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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】内燃機関のカバー
(51)【国際特許分類】
   F02F 11/00 20060101AFI20240717BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20240717BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240717BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F02F11/00 A
F02F1/24 Q
F16J15/10 T
F16J15/10 B
F02F7/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021039075
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138920
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 達也
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-120817(JP,A)
【文献】特開2010-281426(JP,A)
【文献】特開2006-112597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0131559(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/24
F02F 7/00
F02F 11/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に取り付けられるカバー本体と、
内燃機関と前記カバー本体との間をシールする環状のガスケットと、を備え、
前記ガスケットの内周側及び外周側を内周側及び外周側とするとき、
前記カバー本体は、前記カバー本体の周縁に、前記ガスケットが挿入して取り付けられる溝部を有しており、
前記溝部は、仮想平面に沿って延在する基部と、前記仮想平面に対して窪んだ窪み部と、を有しており、
前記ガスケットは、前記基部に取り付けられるガスケット基部と、前記窪み部に取り付けられる曲がり部と、を有しており、
前記カバー本体は、前記窪み部の内周側または外周側に嵌合部を有しており、
前記ガスケットは、前記嵌合部に嵌合される被嵌合部を有しており、
前記嵌合部は、前記カバー本体から突出するリブと、前記リブに連結された軸部と、を有しており、
前記被嵌合部は、前記軸部が挿入されるとともに前記リブに当接する筒部を有している、
内燃機関のカバー。
【請求項2】
前記窪み部は、アーチ状であり、
前記嵌合部は、前記窪み部の頂点の内周側または外周側に設けられている、
請求項1に記載の内燃機関のカバー。
【請求項3】
前記嵌合部を第1嵌合部とし、前記被嵌合部を第1被嵌合部とするとき、
前記カバー本体は、前記基部において前記窪み部と隣り合う部分の内周側または外周側に第2嵌合部を有しており、
前記ガスケットは、前記第2嵌合部に嵌合される第2被嵌合部を有している、
請求項1または請求項2に記載の内燃機関のカバー。
【請求項4】
内燃機関のシリンダヘッドに取り付けられるシリンダヘッドカバーである、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関のカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関のカバーとしては、例えば特許文献1に記載の内燃機関のシリンダヘッドカバーがある。
特許文献1に記載のシリンダヘッドカバーは、環状のガスケット溝を有するヘッドカバー(以下、カバー本体)と、ガスケット溝に取り付けられたヘッドカバーガスケット(以下、ガスケット)とを有している。ガスケットは、ゴム製の環状体からなる。
【0003】
カバー本体には、アーチ部が設けられている。アーチ部は、カムシャフトを保持する保持部を抱持する部分であり、同保持部に対応した凹曲部である。
ガスケットは、アーチ部に対応する部分に、上方に立ち上がるアーチ形状部を有している。アーチ形状部の基部近傍には、外側に突出する位置決め突起が形成されている。
【0004】
カバー本体におけるアーチ部の基部近傍には、外側に開口する切欠部が形成されている。
上記位置決め突起が上記切欠部に係合されることで、カバー本体に対してガスケットが位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4677283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内燃機関の組み立て工場に向けてカバーを搬送する際などに、ガスケットのうちアーチ形状部が自重によってカバー本体のアーチ部から外れることがある。この場合、シリンダヘッドにカバーを組み付ける際に、カバー本体のガスケット溝に対してガスケットを再度、取り付け直す必要が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための内燃機関のカバーは、内燃機関に取り付けられるカバー本体と、内燃機関と前記カバー本体との間をシールする環状のガスケットと、を備え、前記ガスケットの内周側及び外周側を内周側及び外周側とするとき、前記カバー本体は、前記カバー本体の周縁に、前記ガスケットが挿入して取り付けられる溝部を有しており、前記溝部は、仮想平面に沿って延在する基部と、前記仮想平面に対して窪んだ窪み部と、を有しており、前記ガスケットは、前記基部に取り付けられるガスケット基部と、前記窪み部に取り付けられる曲がり部と、を有しており、前記カバー本体は、前記窪み部の内周側または外周側に嵌合部を有しており、前記ガスケットは、前記嵌合部に嵌合される被嵌合部を有している。
【0008】
同構成によれば、カバー本体の溝部のうち窪み部の内周側または外周側に設けられた嵌合部にガスケットの被嵌合部が嵌合される。このため、ガスケットを下に向けた状態でカバーを搬送する際に、ガスケットの曲がり部が自重によって窪み部から外れることが抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カバーの輸送時において、カバー本体からガスケットが外れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】内燃機関のカバーの一実施形態について、カバーとシリンダヘッドと共に示す分解斜視図。
図2】カバーを示す下面図。
図3】カバーを裏側から示す分解斜視図。
図4】第1窪み部周辺を裏側から拡大して示す分解斜視図。
図5図2の5-5線に沿った分解断面図。
図6図2の6-6線に沿った分解断面図。
図7】第1窪み部周辺を拡大して示す斜視図。
図8図2の8-8線に沿った分解断面図。
図9】変形例のカバーにおける第1窪み部周辺を拡大して示す分解斜視図。
図10】変形例のカバーにおける第1窪み部周辺を拡大して示す分解斜視図。
図11】変形例のカバーにおける嵌合部及び被嵌合部周辺を拡大して示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図8を参照して、内燃機関のカバーの一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、内燃機関のシリンダヘッドカバーとして本発明を具体化している。
図1図3に示すように、シリンダヘッドカバー(以下、カバー10)は、内燃機関を構成するシリンダヘッド40に取り付けられるカバー本体20と、シリンダヘッド40とカバー本体20との間をシールする環状のガスケット30とを備えている。
【0012】
<カバー本体20>
図1図3に示すように、カバー本体20は、シリンダヘッド40に対向する頂壁20aと、頂壁20aの周縁に全周にわたって設けられた側壁20bと、側壁20bの周縁に全周にわたって設けられたフランジ部20cとを有している。
【0013】
フランジ部20cには、ボルト孔22を有する複数の取付部21が設けられている。取付部21は、フランジ部20cからカバー本体20の外周側に突出している。複数の取付部21は、カバー本体20の周方向において互いに間隔をおいて設けられている。
【0014】
図示しないボルトをボルト孔22に挿通するとともにシリンダヘッド40のボルト孔42に螺入することにより、カバー10がシリンダヘッド40に取り付けられる。
図3に示すように、フランジ部20cの裏面には、溝部23が全周にわたって設けられている。溝部23には、ガスケット30が挿入して取り付けられる。
【0015】
なお、以降において、溝部23、すなわちガスケット30の内周側及び外周側を単に内周側及び外周側として説明する。
溝部23は、仮想平面Vに沿って延在する基部24と、仮想平面Vからそれぞれ突出する第1窪み部25及び第2窪み部26とを有している。
【0016】
図1に示すように、第1窪み部25は、シリンダヘッド40の第1突出部45の形状に沿ったアーチ状である。
第2窪み部26は、シリンダヘッド40の第2突出部46の形状に沿ったアーチ状である。
【0017】
なお、第1突出部45及び第2突出部46は、内燃機関の吸気カムシャフトまたは排気カムシャフト(いずれも図示略)が挿通される挿通孔45a,45b,46aを有するために、シリンダヘッド40の他の部位よりもカバー10に向かって突出している。
【0018】
図3に示すように、カバー本体20は、2つの第1嵌合部27と、4つの第2嵌合部28を有している。
第1嵌合部27は、第1窪み部25のアーチ形状の頂点の内周側と、第2窪み部26のアーチ形状の頂点の内周側とに1つずつ設けられている。
【0019】
図3図6に示すように、第1嵌合部27は、頂壁20aから突出する軸部27aを有している。軸部27aは、上記仮想平面Vに直交する方向に沿って延びている。軸部27aは、頂壁20a及び側壁20bの双方から突出するリブ27bに連結されている。
【0020】
第2嵌合部28は、基部24において第1窪み部25と隣り合う部分の内周側と、基部24において第2窪み部26と隣り合う部分の内周側とに設けられている。
第2嵌合部28は、第1窪み部25の延在方向における両基端と隣り合う部分に1つずつ設けられている。
【0021】
第2嵌合部28は、第2窪み部26の延在方向における両基端と隣り合う部分に1つずつ設けられている。
第2嵌合部28は、軸部28a及びリブ28bを有している。軸部28a及びリブ28bは、第1嵌合部27の軸部27a及びリブ27bとそれぞれ同様な構成である。
【0022】
カバー本体20は、硬質樹脂材料により形成されている。
<ガスケット30>
図1図3に示すように、ガスケット30は、基部24に取り付けられるガスケット基部34と、第1窪み部25及び第2窪み部26にそれぞれ取り付けられる第1曲がり部35及び第2曲がり部36とを有している。
【0023】
図1及び図3に示すように、ガスケット基部34は、基部24に沿って延在している。
第1曲がり部35は、第1窪み部25に沿って延在している。第1曲がり部35は、第1窪み部25のアーチ形状に沿ったアーチ形状である。
【0024】
第2曲がり部36は、第2窪み部26に沿って延在している。第2曲がり部36は、第2窪み部26のアーチ形状に沿ったアーチ形状である。
図3図8に示すように、ガスケット30は、2つの第1嵌合部27にそれぞれ嵌合される2つの第1被嵌合部37と、4つの第2嵌合部28にそれぞれ嵌合される4つの第2被嵌合部38とを有している。
【0025】
第1被嵌合部37は、第1曲がり部35のアーチ形状の頂点の内周側と、第2曲がり部36のアーチ形状の頂点の内周側とに1つずつ設けられている。
第1被嵌合部37は、第1嵌合部27の軸部27aが挿入される筒部37aと、筒部37aと第1曲がり部35とを連結する連結部37bとを有している。
【0026】
第2被嵌合部38は、ガスケット基部34において第1窪み部25と隣り合う部分の内周側と、基部24において第2窪み部26と隣り合う部分の内周側とに設けられている。
第2被嵌合部38は、筒部38a及び連結部38bを有している。筒部38a及び連結部38bは、第1被嵌合部37の筒部37a及び連結部37bとそれぞれ同様な構成である。
【0027】
ガスケット30は、ゴムなどの可撓性材料によって一体成形されている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
カバー本体20の溝部23のうち第1窪み部25及び第2窪み部26の内周側に設けられた第1嵌合部27にガスケット30の第1被嵌合部37が嵌合される。このため、ガスケット30を下に向けた状態でカバー10を搬送する際に、ガスケット30の第1曲がり部35が自重によって第1窪み部25から外れること、または第2曲がり部36が自重によって第2窪み部26から外れることが抑制される。
【0028】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)カバー本体20は、第1窪み部25及び第2窪み部26の内周側に第1嵌合部27を有している。ガスケット30は、第1嵌合部27に嵌合される第1被嵌合部37を有している。
【0029】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、カバー10の輸送時において、カバー本体20からガスケット30が外れることを抑制できる。
(2)第1窪み部25及び第2窪み部26は、アーチ状である。第1嵌合部27は、第1窪み部25の頂点の内周側に設けられている。第2嵌合部28は、第2窪み部26の頂点の内周側に設けられている。
【0030】
窪み部25,26がアーチ状である場合、ガスケット30の曲がり部35,36のうち窪み部25,26の頂点に近い部分に取り付けられる部分ほど、自重によって溝部23から外れやすい。
【0031】
この点、上記構成によれば、曲がり部35,36のうち最も窪み部25,26から外れやすい部分が取り付けられる窪み部25,26の頂点の内周側に第1嵌合部27が設けられている。このため、ガスケット30の曲がり部35,36が窪み部25,26から外れることを効果的に抑制することができる。
【0032】
(3)第1嵌合部27は、軸部27aを有している。第1被嵌合部37は、筒部37aを有している。
こうした構成によれば、第1嵌合部27及び第1被嵌合部37を容易に具現化することができる。
【0033】
(4)カバー本体20は、基部24において窪み部25,26と隣り合う部分の内周側に第2嵌合部28を有している。ガスケット30は、第2嵌合部28に嵌合される第2被嵌合部38を有している。
【0034】
カバー本体20の溝部23にガスケット30を挿入して取り付ける際に、ガスケット基部34が曲がり部35,36から離れる方向に引っ張られたり、ガスケット基部34が曲がり部35,36に近付く方向に押されたりすることがある。こうした力が曲がり部35,36に作用することによって、曲がり部35,36が窪み部25,26から外れやすくなる。
【0035】
この点、上記構成によれば、カバー本体20は、基部24において窪み部25,26と隣り合う部分の内側に第2嵌合部28を有している。また、ガスケット30は、第2嵌合部28に嵌合される第2被嵌合部38を有している。
【0036】
このため、ガスケット基部34に対して上述したような力が作用しても、当該力が曲がり部35,36に作用しにくくなる。したがって、曲がり部35,36が窪み部25,26から外れることを抑制できる。
【0037】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図9に示すように、第1嵌合部27を、第1窪み部25の外周側に設けるようにしてもよい。また、ガスケット30の第1被嵌合部37についても同様である。また、第2嵌合部28及び第2被嵌合部38についても同様である。
【0038】
なお、ガスケットの構成は、嵌合部の構成の変更に伴って適宜変更されるものであるから、以降においては、嵌合部の変更例のみについて説明し、ガスケットの変更例については説明を省略する。
【0039】
・第1窪み部25は、アーチ状に限定されず、図10に示すような台形状などに変更することができる。また、第2窪み部26についても同様である。
図10に示すように、第1嵌合部27を、第1窪み部25の内周側に2つ以上設けるようにしてもよい。また、第2嵌合部28についても同様である。
【0040】
図11に示すように、軸部27aは、楕円柱状をなしていてもよい。
・第1窪み部25の内周側に設けられる第1嵌合部27及び第2窪み部26の内周側に設けられる第1嵌合部27のいずれか一方を省略することもできる。
【0041】
・第2嵌合部28は、第1窪み部25の延在方向における一方の基端と隣り合う部分にのみ設けられてもよい。第2嵌合部28は、第2窪み部26の延在方向における一方の基端と隣り合う部分にのみ設けられてもよい。
【0042】
・第2嵌合部28を省略することもできる。
・第1嵌合部27は軸部27aを有するものに限定されない。また、第1被嵌合部37は筒部37aを有するものに限定されない。例えば、第1嵌合部27及び第1被嵌合部37は、爪嵌合によって互いに嵌合するものであってもよい。また、第2嵌合部28及び第2被嵌合部38についても同様である。
【0043】
・第1窪み部25がアーチ状である場合において、第1嵌合部27は、第1窪み部25の頂点部分からずれた位置に設けることもできる。また、第2窪み部26についても同様である。
【0044】
・シリンダヘッド40の突出部の形状に合わせて、第1窪み部25あるいは第2窪み部26を省略することもできるし、3つ以上の窪み部を設けることもできる。
・本発明に係る内燃機関のカバーは、シリンダヘッドカバーに限定されず、チェーンカバーなどの他のカバーに適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…カバー
20…カバー本体
20a…頂壁
20b…側壁
20c…フランジ部
21…取付部
22…ボルト孔
23…溝部
24…基部
25…第1窪み部
26…第2窪み部
27…第1嵌合部
27a…軸部
27b…リブ
28…第2嵌合部
28a…軸部
28b…リブ
30…ガスケット
34…ガスケット基部
35…第1曲がり部
36…第2曲がり部
37…第1被嵌合部
37a…筒部
37b…連結部
38…第2被嵌合部
38a…筒部
38b…連結部
40…シリンダヘッド
42…ボルト孔
45…第1突出部
45a…挿通孔
45b…挿通孔
46…第2突出部
46a…挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11