(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】タブ端子を備えるパワーリレー
(51)【国際特許分類】
H01H 50/14 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H01H50/14 C
(21)【出願番号】P 2021015948
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【氏名又は名称】夫 世進
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 博之
(72)【発明者】
【氏名】古川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 真一
(72)【発明者】
【氏名】針持 裕之
(72)【発明者】
【氏名】堀江 彩太
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-68926(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029599(WO,A1)
【文献】特開2020-174006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0069450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00 ー 50/92
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの可動接点、及び、少なくとも一つの固定接点を備える接点開閉部と、
前記可動接点が対応する前記固定接点に接触し、また、引き離されるようにする開閉駆動部と、
前記接点開閉部の少なくとも一対の入出力端に電気的に接続される少なくとも二対の入出力タブ端子と、
前記開閉駆動部の制御用端子に電気的に接続される一対の制御用タブ端子とを備え、
前記各入出力端に、2つの前記入出力タブ端子が電気的に接続されており、これら2つの前記入出力タブ端子は、これらの厚み方向に互いに並ぶように配置され、
前記入出力タブ端子、及び、前記制御用タブ端子は、いずれも、厚み及び幅が同一であるかまたは同レベルであり、
前記開閉駆動部には、2つの前記可動接点を備えた導電性の可動端子部が備えられ、前記可動接点が対応する前記固定接点に接触した際には、2
対の前記入出力タブ端子が互いに電気的に接続される、パワーリレー。
【請求項2】
前記各入出力端と、これに電気的に接続される2つの前記入出力タブ端子は、金属製の一つの板片から曲げ加工により得られうる一つのコの字状の端子部材により形成されている、請求項1に記載のパワーリレー。
【請求項3】
前記コの字状の端子部材の一部が、前記固定接点をなしている、請求項2に記載のパワーリレー。
【請求項4】
定格通電電流が30Aよりも大きく、前記各入出力タブ
端子は、厚みが1mm以下であり、幅が7mm以下である、請求項1~3のいずれかに記載のパワーリレー。
【請求項5】
前記可動端子部は、前後方向に長く延びる水平板状であり、前記可動端子部の前方部分の上面、及び後方部分の上面に、それぞれ前記可動接点が形成される、請求項1に記載のパワーリレー。
【請求項6】
前記可動端子部は、往復可動部の作動端部から前後へと延びる、請求項5に記載のパワーリレー。
【請求項7】
前記コの字状の端子部材は、
下端部をなす矩形状の水平板部分と、
この水平板部分の左右端から上方へと延長されて、互いに平行に配置された、上下に長い左右の垂直板部分とからなり、
前記水平板部分の下面が、前記固定接点をなし、
一のコの字状の端子部材における水平板部分及び左右の垂直板部分と、他の一のコの字状の端子部材における水平板部分及び左右の垂直板部分とは、対応するもの同士、前後方向に、それぞれ整列されて配置される請求項2に記載のパワーリレー。
【請求項8】
前記各入出力端と、これに電気的に接続される2つの前記入出力タブ端子は、金属製の一つの板片から曲げ加工により得られうる一つのコの字状の端子部材により形成されており、
前記コの字状の端子部材は、
下端部をなす矩形状の水平板部分と、
この水平板部分の左右端から上方へと延長されて、互いに平行に配置された、上下に長い左右の垂直板部分とからなり、
前記水平板部分の下面が、前記固定接点をなし、
一のコの字状の端子部材における水平板部分及び左右の垂直板部分と、他の一のコの字状の端子部材における水平板部分及び左右の垂直板部分とは、対応するもの同士、前後方向に、それぞれ整列されて配置され、
前記可動端子部は、前後方向に長く延びる水平板状であり、前記可動端子部の前方部分の上面、及び後方部分の上面に、それぞれ前記可動接点が形成されている、請求項1に記載のパワーリレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出力端子としてタブ端子を備えるパワーリレーに関する。特には、電気自動車の急速充電や、各種蓄電システム、エレベータや産業ロボットなどに用いられる高容量(例えば100V以上で10A以上)のパワーリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
タブ端子(IEC60760 Flat, quick-connect terminations)は、リセプタクル(接続子)を先端に有する電気ケーブルやソケットに差し込まれることで電気的接続を実現する。タブ端子を備える高容量のパワーリレーは、例えば、電気自動車や非電気自動車に搭載されて用いられており、この場合、タブ端子は、基本的にはISO TS16949の規格に準拠するものとなっている。
【0003】
このような高容量のパワーリレーの端子配列は、一般に、4極(SPST;1a)または5極(SPDT;1c)となっている。これらのうち2つの端子は、制御回路用端子(コイル端子)であり、残りが、パワー入出力用である。例えば、特許文献1~2には、4極のパワーリレーの例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-117810公報
【文献】特開2020-174006公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワーリレーのタブ端子は、さらなる高容量化に対応するためには、端子の幅及び厚みを大きくすることで、タブ端子の横断面積を増大させる必要がある。電流が大きくなるとその2乗で発熱量が大きくなるためタブ端子接続部の信頼性を確保するためには、端子接続部の抵抗の低減及び発熱の低下を図る必要があるからである。
【0006】
ところが、その場合、端子寸法の増大により製品寸法も増大しうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
好ましい実施形態において、タブ端子を備えるパワーリレーは、(1)少なくとも一つの可動接点、及び、少なくとも一つの固定接点を備える接点開閉部と、(2)前記可動接点が対応する前記固定接点に接触し、また、引き離されるようにする開閉駆動部と、(3)前記接点開閉部の少なくとも一対の入出力端に電気的に接続される少なくとも二対の入出力タブ端子と、(4)前記開閉駆動部の制御用端子に電気的に接続される一対の制御用タブ端子とを備え、(5)前記各入出力端に、2つの前記入出力タブ端子が電気的に接続されており、これら2つの前記入出力タブ端子は、これらの厚み方向に互いに並ぶように、近接して配置され、(6)前記入出力タブ端子、及び、前記制御用タブ端子は、いずれも、厚み及び幅が同一であるかまたは同レベルである。
【0008】
ここで、同レベルとは、両者の寸法に差があっても、より小さい方の寸法を基準とした差が、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下である場合とすることができる。
【0009】
好ましい実施形態において、前記各入出力端と、これに電気的に接続される2つの前記入出力タブ端子は、金属製の一つの板片から曲げ加工により得られうる一つのコの字状の端子部材により形成されている。また、好ましくは、前記コの字状の端子部材の一部が、前記固定接点をなしている。
【0010】
好ましい実施形態において、定格通電電流が30Aよりも大きく、例えば35~100Aであり、前記各入出力タブは、厚みが1mm以下、例えば0.5~0.9mmであり、幅が7mm以下、例えば5~7mmである。
【0011】
好ましい実施形態において、前記開閉駆動部がプランジャを備え、前記プランジャの作動端部には、2つの前記可動接点を備えた導電性の可動端子部が備えられ、前記可動接点が対応する前記固定接点に接触した際には、2つの前記入出力タブ端子が互いに電気的に接続される。
【発明の効果】
【0012】
好ましい実施形態によると、少なくとも、下記(i)~(ii)のいずれかの効果を得ることができる。
(i) タブ端子を省スペースに設置でき、製品の小型化が実現される。
(ii) 大容量の安定した通電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態のパワーリレー及びそのタブ端子、並びにこれに接続されるリセプタクル付きの電気ケーブルを示す外観斜視図である。
【
図2】一対のコの字状の端子部材、及びその近傍を示す、要部の透視斜視図である。
【
図3】従来の典型的なリレー及びそのタブ端子について示す、
図1と同様の外観斜視図である。
【
図4】
図2の従来技術のパワーリレー、及び、
図1の実施形態のパワーリレーを、電気ケーブルが接続された状態で対比して示す一対の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願実施形態のパワーリレーについて、
図1~2を用いて説明する。
【0015】
図1は、実施形態のパワーリレー及びそのタブ端子、並びにこれに接続されるリセプタクル付きの電気ケーブルを示す外観斜視図である。
図2は、
図2のパワーリレーの要部を示す透視斜視図であり、特に一対のコの字状の端子部材、及びその近傍を示す。但し、
図2では、端子の形状が変更されている。
図3は、従来の典型的なリレー及びそのタブ端子について示す、
図1と同様の外観斜視図である。
図4は、
図3の従来技術のパワーリレー、及び、
図1の実施形態のパワーリレーを、電気ケーブルが接続された状態で対比して示す一対の外観斜視図である。
【0016】
パワーリレー10の端子形成面(図での上面)13には、4本の入出力タブ端子1-1~1-4と、2本の制御用タブ端子2-1~2-2とが備えられている。説明の便宜上、各図における左上側を左側とし右下側を右側とした場合、入出力タブ端子1-1~1-4は、矩形の端子接続面の左方の縁に近接して配置され、制御用タブ端子2-1~2-2は、右方の縁に近接して配置されている。入出力タブ端子1-1~1-4は、いずれも、端子面が、右方の縁に沿った方向、すなわち、前後方向Z1に延びている。なお、制御用タブ端子2-1~2-2は、端子面が、前後の縁に沿った方向、すなわち、左右方向に延びている。なお、ここでの前後、左右及び上下は、実際の使用時の配置とは無関係である。
【0017】
第1~第4の入出力タブ端子1-1~1-4は、2本ずつが、タブ端子の厚みの方向にて互いに近接して配置される。すなわち、第1及び第2の入出力タブ端子1-1~1-2が、これらの厚みの方向に互いに近接して並べられて、第1の入出力端子部11をなしている。また、第3及び第4の入出力タブ端子1-3~1-4が、これらの厚みの方向に互いに近接して並べられて、第2の入出力端子部12をなしている。第1の入出力端子部11と、第2の入出力端子部12とは、端子形成面13の左辺に沿って、前後方向Z1に並べられている。
【0018】
第1の入出力端子部11をなす、第1及び第2の入出力タブ端子1-1~1-2は、パワーリレー10のケーシング14の内部にて、互いに電気的に接続されている。同様に、第2の入出力端子部12をなす、第3及び第4の入出力タブ端子1-3~1-4は、パワーリレー10のケーシング14の内部にて、互いに電気的に接続されている。すなわち、タブ端子の厚みの方向にて互いに近接する、2つ組の入出力タブ端子1-1~1-2及び1-3~1-4は、一つの組(一対)をなす入出力タブ端子1同士で、互いに接続されている。言い換えると、4本の入出力タブ端子1-1~1-2及び1-3~1-4は、2つずつが互いに接続されることで、第1及び第2の入出力端子部11~12を形成している。
【0019】
4本の入出力タブ端子1-1~1-4には、それぞれ、4本の入出力用電気ケーブル3-1~3-4が、その先端のレセプタクル31を通じて接続されている。なお、レセプタクル31には、絶縁性の樹脂カバー32が被せられている。
【0020】
第1及び第2の入出力端子部11~12をなす、それぞれの対の出力タブ端子1-1~1-2及び1-3~1-4は、
図1中に示すように、レセプタクル31及び樹脂カバー32が配置できるだけの間隔でもって、互いに離間されている。この間隔は、これらが、ぎりぎりに配置可能な程度であっても良く、また、多少の遊びをもって配置されるものであっても良い。
【0021】
図2中に示すように、各対の入出力タブ端子1-1~1-2及び1-3~1-4は、一つのコの字状端子部材4-1~4-2により形成されている。コの字状端子部材4-1~4-2は、一つの短冊状の金属の厚板が、コの字状に折り曲げられることで形成される形態をなしている。なお、
図2では、出力タブ端子1が、先端側で細くなっているものとして描かれているが、高容量のパワーリレーでは、
図1に示す形状であるのが好ましい。
【0022】
また、
図2中に示すように、前後に並ぶ2つのコの字状端子部材4-1~4-2には、いずれも、下端面(パワーリレー10の内側を向いた面)に、固定接点41が形成される。前後方向Z1に並ぶ2つの固定接点41に、それぞれ、下方から、可動接点51が向き合って配置されている。前後方向Z1に並ぶ2つの可動接点51は、一つの前後方向Z1に長い金属板からなる可動端子部5の両端部の上面に形成されている。この可動端子部5は、プランジャ6により上下に駆動されて、接点開閉動作を行う。
【0023】
図2に示すように、2つのコの字状端子部材4-1~4-2は、形状及び寸法が、互いに同一である。また、
図1に具体的に示すように、第1~第4の入出力タブ端子1-1~1-4は、形状及び寸法が、互いに同一であり、また、2つの制御用タブ端子2-1~2-2とも、形状及び寸法が同一である。
【0024】
したがって、
図1に示すように、入出力タブ端子1-1~1-4にそれぞれ接続される入出力用電気ケーブル3-1~3-4には、制御用タブ端子2-1~2-2にそれぞれ接続される制御用電気ケーブル35-1~35-2と、形状及び寸法が同一のレセプタクル31を用いることができる。そのため、端子接続のための圧着の操作や、必要な場合のはんだ付けなどを、各タブ端子1,2について、同一の操作で、効率よく行うことができる。
【0025】
具体例において、実施形態のパワーリレー10におけるタブ端子1,2は、いずれも、幅が6.3mm、厚みが0.8mm、横断面積が5.04mm2であり、定格通電電流30Aに対応可能である。そのため、2つ組(2連)の入出力タブ端子1-1~1-2及び1-3~1-4による各入出力端子部11~12は、定格通電電流60Aに対応可能である。また、互いに対をなす入出力タブ端子1同士の間隔(2連ピッチ)は、最小で6.5mmまで狭くすることができる。
【0026】
図3には、
図1の実施形態のパワーリレー10と同一の容量(定格制御容量=定格通電電流×定格通電電圧)を有する従来のパワーリレー100について示す。制御用タブ端子2-1~2-2は、
図1の実施形態と同一である。
【0027】
従来のパワーリレー100は、各入出力端子部が一つの入出力タブ端子11’,12’からなる。これらの入出力タブ端子11’,12’は、寸法が、制御用タブ端子2-1~2-2より大きい。具体例において、従来のパワーリレー100における入出力タブ端子11’,12’は、いずれも、幅が9.5mm、厚みが1.2mm、横断面積が11.4mm2であり、定格通電電流60Aに対応可能である。
【0028】
図4には、定格通電電流が同一で定格制御容量が同一である、従来例及び実施形態の同種のパワーリレーを並べて示す。
図4に示されるように、端子形成面13の左の縁に沿って、端子面が前後方向Z1に沿うように配置される入出力タブ端子1,11’,12’が配置される。そのため、従来例のパワーリレー100の入出力タブ端子11’,12’の幅に比べて、実施形態のパワーリレー10の入出力タブ端子1の幅が小さい。この結果、これら入出力タブ端子を配置し、電気ケーブルのレセプタクル31に接続するのに必要な、前後方向Z1の寸法を小さくできる。この結果、本願実施形態によると、
図4に模式的に示すように、他の構成についても前後方向Z1の寸法を小さくできるならば、パワーリレーの前後方向Z1の寸法を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1-1~1-4 第1~第4の入出力タブ端子
10 実施形態のパワーリレー
100 従来のパワーリレー
11 第1の入出力端子部 12 第2の入出力端子部
11’ 第1の入出力タブ端子 12’ 第2の入出力タブ端子
13 端子形成面
14 ケーシング
2-1~2-2 制御用タブ端子
3-1~3-4、3-1’,3-2’ 入出力用電気ケーブル
31 レセプタクル 32 樹脂カバー
35-1~35-2 制御用電気ケーブル
4-1~4-2 コの字状端子部材
41 固定接点
5 可動端子部
51 可動接点
6 プランジャ
Z1 前後方向