(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/126 20060101AFI20240717BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G02B6/126
G02B6/122 311
(21)【出願番号】P 2020216278
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】岡 徹
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197664(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052343(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/052344(WO,A1)
【文献】特開2015-090450(JP,A)
【文献】特開2018-120168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338577(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に形成された1組の導波路を備える光導波路素子であって、
前記1組の導波路のうちの一方の導波路は、変換領域に形成される第1のコアおよび出射領域に形成される第3のコアを含み、
前記1組の導波路のうちの他方の導波路は、前記変換領域に形成される第2のコアおよび前記出射領域に形成される第4のコアを含み、
前記変換領域の入力端において、前記第1のコアの断面積および前記第2のコアの断面積は互いに異なり、
前記第1のコアまたは前記第2のコアのうちの少なくとも一方の断面の屈折率の分布は、前記変換領域の入力端から出力端までの間の少なくとも一部の区間において、前記1組の導波路が形成される基板の表面に垂直な方向において非対称であり、
前記1組の導波路において、前記変換領域の入力端におけるTE0の奇モードの実効屈折率とTM0の偶モードの実効屈折率との大小関係、及び、前記変換領域の出力端におけるTE0の奇モードの実効屈折率とTM0の偶モードの実効屈折率との大小関係は、互いに逆であり、
前記第1のコアおよび前記第2のコアの構造は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化し、
前記第3のコアおよび前記第4のコアそれぞれの断面の屈折率の分布は、前記基板の表面に垂直な方向において対称であり、
前記第3のコアおよび前記第4のコアの構造は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化し、
前記出射領域の出力端において、前記第3のコアの断面積および前記第4のコアの断面積は互いに異なる
ことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
前記変換領域の入力端と出力端との間のいずれの位置においても、前記第1のコアが孤立していると仮定したときの前記第1のコアにおけるTM0モードの実効屈折率は、前記第2のコアが孤立していると仮定したときの前記第2のコアにおけるTE0モードの実効屈折率より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記第1のコアまたは前記第2のコアのうちの少なくとも一方は、前記変換領域の入力端から出力端までの間の少なくとも一部の区間においてスラブを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記第1のコアおよび前記第2のコアの高さは互いに同じであり、
前記第1のコアおよび前記第2のコアの幅は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化する
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記第3のコアおよび前記第4のコアの断面の形状はそれぞれ矩形である
ことを特徴とする請求項1に記載の光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波変換機能を備える光導波路素子に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信システムの容量を増加させるために、偏波多重方式が普及してきている。偏波多重方式は、互いに直交する1組の偏波成分を用いて独立した情報を伝送できる。
【0003】
コヒーレント光通信において使用される光送受信機は、一般に、導波路が基板上に形成された光導波路素子を備える。ここで、基板上に形成される導波路においては、互いに直交するTE-likeモード(以下、TEモード)およびTM-likeモード(以下、TMモード)が存在し得る。TEモードは、電界の主成分が基板に平行である。TMモードは、電界の主成分が基板に垂直である。
【0004】
ただし、TEモードおよびTMモードは、導波路のコアへの光の閉じ込めおよび実効屈折率などの特性が互いに異なる。このため、例えば、TMモード光は、TEモード光に変換されて処理されることがある。また、処理されたTEモード光は、TMモード光に変換されて送信されることがある。よって、偏波多重光信号を処理する光回路は、多くのケースにおいて、TEモードとTMモードとの間の偏波変換を行う光導波路素子を備える。
【0005】
偏波変換を行う光導波路素子は、例えば、互いに近接し且つ互いに平行に形成された1組の導波路を備える。1組の導波路は、互いに直交する偏波成分(例えば、TE0およびTM0)が相互作用するように設計される。また、例えば、TM0モード光が伝搬する導波路の断面の形状を非対称にする。そうすると、TM0モード光の偏波面が傾き、エバネッセンス光が他方の導波路に遷移する。この結果、他方の導波路にTE0モード光が発生する。なお、偏波変換を行う光導波路素子は、たとえば、特許文献1~2に記載されている。また、関連する技術が特許文献3~4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許9523820
【文献】特許第6320573号
【文献】WO2016/052344
【文献】WO2016/117532
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、入力光の偏波面を傾けることでTM0モードとTE0モードとの間で偏波変換を行う光導波路素子が知られている。ところが、一般に、エバネッセント光の電界は弱く、一方の導波路のTM0モードと他方の導波路のTE0モードとの間の相互作用は弱い。すなわち、変換効率が低い。このため、一方の偏波から他方の偏波に十分にエネルギーを遷すためには、1組の導波路の長さを長くする必要がある。この結果、偏波変換を行う光導波路素子のサイズが大きくなってしまう。
【0008】
本発明の1つの側面に係わる目的は、偏波変換機能を有する光導波路素子のサイズを小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様に係わる光導波路素子は、互いに平行に形成された1組の導波路を備える。前記1組の導波路のうちの一方の導波路は、変換領域に形成される第1のコアおよび出射領域に形成される第3のコアを含む。前記1組の導波路のうちの他方の導波路は、前記変換領域に形成される第2のコアおよび前記出射領域に形成される第4のコアを含む。前記変換領域の入力端において、前記第1のコアの断面積および前記第2のコアの断面積は互いに異なる。前記第1のコアまたは前記第2のコアのうちの少なくとも一方の断面の屈折率の分布は、前記変換領域の入力端から出力端までの間の少なくとも一部の区間において、前記1組の導波路が形成される基板の表面に垂直な方向において非対称である。前記変換領域の入力端におけるTE0の奇モードの実効屈折率とTM0の偶モードの実効屈折率との大小関係、及び、前記変換領域の出力端におけるTE0の奇モードの実効屈折率とTM0の偶モードの実効屈折率との大小関係は、互いに逆である。前記第1のコアおよび前記第2のコアの構造は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化する。前記第3のコアおよび前記第4のコアそれぞれの断面の屈折率の分布は、前記基板の表面に垂直な方向において対称である。前記第3のコアおよび前記第4のコアの構造は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化する。前記出射領域の出力端において、前記第3のコアの断面積および前記第4のコアの断面積は互いに異なる。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、偏波変換機能を有する光導波路素子のサイズを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】光導波路素子による偏波変換機能を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係わる光導波路素子の一例を示す図である。
【
図3】変換部にTE0モード光が入力されるときのモード変換の一例を示す図である。
【
図4】コアの形状およびTE0/TM0の実効屈折率の一例を示す図である。
【
図5】TM0モード光の抽出について説明する図である。
【
図6】損失および偏波消光比についてのシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態の第1のバリエーションを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態の第2のバリエーションを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態の第3のバリエーションを示す図である。
【
図10】本発明の実施形態の第4のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、光導波路素子による偏波変換機能を示す。本発明の実施形態に係わる光導波路素子は、TE(Transverse Electric)モードとTM(Transverse Magnetic)モードとの間の変換を行う。すなわち、本発明の実施形態に係わる光導波路素子は、偏波変換素子として動作する。なお、TEモードの電界の主成分は、光の進行方向に垂直な断面において、光導波路素子が形成される基板に水平である。TMモードの電界の主成分は、光の進行方向に垂直な断面において、光導波路素子が形成される基板に垂直である。
【0013】
光導波路素子101は、TEモードをTMモードに変換する。すなわち、光導波路素子101のポートP1にTEモード光が与えられると、ポートP2からTMモード光が出力される。また、光導波路素子102は、TMモードをTEモードに変換する。すなわち、光導波路素子102のポートP1にTMモード光が与えられると、ポートP2からTEモード光が出力される。ただし、光導波路素子は、可逆動作が可能である。すなわち、光導波路素子101のポートP2にTMモード光が与えられると、ポートP1からTEモード光が出力される。光導波路素子102のポートP2にTEモード光が与えられると、ポートP1からTMモード光が出力される。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係わる光導波路素子の一例を示す。この実施例では、光導波路素子1は、TE0モードをTM0モードに変換する。ただし、光導波路素子1は、可逆動作が可能である。すなわち、光導波路素子1は、TM0モードをTE0モードに変換することもできる。なお、光導波路素子1は、例えば、シリコンフォトニクス技術によりシリコン基板上に形成される。
【0015】
光導波路素子1は、
図2(a)に示すように、互いに隣接し且つ互いに平行に形成された1組の導波路WG1、WG2を備える。各導波路WG1、WG2は、コアおよびクラッドから構成される。コアの屈折率は、クラッドの屈折率より大きい。コアは、例えばSiで形成され、クラッドは、例えばSiO2で形成される。尚、以下の記載では、導波路のコアを「導波路」と呼ぶことがある。例えば、
図2(a)に示すWG1、WG2は、各導波路のコアを示している。
【0016】
光導波路素子1は、変換部(変換領域)2および出射部(出射領域)3を備える。変換部2は、入力光の偏波モードを変換する。また、出射部3は、変換部2において偏波モードが変換された光を抽出する。
【0017】
導波路WG1は、変換部2に属するコア11および出射部3に属するコア13から構成される。また、導波路WG2は、変換部2に属するコア12および出射部3に属するコア14から構成される。すなわち、変換部2においては、互いに隣接し且つ互いに平行に形成されたコア11およびコア12が設けられる。また、出射部3においては、互いに隣接し且つ互いに平行に形成されたコア13およびコア14が設けられる。なお、コア11およびコア13は連続的に形成されており、コア12およびコア14は連続的に形成されている。また、コア11およびコア12を1つの導波路コアとみなすときは、その導波路コアを「コア10」と呼ぶことがある。
【0018】
図2(b)は、
図2(a)に示す光導波路素子1の断面を示す。なお、導波路は、上述したように、コアおよびクラッドから構成される。例えば、
図2(b)に示すように、コア11~14は、それぞれ、下側クラッド21および上側クラッド22により囲まれている。
【0019】
変換部2の入力端(即ち、A-A断面、コア11、12の入力端、導波路WG1、WG2の入力端)においては、コア11およびコア12の断面の形状はそれぞれ矩形である。なお、「矩形」は、巨視的に矩形として見られる形状を含む。よって、「矩形」は、例えば、製造によって、角に丸みが生じる形状および台形形状も含むものとする。コア11およびコア12の高さH1は、互いに同じである。他方、コア11およびコア12の幅は、互いに異なる。この実施例では、コア12の幅は、コア11の幅より狭い。すなわち、コア12の断面積は、コア11の断面積より小さい。なお、コア11~14の高さは、全領域において一定であるものとする。
【0020】
変換部2の出力端(即ち、C-C断面、コア11、12の出力端)においても、コア11およびコア12の断面の形状はそれぞれ矩形である。ただし、この位置においては、コア11の幅およびコア12の幅は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。この実施例では、コア11の幅およびコア12の幅は互いに同じである。
【0021】
変換部2の入力端と出力端との間の領域(即ち、B-B断面、コア11、12の入力端と出力端との間の領域)においては、コア11、12は、それぞれスラブを有する。具体的には、コア11はスラブ11Sを備え、コア12はスラブ12Sを備える。スラブ11S、12Sは、コア11、12と同じ材料で形成される。ただし、スラブ11S、12Sの高さH2は、H1より低い。
【0022】
このように、変換部2の入力端と出力端との間の領域においては、コア11、12は、それぞれスラブを有する。このため、各コア11、12の断面の形状は、光導波路素子1が形成される基板の表面に垂直な方向において非対称(すなわち、上下非対称)である。この結果、各コア11、12の任意の断面における屈折率の分布は、光導波路素子1が形成される基板の表面に垂直な方向において非対称(すなわち、上下非対称)である。
【0023】
なお、
図2に示す形状は1つの実施例であり、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、光導波路素子1は、コア11またはコア12のいずれか一方がスラブを有する構成であってもよい。また、コア11、12は、変換部2の入力端と出力端との間の全区間にわたってスラブを有する必要はなく、変換部2の入力端と出力端との間の一部の区間にスラブを有する構成であってもよい。ただし、各コア11、12の断面形状は、入力端と出力端との間で連続的に変化することが好ましい。よって、各スラブ11S、12Sの幅は、入力端と出力端との間で連続的に変化することが好ましい。
図2に示す例では、各スラブ11S、12Sの幅は、入力端から出力端に向って、ゼロから徐々に広くなってゆき、その後、徐々に狭くなってゆく。
【0024】
出射部3の出力端(即ち、D-D断面、コア13、14の出力端、導波路WG1、WG2の出力端)においては、コア13およびコア14の断面の形状はそれぞれ矩形である。ただし、コア13およびコア14の幅は、互いに異なる。この実施例では、コア13の幅は、コア14の幅より広い。すなわち、コア13の断面積は、コア14の断面積より大きい。なお、コア13の幅は、出力端に向って徐々に広くなっていく。すなわち、コア13の断面積は、出力端に向って徐々に大きくなっていく。コア14の幅は一定である。
【0025】
上記構成の光導波路素子1には、TE0モード光が入力される。TE0モード光は、変換部2において、TE0の奇モードを介してTM0の偶モードに変換される。そして、出射部3において、TM0モード光が抽出される。
【0026】
なお、TE0は、孤立した導波路(例えば、光導波路素子1の入力側に接続する外部導波路)を導波するTEモードのうちで、最も実効屈折率が高いモードを表す。TE0の偶モードは、並列する2つの導波路(ここでは、コア11、12)を導波するTEモードのうちで、最も実効屈折率が高いモードを表す。TE0の奇モードは、並列する2つの導波路(ここでは、コア11、12)を導波するTEモードのうちで、2番目に実効屈折率が高いモードを表す。TM0は、孤立した導波路(例えば、光導波路素子1の出力側に接続する外部導波路)を導波するTMモードのうちで、最も実効屈折率が高いモードを表す。TM0の偶モードは、並列する2つの導波路(ここでは、コア11、12)を導波するTMモードのうちで、最も実効屈折率が高いモードを表す。
【0027】
上記構成の光導波路素子1は、下記の要件(1)~(5)を満足するように設計することが好ましい。
【0028】
(1)コア11が存在しないと仮定したときのコア12の入力端におけるTE0モードの実効屈折率は、コア12が存在しないと仮定したときのコア11の入力端におけるTE0モードの実効屈折率より小さい。ただし、コア11が存在しないと仮定したときのコア12の入力端におけるTE0モードの実効屈折率は、コア12が存在しないと仮定したときのコア11の入力端におけるTE0モードの実効屈折率より大きくなるような構成でも良い。この場合、偏波変換の機能を得るためには、TE0をコア11に入力する。なお、「コア11が存在しない」は「コア12が孤立」を意味し、「コア12が存在しない」は「コア11が孤立」を意味する。また、「コア11が存在しない」は、コア11が形成されている領域がすべてクラッド22と同じ屈折率であると仮定した状態を意味し、「コア12が存在しない」は、コア12が形成されている領域がすべてクラッド22と同じ屈折率であると仮定した状態を意味する。
【0029】
(2)コア11、12がそれぞれ孤立したコアであると仮定したときに、変換部2の入力端と出力端との間に任意の断面において、一方のコアを導波するTE0モードの実効屈折率は、他方のコアを導波するTM0モードの実効屈折率より常に大きい。
【0030】
(3)変換部2の入力端におけるTE0の奇モードとTM0の偶モードとの大小関係、及び、変換部2の出力端におけるTE0の奇モードとTM0の偶モードとの大小関係は、互いに逆である。
【0031】
(4)変換部2において、TE0の奇モードとTM0の偶モードとが相互作用する相互作用領域において、光の伝播方向に対して垂直な断面における屈折率分布が上下非対称である。
【0032】
(5)出射部3の出力端において、一方のコア(例えば、コア13)の断面積は、他方のコア(例えば、コア14)の断面積より大きい。
【0033】
要件(1)は、変換部2の入力端(即ち、導波路WG1、WG2の入力端)において、コア11の断面積よりコア12の断面積を小さくすることで実現される。実施例では、コア11の入力端の幅よりコア12の入力端の幅を狭くすることで、要件(1)が満たされる。導波モードが同じである場合、コアの断面積を大きくすると、そのコア内に光の電界が強く閉じ込められるので、実効屈折率が大きくなる。反対に、コアの断面積を小さくすると、実効屈折率が小さくなる。
【0034】
図3は、変換部2にTE0モード光が入力されるときのモード変換の一例を示す。変換部2にTE0モード光が入力するとき、入力端におけるコア11、12の実効屈折率が互いに一致するケースでは、入力光の電界は、2つのコアにまたがって分布する割合が大きくなる。一方、入力端におけるコア11、12の実効屈折率が互いに異なるケースでは、入力光の電界は、一方のコアに局在しやすくなる。このとき、次数の低いモード(即ち、TE0の偶モード)は、コア11、12のうちで実効屈折率の大きい方のコアに局在しやすい。また、次数の高いモード(即ち、TE0の奇モード)は、コア11、12のうちで実効屈折率の小さい方のコアに局在しやすい。ここで、奇モードの実効屈折率は、常に、偶モードの実効屈折率より小さくなる。
【0035】
よって、要件(1)を満足するときに、コア11にTE0モード光が入力されると、
図3(a)に示すように、コア11にTE0の偶モードが局在する。すなわち、入力光の導波モードがTE0からTE0モードの偶モードに変換される。そして、コア11を介してTE0の偶モードが導波する。また、コア12にTE0モード光が入力されると、
図3(b)に示すように、コア12にTE0の奇モードが局在する。すなわち、入力光の導波モードがTE0モードからTE0の奇モードに変換される。そして、コア12を介してTE0の奇数モードが導波する。なお、TE0の奇数モードは、TE1モードと実質的に等価である。
【0036】
要件(2)は、コア11およびコア12の形状を適切に設計することで実現可能である。なお、各導波モードの実効屈折率は、コアの断面の形状(特に、コアの断面の面積)に依存する。
【0037】
図4は、コアの形状およびTE0/TM0の実効屈折率の一例を示す。この例では、光導波路素子1は、
図4(a)に示すサイズで形成される。すなわち、変換部2の入力端におけるコア11およびコア12の幅は、それぞれ500nmおよび400nmである。変換部2の出力端におけるコア11およびコア12の幅は、それぞれ250nmおよび250nmである。変換部2の入力端と出力端との中間点におけるコア11およびコア12の幅は、それぞれ300nmおよび250nmである。このように、コア11の幅は、入力端から中間点に向ってテーパ状に狭くなってゆき、さらに、中間点から出力端に向ってもテーパ状に狭くなってゆく。コア12の幅は、入力端から中間点に向ってテーパ状に狭くなってゆくが、中間点から出力端に向っては一定である。なお、コア11、12間の間隔は、200nmである。
【0038】
出射部3の出力端におけるコア13およびコア14の幅は、それぞれ500nmおよび250nmである。このように、コア13の幅は、出射部3の入力端から出力端に向ってもテーパ状に広くなってゆく。コア14の幅は一定である。なお、コア13、14間の間隔は、200nmである。コア11~14の高さH1は、220nmである。スラブ11Sおよびスラブ12Sの高さH2は、105nmである。
【0039】
図4(b)は、コア11およびコア12におけるTE0およびTM0の実効屈折率を示す。横軸は、コア11、12の入力端と出力端との間の位置を表し、正規化されている。なお、コア11およびコア12は、それぞれ孤立しているものとする。即ち、TE0@11は、コア11が孤立していると仮定したときのコア11におけるTE0モードの実効屈折率を表し、TE0@12は、コア12が孤立していると仮定したときのコア12におけるTE0モードの実効屈折率を表す。また、TM0@11は、コア11が孤立していると仮定したときのコア11におけるTM0モードの実効屈折率を表し、TM0@12は、コア12が孤立していると仮定したときのコア12におけるTM0モードの実効屈折率を表す。
【0040】
このように、任意の断面において、TE0@11は、常にTM0@12より大きい。また、任意の断面において、TE0@12は、常にTM0@11より大きい。
【0041】
要件(3)は、コア11およびコア12の形状を適切に設計することで実現することができる。なお、各導波モードの実効屈折率は、コアの断面の形状(特に、コアの断面積)に依存する。よって、シミュレーション等を利用してコア11およびコア12の幅を適切に設計することで、要件(3)を満足する光導波路素子1を設計することが可能である。また、要件(4)は、スラブ11Sおよびスラブ12Sを形成することで実現される。そして、要件(3)および要件(4)を満足することにより、TE0の奇モードからTM0の偶モードへの効率の良い変換が実現される。この理由は、例えば、特許第6320573号に記載されている。
【0042】
なお、要件(4)を満足しないとき(即ち、スラブ11Sおよびスラブ12Sが形成されていない構成)は、変換部2において、光の伝播方向に対して垂直な断面における屈折率の分布が上下対称になる。この場合、TE0の奇モードの電界の主成分およびTM0の偶モードの電界の主成分は互いに直交するので、要件(3)を満足する場合であっても、TE0の奇モードとTM0の偶モードとの間で相互作用が発生しにくい。そこで、スラブ11Sおよびスラブ12Sを設けることにより、要件(4)を満足する構成を実現する。
【0043】
これに対して、要件(3)および要件(4)を満足するケースでは、TE0の奇モードとTM0の偶モードとの相互作用領域において、光の伝播方向に対して垂直な断面における屈折率の分布が上下非対称である。ここで、要件(4)は、上述したように、スラブ11Sおよびスラブ12Sを形成することで実現される。すなわち、相互作用領域にスラブを形成すれば、要件(4)は満足する。ただし、光の伝搬方向においてコアの形状が不連続になると、散乱等に起因して通信品質が劣化する。よって、
図2(a)に示すように、光導波路素子1においては、スラブ11Sおよびスラブ12Sは、幅が連続的に変化するように形成される。
【0044】
コア11、12の屈折率の分布が上下非対称であるときは、各導波モードの電界の向きが傾く。この場合、TE0の奇モードの電界の主成分およびTM0の偶モードの電界の主成分は、互いに直交しなくなる。そうすると、TE0の奇モードとTM0の偶モードとの間の相互作用が強くなる。この結果、TE0の奇モードとTM0の偶モードとの間の変換効率が高くなり、変換部2の出力端にTM0の偶モードが現れる。
【0045】
要件(5)は、光導波路素子1の出力端において、一方のコアの幅を他方のコアの幅より広くすることで実現される。この実施例では、出力端において、コア13の幅がコア14の幅より広く形成されている。
【0046】
図5は、TM0モード光の抽出について説明する図である。なお、この実施例では、上述したように、変換部2においてTE0の奇モードがTM0の偶モードに変換される。よって、変換部2から出射部3にTM0の偶モード光が入力される。ただし、出射部3の入力端において、TM0の偶モードの電界は、コア13およびコア14にまたがって分布している。
【0047】
コア13の幅は、出力端に向って連続的に広くなっている。他方、コア14の幅は一定である。よって、出力端において、コア13の断面積は、コア14の断面積より大きい。ここで、互いに平行に形成された1組のコアを介して光が伝搬する場合、断面積が大きい方のコアに偶モードが局在する。したがって、光導波路素子1の出力端においては、TM0モードの電界はコア13に局在する。
【0048】
なお、コアの断面の形状が上下/左右非対称である場合、TM0の偶モードとTE0の奇モードとの間の変換が生じ得る。よって、コア13、14の断面の形状はそれぞれ矩形である。即ち、コア13、14の断面の形状は、上下/左右対称である。したがって、出射部3において、TM0の偶モードからTE0の奇モードへの変換が回避または抑制される。
【0049】
このように、本発明の実施形態に係わる光導波路素子1は、導波路WG1(コア11、13)および導波路WG2(コア12、14)を備える。そして、孤立導波路からコア12にTE0モード光が入力されると、変換部2においてTE0の奇モードが導波する。また、TE0の奇モードは、変換部2においてTM0の偶モードに変換される。さらに、光導波路素子1の出力端において、コア13にTE0モード光の電界が局在する。したがって、コア13の出力端に孤立導波路を結合すれば、TE0モード光を抽出できる。すなわち、光導波路素子1において、TE0モード光がTM0モード光に変換される。
【0050】
なお、従来技術(例えば、特許文献1:米国特許9523820)においてもTE0モードとTM0モードとの間の変換は可能である。ただし、米国特許9523820においては、テーパ状の方向性結合器を用いてTE0モードとTM0モードとの間の変換が行われる。ここで、テーパ状の方向性結合器では、2つのコアがそれぞれ孤立していると仮定したときのTE0の実効屈折率とTM0の実効屈折率とが、入力端と出力端との間のいずれかの点で交差する。この場合、この交差点の近傍でTE0モードとTM0モードとが相互作用し、モード変換が実現される。ところが、TE0モードとTM0モードとの間の相互作用は弱い。このため、この構成で十分な相互作用を得るためには、2つのコアが並列に形成される区間を長くする必要があり、光導波路素子の小型化が困難である。
【0051】
これに対して、本発明の実施形態に係わる光導波路素子1においては、テーパ状の方向性結合器ではなく、並列に形成された2つのコアを1つの断面とみなしたときのTE0の奇モード(即ち、TE1)とTM0の偶モード(即ち、TM0)との間の変換を行っている。ここで、一般に、TE0モードとTM0モードとの変換より、TE1モードとTM0モードとの変換の方が、効率が高い。したがって、光導波路素子1は、2つのコアが並列に形成される区間を短くでき、光導波路素子の小型化が可能となる。なお、光導波路素子1は、上述した要件(2)を満たすことが好ましい。そして、要件(2)を満たす構成では、TE0の実効屈折率とTM0の実効屈折率とが一致しないので、TE0とTM0との間での直接的な変換は生じない。
【0052】
図6は、損失および偏波消光比についてのシミュレーション結果を示す。このシミュレーションでは、
図2に示す構成において、変換部2の長さ(即ち、A-A断面からC-C断面までの長さ)が60μmであり、出射部3の長さ(即ち、C-C断面からD-D断面までの長さ)が30μmである。そして、TE0モード光からTM0モード光への変換における損失および偏波消光比がFDTDにより計算されている。
【0053】
図6(a)に示すように、CバンドおよびLバンドを含む110nmの波長範囲において損失が0.21dB以下である。また、
図6(b)に示すように、上記波長範囲において25dB以上の偏波消光比が得られる。このように、短いデバイス長で高効率な偏波変換が実現される。
【0054】
また、光導波路素子1においては、
図2(a)に示すように、光の伝搬方向においてコアの断面形状は連続的に変化する。ここで、コアが不連続点を有すると、光の反射に起因して損失が大きくなる。また、反射が大きい構成では、レーザ光源の発振が不安定になることがある。したがって、本発明の実施形態によれば、反射が低減され、損失が小さくなる。
【0055】
なお、
図2に示す実施例においては、1組の導波路のうちの一方の導波路(WG2)にTE0モード光を入力したときに、他方の導波路(WG1)からTM0モード光が出力されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、一方の導波路(たとえば、WG2)にTE0モード光を入力したときに、同じ導波路(即ち、WG2)からTM0モード光が出力される構成であってもよい。たとえば、光導波路素子1の出力端(
図2では、D-D断面)において、コア13の断面積よりもコア14の断面積の方が大きければ、TM0の偶モードはコア14に局在する。この場合、コア14の出力端に孤立導波路を結合すれば、TM0モード光を得ることができる。
【0056】
また、
図2に示す実施例では、各コア11、12に対してそれぞれにスラブ11S、12Sが形成されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、コア11またはコア12のいずれか一方のみにスラブが形成される構成であってもよい。加えて、コア11、12は、リブの両側にスラブを有する構成であってもよい。
【0057】
<バリエーション>
図7は、本発明の実施形態の第1のバリエーションを示す。第1のバリエーションにおいては、光導波路素子1は、偏波多重器として使用される。
【0058】
図7に示す例では、コア11およびコア12に互いに独立したTE0モード光が入力される。コア11およびコア12に入力されるTE0モード光は、それぞれ「TE0_A」および「TE0_B」と表記されている。ここで、光導波路素子1の入力端において、コア11の断面積はコア12の断面積より大きい。よって、コア11を介してTE0_Aの偶モードが導波し、コア12を介してTE0_Bの奇モードが導波する。
【0059】
TE0_Bの奇モードは、上述したように、TM0の偶モードに変換される。そして、コア13を介してTM0モード光(TM0_B)が出力される。他方、TE0の偶モードは、変換部2の全区間にわたって、他の導波モード(TE0の奇モード、TM0の偶モード)と実効屈折率が一致することはない。すなわち、TE0の偶モードと他の導波モードとの間の相互作用が発生することはない。よって、コア12を伝搬するTE0_Aは、他のモードに変換されることなく、コア13を介して出力される。この結果、TE0モードおよびTM0モードの多重化が実現される。
【0060】
図8は、本発明の実施形態の第2のバリエーションを示す。第2のバリエーションにおいては、光導波路素子1は、離間部31および接近部32を備える。
【0061】
離間部31は、導波路WG1、WG2の出力側に設けられ、導波路31Aおよび導波路31Bを備える。導波路31Aは、導波路WG1に結合する。導波路31Bは、導波路WG2に結合する。そして、導波路31Aと導波路31Bとの間の間隔は、導波路WG1、WG2の出力端から離れるにつれて徐々に広がっていく。この例では、導波路31Aは直線導波路であり、導波路31Bは曲げ導波路である。曲げ導波路は、円弧、Sベンド、またはクロソイド曲線などの緩和曲線で形成される。
【0062】
上記構成において、導波路WG2から出力される光は、導波路31Bの先端部で反射する。このとき、雑音が発生し得る。ただし、導波路31Bの先端部は、TM0モード光が伝搬する導波路31Aから離れている。よって、光導波路素子1から出力されるTM0モード光に対する雑音の影響は緩和される。
【0063】
接近部32は、導波路WG1、WG2の入力側に設けられ、導波路32Aおよび導波路32Bを備える。導波路32Aは、導波路WG1に結合する。導波路32Bは、導波路WG2に結合する。そして、導波路32Aと導波路32Bとの間の間隔は、導波路WG1、WG2の入力端から離れるにつれて徐々に広がっていく。この例では、導波路32Aは曲げ導波路であり、導波路32Bは直線導波路である。
【0064】
なお、第2のバリエーションは、この構成に限定されるものではない。例えば、光導波路素子1は、離間部31または接近部32のいずれか一方を備える構成であってもよい。また、導波路31Aおよび導波路31Bの双方が曲げ導波路であってもよいし、導波路32Aおよび導波路32Bの双方が曲げ導波路であってもよい。
【0065】
図9は、本発明の実施形態の第3のバリエーションを示す。第3のバリエーションにおいては、光導波路素子1は、外部導波路との間に接続部を備える。この実施例では、導波路WG2にTE0モード光が入力され、導波路WG1を介してTM0モード光が出力されるものとする。
【0066】
接続部33は、TM0モード光が出力される導波路WG1と外部導波路との間に設けられる。外部導波路は、この実施例では、光の閉じ込めが強いチャネル導波路である。この場合、接続部33は、光導波路33Aにより実現される。また、この外部導波路の幅は、出力端における導波路WG1の幅より狭い。したがって、光導波路33Aの断面形状は、導波路WG1の出力端と外部導波路との間で連続的にテーパ状に変化する。
【0067】
接続部34は、外部導波路とTE0モード光が入力される導波路WG2との間に設けられる。この外部導波路もチャネル導波路である。そして、接続部34は、光導波路34Aにより実現される。また、この外部導波路の幅は、入力端における導波路WG2の幅より狭い。したがって、光導波路34Aの形状は、外部導波路と導波路WG2の入力端との間で連続的にテーパ状に変化する。
【0068】
このように、第3のバリエーションによれば、接続部33および/または接続部34を設けることにより、導波路WG1、WG2と外部導波路との間で導波路の不連続点を無くすことができる。この結果、反射等に起因する損失が抑制される。
【0069】
図10は、本発明の実施形態の第4のバリエーションを示す。第4のバリエーションにおいては、光導波路素子1は、不要な光を除去または抑制するための光終端器41を備える。
【0070】
光導波路素子1においては、ポートP1を介して導波路WG2にTE0モード光を入力すると、TE0モードがTM0モードに変換され、ポートP2を介してTM0モード光が出力される。ただし、入力光成分の一部は、残留成分として導波路WG1の出力端(すなわち、ポートP3)を介して出力される。ここで、光終端器41を設けない構成では、この残留成分は、導波路31Bの端部で反射して導波路WG2に戻ってくる。そして、戻ってきた残留成分は、光導波路素子1の特性に影響を与える。
【0071】
そこで、光導波路素子1は、
図10(a)に示すように、導波路31Bの先端に光終端器41を備えてもよい。この構成によれば、ポートP3を介して出力される残留成分は、光終端器41により終端されるので、反射が抑制される。したがって、光終端器41を設けることにより光導波路素子1の特性が改善する。なお、ポートP4を介して光が入力されないときは、ポートP4に対しても光終端器を設けることが好ましい。
【0072】
光終端器41は、例えば、
図10(b)に示すように、導波路31Bの先端をテーパ構造にすることで実現される。この場合、導波路31Bのコアの幅が徐々に狭くなるように形成される。また、光終端器41は、
図10(c)に示すように、導波路31Bの先端に近い部分に、光を吸収する物質を高濃度にドープすることで実現してもよい。例えば、導波路31Bのコアに、光を吸収する物質がドープされる。光を吸収する物質は、特に限定されるものではなく、公知の材料を採用することができる。あるいは、光終端器41は、
図10(d)に示すように、導波路31Bの先端にフォトダイオード等の受光器を設けることで実現してもよい。この場合、導波路31Bの先端に到達する光は、電流に変換されるので、反射が抑制される。
【0073】
なお、上述の実施形態では、コアがSiで形成され、クラッドがSiO2で形成されるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、コアおよびクラッドがいずれもSiO2で形成されるPLCであってもよい。また、導波路WG1、WG2は、InP導波路であってもよいし、GaAs導波路であってもよい。あるいは、コアがSiまたはSiNで形成され、下部クラッドがSiO2で形成され、上部クラッドがSiO2または空気で実現される導波路であってもよい。
【0074】
ただし、Si導波路は、コアとクラッドとの間で屈折率の差が大きく、光の閉じ込めが強いので、曲率半径の小さいパターンであっても損失が小さい。よって、光回路の小型化が要求されるケースでは、Si導波路を使用する形態が好ましい。
【0075】
上述の実施例では、コアの幅を変えることでコアの断面積が調整されるが、コアの高さを変えることでコアの断面積を調整してもよいし、幅および高さの双方を変えることでコアの断面積を調整してもよい。ただし、リソグラフィおよびエッチングにより導波路のコアを形成する場合は、マスクの形状によりコアの幅が決定される。したがって、製造工程を複雑にしないためには、コアの幅を変えることでコアの断面積を調整する方法が好ましい。
【0076】
(付記1)
互いに平行に形成された1組の導波路を備える光導波路素子であって、
前記1組の導波路のうちの一方の導波路は、変換領域に形成される第1のコアおよび出射領域に形成される第3のコアを含み、
前記1組の導波路のうちの他方の導波路は、前記変換領域に形成される第2のコアおよび前記出射領域に形成される第4のコアを含み、
前記変換領域の入力端において、前記第1のコアの断面積および前記第2のコアの断面積は互いに異なり、
前記第1のコアまたは前記第2のコアのうちの少なくとも一方の断面の屈折率の分布は、前記変換領域の入力端から出力端までの間の少なくとも一部の区間において、前記1組の導波路が形成される基板の表面に垂直な方向において非対称であり、
前記変換領域の入力端におけるTE0の奇モードの実効屈折率とTM0の偶モードの実効屈折率との大小関係、及び、前記変換領域の出力端におけるTE0の奇モードの実効屈折率とTM0の偶モードの実効屈折率との大小関係は、互いに逆であり、
前記第1のコアおよび前記第2のコアの構造は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化し、
前記第3のコアおよび前記第4のコアそれぞれの断面の屈折率の分布は、前記基板の表面に垂直な方向において対称であり、
前記第3のコアおよび前記第4のコアの構造は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化し、
前記出射領域の出力端において、前記第3のコアの断面積および前記第4のコアの断面積は互いに異なる
ことを特徴とする光導波路素子。
(付記2)
前記変換領域の入力端と出力端との間のいずれの位置においても、前記第1のコアが孤立していると仮定したときの前記第1のコアにおけるTM0モードの実効屈折率は、前記第2のコアが孤立していると仮定したときの前記第2のコアにおけるTE0モードの実効屈折率より小さい
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記3)
前記第1のコアまたは前記第2のコアのうちの少なくとも一方は、前記変換領域の入力端から出力端までの間の少なくとも一部の区間においてスラブを有する
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記4)
前記第1のコアおよび前記第2のコアの高さは互いに同じであり、
前記第1のコアおよび前記第2のコアの幅は、それぞれ、光の進行方向に対して連続的に変化する
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記5)
前記第3のコアおよび前記第4のコアの断面の形状はそれぞれ矩形である
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記6)
前記第3のコアの出力端に結合する第1の導波路および前記第4のコアの出力端に結合する第2の導波路を含む離間部をさらに備え、
前記第1の導波路と前記第2の導波路との間の間隔は、前記第3のコアおよび前記第4のコアの出力端から離れるにつれて広がっていく
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記7)
前記第1のコアの入力端に結合する第3の導波路および前記第2のコアの入力端に結合する第4の導波路を含む接近部をさらに備え、
前記第3の導波路と前記第4の導波路との間の間隔は、前記第1のコアおよび前記第2のコアの入力端から離れるにつれて広がっていく
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記8)
前記第3のコアまたは前記第4のコアのうちで断面積が大きい方のコアの出力端に結合する第5の導波路を含む接続部をさらに備え、
前記第5の導波路の幅は、光の伝搬方向に対して連続的にテーパ状に変化する
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記9)
前記第1のコアまたは前記第2のコアのうちで断面積が小さい方のコアの入力端に結合する第6の導波路を含む接続部をさらに備え、
前記第6の導波路の幅は、光の伝搬方向に対して連続的にテーパ状に変化する
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
(付記10)
前記第3のコアまたは前記第4のコアのうちで断面積が小さい方のコアの出力端に光終端器を備える
ことを特徴とする付記1に記載の光導波路素子。
【符号の説明】
【0077】
1 光導波路素子
2 変換部(変換領域)
3 出射部(出射領域)
11~14 コア
11S、12S スラブ
21、22 クラッド
31 離間部
32 接近部
33、34 接続部
41 光終端器