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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】画像形成装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240717BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20240717BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240717BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20240717BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/14
G03G21/00 510
G03G15/01 113
G03G15/01 Y
B41J29/38 202
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020217931
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102896
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】中島 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】古川 利郎
(72)【発明者】
【氏名】入山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】京谷 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】岸本 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和英
(72)【発明者】
【氏名】坂口 新太郎
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-071596(JP,A)
【文献】特開2020-003637(JP,A)
【文献】特開2011-237850(JP,A)
【文献】特開2020-003597(JP,A)
【文献】特開2014-137498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/01
G03G 15/08
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、
前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、
前記ベルト上の現像剤像の濃度を読み取るセンサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上に形成し、前記センサによって読み取られた前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを設定する現像バイアス補正処理と、
前記印刷用の現像バイアスを用いて、複数の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成し、前記センサによって読み取られた前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、入力階調値と前記感光体を露光するための露光データの露光面積率とを対応させるガンマデータを設定するガンマ補正処理と、
補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、
(i)現像剤像の濃度の変化量に対する、前記現像ローラに印加する現像バイアスの変化量を示す変化率、及び、
(ii)前記補正前のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第1濃度と、補正後のガンマデータを適用した場合の前記第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第2濃度との差分に応じて、
前記補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷するための臨時現像バイアスを設定する臨時バイアス設定処理と、を実行する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記臨時バイアス設定処理において、
前記印刷用の現像バイアス:Vb
前記第1濃度:Dens_Old
前記第2濃度:Dens_New
前記変化率:Y
としたとき、
前記臨時現像バイアスVbxを、
Vbx=(Dens_Old-Dens_New)×Y+Vb
の計算式によって算出する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記臨時バイアス設定処理において、前記変化率を、前記現像バイアス補正処理において前記第1露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上に形成したときに用いた複数のテスト用の現像バイアスと、前記複数のテスト用の現像バイアスのそれぞれに対応する現像剤像の濃度とに基づいて算出する、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記臨時バイアス設定処理において、前記変化率の値を、前記第2露光面積率に対応する値に変換して使用する、請求項1から3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、
前記制御部は、
前記臨時バイアス設定処理において、前記温度センサよって取得した雰囲気温度を含む環境パラメータに応じて、前記変化率の値を変換する、請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第2露光面積率を、前記第1露光面積率よりも小さい値に設定する、請求項1から5までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前回の現像バイアス補正処理を実行した後、所定枚数分の印刷処理を実行した場合に、前記現像バイアス補正処理及び前記ガンマ補正処理を実行する、請求項1から6までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、
前記制御部は、
前回の現像バイアス補正処理を実行した後、前記温度センサよって取得した雰囲気温度が所定以上変化した場合に、前記現像バイアス補正処理及び前記ガンマ補正処理を実行する、請求項1から7までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記現像剤を収容する収容部を備え、
前記制御部は、
前記収容部を交換した場合に、前記現像バイアス補正処理及び前記ガンマ補正処理を実行する、請求項1から8までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、を備えている画像形成装置の制御方法であって、
第1露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上に形成し、前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを設定する現像バイアス補正工程と、
前記印刷用の現像バイアスを用いて、複数の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成し、前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、入力階調値と前記感光体を露光するための露光データの露光面積率とを対応させるガンマデータを設定するガンマ補正工程と、
補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、
(i)現像剤像の濃度の変化量に対する、前記現像ローラに印加する現像バイアスの変化量を示す変化率、及び、
(ii)前記補正前のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第1濃度と、補正後のガンマデータを適用した場合の前記第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第2濃度との差分に応じて、
前記補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷するための臨時現像バイアスを設定する臨時バイアス設定工程と、を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタなどの画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力される画像データの階調値と出力される露光データの露光面積率との対応関係を示すガンマデータを補正するガンマ補正処理を行う画像形成装置が従来技術として知られている。特許文献1に開示されている技術では、濃度検出結果と画像データとの差異を段階的に補正するように前記対応関係を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-102182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、現像バイアス補正処理と、ガンマ補正処理とが実行され、現像バイアス補正処理後の現像バイアスが、ガンマ補正処理後のガンマデータの適用により二値化された露光データの印刷に用いられる。
【0005】
ここで、ガンマ補正処理が実行された場合に、ガンマ補正処理前のガンマデータの適用により二値化された露光データが画像形成装置のメモリ内に記憶されている状態を考える。この場合、特許文献1に開示されている技術では、現像バイアス補正後の現像バイアスが、ガンマ補正処理前のガンマデータが適用された露光データの印刷に用いられるため、適切な階調で印刷することができないという問題が生じる。
【0006】
本開示は、直近のガンマ補正処理前に生成された露光データを適切な階調で印刷可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、前記ベルト上の現像剤像の濃度を読み取るセンサと、制御部と、を備え、前記制御部は、第1露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上に形成し、前記センサによって読み取られた前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを設定する現像バイアス補正処理と、前記印刷用の現像バイアスを用いて、複数の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成し、前記センサによって読み取られた前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、入力階調値と前記感光体を露光するための露光データの露光面積率とを対応させるガンマデータを設定するガンマ補正処理と、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、(i)現像剤像の濃度の変化量に対する、前記現像ローラに印加する現像バイアスの変化量を示す変化率、及び、(ii)前記補正前のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第1濃度と、補正後のガンマデータを適用した場合の前記第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第2濃度との差分に応じて、前記補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷するための臨時現像バイアスを設定する臨時バイアス設定処理と、を実行する。
【0008】
前記の構成によれば、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、臨時バイアス設定処理により設定された現像バイアスを適用することができる。これにより、直近のガンマ補正処理前に生成された露光データを適切な階調で印刷することができる。
【0009】
前記制御部は、前記臨時バイアス設定処理において、前記印刷用の現像バイアスをVb、前記第1濃度をDens_Old、前記第2濃度をDens_New、前記変化率をYとしたとき、前記臨時現像バイアスVbxを、Vbx=(Dens_Old-Dens_New)×Y+Vbの計算式によって算出してもよい。
【0010】
前記の構成によれば、臨時現像バイアスの算出を定式化し、臨時現像バイアス設定処理を容易化することができる。
【0011】
前記制御部は、前記臨時バイアス設定処理において、前記変化率を、前記現像バイアス補正処理において前記第1露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上に形成したときに用いた複数のテスト用の現像バイアスと、前記複数のテスト用の現像バイアスのそれぞれに対応する現像剤像の濃度とに基づいて算出してもよい。
【0012】
前記の構成によれば、直近の画像形成装置の状態に対応する変化率を算出することができる。
【0013】
前記制御部は、前記臨時バイアス設定処理において、前記変化率の値を、前記第2露光面積率に対応する値に変換して使用してもよい。
【0014】
前記の構成によれば、変化率が複数の露光面積率に対して一定でない場合であっても、特定の露光面積率に対応する変化率を算出することができる。
【0015】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、前記制御部は、前記臨時バイアス設定処理において、前記温度センサよって取得した雰囲気温度を含む環境パラメータに応じて、前記変化率の値を変換してもよい。
【0016】
前記の構成によれば、例えば雰囲気温度が変化したことによる印刷濃度の変化に対して、露光データを印刷するための現像バイアスを好適に設定することができる。
【0017】
前記制御部は、前記第2露光面積率を、前記第1露光面積率よりも小さい値に設定してもよい。
【0018】
前記の構成によれば、例えば印刷濃度の変化が目立つ相対的に低い濃度付近において、より適切な現像バイアスを設定することができる。
【0019】
前記制御部は、前回の現像バイアス補正処理を実行した後、所定枚数分の印刷処理を実行した場合に、前記現像バイアス補正処理及び前記ガンマ補正処理を実行してもよい。
【0020】
前記の構成によれば、印刷を続けることによって現像剤の帯電量等の特性が変化したことに伴い印刷濃度が変化した場合に、現像バイアス補正処理及びガンマ補正処理を実行させることができる。
【0021】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、前記制御部は、前回の現像バイアス補正処理を実行した後、前記温度センサよって取得した雰囲気温度が所定以上変化した場合に、前記現像バイアス補正処理及び前記ガンマ補正処理を実行してもよい。
【0022】
前記の構成によれば、雰囲気温度が変化したことによって現像剤の帯電量等の特性が変化したことに伴い印刷濃度が変化した場合に、現像バイアス補正処理及びガンマ補正処理を実行させることができる。
【0023】
前記現像剤を収容する収容部を備え、前記制御部は、前記収容部を交換した場合に、前記現像バイアス補正処理及び前記ガンマ補正処理を実行してもよい。
【0024】
前記の構成によれば、特性の異なる現像剤を収容する収容部に交換されたことに伴い印刷濃度が変化した場合に、現像バイアス補正処理及びガンマ補正処理を実行させることができる。
【0025】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像形成装置の制御方法は、感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、を備えている画像形成装置の制御方法であって、第1露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上に形成し、前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを設定する現像バイアス補正工程と、前記印刷用の現像バイアスを用いて、複数の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成し、前記ベルト上の現像剤像の濃度に応じて、入力階調値と前記感光体を露光するための露光データの露光面積率とを対応させるガンマデータを設定するガンマ補正工程と、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、(i)現像剤像の濃度の変化量に対する、前記現像ローラに印加する現像バイアスの変化量を示す変化率、及び、(ii)前記補正前のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第1濃度と、補正後のガンマデータを適用した場合の前記第2露光面積率に対応する現像剤像の濃度である第2濃度との差分に応じて、前記補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷するための臨時現像バイアスを設定する臨時バイアス設定工程と、を含む。
【0026】
前記の構成によれば、本発明の一態様に係る画像形成装置と同様な効果を奏する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、直近のガンマ補正処理前に生成された露光データを適切な階調で印刷することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】カラープリンタの概略構成を示す図である。
図2】カラープリンタの機能的構成を示すブロック図である。
図3】カラープリンタの制御方法であって、現像バイアス補正処理、ガンマ補正処理及び印刷処理を実行する場合における処理の流れを示すフローチャートである。
図4】テスト用の現像バイアスと、各現像バイアスを用いてそれぞれ形成されたトナー像の濃度との対応関係、及びガンマ補正処理において適用された露光面積率と、各露光面積率が適用されてそれぞれ形成されたトナー像の濃度との対応関係を示す図である。
図5】雰囲気温度に応じて変化率Yの値を変換するための係数a, bの一例を示す表である。
図6】入力階調値と露光面積率との関係の一例を示す表である。
図7】入力階調値と露光面積率との関係の一例を示す表である。
図8】入力階調値と露光面積率との関係の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、同一の部材には同一の符号を付し、それらの名称や機能も同一である。したがって、それらの詳細な説明は繰り返さない。
【0030】
(カラープリンタ1の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の概略構成を示す図面である。図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、筐体10、シート供給部20、および画像形成部30を備えている。図1では、カラープリンタ1の方向について、図1における左側を「前」、右側を「後」とし、上側を「上」、下側を「下」とする。
【0031】
筐体10は、開口10Aと、開口10Aを開閉可能なカバー11とを備えている。カバー11は、上下方向において、露光ヘッド40の感光体51が配置された側とは反対側、具体的には、筐体10の上方に配置されている。カバー11は、筐体10の後方に設けられた回動軸11Aを中心として回動可能に支持されており、筐体10に形成された開口10Aを開閉する。カバー11は、開口10Aを閉鎖する閉鎖位置(図1の位置)と、開口10Aを開放する開放位置との間で回動可能となっている。カバーセンサ12は、カバー11が開かれたこと、および、閉じられたことを検出するセンサである。カバーセンサ12は、カバー11が開かれると、カバー11が閉じられるまでオン信号を出力する。
【0032】
また、筐体10には、図示しない吸気口の内側付近に、カラープリンタ1の雰囲気温度を取得する温度センサ92が設けられている。
【0033】
シート供給部20は、筐体10内の下部に設けられる。シート供給部20は、シートトレイ21およびピックアップローラ22を備えている。シートトレイ21は、シートPを収容している。ピックアップローラ22は、シートトレイ21からシートPを画像形成部30に供給する。シートトレイ21内のシートPは、ピックアップローラ22によって1枚ずつ分離されて画像形成部30に供給される。
【0034】
画像形成部30は、筐体10内において、シートトレイ21の上部に配置されている。画像形成部30は、複数の露光ヘッド40、複数の感光体カートリッジの一例としての複数のプロセスカートリッジPC、転写ユニット70、および定着ユニット80を備えている。図1では、露光ヘッド40およびプロセスカートリッジPCの数は、いずれも4つである。
【0035】
露光ヘッド40は、感光体51を露光する露光装置であり、カバー11から吊り下げられるようにカバー11に支持されている。露光ヘッド40は、カバー11を閉じた状態において、感光体51の上方に対向して配置されている。詳細には、露光ヘッド40は、カバー11の開閉によって、感光体51を露光する露光位置(図1の位置)と、当該露光位置よりも感光体51から離れた退避位置との間を移動可能となっている。
【0036】
複数のプロセスカートリッジPCは、カバー11とシートトレイ21との間において、前後方向に沿って並列配置されている。複数のプロセスカートリッジPCは、カバー11が開かれた状態において、開口10Aを通して筐体10に対して着脱可能となっている。プロセスカートリッジPCは、ドラムユニット50、および収容部の一例としての現像カートリッジ60とを備えている。
【0037】
ドラムユニット50は、感光体51、帯電器52、押圧バネ53、クリーニングローラ54、ドラムフレーム55、メモリ56、およびカートリッジ側端子57を備えている。感光体51は、現像剤の一例としてのトナーが担持される円筒形のドラムである。帯電器52は、感光体51を帯電する。押圧バネ53は、プロセスカートリッジPCにおいて、現像カートリッジ60を感光体51に向けて付勢する。クリーニングローラ54は、感光体51上に残ったトナー等の異物を除去する。クリーニングローラ54は、感光体51に接触して回転可能となっている。ドラムフレーム55は、プロセスカートリッジPCにおいて、感光体51等を支持する。
【0038】
メモリ56は、プロセスカートリッジPCに関する情報を記憶する。カートリッジ側端子57は、メモリ56と導通している。複数の筐体側端子13のそれぞれは、プロセスカートリッジPCごとに、筐体10に設けられる。カートリッジ側端子57は、対応するプロセスカートリッジPCが筐体10に設けられているときに、当該プロセスカートリッジPCに対応するカートリッジ側端子57に接続されている。
【0039】
現像カートリッジ60は、ドラムユニット50に着脱可能なカートリッジである。現像カートリッジ60は、トナー収容部61および現像ローラ62を備えている。トナー収容部61は、現像剤の一例としての特定の色のトナーを、その内部に収容する。詳細には、各トナー収容部61は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、およびブラック(K)のいずれかの色のトナーを収容している。現像ローラ62は、対応するトナー収容部61内のトナーを、対応する感光体51に供給する。トナーは非磁性一成分の正帯電トナーである。
【0040】
プロセスカートリッジPCは、着脱可能な現像カートリッジ60がプロセスカートリッジPCに装着された状態で筐体10に着脱される。メモリ56は、現像カートリッジ60に設けられ、プロセスカートリッジPCのカートリッジ側端子57を介して筐体側端子13に接続されてもよい。これに限らず、現像カートリッジ60は、プロセスカートリッジPCとは別に、筐体10に着脱可能であってもよい。あるいは、プロセスカートリッジPCは、プロセスカートリッジPCと一体である収容部の一例としてのトナー収容部61および現像ローラ62を備えていてもよい。この例では、トナー収容部61および現像ローラ62は、プロセスカートリッジPCから着脱不可である。
【0041】
転写ユニット70は、シートトレイ21とプロセスカートリッジPCとの間に設けられている。転写ユニット70は、駆動ローラ71、従動ローラ72、ベルト73、複数の転写ローラ74、およびセンサ75を備えている。ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72の間に張設された無端状のベルトである。ベルト73の外側の面は、各感光体51に接している。ベルト73の外側の面には、各感光体51からトナーによるトナー像が転写される。ここで、前記トナー像は、本開示における現像剤像の一例である。各転写ローラ74は、各感光体51との間においてベルト73を挟持するように、ベルト73の内側に配置されている。センサ75は、ベルト73の外側かつ駆動ローラ71の近辺に配置されている。センサ75は、ベルト73に光を照射し、ベルト73から反射光を受光することによって、ベルト73上に形成されたトナー像の濃度を読み取る光センサである。
【0042】
定着ユニット80は、プロセスカートリッジPCおよび転写ユニット70の後方に設けられている。定着ユニット80は、加熱ローラ81および加圧ローラ82を備えている。加圧ローラ82は、加熱ローラ81と対向して配置されており、加熱ローラ81を押圧する。
【0043】
カラープリンタ1は、次の手順に従って、シートP上に画像を形成する。画像形成部30は、まず、各感光体51の表面を、帯電器52によって一様に帯電させる。つぎに、露光ヘッド40によって感光体51を露光することによって、感光体51上に画像データに基づく静電潜像を形成する。そして、現像ローラ62に現像バイアスを印加することによって、感光体51に現像ローラ62からトナーを供給し、静電潜像を可視像化させる。また、現像バイアスは、トナーの極性と同極性であり、現像ローラ62に印可される電圧の偏倚量である。現像バイアスの印加により、感光体51上にトナー像を形成する。画像形成部30は、各感光体51上に形成されたトナー像を、駆動ローラ71及び従動ローラ72によってベルト73上を搬送されるシートP上に、順次重ね合わせて転写する。転写ユニット70は、トナー像が転写されたシートPを、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間を搬送させる。定着ユニット80は、加熱ローラ81によってシートPを加熱することによって、トナー像をシートPに熱定着させる。その後、カラープリンタ1は、シートPを、搬送ローラ91によって筐体10内から外部に排出し、カバー11の上面に設けられる排シートトレイ11B上に載置させる。
【0044】
なお、画像形成部30は、中間転写方式によってシートPに画像を形成してもよい。中間転写方式によれば、画像形成部30は、ベルト73の外側の面上にトナー像をいったん形成し、それからベルト73上のトナー像をシートPに転写する。
【0045】
(カラープリンタ1の機能的構成)
図2は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の機能的構成を示すブロック図である。ただし、図2においては、図1に示すカラープリンタ1が備える部材の一部の図示を省略している。この図に示すように、カラープリンタ1は、制御部100、センサ75等を有する画像形成部30と、表示部110、操作部120、通信部130および温度センサ92を備えている。制御部100は、画像形成部30、表示部110、操作部120、および通信部130に電気的に接続されている。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、および記憶部の一例としてのNVM(Non-Volatile Memory)104を備えている。
【0046】
CPU101は、ROM102から読み出したプログラムにしたがって処理を行い、その処理の結果をRAM103またはNVM104に記憶させながら、カラープリンタ1の各部を制御する。ROM102には、各種のプログラムが記憶されており、各種のプログラムには、例えば、カラープリンタ1の各部を制御するためのプログラムが含まれる。RAM103は、CPU101が各種のプログラムを実行する際の作業領域およびデータの一時的な記憶領域として利用される。NVM104は、書き換え可能な不揮発性メモリである。
【0047】
表示部110は、液晶ディスプレイを有し、各種の設定画面およびカラープリンタ1の動作状態等を表示する。操作部120は、複数のボタンを有し、ユーザによる各種の入力指示を受け付ける。通信部130は、無線通信方式または有線通信方式により、PC(Personal Computer)等の外部機器200と通信を行い、データを受信する。通信部130は、LAN(Local Area Network)等のインターフェースである。なお、通信部130は、複数の外部機器200と通信を行ってもよい。
【0048】
(カラープリンタ1の制御方法)
図3は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の制御方法であって、現像バイアス補正処理、ガンマ補正処理及び印刷処理を実行する場合における処理の流れを示すフローチャートである。図3のフローチャートに示す処理は、例えばカラープリンタ1が起動したとき、又はカバー11が閉じられたことをカバーセンサ12が検出したときに実行され得る。なお、図3のフローチャートに示す処理の各工程が実行される順序は、以下の説明に示すものに限定されない。
【0049】
S101において、制御部100は、現像バイアス補正処理を開始するための条件が満たされたか否かを判定する。ここで、前記条件が満たされた場合とは、例えば以下の場合が挙げられる。
・前回の現像バイアス補正処理を実行した後、所定枚数分の印刷処理を実行した場合
・前回の現像バイアス補正処理を実行した後、温度センサ92によって取得した雰囲気温度が所定温度以上変化した場合
・トナーを収容する現像カートリッジ60が交換された場合
・操作部120または通信部130が現像バイアス補正を実行する指令を受けた場合
また、特に限定されないが、前記所定枚数は、例えば1000枚であってもよく、前記所定温度は、例えば摂氏6度であってもよい。
【0050】
S101において、制御部100は、前記条件が満たされたと判定した場合、S102において、テスト用の現像バイアスを現像ローラ62に印加することによって、第1露光面積率に対応するトナー像をベルト73上に形成する。上記トナー像は、例えばトナーの色毎に矩形に印字されるトナーパッチとして実現され得る。また、制御部100は、センサ75によって読み取られたベルト73上のトナー像の濃度に応じて、現像ローラ62に印加する印刷用の現像バイアスを設定する現像バイアス補正処理を実行する。
【0051】
上記露光面積率とは、二値化された画像に対応する静電潜像を感光体51に形成する範囲において、感光体51を露光させる面積の割合を意味する。また、第1露光面積率、及び後述する第2露光面積率は、特定の値に限定されず、色毎に規定される値であってもよい。即ち、第1色のトナー像に対応する第1露光面積率と、第2色のトナー像に対応する第1露光面積率とは、必ずしも同一であることを要しない。通常、現像バイアス補正処理、及び後述するガンマ補正処理は、S101において前記条件が満たされたと判定した場合に、すべての色のトナーに対して実行される。
【0052】
図4(A)は、前回の現像バイアス補正処理において用いられたテスト用の現像バイアスと、各現像バイアスを用いてそれぞれ形成されたトナー像の濃度との対応関係を示している。図4(A)において、現像バイアスX1、X2、X3は、濃度dens1、dens2、dens3にそれぞれ対応する。また、図4(C)は、今回の現像バイアス補正処理において用いられたテスト用の現像バイアスと、各現像バイアスを用いてそれぞれ形成されたトナー像の濃度との対応関係を示しいている。図4(C)において、現像バイアスX1’、X2’、X3’は、濃度dens1’、dens2’、dens3’にそれぞれ対応する。また、図4(A)及び図4(C)に例示する現像バイアス補正処理においては、第1露光面積率として60%が設定されている。
【0053】
以下の説明においては、図4(A)に例示する前回の現像バイアス補正処理において設定された印刷用の現像バイアスを「補正前の現像バイアス」と呼称することもある。また、図4(C)に例示する今回又は直近の現像バイアス補正処理において設定された印刷用の現像バイアスを「補正後の現像バイアス」と呼称することもある。
【0054】
また、S101において、制御部100が、前記条件が満たされていないと判定した場合、後述するS104の処理が続いて実行される。
【0055】
S103において、制御部100は、設定した印刷用の現像バイアスを用いて、複数の露光面積率に対応するトナー像をベルト73上にそれぞれ形成する。続いて制御部100は、センサ75によって読み取られたベルト73上のトナー像の濃度に応じて、入力される画像データにおける入力階調値と感光体51を露光するための露光データの露光面積率とを対応させるガンマデータを設定するガンマ補正処理を実行する。露光データは、多階調の画像データをガンマデータを適用して二値化したラスタイメージデータである。また、前記ガンマデータは、例えばルックアップテーブルの形式によってNVM104に記憶される構成であってもよい。
【0056】
図4(B)は、前回のガンマ補正処理において適用された露光面積率と、各露光面積率が適用されてそれぞれ形成されたトナー像の濃度との対応関係を示している。図4(B)において、露光面積率16%、30%、43%、64%は、濃度dens4、densOld、dens5、dens6にそれぞれ対応する。また、露光面積率の16%、30%、43%、64%という値は、それぞれ、中間調の印刷濃度20%、40%、60%、80%におおよそ対応する値である。図4(D)は、今回のガンマ補正処理において適用された露光面積率と、各露光面積率が適用されてそれぞれ形成されたトナー像の濃度との対応関係を示している。図4(D)において、露光面積率16%、30%、43%、64%は、濃度dens4’、densNew、dens5’、dens6’にそれぞれ対応する。図4(B)及び図4(D)に示す例においては、第2露光面積率として30%が設定されている。
【0057】
なお、制御部100は、第1露光面積率が適用されたトナー像の濃度よりも、第2露光面積率が適用されたトナー像の濃度の方が、最大値の入力階調値の50%に対応する濃度に近くなるように、第2露光面積率を設定してもよい。また、制御部100は、第2露光面積率を、第1露光面積率よりも小さい値に設定してもよく、例えば第1露光面積率を75%或いは60%に設定し、第2露光面積率を30%に設定してもよい。第2露光面積率に対応するトナー像の濃度であるdensOld及びdensNewは、後述するS108の処理において制御部100によって参照される。また、densOldは、本開示における第1濃度の一例であり、densNewは、本開示における第2濃度の一例である。
【0058】
以下の説明においては、図4(B)に例示する前回のガンマ補正処理において設定されたガンマデータを「補正前のガンマデータ」と呼称することもある。また、図4(D)に例示する今回又は直近のガンマ補正処理において設定されたガンマデータを「補正後のガンマデータ」と呼称することもある。
【0059】
S104において、制御部100は、例えば操作部120に対するユーザの入力指示によって、カラープリンタ1による印刷が指示されたか否かを判定する。
【0060】
制御部100は、カラープリンタ1による印刷が指示されたと判定した場合、S105において、対象となる印刷物を印刷するための露光データが補正前のガンマデータが適用されたものであるか否かを判定する。また、制御部100が、カラープリンタ1による印刷が指示されていないと判定した場合、図3のフローチャートに基づく処理が終了する。
【0061】
S105において、制御部100は、前記露光データが補正前のガンマデータが適用されたものであると判定した場合、続いてS106の処理を実行する。S106において、制御部100は、対象となる色に関して、トナー像の濃度の変化量ΔRに対する、現像ローラ62に印加する現像バイアスの変化量ΔDを示す変化率Yを算出する。また、S106からS109までの工程は、本開示における臨時現像バイアス設定処理に対応する。
【0062】
また、制御部100は、S106において、変化率Yを、以下に示す複数のテスト用の現像バイアスと、複数のテスト用の現像バイアスのそれぞれに対応するトナー像の濃度とに基づいて算出してもよい。複数のテスト用の現像バイアスは、現像バイアス補正処理において第1露光面積率に対応するトナー像をベルト73上に形成したときに用いた現像バイアスである。
【0063】
例えば、図4(C)と同様に、第1露光面積率に対応する複数のトナー像をベルト73上に形成したときの現像バイアスがそれぞれX1’、X2’、X3’であるものとし、対応するトナー像の濃度が、それぞれdens1’、dens2’、dens3’であるものとする。ここで、X2’及びX3’は、現像バイアス補正処理において設定される印刷用の現像バイアスの近傍値である。上記の場合、印刷用の現像バイアスの近傍における変化率Yは、以下の式によって近似される。
Y=ΔD/ΔR =(X3’-X2’)/(dens3’-dens2’)
また、S105において、制御部100は、対象となる印刷物を印刷するための露光データが補正前のガンマデータが適用されたものではないと判定した場合、続いてS111の処理を実行する。S111において、制御部100は、補正後のガンマデータが適用された前記露光データ及び直近の現像バイアス補正処理において設定された印刷用の現像バイアスを用いて、印刷処理を実行する。
【0064】
S107において、制御部100は、対象となる色に関して、変化率Yの値を、第2露光面積率に対応する変化率Y’に変換する処理を実行する。例えば制御部100は、温度センサ92から取得した、カラープリンタ1の雰囲気温度を参照して、前記雰囲気温度を含む環境パラメータに応じて変化率Yの値を変換してもよい。上記の変換は、雰囲気温度が低い程、トナーの帯電量が高くなり、現像バイアスの変化に対してトナー像の濃度変化が小さくなることに由来する。また、雰囲気温度以外の環境パラメータの例としては、湿度及び気圧等が挙げられる。
【0065】
図5は、雰囲気温度に応じて変化率Yの値を変換するための係数a, bの一例を示す表である。図5において「環境」とは、雰囲気温度に応じて分類される項目であって、数字が大きい程、雰囲気温度が高いことを示している。変化率Yは、例えば以下の式によって変化率Y’に変換されてもよい。
Y’=a*Y+b
S108において、制御部100は、対象となる色に関して、補正前のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応するトナー像の濃度であるdensOldの値を取得する。また、制御部100は、補正後のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応するトナー像の濃度であるdensNewの値を取得する。
【0066】
S109において、制御部100は、対象となる色に関して、上述した変化率Y’、及び第1濃度densOldと第2濃度densNewとの差分に応じて、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷するための臨時現像バイアスを設定する。なお、S107の処理は必須ではなく、変化率Y’の代わりに変換前の変化率Yが臨時現像バイアスの算出に用いられる構成でもよい。
【0067】
変化率をY、直近の現像バイアス補正処理において設定された印刷用の現像バイアスの値をVbとすると、臨時現像バイアスVbxは、例えば以下の式によって算出されてもよい。
Vbx=(dens_Old-dens_New)*Y+Vb
臨時バイアス設定処理について、図6図8を参照して補足する。図6図8は、入力階調値と露光面積率との関係の一例を示す表である。具体的には、図6図8において「入力階調値」は、カラープリンタ1に入力される画像データにおける255段階の入力階調値を示している。「旧ガンマ」は、補正前のガンマデータによって各入力階調値と対応付けられる露光面積率を示している。「新ガンマ」は、補正後のガンマデータによって各入力階調値と対応付けられる露光面積率を示している。「線形」は、入力階調の最大値である255に対応する値を100%とした割合を示している。
【0068】
また、制御部100は、図8の入力階調値242の行に例示するような高濃度領域の露光面積率に、第1露光面積率を設定することが望ましい。図6における入力階調値230~255の範囲に示すように、高濃度領域では、「旧ガンマ」に示す露光面積率の値と「新ガンマ」に示す露光面積率の値との値が一致するか、非常に近い値となるためである。上述したように、第1露光面積率は、例えば75%に設定されてもよいし、60%として設定されてもよい。
【0069】
また、可能であれば、第1露光面積率の値は、55%~75%程度に設定されることが望ましく、第2露光面積率の値は、20%~35%程度に設定されることが望ましい。
【0070】
「線形」は、「旧ガンマ」に示す露光面積率の露光データ及び補正前の現像バイアスを用いて、ガンマ補正処理前のトナーの状態において印刷を行った場合の印刷濃度を示している。また、「線形」は、「新ガンマ」に示す露光面積率の露光データ及び補正後の現像バイアスを用いて、ガンマ補正処理後のトナーの状態であって、且つガンマ補正処理によってトナーの帯電量等が変化した状態において印刷を行った場合の印刷濃度を示している。ここで、印刷濃度はシートP上に形成された印刷画像の濃度であり、ベルト73上に形成されたトナー像の濃度と相関する。別の側面から言えば、以下の(1)に示す印刷濃度と(2)に示す印刷濃度とは等しくなる。
【0071】
(1)或る入力階調値に対応する露光面積率であって、補正前のガンマデータに応じた露光面積率の露光データと補正前の現像バイアスとを用いてガンマ補正処理前のトナーの状態において印刷を行った場合の印刷濃度。
【0072】
(2)前記入力階調値に対応する露光面積率であって、補正後のガンマデータに応じた露光面積率の露光データと補正後の現像バイアスとを用いてガンマ補正処理後のトナーの状態において印刷を行った場合の印刷濃度。
【0073】
図8に例示するように、入力階調値104に対して補正前のガンマデータが適用された場合、30.03%の露光面積率が割り当てられる。また、30.03%の露光面積率の露光データと補正前の現像バイアスとを用いて、ガンマ補正処理前のトナーの状態において印刷を行った場合、40.78%の印刷濃度によって印刷が行われる。ところが入力階調値88の行に例示するように、約30.03%の露光面積率の露光データと補正後の現像バイアスとを用いて、ガンマ補正処理後のトナーの状態において印刷を行った場合、約34.51%の印刷濃度によって印刷が行われてしまう。即ち、補正前のガンマデータに応じた露光データを、補正後の現像バイアスを用いて、ガンマ補正処理後のトナーの状態において印刷を行った場合、前記露光データが生成されたときに実現されるはずであった印刷濃度による印刷処理を行うことができない。また、補正前のガンマデータが適用された露光データは、補正後のガンマデータが適用されたものとなるように生成し直すことが難しい。
【0074】
しかしながら、補正前のガンマデータが適用された露光データの印刷に臨時現像バイアスを用いる本願の構成によって、露光面積率30.03%が設定された露光データを印刷する場合の印刷濃度を目標の40.78%に近づけることが可能となる。即ち、前記露光データが生成されたときに実現されるはずであった印刷濃度、又はその近傍の印刷濃度により印刷処理を実行することができる。
【0075】
S110において、制御部100は、臨時バイアス設定処理が、処理すべき全ての各色について完了したか否かを判定する。制御部100が各色について処理が完了したと判定した場合、S111において、補正前のガンマデータが適用された露光データ及び臨時現像バイアスを用いて印刷処理を実行する。また、制御部100が、或る色について処理が完了していないと判定した場合、前記の色についてS106以降の処理が実行される。
【0076】
なお上述したように、S105からS111に直接遷移した場合、S111において、制御部100は、補正後のガンマデータが適用された露光データ及び直近の現像バイアス補正処理において設定された印刷用の現像バイアスを用いて印刷処理を実行する。
【0077】
以上のように、カラープリンタ1の制御方法は、現像バイアス補正工程、ガンマ補正工程及び臨時バイアス設定工程を含み得る。
【0078】
即ち、現像バイアス補正工程では、S102に示すように、制御部100は、第1露光面積率に対応するトナー像をベルト73上に形成し、ベルト73上のトナー像の濃度に応じて、現像ローラ62に印加する印刷用の現像バイアスを設定する。
【0079】
また、ガンマ補正工程では、S103に示すように、制御部100は、印刷用の現像バイアスを用いて、複数の露光面積率に対応するトナー像をベルト73上にそれぞれ形成する。また、制御部100は、ベルト73上のトナー像の濃度に応じて、入力階調値と感光体51を露光するための露光データの露光面積率とを対応させるガンマデータを設定する。
【0080】
また、臨時バイアス設定工程では、S106に示すように、制御部100は、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、トナー像の濃度の変化量に対する、現像ローラ62に印加する現像バイアスの変化量を示す変化率を算出する。そして、S108に示すように、制御部100は、補正前のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応するトナー像の濃度である第1濃度と、補正後のガンマデータを適用した場合の第2露光面積率に対応するトナー像の濃度である第2濃度とを取得する。そして、S109に示すように、制御部100は、前記変化率、及び第1濃度と第2濃度との差分に応じて、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷するための臨時現像バイアスを設定する。
【0081】
前記構成によれば、補正前のガンマデータが適用された露光データを印刷する場合に、臨時バイアス設定工程において設定された現像バイアスを適用することができる。これにより、直近のガンマ補正工程の実行前に生成された露光データを適切な階調で印刷することができる。
【0082】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御部100は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0083】
後者の場合、制御部100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0084】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
なお、上述した本実施例では、カラープリンタ1が、感光体51を露光する露光装置として露光ヘッド40を備える構成としたが、これに限定されず、露光装置としてレーザスキャナを備える構成であってもよい。
【0086】
また、本実施例では、カラープリンタ1が正帯電のトナーを使用し、正極性の現像バイアスを印可する構成としたが、これに限定されず、負帯電のトナーを使用し、負極性の現像バイアスを印可する構成であってもよい。当該構成の場合、現像バイアスが小さいとは、現像バイアスの絶対値が小さいこと、即ち基準電位からの偏倚量が小さいことを意味する。
【符号の説明】
【0087】
1 カラープリンタ(画像形成装置)
51 感光体
52 帯電器
62 現像ローラ
73 ベルト
75 センサ
92 温度センサ
100 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8