(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/40 20060101AFI20240717BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240717BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60T8/40 C
B60T13/74 D
H05K7/20 B
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2021042884
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2020162609
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 佳啓
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-084145(JP,A)
【文献】特開2011-162054(JP,A)
【文献】特開2016-188006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-13/74
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動時に発熱する電子部品が搭載された回路基板と、
前記回路基板に対向して配置され、フルードを移動させて、制動圧の調整を行うシリンダ部と、
前記電子部品と前記回路基板との少なくとも一方と、前記シリンダ部と、に接触し、前記電子部品で発生した熱を前記シリンダ部に伝導させる熱伝導部材と、
を備え
、
前記シリンダ部はハウジングに設けられ、前記シリンダ部の内部を摺動するピストンの進退方向の端部は、前記ハウジングから突出し、前記回路基板と対向する、
制動装置。
【請求項2】
前記電子部品は、前記シリンダ部が前記回路基板に対向する部分を前記回路基板に投影した場合の投影領域の内側に配置される、請求項
1に記載の制動装置。
【請求項3】
作動時に発熱する電子部品が搭載された回路基板と、
フルードを移動させて、制動圧の調整を行うシリンダ部と、
前記シリンダ部の制動圧調整動作の動力源となるモータと、
前記回路基板に対向して配置され、前記シリンダ部と前記モータとの動力伝達を行うギヤを収容する収容部と、
前記電子部品および前記回路基板の少なくともいずれか一方と前記収容部と、に接触し、前記電子部品で発生した熱を前記収容部に伝導させる熱伝導部材と、
を備える、制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両は、減速や停止等を行うための制動装置を搭載している。制動装置は、流動経路(油路)内に満たされたフルード(ブレーキ液)を、シリンダを用いて加減圧させることで制動力の制御を行う。流動経路内に満たされるフルードは、車両の運転者の例えばブレーキペダルの操作量に応じて駆動するモータ等の駆動源によって動作する電動シリンダにて加減圧される。また、流動経路は、当該流動経路内に配置されたバルブにより適宜切り替えられ、制動対象となる車輪の制動部(ホイールシリンダ)に接続され、適切なタイミングで車輪の制動制御が実行される。このような制動装置を車両走行中に制御する場合、モータ制御が頻繁に行われるため、モータを動作させるための電子部品が発熱する。制動装置を適正に制御するためには、適切な放熱構造が必要であり、種々の放熱構造が提案されている。例えば、運転者の操作により動作するマスタシリンダを形成(収容)するハウジングの一部を突出加工して、その突出部に発熱源である電子部品を実装する基板に接触させる等の放熱構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構造の場合、放熱のために基板と接触させる専用の突出部を設ける必要があり、加工コストの増加や部品(材料)コストの増加が発生するとともに、放熱専用の突出部の存在は、制動装置の大型化の原因になってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本開示の課題の一つは、例えば、加工コストや部品コストの増加が抑制できるとともに、大型化の回避が行い易い制動装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の制動装置は、例えば、作動時に発熱する電子部品が搭載された回路基板と、上記回路基板に対向して配置され、フルードを移動させて、制動圧の調整を行うシリンダ部と、上記電子部品と上記回路基板との少なくとも一方と、上記シリンダ部と、に接触し、上記電子部品で発生した熱を上記シリンダ部に伝導させる熱伝導部材と、を備える。上記シリンダ部はハウジングに設けられ、上記シリンダ部の内部を摺動するピストンの進退方向の端部は、上記ハウジングから突出し、上記回路基板と対向する。
【0007】
上記制動装置では、発熱源である電子部品を搭載する回路基板と、シリンダ部とを対向して配置し、その間に熱伝導部材を介在させ、回路基板側で発生した熱をシリンダ部側に伝達し、シリンダ部側から放熱させる。その結果、放熱のための部位を専用に設ける必要がなく、加工コストや部品コストの増加が抑制し易い構造を得ることができる。また、専用の放熱部位を設ける必要がないため、制動装置の大型化の回避が行い易いシンプルな構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の制動装置を構成する電動シリンダを中心とする関連部品のレイアウトを示す例示的かつ模式的な説明図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の制動装置の電子部品を実装する回路基板の構成と、当該回路基板とシリンダ部とのレイアウトを示す例示的かつ模式的な図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の制動装置の電子部品を実装する回路基板の他の構成と、当該回路基板とシリンダ部とのレイアウトを示す例示的かつ模式的な図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の制動装置におけるシリンダ部と対面する側の回路基板の構成を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の制動装置を構成する主要部品のレイアウトを示す例示的かつ模式的な分解斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の制動装置の放熱構造(放熱経路)を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の制動装置の放熱構造(放熱経路)の変形例を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の制動装置の放熱構造(放熱経路)の別の変形例を示す例示的かつ模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
また、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。また、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の制動装置10を構成する電動シリンダ12を中心とする関連部品のレイアウトを示す例示的かつ模式的な説明図である。
【0012】
制動装置10は、例えば、車両に搭載される。車両の車輪を減速または停止させる場合に、制動装置10は、運転者のブレーキペダルの操作量(踏み込み量)に応じて加減圧されるブレーキ液(フルード、作動液)を各車輪に設けけられたホイールシリンダWに供給する。ブレーキ形式がディスクブレーキの場合、ホイールシリンダWに供給されたブレーキ液により、車輪と共に回転するホイールディスクを把持するキャリパを動作させて制動力の発生および制動力の調整が実行される。また、ブレーキ形式がドラムブレーキの場合、ホイールシリンダWに供給されたブレーキ液により、車輪と共に回転するブレーキドラムを押圧するブレーキシューを動作させて制動力の発生および制動力の調整が実行される。なお、運転者のブレーキペダルの操作の有無に拘わらず、車両に設けられた各種センサ等の検出結果に基づき、各ホイールシリンダWに供給するブレーキ液の加減圧を制御する場合がある。この場合、制動装置10は、自動的に各車輪の制動力制御を行い、例えば、スリップや横滑り等の発生を抑制して、車両姿勢を安定させることができる。
【0013】
制動装置10は、例えば、金属製のシリンダブロック14(ハウジングともいう)の内部に、電動シリンダ12の主部品であるシリンダ部16を収容する(設ける)。シリンダ部16は、図中矢印X1-X2方向に延在する有底の円筒状の部材である。また、シリンダブロック14内部には、車輪側のホイールシリンダWと電動シリンダ12(シリンダ部16)とを接続する油路18(流動経路、作動液流路ともいう)が設けられ、電動シリンダ12によって加減圧されたブレーキ液がホイールシリンダWに供給される。
【0014】
電動シリンダ12のシリンダ部16の内部には、図中矢印X1-X2方向に摺動可能なピストン20が配置される。シリンダ部16の有底部壁面16aとピストン20の有底部壁面16a側のピストン面20aとの間には、ピストン20を矢印X1方向に付勢するスプリング22が配置されている。また、シリンダ部16の内部には、矢印X1-X2方向に延在する回転可能なボールねじ24と、当該ボールねじ24によって矢印X1-X2方向に進退可能なボールねじナット26が配置されている。そして、ボールねじナット26のピストン20側(矢印X2方向側)の押圧部26aが、ピストン面20aと逆側の受圧部20bと接触するように構成されている。
【0015】
ボールねじ24の基部24aには、従動ギヤ28が固定され、中間ギヤ30と噛合している。また、中間ギヤ30が、モータ32の回転軸32aに固定された駆動ギヤ34と噛合している。従動ギヤ28と中間ギヤ30と駆動ギヤ34とで減速機構Gを構成している。減速機構Gは、例えば、カバーGaに覆われ、減速機構Gおよびシリンダ部16等が塵や埃、水分等に晒されないようになっている。
【0016】
モータ32が回転駆動した場合、従動ギヤ28と駆動ギヤ34の歯数に基づく減速比で減速された状態でボールねじ24が、モータ32の回転方向と同方向に回転する。つまり、ボールねじナット26がシリンダ部16内部で矢印X1-X2方向に進退する。モータ32の駆動によりボールねじナット26が、矢印X2方向に移動した場合、ピストン20は、スプリング22の付勢力に抗して矢印X2方向に移動し、有底部壁面16aとピストン面20aとの間に形成された圧力室16Mの容積を縮小させる。その結果、圧力室16Mの内部に満たされたブレーキ液が加圧され、油路18を介してホイールシリンダWの液圧を上昇させて制動力を増加させる。一方、モータ32の逆方向の駆動によりボールねじナット26が、矢印X1方向に移動した場合、ボールねじナット26はピストン20から離間する。この場合、ピストン20は、スプリング22の付勢力によって矢印X1方向に移動する。つまり、圧力室16Mの容積を拡大させる。その結果、圧力室16Mの内部に満たされたブレーキ液が減圧され、油路18を介してホイールシリンダWの液圧を降下させて制動力を減少させる。
【0017】
モータ32は、例えば、運転者のブレーキペダルの操作状態(踏み込み量と踏み込み方向)に応じて回転方向と回転量が決定されて制動力が増減される。また、前述したように、車両のスリップや横滑り等を抑制するために自動制動制御が行われる場合、車両に搭載された各種センサの検出結果に基づき決定された制動力を実現するように、モータ32の回転方向と回転量が決定され、制動力の増減が行われる。
【0018】
なお、
図1に示す減速機構Gの構成やモータ32の位置は一例であり、モータ32の駆動によってピストン20がシリンダ部16の延在方向(矢印X1-X2方向)に移動可能であれば、他の構成、他のレイアウトでもよい。
【0019】
このように構成される、電動シリンダ12を備える制動装置10の場合、モータ32は、電子部品36(例えばスイッチング素子)を用いた、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御により動作する。そして、電子部品36は、モータ32を回転駆動させるためにスイッチング動作をする際、発熱する。したがって、電子部品36および電子部品36を実装する回路基板38を効果的に放熱することが、電子部品36の劣化、モータ32やピストン20の動作不良を回避し、電動シリンダ12を適正に動作させることにつながる。つまり、適切な放熱構造の構築が重要となる。
【0020】
そこで、第1実施形態の制動装置10は、モータ32(電動機)を制御する、発熱源となり得る電子部品36が搭載された回路基板38を、電動シリンダ12(シリンダ部16)に対向して配置する。そして、電子部品36と回路基板38との少なくとも一方と、シリンダ部16の有底部壁面16aの裏面側である外壁部16Taとを熱伝導部材40(第一の熱伝導部材)を介して接触させる。つまり、電子部品36で発生した熱をシリンダ部16に伝達させることが可能なように、放熱構造を構築する。
【0021】
より具体的には、シリンダ部16に収容されるピストン20の進退方向(矢印X1-X2方向)の端部である外壁部16Taを、シリンダ部16を支持するシリンダブロック14(ハウジング)から突出させて、突出部16Tを形成する。そして、突出部16Tを、電子部品36を例えば第1面38aに実装した回路基板38の当該第1面38aの逆側の面である第2面38bに対向させ、当該第2面38bを、熱伝導部材40を介して熱的に接触させる。つまり、電子部品36で発生した熱は、熱容量が回路基板38より大きなシリンダ部16およびシリンダ部16を収容するシリンダブロック14に伝達され、結果的に電子部品36の放熱が可能となる。すなわち、電動シリンダ12自体をヒートシンクとして利用する。
【0022】
なお、熱伝導部材40は、効率的な熱伝導を行える材質であれば、適宜選択可能で、例えば、グリスや熱伝導シート等を利用することができる。また、グリスに熱伝導性の高い粒子を混入させることで、さらに熱伝導効率を向上することができる。
【0023】
図1に示されるように、シリンダ部16は、矢印X1-X2方向に長尺の部品であるため、一部、例えば、有底部側をシリンダブロック14から突出させることが容易であり、回路基板38と接触可能な突出部16Tとして、熱伝導構造(放熱構造)を容易に構築することができる。その結果、熱伝導(放熱)のために、専用の部材(材料)を用いたり、加工したりする必要がなく、部品コストや加工コストの増加抑制、構成のシンプル化等に寄与できる。また、回路基板38と突出部16T(外壁部16Ta)との接触を容易に実現することができるので、回路基板38と外壁部16Taとの間に介在させる熱伝導部材40(例えばグリス)を薄くすることが可能になる。その結果、熱伝導部材40による熱伝導効率を向上することができる。さらに、熱伝導部材40を薄くすることで、例えば、液状(ゲル状)のグリス等が利用し易く、また、回路基板38と外壁部16Taとの間にグリスを保持し易い構造が実現できる。
【0024】
回路基板38は、シリンダブロック14に固定されたブラケット14aによって支持され、外壁部16Taと当該外壁部16Taに対面する第2面38bとの距離を一定に保つことができる。その結果、外壁部16Taと第2面38bとの間に介在する熱伝導部材40を安定的に保持することができる。
図1の場合、回路基板38は、カバー14bによって覆われ、回路基板38や電子部品36が水分や塵や埃等に晒されないようになっている。
【0025】
なお、
図1の場合、図示の簡略化のため、回路基板38には1個の電子部品36しか図示していないが、実際は、複数の電子部品36が実装されている。また、
図1に示されるように、電子部品36は、シリンダ部16が回路基板38に対向する部分(シリンダ部16の外壁部16Ta)を回路基板38に投影した場合の投影領域S(例えば、円形領域)の内側に配置される。その結果、電子部品36で発生した熱は、熱伝導部材40を介して直下に存在するシリンダ部16に効率よく伝達させることができる。したがって、回路基板38上における実装部品のレイアウトを適宜選択することにより、より効率のよい放熱構造を構築することができる。例えば、回路基板38上で発熱量の多い電子部品36を優先的に投影領域Sの内側に配置することで、熱伝導効率(放熱効率)を向上することができる、また、各電子部品36のレイアウトにより熱伝導効率(放熱効率)を意図的に制御し易い構造を得ることができる。
【0026】
このように、第1実施形態の制動装置10によれば、制動力を発生する機能と電子部品36で発生した熱を放熱する機能を、電動シリンダ12(シリンダ部16)が備える。したがって、放熱効率が改善されたコンパクトでシンプルな構造の制動装置10を提供することができる。
【0027】
図2は、制動装置10の電子部品36を実装する回路基板38の構成と、当該回路基板38とシリンダ部16とのレイアウトを示す例示的かつ模式的な図である。
【0028】
図2の場合、電子部品36は、回路基板38の第2面38b側に実装され、シリンダ部16(突出部16T)の外壁部16Taと実質的に接触するとともに、周囲を熱伝導部材40で包囲されている。したがって、電子部品36で発生した熱の大部分を直接シリンダ部16に伝達し、シリンダブロック14に放熱することができる。したがって、
図1に示す構成と同様に、電子部品36で発生した熱をシリンダ部16にスムーズに伝達すると共に、回路基板38の第2面38bを利用することで電子部品36の配置自由度が向上する。その結果、回路基板38(しいては制動装置10)の設計自由度を向上させることができる。
【0029】
なお、
図2に示されるように、第2面38b側に配置される電子部品36を投影領域Sの内側に配置することにより、
図1と同様に、効率的に電子部品36からの熱をシリンダ部16側に伝達することができる。また、電子部品36は、投影領域Sの外側に実装されてもよい。その場合、投影領域Sの外側に存在する電子部品36の実装位置まで熱伝導部材40の塗布範囲を広げることにより、熱伝導部材40を用いた熱伝導を行うことができる。その結果、電子部品36を投影領域Sの内部に実装する場合に近い熱伝導効率を得ることができる。
【0030】
図3は、制動装置10の電子部品36を実装する回路基板38の他の構成と、当該回路基板38とシリンダ部16とのレイアウトを示す例示的かつ模式的な図である。
【0031】
前述したように、電子部品36を回路基板38に実装する場合、シリンダ部16の投影領域Sの内側に配置することが、熱伝導効率(放熱効率)の向上の点で有利である。しかしながら、シリンダ部16の直径は、電動シリンダ12で発生させたい制動力に基づいて決定される。したがって、熱伝導効率を向上するために、必要以上に大径のシリンダ部16を採用するのは非現実的である。
【0032】
そこで、
図3の場合、シリンダ部16の投影領域Sの内側において、回路基板38の第1面38aと第2面38bの両面に電子部品36(36a,36b)を配置して、いずれの電子部品36a、36bも効率的な熱伝導を実現できるようにしている。この場合、第2面38b側に実装された電子部品36aは、
図2の構成と同様に、シリンダ部16(突出部16T)の外壁部16Taと実質的に接触するとともに、周囲を熱伝導部材40で包囲されている。したがって、電子部品36aで発生した熱の大部分をシリンダ部16に直接伝達し、シリンダブロック14に放熱することができる。一方、回路基板38の第1面38a側に実装される電子部品36bは、当該電子部品36bの第1面38a側の少なくとも一部が接触する第二の熱伝導部材42を介して熱伝導部材40と接触させ、電子部品36bで発生した熱をシリンダ部16側に伝達して放熱している。第二の熱伝導部材42は、熱伝導性が回路基板38より高い物質であり、例えば銅チップ(銅コイン)等を利用することができる。第二の熱伝導部材42は、回路基板38に形成された貫通孔38cに空気層が形成されないように嵌め込まれる。また別の実施例では、銅チップの代わりに熱伝導シートやグリス等を貫通孔38cに嵌め込んでもよい。
【0033】
第二の熱伝導部材42は、
図3に示されるように、第2面38b側に実装された電子部品36aと接触しない位置に形成され、電子部品36bで発生した熱が第二の熱伝導部材42を介して直接電子部品36aに伝達されないように構成されている。
【0034】
図3に示すように、回路基板38の第1面38aおよび第2面38bの両面を電子部品36(36a,36b)の実装領域として利用することにより、限られたシリンダ部16(外壁部16Ta)の面積を有効に利用できる。そして、電子部品36(36a,36b)で発生した熱を効率的に、シリンダ部16(シリンダブロック14)側に伝達し、放熱させることができる。なお、電子部品36bで発生した熱は、回路基板38より熱伝導率の高い第二の熱伝導部材42に主として伝達される。したがって、回路基板38を挟んで第1面38a側に実装される電子部品36bと第2面38b側に実装される電子部品36aとは、
図3に示されるように、回路基板38の表裏で一部がオーバラップしてもよい。このようなに、回路基板38の表裏で電子部品36の配置のオーバラップを許容することで、電子部品36の実装密度の向上、回路基板38のスペースの有効利用に寄与することができる。
【0035】
図4は、制動装置10におけるシリンダ部16と対面する側の回路基板38(第2面38b)の構成を示す例示的かつ模式的な図である。
【0036】
通常、回路基板38には、各電子部品36が電気的に接続される銅パターン(配線パターン)が設けられている。そして、湿気や塵や埃等の付着から銅パターンを保護し、水分や塵埃等の異物の付着によるパターン間ショートの発生を回避できるように、銅パターンの上からレジストが塗布されている。しかしながら、レジストは、熱伝導効率を低下させる原因になり得る。そこで、第1実施形態の回路基板38は、
図4に示されるように、例えば回路基板38に実装された電子部品36aの周囲に必要最低限のレジスト44を残し、他の銅パターンの形成領域は、銅パターンを露出させている。
図4の場合、図示の簡略化のため銅パターンの存在領域を領域38dで示し、個別の銅パターンの図示は省略している。露出された銅パターンには、
図3等に示されるように、熱伝導部材40が空気層を残すことなく直接接触することになる。つまり、第1面38aで発生した熱は、直接熱伝導部材40に伝わると共に、銅パターンを介して、広範囲に拡散され熱伝導部材40を介してシリンダ部16側に伝達させることができる。したがって、レジスト44の存在しない銅パターンが露出した領域38dを広げることで、熱伝達効率(放熱効率)をさらに向上することができる。
【0037】
なお、上述したように、露出された銅パターンには、グリス等の熱伝導部材40が空気層を残すことなく直接接触することができる。つまり、熱伝導部材40(例えばグリス)は、レジスト44と同様に銅パターンの保護を行い、湿気や塵や埃等の付着、およびそれが原因となるパターン間ショートの発生を回避するように機能することができる。
【0038】
図4は、回路基板38の第2面38bに電子部品36aが配置される例を示した。別の実施例では、
図1や
図3のように回路基板38の第1面38aに電子部品36bを実装する場合も、電子部品36b側の銅パターンを露出させ、熱伝導部材40に直接接触させて熱伝導を行うようにしてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0039】
このように、第1実施形態の制動装置10は、回路基板38と、シリンダ部16と、熱伝導部材40と、を備える。回路基板38は、作動時に発熱する電子部品36が搭載される。シリンダ部16は、回路基板38に対向して配置され、ブレーキ液(フルード)を移動させて、制動圧の調整を行う。熱伝導部材40は、電子部品36と回路基板38との少なくとも一方と、シリンダ部16と、に接触し、電子部品36で発生した熱をシリンダ部16に伝導させる。この構成によれば、例えば、電子部品36を搭載する回路基板38と、シリンダ部16とを対向して配置し、その間に熱伝導部材40を介在させ、回路基板38側で発生した熱をシリンダ部16側に伝達し、シリンダ部16側から放熱させる。その結果、放熱のための部位を専用に設ける必要がなく、加工コストや部品コストの増加が抑制し易い構造を得ることができる。また、専用の放熱部位を設ける必要がないため、制動装置10の大型化の回避が行い易いシンプルな構造を得ることができる。
【0040】
また、制動装置10のシリンダ部16はシリンダブロック14(ハウジング)に設けられ、シリンダ部16の内部を摺動するピストン20の進退方向の端部は、例えば、シリンダブロック14(ハウジング)から突出し、回路基板38と対向するようにしてもよい。この構成によれば、回路基板38と突出したシリンダ部16の突出部16T(外壁部16Ta)との接触を容易に実現することができる。その結果、回路基板38と外壁部16Taとの間に介在させる熱伝導部材40を薄くすることが可能となり、熱伝導部材40による熱伝導効率を向上することができる。また、熱伝導部材40を薄くすることができるため、例えば、液状(ゲル状)のグリス等が利用し易く、また、回路基板38と外壁部16Taとの間にグリスを保持し易い構造が実現できる。
【0041】
また、制動装置10の電子部品36は、例えば、シリンダ部16が回路基板38に対向する部分(外壁部16Ta)を回路基板38に投影した場合の投影領域の内側に配置されるようにしてもよい。この構成によれば、例えば、電子部品36で発生した熱を、熱伝導部材40を介して、効率的にシリンダ部16側に伝達することが可能となり、放熱効率の向上に寄与することができる。
【0042】
なお、モータ32は、電子部品36のスイッチング制御に基づく電力供給を受ける。モータ32の電力供給ケーブル32bは、シリンダブロック14に設けられた端子46、端子ケーブル46a、さらに、回路基板38に形成された銅パターンを介して電子部品36に電気的に接続されている。このとき、電力供給に利用される銅パターンの配索距離が長くなると、発熱の原因になり得る。そこで、
図1に示されるように、モータ32を制御するための電子部品36の実装位置をシリンダ部16の外壁部16Taの縁部(投影領域Sの内側の縁部)近傍に設定し、端子46を突出部16Tに接近させた位置に設定する。その結果、回路基板38上におけるモータ32用の銅パターンの配索距離を短くすることが可能となり、発熱抑制および銅パターンの削減等の寄与することができる。
【0043】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の制動装置10Aを構成する主要部品のレイアウトを示す例示的かつ模式的な分解斜視図である。なお、第2実施形態の制動装置10Aを構成する主要部の基本機能は第1実施形態の制動装置10の対応する主要部の機能と同じであり、実質的に同様な機能を実現する部材には、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
図5に示す制動装置10Aは、第1実施形態の制動装置10と同様に、モータ32の駆動により減速機構Gを介してボールねじ24を回転させ、電動シリンダ12の内部に配置されたボールねじナットを移動させる。ボールねじナットの移動によりピストンが圧力室の容積を変化させ、圧力室に満たされたブレーキ液の圧力状態(加圧状態または減圧状体)を調整し、油路を介して接続されたホイールシリンダの制動力の調整を行う。
【0045】
上述したように、第2実施形態の制動装置10Aを構成する主要部の基本機能は第1実施形態の制動装置10の対応する主要部の機能と同じであるが、各部材のレイアウトが異なる。
【0046】
具体的には、第1実施形態の制動装置10の場合、
図1に示されるように、シリンダ部16を含むシリンダブロック14から突出した突出部16Tに熱伝導部材40を介して回路基板38が(熱的に)接続されている。また、シリンダ部16を挟んで回路基板38の逆側に減速機構G(カバーGa)が配置されている。
【0047】
一方、第2実施形態の制動装置10Aの場合、シリンダブロック14の一面側である第1面14cにモータ32及び電動シリンダ12が配置されている。そして、シリンダブロック14の第1面14cの逆側の面である第2面14dに接触する状態で減速機構Gを内蔵するカバーGa(ギヤボックス)が配置されている。また、カバーGaにおいて、シリンダブロック14の第2面14dと接触するカバー第1面とは逆側のカバー第2面Gaaに、第三の熱伝導部材48及び熱伝導部材40(第一の熱伝導部材)を介して電子部品36を実装する回路基板38が配置されている。
図5に示す構造の場合、回路基板38の第1面38aに電子部品36が実装され、第1面38aの逆側の面である第2面38b側に熱伝導部材40が配置されている。熱伝導部材40(第一の熱伝導部材)は、第1実施形態と同様に、グリスや熱伝導シート等を利用することができる。また、グリスに熱伝導性の高い粒子を混入させてもよい。また、第三の熱伝導部材48は、効率的な熱伝導を行える材質であれば、適宜選択可能で、例えば、アルミ板や銅板等の金属板を利用することができる。
【0048】
したがって、第2実施形態の制動装置10Aは、モータ32を駆動制御するための電子部品36で発生した熱を回路基板38、熱伝導部材40(第一の熱伝導部材)、第三の熱伝導部材48を介してカバーGaに伝達する。制動装置10Aは、カバーGaに伝達された熱を、さらに、シリンダブロック14に伝達し、放熱するように構成されている。つまり、本来は、電動シリンダ12の駆動機構の一部として機能するカバーGa(ギヤボックス)が、シリンダブロック14に対して突出した突出部となり、電子部品36で発生した熱の放熱を行う部材(部分)として機能する。換言すれば、第1実施形態の制動装置10と同様に、制動装置10Aは、熱伝導(放熱)のために、大掛かりな専用の部材(材料)を用いたり、加工を施したりする必要がなく、部品コストや加工コストの増加抑制、構成のシンプル化等に寄与しつつ、電子部品36の放熱を行うことができる。
【0049】
カバーGa(ギヤボックス)に収容される減速機構Gは、第1実施形態の減速機構Gと同様に、従動ギヤ28、中間ギヤ30、駆動ギヤ34を収容している。駆動ギヤ34には、モータ32の回転軸32aが接続され、当該駆動ギヤ34と噛合する中間ギヤ30にモータ2の駆動力を伝達する。また、中間ギヤ30には従動ギヤ28が接続され、中間ギヤ30を介して伝達された駆動力は、当該従動ギヤ28に固定されたボールねじ24を回転駆動させる。モータ32が回転駆動した場合、従動ギヤ28と駆動ギヤ34の歯数に基づく減速比で減速された状態でボールねじ24が、モータ32の回転方向と同方向に回転する。
【0050】
カバーGa(ギヤボックス)は、減速機構Gが塵や埃、水分等に晒されないようにするとともに、従動ギヤ28、中間ギヤ30、駆動ギヤ34に塗布されたグリス等が例えば回路基板38に付着することを防止するために設けられている。カバーGaは、上述のような機能を実現するため、例えば樹脂で形成することができる。カバーGaは、例えば、シリンダブロック14と接触する側が開口した箱形の部材である。カバーGaを樹脂で形成することにより部品コストの軽減に寄与できる。なお、カバーGaを樹脂で形成する場合、金属製の第三の熱伝導部材48よりは熱伝導率は劣るが、空気よりも熱伝導率はよく、逆側の面が熱容量の大きなシリンダブロック14に接触しているため、充分な熱輸送を行うことができる。別の実施例においては、カバーGa(ギヤボックス)は、より熱伝導率の高い金属製としてもよい。この場合、第三の熱伝導部材48を省略してもよい。
【0051】
カバーGa(ギヤボックス)第三の熱伝導部材48、熱伝導部材40(第一の熱伝導部材)、回路基板38等は、外装カバー50で覆われ、水分や塵や埃等に晒されないようになっている。なお、
図5は、外装カバー50のうち、回路基板38の第1面38a側を覆う壁面の図示が省略された状態で示されている。
【0052】
第2実施形態の制動装置10Aのモータ32は、例えば、ブラシレスモータとすることができる。この場合、制動装置10Aは、モータ32の正確な回転制御を実現するための、回転角測定用の磁石52と、回転角センサ54を備える。磁石52は、モータ32の回転軸32aに固定された駆動ギヤ34に固定されて一体的に回転する、S極とN極が同一平面に並んで配置された、例えば円盤形状の部材である。回転角センサ54は、回路基板38の第2面38bで、磁石52と対面する位置に実装されている。回転角センサ54は、回転軸32a(駆動ギヤ34)と一体的に回転する磁石52の磁場ベクトルの変化を検出し、モータ32(回転軸32a)の回転角度を推定する。なお、磁石52と回転角センサ54との間に金属等が介在すると磁場が歪んで正確な検出の妨げになる場合がある。そのため、
図5に示す制動装置10Aの場合、放熱経路のために配置する第三の熱伝導部材48(例えば、アルミ板等)は、磁石52と回転角センサ54との対面領域と重ならないように配置されている。
【0053】
この他、制動装置10Aのシリンダブロック14の第2面14dには、モータ32に電子部品36のスイッチング制御に基づく電力供給を行うための電力供給ケーブル32bの引き出し部などが形成されている。
【0054】
このように構成される第2実施形態の制動装置10Aにおいて、電子部品36で発生した熱の放熱形態の例を
図6~
図8を用いて説明する。
図6~
図8は、放熱経路(放熱形態)が異なるのみで、他の部分の基本構成は同じである。
【0055】
図6は、
図5に示す制動装置10Aの放熱構造(放熱経路)の例示的かつ模式的な図である。
図6は、
図5の第三の熱伝導部材48、つまり、板状の部材を用いて、電子部品36で発生した熱をカバーGa(ギヤボックス)に伝達し、さらに、シリンダブロック14に伝達し、放熱する構造例である。
【0056】
前述したように、例えば、モータ32の駆動時に電子部品36で発生した熱は、まず、空気より熱伝導率の高い回路基板38に伝達し、第2面38b側に伝達する。続いて、高熱伝導率の熱伝導部材40(第1の熱伝導部材)、第三の熱伝導部材48に伝達する。ここで、カバーGa(ギヤボックス)は、熱伝導部材40や第三の熱伝導部材48より熱伝導率は劣るものの、空気よりは熱伝導率が高い。したがって、第三の熱伝導部材48に伝導した熱は、カバーGaのカバー第2面Gaaに伝達し、さらに、カバーGaが接触する熱容量の大きなシリンダブロック14に伝達する。つまり、電子部品36で発生した熱は、シリンダブロック14を介して放熱されることになる。
【0057】
このように、本来は、電動シリンダ12の駆動機構の一部として機能するカバーGa(ギヤボックス)が、シリンダブロック14から突出した突出部となり、電子部品36で発生した熱の放熱を行う部材として機能する。その結果、制動装置10Aは、熱伝導(放熱)のために、大掛かりな専用の部材(材料)を用いたり、加工を施したりする必要がなく、部品コストや加工コストの増加抑制、構成のシンプル化等に寄与しつつ、電子部品36の放熱を行うことができる。
【0058】
なお、電子部品36で発生した熱は、外装カバー50側から放熱することも考えられる。しかしながら、回路基板38の第1面38a側に電子部品36を実装する場合、電子部品36の種類により高さ(背丈)が異なる場合がある。背丈の高い電子部品36が存在する場合、それを収容するために外装カバー50の背丈も高くなり、回路基板38の第1面38aと外装カバー50の内面壁との距離が増大する。つまり、空気層が増大し、放熱効率が著しく低下したり、不安定になったりする場合がある。一方、第2実施形態の制動装置10Aのように、回路基板38の第2面38b側を放熱経路として利用する場合、第2面38b側で、カバーGaと対向する位置に電子部品36を設けなければ、第2面38bとカバーGaとの距離は最小限を維持し、かつほぼ均一とすることが可能である。つまり、回路基板38の第2面38bを、熱伝導部材40(第位置の熱伝導部材)と第三の熱伝導部材48を介して安定的な距離を維持した状態でカバーGaに対向させることができる。その結果、放熱効率の安定化に寄与することができる。なお、
図6に示されるように、シリンダブロック14からカバーGaが突出した状態となるため、カバーGaが存在する領域以外では、回路基板38の第2面38bとシリンダブロック14との間に空間を形成し易い。したがって、背丈の高い電子部品36を第2面38bに配置する場合は、カバーGaとの対向領域を避けて第2面38bに実装することで、電子部品36のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0059】
図7は、第2実施形態の放熱構造(放熱経路)の変形例を示す制動装置10Aaを示す例示的かつ模式的な図である。
図7の制動装置10Aaは、
図6の制動装置10Aと比較して、第三の熱伝導部材48の形状が異なる以外、他の構成は同じであり、実質的に同様な機能を実現する部材には、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図7に示す制動装置10Aaの第三の熱伝導部材48は、
図6に示す制動装置10Aの第三の熱伝導部材48と同様に、回路基板38の第2面38bに接触して配置される熱伝導部材40(第1の熱伝導部材)と、カバーGa(ギヤボックス)のカバー第2面Gaaとの間に配置された例えばアルミ板の部材である。制動装置10Aaの第三の熱伝導部材48は、さらに、カバーGaのカバー側面Gabに沿って、シリンダブロック14の第2面14dに到達する第1脚部48a及び当該第1脚部48aに接続され、シリンダブロック14の第2面14dに沿って延びる第2脚部48bを備える。第1脚部48a及び第2脚部48bは、カバーGa(ギヤボックス)より熱伝導率が大きければよく、同一部材で一体的に形成されてもよいし、別々の部材で構成されて接続されて形成されてもよい。
【0061】
制動装置10Aaは、
図6の制動装置10Aと同様に、例えば、モータ32の駆動時に電子部品36で発生した熱を、まず、空気より熱伝導率の高い回路基板38に伝達し、第2面38b側に伝達する。続いて、熱は、高熱伝導率の熱伝導部材40(第1の熱伝導部材)、第三の熱伝導部材48に伝達する。前述したように、カバーGa(ギヤボックス)は、熱伝導部材40や第三の熱伝導部材48より熱伝導率は劣る。そこで、第三の熱伝導部材48に伝導した熱の一部をカバーGaに伝達させつつ、主たる熱は、第1脚部48a及び第2脚部48bを介して、熱容量の大きなシリンダブロック14に直接伝達する。この場合、第三の熱伝導部材48、第1脚部48a、第2脚部48bを用いた構造は、スムーズな熱輸送路の確保が可能となり、比較的長期間の放熱に適しているといえる。つまり、電子部品36で発生した熱を制動装置10Aの構成より、さらに効率的にシリンダブロック14に伝達させ、放熱する。
【0062】
このように、
図7の制動装置10Aaにおいても、本来は、電動シリンダ12の駆動機構の一部として機能するカバーGa(ギヤボックス)が、シリンダブロック14から突出した突出部となり、電子部品36で発生した熱の放熱を行う部材として機能するとともに、第1脚部48a及び第2脚部48bの支持部材としても機能する。その結果、制動装置10Aaは、熱伝導(放熱)のために、大掛かりな専用の部材(材料)を用いたり、大掛かりな加工を施したりする必要がなく、部品コストや加工コストの増加抑制、構成のシンプル化等に寄与しつつ、電子部品36の放熱を行うことができる。
【0063】
図8は、第2実施形態の放熱構造(放熱経路)の別の変形例を示す制動装置10Abを示す例示的かつ模式的な図である。
図8の制動装置10Abは、
図6の制動装置10Aと比較して、第三の熱伝導部材48に加え、カバーGaのカバー第2面Gaaの裏面であるカバー第3面Gacに第四の熱伝導部材56を備える。他の構成は制動装置10Aと同じであり、実質的に同様な機能を実現する部材には、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図8に示す制動装置10Abの第三の熱伝導部材48は、
図6に示す制動装置10Aの第三の熱伝導部材48と同様に、回路基板38の第2面38bに接触して配置される熱伝導部材40(第1の熱伝導部材)と、カバーGa(ギヤボックス)のカバー第2面Gaaとの間に配置された例えばアルミ板の部材である。また、第四の熱伝導部材56は、カバーGa(ギヤボックス)より熱伝導率が大きい板状の金属板である。第四の熱伝導部材56は、例えば、アルミ板や銅板で構成することができる。
【0065】
制動装置10Abは、
図6の制動装置10Aと同様に、例えば、モータ32の駆動時に電子部品36で発生した熱を、まず、空気より熱伝導率の高い回路基板38に伝達し、第2面38b側に伝達する。続いて、熱は、高熱伝導率の熱伝導部材40(第1の熱伝導部材)、第三の熱伝導部材48に伝達する。前述したように、カバーGa(ギヤボックス)は、熱伝導部材40や第三の熱伝導部材48より熱伝導率は劣るものの、空気よりは熱伝導率が高い。また、カバーGaのカバー第3面GacにカバーGaより熱伝導率の高い第四の熱伝導部材56が配置されているため、第三の熱伝導部材48に伝導した熱は、
図6の制動装置10Aより効率的にカバーGaのカバー第2面Gaaに伝達し、さらに、第四の熱伝導部材56に蓄熱(熱輸送)される。この場合、第三の熱伝導部材48、第四の熱伝導部材56を用いた構造は、回路基板38以外の部分で多くの熱の蓄積が可能になり、比較的長期間の放熱に適しているといえる。そして、カバーGaが接触する熱容量の大きなシリンダブロック14に伝達させることができる。つまり、電子部品36で発生した熱は、シリンダブロック14を介して放熱されることになる。
【0066】
このように、
図8の制動装置10Abにおいても、本来は、電動シリンダ12の駆動機構の一部として機能するカバーGa(ギヤボックス)が、シリンダブロック14から突出した突出部となり、電子部品36で発生した熱の放熱を行う部材として機能する。その結果、制動装置10Abは、熱伝導(放熱)のために、大掛かりな専用の部材(材料)を用いたり、加工を施したりする必要がなく、部品コストや加工コストの増加抑制、構成のシンプル化等に寄与しつつ、電子部品36の放熱を行うことができる。
【0067】
このように、第2実施形態の制動装置10A(10Aa,10Ab)は、回路基板38と、シリンダ部16と、モータ32と、カバーGa(ギヤボックス、収容部)と、熱伝導部材40(48,56)と、を備える。回路基板38は、作動時に発熱する電子部品36が搭載される。シリンダ部16は、ブレーキ液(フルード)を移動させて、制動圧の調整を行う。モータ32は、シリンダ部16の制動圧調整動作の動力源となる。カバーGaは、回路基板38に対向して配置され、シリンダ部16とモータ32との動力伝達を行うギヤ(減速機構G)を収容する。熱伝導部材40は、電子部品36と回路基板38との少なくとも一方と、カバーGaと、に接触し、電子部品36で発生した熱をカバーGaに伝導させる。この構成によれば、例えば、電子部品36を搭載する回路基板38と、カバーGaとを対向して配置し、その間に熱伝導部材40(48,56)等を介在させ、回路基板38側で発生した熱をカバーGa側に伝達し、カバーGa側から放熱させる。その結果、放熱のための大掛かりな部位を専用に設ける必要がなく、加工コストや部品コストの増加が抑制し易い構造を得ることができる。また、大掛かりな専用の放熱部位を設ける必要がないため、制動装置10A(10Aa,10Ab)の大型化の回避が行い易いシンプルな構造を得ることができる。
【0068】
<捕捉>
なお、上述した各実施形態の制動装置は、例えば、回路基板と、シリンダ部と、熱伝導部材とを備える。回路基板は、作動時に発熱する電子部品が搭載されている。シリンダ部は、フルードを移動させて、制動圧の調整を行う。熱伝導部材は、電子部品と回路基板との少なくとも一方と、シリンダ部を含むハウジングに対して突出して制動圧の調整動作を行う機能を実現する構造物を内蔵した突出部と、に接触し、電子部品で発生した熱を突出物に伝導させる熱伝導部材と、を備える。なお、突出部に伝達された熱は、さらにハウジングに伝達され、放熱されてもよい。
【0069】
上述した各実施形態では、電動シリンダ12で構成される制動装置10,10A,10Aa,10Abを示した。別の実施例では、電動シリンダ12に加え、例えば、運転者のブレーキペダルによって直接動作可能なマスタシリンダやマスタシリンダで発生するペダル反力を再現するストロークシミュレータ等を備える制動装置に、第1実施形態や第2実施形態の熱伝導構造(放熱構造)を適用してもよく、同様の効果を得ることができる。
【0070】
上述した第1実施形態、第2実施形態では、電子部品36は、一例としてモータ32(電動機)を制御する際に発熱源となり得る部品である場合を示したが、これに限定されず、作動時に発熱する電子部品であれば、同様な熱伝導構造が適用可能であり、同様の効果を得ることができる。また、電子部品36によって制御される対象として電動シリンダ12を示したが、制御対象は電動シリンダ12に限定されず、フルードの移動によって制動圧の制御が可能なシリンダであればよく、同様な熱伝導構造が適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0072】
10,10A,10Aa,10Ab 制動装置、12 電動シリンダ、14 シリンダブロック、16 シリンダ部、16T 突出部、16Ta 外壁部、20 ピストン、32 モータ、36,36a,36b 電子部品、38 回路基板、40 熱伝導部材、42 第二の熱伝導部材、48 第三の熱伝導部材、48a 第1脚部、48b 第2脚部、56 第四の熱伝導部材、Ga カバー。