(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】光コネクタケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20240717BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2021034557
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】長崎 泰介
(72)【発明者】
【氏名】井上 武
(72)【発明者】
【氏名】横地 寿久
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0294352(US,A1)
【文献】特開2000-171656(JP,A)
【文献】特開2015-175980(JP,A)
【文献】特開2007-333936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/30-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1方向に沿って延在する複数の光ファイバ
を含む光ファイバケーブルと、
前記複数の光ファイバを前記第1方向と交差する第2方向に順に載置するように構成された載置部、及び、前記複数の光ファイバの先端それぞれと光学的に結合する複数のレンズを有するレンズモジュールと、
前記複数の光ファイバを接着剤により前記載置部に固定する接着部と、を備え、
前記複数の光ファイバのそれぞれには、前記光ファイバケーブルのケーブル部分から先端側において開放され且つ樹脂で被覆された被覆部と、前記被覆部よりも更に先端側において樹脂の被覆が除去された被覆除去部とが設けられており、前記複数の光ファイバの各被覆除去部が前記載置部に載置され、
前記接着部は、前記複数の光ファイバの先端側に位置
して前記被覆除去部の一部を覆う第1接着部と、前記第1方向において前記第1接着部よりも後側に位置
して前記被覆除去部のうち前記被覆部寄りの後端部分を少なくとも覆う第2接着部とを有し、前記第2接着部は、前記第1接着部よりも高いヤング率を有する、光コネクタケーブル。
【請求項2】
前記第2接着部は、硬化後のヤング率が400MPa以上の接着剤から形成されている、
請求項1に記載の光コネクタケーブル。
【請求項3】
前記第1接着部は、アクリル系の接着剤から形成され、
前記第2接着部は、エポキシ系の接着剤から形成される、
請求項1または請求項2に記載の光コネクタケーブル。
【請求項4】
前記載置部に載置された前記複数の光ファイバの少なくとも一部を覆う蓋体を更に備え、
前記第1接着部の少なくとも一部は、前記蓋体と前記載置部との間に位置し、
前記第2接着部の少なくとも一部は、前記第1方向において前記蓋体より後側に位置する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光コネクタケーブル。
【請求項5】
前記蓋体は、光透過性の部材であり、
前記第1接着部及び前記第2接着部の少なくとも一方を形成する接着剤が光硬化性接着剤である、
請求項4に記載の光コネクタケーブル。
【請求項6】
前記複数の光ファイバが突き出る端面を有し、前記複数の光ファイバをまとめて保持する保持部材と、
前記レンズモジュール及び前記保持部材を実装する回路基板と、を更に備え、
前記保持部材は、前記第1接着部より高いヤング率を有する第3接着部により前記回路基板に固定される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光コネクタケーブル。
【請求項7】
前記第3接着部を形成する接着剤は、前記第2接着部を形成する接着剤と同種の接着剤である、
請求項6に記載の光コネクタケーブル。
【請求項8】
前記保持部材と前記レンズモジュールとは互いに離間しており、
当該離間領域において、前記複数の光ファイバは変形可能な状態である、
請求項6または請求項7に記載の光コネクタケーブル。
【請求項9】
前記第2接着部は、前記被覆部を更に覆う、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光コネクタケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の光ファイバを保持する保持部材と、回路基板上に実装されたレンズ部品とを備える光コネクタケーブルが開示されている。この光コネクタケーブルでは、レンズ部品上に設けられた複数の溝に各光ファイバの先端部分が載置され、それら光ファイバの先端部分を蓋体で上から抑えて固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光コネクタケーブル110では、
図8及び
図9に示すように、レンズ部品であるレンズモジュール113上に設けられた溝113eに光ファイバ115のケーブル部分からの露出部分115aを載置して蓋体114で上から抑えた後、隙間に接着剤を注入する。これにより、光ファイバ115の露出部分115aをレンズモジュール113上に固定している。このような光コネクタケーブルにおいて、光ケーブルを上方に強く屈曲すると、保持部材のファイバ固定端とレンズモジュールのファイバ固定端(蓋体114の端部114a)との距離が短くなり、光ファイバ115の露出部分115aに圧縮方向の力Tが発生する。これにより、保持部材のファイバ固定端において光ファイバ115の露出部分115aが蓋体114等と接触して光ファイバの露出部分115aの傷発生領域Kに微小な傷が入ることがある。一方、光ケーブルを下方に強く屈曲すると、保持部材のファイバ固定端とレンズモジュール113のファイバ固定端との距離が長くなり、光ファイバ115の露出部分115aに引張方向の力Tが発生する。これにより、光ファイバ115の露出部分115aに傷があると、その傷が更に進行してしまうことがある。このような上下方向の屈曲が長く続くと、場合により、光ファイバ115の露出部分115aにおいて破断が生じる虞がある。
【0005】
本開示は、ケーブル部分の屈曲に対して強固な光コネクタケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光コネクタケーブルは、それぞれが第1方向に沿って延在する複数の光ファイバと、複数の光ファイバを第1方向と交差する第2方向に順に載置するように構成された載置部、及び、複数の光ファイバの先端それぞれと光学的に結合する複数のレンズを有するレンズモジュールと、複数の光ファイバを接着剤により載置部に固定する接着部と、を備える。接着部は、複数の光ファイバの先端側に位置する第1接着部と、第1方向において第1接着部よりも後側に位置する第2接着部とを有する。第2接着部は、第1接着部よりも高いヤング率を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケーブル部分の屈曲に対して強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る光コネクタケーブルを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す光コネクタケーブルの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す光コネクタケーブルの基板アセンブリを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す基板アセンブリを上方から視た平面図である。
【
図5】
図5は、V溝に載置された光ファイバをガラス蓋によって抑えている状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す基板アセンブリにおける接着部の配置状況を説明するための平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す基板アセンブリをY軸に沿って切断した際の断面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係る光コネクタケーブルの基板アセンブリをY軸に沿って切断した際の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る光コネクタケーブルは、それぞれが第1方向に沿って延在する複数の光ファイバと、複数の光ファイバを第1方向と交差する第2方向に順に載置するように構成される載置部、及び、複数の光ファイバの先端それぞれと光学的に結合する複数のレンズを有するレンズモジュールと、複数の光ファイバを接着剤により載置部に固定する接着部と、を備える。接着部は、複数の光ファイバの先端側に位置する第1接着部と、第1方向において第1接着部よりも後側に位置する第2接着部とを有する。第2接着部は、第1接着部よりも高いヤング率を有する。
【0010】
この光コネクタケーブルでは、第1接着部よりも後側に位置する第2接着部は、複数の光ファイバの先端側に位置する第1接着部よりも高いヤング率を有している。即ち、後側において光ファイバを固定する部分である第2接着部が硬い状態となっている。この場合、光コネクタケーブルにおいて光ファイバを集積しているケーブル部分に対して上下方向の屈曲が加えられてとしても、硬い材料からなる第2接着部により、当該屈曲に伴って各光ファイバの露出部分に伝えられる圧縮応力及び引張応力が遮断される。これにより、光ファイバの露出部分に傷が付けられたり、当該傷が進行したりすることがなくなり、光ファイバの露出部分の破断を抑制し、ケーブル部分の屈曲に対して強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0011】
一実施形態として、第2接着部は、ヤング率が400MPa以上の接着剤から形成されていてもよい。ここで示すヤング率は、接着剤の硬化後の値を示している。この場合、光コネクタケーブルのケーブル部分に加えられる屈曲がより強くなっても、より硬い第2接着部により、当該屈曲に伴う圧縮応力及び引張応力がより確実に遮断される。これにより、ケーブル部分の屈曲に対して更に強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0012】
一実施形態として、第1接着部は、アクリル系の接着剤から形成されてもよく、第2接着部は、エポキシ系の接着剤から形成されてもよい。光ファイバの先端側(レンズ側)の第1接着部がアクリル系の接着剤から形成される場合、比較的柔らかい材料であることから、光ファイバの先端側の部分に熱膨張及びその後の熱収縮等があっても位置ズレ等を抑制することができる。即ち、光コネクタケーブルに耐環境性を持たすことができる。一方、後側の第2接着部がエポキシ系の接着剤から形成されている場合、第2接着部を硬くて高い機械的強度を有する固定部とすることができ、ケーブル部の屈曲に伴う応力から光ファイバの露出部分をより確実に保護することが可能となる。この実施形態によれば、光コネクタケーブルにおける耐環境性と機械的強度とを両立することが可能となる。
【0013】
一実施形態として、光コネクタケーブルは、載置部に載置された複数の光ファイバの少なくとも一部を覆う蓋体を更に備えてもよい。第1接着部の少なくとも一部は、蓋体と載置部との間に位置してもよく、第2接着部の少なくとも一部は、第1方向において蓋体よりも後側に位置してもよい。この場合、第2接着部をケーブル部分の近接領域により確実に配置し、第2接着部により、ケーブル部分の屈曲に伴う圧縮応力及び引張応力をより確実に遮断することができる。これにより、各光ファイバの先端を含む露出部分の破断等をより確実に抑制して、ケーブル部分の屈曲に対してより強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0014】
一実施形態として、蓋体は、光透過性の部材であってもよく、第1接着部及び第2接着部の少なくとも一方を形成する接着剤が光硬化性接着剤であってもよい。この場合、第1接着部又は第2接着部に用いられる接着剤の固化作業を容易に行うことができる。また、第1接着部又は第2接着部に用いられる接着剤の固化作業をより確実に行うこともできる。
【0015】
一実施形態として、光コネクタケーブルは、複数の光ファイバが突き出る端面を有し、複数の光ファイバをまとめて保持する保持部材と、レンズモジュール及び保持部材を実装する回路基板とを更に備えてもよい。保持部材は、第1接着部より高いヤング率を有する第3接着部により回路基板に固定されてもよい。この場合、第3接着部により回路基板に対して保持部材がより強固に固定され、ケーブル部分に上下方向の屈曲が加わったとしても、当該屈曲による圧縮応力又は引張応力を保持部材で吸収し、光ファイバの露出部分に伝達される応力を低減することができる。これにより、各光ファイバの露出部分の破断等をより確実に抑制して、ケーブル部分の屈曲に対してより強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0016】
一実施形態として、第3接着部を形成する接着剤は、第2接着部を形成する接着剤と同種の接着剤であってもよい。この場合、接着剤の種類を多く揃える必要がなくなり、光コネクタケーブルの製造を簡素化することができる。
【0017】
一実施形態として、保持部材とレンズモジュールとは互いに離間していてもよく、当該離間領域において、複数の光ファイバは変形可能な状態であってもよい。この場合、ケーブル部に上下方向の屈曲が加わったとしても、当該離間領域に位置する光ファイバの露出部分が変形可能な状態であるため、屈曲による圧縮応力又は引張応力をこの光ファイバの露出部分において逃がす動きを取ることが可能となる。これにより、各光ファイバの先端を含む露出部分の破断等をより確実に抑制して、ケーブル部分の屈曲に対してより強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示に係る光コネクタケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1及び
図2を参照して、一実施形態に係る光コネクタケーブル1について説明する。
図1は、一実施形態に係る光コネクタケーブルを示す斜視図である。
図2は、
図1に示す光コネクタケーブルの分解斜視図である。光コネクタケーブル1は、例えばデバイス間において光信号及び電気信号を送受信されるために使用されるケーブルであり、例えばアクティブ光ケーブル(AOC:Active optical cable)であってもよく、USB Type-Cの規格に準拠したプラグサイズのケーブルであってもよい。
図1及び
図2では、光コネクタケーブル1の一端を示しているが、光コネクタケーブル1の他端も同様の構成を備えていてもよいし、他の構成であってもよい。
【0020】
光コネクタケーブル1は、
図1及び
図2に示すように、メタルシェル2,3、ブーツ4、キャップ5、ストレインリリーフ6、光ファイバケーブル7、及び、基板アセンブリ10を備えている。以下の説明では、基板アセンブリ10の幅方向を方向Xとし、基板アセンブリ10の延在方向を方向Yとし、基板アセンブリ10の厚み方向を方向Zとする。本実施形態において、方向X、方向Y及び方向Zは、互いに直交している。また、光コネクタケーブル1(基板アセンブリ10)の先端側を前側とし、方向Yに沿って逆側を後側として説明を行うことがある。
【0021】
メタルシェル2,3は、基板アセンブリ10を内部に収容して保護するケース部材であり、シールド部材としても機能する。メタルシェル2,3は、例えばSUS等の金属から形成される。メタルシェル2は、方向Yに沿って延在する一対の側壁2a,2bを有し、メタルシェル3は、方向Yに沿って延在する一対の側壁3a,3bを有する。側壁2a,2bに設けられた係合突起が側壁3a,3bに設けられた開口に挿入されることで、メタルシェル2がメタルシェル3に係合する。
【0022】
ブーツ4は、基板アセンブリ10を内部に収納するメタルシェル2,3の外周に配置される部材である。ブーツ4は、例えば樹脂又は金属から形成される。ブーツ4は、筒状の部材であり、断面視において略矩形状に形成されている。ブーツ4の方向Zに沿う厚みは、例えば6.5mm以下である。ブーツ4の前端には略矩形形状の開口4aが設けられ、後端には後側壁4bが設けられている。後側壁4bは円形の孔を有しており、当該孔にストレインリリーフ6の後端側の筒部が挿通可能となっている。
【0023】
キャップ5は、ブーツ4の開口4aに取り付けられる部材である。キャップ5は、基板アセンブリ10のコネクタ11の外形に対応した形状の開口5aを有する。光コネクタケーブル1が組み立てられた状態において、コネクタ11の先端部分はキャップ5の開口5aからブーツ4の外部へと突き出るように配置される。
【0024】
ストレインリリーフ6は、光ファイバケーブル7を一端側において基板アセンブリ10に固定するための部材である。ストレインリリーフ6は、メタルシェル2,3内に収納された基板アセンブリ10に対して固定される。光ファイバケーブル7は、後述する複数の光ファイバ15(
図3を参照)をまとめて収納しているケーブルである。光ファイバケーブル7は、光ファイバ15と共に電気信号等を送るための電線を一本以上収納していてもよい。
【0025】
基板アセンブリ10は、光ファイバケーブル7の一方の端部に接続され、光ファイバケーブル7からの光信号を電気信号に変換して外部に出力すると共に、外部からの電気信号を光信号に変換して光ファイバケーブル7に出力する機能を有するモジュールである。基板アセンブリ10は、光ファイバケーブル7が電線を有する場合には、電線も接続されるように構成されており、外部との間で電気信号の送受信を行う。
図3は、基板アセンブリ10を示す斜視図である。
図4は、基板アセンブリ10を上方から視た平面図である。基板アセンブリ10は、
図3及び
図4に示すように、コネクタ11、回路基板12、レンズモジュール13、蓋体14、光ファイバ15、及び、保持部材16を備えている。
【0026】
コネクタ11は、扁平形状を有する部材であり、回路基板12の端部に取り付けられている。コネクタ11は、光コネクタケーブル1が接続されるデバイスに設けられた受け口へと挿入可能な大きさ及び形状を有する。光ファイバケーブル7から伝送された光信号が回路基板12上に搭載された光電変換素子17(
図7参照)によって電気信号へと変換され、コネクタ11は、当該電気信号を外部のデバイスへと送出する。また、コネクタ11は、外部のデバイスからの電気信号を光電変換素子17へと送出する。
【0027】
回路基板12は、各種の光素子及び電子素子が搭載及び内蔵される板状部材である。回路基板12は、例えば方向Zに沿う厚みが0.2mm以上1.0mm以下の薄い基板であってもよい。回路基板12は平面視において略長方形状に形成され、その長手方向が方向Yに沿うように配置される。回路基板12の長手方向の幅は、例えば12mm以上16mm以下であってもよい。回路基板12の表面及び内部には、IC及び電子素子等を電気的に接続するための各種配線が設けられていてもよい。回路基板12が有する当該配線は、光ファイバケーブル7が有する複数の電線と電気的に接続されてもよい。
【0028】
レンズモジュール13は、回路基板12に載置される板状部品であり、光ファイバケーブル7の複数の光ファイバ15と回路基板12上に搭載された光電変換素子17とを光学的に結合させる光学部材である。レンズモジュール13は、複数の光ファイバ15のケーブル部分からの露出部分15aをX方向に順に載置するように構成された載置部13aと、光ファイバ15の先端それぞれと光学的に結合する複数のレンズ13b(
図7を参照)と、光ファイバ15の先端と複数のレンズ13bとの光路上に設けられるミラー13cと、光電変換素子17を収納する収納空間13d(
図7を参照)とを有している。光電変換素子17は、対応する光ファイバ15から入射する光、又は対応する光ファイバ15へ出射する光を光電変換する素子である。光電変換素子は、例えばPD(Photodiode)等の受光素子、又はVCSEL(Vertical CavitySurface Emitting LASER)等の発光素子であってもよい。光電変換素子17は、回路基板12の厚み方向においてレンズモジュール13の複数のレンズ13bと重畳する位置に設けられている。光ファイバ15の先端から水平方向(Y方向)に出射される光Lは、レンズモジュール13が有するミラー13cによって垂直方向(Z方向)に伝搬する光へと変換された後に複数のレンズ13bで集光されて光電変換素子17へと入射する。また、光電変換素子17から垂直方向(Z方向)に出射される光Lは、複数のレンズ13bを介してレンズモジュール13が有するミラー13cによって水平方向(Y方向)に伝搬する光へと変換された後に光ファイバ15へと入射する。レンズモジュール13のうち少なくとも一部は、光が伝搬可能な透明な材料(例えばガラス等)によって構成される。
【0029】
レンズモジュール13の載置部13aは、方向Yに沿って延びる複数の溝13eを有する。複数の溝13eは、例えばV溝であり、光ファイバ15の露出部分15aがその中に配置される。光ファイバ15の露出部分15aが各溝13eに収納されることにより、露出部分15aのXY方向における動きが規制される。各溝13eに光ファイバ15の露出部分15aが収納された後には、蓋体14が露出部分15aの一部を覆うように上方から蓋体14が被されて下方に抑え込まれる(
図5を参照)。これにより、光ファイバ15の露出部分15aのZ方向における動きが固定される。なお、
図5に示す溝13e、蓋体14及び光ファイバの露出部分15aの間の隙間Aには、後述する接着剤が注入されて、例えば第1接着部18a等が形成される。
【0030】
蓋体14は、載置部13aに載置された光ファイバ15の露出部分15aを上から抑え込む板状の部材であり、例えば、ガラス等の光透過性の部材が構成されている。蓋体14は、他の材料から構成されていてもよい。
【0031】
光ファイバ15は、例えば、コア及び当該コアを囲むクラッドからなるガラスファイバであり、樹脂で被覆することにより形成されている。光ファイバ15の露出部分15aは、ケーブル部分から開放され且つ保持部材16から突き出し直後は被覆された被覆部15bであり、先端側では被覆が除去された被覆除去部15cとなっている。各光ファイバ15は、シングルモード光ファイバ(SMF)又はマルチモード光ファイバ(MMF)であってもよい。本実施形態においては、光ファイバケーブル7は4本の光ファイバ15を有しているが、光ファイバ15の本数は限定されない。
【0032】
保持部材16は、複数の光ファイバ15をまとめて保持する部材である。保持部材16は、例えば樹脂等から構成される部材であり、本体部16a、円筒部16b、一対の突出部16c、及び、基準端面16dを有する。基準端面16dからは光ファイバ15の露出部分15aが突き出ている。保持部材16は、例えば、複数の光ファイバ15を金型内に配置して樹脂成形することにより作製することができる。円筒部16bは、円筒形状を呈する部材であり、内部に複数の光ファイバ15を収容する。本体部16aは、略直方体形状を呈する部材であり、円筒部16bと共に複数の光ファイバ15を収容する。本体部16a及び円筒部16bの内部において、複数の光ファイバ15の配列態様が変化する。具体的には、円筒部16bの内部においては、複数の光ファイバ15は互いに密接して束状に配列されているが、本体部16aの内部においては、複数の光ファイバ15が先端側に向かうに連れて相互に離間し、方向Xに沿って一次元状に並ぶ配列態様へと変化する。
【0033】
一対の突出部16cは、本体部16aの表面から方向Yに沿って先端側に向かって突出する部材である。
図1に示すように、光ファイバケーブル7が基板アセンブリ10に固定される際、一対の突出部16cの下面は、回路基板12の主面12a上にそれぞれ載置される。すなわち、一対の突出部16cは、回路基板12に対する光ファイバケーブル7の方向Zにおける位置決めに使用される。一対の突出部16cの下面と、回路基板12の主面12aとは、例えば接着剤(第3接着部18c)によって互いに固定されてもよい。ここで用いられる接着剤は、後述する第2接着部18bを形成する接着剤と同種の接着剤であってもよい。
【0034】
基準端面16dは、一対の突出部16cの間に設けられた面であり、方向X及び方向Zに沿って延在している。基準端面16dからは、先端側に向かって複数の光ファイバ15の露出部分15aが突き出ている。基準端面16dから突き出た光ファイバ15の露出部分15aの延在方向と、基準端面16dの延在方向とは、例えば直角を成していてもよい。保持部材16を構成する上述した部材(本体部16a、円筒部16b及び一対の突出部16c)は、樹脂(例えば、ポリアミド樹脂等)を射出成形することによって一体に形成されてもよい。
【0035】
次に、
図6及び
図7を参照して、光ファイバ15の露出部分15aを複数種類の接着剤によりレンズモジュール13の載置部13a(溝13e)に接着固定する形態について説明する。
【0036】
光コネクタケーブル1では、基板アセンブリ10のレンズモジュール13の載置部10aの複数の溝13eに光ファイバ15の露出部分15aが載置されて光学的な調整が行われた後、蓋体14で上から抑えられる。
図6及び
図7に示すように、この抑え構成において、載置部13a及び蓋体14の間や載置部13aにおいて蓋体14が覆わない領域(蓋体14の方向Yにおける前後の領域)には、光ファイバ15の露出部分15aを載置部13a等に固定するための接着剤が注入されて接着部18が設けられている。
図6では、例えば接着部18を点線で示している。本実施形態では、この接着部18は、二種類の接着剤によって構成されており、光ファイバ15の先端側(複数のレンズ13b側)に位置する第1接着部18aと、第1接着部18aよりも後側(保持部材16側)に位置する第2接着部18bとを有する。
【0037】
第1接着部18aは、光ファイバ15の露出部分15aを蓋体14との間で載置部13aに接着固定する部分である。第1接着部18aは、例えば、光ファイバ15の被覆除去部15cを接着剤で固定する。第1接着部18aは、例えばアクリル系の接着剤から形成される薄い層状の部分である。アクリル系の接着剤を載置部13a、光ファイバの露出部分15a及び蓋体14の隙間に注入し(
図5を参照)、その後、光又は熱等で硬化することにより、第1接着部18aが形成される。第1接着部18aは、例えば、載置部13a及び蓋体14の間の領域や載置部13aにおいて蓋体14よりも前方(レンズ13bやミラー13c側)の領域に形成される。第1接着部18aは、第2接着部18bよりも熱膨張や熱収縮に強い接着材料から構成することができる。
【0038】
第2接着部18bは、光ファイバ15の露出部分15aを第1接着部18aよりも後側において載置部13aに接着固定する部分である。第2接着部18bは、例えば、光ファイバ15の被覆除去部15cの後端と被覆部15bとを接着剤で固定する。第2接着部18bは、例えばエポキシ系の接着剤から形成される薄い層上の部分である。エポキシ系の接着剤を載置部13aであって露出部分15aが配置され且つ蓋体14が配置されていない領域及びその後方の領域に注入し、その後、光又は熱等で硬化することにより、第2接着部18bが形成される。第2接着部18bは、例えば、蓋体14よりも後方(蓋体14と保持部材16の基準端面16dとの間の領域)に形成される。第2接着部18bは、第1接着部18aよりもヤング率が高い材料から構成することができる。より具体的には、第2接着部18bは、ヤング率が400MPa以上の材料から構成することができる。ここでいうヤング率は、硬化後の値を示している。なお、第1接着部18aを形成する接着剤と第2接着部18bを形成する接着剤とを所定箇所に注入後に、両接着剤をまとめて光又は熱等で硬化してもよい。
【0039】
また、この接着構成では、
図6に示すように、第2接着部18bと保持部材16との間には、接着剤等が注入されておらず、空隙となっている。即ち、光ファイバ15の露出部分15aの一部15dが接着剤で固定されておらず、変形可能な状態(フリーな状態)となっている。なお、保持部材16は、本体部16a及び一対の突出部16cが第1接着部18aと同種の接着剤(例えばアクリル系の接着剤)から形成される第3接着部18cによって回路基板12に接着固定されてもよいし、第2接着部18bと同種の接着剤(例えばエポキシ系の接着剤)から形成される第3接着部18cによって回路基板12に接着固定されてもよい。保持部材16は、好ましくは、第2接着部18bと同種の接着剤(例えばエポキシ系の接着剤)によって回路基板12に接着固定されてもよい。
【0040】
以上、本実施形態に係る光コネクタケーブル1では、第1接着部18aよりも後側に位置する第2接着部18bは、光ファイバ15の先端側に位置する第1接着部18aよりも高いヤング率を有している。即ち、後側(保持部材16側)において光ファイバ15を固定する部分である第2接着部18bが硬い構成となっている。このため、光コネクタケーブル1において光ファイバ15を集積しているケーブル部分(光ファイバケーブル7の根本部分等)に対して上下方向の屈曲が加えられてとしても、硬い材料からなる第2接着部18bにより、当該屈曲に伴って光ファイバ15の露出部分15aに伝えられる圧縮応力及び引張応力が遮断される。これにより、光ファイバ15の露出部分15aに傷が付けられたり、当該傷が進行したりすることがなくなり、光ファイバ15の露出部分15aの破断を抑制し、ケーブル部分の屈曲に対して強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0041】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1において、第2接着部18bは、硬化後のヤング率が400MPa以上の接着剤から構成されていてもよい。この場合、光コネクタケーブル1のケーブル部分に加えられる屈曲がより強くなっても、より硬い第2接着部18bにより、当該屈曲に伴う圧縮応力及び引張応力がより確実に遮断される。これにより、ケーブル部分の屈曲に対して更に強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0042】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1において、第1接着部18aは、アクリル系の接着剤から形成されてもよく、第2接着部18bは、エポキシ系の接着剤から形成されてもよい。光ファイバ15の先端側(レンズ13b側)の第1接着部18aがアクリル系の接着剤から形成される場合、比較的柔らかい材料であることから、光ファイバ15の先端側の露出部分15aに熱膨張及びその後の熱収縮等があっても位置ズレ等を抑制することができる。即ち、光コネクタケーブル1に耐環境性を持たすことができる。一方、後側(保持部材16側)の第2接着部18bがエポキシ系の接着剤から形成されている場合、第2接着部18bを硬くて高い機械的強度を有する固定部とすることができ、ケーブル部の屈曲に伴う応力から光ファイバ15の露出部分15aをより確実に保護することが可能となる。この態様によれば、光コネクタケーブルにおける耐環境性と機械的強度とを両立することが可能となる。
【0043】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1は、載置部に載置された複数の光ファイバ15の少なくとも一部を覆う蓋体14を更に備えている。第1接着部18aの少なくとも一部は、蓋体14と載置部13aとの間に位置し、第2接着部18bの少なくとも一部は、蓋体14よりも後側に位置している。このため、第2接着部18bをケーブル部分の近接領域により確実に配置し、第2接着部18bにより、ケーブル部分の屈曲に伴う圧縮応力及び引張応力をより確実に遮断することができる。これにより、各光ファイバの露出部分の破断等をより確実に抑制して、ケーブル部分の屈曲に対してより強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0044】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1において、蓋体14は、光透過性の部材であってもよく、第1接着部18a及び第2接着部18bの少なくとも一方を形成する接着剤が光硬化性接着剤であってもよい。この場合、第1接着部18a又は第2接着部18bに用いられる接着剤の固化作業を容易に行うことができる。また、第1接着部18a又は第2接着部18bに用いられる接着剤の固化作業をより確実に行うこともできる。
【0045】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1は、複数の光ファイバ15が突き出る基準端面16dを有し、複数の光ファイバ15をまとめて保持する保持部材16と、レンズモジュール13及び保持部材16を実装する回路基板12と、を備えている。保持部材16は、第1接着部18aより高いヤング率を有する接着部により回路基板12に固定されてもよい。この場合、この接着部により回路基板12に対して保持部材16がより強固に固定され、ケーブル部分に上下方向の屈曲が加わったとしても、当該屈曲による圧縮応力又は引張応力を保持部材16で吸収し、光ファイバ15の露出部分15aに伝達される応力を低減することができる。これにより、各光ファイバの露出部分の破断等をより確実に抑制して、ケーブル部分の屈曲に対してより強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0046】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1において、回路基板12と保持部材16との間の接着部を形成する接着剤は、第2接着部18bを形成する接着剤と同種の接着剤であってもよい。この場合、接着剤の種類を多く揃える必要がなくなり、光コネクタケーブルの製造を簡素化することができる。
【0047】
本実施形態に係る光コネクタケーブル1において、保持部材16とレンズモジュール13とは互いに離間しており、当該離間領域において、複数の光ファイバ15の露出部分15aの一部15dは変形可能な状態である。このため、ケーブル部に上下方向の屈曲が加わったとしても、当該離間領域に位置する光ファイバ15の露出部分15aの一部15dが変形可能な状態であるため、屈曲による圧縮応力又は引張応力をこの光ファイバの露出部分15aにおいて逃がす動きを取ることが可能となる。これにより、各光ファイバの露出部分15aの破断等をより確実に抑制して、ケーブル部分の屈曲に対してより強固な光コネクタケーブルを提供することができる。
【0048】
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく様々な実施形態に適用することができる。上述した実施形態では、第2接着部18bは蓋体14の後方に設けられていたが、第2接着部18bの一部が載置部13aと蓋体14との間に入り込んでいてもよい。逆に、第1接着部18aが蓋体14から後方にはみ出す構成であってもよい。また、上記の実施形態では、第1接着部18a及び第2接着部18bの2つの接着部を設けた構成であったが、3つ以上の接着部を設けた構成としてよい。この場合、光コネクタケーブルの後方の接着部、即ち、保持部材16に近接する接着部のヤング率が光コネクタケーブルの前方の接着部よりも高い構成であればよい。
【0049】
上述した実施形態では、接着部18と保持部材16との間に空隙を設け、光ファイバ15の露出部分15aにフリーな状態の部分を設けたが、このようなフリーな状態の部分を設けずに、接着部18と保持部材16との間を別の接着剤によって埋めてしまってもよい。また、上記実施形態に係る光コネクタケーブル1は、蓋体14を備える構成であったが、蓋体14を有しない構成であってもよい。この場合、蓋体14に相当する領域及びその前方に第1接着部18aを設け、蓋体14に相当する領域から後方に第2接着部18bを設けてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、保持部材16を用いて光コネクタケーブル1を構成していたが、保持部材16を用いずに、光ファイバケーブル7からの光ファイバ15を直接、載置部13aに載置する構成であってもよい。この構成では、光ファイバケーブル7から解放された光ファイバ15の露出部分が上記の実施形態と同様に、第1接着部18a及び第2接着部18bにより載置部に固定される。また、第2接着部18bと光ファイバケーブル7の開放端(ケーブル外被から光ファイバが露出する端部)との間には、光ファイバ15が接着剤で固定されないフリーな領域が設けられてもよい。この領域では光ファイバ15の露出部分15aの一部が変形可能な状態であるため、屈曲による圧縮応力又は引張応力をこの光ファイバの露出部分において逃がす動きを取ることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…光コネクタケーブル
2,3…メタルシェル
2a,2b,3a,3b…側壁
4…ブーツ
4a…開口
4b…後側壁
5…キャップ
6…ストレインリリーフ
7…光ファイバケーブル(ケーブル部分)
10…基板アセンブリ
11…コネクタ
12…回路基板
13…レンズモジュール
13a…載置部
13b…レンズ
13c…ミラー
13d…収納空間
13e…溝
14…蓋体
15…光ファイバ
15a…露出部分
15b…被覆部
15c…被覆除去部
16…保持部材
16a…本体部
16b…円筒部
16c…一対の突出部
16d…基準端面
17…光電変換素子
18…接着部
18a…第1接着部
18b…第2接着部
18c…第3接着部
110…光コネクタケーブル
112…回路基板
113…レンズモジュール
113e…溝
114…蓋体
115…光ファイバ
115a…露出部分
K…傷発生領域
S…領域
T…応力