合気が火炎伝播を伴う燃焼を開始し、その後、残りの未燃混合気が自己着火により燃焼する部分自己着火燃焼が、前記エンジンで行われ、
前記混合気に点火してから前記未燃混合気が自己着火するまでの間に前記燃焼室で発生する熱量に基づいて、前記オクタン価検出装置がオクタン価を検出する、エンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、エンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ノッキング回避制御を行うエンジンの制御装置が記載されている。この制御装置は、第1燃料噴射タイミング及び第1点火タイミングを定めた第1制御セットと、第2燃料噴射タイミング及び第2点火タイミングを定めた第2制御セットと、を設定している。第1制御セットは、高オクタン価燃料に適合した燃料噴射タイミング及び点火タイミングであり、第2制御セットは、低オクタン価燃料に適合した燃料噴射タイミング及び点火タイミングである。
【0003】
特許文献1に記載された制御装置は、ノッキングセンサがノッキングの発生を検知した場合、低オクタン価燃料が使用されていると推定して、第2制御セットにより燃料の噴射及び点火を行う。これにより、特許文献1の制御装置は、ノッキングの発生を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-105662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高オクタン価と低オクタン価の両方の燃料が使用されるエンジンでは、使用する燃料によってオクタン価が変化する。また、これら燃料が混ざり合うことでもオクタン価が変化する。エンジンは、オクタン価が変化する燃料に対応して燃焼状態を制御する必要がある。
【0006】
例えば、オクタン価が高くなった場合は、燃料が自己着火しにくくなるため、ノッキングやプリイグニッション等の異常燃焼は生じにくい。一方、オクタン価が低くなった場合は、燃料が自己着火しやすくなるため、異常燃焼が生じやすい。従って、この場合は、異常燃焼を抑制するための対策が必要である。
【0007】
それに対し、特許文献1の制御装置では、燃料の噴射及び点火を、高オクタン価又は低オクタン価に応じた制御セットに変更している。しかし、排気ガスの一部をEGRガスとして燃焼室に戻す排出ガス再循環(いわゆるEGR)を行うエンジンでは、高オクタン価の燃料を使用する時に、異常燃焼の抑制とトルク(エンジン負荷)の向上との両立に関して課題がある。
【0008】
すなわち、高オクタン価の燃料は、低オクタン価の燃料よりも、異常燃焼を抑制して高いトルクが出力できるから、その特性を活かすことで、エンジン性能を効果的に発揮させることができる。そして、EGRガスを燃焼室に導入すれば燃焼温度を下げることができるから、EGRを適切に行えば、異常燃焼を抑制しながら高いトルクを出力することができる。
【0009】
ところが、エンジンが全負荷で運転する時にEGRを行う場合、燃料の噴射及び点火の状態を適切にしても、EGRの状態が適切でないと、高オクタン価の燃料の特性を充分に活かすことができない。その結果、異常燃焼の抑制とトルクの向上とを両立させることができない。
【0010】
そこで、開示する技術では、オクタン価の異なる燃料を使用して全負荷時にEGRを行うエンジンにおいて、異常燃焼の抑制とトルクの向上とを両立させる。それにより、エンジン性能を充分に発揮できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示する技術は、エンジンの制御装置に関する。
【0012】
このエンジンの制御装置は、高オクタン価の燃料及び当該高オクタン価の燃料よりもオクタン価の低い低オクタン価の燃料の双方の使用が可能なエンジンと、前記燃料のオクタン価を検出するオクタン価検出装置と、前記エンジンに出力が要求されるエンジン負荷を検出するエンジン負荷検出装置と、前記エンジンの燃焼室にEGRガスの供給が可能なEGR装置と備える。そして、前記オクタン価検出装置及び前記エンジン負荷検出装置の各々の検出値に基づいて前記EGR装置を制御し、それによってEGR率を調整するように構成されている。
【0013】
エンジンの制御装置は、所定の第1オクタン価以上のオクタン価が検出された場合には、前記高オクタン価の燃料に対応したEGR率となるように調整し、前記第1オクタン価よりも低いオクタン価が検出された場合には、前記低オクタン価の燃料に対応したEGR率となるように調整する。そして、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に、前記第1オクタン価よりも高い所定の第2オクタン価が検出された場合には、前記第1オクタン価以上のオクタン価が検出されて調整されるEGR率に対して、EGR率を低下させることを特徴とする。
【0014】
すなわち、このエンジンの制御装置は、少なくとも、高オクタン価の燃料と低オクタン価の燃料の双方の使用が可能なエンジンを対象としている。そして、このエンジンの制御装置は、オクタン価検出装置及びエンジン負荷検出装置の各々の検出値に基づいてEGR装置を制御し、それによってEGR率を調整する。
【0015】
エンジンの制御装置は、まず、ベースとなるEGR率の調整として、所定の第1オクタン価を基準に、燃料のオクタン価の高低を判定し、判定した燃料のオクタン価の高低に応じてEGR率を調整する。これにより、オクタン価が異なる燃料を使用しても、異常燃焼を抑制しながら燃費に優れた燃焼を実現することができる。
【0016】
そして、このエンジンの制御装置では更に、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に、第1オクタン価よりも高い所定の第2オクタン価、つまり、オクタン価の高い燃料の中でも更にオクタン価の高い、限られた燃料(特定高オクタン価燃料)が使用される場合には、オクタン価の高い燃料に対応して調整されるEGR率に対してEGR率を低下させる調整を行う。
【0017】
オクタン価の高い燃料は、異常燃焼が発生しにくい。そのオクタン価の高い燃料の中でも特にオクタン価の高い、特定高オクタン価燃料は、更に異常燃焼が発生しにくい。すなわち、使用され得る燃料の中において、ノッキングに対する耐性が最も高い。
【0018】
EGR率を低くすれば、EGRガスの導入量が減るので、相対的に新気の導入量を増やすことができる。そして、それに併せて燃料の噴射量を増やすことで、高いトルクを出力することができる。
【0019】
新気の導入量及び燃料の噴射量を増やせば、燃焼室の温度は高くなるが、使用する燃料のノッキングに対する耐性が最も高いので、ノッキングの発生を効果的に抑制できる。更に、燃料の噴射量が増えれば、その気化熱によって燃焼室の温度上昇の抑制も可能になるので、ノッキングの発生をよりいっそう効果的に抑制できる。その結果、異常燃焼の抑制とトルクの向上とが両立できる。
【0020】
そして、このような制御を、エンジンの運転状態が全負荷である時に行うので、そのエンジンの出力を向上できる。しかも、ノッキングに対する耐性が最も高い特定高オクタン価燃料が検出された場合に行うので、効率的である。エンジンは、そのエンジン性能を充分に発揮できるようになる。
【0021】
前記エンジンの制御装置はまた、検出されるエンジン負荷が全負荷よりも低い時は、前記第2オクタン価が検出された場合でもEGR率を低下させない、としてもよい。
【0022】
前述したような制御を行うと、燃料の使用量が増加する。そのため、特定高オクタン価燃料が検出された場合に行っても、燃費の低下は避けられない。それに対し、検出されるエンジン負荷が全負荷よりも低い時は、第2オクタン価が検出された場合でもEGR率を低下させないようにすれば、特定高オクタン価燃料を使用する場合でも、全負荷時以外は、燃費を抑制した制御を行うことができるので、燃費の低下を抑制できる。
【0023】
従って、燃費をほとんど変えることなく、異常燃焼の抑制とトルクの向上とが両立できる。
【0024】
前記エンジンの制御装置はまた、前記第2オクタン価の検出によって低く設定されるEGR率は、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に前記低オクタン価の燃料に対応するように調整されるEGR率よりも、少なくとも前記エンジンの所定の低回転領域において低く設定されている、としてもよい。
【0025】
前述したように、全負荷時は、燃焼室に多くの新気及び燃料が導入されるので、燃焼室が高温になって異常燃焼が発生しやすい。そのため、低オクタン価の燃料が用いられる時は、高オクタン価燃料が用いられる時と同じように制御しても、異常燃焼が発生するおそれがある。それにより、低オクタン価の燃料を用いる時は、空燃比のリッチ化など、燃費よりも異常燃焼の抑制を優先し、高オクタン価燃料が用いられる時とは異なる、強力な異常燃焼の抑制制御を行う必要がある。
【0026】
更に、エンジン回転数が低い低回転領域では、点火前に自着火しやすくなるため、プリイグニッションが発生しやすい。そのため、全負荷時のエンジン回転数が低い低回転領域で、低オクタン価の燃料が用いられる時には、強力な異常燃焼の抑制制御を行っていても、プリイグニッションが発生するおそれがある。そのため、その強力な異常燃焼の抑制制御に加え、EGR率を高める。それにより、プリイグニッションの発生が抑制できるようになる。
【0027】
対して、特定高オクタン価燃料は、異常燃焼の抑制性能に優れるため、前述した低回転領域において運転するときにおいても、EGR率を低下した状態で、プリイグニッションの発生を抑制できる。
【0028】
それにより、第2オクタン価の検出によって低く設定されるEGR率は、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に低オクタン価の燃料に対応するように調整されるEGR率よりも、少なくともエンジンの所定の低回転領域において低く設定されている。
【0029】
前記エンジンの制御装置はまた、前記燃焼室に形成される混合気が点火され、それによって、一部の混合気が火炎伝播を伴う燃焼を開始し、その後、残りの未燃混合気が自己着火により燃焼する部分自己着火燃焼が、前記エンジンで行われ、前記混合気に点火してから前記未燃混合気が自己着火するまでの間に前記燃焼室で発生する熱量に基づいて、前記オクタン価検出装置がオクタン価を検出する、としてもよい。
【0030】
すなわち、エンジンはSPCCI燃焼を行う。そして、オクタン価検出装置は、そのSPCCI燃焼の特性を利用して、オクタン価を検出する。従って、SPCCI燃焼すれば、燃料のオクタン価を検出できるので、短時間で、精度高く、燃料のオクタン価を検出できる。
【発明の効果】
【0031】
開示する技術を適用したエンジンの制御装置によれば、オクタン価の異なる燃料を使用して全負荷時にEGRを行うエンジンにおいて、異常燃焼の抑制とトルクの向上とを両立させることができる。その結果、エンジンは、エンジン性能を充分に発揮できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、エンジンを例示する構成図である。
図2図2は、エンジンの制御装置を例示するブロック図である。
図3図3は、SPCCI燃焼時における、燃焼室の中の圧力の変化を例示する図である。
図4図4は、同じオクタン価でかつ、エンジンの運転状態が異なる場合における、正規化したアシスト熱量と自己着火タイミングとの関係を例示する図である。
図5図5は、異なるオクタン価でかつ、エンジンの運転状態が異なる場合における、等価温度上昇量と充填効率との関係を例示する図である。
図6図6は、燃料のオクタン価を検出するための構成を例示するブロック図である。
図7図7は、燃料のオクタン価の判定手順を例示するフローチャートである。
図8図8は、エンジンの出力性能を説明するための図である。
図9図9は、第1制御セットのEGR率マップと第3制御セットのEGR率マップとを簡略化して示す図である。
図10図10は、全負荷時における、第1EGR率マップのEGR率、第2EGR率マップのEGR率、及び、第3EGR率マップのEGR率を例示する図である。
図11図11は、エンジン出力の向上に関連した燃焼制御を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、エンジンの制御装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明するエンジン、及び、制御装置は例示である。
【0034】
図1は、エンジンを例示する図である。図2は、エンジンの制御装置を例示するブロック図である。
【0035】
エンジン1は、燃焼室17を有している。燃焼室17は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返す。エンジン1は、4ストロークエンジンである。エンジン1は、四輪の自動車に搭載されている。エンジン1が運転することによって自動車は走行する。
【0036】
(エンジンの燃料)
エンジン1の燃料は、この構成例においてはガソリンである。ガソリンのオクタン価は、国や地域によって異なる。例えば、日本では、高オクタン価のハイオクガソリンと低オクタン価のレギュラーガソリンとが市販されている。このエンジン1では、そのようなオクタン価の異なる燃料が使用できる。
【0037】
すなわち、このエンジン1では、オクタン価の高い燃料(高オクタン価燃料)、及び、オクタン価の低い燃料(低オクタン価燃料)の両方が使用できる。高オクタン価燃料は、オクタン価が高い範囲で、様々なオクタン価の燃料を含み得る。高オクタン価燃料のオクタン価は、例えば、100RON以下96RON以上である。低オクタン価燃料も、オクタン価が低い範囲で、様々なオクタン価の燃料を含み得る。低オクタン価燃料のオクタン価は、例えば、96RON未満91RON以上である。
【0038】
後述する燃料タンク63には、このような高オクタン価燃料又は低オクタン価燃料を給油することができる。そして、高オクタン価燃料を貯留している燃料タンク63に、低オクタン価燃料を注ぎ足すことができ、低オクタン価燃料を貯留している燃料タンク63に、高オクタン価燃料を注ぎ足すこともできる。
【0039】
燃料の注ぎ足しが行われると、その燃料のオクタン価は、高オクタン価燃料のオクタン価と低オクタン価燃料のオクタン価の中間のオクタン価になる。従って、燃料の注ぎ足しが行われた場合、その燃料のオクタン価は、100RONから91RONの間で変化する。
【0040】
尚、本実施形態では、後述するように、96RONが第1オクタン価に相当する。100RONが第2オクタン価に相当する。
【0041】
(エンジンの構成)
エンジン1は、シリンダブロック12と、シリンダヘッド13とを備えている。シリンダヘッド13は、シリンダブロック12の上に載置される。シリンダブロック12に、複数のシリンダ11が形成されている。エンジン1は、多気筒エンジンである。図1では、一つのシリンダ11のみを示す。
【0042】
各シリンダ11には、ピストン3が内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン3は、シリンダ11の内部を往復動する。ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13は、燃焼室17を形成する。尚、「燃焼室」は、ピストン3の位置に関わらず、ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13によって形成される空間を意味する。
【0043】
エンジン1の幾何学的圧縮比は、10以上30以下に設定されている。後述するようにエンジン1は、一部の運転領域において、SI(Spark Ignition)燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。SPCCI燃焼は、SI燃焼による発熱及び/又は圧力上昇によって、CI燃焼をコントロールする。エンジン1は、圧縮着火式エンジンである。このエンジン1は、ピストン3が圧縮上死点に至った時の燃焼室17の温度を高める必要がない。エンジン1の幾何学的圧縮比は低い。幾何学的圧縮比が低いと、冷却損失の低減、及び、機械損失の低減に有利になる。
【0044】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、吸気ポート18が形成されている。吸気ポート18は、燃焼室17に連通している。吸気ポート18は、詳細な図示は省略するが、いわゆるタンブルポートである。つまり、吸気ポート18は、燃焼室17の中にタンブル流が発生するような形状を有している。
【0045】
吸気ポート18には、吸気弁21が配設されている。吸気弁21は、吸気ポート18を開閉する。動弁機構は、吸気弁21を所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構としてもよい。図2に示すように、動弁機構は、吸気電動S-VT(Sequential-Valve Timing)23を有している。吸気電動S-VT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。吸気弁21の開弁角は変化しない。尚、動弁機構は、電動S-VTに代えて、油圧式のS-VTを有してもよい。
【0046】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、排気ポート19が形成されている。排気ポート19は、燃焼室17に連通している。
【0047】
排気ポート19には、排気弁22が配設されている。排気弁22は、排気ポート19を開閉する。動弁機構は、排気弁22を所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構としてもよい。図2に示すように、動弁機構は、排気電動S-VT24を有している。排気電動S-VT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。排気弁22の開弁角は変化しない。尚、動弁機構は、電動S-VTに代えて、油圧式のS-VTを有してもよい。
【0048】
吸気電動S-VT23及び排気電動S-VT24は、吸気弁21と排気弁22との両方が開弁するオーバーラップ期間の長さを調整する。オーバーラップ期間の長さを調整することによって、排気ガスが燃焼室17の中に導入される。
【0049】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、燃焼室17の中に燃料を直接噴射する。インジェクタ6は、燃焼室17の天井部(つまり、シリンダヘッド13の下面)に配設されている。インジェクタ6は、詳細な図示は省略するが、複数の噴孔を有する多噴孔型である。
【0050】
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。インジェクタ6及び燃料供給システム61は、燃料供給装置を構成する。燃料供給システム61は、燃料を貯留する燃料タンク63と、燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62は、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いにつないでいる。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。
【0051】
燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を送る。燃料ポンプ65は、この構成例においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から送られた燃料を蓄える。コモンレール64の中は高圧である。インジェクタ6は、コモンレール64につながっている。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64の中の高圧の燃料が、インジェクタ6の噴孔から燃焼室17の中に噴射される。尚、燃料供給システム61の構成は、前記の構成に限定されない。
【0052】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、点火装置を構成する。点火プラグ25は、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をする。点火プラグ25の電極は、燃焼室17の中に臨んでいる。
【0053】
エンジン1の一側面には吸気通路40が接続されている。吸気通路40は、各シリンダ11の吸気ポート18に連通している。燃焼室17に導入する吸気のガスは、吸気通路40の中を流れる。吸気通路40の上流端部には、エアクリーナー41が配設されている。吸気通路40の下流端の近くには、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、シリンダ11毎に分岐している。
【0054】
吸気通路40におけるエアクリーナー41とサージタンク42との間には、スロットル弁43が配設されている。スロットル弁43は、弁の開度が変わることによって、燃焼室17の中への新気の導入量を調整する。
【0055】
吸気通路40にはまた、スロットル弁43の下流に、過給機44が配設されている。過給機44は、燃焼室17に導入する吸気のガスの圧力を高める。この構成例において、過給機44は、エンジン1によって駆動される。過給機44は、ルーツ式、リショルム式、ベーン式、又は遠心式である。
【0056】
過給機44とエンジン1との間には、電磁クラッチ45が介設している。電磁クラッチ45は、エンジン1から過給機44へ駆動力を伝達する状態と、駆動力の伝達を遮断する状態とを切り替える。後述するECU10が電磁クラッチ45に制御信号を出力することによって、過給機44はオン又はオフになる。
【0057】
吸気通路40における過給機44の下流には、インタークーラー46が配設されている。インタークーラー46は、過給機44が圧縮した吸気のガスを冷却する。インタークーラー46は、水冷式又は油冷式である。
【0058】
吸気通路40には、バイパス通路47が接続されている。バイパス通路47は、吸気通路40における過給機44の上流部とインタークーラー46の下流部とを互いに接続する。バイパス通路47は、過給機44及びインタークーラー46をバイパスする。バイパス通路47には、エアバイパス弁48が配設されている。エアバイパス弁48は、バイパス通路47を流れるガスの流量を調整する。
【0059】
ECU10は、過給機44がオフの場合に、エアバイパス弁48を全開にする。吸気通路40を流れる吸気のガスは、過給機44及びインタークーラー46をバイパスして、エンジン1の燃焼室17に至る。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気の状態で運転する。
【0060】
過給機44がオンの場合、エンジン1は過給状態で運転する。ECU10は、過給機44がオンの場合に、エアバイパス弁48の開度を調整する。過給機44及びインタークーラー46を通過した吸気のガスの一部は、バイパス通路47を通って過給機44の上流に戻る。ECU10がエアバイパス弁48の開度を調整すると、燃焼室17に導入する吸気のガスの圧力が変わる。尚、「過給」とは、サージタンク42内の圧力が大気圧を超える状態をいい、「非過給」とは、サージタンク42内の圧力が大気圧以下になる状態をいう、と定義してもよい。
【0061】
エンジン1は、吸気通路40に取り付けられたスワールコントロール弁56を有している。スワールコントロール弁56は、燃焼室17内にスワール流を発生させる。スワールコントロール弁56は、開度調整弁である。スワールコントロール弁56の開度が小さいと、燃焼室17内のスワール流が強くなる。スワールコントロール弁56の開度が大きいと、燃焼室17内のスワール流が弱くなる。スワールコントロール弁56を全開にすると、スワール流は発生しない。
【0062】
エンジン1の他側面には、排気通路50が接続されている。排気通路50は、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。燃焼室17から排出された排気ガスは、排気通路50の中を流れる。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐している。
【0063】
排気通路50には、複数の触媒コンバーターを有する排気ガス浄化システムが配設されている。排気ガス浄化システムは、図示は省略するが、エンジンルーム内に配設されている。上流の触媒コンバーターは、三元触媒511と、GPF(Gasoline Particulate Filter)512とを有している。
【0064】
下流の触媒コンバーターは、三元触媒513を有している。尚、排気ガス浄化システムは、図例の構成に限定されない。例えば、GPFは省略してもよい。また、触媒コンバーターは、三元触媒を有するものに限定されない。さらに、三元触媒及びGPFの並び順は、適宜変更してもよい。
【0065】
吸気通路40と排気通路50との間には、EGR通路52が接続されている。EGR通路52は、排気ガスの一部をEGRガス(外部EGRガスという場合もある)として、吸気通路40に還流させる通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における二つの触媒コンバーターの間に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路40における過給機44の上流部に接続されている。
【0066】
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラー53が配設されている。EGRクーラー53は、排気ガスを冷却する。EGR通路52にはまた、EGR弁54が配設されている。EGR弁54は、EGR通路52を流れる排気ガスの流量を調整する。EGR弁54は、EGRガスの還流量を調整する。
【0067】
EGR弁54がEGRガスの環流量を調整することにより、EGR率(燃焼室17に導入される全ガス量に対するEGRガス量の割合)が変化する。すなわち、EGR通路52、EGRクーラー53、及び、EGR弁54は、EGR装置を構成している。
【0068】
(エンジンの制御装置の構成)
エンジンの制御装置は、ECU(Engine Control Unit)10を備えている。ECU10は、図2に示すように、マイクロコンピュータ101と、メモリ102と、I/F回路103と、を備えている。マイクロコンピュータ101は、プログラムを実行する。メモリ102は、プログラム及びデータを格納する。メモリ102は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)である。I/F回路103は、電気信号の入出力を行う。
【0069】
ECU10には、図1及び図2に示すように、各種のセンサSW1-SW11が接続されている。センサSW1-SW11は、信号をECU10に出力する。センサには、以下のセンサが含まれる。
【0070】
エアフローセンサSW1は、吸気通路40を流れる新気の流量を計測する。エアフローセンサSW1は、吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されている。第1吸気温度センサSW2は、吸気通路40を流れる新気の温度を計測する。第1吸気温度センサSW2は、吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されている。第2吸気温度センサSW3は、燃焼室17に導入される吸気のガスの温度を計測する。第2吸気温度センサSW3は、サージタンク42に取り付けられている。
【0071】
吸気圧センサSW4は、燃焼室17に導入される吸気のガスの圧力を計測する。吸気圧センサSW4は、サージタンク42に取り付けられている。筒内圧センサSW5は、各燃焼室17内の圧力を計測する。筒内圧センサSW5は、シリンダ11毎に、シリンダヘッド13に取り付けられている。
【0072】
水温センサSW6は、冷却水の温度を計測する。水温センサSW6は、エンジン1に取り付けられている。クランク角センサSW7は、クランクシャフト15の回転角を計測する。クランク角センサSW7は、エンジン1に取り付けられている。
【0073】
アクセル開度センサSW8は、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する。アクセル開度センサSW8は、アクセルペダル機構に取り付けられている。エンジン1は、アクセル開度に応じたトルク(エンジン負荷)を出力するように運転される。例えば、アクセルペダルを限界まで踏み込めば、アクセル開度は最大となり、エンジン1は、出力可能な最大のトルクが出力できるように運転する。従って、アクセル開度センサSW8は、エンジン負荷検出装置を構成する。
【0074】
吸気カム角センサSW9は、吸気カムシャフトの回転角を計測する。吸気カム角センサSW9は、エンジン1に取り付けられている。排気カム角センサSW10は、排気カムシャフトの回転角を計測する。排気カム角センサSW10は、エンジン1に取り付けられている。レベルセンサSW11は、燃料タンク63に貯留する燃料の量を計測する。レベルセンサSW11は、燃料タンク63に取り付けられている。
【0075】
ECU10は、これらのセンサSW1-SW11の信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断する。ECU10はまた、予め定められている制御ロジックに従って、各デバイスの制御量を演算する。制御ロジックは、メモリ102に記憶されている。
【0076】
ECU100は、制御量に係る電気信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気電動S-VT23、排気電動S-VT24、燃料供給システム61、スロットル弁43、EGR弁54、過給機44の電磁クラッチ45、エアバイパス弁48、及び、スワールコントロール弁56に出力する。
【0077】
(SPCCI燃焼のコンセプト)
エンジン1は、燃費の向上及び排出エミッション性能の向上を主目的として、所定の運転状態にある場合に、圧縮自己着火による燃焼を行う。圧縮開始前の燃焼室17の中の温度がばらつくと、自己着火のタイミングが大きく変化する。そこで、エンジン1は、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。
【0078】
図3は、SPCCI燃焼時における、燃焼室17内の圧力変化301を例示している。図3の横軸は、クランク角である。図3は、筒内圧センサSW5の計測信号に相当する。SPCCI燃焼は、次のような燃焼形態である。つまり、点火プラグ25が、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をすることによって、混合気が火炎伝播によりSI燃焼を開始する。
【0079】
SI燃焼の開始後、(1)SI燃焼の発熱により燃焼室17の中の温度が高くなりかつ、(2)火炎伝播により燃焼室17の中の圧力が上昇することにより、自己着火タイミングθciにおいて未燃混合気が自己着火し、CI燃焼をする。SPCCI燃焼における圧力波形は、SI燃焼による山に、CI燃焼による山が積み重なったような形状になる。
【0080】
圧力波形は、自己着火タイミングθciにおいて変曲点を有する。筒内圧センサSW5が燃焼室17内の圧力波形を計測することにより、ECU10は、その圧力波形の形状に基づいて、混合気が自己着火してSPCCI燃焼が行われたか否かを判断できる。
【0081】
SI燃焼の燃焼量を調整することによって、圧縮開始前の燃焼室17の中の温度のばらつきを吸収できる。ECU10が点火タイミングを調整することによって、SI燃焼の燃焼量が調整される。ECU10が点火タイミングを調整すれば、混合気は目標のタイミングで自己着火する。SPCCI燃焼は、SI燃焼の燃焼量がCI燃焼の開始タイミングをコントロールしている。
【0082】
(エンジンの運転)
エンジン1は、制御マップに基づいて運転する。制御マップは、エンジントルク及びエンジン回転数によって規定されていて、そこには、制御の内容が異なる複数の運転領域が設定されている。制御マップは、ECU10のメモリ102に記憶されている。
【0083】
例えば、制御マップには、エンジン1がSPCCI燃焼を行う所定の高負荷運転領域が設定されている。その高負荷運転領域は、全負荷(エンジン1が出力可能な負荷の上限に相当する負荷)を含み、低回転側から中回転側に拡がる広い範囲に設定されている。
【0084】
ECU10のメモリ102は、各運転領域に対応した制御セットを記憶している。制御セットは、燃料の噴射タイミング、点火タイミング、吸気電動S-VT23の位相角、排気電動S-VT24の位相角、スワールコントロール弁56の開度、及び、EGR弁54の開度のそれぞれに関する制御量を少なくとも含んでいる。
【0085】
ECU10は、各種のセンサSW1-SW11の計測信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断する。ECU10は、判断したエンジン1の運転状態と制御マップとに基づいて、対応する制御セットを選択する。そして、ECU10は、その制御セットに従って、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気電動S-VT23、排気電動S-VT24、スワールコントロール弁56、及び、EGR弁54を制御する。
【0086】
このエンジン1はまた、前述したように、高オクタン価燃料及び低オクタン価燃料の両方を使用可能である。メモリ102は、各運転領域について、高オクタン価燃料に対応する第1制御セットと、低オクタン価燃料に対応する第2制御セットとの二種類の制御セットを記憶している。
【0087】
第1制御セット及び第2制御セットは、燃料のオクタン価に対応して、異常燃焼の抑制と共に、燃費が最適になるよう、設定されている。
【0088】
例えば、前述した高負荷運転領域において、高オクタン価燃料を使用してSPCCI燃焼を行う場合には、第1制御セットが用いられる。第1制御セットの空燃比は、理論空燃比又はほぼ理論空燃比である。
【0089】
対して、その高負荷運転領域において、低オクタン価燃料を使用してSPCCI燃焼を行う場合には、第2制御セットが用いられる。第2制御セットの空燃比は、理論空燃比より小さい(いわゆるリッチ)。低オクタン価燃料は、高オクタン価燃料に比べて異常燃焼が発生しやすいので、空燃比をリッチ化することによって異常燃焼を抑制している。
【0090】
また、第1制御セットの点火タイミングは、第2制御セットの点火タイミングよりも進角側に設定されている。ECU10は、後述する制御によって、燃料のオクタン価を判定し、判定した燃料のオクタン価に対応する制御セットに設定して、エンジン1の運転を制御する。
【0091】
そして、このECU10には更に、高オクタン価燃料に対応した制御セットにおいて、第1制御セットとは別に、全負荷時にエンジン1が出力できるトルクを増大させるために、燃費よりもトルクを優先した、高トルク出力用の制御セット(第3制御セット)が設定されている。第3制御セットについては後述する。
【0092】
(燃料のオクタン価の判定ロジック)
次に、図4及び図5を参照しながら、燃料のオクタン価の判定ロジックについて説明をする。この判定ロジックは、SPCCI燃焼の燃焼形態を利用する。図3に示すように、SPCCI燃焼は、点火プラグ25が燃焼室17の中の混合気に強制的に点火を行って火炎伝播を伴う燃焼を開始させると共に、その燃焼による発熱及び/又は圧力上昇によって、未燃混合気が自己着火により燃焼する形態である。
【0093】
ここで、点火プラグが混合気に点火をしたタイミングから未燃混合気が自己着火をしたタイミングまでに、燃焼室17内で発生した熱量をアシスト熱量とする。SPCCI燃焼において、未燃混合気は、アシスト熱量を受けて自己着火する。燃料のオクタン価が低いと、当該燃料は自己着火しやすいため、アシスト熱量は少ない。逆に、燃料のオクタン価が高いと、当該燃料は自己着火しにくいため、アシスト熱量は多い。アシスト熱量と燃料のオクタン価との間には、相関がある。
【0094】
図4は、アシスト熱量Qsaと自己着火タイミングθciとの関係を示すグラフ501を例示している。グラフ501は、本願発明者らが、エンジン1の運転状態(つまり、エンジン1の負荷、及び、環境温度)を変えながら実験を行うことによって得られたグラフである。グラフ501は、使用燃料が低オクタン価燃料である場合のグラフである。
【0095】
グラフ501の縦軸は、アシスト熱量Qsaを、燃焼室17内に導入したガス量で割った値である。燃焼室17内に導入されるガス量は、エンジン1の運転状態に応じて変化する。エンジン1の負荷が高くなると、燃焼室17内に導入されるガス量は増える。グラフ501の縦軸は、アシスト熱量Qsaを、燃焼室17内に導入されるガス量によって正規化している。
【0096】
ECU10は、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて燃焼室17内で発生した熱量を算出できる。ECU10は、図3に示すように、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、点火プラグ25が混合気に点火をしたタイミングから未燃混合気が自己着火をしたタイミングθciまでに、燃焼室17内で発生したアシスト熱量Qsaを算出する。
【0097】
グラフ501の横軸は、未燃混合気が自己着火したタイミングθciである。未燃混合気が自己着火すると、圧力変化(dP/dθ)が変わる。ECU10は、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、自己着火タイミングθciを特定できる。
【0098】
グラフ501の丸は、エンジン1が運転する環境温度が標準でかつ、充填効率Ceが最大の場合の計測値であり、グラフ501の三角は、環境温度が標準でかつ、充填効率Ceが大の場合の計測値であり、グラフ501のひし形は、環境温度が標準でかつ、充填効率Ceが小の場合の計測値である。また、グラフ501の四角は、環境温度が、標準よりも高い酷暑でかつ、充填効率Ceが大の場合の計測値であり、グラフ501の逆三角は、環境温度が酷暑でかつ、充填効率Ceが小の場合の計測値である。
【0099】
グラフ501において直線5011-5015で示すように、正規化されたアシスト熱量Qsaと自己着火タイミングθciとの間には相関がある。つまり、各直線5011-5015は全て、右上がりである。アシスト熱量Qsaが多いと、自己着火タイミングθciが遅角し、アシスト熱量Qsaが少ないと、自己着火タイミングθciが進角する。また、その相関関係は、エンジン1の運転状態毎に成立する。つまり、直線5011-5015は、エンジン1の運転状態毎に異なる。
【0100】
ここで、環境温度の高低について比較をする。環境温度が高い場合(直線5014)は、環境温度が低い場合(直線5015)に比べて、アシスト熱量Qsaは小さい。環境温度が高いと、燃焼室17の中に導入される吸気の温度が高い。吸気温度が高いと、燃焼室17の中の温度が高くなって未燃混合気が自己着火しやすい。このため、吸気温度が高いと、アシスト熱量Qsaは小さい。
【0101】
次に、充填効率Ceの大小について比較をする。充填効率Ceが大きい場合、つまり、エンジン1のトルクが大きい場合(直線5011、5012)は、充填効率Ceが小さい場合、つまり、エンジン1のトルクが小さい場合(直線5015)に比べて、アシスト熱量Qsaは小さい。燃焼室17の中に導入する空気量が多いと、当該空気の圧縮に伴い、燃焼室17の中の温度が、より高くなる。燃焼室17の中の温度が高くなると、未燃混合気は自己着火しやすい。そのため、充填効率Ceが大きいと、アシスト熱量Qsaは小さい。
【0102】
グラフ501において、各運転状態におけるアシスト熱量Qsaと自己着火タイミングθciとの計測値を直線の統計モデルによって表現すると共に、当該直線の、特定クランク角(特定CA、例えば15°ATDC)における切片を、各運転状態におけるモデルの代表値と定める。以下において、この代表値を、「等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量)」と呼ぶ。
【0103】
図4のグラフ501は、前述したように、使用燃料が低オクタン価燃料である場合の、正規化したアシスト熱量Qsaと自己着火タイミングθciとの関係を例示している。図示は省略するが、本願発明者らは、使用燃料が高オクタン価燃料である場合も同様に、エンジン1の運転状態毎に、正規化したアシスト熱量Qsaと自己着火タイミングθciとの相関関係が成立することを確認した。
【0104】
図5は、グラフ501等に基づいて作成されるグラフ601を例示している。グラフ601の縦軸は、前述した等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量)である。グラフ601の横軸は、充填効率Ceである。グラフ601は、エンジン1のさまざまな運転状態のデータを含んでいる。グラフ601はまた、使用燃料が高オクタン価燃料である場合のデータと、使用燃料が低オクタン価燃料である場合のデータとを含んでいる。
【0105】
グラフ601の黒丸は、使用燃料が高オクタン価燃料でかつ、環境温度が標準の場合のデータであり、グラフ601の四角は、使用燃料が高オクタン価燃料でかつ、環境温度が酷暑の場合のデータである。グラフ601の白丸は、使用燃料が低オクタン価燃料でかつ、環境温度が標準の場合の結果であり、グラフ601の三角は、使用燃料が低オクタン価燃料でかつ、環境温度が酷暑の場合のデータである。グラフ601のバツ印は、使用燃料が高オクタン価燃料の場合に、高オクタン価燃料に対応する第1制御セットによって、エンジン1の運転を制御した場合のデータである。
【0106】
グラフ601において曲線6011-6014で示すように、等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量)と充填効率Ceとの間には相関がある。つまり、充填効率Ceが高いと、空気の圧縮に伴い燃焼室17の中の温度が大きく上昇するから、等価温度上昇量は小さくなり、逆に、充填効率Ceが低いと、等価温度上昇量が大きくなる。曲線6011-6014は全て、右下がりになる。また、高オクタン価燃料の使用時の曲線6011、6012と、低オクタン価燃料の使用時の曲線6013、6014とは相違する。同一の充填効率Ceで比較した場合に、高オクタン価燃料の使用時は、低オクタン価燃料の使用時よりも、未燃混合気が自己着火しにくいため、等価温度上昇量は大きい。
【0107】
また、等価温度上昇量と充填効率との相関関係は、環境温度毎に成立する。つまり、同一の充填効率Ceで、酷暑時の曲線6012、6014と、標準時の曲線6011、6013とを比較した場合に、酷暑時は燃焼室17の中の温度がより高くなるため、標準時よりも、等価温度上昇量が小さい。
【0108】
グラフ601に示すように、使用燃料が高オクタン価燃料の場合の曲線6011、6012と、使用燃料が低オクタン価燃料の場合の曲線6013、6014とは異なる。そこで、エンジン1がSPCCI燃焼を行っている場合に、ECU10が、各種センサSW1-SW11の計測信号に基づいて、等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量))と、充填効率Ceとを算出すると共に、グラフ601において、算出した等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量))と充填効率Ceとの点が、どこにプロットできるか、に基づいて、ECU10は、燃料のオクタン価を判定することができる。
【0109】
つまり、算出した等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量))と充填効率Ceとの点が、例えば曲線6011の上に載れば、ECU10は、使用燃料が高オクタン価燃料であると判断できる。また、算出した等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量))と充填効率Ceとの点が、例えば曲線6013の上に載れば、ECU10は、使用燃料が低オクタン価燃料であると判断できる。
【0110】
また、高オクタン価燃料を貯留している燃料タンク63に低オクタン価燃料を注ぎ足す、又は、低オクタン価燃料を貯留している燃料タンク63に高オクタン価燃料を注ぎ足すと、燃料のオクタン価は、高オクタン価燃料と低オクタン価燃料との中間のオクタン価になる。この場合、等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量))と充填効率Ceとの点は、グラフ601における曲線と曲線との間にプロットされる。ECU10は、線形補間によって、燃料のオクタン価、つまり、中間のオクタン価を判定することができる。
【0111】
(オクタン価検出の構成)
図6は、燃料のオクタン価を検出するための構成、つまりオクタン価検出装置を例示している。オクタン価検出装置は、アシスト熱量算出部105、フィッティング部106、等価温度上昇量算出部107、自着火特性算出部108、オクタン価判定部109、制御セット選択部110を備えている。これらの各部は、ECU10の機能ブロックである。
【0112】
アシスト熱量算出部105は、前述したアシスト熱量Qsaを算出する。アシスト熱量算出部105は、筒内圧センサSW5を含む各種センサSW1-SW11の計測信号に基づいて、アシスト熱量Qsaを算出する(図3も参照)。アシスト熱量算出部105は、燃焼室17の中で燃焼が行われる度にアシスト熱量Qsaを算出する。
【0113】
フィッティング部106は、アシスト熱量算出部105が算出したアシスト熱量Qsaと、自着火タイミングθciとの関係から、図4に示した統計モデルの直線を定める。具体的に、フィッティング部106は、符号111のグラフに例示するように、縦軸を正規化したアシスト熱量Qsaとし、横軸を自己着火タイミングθciとした平面上に、アシスト熱量算出部105が算出したアシスト熱量Qsaと自着火タイミングθciとの関係を示す複数の点をプロットする(グラフ111の黒丸参照)。フィッティング部106は、プロットした複数の点に基づいて、直線、つまり、統計モデルを定める。フィッティング部106は、例えば最小二乗法により直線を定めてもよい。尚、直線の傾きを所定の傾きに固定しておき、フィッティング部106は、直線の切片のみを定めてもよい。こうすることで、フィッティング部106の演算量が少なくなる。
【0114】
等価温度上昇量算出部107は、フィッティング部106が定めた直線に基づいて、特定CAの切片である等価温度上昇量(Qsa(特定CA)/筒内ガス量)を算出する(グラフ111の白丸参照)。具体的に等価温度上昇量算出部107は、フィッティング部106が定めた直線と、特定CAの縦線との交点を算出する。
【0115】
自着火特性算出部108は、等価温度上昇量算出部107が算出した等価温度上昇量と、メモリ102に記憶しているマップ112とに基づいて、自着火特性を算出する。マップ112は、図5に示すグラフ601を90°だけ反時計回りに回転させたものである。マップ112は、当該エンジン1について実験またはシミュレーションを行うことにより予め作成されかつ、メモリ102に記憶されている。マップ112は、使用燃料が高オクタン価燃料でかつ、エンジン1の環境温度が標準条件である場合の第1特性線と、使用燃料が低オクタン価燃料でかつ、エンジン1の環境温度が酷暑条件である場合の第2特性線と、を含んでいる。第1特性線は、混合気が最も自己着火しにくい場合に相当し、第2特性線は、混合気が最も自己着火しやすい場合に相当する。
【0116】
自着火特性算出部108は、等価温度上昇量算出部107が算出した等価温度上昇量と、充填効率Ceとの関係を示す点をマップ112にプロットし(マップ112の黒丸参照)、当該点を通る曲線を算出する(マップ112の破線参照)。自着火特性算出部108が算出した自着火特性の曲線は、第1特性線から第2特性線までの間に定まる。自着火特性算出部108が算出した自着火特性の曲線は、第1特性線に一致する場合、及び、第2特性線に一致する場合もある。
【0117】
オクタン価判定部109は、自着火特性算出部108が算出した自着火特性の曲線に基づいて、燃料のオクタン価を判定する。
【0118】
具体的にオクタン価判定部109は、自着火特性算出部108が算出した自着火特性の曲線が、第1特性線に一致する場合は、使用燃料は、高オクタン価であると判定する。オクタン価判定部109は、自着火特性算出部108が算出した自着火特性の曲線が、第2特性線に一致する場合は、使用燃料は、低オクタン価であると判定する。
【0119】
オクタン価判定部109は、自着火特性算出部108が算出した自着火特性の曲線が、図6に例示するように、第1特性線と第2特性線との間に位置する場合は、燃料のオクタン価を線形補間により算出する(図6の矢印参照)。この場合、使用燃料は、高オクタン価と低オクタン価との中間のオクタン価であると判定される。メモリ102は、判定されたオクタン価を記憶する。
【0120】
オクタン価判定部109は、オクタン価の判定の際に、温度補正を行う。つまり、吸気温度が高い場合、及び/又は、エンジン1の水温が高い場合は、燃焼室17の中のガスの温度が高くなるため、混合気は自着火しやすい。この場合、燃料のオクタン価が、見かけ上、低くなる。オクタン価判定部109は、吸気温度、及び/又は、エンジン1の水温に基づいて、判定したオクタン価を補正する。具体的に、吸気温度、及び/又は、エンジン1の水温が高いと、オクタン価判定部109は、判定したオクタン価が高くなるように補正する。吸気温度、及び/又は、エンジン1の水温が低いと、オクタン価判定部109は、判定したオクタン価が低くなるように補正する。
【0121】
尚、オクタン価判定部109が、吸気温度、及び/又は、エンジン1の水温に基づいて判定したオクタン価を補正する代わりに、自着火特性算出部108が、吸気温度、及び/又は、エンジン1の水温に基づいて、自着火特性を補正してもよい。
【0122】
制御セット選択部110は、オクタン価判定部109が判定した燃料のオクタン価に基づいて、エンジン1の運転制御に用いる制御セットを選択する。
【0123】
前述したように、高オクタン価燃料のオクタン価が、100RON以下96RON以上であり、低オクタン価燃料のオクタン価が、96RON未満91RON以上であるとした場合、96RON以上であれば、高オクタン価燃料であると判定できる。そして、96RON未満であれば、低オクタン価燃料であると判定できる。
【0124】
制御セット選択部110は、判定された燃料のオクタン価が96RON以上であった時は、高オクタン価燃料に対応する第1制御セットを選択し、判定された燃料のオクタン価が、96RON未満であった時は、低オクタン価燃料に対応する第2制御セットを選択する。尚、第3制御セットについては後述する。
【0125】
こうして、燃料のオクタン価を判定すると、ECU10は、選択された制御セットを設定し、それに基づいて、少なくとも、インジェクタ6の燃料噴射時期、点火プラグ25の点火時期、吸気電動S-VT23の位相角、排気電動S-VT24の位相角、スワールコントロール弁56の開度、及び、EGR弁54の開度のそれぞれを制御する。その結果、エンジン1は、使用される燃料のオクタン価に応じて、燃費が最適化される。
【0126】
このように、ECU10は、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、使用されている燃料のオクタン価を判定し、それによって、燃料のオクタン価を検出する。本実施形態では、筒内圧センサSW5は、オクタン価検出装置を構成する。
【0127】
(オクタン価判定の手順)
図7は、ECU10が実行する制御であって、燃料のオクタン価を判定する手順を例示している。ECU10は、エンジン1の運転中に、筒内圧センサSW5からの計測信号、つまり、燃焼室17の中の圧力波形の情報を取得する(ステップS1)。
【0128】
そして、ECU10は、図3に例示する圧力波形に基づいて、自己着火タイミングθciを算出する(ステップS2)。次に、ECU10は、圧力波形に基づいて、SPCCI燃焼が行われたか否かを判断する(ステップS3)。その判断がNOの場合、プロセスはリターンする(ステップS3でNO)。燃料のオクタン価の判定は、SPCCI燃焼時のみ、実行可能である(ステップS3でYES)。
【0129】
ECU10は、充填効率Ceが下限値以上であるか否かを判断する(ステップS4)。図5に例示するように、等価温度上昇量と充填効率との関係において、充填効率Ceが低いと、曲線6011-6014が互いに近づいてしまう。この場合、燃料のオクタン価を誤判定する恐れがある。
【0130】
そこで、ECU10は、充填効率Ceが下限値よりも小さい場合は、燃料のオクタン価の判定を行わない(ステップS4でNO)。オクタン価の判定可能な下限負荷が存在する。ステップS4の判断がYESの場合、プロセスはステップS5に進む。このことにより、使用燃料のオクタン価の誤判定が抑制される。
【0131】
ECU10は、前述したように、筒内圧センサSW5の計測信号に基づいて、アシスト熱量Qsaを算出する(ステップS5)。そうして、ECU10は、算出されたアシスト熱量Qsaと、自着火タイミングθciとの関係を示す複数の点に基づいて、直線の統計モデルを定める(図6のグラフ111参照)。つまり、ECU10は、複数の点に対して直線をフィットさせる(ステップS6)。
【0132】
ECU10は、定めた直線の統計モデルに基づいて、当該直線の、特定CAにおける切片である等価温度上昇量を算出する(ステップS7)。ECU10は、算出した等価温度上昇量と、メモリ102が記憶しているマップ112とに基づいて、自着火特性を算出する(ステップS8)。そして、自着火特性から、燃料のオクタン価を判定する(ステップS9)。
【0133】
このオクタン価の判定ロジックは、SPCCI燃焼の特性を利用している。混合気がSPCCI燃焼すれば、ECU10は、使用燃料のオクタン価を判定できる。ノッキングが発生しなくても、ECU10は、使用燃料のオクタン価を判定できる。ECU10は、速やかに、使用燃料のオクタン価を判定できる。
【0134】
(エンジン出力を増大させる工夫)
前述したように、ECU10には、高オクタン価燃料に対応した制御セットに、全負荷時にエンジン1が出力できるトルクを増大させるために、燃費よりもトルクを優先した、高トルク出力用の制御セット(第3制御セット)が設定されている。それにより、このエンジン1では、出力可能な最大のトルクが増大するように工夫されている。
【0135】
図8に、このエンジン1の出力性能を例示する。横軸はエンジン回転数であり、縦軸はエンジンが出力するトルクである。図8の各線は、エンジン1で出力可能なトルクの上限、つまり全負荷時において出力可能になるトルクを示している。
【0136】
全負荷時は、新気及び燃料を多量に用いて燃焼が行われる。そのため、燃焼室17は高温になり、ノッキング等の異常燃焼が発生しやすい。それに対し、燃料はオクタン価が高いほど、異常燃焼を抑制して高いトルクが出力できるから、全負荷時は、低オクタン価燃料よりも高オクタン価燃料の方が有利である。
【0137】
更に、このエンジン1の場合、高オクタン価燃料の中でも、100RONの燃料は、オクタン価が最も高いので、他の高オクタン価燃料よりも有利である。従って、図8に示す、エンジン1で出力可能なトルク、つまりエンジン1が出力できるトルクの最大値(最高出力トルク)を実現するには、使用可能な高オクタン価燃料のうち、オクタン価が最も高い100RONの燃料又は100RONでなくてもそれと実質的に同等の燃料(特定高オクタン価燃料)を使用するのが、最も有効である。
【0138】
尚、特定高オクタン価燃料のオクタン価は、100RONに限らない。使用可能な高オクタン価燃料のオクタン価が100RONよりも高い場合又は低い場合は、特定高オクタン価燃料のオクタン価は、そのオクタン価となる。
【0139】
図8における実線L1は、第1制御セットにより、特定高オクタン価燃料を使用してSPCCI燃焼を行った場合での最高出力トルクの変化を表している。前述したように、第1制御セットは、高オクタン価燃料に対応した制御セットではあるが、燃費が最適になるように設定されている。そのため、第1制御セットでは、燃費を向上するために、最高出力トルクは、本来出力できる高さよりも低く設定されている。
【0140】
それに対し、図8における破線L2は、燃費よりもトルクを優先し、特定高オクタン価燃料を使用してSPCCI燃焼を行った場合での最高出力トルクの変化を表している。破線L2が示す、トルク優先での最高出力トルクは、実線L1が示す、燃費優先での最高出力トルクよりも、エンジン回転数のほとんどの領域において高くなる。
【0141】
このように、特定高オクタン価燃料を使用し、燃費よりもトルクを優先することで、最高出力トルクを増大させることが可能になる。そこで、このECU10には、エンジン1のエンジン出力を増大させるため、特定高オクタン価燃料用に、高トルクの出力に特化した制御セット(第3制御セット)が設定されている。
【0142】
(第3制御セット)
このエンジン1は、前述したように、全負荷を含む所定の高負荷運転領域において、SPCCI燃焼を行う。従って、エンジン1は、全負荷時には、最高出力トルクに沿った運転領域(全負荷運転領域)で、最高出力トルク又はそれと同等の高いトルクを出力するために、燃焼室17に、より多くの新気及び燃料を導入し、それによってSPCCI燃焼を行う。
【0143】
すなわち、全負荷運転領域では、目標とする量の燃料が噴射されるように、インジェクタ6の制御が行われる。全負荷運転領域ではまた、目標とする量の新気が導入されるように、過給機44をオン又はオフした状態で、スロットル弁43の開度の制御が行われる。更に、全負荷運転領域では、異常燃焼を抑制してSPCCI燃焼の燃焼安定性を確保するために、燃焼室17にEGRガスを導入し、EGR率を調整する制御が行われる。
【0144】
EGRガスは、EGRクーラー53で冷却された後、燃焼室17に導入される。そのため、EGRガスを多量に導入してEGR率を高めても、燃焼室17の温度上昇を抑制できる。EGRガスは、比熱の大きい不活性ガスである。そのため、新気の量が増えても、EGRガスにより、相対的に燃焼室17の混合気の酸素濃度を低下させることができ、混合気の燃焼温度を下げることができる。従って、EGR率の調整により、異常燃焼を抑制しながらSPCCI燃焼の燃焼安定性を確保することができる。
【0145】
全負荷運転領域ではまた、ECU10による点火プラグ25の制御により、点火タイミングを遅角させる制御も行われる。点火タイミングを遅角側に調整することで、異常燃焼の発生を抑制できる。ECU10は、全負荷運転領域において、EGR率及び点火タイミングの調整を組み合わせることにより、異常燃焼を抑制しながら安定したSPCCI燃焼を実現させている。
【0146】
全負荷運転領域での燃料の噴射量は、最高出力トルクを目標に設定される。その際、第1制御セットでは、燃費の向上を図るため、エンジン1が本来出力できるトルクよりも低いトルクが、最高出力トルクとして設定されている(図8の実線L1参照)。従って、全負荷運転領域での燃料の噴射量もそれに応じて設定されている。
【0147】
それに対し、このECU10には、高オクタン価燃料に対応した制御セットにおいて、第1制御セットとは別に、特定高オクタン価燃料用に、燃費よりもトルクを優先した、特別の制御セット(第3制御セット)が設定されている。第3制御セットでは、トルクの向上を図るため、第1制御セットよりも高いトルクが、最高出力トルクとして設定されている(図8の破線L2参照)。従って、燃料の噴射量もそれに応じて多く設定される。
【0148】
新気量と共に燃料の噴射量も多くなると、燃焼熱が多くなるので、燃焼室17の温度が高くなる。その結果、ノッキング等の異常燃焼が発生しやすくなる。そこで、第3制御セットでは、異常燃焼の抑制とエンジントルクの向上とを両立させるために、第2制御セットと比べて、特にEGR率の調整内容が変更されている。
【0149】
図9に、第1制御セットが含むEGR率マップ(第1EGR率マップ)と、第3制御セットが含むEGR率マップ(第3EGR率マップ)とを、簡略化して示す。図9の上段の図が第1EGR率マップであり、図9の下段の図が第3EGR率マップである。第1EGR率マップ及び第3EGR率マップは、いずれもエンジン回転数と充填効率Ceによって規定されている。
【0150】
これらEGR率マップでは、個々のエンジン回転数と個々の充填効率Ceに対応したセル毎にEGR率が設定されている。尚、図示はしないが、低オクタン価燃料に対応した第2制御セットにおいても、これらEGR率マップと同様のEGR率マップ(第2EGR率マップ)が含まれている。
【0151】
第1EGR率マップと第3EGR率マップとを比較した場合、図9においてR2’で示す、第3EGR率マップにおける充填効率Ceが大きくその上限に沿った範囲、つまりトルクが高くその上限に沿った範囲(全負荷運転領域に相当する範囲)の各EGR率は、図9においてR2で示す、第1EGR率マップにおける全負荷運転領域に相当する範囲の各EGR率よりも、それぞれ低い値が設定されている(R2>R2’)。
【0152】
そして、図9においてR1で示す、R2及びR2’以外の範囲に設定されている各EGR率は、第1EGR率マップと第3EGR率マップとで、いずれも同じ値となっている。
【0153】
それにより、エンジン1が、特定高オクタン価燃料を使用して全負荷運転領域で運転する場合には、他の高オクタン価燃料を使用して全負荷運転領域で運転する場合と比べて、EGR率が低下するように調整される。
【0154】
図10に、全負荷時における、高オクタン価燃料に対応した第1EGR率マップのEGR率、低オクタン価燃料に対応した第2EGR率マップのEGR率、及び、特定高オクタン価燃料に対応した第3EGR率マップのEGR率を、エンジン回転数別に例示する。
【0155】
前述したように、全負荷時における第3EGR率マップのEGR率は、全負荷時における第1EGR率マップのEGR率よりも低い値となっている。
【0156】
EGR率を低下、つまり、燃焼室17に導入するEGRガス量を減少させることで、相対的に、燃焼室17に導入する新気量を増加させることができる。新気量の増加に伴い、空燃比を理論空燃比又はほぼ理論空燃比に維持した状態で、燃料の噴射量を増加させることができる。適切な空燃比を維持した状態で新気量及び燃料の噴射量が増大することで、高いエンジントルクが出力できる。
【0157】
そして、異常燃焼の抑制に優れるという、特定高オクタン価燃料の特性と共に、燃料の噴射量が増加すれば、その気化熱によって燃焼室17の温度上昇の抑制が可能になる。従って、ノッキングの発生を効果的に抑制できる。そして、ノッキングの発生の効果的な抑制により、ノッキングの発生を回避するために遅角されていた点火タイミングを進角することが可能になる。点火タイミングが進角すれば、より適切な燃焼が行われるので、更にトルクを向上できる。
【0158】
その結果、異常燃焼の抑制とトルクの向上とを両立させることが可能になり、エンジン1は、そのエンジン性能を充分に発揮できるようになる。
【0159】
一方、エンジン負荷が全負荷よりも低い時、詳細には、全負荷運転領域以外の運転領域でエンジンが運転する時は、特定高オクタン価燃料であっても、EGR率は低下せず、他の高オクタン価燃料と同じEGR率に調整される(図9の範囲R1参照)。
【0160】
すなわち、特定高オクタン価燃料であっても、高いトルクが最も要求される全負荷運転領域のみで、燃費よりもトルクを優先した燃焼制御を行う。それにより、最高出力トルクを効率的に増大させることができる。そして、特定高オクタン価燃料であっても、全負荷運転領域以外では、他の高オクタン価燃料と同様に、トルクよりも燃費を優先した燃焼制御を行う。それにより、燃費の低下を抑制できる。
【0161】
従って、このエンジン1では、優れた燃費を確保しながら、従来の出力範囲を超える高トルクを効率的に実現できる。
【0162】
次に、全負荷時における第3EGR率マップのEGR率を、全負荷時における第2EGR率マップのEGR率、つまり低オクタン価燃料に対応したEGR率と比較する。
【0163】
図10に示すように、全負荷時における第3EGR率マップのEGR率は、所定の回転数r1以下の回転領域(低回転領域)では、全負荷時における第2EGR率マップのEGR率よりも低く設定されている。
【0164】
低オクタン価燃料は、高オクタン価燃料よりもオクタン価が低い。従って、全負荷運転領域では、高オクタン価燃料に比べて、異常燃焼が発生しやすい。特定高オクタン価燃料と比べれば、その差は、より顕著である。
【0165】
そのため、前述したように、第1制御セット及び第3制御セットの空燃比は、理論空燃比又はほぼ理論空燃比とされているのに対し、第2制御セットの空燃比は、異常燃焼を抑制するために、リッチ化されている。
【0166】
全負荷運転領域では、燃焼室17が高温になるので、異常燃焼が発生しやすい。特に、エンジン回転数の低い低回転領域では、点火前に自着火しやすくなるため、プリイグニッションが発生しやすい。プリイグニッションが発生すると、SPCCI燃焼が行えない。
【0167】
そのため、エンジン1が、全負荷運転領域における前述した低回転領域において、低オクタン価燃料を用いて運転するときには、ECU10は、空燃比のリッチ化に加え、EGR率を高めて、燃焼室17へのEGRガスの導入量を増加させる制御を行う。それにより、安定したSPCCI燃焼を実現させている。
【0168】
対して、特定高オクタン価燃料は、異常燃焼の抑制性能に優れるため、全負荷運転領域における前述した低回転領域において運転するときにおいても、空燃比のリッチ化をしなくても、プリイグニッションの発生を抑制できる。従って、安定したSPCCI燃焼を実現できる。ECU10は、空燃比を理論空燃比又はほぼ理論空燃比に設定し、EGR率を第1EGR率マップから低下させた状態で、制御を行う。
【0169】
それにより、全負荷時における第3EGR率マップのEGR率は、前述した低回転領域において、全負荷時における第2EGR率マップのEGR率よりも低く設定されている。
【0170】
(トルクの向上に関する燃焼制御)
図11に、トルクの向上に関連して、ECU10が行うエンジン1の燃焼制御の一例を示す。
【0171】
エンジン1は、高オクタン価燃料及び低オクタン価燃料の両方が使用できる。この例示では、高オクタン価燃料のオクタン価を、100RON以下96RON以上とし、低オクタン価燃料のオクタン価を、96RON未満91RON以上とする。そして、特定高オクタン価燃料のオクタン価は100RONとする。従って、この例示では、96RONが第1オクタン価に相当し、100RONが第2オクタン価に相当する。
【0172】
ECU10は、各種のセンサSW1-SW11が出力する計測信号を読み込む(ステップS11)。
【0173】
ECU10は、少なくとも、アクセル開度センサSW8から入力される計測信号に基づいて、エンジン1に出力が要求されるトルクを検出する(ステップS12)。ECU10はまた、クランク角センサSW7から入力される計測信号に基づいて、エンジン回転数を検出する。
【0174】
それにより、ECU10は、エンジン1の運転が全負荷運転領域にあるか否か、つまり、出力が要求されるトルクが全負荷であるかどうかの判断が可能になる。
【0175】
そして、ECU10は、筒内圧センサSW5から出力される計測信号に基づいて、燃料のオクタン価を検出する(ステップS13)。具体的には、ECU10は、前述したオクタン価判定の手順に従ってオクタン価を判定する。
【0176】
ECU10は、燃料のオクタン価が100RONか否か、つまり、使用されている燃料は特定高オクタン価燃料であるか否かを判定する(ステップS14)。
【0177】
このとき、ECU10は、100RONのオクタン価を判定するために、連続して複数回、オクタン価の検出を行う。例えば、ECU10は、図7に示したステップS1~ステップS9の処理を繰り返し行うことにより、連続して複数のオクタン価を検出する。SPCCI燃焼が行われる度にオクタン価を検出できるので、検出回数が多くても短時間で行える。
【0178】
そして、例えば99.5RON等、所定の基準オクタン価以上のオクタン価が、例えば300回以上等、所定の基準回数以上検出された場合に、ECU10は、燃料のオクタン価は100RONであると判定する。オクタン価が100RONであると確実に検出できるので、100RONに特化した最適な条件で燃焼させることができ、異常燃焼を精度高く抑制できる。尚、基準オクタン価及び基準回数は、メモリ102に記憶されている。
【0179】
その結果、燃料のオクタン価が100RONであると判定された場合には(ステップS14でYES)、ECU10は、制御セットを、第3EGR率マップを含む第3制御セットに設定する(ステップS15)。
【0180】
一方、燃料のオクタン価が100RONであると判定されない場合には(ステップS14でNO)、ECU10は、燃料のオクタン価が96RON以上か否かを判定する(ステップS16)。
【0181】
ECU10は、燃料のオクタン価は96RON以上である、つまり使用されている燃料は高オクタン価燃料であると判定した場合には(ステップS16でYES)、制御セットを、第1EGR率マップを含む第1制御セットに設定する(ステップS17)。
【0182】
一方、ECU10は、検燃料のオクタン価は96RON未満である、つまり使用されている燃料は低オクタン価燃料であると判定した場合には(ステップS16でNO)、制御セットを、第2EGR率マップを含む第2制御セットに設定する(ステップS18)。
【0183】
ECU10は、設定した各制御セットに基づいて、EGR弁54、スロットル弁43、及び、インジェクタ6を制御する(ステップS19,S20,S21)。
【0184】
例えば、第1制御セットが設定された場合には、ECU10は、エンジン1の運転状態と第1制御セットとに基づいて、EGR弁54、スロットル弁43、及び、インジェクタ6を制御する。それにより、異常燃焼の抑制と共に、燃費が最適になるよう、燃焼室17に導入される新気量、燃料噴射量、及び、EGR率が、高オクタン価燃料に対応して調整される。
【0185】
第2制御セットが設定された場合には、ECU10は、エンジン1の運転状態と第2制御セットとに基づいて、EGR弁54、スロットル弁43、及び、インジェクタ6を制御する。それにより、異常燃焼の抑制と共に、燃費が最適になるよう、焼室17に導入される新気量、燃料噴射量、及び、EGR率が、低オクタン価燃料に対応して調整される。
【0186】
第3制御セットが設定された場合においても、ECU10は、エンジン1の運転状態と第3制御セットとに基づいて、EGR弁54、スロットル弁43、及び、インジェクタ6を制御する。それにより、焼室17に導入される新気量、燃料噴射量、及び、EGR率が、100RONの燃料に対応して調整される。
【0187】
特に、エンジン1が全負荷運転領域で運転している時に、第3制御セットが設定された場合には、第3EGR率マップに従って、ECU10は、第1EGR率マップに設定されているEGR率よりも低いEGR率に調整する(図9の範囲R2及びR2’参照)。
【0188】
それにより、燃焼室17に導入されるEGRガス量が減少するので、ECU10は、燃焼室17に導入する新気量を増加させる。新気量の増加に併せて、ECU10は、適切な空燃比を維持した状態で、燃料の噴射量を増加させる。ECU10はまた、適宜、ノッキングの発生を回避するために遅角されていた点火タイミングを進角させる制御を行う。その結果、エンジン1の最高出力トルクが増大する。
【0189】
また、エンジン1が全負荷運転領域以外の運転領域で運転している時に、第3制御セットが設定された場合には、第3EGR率マップに従って、ECU10は、第1EGR率マップに設定されているEGR率と同じEGR率に調整する(図9の範囲R1参照)。
【0190】
それにより、全負荷運転領域以外の広い運転領域では、他の高オクタン価燃料と同様に、トルクよりも燃費を優先した燃焼制御が行われる。その結果、燃費の低下を抑制できる。
【0191】
従って、このエンジンの制御装置によれば、異常燃焼の抑制とトルクの向上とが両立できる。また、優れた燃費を確保しながら、従来の出力範囲を超える高トルクが出力できる。エンジン1は、エンジン性能を充分に発揮できるようになる。
【0192】
すなわち、本実施形態において開示するエンジンの制御装置(ECU10)は、高オクタン価の燃料(オクタン価が100RON以下96RON以上の燃料)及びこの高オクタン価の燃料よりもオクタン価の低い低オクタン価の燃料(オクタン価が96RON未満91RON以上の燃料)の双方の使用が可能なエンジン1と、燃料のオクタン価を検出するオクタン価検出装置(筒内圧センサSW5)と、エンジン1に出力が要求されるエンジン負荷(トルク)を検出するエンジン負荷検出装置(アクセル開度センサSW8)と、エンジン1の燃焼室17にEGRガスの供給が可能なEGR装置(EGR弁54)とを備える。
【0193】
そして、エンジンの制御装置は、オクタン価検出装置及びエンジン負荷検出装置の各々の検出値に基づいてEGR装置を制御し、それによってEGR率を調整する。
【0194】
エンジンの制御装置はまた、所定の第1オクタン価(96RON)以上のオクタン価が検出された場合には、高オクタン価の燃料に対応したEGR率となるように調整し、第1オクタン価よりも低いオクタン価が検出された場合には、低オクタン価の燃料に対応したEGR率となるように調整する。エンジンの制御装置は更に、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に、第1オクタン価よりも高い所定の第2オクタン価(100RON)が検出された場合には、第1オクタン価以上のオクタン価が検出されて調整されるEGR率に対して、EGR率を低下させる。
【0195】
このエンジンの制御装置ではまた、検出されるエンジン負荷が全負荷よりも低い時は、第2オクタン価が検出された場合でもEGR率を低下させない。
【0196】
エンジンの制御装置ではまた、第2オクタン価の検出によって低く設定されるEGR率は、検出されるエンジン負荷が全負荷である時に低オクタン価の燃料に対応するように調整されるEGR率よりも、少なくともエンジン1の所定の低回転領域において低く設定されている。
【0197】
このエンジンの制御装置ではまた、燃焼室17に形成される混合気が点火され、それによって、一部の混合気が火炎伝播を伴う燃焼を開始し、その後、残りの未燃混合気が自己着火により燃焼する部分自己着火燃焼(SPCCI燃焼)が、エンジン1で行われ、混合気に点火してから未燃混合気が自己着火するまでの間に燃焼室17で発生する熱量に基づいて、オクタン価検出装置がオクタン価を検出する。
【0198】
尚、開示するエンジンの制御装置は、前述した構成のエンジン1への適用に限定されない。ここに開示するエンジンの制御装置は、混合気に点火を行う様々な構成のエンジンに適用可能である。
【0199】
例えば、開示するエンジンの制御装置は、SPCCI燃焼を行うエンジンへの適用が好ましいが、必須ではない。オクタン価検出装置も例示である。例えば、燃料供給システムにオクタン価の検出が可能なセンサを設置し、インジェクタ6に供給する燃料のオクタン価を直接検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0200】
1 エンジン
10 ECU(制御装置)
17 燃焼室
6 インジェクタ
54 EGR弁(EGR装置)
SW5 筒内圧センサ(オクタン価検出装置)
SW8 アクセル開度センサ(エンジン負荷検出装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11