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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電装装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20240717BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240717BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240717BHJP
【FI】
B60R16/04 J
B60R16/02 610A
B60K1/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021030107
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131254
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 有吾
(72)【発明者】
【氏名】柘植 惇史
(72)【発明者】
【氏名】安藤 昇一郎
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-206303(JP,A)
【文献】特開2012-091530(JP,A)
【文献】特開2006-120490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60R 16/02
16/04
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部を有し、車両の幅方向に延びるようにしてフロアパネル上に設置されたクロスメンバと、
前記孔部よりも上方に位置するようにして前記クロスメンバに取付けられ、車両の幅方向に延びる第1のワイヤハーネスとを有する車両に設置される電装装置であって、
前記フロアパネル上に設置された電装部品と、
前記電装部品を覆うように前記フロアパネルに設置されたカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、前記第1のワイヤハーネスに対向する側壁と、前記側壁に設けられ、前記側壁の壁面から前記第1のワイヤハーネス側に膨出する膨出部とを有し、
前記膨出部が、前記第1のワイヤハーネスの上方を覆うことを特徴とする電装装置。
【請求項2】
前記クロスメンバは、前記孔部よりも上方に設けられ、前記第1のワイヤハーネスを前記クロスメンバに固定する第1の取付部と、前記第1の取付部よりも下方に設けられ、前記第1のワイヤハーネスを前記クロスメンバに固定する第2の取付部とを含んで構成され、
前記膨出部は、前記第1の取付部よりも上方に位置し、車両の平面視で前記第1の取付部と重なっていることを特徴とする請求項1に記載の電装装置。
【請求項3】
前記車両は、前記第1のワイヤハーネスと異なる第2のワイヤハーネスを有し、
前記フロアパネルは、前記フロアパネルの下方から前記カバー部材の内部に前記第2のワイヤハーネスを通す開口部を有し、
前記電装部品は、前記カバー部材の前記側壁と対向する側面に、前記第2のワイヤハーネスが接続される端子部を有し、
前記第2のワイヤハーネスは、前記膨出部によって形成される空間部に配索されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルームやフロアパネルの下部にバッテリ等の電装部品が収容しきれない場合に、高圧バッテリをフロアパネルとシートの間に設置した車両下部構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載される車両下部構造は、電装部品の前方に位置するように車幅方向に延びるクロスメンバが設置されており、クロスメンバには、電装部品とクロスメンバの間に位置するように車幅方向に延びるワイヤハーネスが取付けられている。
【0004】
クロスメンバの車幅方向の中央部には車両前後方向に貫通した孔が設けられており、孔内には、空調用ダクトと他の空調用ダクトとの接続部分が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-206303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車両下部構造にあっては、クロスメンバの車幅方向の中央部にダクトの接続部分が配置される孔が設けられているので、ワイヤハーネスをクロスメンバに取付けた場合に、孔を迂回してクロスメンバに対するワイヤハーネスの取付点を設定する必要がある。
【0007】
このため、孔がクロスメンバの下部に設けられ、ワイヤハーネスの取付け点が孔よりも上方に設定される場合には、ワイヤハーネスの車幅方向の中央部が山の頂上となる。
【0008】
このため、車両が車幅方向の側方から衝撃を受けた場合に、ワイヤハーネスが上方に曲がるように変形する。この結果、ワイヤハーネスの変形による衝撃がフロアパネルよりも上方に加わるおそれがあり、ワイヤハーネスの変形による衝撃がフロアパネルよりも上方に加わるのを抑制するには、未だ、改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両に車幅方向から衝撃が加わった場合に、ワイヤハーネスの変形による衝撃がフロアパネルよりも上方に加わることを抑制できる電装装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、孔部を有し、車両の幅方向に延びるようにしてフロアパネル上に設置されたクロスメンバと、前記孔部よりも上方に位置するようにして前記クロスメンバに取付けられ、車両の幅方向に延びる第1のワイヤハーネスとを有する車両に設置される電装装置であって、前記フロアパネル上に設置された電装部品と、前記電装部品を覆うように前記フロアパネルに設置されたカバー部材とを備え、前記カバー部材は、前記第1のワイヤハーネスに対向する側壁と、前記側壁に設けられ、前記側壁の壁面から前記第1のワイヤハーネス側に膨出する膨出部とを有し、前記膨出部が、前記第1のワイヤハーネスの上方を覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、車両に車幅方向から衝撃が加わった場合に、ワイヤハーネスの変形による衝撃がフロアパネルよりも上方に加わることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のフロアパネルの平面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のクロスメンバを後方から見た図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリパックとその周辺のフロアパネルの平面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリパックを左方から見た図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリとその周辺のフロアパネルの平面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリを左方から見た図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリパックを下方から見た図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリを前方から見た図である。
図9図9は、図3のIX-IX矢視断面図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る電装装置を備えた車両のバッテリパックを前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る電装装置は、孔部を有し、車両の幅方向に延びるようにしてフロアパネル上に設置されたクロスメンバと、孔部よりも上方に位置するようにしてクロスメンバに取付けられ、車両の幅方向に延びる第1のワイヤハーネスとを有する車両に設置される電装装置であって、フロアパネル上に設置された電装部品と、電装部品を覆うようにフロアパネルに設置されたカバー部材とを備え、カバー部材は、第1のワイヤハーネスに対向する側壁と、側壁に設けられ、側壁の壁面から第1のワイヤハーネス側に膨出する膨出部とを有し、膨出部が、第1のワイヤハーネスの上方を覆う。
【0014】
これにより、本発明の一実施の形態に係る電装装置は、車両に車幅方向から衝撃が加わった場合に、ワイヤハーネスの変形による衝撃がフロアパネルよりも上方に加わることを抑制できる。
【実施例
【0015】
以下、本発明の一実施例に係る電装装置について、図面を用いて説明する。
【0016】
図1から図10は、本発明の一実施例に係る電装装置を示す図である。図1から図10において、上下前後左右方向は、バッテリパックが搭載された車両の前後方向を前後方向、車両の左右方向(車両の幅方向)を左右方向、車両の上下方向(車両の高さ方向)を上下方向とする。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、フロアパネル2を有する。フロアパネル2の左端部には左側サイドシル3Lが設けられており、左側サイドシル3Lは、フロアパネル2に沿って前後方向に延びている。フロアパネル2の右端部には右側サイドシル3Rが設けられており、右側サイドシル3Rは、フロアパネル2に沿って前後方向に延びている。
【0018】
フロアパネル2の車幅方向の中央部にはフロアトンネル4が設けられており、フロアトンネル4は、フロアパネル2から上方に膨出している。
【0019】
フロアトンネル4と左側サイドシル3Lの間には前側クロスメンバ5と後側クロスメンバ6が取付けられており、前側クロスメンバ5と後側クロスメンバ6は、前後方向に離隔して車幅方向に延びている。
【0020】
フロアトンネル4と右側サイドシル3Rの間には前側クロスメンバ7と後側クロスメンバ8が取付けられており、前側クロスメンバ7と後側クロスメンバ8は、前後方向に離隔して車幅方向に延びている。
【0021】
図2に示すように、前側クロスメンバ5にはワイヤハーネス9の一部が取付けられており、ワイヤハーネス9は、車幅方向に延びている。具体的には、図1に示すように、ワイヤハーネス9は、右側サイドシル3Rに沿って前後方向に延びており、右側サイドシル3Rの延びる方向の中央部から分岐されて前側クロスメンバ7に沿ってフロアトンネル4に延びている。
【0022】
ワイヤハーネス9は、フロアトンネル4から前側クロスメンバ5に沿って車幅方向に延びた後、左側サイドシル3Lに沿って前後方向に延びている。本実施例の前側クロスメンバ5は、クロスメンバを構成し、ワイヤハーネス9は、第1のワイヤハーネスを構成する。
【0023】
図2に示すように、前側クロスメンバ5は、車幅方向の中央部に形成された孔部5aを有する。孔部5aは、前側クロスメンバ5を挟んで前後方向に設置される車載部品を通すものである。例えば、孔部5aには前側クロスメンバ5の前方に設置される空調装置のダクトが挿通されており、孔部5aに挿通されるダクトは前側クロスメンバ5の後方に延びている。
【0024】
前側クロスメンバ5は、バンド状部材10Aを有する。バンド状部材10Aは、孔部5aよりも上方に設けられており、ワイヤハーネス9の車幅方向の中央部を前側クロスメンバ5に固定している。
【0025】
前側クロスメンバ5は、バンド状部材10B、10Cを有する。バンド状部材10B、10Cは、バンド状部材10Aよりも下方で、かつバンド状部材10Aに対して前側クロスメンバ5の車幅方向の左右端部に位置しており、ワイヤハーネス9の左右端部を前側クロスメンバ5に固定している。
【0026】
すなわち、バンド状部材10Bは、バンド状部材10Aに対して車幅方向の左端部側に位置し、バンド状部材10Cは、バンド状部材10Aに対して車幅方向の右端部側に位置している。
【0027】
ここで、ワイヤハーネス9の車幅方向の中央部および車幅方向の左右端部とは、前側クロスメンバ5の車幅方向の長さを基準とし、前側クロスメンバ5の車幅方向に配索されるワイヤハーネス9の部位における車幅方向の中央部および車幅方向の左右端部を意味する。
【0028】
本実施例のバンド状部材10Aは、第1の取付部を構成し、バンド状部材10B、10Cは、第2の取付部を構成する。
【0029】
図1図3図4に示すように、フロアパネル2の上面2aには電装装置としてのバッテリパック11が設置されており、バッテリパック11は、図示しない助手席とフロアパネル2の間の空間に設置されている。なお、バッテリパック11は、図示しない運転席とフロアパネル2の間の空間に設置されてもよい。
【0030】
バッテリパック11は、助手席とフロアパネル2の間に設置されているので、エンジンルームに比べて低温環境にある車室にバッテリパック11を設置でき、後述するバッテリ12の性能を引き出し易い。
【0031】
これに加えて、荷室のスペースがバッテリパック11によって阻害されることを防止してバッテリパック11の設置性能を向上できる上に、バッテリパック11をエンジンルームに設置する必要がないので、エンジンルームの小型化を図ることができる。
【0032】
図1に示すように、車両1の平面視でバッテリパック11は、左側サイドシル3L、フロアトンネル4、前側クロスメンバ5および後側クロスメンバ6の間に位置している。
【0033】
図5図6に示すように、バッテリパック11は、電装部品としてバッテリ12を有する。バッテリ12は、図示しない複数のバッテリモジュールと、複数のバッテリモジュールを収容し、バッテリモジュールを保護するバッテリホルダと、バッテリホルダの上面に設けられた基板部23とを有する。
【0034】
図5図7に示すように、バッテリ12には複数の固定片12A、12B、12C、12Dが設けられており、固定片12A、12B、12C、12Dは、バッテリ12の側面から車幅方向の外方(左右外方)に突出している。
【0035】
図6に示すように、フロアパネル2にはブラケット14が設けられており、ブラケット14には固定片14A、14Bが設けられている(図5参照)。
【0036】
固定片14A、14Bは、ブラケット14の右端部から上方に突出しており、フロアパネル2の上面2aよりも高い位置に位置している。
【0037】
ブラケット14には固定片14C、14D(図5参照)が設けられている。固定片14C、14Dは、ブラケット14の左端部から上方に突出しており、フロアパネル2の上面2aよりも高い位置に位置している。固定片14A、14Bと固定片14C、14Dは、同一の高さ位置に位置している。
【0038】
固定片14A、14Bには図示しないボルトによってバッテリ12の固定片12A、12Bが固定されている。固定片14C、14Dにはボルト51Aによってバッテリ12の固定片12C、12Dが固定されている。本実施例の固定片12A、12B、12C、12Dは、固定部を構成する。
【0039】
これにより、バッテリ12は、ブラケット14によってフロアパネル2から上方に離隔した状態で、ブラケット14を介してフロアパネル2に固定されている。本実施例の固定片14A、14B、14C、14Dは、被固定部を構成する。
【0040】
図5図8に仮想線で示すように、バッテリ12の前面12aの上部には端子部13A、13Bが設けられており、車両1の平面視で端子部13A、13Bは、車幅方向に並んで設置されている。車幅方向は、端子部13A、13Bの配列方向Lである。以下、端子部13A、13Bの配列方向Lを端子部の配列方向Lという。
【0041】
端子部13A、13Bは、固定片14A、14B、14C、14Dよりも上方で、かつ、バッテリ12の高さ方向の中央部Cよりも上方に設置されている(図6参照)。なお、図5ではワイヤハーネス9を図示省略している。
【0042】
図9に示すように、端子部13A、13Bは、バッテリ12の前面12aの前方に位置して上下方向に延びている。なお、端子部13A、13Bは、同一形状を有し、車幅方向に重なっている。本実施例の端子部13Aは、第1の端子部を構成し、端子部13Bは、第2の端子部を構成する。
【0043】
図6に示すように、基板部23は、端子部13A、13Bよりも上方に設けられている。基板部23は、例えば、バッテリモジュールの残容量の検出や放充電制御等を行う制御基板である。
【0044】
図5に示すように、フロアパネル2には開口部2bが形成されている。開口部2bは、端子部13A、13Bに対してフロアトンネル4側に位置し、車両1の平面視で端子部の配列方向Lに並んでいる。
【0045】
端子部13Bは、端子部13Aよりも端子部の配列方向Lで開口部2bから離れた位置に設置されている。
【0046】
図8に示すように、バッテリパック11にはワイヤハーネス21、22が接続されている。ワイヤハーネス21、22は、フロアパネル2の下方から開口部2bを通過してフロアパネル2よりも上方で、かつ、端子部の配列方向Lに延びており、一端部に設けられたコネクタ21C、22Cが端子部13Aと端子部13Bにそれぞれ接続されている。
【0047】
ワイヤハーネス21、22は、フロアパネル2の下方においてフロアトンネル4を通って配索され、他端部が図示しない補機などの他の電装部品に接続されている。これにより、バッテリ12の電力がワイヤハーネス21、22によって補機などの他の電装部品に供給される。本実施例のワイヤハーネス21、22は、第2のワイヤハーネスを構成する。
【0048】
図4図9に示すように、バッテリパック11は、カバー部材15を有する。カバー部材15は、天井壁15Aと、天井壁15Aから下方に延びる前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eを有する。
【0049】
天井壁15Aは、開口部2bの上方とバッテリ12の上面とワイヤハーネス21、22を上方から覆っている。前壁15Bは、バッテリ12の前面12aとワイヤハーネス21、22を覆っており、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eは、バッテリ12の後面、左側面および右側面を覆っている。
【0050】
すなわち、開口部2bは、前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの内方に位置しており、カバー部材15によって覆われている。本実施例の前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eは、側壁を構成する。
【0051】
カバー部材15の前壁15Bは、前後方向でワイヤハーネス9に対向しており、ワイヤハーネス9は、車幅方向で前壁15Bに沿って配索されている(図3参照)。
【0052】
前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの下端部15uは、フロアパネル2に近接しており、バッテリ12の下面12uと同じ高さ位置に位置している(図9参照)。前壁15B、後壁15C、左側壁15Dおよび右側壁15Eの上下方向の長さ(高さ)は同一である。
【0053】
本実施例のバッテリ12の前面12aは、電装部品の側面を構成し、カバー部材15の前壁15Bは、カバー部材の側壁を構成する。
【0054】
図3図7に示すように、カバー部材15には覆い部15F、15Gが設けられている。覆い部15Fは、カバー部材15の右側壁15Eから外方(右方)に突出しており、バッテリ12の固定片12A、12Bを上方および左方から覆っている(図7図10参照)。
【0055】
覆い部15Gは、カバー部材15の左側壁15Eから外方(左方)に突出しており、バッテリ12の固定片12C、12Dを上方および左方から覆っている(図4図7参照)。
【0056】
図9に示すように、前後方向でバッテリ12の前面12aに対向するカバー部材15の前壁15Bには膨出部16が設けられている(図3図4図7参照)。
【0057】
膨出部16は、前壁15Bの下端部15uよりも上方に位置しており、前壁15Bの壁面15aに対してバッテリ12の前面12aから離れる方向に膨出している。
【0058】
図4図9に示すように、膨出部16は、傾斜部16tを有する。傾斜部16tは、前壁15Bの壁面15aから上方に向かうに従ってバッテリ12の前面12aから離れるように傾斜している。膨出部16において、傾斜部16tよりも上方に位置する膨出方向の先端部16aがバッテリ12の前面12aから前側に最も離れている。
【0059】
端子部13A、13Bは、膨出部16と同じ高さ位置に位置しており、前後方向で膨出部16に対向している。
【0060】
本実施例の端子部13A、13Bは、バッテリ12から前方に最も離れる膨出部16の膨出方向の先端部16aの位置と同じ高さ位置に位置している。
【0061】
図9に示すように、膨出部16は、カバー部材15の前壁15Bの壁面15aからワイヤハーネス9側に膨出しており、ワイヤハーネス9の上方を覆っている。
【0062】
膨出部16は、バンド状部材10Aよりも上方に位置している。図1に示すように、膨出部16は、車両1の平面視でバンド状部材10Aと重なっている。換言すれば、膨出部16は、上下方向でバンド状部材10Aと並んで設けられている。
【0063】
端子部13Bは、端子部13Aよりも端子部の配列方向Lで開口部2bから離れた位置に設置されているので、カバー部材15内におけるワイヤハーネス22の配索長さは、ワイヤハーネス21の配索長さよりも長くなる。
【0064】
図9に示すように、ワイヤハーネス22は、カバー部材15の内部において膨出部16によって形成される空間部17に設置されており、傾斜部16tに沿って端子部の配列方向Lに延びている。
【0065】
カバー部材15の内部において、ワイヤハーネス21は、膨出部16によって形成される空間部17に設置されるワイヤハーネス22よりもバッテリ12の前面12a側に設置されている。
【0066】
図8に示すように、バッテリ12は、上下方向(縦方向)の長さよりも車幅方向(横方向)の長さが長く形成されているので、カバー部材15の内部において、ワイヤハーネス21、22は、上下方向の配索長さよりも端子部の配列方向Lの配索長さが長くなるように配索されている。
【0067】
具体的には、ワイヤハーネス21、22は、それぞれ下側ワイヤハーネス部21A、22Aと上側ワイヤハーネス部21B、22Bとを有する。
【0068】
下側ワイヤハーネス部21A、22Aは、フロアパネル2の開口部2bからフロアパネル2よりも上方に延びている。
【0069】
上側ワイヤハーネス部21B、22Bは、下側ワイヤハーネス部21A、22Aの上端21a、22aから端子部の配列方向Lに延び、端子部13A、13Bに接続されている。
【0070】
本実施例のワイヤハーネス21、22は、カバー部材15の内部において上側ワイヤハーネス部21B、22Bが下側ワイヤハーネス部21A、22Aよりも長く配索されている。
【0071】
図10に示すように、膨出部16の端子部の配列方向Lの長さL1(図3参照)は、カバー部材15の内部におけるワイヤハーネス21、22の端子部の配列方向Lの配索長さL2よりも長く形成されている。
【0072】
膨出部16の上下方向の長さT1は、上側ワイヤハーネス部21B、22Bの上下方向の長さ(高さ)T2よりも長く形成されている。上側ワイヤハーネス部21Bまたは上側ワイヤハーネス部22Bの上下方向の長さT2とは、カバー部材15の内部において、最も高い位置に位置する上側ワイヤハーネス部21B、22Bの上端から最も低い位置に位置する上側ワイヤハーネス部21Bまたは上側ワイヤハーネス部22Bの下端部までの長さ(高さ)である。
【0073】
図9に示すように、バッテリ12の側面視において、すなわち、バッテリ12を車幅方向から見た場合に、膨出部16は、上側ワイヤハーネス部22Bと重なる位置に設置されている。すなわち、膨出部16と上側ワイヤハーネス部22Bは、前後方向に重なっている。
【0074】
なお、上側ワイヤハーネス部21B、22Bよりも下側ワイヤハーネス部21A、22Aが長くなるように配索してもよい。この場合には、バッテリ12の側面視において、膨出部16は、下側ワイヤハーネス部22Aと重なる位置に設置されてもよい。
【0075】
図9に示すように、バッテリ12の前面12aには切り欠き部12bが形成されており、切り欠き部12bは、端子部13A、13Bよりも下方に位置している。
【0076】
カバー部材15の内部には切り欠き部12bによって囲まれる空間部18が形成されている。
【0077】
図7図9に示すように、切り欠き部12bには放熱フィン12cが形成されており、放熱フィン12cは空間部18に設置されている。
【0078】
次に、本実施例のバッテリパック11の効果を説明する。
本実施例のバッテリパック11は、車両1に設置されており、車両1は、孔部5aを有し、車幅方向に延びるようにしてフロアパネル2上に設置された前側クロスメンバ5と、孔部5aよりも上方に位置するようにして前側クロスメンバ5に取付けられ、車幅方向に延びるワイヤハーネス9とを有する。
【0079】
バッテリパック11は、フロアパネル2上に設置されたバッテリ12と、バッテリ12を覆うようにフロアパネル2に設置されたカバー部材15とを備えている。
【0080】
カバー部材15は、ワイヤハーネス9に対向する前壁15Bと、前壁15Bに設けられ、前壁15Bの壁面15aからワイヤハーネス9側に膨出する膨出部16とを有し、膨出部16が、ワイヤハーネス9の上方を覆っている。
【0081】
これにより、車幅方向から車両1に衝撃が加わり、ワイヤハーネス9がフロアパネル2に向かって上方に変形した場合に(図2のワイヤハーネス9L参照)、ワイヤハーネス9を膨出部16に衝突させることができ、ワイヤハーネス9がフロアパネル2の上方に変形することを抑制できる。
【0082】
このため、ワイヤハーネス9がフロアパネル2の上方の助手席に衝突することを抑制し、助手席に衝撃が加わることを抑制できる。
【0083】
また、カバー部材15の膨出部16を利用してワイヤハーネス9が上方に変形することを抑制できるので、ワイヤハーネス9が上方に変形することを規制する新規な規制部材を設けることを不要にでき、車両1の部品点数や製造工数が増大することを防止して、車両1の製造コストを低減できる。
【0084】
また、本実施例のバッテリパック11によれば、前側クロスメンバ5が、孔部5aよりも上方に設けられ、ワイヤハーネス9を前側クロスメンバ5に取付けるバンド状部材10Aと、バンド状部材10Aよりも下方に位置し、ワイヤハーネス9を前側クロスメンバ5に取付けるバンド状部材10B、10Cを有する。
【0085】
これにより、バンド状部材10Aを前側クロスメンバ5の車幅方向の中央部に設け、バンド状部材10B、10Cをバンド状部材10Aよりも下方で前側クロスメンバ5の車幅方向の左右端部に設けた場合に、車幅方向から車両1に衝撃が加わったときに、ワイヤハーネス9の車幅方向の中央部が山の頂上となるようにワイヤハーネス9を変形させて、ワイヤハーネス9を膨出部16に衝突させるように設定できる。
【0086】
このため、ワイヤハーネス9がフロアパネル2の上方に変形することをより効果的に抑制できる。この結果、ワイヤハーネス9がフロアパネル2の上方の助手席に衝突することをより効果的に抑制し、助手席に衝撃が加わることをより効果的に抑制できる。
【0087】
また、本実施例のバッテリパック11によれば、フロアパネル2が、フロアパネル2の下方からカバー部材15の内部にワイヤハーネス21、22を配索するための開口部2bを有する。
【0088】
また、バッテリ12は、カバー部材15の前壁15Bと対向する前面12aに、ワイヤハーネス21、22が接続される端子部13A、13Bを有し、ワイヤハーネス21、22は、膨出部16によって形成される空間部17に配索されている。
【0089】
これにより、膨出部16によって形成された空間部17を利用して、カバー部材15の内部にワイヤハーネス21、22を配索できる。このため、ワイヤハーネス21、22の配索性能を向上できる上に、カバー部材15により多くのワイヤハーネスを配索できる。
【0090】
また、車両1の平面視で端子部13Aと端子部13Bと開口部2bとが端子部の配列方向Lに並び、ワイヤハーネス21、22が、フロアパネル2の下方から開口部2bを通過してフロアパネル2よりも上方で、かつ、端子部の配列方向Lに延びるようにして端子部13A、13Bに接続される場合に、カバー部材15の内部で長尺となるワイヤハーネス21、22を緩やかに曲げてカバー部材15の内部に配索できる。
【0091】
この結果、ワイヤハーネス21、22に過大な負荷が加わることを抑制でき、ワイヤハーネス21、22を保護できる。
【0092】
なお、本実施例の端子部は、端子部13A、13Bから構成されているが、端子部は3つ以上設けられてよい。したがって、ワイヤハーネスも3本以上配索されてもよい。
【0093】
また、膨出部16の空間部17にワイヤハーネス22を配索しているが、ワイヤハーネス21、22の両方を配索してもよい。
【0094】
また、電装部品としては、バッテリ12に限定されるものではなく、例えば、DC-DCコンバータに適用可能である。しかしながら、バッテリやDC-DCコンバータに限定されるものではなく、車両1に搭載される電気的な部品であればなんでもよい。
【0095】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0096】
1...車両、2...フロアパネル、2b...開口部、5...前側クロスメンバ、5a...孔部、9...ワイヤハーネス(第1のワイヤハーネス)、10A...バンド状部材(第1の取付部)、10B,10C...バンド状部材(第2の取付部)、11...バッテリパック(電装装置)、12...バッテリ(電装部品)、12a...前面(電装部品の側面)、13A,13B...端子部、15...カバー部材、15a...壁面(カバー部材の側壁の壁面)、15B...前壁(カバー部材の側壁)、16...膨出部、17...空間部(膨出部によって形成される空間部)、21,22...ワイヤハーネス(第2のワイヤハーネス)
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