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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】把手付き液体用紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/56 20060101AFI20240717BHJP
   B65D 5/40 20060101ALI20240717BHJP
   B65D 5/468 20060101ALI20240717BHJP
   B65D 5/06 20060101ALI20240717BHJP
   B65D 5/74 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65D75/56
B65D5/40
B65D5/468 100
B65D5/06 300
B65D5/74 020Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003386
(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公開番号】P2022108416
(43)【公開日】2022-07-26
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】松田 考世
(72)【発明者】
【氏名】青木 剛
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059492(JP,A)
【文献】実開平05-054239(JP,U)
【文献】実開平05-072720(JP,U)
【文献】登録実用新案第3154896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/56
B65D 5/40
B65D 5/468
B65D 5/06
B65D 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物として液体を収納可能な箱型の容器であって、
容器は紙を基材として、少なくとも容器内側となる面には熱可塑性樹脂層を有するブランクスから組み立てられており、
容器は、底面、及び屋根部のほか、前側胴部、左側胴部、右側胴部、後ろ側胴部、及び、左側胴部又は右側胴部から連続するパネルとから構成されており、
容器の、前側胴部又は屋根部の前側には、内容物の液体の注ぎ出し口を形成可能であって、
前記パネルは胴部と連続する側の半分が、後ろ側胴部と接着しており、先端側の半分は後ろ側胴部の左右の中央で、胴部から離開して容器外側に向けて折り曲げることが可能で、
折り曲げた部分は、手指を通す穴を有して、手指で容器を把持可能であることを特徴とする、把手付き液体容器。
【請求項2】
前記手指を通す穴は、幅18mm~25mm、長さ100mm~150mmの範囲でパネルに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の把手付き液体容器。
【請求項3】
前記箱型の容器は、その内部にプラスチックフィルムからなるバッグを有して、バッグ内に内容物の液体を収容することができ、バッグに接続するスパウトを容器の外部に突き出して内容物の液体の注ぎ出し口とすることが可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の把手付き液体容器。
【請求項4】
前記内容物の液体の注ぎ出し口は、箱型の容器とは別部材のプラスチック成型品からなり、繰り返しの開閉が可能であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の把手付き液体容器。
【請求項5】
前記箱型の容器が組み立てられるブランクスは、紙を基材としてガスバリア層を含む積層体であることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載の把手付き液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用紙容器に関するものである。特に紙を基材として、少なくとも容器内側になる側にはシーラント層を設けて、液体用紙容器としての防水性を高めるとともに、そのシーラント層によって箱型に立体を形成してなる液体用紙容器であり、さらに把持や注ぎ出しのための把手を設けた、把手付き液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装容器としては、古くからガラスや陶器製、あるいは金属製のものが使われてきた。1960年代になって、紙への液体の浸透性を低くする技術が進み、1970年代になってさらに浸透性を小さくした紙パックが開発され、アルコール飲料等にも用いられるようになり、スーパーやコンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。
【0003】
液体用紙容器が広範に用いられるようになった背景には、紙容器にはたとえば下記のような特徴、利便性があることがあげられる。
・軽量であり、折りたたみも可能で輸送コストが少ない。
・表面に各種印刷が可能であり、意匠性向上、内容液に関する情報表示が容易である。
・耐衝撃性を有し、持ち運びにも便利である。
・植物もしくは木材由来の素材であり、廃棄に際して減容性、焼却性に優れ、環境適合型である。
【0004】
一方で、液体用紙容器として、要求品質も内容液や用途に対応して多岐にわたっており、たとえば、下記のような機能が求められている。
・内容物が液体であるから、液漏れがしない。
・微生物からの保護、密封性に優れる。
・保存性の向上を目的とした、遮光性、ガスバリア性を有する。
・内容物の外力からの保護を目的とした、剛性や強靭性を有する。
などである。
【0005】
食品や非食品などの液体内容物に使用される液体用紙容器は、牛乳や酒パックをその代表格として、広く用いられており、紙を基材としてその内面に熱可塑性樹脂によるシーラント層が設けられた積層材料からなる。液体用紙容器はそのほか果汁飲料、ジュース、お茶、コーヒー、乳飲料、スープ等の液体食品、焼酎等の酒類にも広く用いられている。
【0006】
容器内側になる層にはシーラント層を設けてある。シーラント層によって箱型に立体を形成して液体用紙容器とすることができ、また内容物充填後に容器を密封することが可能である。一般にシーラント層にはポリオレフィン系樹脂が用いられる。
【0007】
また液体用紙容器には、たとえばゲーベルトップ型と呼ばれる屋根形の頂部を持つ紙容器では、屋根の斜面にポリエチレン樹脂からなる口栓が熱接着によって取り付けられているものもある。
【0008】
他にも、箱型の紙容器を外箱としてその内部に、プラスチックフィルムからなる内袋を有して液体用紙容器とし、外部にスパウトを引き出して内容物の注ぎ出しが可能な、バッグインカートンやバッグインボックスと呼ばれる液体用紙容器もある。
【0009】
しかしながら、内容物が液体であることから、一定以上の容量の液体容器は、重量があり又手で把持して取り扱うには、持ちにくさがあるなど、ユーザーにとって使い勝手の点
で十分満足がいくものではなかった。
【0010】
特許文献1には、取手をつけた飲料容器として、紙容器に取手を付けることが提案されているが、取手の位置は内容物の入った紙容器の重心を考慮したものではなく、あるいは指先だけが入る丸穴を設けた取手が示されており、使い勝手や実用性に乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】実用新案公報昭61-26014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、紙を基材としてなる液体用紙容器において、把手に別部材を用いることなく、取り扱いや注ぎ出しにおいて、使い勝手の良い把手付き液体用紙容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
内容物として液体を収納可能な箱型の容器であって、
容器は紙を基材として、少なくとも容器内側となる面には熱可塑性樹脂層を有するブランクスから組み立てられており、
容器は、底面、及び屋根部のほか、前側胴部、左側胴部、右側胴部、後ろ側胴部、及び、左側胴部又は右側胴部から連続するパネルとから構成されており、
容器の、前側胴部又は屋根部の前側には、内容物の液体の注ぎ出し口を形成可能であって、
前記パネルは胴部と連続する側の半分が、後ろ側胴部と接着しており、先端側の半分は後ろ側胴部の左右の中央で、胴部から離開して容器外側に向けて折り曲げることが可能で、
折り曲げた部分は、手指を通す穴を有して、手指で容器を把持可能であることを特徴とする、把手付き液体容器である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、
前記手指を通す穴は、幅18mm~25mm、長さ100mm~150mmの範囲でパネルに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の把手付き液体容器である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、
前記箱型の容器は、その内部にプラスチックフィルムからなるバッグを有して、バッグ内に内容物の液体を収容することができ、バッグに接続するスパウトを容器の外部に突き出して内容物の液体の注ぎ出し口とすることが可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の把手付き液体容器である。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、
前記内容物の液体の注ぎ出し口は、箱型の容器とは別部材のプラスチック成型品からなり、繰り返しの開閉が可能であることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の把手付き液体容器である。
【0017】
また請求項5に記載の発明は、
前記箱型の容器が組み立てられるブランクスは、紙を基材としてガスバリア層を含む積層体であることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載の把手付き液体容器
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、紙を基材としてなる液体用紙容器において、把手に別部材を用いることなく、取り扱いや注ぎ出しにおいて使い勝手の良い、把手付き液体用紙容器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る把手付き液体用紙容器の一実施態様を説明するための、前側胴部右側からの斜視模式図である。
図2図2は、本発明に係る把手付き液体用紙容器の一実施態様において、そのブランクスを説明するための、平面模式図である。
図3図3は、本発明に係る把手付き液体用紙容器の、一実施態様及び注ぎ出しの様子を説明するための、把手側からの斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図1図3を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって特定されるものである。
【0021】
図1は、本発明に係る把手付き液体用紙容器の一実施態様を、説明するための前側胴部右側からの斜視模式図である。
【0022】
本発明は、内容物として液体を収納可能な、紙容器に関するものである。すなわち紙を基材として、少なくとも容器内側となる面には熱可塑性樹脂層を有するブランクスから組み立てられており、例えば牛乳パックのような液体容器であったり、内容物の液体の注ぎ出し口を有する酒類のパックとして商品化されている。
【0023】
この熱可塑性樹脂層は、把手付き液体用紙容器(100)の内側にあって、液体容器として不可欠な耐水性を付与することに効果的である。また、熱可塑性樹脂層はシーラント層として、把手付き液体用紙容器(100)の組み立てを可能とするものであり、ブランクスの両面に設けることもできる。シーラントによる接着は、例えばヒートシールによって行うことが可能である。
【0024】
また本発明は、この液体容器に、把手を設けたものであって、かつ、把手に別部材を用いることなく、取り扱いや注ぎ出しにおいて、使い勝手の良い把手付き液体用紙容器(100)を提供しようとするものである。
【0025】
取り扱いや注ぎ出しにおいて、液体容器に把手がついていることは、きわめて利便性が高く、特に内容量が1リットルを超える場合には、容器の体積も大きく、重量も重くなるためにより把手の効果を顕著に感じることができる。
【0026】
本発明による把手付き液体用紙容器(100)は、底面(1)、及び屋根部(2)のほか、前側胴部(3)、左側胴部(5)、右側胴部(6)、後ろ側胴部(4)、及び、左側胴部(5)又は右側胴部(6)から連続するパネル(7)とから構成されている。ただし、図1に示す状態においては、パネル(7)は後ろ側胴部(4)の背後に隠れて、一部のみが可視である。
【0027】
この状態は、パネル(7)は左右いずれかの胴部と連続する側の半分が、後ろ側胴部(4)と接着しており、残る先端側の半分は後ろ側胴部(4)の左右の中央で、後ろ側胴部(4)から離開して、容器外側に向けて折り曲げることが可能であって、パネル(7)を直角に折り曲げた状態を示している。
【0028】
パネル(7)の中央部を外側に向けて折り曲げる前は、パネル(7)は後ろ側胴部(4)に沿って重ねて平坦にしておくことができる。この状態においては、本発明による把手付き液体用紙容器(100)の胴部は四角柱の形状であって、パネル(7)が嵩張ることもなく、積み重ねや輸送効率において利点があり、取り扱いもまた容易である。
【0029】
また、パネル(7)には、把手(8)が設けられており、把手(8)は手指を通す穴であって、手指で容器を把持可能とするものである。この把手(8)の穴は、この部分を除去してあるのでもよく、あるいはミシン目などで、把手(8)の穴となる部分を、容易に除去可能な状態にしておくのでもよい。
【0030】
また、我々は本発明を鋭意検討する過程において、把手(8)の寸法について下記の知見を得るに至った。
【0031】
把手(8)、すなわち手指を通す穴は、幅18mm~25mm、長さ100mm~150mmの範囲でパネル(7)に設けることができ、把手(8)がこの寸法の範囲で設けてある場合には、より把持しやすい把手(8)とすることができる。
【0032】
図1に示す例においては、把手(8)は端部が丸く、平行に向き合った長辺で囲まれている形状であるが、手指に合わせた形状にするのでも構わない。
【0033】
また、容器の、前側胴部(3)又は屋根部(2)の前側には、内容物の液体の注ぎ出し口(10)を形成可能であって、図1に示す例では、注ぎ出し口(10)が、屋根部(2)の前側スロープに取り付けられている例である。図1に示す例においては、屋根部(2)がゲーベルトップ型であって、前後にスロープを有する例である。
【0034】
前述の把手(8)を把持して、内容物の液体を注ぎ出そうとする場合には、注ぎ出し口(10)が容器の前面にあり、把手(8)が後ろ側胴部(4)にある場合には、好都合である。
【0035】
さらにパネル(7)が後ろ側胴部(4)の左右の中央で、後ろ側胴部(4)から離開して容器外側に向けて折り曲げてあることは、把手(8)を把持したときに、容器の左右の重さのバランスをとることが容易であって、これは注ぎ出しの作業においてより利便性が高い。
【0036】
そのほか注ぎ出し口(10)は、容器の前側胴部(3)又は屋根部(2)の前側に形成可能であって、例えば一般の牛乳パックのように屋根部(2)のシール部(9)を開口して注ぎ出し口とすることもできる。
【0037】
あるいは、箱型の容器とは別部材のプラスチック成型品を取り付け、注ぎ出し口(10)を形成することも可能である。この場合には、例えば注ぎ出し口(10)の先端を、キャップによって螺合するなどして密閉し、さらに繰り返しの開閉を可能にすることができる。このプラスチック成型品の注ぎ出し口(10)の取り付けに、ブランクス(50)の表面に設けた熱可塑性樹脂層を使うことも可能である。
【0038】
あるいは、箱型の容器は、その内部にプラスチックフィルムからなるバッグを有して、バッグ内に内容物の液体を収容することができ、バッグに接続するスパウトを容器の外部に突き出して、内容物の液体の注ぎ出し口(10)とすることも可能である。
【0039】
この形態は、より耐水性において優れ、また容量もより大容量の容器とすることが可能である。
【0040】
また、本発明の把手付き液体用紙容器(100)を組み立てるためのブランクスは、耐水性の向上、および組み立てのために、少なくとも容器内側となる面には、熱可塑性樹脂からなるシーラント層を設けてある。
【0041】
この熱可塑性樹脂からなるシーラント層は、ブランクスの表裏両面に設けることもでき、その場合には、容器の内側と外側の面同士のほか、外側の面同士をシールすることが可能である。
【0042】
すなわち、例えばパネル(7)を、後ろ側胴部(4)にシールすることを可能にし、例えばパネル(7)の胴部と連続する側の半分を、後ろ側胴部(4)とシールして接着することを可能にする。
【0043】
更に先端側のパネル(7)の残りの半分を、後ろ側胴部(4)と接着していない状態、もしくは疑似接着状態にして剥離可能としておくことが可能である。
【0044】
前述のとおり、この状態においては、本発明による把手付き液体用紙容器(100)の胴部は四角柱の形状であって、パネル(7)が嵩張ることもなく、積み重ねや輸送効率において利点があり、取り扱いもまた容易である。
【0045】
これによって必要な時に、後ろ側胴部(4)の左右の中央で、後ろ側胴部(4)から離開して容器外側に向けて折り曲げて把手を形成することができる。したがって図1に示す通り、把手(8)は、この外側に折り曲げる部分に設けられる。
【0046】
図2は、本発明に係る把手付き液体用紙容器の一実施態様において、そのブランクスを説明するための、平面模式図である。
【0047】
本発明は、内容物として液体を収納可能な箱型の容器であって、容器は紙を基材として、少なくとも容器内側となる面には熱可塑性樹脂、すなわちシーラント層を有するブランクス(50)から組み立てられている。熱可塑性樹脂層がブランクス(50)の表裏に設けられる場合には、容器のすべての組み立てをヒートシールによって行うことも可能である。
【0048】
容器は、底面(1)、及び屋根部(2)のほか、前側胴部(3)、左側胴部(5)、右側胴部(6)、後ろ側胴部(4)、及び、左側胴部(5)又は右側胴部(6)から連続するパネル(7)とから構成されている。また容器の、前側胴部(3)又は屋根部(2)の前側には、内容物の液体の注ぎ出し口(10)を形成可能である。
【0049】
内容物の液体の注ぎ出し口(10)は、図2に示すブランクス(50)の例においては、屋根部(2)の前側スロープに円形の穴(11)が設けられており、この穴(11)に例えばプラスチックの成型品の口栓を取り付けて、注ぎ出し口(10)とすることができる。
【0050】
すなわち、注ぎ出し口(10)が、屋根部(2)の前側スロープに取り付けられている例である。したがって前述の把手(8)を把持して、内容物の液体を注ぎ出そうとする場合には、注ぎ出し口(10)が容器の前面にあり、把手(8)が後ろ側胴部(4)側にあることになり好都合である。
【0051】
また、本発明においては、例えば内容物の保存性の向上などを目的として、箱型の容器を組み立てるブランクス(50)を、紙を基材としてガスバリア層を含む積層体で構成することができる。
【0052】
たとえば、プラスチックフィルムの表面にガスバリア層を設けてなるガスバリアフィルムを用いることができる。
【0053】
またアルミニウムなどの金属箔もガスバリア層として有効ではあるが、電子レンジでの調理が想定される場合には、高周波によるスパークなどが発生するために、容器の用途については考慮されなければならない。
【0054】
ガスバリアフィルムの場合には、用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム基材とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0055】
ガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は無機化合物の蒸着層、コーティング層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設ける。
【0056】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0057】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。ちなみに蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0058】
コーティング層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0059】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0060】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0061】
そのため、ガスバリアフィルムとしてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0062】
次に、ブランクス(50)に設けられる熱可塑性樹脂層すなわちシーラント層について、さらに説明を加える。
【0063】
シーラント層は、2枚の積層体をシーラント層同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、容器を組み立てることを可能にする。
【0064】
シーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等から選択して使用することができる。
【0065】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等も使用することができる。
【0066】
シーラント層の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層体上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体の表面にシーラント層を形成することも可能である。
【0067】
さらに、必要に応じて、商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報表示や意匠性の向上を目的として、積層体中の容器外側から見える層に印刷層を設けることができる。印刷層は容器の最外層に設けるのでも構わない。
【0068】
また印刷層は、容器の一部に設けるのでもよく、また容器の全面に渡って設けるのでもよい。あるいは、印刷層を用いずに表示部を設ける方法としては、たとえば容器の表面に印刷されたシールを貼着することも可能である。
【0069】
あるいは印刷を設ける場所を、後ろ側胴部とパネルとの間の、内容物の注ぎ出し時に把手(8)を形成するために、後ろ側胴部(4)から離開して容器外側に向けてパネル(7)の一部を折り曲げる部分に設けておく場合には、折り曲げを行なうまでは、その部分に印刷された情報は不可視であって、パネル(7)を折り曲げて初めて可視になるようにすることも可能である。
【0070】
この場合には、前述のパネル(7)の先端側の半分と、後ろ側胴部(4)との疑似接着による仮止めがより効果的である。
【0071】
ここで、印刷方法、および印刷インキには、特段の制約を設けるものではないが、既知の印刷方法の中から、被印刷基材への印刷適性、色調などの意匠性、密着性、あるいは容器の用途が飲料などの場合には、食品、飲料容器としての安全性などを考慮すれば、適宜選択してよい。
【0072】
たとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ
印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、被印刷基材への印刷適性、および絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0073】
図3は、本発明に係る把手付き液体用紙容器の、一実施態様及び注ぎ出しの様子を説明するための、把手側からの斜視模式図である。
【0074】
本発明においては、特にブランクス(50)の表裏両面に熱可塑性樹脂層を設ける場合には、容器の外側同士をシールすることも可能なる。したがって、例えば、パネル(7)を後ろ側胴部(4)にシールすることが可能である。
【0075】
図3に示す例においては、パネル(7)の右側胴部(6)と連続する側の半分を、後ろ側胴部(4)とシールして接着することが可能である。この部分は図3において斜線で示す、接着部分(12)である。これらのシールは例えばヒートシールを用いて行うことが可能である。
【0076】
更に先端側のパネルの残りの半分を、後ろ側胴部(4)と接着していない状態、もしくは疑似接着状態にして剥離可能としておくことによって、後ろ側胴部(4)の左右の中央で、胴部から離開して容器外側に向けて折り曲げることができる。したがって把手(8)は、この外側に折り曲げた部分に設けられている。
【0077】
図3に示すように、後ろ側胴部(4)側の、把手(8)を把持して、容器全体を傾けることによって、内容物の液体を注ぎ出すことが可能である。このとき把手(8)によって手指による把持は容易になり、その上パネルすなわち把手(8)は、容器全体の左右の重量の中心であるために、バランスを取る事がより容易であり、使い勝手の点で優れた容器とすることができる。
【0078】
このようにして、紙を基材としてなる液体用紙容器において、把手に別部材を用いることなく、取り扱いや注ぎ出しにおいて、使い勝手の良い把手付き液体用紙容器(100)を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1・・・底面
2・・・屋根部
3・・・前側胴部
4・・・後ろ側胴部
5・・・左側胴部
6・・・右側胴部
7・・・パネル
8・・・把手
9・・・シール部
10・・・注ぎ出し口
11・・・穴
12・・・接着部分
50・・・ブランクス
100・・・把手付き液体紙容器
図1
図2
図3