(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】乗物用の携帯端末通信システム及び乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240717BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240717BHJP
B60R 16/037 20060101ALI20240717BHJP
H04W 4/48 20180101ALI20240717BHJP
【FI】
B60R11/02 W
B60N2/90
B60R16/037
H04W4/48
(21)【出願番号】P 2021040491
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】神谷 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 修
(72)【発明者】
【氏名】石黒 康裕
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-101118(JP,A)
【文献】特開2020-128174(JP,A)
【文献】特開2014-004860(JP,A)
【文献】国際公開第2009/096032(WO,A1)
【文献】米国特許第10750557(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102013013013(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第108693982(CN,A)
【文献】特開2020-039674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60N 2/90
B60R 16/037
H04W 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設置されると共に、着席者の動作に関する第1情報をそれぞれ出力するように構成された複数のシートと、
前記複数のシートとの通信及び前記乗物内の乗員が所持している携帯端末との通信を行うように構成された処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、
前記複数のシートがそれぞれ出力する前記第1情報と、前記携帯端末が出力する前記乗員の動作に関する第2情報との比較により、前記複数のシートの中から前記乗員が着席している制御対象シートを推定するように構成された比較処理部と、
推定された前記制御対象シートを前記携帯端末とペアリングし、ペアリングされた前記携帯端末の出力を前記制御対象シートに伝送するように構成されたペアリング処理部と、
を有する、乗物用の携帯端末通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用の携帯端末通信システムであって、
前記比較処理部は、前記複数のシートそれぞれからの前記第1情報の取得及び前記制御対象シートの推定を定期的に実行するように構成され、
前記ペアリング処理部は、推定が解除された前記制御対象シートへの前記携帯端末の出力の伝送を停止するように構成される、乗物用の携帯端末通信システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の乗物用の携帯端末通信システムであって、
前記比較処理部は、前記複数のシートのうち、
前記乗物内の前記携帯端末
の全てとペアリングされていない状態で前記着席者の動作が発生した動作発生シートに対し、前記動作発生シートとペアリングした履歴のある前記携帯端末の前記第2情報を優先して前記動作発生シートの前記第1情報と比較するように構成される、乗物用の携帯端末通信システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用の携帯端末通信システムであって、
前記ペアリング処理部は、前記携帯端末から出力されたコンテンツを制御した上で前記制御対象シートへ伝送するように構成される、乗物用の携帯端末通信システム。
【請求項5】
乗物に設置された乗物用シートであって、
シート本体と、
前記シート本体における着席者の動作に関する第1情報を処理装置に出力するように構成されたシートセンサと、
前記処理装置を介して前記乗物内の乗員が所持している携帯端末と通信するように構成されたシート通信部と、
を備え、
前記処理装置は、
前記第1情報と、前記携帯端末が出力する前記乗員の動作に関する第2情報との比較により、前記シート本体に前記乗員が着席しているか否かを推定するように構成された比較処理部と、
前記シート本体に前記乗員が着席していると推定された場合に、前記シート通信部を前記携帯端末とペアリングし、ペアリングされた前記携帯端末の出力を前記シート通信部に伝送するように構成されたペアリング処理部と、
を有する、乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物用の携帯端末通信システム及び乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両内のシートにおける荷重センサの入力に基づいて、シートの着席者が所有する携帯端末の識別を行う通信システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通信システムでは、シートと携帯端末とが直接通信を行う。そのため、シートに携帯端末の識別、ペアリング等を行う通信モジュールを設置する必要がある。しかしながら、シート内において通信モジュールが配置可能なスペースには限りがある。また、シート1つずつに通信モジュールが設けられることにより、シートの単価が上昇する。
【0005】
本開示の一局面は、シートの設備増加を抑制しつつ、携帯端末とシートとをペアリングできる乗物用の携帯端末通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、乗物(100)に設置されると共に、着席者の動作に関する第1情報をそれぞれ出力するように構成された複数のシート(2)と、複数のシート(2)との通信及び乗物(100)内の乗員が所持している携帯端末(200)との通信を行うように構成された処理装置(3)と、を備える乗物用の携帯端末通信システム(1)である。
【0007】
処理装置(3)は、複数のシート(2)がそれぞれ出力する第1情報と、携帯端末(200)が出力する乗員の動作に関する第2情報との比較により、複数のシート(2)の中から乗員が着席している制御対象シートを推定するように構成された比較処理部(33)と、推定された制御対象シートを携帯端末(200)とペアリングし、ペアリングされた携帯端末(200)の出力を制御対象シートに伝送するように構成されたペアリング処理部(34)と、を有する。
【0008】
このような構成によれば、処理装置(3)において複数のシート(2)と携帯端末(200)とのペアリングが行われるため、複数のシート(2)それぞれに携帯端末(200)とのペアリングを行う通信モジュールを設置する必要がない。したがって、シート(2)の設備増加を抑制しつつ、携帯端末(200)とシート(2)とをペアリングできる。
【0009】
本開示の一態様では、比較処理部(33)は、複数のシート(2)それぞれからの第1情報の取得及び制御対象シートの推定を定期的に実行するように構成されてもよい。ペアリング処理部(34)は、推定が解除された制御対象シートへの携帯端末(200)の出力の伝送を停止するように構成されてもよい。このような構成によれば、着席者が制御対象シートから離れた場合に、シート(2)における出力を自動で停止することができる。
【0010】
本開示の一態様では、比較処理部(33)は、複数のシート(2)のうち、携帯端末(200)とペアリングされていない状態で着席者の動作が発生した動作発生シートに対し、動作発生シートとペアリングした履歴のある携帯端末(200)の第2情報を優先して動作発生シートの第1情報と比較するように構成されてもよい。このような構成によれば、離席した着席者が同じシート(2)に再着席した場合に、処理負荷を低減しつつペアリングを行うことができる。
【0011】
本開示の一態様では、ペアリング処理部(34)は、携帯端末(200)から出力されたコンテンツを制御した上で制御対象シートへ伝送するように構成されてもよい。このような構成によれば、共通のコンテンツを複数のシート(2)に同時に出力する機能や、シート(2)ごとに出力されるコンテンツの内容を規制する機能を実装することができる。
【0012】
本開示の別の態様は、乗物(100)に設置された乗物用シート(2)である。乗物用シート(2)は、シート本体(21)と、シート本体(21)における着席者の動作に関する第1情報を処理装置(3)に出力するように構成されたシートセンサ(22)と、処理装置(3)を介して乗物(100)内の乗員が所持している携帯端末(200)と通信するように構成されたシート通信部(23)と、を備える。
【0013】
処理装置(3)は、第1情報と、携帯端末(200)が出力する乗員の動作に関する第2情報との比較により、シート本体(21)に乗員が着席しているか否かを推定するように構成された比較処理部(33)と、シート本体(21)に乗員が着席していると推定された場合に、シート通信部(23)を携帯端末(200)とペアリングし、ペアリングされた携帯端末(200)の出力をシート通信部(23)に伝送するように構成されたペアリング処理部(34)と、を有する。
【0014】
このような構成によれば、処理装置(3)によって乗物用シート(2)と携帯端末(200)とのペアリングが行われるため、乗物用シート(2)自体に携帯端末(200)とのペアリングを行う通信モジュールを設置する必要がない。したがって、乗物用シート(2)の設備増加を抑制しつつ、携帯端末(200)と乗物用シート(2)とをペアリングできる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態における乗物用の携帯端末通信システムを示す模式的な構成図である。
【
図4】
図4は、
図1の処理装置が実行する通信処理を概略的に示すフロー図である。
【
図5】
図5は、
図5の通信処理で実行される情報比較処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用の携帯端末通信システム1は、携帯端末200をそれぞれ所持する複数の乗員が利用する乗物100(
図2参照)に配備される。本実施形態における乗物100は、乗用車である。
【0018】
<携帯端末>
携帯端末200は、例えばプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備える持ち運び可能なコンピュータである。携帯端末200としては、例えば、スマートフォン、タブレット、ノート型PC等が挙げられる。携帯端末200は、端末センサ201と、出力制御部202とを有する。
【0019】
端末センサ201は、携帯端末200の動き(つまり携帯端末200を所持している乗員の動作)を検出するように構成されている。端末センサ201は、検出した携帯端末200の動きを、乗員の動作に関する第2情報として処理装置3に出力する。
【0020】
端末センサ201としては、例えば加速度センサが使用できる。端末センサ201として加速度センサを用いた場合、3次元の加速度が第2情報として出力される。例えば、乗員がいずれかのシート2に着席するとき、携帯端末200の下方への移動に連動した加速度が処理装置3に連続的に出力される。
【0021】
出力制御部202は、携帯端末200に保存されているコンテンツ、又はネットワークを介して携帯端末200に配信されるコンテンツを処理装置3に伝送するように構成されている。出力制御部202が伝送するコンテンツとしては、例えば、音楽、映像、画像、テキスト、シート2の制御情報等が挙げられる。
【0022】
携帯端末200(つまり、端末センサ201及び出力制御部202)と処理装置3との間のデータの授受は、無線通信により行われる。無線通信としては、近距離無線通信、無線LAN等が使用できる。
【0023】
<携帯端末通信システム>
携帯端末通信システム1は、複数のシート2と、1つの処理装置3とを備える。
【0024】
<シート>
図2に示すように、複数のシート2は、乗物100の内部に配置されている。乗物100内の乗員は、複数のシート2のうち任意のシート2に着席する。
【0025】
図3に示すように、各シート2は、シート本体21と、シートセンサ22と、シート通信部23と、出力装置24とを備える。シート本体21は、乗員を支持するシートクッションとシートバックとを有する。
【0026】
シートセンサ22は、シート本体21における着席者(つまりシート2に着席した乗員)の動作に関する第1情報を処理装置3に出力するように構成されている。シートセンサ22としては、例えば
図3に示すように、シート本体21において着席者からの荷重を受ける部位に配置された加速度センサが挙げられる。
【0027】
シートセンサ22として加速度センサを用いた場合、3次元の加速度が第1情報として出力される。つまり、乗員のシート本体21への着席に伴って発生するシート本体21の3次元の加速度の変化が処理装置3に連続的に出力される。
【0028】
また、シートセンサ22として、荷重センサを用いてもよい。この場合は、乗員がシート本体21に着席するときにシート本体21が乗員から受ける荷重の変化が第1情報として処理装置3に連続的に出力される。
【0029】
また、シートセンサ22として、空間をスキャンすることで着席者の動作を認識する深度センサを用いてもよい。この場合は、着席者の位置及び姿勢の変化を示す深度データが第1情報として出力される。
【0030】
シート通信部23は、処理装置3を介して、乗物100内に存在するいずれかの携帯端末200と通信するように構成されている。具体的には、シート通信部23は、携帯端末200の出力制御部202から伝送されるコンテンツを受信する。
【0031】
出力装置24は、シート通信部23が受信したコンテンツを出力するように構成されている。出力装置24としては、例えば
図3に示すように、シート本体21に設置されたスピーカが挙げられる。スピーカは、コンテンツに含まれる音楽又は音声を出力する。
【0032】
また、出力装置24として、映像又は画像を出力するディスプレイ、シート本体21の位置及び姿勢を制御する駆動装置等が用いられてもよい。さらに、出力装置24は、シート本体21の外部に配置されてもよい。例えば、出力装置24は、シート本体21の周囲(例えば、乗物100の天井、床、壁、隣接する他のシート本体21の背面等)に設置されたスピーカ又はディスプレイであってもよい。
【0033】
<処理装置>
処理装置3は、複数のシート2との通信及び少なくとも1つの携帯端末200との通信を行うように構成されている。処理装置3は、
図1に示すように、第1受信部31と、第2受信部32と、比較処理部33と、ペアリング処理部34と、記憶部35とを有する。
【0034】
処理装置3は、例えばプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。処理装置3は、乗物100の内部に設置されている。処理装置3は、乗物100のECU(エレクトリックコントロールユニット)に組み込まれていてもよい。また、処理装置3の一部は、乗物100の外部(つまり地上設備)に設置されてもよい。
【0035】
(受信部)
第1受信部31は、複数のシート2それぞれのシートセンサ22から第1情報を受信するように構成されている。第1受信部31は、受信した第1情報を比較処理部33に転送する。
【0036】
第2受信部32は、少なくとも1つの携帯端末200から、端末識別情報と、第2情報と、コンテンツとを受信するように構成されている。第2受信部32は、受信した端末識別情報及び第2情報を比較処理部33に転送すると共に、受信したコンテンツをペアリング処理部34に転送する。
【0037】
(比較処理部)
比較処理部33は、複数のシート2がそれぞれ出力する第1情報と、携帯端末200が出力する第2情報との比較により、複数のシート2の中から制御対象シートを推定するように構成されている。
【0038】
「制御対象シート」は、第2情報の比較を行った(つまり端末識別情報を受信した)携帯端末200を所持している乗員が着席しているシートである。比較処理部33は、推定した制御対象シートのシート識別情報と携帯端末200の端末識別情報とをペアリング処理部34に出力する。
【0039】
具体的には、比較処理部33は、複数のシート2のシートセンサ22から受信した第1情報それぞれについて、携帯端末200の端末センサ201から受信した第2情報と比較する。
【0040】
第2情報と一致する第1情報が見つかった場合、比較処理部33は、その第1情報を出力したシート2を「制御対象シート」と推定する。一方、第2情報と一致する第1情報が存在しなかった場合、比較処理部33は、「制御対象シート」が存在しない(つまり、乗員がまだ着席していない、又は乗員が離席した)と推定する。
【0041】
携帯端末200をそれぞれ所持する複数の乗員が乗物100内に存在する場合、比較処理部33は、全ての携帯端末200の第2情報について各シート2の第1情報との比較を行うことで、各携帯端末200と対応する「制御対象シート」を推定する。つまり、比較処理部33は、複数のシート2それぞれに対し、シート本体21に乗員が着席しているか否かを推定する。
【0042】
第1情報及び第2情報は、それぞれ、時間軸を有するセンサ出力の集合体(例えば、センサ出力の時間変化を示す波形)である。第1情報と第2情報との比較は、例えば、AI(人工知能)等のアルゴリズムを用いた近似判定によって実行される。比較処理部33は、比較結果として得られる第1情報と第2情報との差異が予め定めた閾値よりも小さい場合に、両者が一致すると判定する。
【0043】
比較処理部33は、複数のシート2それぞれからの第1情報の取得及び制御対象シートの推定を定期的に実行するように構成されている。つまり、比較処理部33は、制御対象シートの維持又は解除を定期的に実行する。
【0044】
比較処理部33は、複数のシート2のうち、携帯端末200とペアリングされていない状態で着席者の動作が発生した動作発生シートに対し、動作発生シートとペアリングした履歴のある携帯端末200の第2情報を優先して動作発生シートの第1情報と比較するように構成されている。携帯端末200とシート2とのペアリングの履歴は、記憶部35に記憶されている。
【0045】
「動作発生シート」は、「制御対象シート」として推定されていないシート2のうち、乗員の着席動作を含む第1情報を出力したシートである。つまり、「動作発生シート」は、空席状態から乗員の着席状態に移行したと推定されるシートである。第1情報が乗員の着席動作を含むか否かは、例えばAI等のアルゴリズムによって判定される。
【0046】
比較処理部33は、動作発生シートを検出すると、この動作発生シートに過去にペアリングされた携帯端末200から第2情報を取得し、動作発生シートの第1情報と比較する。過去にペアリングされた携帯端末200の第2情報が取得できない場合、又は過去にペアリングされた携帯端末200の第2情報と動作発生シートの第1情報とが一致しない場合、比較処理部33は、他の携帯端末200の第2情報と動作発生シートの第1情報との比較を行う。
【0047】
また、比較処理部33は、制御対象シートの第1情報が第2情報と一致しなくなった場合に加えて、制御対象シートのシートセンサ22の出力が一定時間無くなった場合(つまり、第1情報が取得されない場合)に、制御対象シートの推定を解除する。つまり、それまで制御対象シートとされていたシート2を制御対象シートでは無いと推定し、推定解除の通知をペアリング処理部34に出力する。
【0048】
(ペアリング処理部)
ペアリング処理部34は、比較処理部33により推定された制御対象シートを携帯端末200とペアリングし、ペアリングされた携帯端末200の出力を制御対象シートに伝送するように構成されている。
【0049】
つまり、ペアリング処理部34は、各シート2に対して、シート本体21に乗員が着席している(つまり、シート2が制御対象シートである)と推定された場合、シート通信部23を携帯端末200とペアリングし、ペアリングされた携帯端末200の出力制御部202の出力(つまりコンテンツ)をシート通信部23に伝送するように構成されている。
【0050】
ペアリング処理部34によってシート通信部23に伝送されたコンテンツは、シート2の出力装置24によって出力又は実行される。なお、携帯端末200からコンテンツが出力されない場合は、ペアリング処理部34はコンテンツをシート2へ伝送しないが、シート2と携帯端末200とのペアリングは維持する。
【0051】
また、ペアリング処理部34は、携帯端末200から出力されたコンテンツを制御した上で制御対象シートへ伝送するように構成されている。例えば、ペアリング処理部34は、シート2で出力される音量、コンテンツの内容制限(例えばペアレンツコントロール)をそれぞれのシート2ごとに設定できる機能を有する。また、ペアリング処理部34は、シート2で出力されるコンテンツを選択する機能を有してもよい。
【0052】
さらに、ペアリング処理部34は、1つの携帯端末200から出力されるコンテンツを複数のシート2に伝送する機能を有してもよい。これにより、複数の着席者によるコンテンツの共有、複数のスピーカによる臨場感の向上等のサービスを提供できる。
【0053】
なお、ペアリング処理部34によるコンテンツの制御は、処理装置3に設けられた入力部、又は処理装置3に接続された携帯端末200による入力によって実行することができる。
【0054】
ペアリング処理部34は、比較処理部33によって推定が解除された制御対象シートへの携帯端末200の出力の伝送を停止するように構成される。また、ペアリング処理部34は、出力伝送の停止と共に、推定が解除された制御対象シートと携帯端末200とのペアリングの解除を行う。
【0055】
ペアリング処理部34は、ペアリングを実施する都度、ペアリングの履歴(つまりシート2と携帯端末200との組み合わせ)を記憶部35に記憶する。
【0056】
[1-2.処理]
以下、
図4のフロー図を参照しつつ、処理装置3が実行する通信処理の一例について説明する。
【0057】
なお、
図4のフロー図は、1つのシート2に対して行われる通信処理を示している。処理装置3は、全てのシート2に対し、本通信処理を並列又は直列に実行する。また、本通信処理は定期的に繰り返し実行される。
【0058】
本通信処理では、処理装置3は、まず、第1情報と第2情報とを比較する情報比較処理を実行する(ステップS110)。
【0059】
図5に示すように、情報比較処理では、処理装置3は、最初に処理ターゲットのシート2から第1情報を取得する(ステップS210)。第1情報の取得後、処理装置3は、乗物100内に存在する携帯端末200全てについて、第2情報の取得(ステップS220)と、第1情報と第2情報との比較(ステップS230)とを繰り返す(ループL1)。
【0060】
ループL1では、処理装置3は、処理ターゲットのシート2とのペアリング履歴のある携帯端末200を優先して選択し、第2情報との取得(S220)と、第1情報と第2情報との比較(S230)とを実行する。
【0061】
第1情報と第2情報との比較(S230)では、処理装置3は、第1情報と第2情報とが一致するか否か判定する。第1情報と第2情報とが一致する場合(S230:YES)、処理装置3は、処理ターゲットのシート2を携帯端末200の制御対象シートと推定する(ステップS240)。制御対象シートを推定した場合、処理装置3は、ループL1を終了し、残りの携帯端末200の第2情報の取得及び第1情報との比較を実行せずに、情報比較処理を終了する。
【0062】
一方、第1情報と第2情報とが一致しない場合(S230:NO)、処理装置3は、別の携帯端末200に対して、第2情報との取得(S220)と、第1情報と第2情報との比較(S230)とを繰り返す。
【0063】
全ての携帯端末200に対して情報の比較を行っても制御対象シートの推定がされなかった場合(つまり、第1情報と一致する第2情報が見つからなかった場合)は、処理装置3は、処理ターゲットのシート2が制御対象シートでは無いとして、情報比較処理を終了する。
【0064】
図4に示すように、情報比較処理の後、処理装置3は、情報比較処理の結果に基づいて処理ターゲットのシート2がいずれかの携帯端末200の制御対象シートであるか否か判定する(ステップS120)。
【0065】
処理ターゲットのシート2が制御対象シートである場合(S120:YES)、処理装置3は、制御対象シートが対応する携帯端末とペアリング済みか否か判定する(ステップS130)。ここで、「対応する携帯端末」とは、情報比較処理において第1情報と第2情報とが一致した携帯端末200を意味する。
【0066】
制御対象シートが対応する携帯端末とペアリングされていない場合(S130:NO)、処理装置3は、制御対象シートを対応する携帯端末200とペアリングする(ステップS140)。ペアリング後、処理装置3は、ペアリングされた携帯端末200から制御対象シート(つまり処理ターゲットのシート2)に出力を伝送する(ステップS150)。
【0067】
なお、「制御対象シートが対応する携帯端末とペアリングされていない場合」には、制御対象シートが対応する携帯端末以外の別の携帯端末200とペアリングされている場合も含まれる。この場合、制御対象シートと別の携帯端末200とのペアリングは解除される。
【0068】
一方、制御対象シートが対応する携帯端末と既にペアリングされている場合(S130:YES)、処理装置3は、ペアリング(S140)を実行することなく出力伝送(S150)を実行し、制御対象シートにおける出力を継続させる。
【0069】
処理ターゲットのシート2が制御対象シートでない場合(S120:NO)、処理装置3は、処理ターゲットのシート2がいずれかの携帯端末200とペアリングされているか否か判定する(ステップS160)。
【0070】
処理ターゲットのシート2にペアリングがある場合(S160:YES)、処理装置3は、ペアリングを解除すると共に、携帯端末200からの出力伝送を停止する(ステップS170)。なお、処理ターゲットのシート2が制御対象シートと推定されず、かつ、このシート2にペアリングがある状態は、処理ターゲットのシート2にそれまで着席していた乗員が離席した場合に生じる。一方、処理ターゲットのシート2にペアリングがない場合(S160:NO)、ペアリング解除及び伝送停止はスキップされる。
【0071】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)処理装置3において複数のシート2と携帯端末200とのペアリングが行われるため、複数のシート2それぞれに携帯端末200とのペアリングを行う通信モジュールを設置する必要がない。したがって、シート2の設備増加を抑制しつつ、携帯端末200とシート2とをペアリングできる。
【0072】
(1b)比較処理部33が複数のシート2それぞれからの第1情報の取得及び制御対象シートの推定を定期的に実行することで、着席者が制御対象シートから離れた場合に、シート2における出力を自動で停止することができる。
【0073】
(1c)比較処理部33が動作発生シートとペアリングした履歴のある携帯端末200の第2情報を優先して動作発生シートの第1情報と比較することで、離席した着席者が同じシート2に再着席した場合に、処理負荷を低減しつつペアリングを行うことができる。
【0074】
(1d)ペアリング処理部34が携帯端末200から出力されたコンテンツを制御した上で制御対象シートへ伝送することで、共通のコンテンツを複数のシート2に同時に出力する機能や、シート2ごとに出力されるコンテンツの内容を規制する機能を実装することができる。
【0075】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0076】
(2a)上記実施形態の乗物用の携帯端末通信システムにおいて、処理装置は必ずしも定期的に制御対象シートの推定及びペアリングを実行しなくてもよい。例えば、処理装置は、乗員からの要求を受けて制御対象シートの推定及びペアリングを実行するように構成されてもよい。
【0077】
(2b)上記実施形態の乗物用の携帯端末通信システムにおいて、処理装置は、必ずしも携帯端末から出力されたコンテンツを制御する機能を有しなくてもよい。
【0078】
(2c)上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【0079】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
1…携帯端末通信システム、2…シート、3…処理装置、21…シート本体、
22…シートセンサ、23…シート通信部、24…出力装置、31…第1受信部、
32…第2受信部、33…比較処理部、34…ペアリング処理部、35…記憶部、
100…乗物、200…携帯端末、201…端末センサ、202…出力制御部。