IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両のフード支持構造 図1
  • 特許-車両のフード支持構造 図2
  • 特許-車両のフード支持構造 図3
  • 特許-車両のフード支持構造 図4
  • 特許-車両のフード支持構造 図5
  • 特許-車両のフード支持構造 図6
  • 特許-車両のフード支持構造 図7
  • 特許-車両のフード支持構造 図8
  • 特許-車両のフード支持構造 図9
  • 特許-車両のフード支持構造 図10
  • 特許-車両のフード支持構造 図11
  • 特許-車両のフード支持構造 図12
  • 特許-車両のフード支持構造 図13
  • 特許-車両のフード支持構造 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両のフード支持構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/38 20110101AFI20240717BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60R21/38 330
B62D25/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021015103
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118525
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 純
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190079(JP,A)
【文献】特開2017-222261(JP,A)
【文献】特開2009-051235(JP,A)
【文献】特開2008-120117(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3184375(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0187993(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017205692(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/38
B62D 25/10 - 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の開口を覆う開閉自在なフードと、
該フードの後部及び車体を連結するヒンジ機構と、
前記車体前部に衝突物が衝突した際、前記フードの後部を上方へ押圧するアクチュエータとを備えた自動車のフード支持構造であって、
前記ヒンジ機構には、
一端が車体に回動可能に固定される車体側アームと、
前記車体側アームの他端側に回動可能に固定され、前記フードに固定されるフード側アームと、
前記車体側アーム及び前記フード側アームに回動固定されて、前記フード側アームの回動角度を制御するリンクアームと、
前記フード側アームに対して回動する回転軸を有するプレート部材と、を備え、
前記プレート部材の前記フード側アームに対する前記回転軸をプレート回転軸に設定し、
前記プレート部材は、前記プレート回転軸より前方位置に前記アクチュエータにより上方へ押圧される被押圧面が形成されるとともに、フード閉状態における、該プレート回転軸の高さ以上の位置において、前記リンクアームと嵌合する嵌合部材が保持され、
前記リンクアームは、前記フード閉状態において、前記嵌合部材と嵌合するとともに、前記アクチュエータの押圧による前記プレート部材の回転により、前記嵌合部材との嵌合が解除可能に後方に開口するリンクアーム凹部を備え、
前記リンクアームの前記フード側アームに対する回転軸をリンクアーム回転軸に設定し、
前記リンクアーム回転軸を中心とし、前記嵌合部材を通過する円の、前記嵌合部材の中心における接線を含めた前方の領域に前記プレート回転軸が位置し、
前記嵌合部材は、前記フード閉状態において、前記リンクアーム回転軸の後方、且つ、該リンクアーム回転軸の高さ以上の位置に配置されたことを特徴とする
車両のフード支持構造。
【請求項2】
前記リンクアーム凹部の上辺部の方が下辺部に比して長いことを特徴とする
請求項1に記載の車両のフード支持構造。
【請求項3】
前記上辺部は、前記フード閉状態において、車体側面視で前後方向に平行に延びる、又は後方ほど下方へ傾斜して延びる直線状に形成された
請求項2に記載の車両のフード支持構造。
【請求項4】
前記フード側アームは、前記フード閉状態において、前記嵌合部材と嵌合するとともに、前記アクチュエータの押圧による前記プレート部材の回転により、前記嵌合部材との嵌合が解除可能に後方に開口するフード側アーム凹部を備えた
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両のフード支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体前部の開口を覆う開閉自在なフードと、該フードの後部及び車体を連結するヒンジ機構と、車体前部に衝突物が衝突した際、フードの後部を上方へ押圧するアクチュエータとを備えた車両のフード支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行中の車体前部に衝突物が衝突した際(以下、「前突時」と称する)、フードの後部をアクチュエータで上方へ押圧して該フードの後部を、フードの前部を回転中心として跳ね上げ、フードに乗り上げた衝突物への衝撃を吸収して該衝突物を保護する車両のフード支持構造が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、車体側に一端が枢支された第1リンクと、第1リンクの他端に枢支され、フードに固定された第2リンクと、第2リンクの上方への回転を制限する回転制限手段とが設けられたフード支持構造が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献1には、前突時にアクチュエータからの押上荷重によって、回転制限手段が塑性変形(せん断破壊)されることで、第2リンク上部の上方への回転の制限が解除され、フードの後部が跳ね上げられる構成が開示されている。
【0005】
特許文献1のフード支持構造は、前突時にアクチュエータによってフードの後部を直接押し上げ、この押上荷重をフードの後部を介して回転制限手段に伝達することで回転制限手段を塑性変形させる構成としている。
【0006】
この構成においては、前突時に回転制限手段を確実に塑性変形させるために、アクチュエータからの押上荷重をフードの後部においてしっかりと受け止める必要がある。しかし、そのためには、フードの後部における、アクチュエータからの押上荷重を受け止める部位を補強する必要があることから、結果としてフード自体の重量が増加するという課題を有する。
【0007】
このような課題を解決するために回転制限手段を第2リンクの上方と嵌合する嵌合部材に置き換えて、前突時にアクチュエータからの押上荷重によって、嵌合部材の嵌合が解除されることで、第2リンクの上方への回転が許容される嵌合構造が考えられる。
【0008】
しかしながら、フード後部がアクチュエータによって上方へ押圧されない前突時以外の通常時においても、例えば、車両走行時に車体が振動した場合や、ユーザがフードを持ち上げようとした場合(所謂、いたずらモードの場合)等においては、前突時と同様にフードの後部に上方荷重が加わることがある。
【0009】
このような前突時以外の通常時に、フードの後部に上方荷重が加わった際にも、意に反して嵌合部材の嵌合が解除され、フードの後部が車体から外れて上方へ持ち上がらないような対策を講じる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-190079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、フードの後部に上方向荷重が入力されても該フードの後部が意に反して持ち上がることを防止できる車両のフード支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の車両のフード支持構造は、車体前部の開口を覆う開閉自在なフードと、該フードの後部及び車体を連結するヒンジ機構と、前記車体前部に衝突物が衝突した際、前記フードの後部を上方へ押圧するアクチュエータとを備えた自動車のフード支持構造であって、前記ヒンジ機構には、一端が車体に回動可能に固定される車体側アームと、前記車体側アームの他端側に回動可能に固定され、前記フードに固定されるフード側アームと、前記車体側アーム及び前記フード側アームに回動固定されて、前記フード側アームの回動角度を制御するリンクアームと、前記フード側アームに対して回動する回転軸を有するプレート部材と、を備え、前記プレート部材の前記フード側アームに対する前記回転軸をプレート回転軸に設定し、前記プレート部材は、前記プレート回転軸より前方位置に前記アクチュエータにより上方へ押圧される被押圧面が形成されるとともに、フード閉状態における、該プレート回転軸の高さ以上の位置において、前記リンクアームと嵌合する嵌合部材が保持され、前記リンクアームは、前記フード閉状態において、前記嵌合部材と嵌合するとともに、前記アクチュエータの押圧による前記プレート部材の回転により、前記嵌合部材との嵌合が解除可能に後方に開口するリンクアーム凹部を備え、前記リンクアームの前記フード側アームに対する回転軸をリンクアーム回転軸に設定し、前記リンクアーム回転軸を中心とし、前記嵌合部材を通過する円の、前記嵌合部材の中心における接線を含めた前方の領域に前記プレート回転軸が位置し、前記嵌合部材は、前記フード閉状態において、前記リンクアーム回転軸の後方、且つ、該リンクアーム回転軸の高さ以上の位置に配置されたことを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、フード側アーム後端に上方荷重が入力されると、リンクアーム凹部が前方に向かう方向、すなわち、嵌合部材との嵌合を解除させる方向にリンクアームを回転させる荷重が生じるが、嵌合部材は、リンクアーム凹部との嵌合を解除させる後方向成分を持つ荷重が生じない。
したがって、嵌合部材が後方に移動してリンクアーム凹部との嵌合状態が解除されることを抑制可能となる。
【0014】
この発明の態様として、前記リンクアーム凹部の上辺部の方が下辺部に比して長いことを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、例えば、通常走行時の振動や人為的な要因によって前記フードの後部に上方荷重が入力されることに起因して嵌合部材に上方荷重が入力された場合においても、上辺部で嵌合部材が上方に抜けることを抑え、嵌合部材の上方移動を抑制することができる。
【0016】
この発明の態様として、前記上辺部は、前記フード閉状態において、車体側面視で前後方向に平行に延びる、又は後方ほど下方へ傾斜して延びる直線状に形成されたことを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、例えば、前記上辺部は、車体側面視で後方ほど上方へ傾斜して延びる直線状に形成された構成のように、嵌合部材に上方荷重が入力された場合、嵌合部材が上辺部に沿って後方へスライドするように付勢されることがないため、嵌合部材が後方開口から抜け難くすることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記フード側アームは、前記フード閉状態において、前記嵌合部材と嵌合するとともに、前記アクチュエータの押圧による前記プレート部材の回転により、前記嵌合部材との嵌合が解除可能に後方に開口するフード側アーム凹部を備えたことを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、フード側アーム凹部に前記嵌合部材を嵌合させることで、前記嵌合部材を保持する前記プレート部材と、前記フード側アームとの一体性を高めることができる。
【0020】
さらに、リンクアーム凹部とフード側アーム凹部との双方に前記嵌合部材を嵌合させることで、前記フード側アームと、前記リンクアームとの一体性も高めることができる。
【0021】
従って、ユーザがフードを開閉する際に、前記フード側アームが前記プレート部材および前記リンクアームに対してガタつくことなくスムーズに開閉させることができる。
【発明の効果】
【0022】
前記構成によれば、フードの後部に上方向荷重が入力されても該フードの後部が意に反して持ち上がることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態のフード支持構造を備えた車両の前部を示す平面図。
図2】フード閉状態における、本実施形態のヒンジ構造を後方かつ車幅方向内側から視た斜視図。
図3】フード閉状態における、本実施形態のヒンジ構造の分解斜視図。
図4図1のA-A線に沿った要部を拡大して示した断面矢視図。
図5】(a)はフード閉状態における、本実施形態のヒンジ構造を車幅方向外側から視た側面図、(b)は図5(a)中の車体側アームを省略して示した側面図。
図6】車体側ブラケットを省略して示した図5(b)中の領域Xの拡大図。
図7図2のB-B線に沿った要部を拡大して示した断面矢視図。
図8】リンクアームの正面図。
図9】フード開状態における、本実施形態のヒンジ機構を車幅方向内側から視た側面図。
図10】(a)はフード開状態における、本実施形態のヒンジ機構を車幅方向外側から視た側面図、(b)は図9(a)中の車体側アームを省略して示した側面図。
図11】(a1)は前突時にアクチュエータでプレート部材が押し上げられる直前状態のヒンジ機構を車幅方向内側から視た側面図、(b1)は同状態のヒンジ構造の要部を車幅方向外側から視た側面図、(a2)は前突時にアクチュエータでプレート部材を介してフード側アームが押し上げられる直前状態のヒンジ機構を車幅方向内側から視た側面図、(b2)は同状態のヒンジ構造の要部を車幅方向外側から視た側面図。
図12】前突時に本実施形態のヒンジ機構を車幅方向内側から視た側面図。
図13】(a)は前突時に本実施形態のヒンジ機構を車幅方向外側から視た側面図、(b)は図13(a)中の車体側アームを省略して示した側面図。
図14】嵌合部材に上方荷重が入力された場合において、リンクアーム回転軸とキックプレート回転軸とに対する嵌合部材の位置関係に応じて、嵌合部材と嵌合するリンクアームに作用する荷重を考察するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Frは車両前方、矢印Uは車両上方、矢印Rは車両右方、矢印Lは車両左方、矢印INは車幅方向内側、矢印OUTは車幅方向外側を夫々示すものとする。
【0025】
自動車の車体前部1は、図1に示すように、フロントウインドウ2よりも車両前方の部分であって、左右一対のフロントフェンダ3と、フロントフェンダ3の間に設けた開口であるエンジンルーム(図示省略)を開閉自在に覆うフード4などで構成されている。
【0026】
なお、フード4は、図4に示すように、車両の外観意匠面をなすアッパパネル4aと、アッパパネル4aの下面に対して接合されたロアパネル4bとで、閉断面形状をなすように構成されている。
【0027】
このような自動車の車体前部1において、図1及び図2に示すように、フード4は、ヒンジ機構10を介して車幅方向の両端における後部が車体に連結されている。
【0028】
このヒンジ機構10は、メンテナンスのために作業者がフード4を開閉する場合などの通常開閉時と、車体前部1に衝突物が衝突した前突時とで、異なる回転方向へ回転可能にフード4を支持している。
【0029】
詳しくは、ヒンジ機構10は、通常開閉時には、フード4の後部を回転中心として、フード4の前部が車両上方、または車両下方へ回動可能に支持し、前突時には、フード4の前部側を回転中心として、車体に設けた左右一対のアクチュエータ8(図11(a1)(a2)において車両右側のアクチュエータ8のみ図示)の押圧によって、フード4の後部を車両上方へ回動可能に支持するよう構成されている。
なお、アクチュエータ8は、例えば、車体前部1に左右一対備えるとともに上下方向に延びるヒンジピラー100の車幅方向の内面に締結固定されている(図示省略)。
このアクチュエータ8は、車両上方へ突出可能なプッシュロッド8aが内蔵された略筒状体であって(図11(a1)(a2)参照)、中心軸の延長線上と、フード4に固定されたヒンジ機構10とが交差する位置に配置されている。
【0030】
そして、アクチュエータ8は、車体前部1への衝突物の衝突を自動車が検知すると、プッシュロッド8aを車両上方へ向けて突出するとともに、プッシュロッド8aの先端でフード4の後部をヒンジ機構10を介して車両上方へ押圧可能に構成している。
【0031】
図1図4に示すように、ヒンジ機構10は、フード4の後部の左右各側に備え、ヒンジピラー100の上面100aに車体側ブラケット16を介して締結され、他端がフード4のロアパネル4bにおける下面に締結されている(図4参照)。
【0032】
ここで、図2図4に示すように、車体側ブラケット16は、車両上下方向に板厚を有する板状の基部161と、基部161の車幅方向内端から縦壁状に立ち上がる縦壁部162とで一体に形成されている。車体側ブラケット16の基部161は、上下方向に延びるヒンジピラー100の上面100aにボルト等により締結固定されている。車体側ブラケット16の縦壁部162は、車両側面視で前下端と後下端と後上端との夫々にコーナー部(頂部)を有する略三角形状に形成されている。
なお、本実施形態において、車体側ブラケット16は車体の一部として備えた車体側の部材である。
【0033】
また、左右一対のヒンジ機構10は、略対称形状のため、以下、ヒンジ機構10について、特に示す場合を除いて右側の構成に基づいて説明するとともに、フード4閉状態の姿勢に基づいて説明する。
【0034】
図2図5に示すように、上述したヒンジ機構10は、車体側アーム11とリンクアーム13とフード側アーム12とプレート部材14と、を備え、車幅方向外側から内側へこの順に配設されている。
【0035】
図5(a)に示すように、車体側アーム11は、前後方向に直線状に延びる長尺部111と、長尺部111の後端から上方へ向けて突出する基部112とで一体に形成されている。
【0036】
車体側アーム11は、長手方向の一端(基端)、すなわち、基部112の上端が、車体側ブラケット16の縦壁部162の後上端のコーナー部において枢支部材21を介して回転可能に固定されている。車体側アーム11を車体側ブラケット16に対して枢支する枢支部材21によって車体側アーム回転軸21xが構成されている。
【0037】
図2図5に示すように、フード側アーム12は、縦壁状の基部121と、フード4閉状態において上端から車幅方向内側へ庇状に突出形成される突出片122とで一体形成されている。突出片122は、突出方向の先端側(車幅方向内側)の部位において、前後各側にフード取付穴123が形成されている(図2参照)。そして、図4に示すように、突出片122は、上面がフード4のロアパネル4bの後部の下面に当接され、その状態で前後各側のフード取付穴123においてボルト等の締結具によって固定される。すなわち、フード側アーム12は、フード側ブラケットとしても機能する。
【0038】
フード側アーム12の突出片122は、後述するようにアクチュエータ8によって押し上げられたプレート部材14の突出片142(図11(a2)参照)が当接可能に突出形成されている。
【0039】
具体的に、図4に示すように、フード側アーム12の突出片122は、プレート部材14の後述する突出片142に対して上方に離間した位置に配置され、プレート部材14がアクチュエータ8によって押し上げられたときにプレート部材14の突出片142が後述するように図4の時計回りに回転する軌道上に配置されている(図11(a2)参照)。図4図7図11(a1)(a2)に示すように、フード側アーム12の突出片122の前後各側のフード取付穴123よりも突出方向の基部121側の下面には、プレート部材14の後述する突出片142が下方から当接し、上方へ押圧される被押圧面124が形成されている。
【0040】
図3図4図5(a)(b)に示すように、フード側アーム12の基部121は、車体側アーム11の長手方向の前端(先端)側に枢支部材22を中心として回動可能に固定されている。フード側アーム12を車体側アーム11に対して枢支する枢支部材22によってフード側アーム回転軸22xが構成されている。
【0041】
なお、図3に示すように、本実施形態の枢支部材22は、枢支ピン22aと、該枢支ピン22aを保持するピン保持部22bとで構成されているが、該枢支部材22は、枢支箇所の回転軸として機能する構成であれば、その構成について特に限定しない。
【0042】
具体的に、図3図4に示すように、フード側アーム12の基部121における、車体側アーム11との枢支箇所には、枢支部材22を挿通可能な長穴125が車幅方向に貫通形成されている。長穴125は、基部121の前後方向の前部から中間部にかけて前後方向に直線状に延びている。
車体側アーム11に対してフード側アーム12を枢支する枢支部材22は、長穴125の周縁によって、該長穴125の長手方向に沿ってスライド可能に係止されているが、フード4閉状態において、長穴125の前端に位置している(図4参照)。
【0043】
また、図3図6図7に示すように、フード側アーム12の基部121の後部かつ上部に位置する後上部には、フード側アーム凹部126が形成されている。図3に示すように、フード側アーム凹部126は、後述する嵌合部材17と嵌合可能に前辺部126f(図11(b2)参照)が前方に略半円弧状に凹んで形成されるとともに、アクチュエータ8の押圧によるプレート部材14の後述する回転により(図11(a2)参照)、嵌合部材17との嵌合が解除可能(嵌合部材17がフード側アーム凹部126から後方へ脱出可能)に後方に向けて開口して形成されている(図11(b2)参照)。
【0044】
図3図7に示すように、リンクアーム13は、車体側アーム11とフード側アーム12との車幅方向の間に介在し、これら両アーム11,12の夫々に枢支部材23,24を介して回動固定されて、フード側アーム12の回動角度を制御する。
【0045】
図3図5(a)(b)に示すように、リンクアーム13は、車両側面視で前後方向に直線状に、すなわち車体側アーム11と略平行に延びるとともに、車幅方向の板厚を有する板状に形成されている。
【0046】
図3図8に示すように、リンクアーム13は、長手方向(前後方向)の中間位置において、前部13aが後部13bよりも車幅方向外側に位置するように段部13cを有する段付き形状に形成されている。
【0047】
図3図5(b)に示すように、リンクアーム13の前部13aは、車体側アーム11の長手方向の中間部に枢支部材23を中心として回動可能に固定されている。リンクアーム13を車体側アーム11に対して枢支する枢支部材23によってリンクアーム前側回転軸23xが構成されている。
【0048】
一方、同図に示すように、リンクアーム13の後部13bは、フード側アーム12の基部121の後部、詳しくは、前後方向における、長穴125の後端とフード側アーム凹部126との間の位置に、枢支部材24を中心として回動可能に固定されている。リンクアーム13をフード側アーム12に対して枢支する枢支部材24によってリンクアーム後側回転軸24Xが構成されている。
【0049】
図8に示すように、リンクアーム凹部133は、上辺部133uおよび下辺部133dがフード4閉状態において、車体側面視で前後方向と平行に略直線状に延びている。さらに、リンクアーム凹部133は、上辺部133uの長さLuが下辺部133dの長さLdに比して長くなるように形成されている。
【0050】
図6図7図11(b1)に示すように、上述したフード側アーム凹部126とリンクアーム凹部133とは、車両側面視で夫々の縁部形状(前辺部126f,133f、上辺部126u,133uおよび下辺部126d,133dの形状)が一致するように形成されている。これにより、フード側アーム凹部126とリンクアーム凹部133とは、車幅方向において互いに連通するように形成されている。
【0051】
プレート部材14は、キックアッププレートとも称し、図2図4に示すように、縦壁状の基部141と、フード4閉状態において上端から車幅方向内側へ庇状に突出形成される突出片142とで一体形成されている。プレート部材14の突出片142は、アクチュエータ8によって押し上げられるプッシュロッド8aの先端部が下方から当接可能にプッシュロッド8aの先端部の伸縮ストロークの範囲においてプッシュロッド8aの軸方向を横切るように突出している(図11(a1)(a2)参照)。
【0052】
図4に示すように、突出片142の下面には、プッシュロッド8aの先端部が当接され、上方へ押圧される被押圧面143が形成されている。被押圧面143は、プレート部材14の後述するキックプレート回転軸25Xより前方に配置されている。
【0053】
図3図4に示すように、プレート部材14の基部141の後下部には、フード側アーム12の後下部に枢支部材25を中心として回動可能に固定されている。プレート部材14をフード側アーム12に対して枢支する枢支部材25によってキックプレート回転軸25Xが構成されている。
【0054】
プレート部材14は、付勢手段としてのねじりコイルバネ15(以下、「バネ15」と略記する)によって車両側面視で(車幅方向内側から視て)キックプレート回転軸25xを回転中心として反時計回りの方向に付勢されている(図4参照)。
【0055】
図2図3図6図8に示すように、バネ15は、コイル部分151が、プレート部材14とフード側アーム12との車幅方向の間においてキックプレート回転軸25xに備えており、枢支部材25の軸方向と同軸に該枢支部材25に対して装着されている。
【0056】
図3図6に示すように、バネ15は、コイル部分151の車幅方向外端から前方に直線状に延びる車幅外端側腕部152と、コイル部分151の車幅方向内端から上方に直線状に延びる車幅内端側腕部153とをさらに備えている。車幅外端側腕部152は、先端が車幅方向外側へ折り曲げられ、フード側アーム12の基部121の下辺に下方へ突出形成された係止突起127(図6参照)に係止されている。
【0057】
一方、車幅内端側腕部153は、先端が車幅方向外側へ折り曲げられ、プレート部材14の後上端において車幅方向に貫通形成されたバネ係止穴144(図6参照)に挿通された状態で係止されている。
【0058】
プレート部材14は、上述したように、バネ15によって図4の反時計回りの方向へ付勢されるが、図4に示すように、後部上端146がフード側アーム12の突出片122の後部122rに下方から当接し、それ以上反時計回りへ回動することが規制される。これにより、プレート部材14は、フード4閉状態において、すなわち、プッシュロッド8aによって押し上げられていない状態において、バネ15の付勢力によって車両側面視で(車幅方向内側から視て)前傾姿勢に保たれる。
【0059】
すなわち、プレート部材14の突出片142は、フード側アーム12の突出片122に対して下方へ離間した位置であって、アクチュエータ8のプッシュロッド8aの先端部により押し上げによって突出片122の下面(被押圧面124)に当接可能な位置に配置されている(図11(a1)(a2)参照)。
【0060】
図2図4図7に示すように、プレート部材14の後上部には、プレート部材14に対して車幅方向外側において隣接するリンクアーム13およびフード側アーム12と嵌合する嵌合部材17が一体に取り付け固定(すなわち、保持)されている。
【0061】
具体的に、図6に示すように、嵌合部材17は、フード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xの後方、且つ、該リンクアーム後側回転軸24xの高さ以上の位置に配置されるとともに、キックプレート回転軸25xよりも上方、且つバネ係止穴144の後方近傍の位置に配置されている。
【0062】
図3図6図7に示すように、嵌合部材17は、プレート部材14から車幅方向外側へ水平に突出する円柱状の嵌合ピン17aを備えており、この嵌合ピン17aの部分がフード側アーム凹部126とリンクアーム凹部133に対して車幅方向内側から外側へこの順に挿通された状態で嵌合される。
【0063】
また、図6に示すように、キックプレート回転軸25xは、フード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xを中心とし、嵌合部材17の中心を通過する円の、嵌合部材17の中心における接線Ltより前方の領域に位置している。
【0064】
次に、メンテナンスのために作業者が、フード4の前部を保持して開閉する場合のような通常開閉時における左右のヒンジ機構10の動作について右側のヒンジ機構10に基づいて簡単に説明する。
【0065】
フード4の前部を保持した作業者がフード4を開閉する場合、ヒンジ機構10において、フード側アーム回転軸22xを回転中心として車体側アーム11が図4の時計回りに(すなわち、車体側アーム11の前端側が車両上方へ位置するように)回動する。
【0066】
ここで、上述したように、プレート部材14に保持された嵌合部材17は、リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126とに嵌合されているため(図7参照)、フード側アーム12とリンクアーム13とは、夫々の後部(リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126)において、嵌合部材17(プレート部材14)を介して互いに結合される。さらに、フード側アーム12とリンクアーム13とは、上述したように、夫々の前部が車体側アーム11に対して異なる位置において回転可能に固定されているため(図3参照)、車体側アーム11に対して異なる回転中心(フード側アーム回転軸22xおよびリンクアーム前側回転軸23x)となる回動軌道で回転する。
【0067】
このため、図9図10(a)(b)に示すように、ヒンジ機構10は、作業者がフード4を開閉する場合には、フード側アーム12、リンクアーム13およびプレート部材14が、車体側アーム11に対して相対回転することなく、車体側アーム11と一体に回動する。
【0068】
次に、車体前部1に衝突物が衝突した際における左右のヒンジ機構10の動作について右側のヒンジ機構10に基づいて簡単に説明する。
車体前部1への衝突を検知すると、自動車は、図11(a1)に示すように、アクチュエータ8のプッシュロッド8aを車両上方へ向けて突出させる(図11(a1)中の矢印Du参照)。
【0069】
そして、上方へ突出したプッシュロッド8aは、プレート部材14の被押圧面143に当接し、プレート部材14を押し上げる。これにより、プレート部材14は、バネ15の付勢力に抗してキックプレート回転軸25xを中心としてフード側アーム12に対して図11(a2)の時計回りに回動する(図11(a2)中の矢印Ru参照)。
【0070】
その際、図11(a2)に示すように、プレート部材14は、突出片142がフード側アーム12の突出片122の被押圧面124に下方から当接するまでキックプレート回転軸25xを中心として時計回りに回動し、車両側面視で前傾姿勢から略水平姿勢となる。その過程において、プレート部材14に保持された嵌合部材17は、図11(b1)に示す状態から図11(b2)に示すように、キックプレート回転軸25xを中心として車幅方向の外側から視て時計回りに回動する、すなわち後方へ移動する(図11(b2)中の矢印dr参照)。
【0071】
これにより、アクチュエータ8のプッシュロッド8aがプレート部材14を押し上げるまで共に後方へ開口していたリンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126との嵌合部材17の嵌合(拘束)が解除される。
【0072】
そして、プッシュロッド8aがプレート部材14を介してフード側アーム12を押し上げることで、図12図13に示すように、車体側アーム11は、車体側アーム回転軸21xを中心として図12の時計回りに回転する。それと同時にフード側アーム12は、車体側アーム11に対してフード側アーム回転軸22xを中心として図12の反時計回りに回動する。このとき、フード側アーム回転軸22xは、長穴125に沿って後方へスライドするとともに、リンクアーム13は、リンクアーム前側回転軸23xを中心として車体側アーム11に対して図12の時計回りに回動する。
【0073】
そして、プッシュロッド8aの押上げ完了状態において、フード側アーム12は、略水平な姿勢(図12図13(a)(b)参照)でフード4の後部を押し上げることができる。
なお、フード側アーム回転軸22xは、プッシュロッド8aの押上げ完了状態において、長穴125の後端に位置する。
【0074】
ところで、フード4閉状態において例えば、車両走行時の車体振動が生じた場合や、ユーザがフード4を持ち上げようとした場合等、前突時以外の通常時においても、フード4の後部がアクチュエータ8のプッシュロッド8aにより押し上げられていないにも関わらず、フード4の後部には、前突時の場合と同様に上方の荷重が入力される。
【0075】
本実施形態のヒンジ機構10は、前突時の場合において、リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126との嵌合部材17の嵌合が上述したように解除される一方で、前突時以外の通常時の場合において、リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126との嵌合部材17の嵌合が意に反して解除されないような構成を採用している。
【0076】
このような構成について以下、具体的に説明する。上述したように、嵌合部材17は、プレート部材14によって保持(固定)されるとともに、プレート部材14は、キックプレート回転軸25xを介してフード側アーム12に固定されている。さらに、フード側アーム12は、フード4後部に固定されている。このため、前突時以外の通常時に、閉状態におけるフード4の後部に上方荷重が入力された場合には、フード側アーム12およびプレート部材14を介して嵌合部材17にも上方の荷重が入力される。すなわち、ヒンジ機構10は、嵌合部材17に上方荷重が作用しても該嵌合部材17がフード側アーム凹部126から抜けない構成であることが要求される。
【0077】
これに対して、図6に示すように、本実施形態において、嵌合部材17は、フード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xの後方、且つ、該リンクアーム後側回転軸24xの高さ以上の位置に配置された構成としている。
【0078】
このような位置に配置された嵌合部材17に、上方荷重が入力されると、嵌合部材17からリンクアーム13には、リンクアーム後側回転軸24xを中心として図6において反時計回りに回転させようとする力f、すなわち、リンクアーム凹部133にリンクアーム後側回転軸24xを中心とし、嵌合部材17の中心を通過する円の、嵌合部材17の中心における接線方向の力fが作用する(図6参照)。
【0079】
この接線方向の力fは、キックプレート回転軸25xと嵌合部材17の中心とを結ぶ直線方向の分力faと、直線方向に直交する方向の分力fbとに分解される。
【0080】
よって、嵌合部材17は、プレート部材14によって保持されているため、該嵌合部材17に分力faが作用しても動かないように規制することができる。
【0081】
(詳しくは、嵌合部材17は、プレート部材14に保持されているため、プレート部材14自体が動かない限り動かない。一方、プレート部材14は、キックプレート回転軸25xを介してフード側アーム12に回転可能に固定されているため、キックプレート回転軸25xを中心とする円の径方向に作用する分力faによって、プレート部材14は、フード側アーム12に対してキックプレート回転軸25xを中心として回転(相対変位)しない。)
一方、分力fbについては、嵌合部材17が前方に凹むリンクアーム凹部133に食い込む方向(前方向)に作用させることができる(図6参照)。すなわち、本実施形態の嵌合部材17は、フード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xに対して上述した位置関係で配置されているため、嵌合部材17に上方荷重が入力されても、後方に開口するリンクアーム凹部133に対する嵌合を解除する後方向成分を持つ荷重が作用することがない。
【0082】
従って、プッシュロッド8aの押し上げによるプレート部材14の図4の時計回りの回転(図11(a2)中の矢印Ru参照)を伴うことなく、フード4後部に上方荷重が加わることに起因して嵌合部材17に上方荷重が入力されても、嵌合部材17が後方に移動してリンクアーム凹部133との嵌合状態が解除されることを抑制できる。
【0083】
図4に示すように、上述した本実施形態の車両のフード支持構造は、車体前部1の開口を覆う開閉自在なフード4と、該フード4の後部及び車体を連結するヒンジ機構10と、車体前部1に衝突物が衝突した際、フード4の後部を上方へ押圧するアクチュエータ8(図11(a1)(a2)参照)とを備え、図2図3に示すように、ヒンジ機構10には、後端(一端)が車体に回動可能に固定される車体側アーム11と、車体側アーム11の前端側(他端側)に回動可能に固定され、フード4に固定されるフード側アーム12と、車体側アーム11及びフード側アーム12に回動固定されて、フード側アーム12の回動角度を制御するリンクアーム13と、フード側アーム12に対して回動するキックプレート回転軸25x(プレート回転軸)を有するプレート部材14と、を備え、図4に示すように、プレート部材14は、キックプレート回転軸25xより前方にアクチュエータ8により上方へ押圧される被押圧面143が形成されるとともに、図6に示すように、フード4閉状態における、該キックプレート回転軸25xの高さ以上の位置(換言すると、該キックプレート回転軸25xの高さを含む上方の位置)において、リンクアーム13と嵌合する嵌合部材17が保持され、図3図5(b)、図6図8に示すように、リンクアーム13は、フード4閉状態において、嵌合部材17と嵌合するとともに、アクチュエータ8の押圧によるプレート部材14の回転により、嵌合部材17との嵌合が解除可能に後方に開口するリンクアーム凹部133を備え、リンクアーム13のフード側アーム12に対する回転軸をリンクアーム後側回転軸24x(リンクアーム回転軸)に設定し、図6に示すように、リンクアーム後側回転軸24xを中心とし、嵌合部材17を通過する円の、嵌合部材17の中心における接線Ltを含めた前方の領域にキックプレート回転軸25xが位置し、図6に示すように、嵌合部材17は、フード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xの後方、且つ、該リンクアーム後側回転軸24xの高さ以上の位置(リンクアーム後側回転軸24xを含む上方に位置)に配置されたことを特徴とする。
【0084】
前記構成によれば、図6に示すように、嵌合部材17に上方荷重が入力されると、リンクアーム13には、嵌合部材17を介してリンクアーム凹部133が前方に向かう方向の力f、すなわち、該リンクアーム13をリンクアーム後側回転軸24xを中心として図6の反時計回りに回転させようとする力fが生じる。
【0085】
しかし、嵌合部材17は、力fの分力faが作用してもプレート部材14と共にフード側アーム12に対して上方へ相対移動することがなく、また、力fの分力fbは、リンクアーム凹部133に嵌り込む方向に作用するため、嵌合部材17は、嵌合を解除する後方向成分を持つ荷重が生じない。したがって嵌合部材17が後方に移動して嵌合状態が解除されることを抑制できる。
【0086】
この発明の態様として、図8に示すように、リンクアーム凹部133の上辺部133uの長さ(Lu)が下辺部133dの長さ(Ld)よりも長いことを特徴とする。
【0087】
前記構成によれば、例えば、車両の通常走行時の振動や、ユーザがフード4の後部を持ち上げようとする等して該フード4の後部に上方荷重が入力され、これに起因して嵌合部材17に上方荷重が入力された場合においても、上辺部133uで嵌合部材17が上方に抜けることを抑え、結果として嵌合部材17の上方移動を抑制することができる。
【0088】
この発明の態様として、図8に示すように、上辺部133uは、フード4閉状態において、車体側面視で前後方向に平行かつ直線状に延びるように形成されたことを特徴とする。
【0089】
前記構成によれば、上辺部133uは、車体側面視で例えば、後方ほど上方へ傾斜して延びる直線状に形成された構成のように、嵌合部材17に上方荷重が入力された場合において、嵌合部材17が上辺部133uに沿って後方へスライドするように付勢されることがないため、嵌合部材17がリンクアーム凹部133の後方開口から抜け難くすることができる。
【0090】
ところで、出願人は、通常時において、嵌合部材17に上方荷重が入力された場合において、嵌合部材17からリンクアーム13に作用する荷重によってリンクアーム凹部133に対する嵌合部材17の嵌合が解除されるか否かについて、リンクアーム後側回転軸24xとキックプレート回転軸25xとに対する嵌合部材17の図14に例示するような様々な位置関係に基づいて考察を行った。
【0091】
リンクアーム後側回転軸24xとキックプレート回転軸25xとに対する嵌合部材17の、図14(a)~(f)に例示される位置関係は、いずれもフード4閉状態において、上述した実施形態とは異なる位置関係を示している。
具体的に、前記位置関係として、図14(a)~(e)は、いずれも本発明の構成を満たす場合における、図14(f)は、上述した本発明の構成を満たさない比較例の場合における、夫々リンクアーム後側回転軸24xとキックプレート回転軸25xとに対する嵌合部材17の位置関係の一例を示している。
【0092】
図14(a)(b)(c)は、いずれも嵌合部材17がリンクアーム後側回転軸24xの直後(同じ高さで後方)に配置された場合の前記位置関係を示している。さらに、図14(a)は、キックプレート回転軸25xがリンクアーム後側回転軸24xの直下に配置された場合、図14(b)はキックプレート回転軸25xが嵌合部材17の直下に配置された場合、図14(c)はキックプレート回転軸25xが嵌合部材17の直後に配置された場合を示している。
【0093】
また、図14(d)(e)は、いずれも嵌合部材17がリンクアーム後側回転軸24xの後方かつ上方に配置された場合を示している。さらに、図14(d)はキックプレート回転軸25xがリンクアーム後側回転軸24xの直下、図14(e)はキックプレート回転軸25xがリンクアーム後側回転軸24xおよび嵌合部材17よりも後方かつ下方に配置された場合を示している。
【0094】
さらに、図14(b)(c)(e)の場合は、リンクアーム後側回転軸24xを中心とし、嵌合部材17の中心を通過する円の、嵌合部材17の中心における接線Lt上にキックプレート回転軸25xが位置する場合を示し、図14(a)(d)の場合は、接線Ltより前方の領域にキックプレート回転軸25xが位置する場合を示している。
【0095】
そして、例えば、嵌合部材17、リンクアーム後側回転軸24xおよびキックプレート回転軸25xが図14(a)に示すような位置関係で配置されている場合において、通常時に作業者がフード4の後部を持ち上げる等して嵌合部材17に上方荷重が入力時に、リンクアーム凹部133には、リンクアーム後側回転軸24xを中心とし、嵌合部材17の中心を通過する円の、嵌合部材17の中心における接線方向の力fが嵌合部材17から入力される。
【0096】
この接線方向の力fのうち、嵌合部材17とキックプレート回転軸25xとを結ぶ直線に直交する方向の分力fbは、前上方向を向く。図14(a)に示すように、この分力fbは、嵌合部材17が後方へ開口するリンクアーム凹部133から抜け出る後方向へ作用せずに、嵌合部材17が後方へ向けて開口するリンクアーム凹部133に嵌り込む方向に作用する。
【0097】
さらに、図14(b)~(e)の場合においても、図14(a)の場合と同様に、通常時にフード4の後部を持ち上げる等して嵌合部材17に上方荷重が入力時に、リンクアーム凹部133には、接線方向の力f、およびその分力fbが嵌合部材17から入力される。
【0098】
そして図14(b)~(e)の場合における、接線方向の力f、およびその分力fbは、図14(a)の場合とは異なる方向に作用するが、嵌合部材17が後方へ開口するリンクアーム凹部133から抜け出る後方向の分力fbへは少なくとも作用しない。
【0099】
このため、図14(a)~(e)の場合においては、いずれの場合も通常時にフード4の後部を持ち上げる等して嵌合部材17に上方荷重が入力時に、嵌合部材17をリンクアーム凹部133に嵌合された状態を保つことができる。
【0100】
従って、図14(a)~(e)の場合においては、いずれの場合も前突時に、後方に開口するリンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126とに対して嵌合部材17の嵌合が解除される一方で、例えば、車両走行時の車体の振動や、ユーザがフード4を持ち上げようとするなどして、前突時以外の通常時において、前突時と同様にフード4の後部に上方荷重が入力された場合においても、リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126とから嵌合部材17が意に反して抜けない構成とすることができる。
【0101】
一方、図14(f)は、嵌合部材17がフード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xの高さよりも下方に配置された場合を示している。
【0102】
さらに、図14(f)は、リンクアーム後側回転軸24xを中心とし、嵌合部材17の中心を通過する円の、嵌合部材17の中心における接線Ltより後方の領域にキックプレート回転軸25xが位置する場合を示している。
【0103】
そして、図14(f)の場合においても、通常時にフード4の後部を持ち上げる等して嵌合部材17に上方荷重が入力時に、リンクアーム凹部133には、図14(a)の場合と同様に、接線方向の力f、およびその分力fbが作用する。
【0104】
しかし、図14(f)の場合における、接線方向の力fの分力fbは、嵌合部材17が後方へ開口するリンクアーム凹部133から抜け出る後方向の成分を有して作用する。
【0105】
このため、図14(f)の場合には、通常時にフード4の後部を持ち上げる等して嵌合部材17に上方荷重が入力時には、嵌合部材17をリンクアーム凹部133に嵌合された状態を保つことができないおそれがある。
【0106】
上述した考察に基づいて本発明の構成について整理すると、本発明は、図6に示すように、リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126が後方に向けて開口し、後方が嵌合部材17の嵌合解除方向となる構成、リンクアーム凹部133がリンクアーム後側回転軸24xよりも後方に位置する構成、並びに、キックプレート回転軸25xの高さ以上の位置に嵌合部材17が配置された構成であることを前提としている。
【0107】
さらに、本発明は、これら3つの前提構成を満たすことに加えて、嵌合部材17がフード4閉状態において、リンクアーム後側回転軸24xの後方、且つ、該リンクアーム後側回転軸24xの高さ以上の位置に配置された構成を特徴としている。
【0108】
このため、本発明は、上述した実施形態の構成(すなわち、リンクアーム後側回転軸24xとキックプレート回転軸25xとに対する嵌合部材17の本実施形態のような位置関係)に限定せず、図14(a)~(e)に例示されたような構成も含めて上述した前提構成および特徴とする構成を満たす範囲で他の構成を採用してもよい。
【0109】
また、図3図6図7に示すように、上述した実施形態におけるフード側アーム12は、後部に、車体側面視でリンクアーム凹部133と同じ凹形状のフード側アーム凹部126が形成された構成としている。
【0110】
前記構成によれば、フード側アーム凹部126に嵌合部材17を嵌合させることで、フード側アーム12と、嵌合部材17を保持するプレート部材14との一体性を高めることができる。
【0111】
さらに、リンクアーム凹部133とフード側アーム凹部126との双方に嵌合部材17を嵌合させることで、フード側アーム12と、リンクアーム13との一体性も高めることができる。
【0112】
従って、ユーザがフード4により開口を開閉する際に、フード側アーム12がプレート部材14およびリンクアーム13に対してガタつくことなくスムーズに開閉させることができる。
【0113】
但し、本発明は、少なくともリンクアーム13に、嵌合部材17と嵌合するリンクアーム凹部133を備えた構成であれば、フード側アーム凹部126が形成されていないフード側アーム12を備えてもよい。
【0114】
また、本発明のリンクアーム凹部の上辺部は、嵌合部材17に上方荷重が入力された際においても、嵌合部材17が上辺部133uに沿って後方へスライドするような方向へ付勢されることがないように嵌合部材17からの荷重入力方向に対して極力直交する方向に延びる形状であれば、上述した本実施形態におけるリンクアーム凹部133の上辺部133uのように、前後方向に平行に延びる直線状に形成された構成に限定せず(図8参照)、例えば、後方ほど下方へ傾斜して延びる形状を採用してもよい。
【0115】
このように、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【符号の説明】
【0116】
4…フード
8…アクチュエータ
10…ヒンジ機構
11…車体側アーム
12…フード側アーム
13…リンクアーム
14…プレート部材
17…嵌合部材
24x…リンクアーム後側回転軸(リンクアーム回転軸)
25x…キックプレート回転軸(プレート回転軸)
133…リンクアーム凹部
143…被押圧面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14