(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】管理システム、及びエネルギーマネジメント方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240717BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240717BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240717BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240717BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20240717BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240717BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240717BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20240717BHJP
B60L 53/65 20190101ALI20240717BHJP
B60L 53/68 20190101ALI20240717BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240717BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20240717BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H02J13/00 301A
H02J13/00 301J
B60L55/00
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/62
B60L53/65
B60L53/68
B60L58/12
B60L58/16
(21)【出願番号】P 2021047309
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野村 茂樹
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-022154(JP,A)
【文献】特開2016-163532(JP,A)
【文献】国際公開第2016/071956(WO,A1)
【文献】特開2017-121103(JP,A)
【文献】特開2020-054214(JP,A)
【文献】特開2015-027164(JP,A)
【文献】特開2013-231441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
H02J 13/00
B60L 55/00
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 53/62
B60L 53/65
B60L 53/68
B60L 58/12
B60L 58/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理コンピュータを備える管理システムであって、
前記管理コンピュータは、
電力系統の電力調整のための充放電を蓄電装置に行なわせる制御部と、
前記蓄電装置のユーザに通知を行なう通知部と
、
を含み、
前記管理コンピュータには、前記ユーザの端末であるユーザ端末が登録されており、
前記ユーザ端末は、前記ユーザからの入力を受け付けるように構成され、
前記管理コンピュータは、予測劣化進行度が異なる複数の劣化区分と、前記複数の劣化区分の各々に属する充放電条件とを決定するように構成され、
充放電条件に対応する前記予測劣化進行度は、その充放電条件に従って前記電力系統の電力調整のための充放電が実行されたと仮定した場合の前記蓄電装置の劣化の予測進行度であり、
前記管理コンピュータは、前記複数の劣化区分の各々に属する充放電条件
と、充放電条件ごとの前記予測劣化進行度とを前記ユーザに知らせる
第1信号を前記ユーザ端末へ送信するように構成され
、
前記ユーザ端末は、前記第1信号を受信した後、前記第1信号が示す複数の充放電条件のいずれかを選択する入力を前記ユーザから受けると、前記ユーザが選択した充放電条件を前記管理コンピュータへ送信するように構成され、
前記管理コンピュータは、前記ユーザが選択した前記充放電条件が、要請に係る前記電力系統の電力調整に合っている場合に、当該電力調整を要請する第2信号を前記ユーザ端末へ送信するように構成される、管理システム。
【請求項2】
前記蓄電装置は車両に搭載され、
前記ユーザ端末は、前記車両に搭載された車載端末と、前記ユーザが携帯する携帯端末との少なくとも一方を含
み、
前記ユーザ端末は、前記車両の走行予定に関する走行予定情報を前記管理コンピュータへ送信するように構成され、
前記管理コンピュータは、前記車両の仕様と前記走行予定情報とを用いて、前記複数の劣化区分の各々に属する充放電条件を決定するように構成される、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記ユーザ端末は、前記ユーザからの入力に基づいて、
前記電力系統の電力調整への参加許可/参加禁止のいずれかが設定されるように構成され、
前記ユーザ端末は、前記参加禁止が設定された状態で
前記電力系統の電力調整の要請を受けたときには、前記要請に係る
前記電力系統の電力調整に参加しない旨を前記管理コンピュータに通知するように構成される、請求項
1又は2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記ユーザ端末は、前記第1信号が示す複数の充放電条件のいずれかを選択する入力を前記ユーザから受けると、前記ユーザが選択した前記充放電条件であるユーザ条件を保存するように構成され、
前記ユーザ端末は、前記ユーザから前記ユーザ条件の削除の指示を受けた場合に前記ユーザ条件を削除するように構成され、
前記ユーザ端末は、当該ユーザ端末に前記ユーザ条件が設定されているか否かを示すユーザ条件フラグを保有し、前記ユーザ条件の保存または削除に応じて前記ユーザ条件フラグを更新するように構成され、
前記ユーザ端末は、
前記参加許可が設定された状態で前記電力系統の電力調整の要請を受けたときに、当該ユーザ端末に前記ユーザ条件が設定されていることを前記ユーザ条件フラグが示していれば、前記制御部による前記蓄電装置のリモート充放電制御を許可
するように構成され、
前記ユーザ端末は、前記参加禁止が設定された状態で前記電力系統の電力調整の要請を受けたときには、前記リモート充放電制御を禁止するように構成される、請求項
3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記ユーザ端末は、前記参加許可が設定された状態で前記電力系統の電力調整の要請を受けたときに、当該ユーザ端末に前記ユーザ条件が設定されていないことを前記ユーザ条件フラグが示していれば、所定のデフォルト条件に従う前記蓄電装置の充放電によって要請に応えることができるか否かに基づいて、前記デフォルト条件で要請に係る前記電力系統の電力調整に参加するか否かを判断するように構成され、
前記デフォルト条件は、前記ユーザ条件ではない充放電条件である、請求項4に記載の管理システム。
【請求項6】
前記ユーザ端末は、前記デフォルト条件で要請に係る前記電力系統の電力調整に参加すると判断した場合には前記リモート充放電制御を許可し、前記デフォルト条件で要請に係る前記電力系統の電力調整に参加しないと判断した場合には前記リモート充放電制御を禁止するように構成され、
前記リモート充放電制御が許可されているときには、前記管理コンピュータからの充放電指令に従って前記蓄電装置の前記リモート充放電制御が実行され、
前記ユーザ端末に前記ユーザ条件が設定されていることを前記ユーザ条件フラグが示すときに実行された前記リモート充放電制御が前記ユーザ条件を満たさない場合には、当該リモート充放電制御は中止され、
前記ユーザ端末に前記ユーザ条件が設定されていないことを前記ユーザ条件フラグが示すときに実行された前記リモート充放電制御が前記デフォルト条件を満たさない場合には、当該リモート充放電制御は中止される、請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
複数の劣化区分は、第1区分及び第2区分を含み、
前記第1区分に属する充放電条件は、前記予測劣化進行度が基準値以上になるように決定され、
前記第2区分に属する充放電条件は、前記予測劣化進行度が前記基準値未満になるように決定され、
前記第2信号は、要請される電力調整の種類が充電促進、充電抑制、放電のいずれであるかを示すとともに、要請される電力調整の開始時刻及び終了時刻を示す、請求項1~6のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項8】
前記第1区分及び前記第2区分の各々に属する充放電条件は、充電を許容するか否かを示し、
前記
充電を許容する充放電条件は、許容される充電方式と、許容される最大充電電力値と、充電が許容される前記蓄電装置のSOC上限値と、充電が許容される時間帯
とを示す、請求項
7に記載の管理システム。
【請求項9】
前記第1区分及び前記第2区分の各々に属する充放電条件は、放電を許容するか否かを示し、
前記
放電を許容する充放電条件は、許容される放電方式と、許容される最大放電電力値と、放電が許容される前記蓄電装置のSOC下限値と、放電が許容される時間帯
とを示す、請求項
7又は8に記載の管理システム。
【請求項10】
蓄電装置のユーザの端末であるユーザ端末が登録された管理コンピュータが、予測劣化進行度が異なる複数の劣化区分と、前記複数の劣化区分の各々に属する充放電条件とを決定することと、
前記管理コンピュータが、前記複数の劣化区分の各々に属する充放電条件と、充放電条件ごとの前記予測劣化進行度とを前記ユーザに知らせる第1信号を前記ユーザ端末へ送信することと、
前記ユーザ端末が、前記第1信号を受信した後、前記第1信号が示す複数の充放電条件のいずれかを選択する入力を前記ユーザから受けた場合に、前記ユーザ端末が、前記ユーザが選択した充放電条件を前記管理コンピュータへ送信することと、
前記ユーザが選択した前記充放電条件が、要請に係る電力系統の電力調整に合っている場合に、前記管理コンピュータが、当該電力調整を要請する第2信号を前記ユーザ端末へ送信することと、
を含み、
充放電条件に対応する前記予測劣化進行度は、その充放電条件に従って前記電力系統の電力調整のための充放電が実行されたと仮定した場合の前記蓄電装置の劣化の予測進行度である、エネルギーマネジメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理システム、及びエネルギーマネジメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力市場(たとえば、需給調整市場)又は電気事業者(たとえば、電力会社)からのエネルギーマネジメントの要請に応えた需要家に対して報酬(インセンティブ)が支払われる仕組みが知られている。特開2019-080403号公報(特許文献1)は、エネルギーマネジメントのための充放電に伴う車載電池の劣化進行度を車両のユーザに通知するシステムを開示している。こうしたシステムでは、ユーザが上記通知により車載電池の劣化進行度を確認できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムによれば、ユーザは、エネルギーマネジメントのための充放電に伴う電池の劣化進行度を考慮して、エネルギーマネジメントに参加するか否かを決定することができる。しかしながら、エネルギーマネジメントのための充放電に伴う電池の劣化進行度のみの通知では、ユーザが望むエネルギーマネジメントであるか否かを判断することが難しい場合がある。ユーザは、充放電の形態によっては、ある程度は電池の劣化進行を許容してエネルギーマネジメントへの参加を望むかもしれない。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置のユーザがエネルギーマネジメントに参加するか否かを適切に判断しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の観点に係る管理システムは、管理コンピュータを備える。管理コンピュータは、エネルギーマネジメントのための充放電を蓄電装置に行なわせる制御部と、蓄電装置のユーザに通知を行なう通知部とを含む。通知部は、上記通知において、複数の充放電条件をユーザに知らせるとともに、複数の充放電条件の各々についてその充放電条件に従って制御部がエネルギーマネジメントのための充放電を実行したと仮定した場合の蓄電装置の劣化の予測進行度をユーザに知らせるように構成される。
【0007】
以下、上記充放電条件に従ってエネルギーマネジメントのための充放電が実行されたと仮定した場合の蓄電装置の劣化の予測進行度を、「予測劣化進行度」とも称する。予測劣化進行度は、エネルギーマネジメントによって蓄電装置の劣化がどの程度進行するかを示す。
【0008】
上記管理システムによれば、充放電条件ごとの予測劣化進行度が蓄電装置のユーザに通知される。充放電条件の通知によって、エネルギーマネジメントのための充放電の形態をユーザが把握しやすくなる。ユーザは、エネルギーマネジメントに伴う蓄電装置の劣化進行度(予測劣化進行度)だけでなく、エネルギーマネジメントのための充放電の形態を考慮して、エネルギーマネジメントに参加するか否かを判断することができる。このため、蓄電装置のユーザは、エネルギーマネジメントに参加するか否かを適切に判断しやすくなる。
【0009】
上記予測劣化進行度は、数値で表わされてもよいし、所定の劣化区分(たとえば、大/中/小、又はランクA,B,C,・・・)で表わされてもよい。上記通知部は、互いの予測劣化進行度が異なるように複数の充放電条件を決定してもよい。
【0010】
上記管理コンピュータは、電力網を管理するコンピュータであってもよい。エネルギーマネジメントは、電力網の需給調整であってもよい。
【0011】
上記蓄電装置は車両に搭載されてもよい。管理コンピュータには、ユーザの端末であるユーザ端末が登録されてもよい。通知部は、上記通知のための信号をユーザ端末へ送信してもよい。ユーザ端末は、車両に搭載された車載端末と、ユーザが携帯する携帯端末との少なくとも一方を含んでもよい。
【0012】
上記構成によれば、管理コンピュータから車両ユーザ(蓄電装置のユーザに相当)に上記通知を行なうことができる。そして、車両ユーザは、車両に搭載された蓄電装置を利用してエネルギーマネジメントに参加することができる。
【0013】
ユーザ端末は、車載端末であってもよいし、携帯端末であってもよい。また、相互に通信可能に構成される車載端末及び携帯端末が協働してユーザ端末として機能してもよい。
【0014】
上記車両は電動車両であってもよい。電動車両は、蓄電装置に蓄えられた電力を用いて走行するように構成される車両である。電動車両には、EV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車両)、及びPHV(プラグインハイブリッド車両)のほか、FC車(燃料電池自動車)、レンジエクステンダーEVなども含まれる。
【0015】
ユーザ端末は、車両の走行予定に関する走行予定情報を管理コンピュータへ送信するように構成されてもよい。通知部は、走行予定情報を用いて、上記通知によってユーザに知らせる複数の充放電条件を決定するように構成されてもよい。こうした構成によれば、通知部が、車両の走行予定に合った複数の充放電条件をユーザに提示しやすくなる。
【0016】
通知部は、上記車両の仕様を用いて、上記通知によってユーザに知らせる複数の充放電条件を決定するように構成されてもよい。こうした構成によれば、通知部が、車両の仕様に合った複数の充放電条件をユーザに提示しやすくなる。
【0017】
ユーザ端末は、ユーザからの入力を受け付けるように構成されてもよい。ユーザ端末は、上記通知のための信号を受信した後、この信号が示す複数の充放電条件のいずれかを選択する入力をユーザから受けると、ユーザが選択した充放電条件を管理コンピュータへ送信するように構成されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、蓄電装置のユーザが希望する充放電条件を管理コンピュータへ送信することができる。管理コンピュータは、ユーザが希望する充放電条件を用いて、そのユーザにエネルギーマネジメントを要請するか否かを判断することができる。
【0019】
ユーザ端末は、ユーザからの入力に基づいて、エネルギーマネジメントへの参加許可/参加禁止のいずれかが設定されるように構成されてもよい。ユーザ端末は、参加禁止が設定された状態でエネルギーマネジメントの要請を受けたときには、要請に係るエネルギーマネジメントに参加しない旨を管理コンピュータに通知するように構成されてもよい。以下、要請に係るエネルギーマネジメントに参加しない旨の通知を、「不参加通知」とも称する。
【0020】
上記管理システムでは、蓄電装置のユーザが、予め参加禁止(エネルギーマネジメント不参加)をユーザ端末に設定することができる。予め参加禁止がユーザ端末に設定されている場合には、エネルギーマネジメントの要請を受けたときにユーザが参加/不参加を選択しなくても、自動的にユーザ端末から管理コンピュータに不参加通知が行なわれる。このため、ユーザの利便性が向上する。
【0021】
ユーザ端末は、要請に係るエネルギーマネジメントに参加する旨判断した場合には、制御部による蓄電装置のリモート充放電制御を許可するように構成されてもよい。また、ユーザ端末は、要請に係るエネルギーマネジメントに参加しない旨判断した場合には、リモート充放電制御を禁止するように構成されてもよい。
【0022】
上記構成によれば、ユーザ端末が要請に係るエネルギーマネジメントに参加する旨判断した場合にはリモート充放電制御が許可される。これにより、管理コンピュータの制御部が蓄電装置のリモート充放電制御を通じてエネルギーマネジメントを行なうことが可能になる。また、ユーザ端末が要請に係るエネルギーマネジメントに参加しない旨判断した場合にはリモート充放電制御が禁止されることで、予定していないリモート充放電制御が実行されることを抑制できる。
【0023】
ユーザに通知される複数の充放電条件の各々は、許容される充電方式と、許容される最大充電電力値と、充電が許容される蓄電装置のSOC上限値と、充電が許容される時間帯との少なくとも1つを示してもよい。
【0024】
上記構成によれば、蓄電装置のユーザが、エネルギーマネジメントのための充電の形態を把握しやすくなる。複数の充放電条件の各々は、蓄電装置の温度と外気温との少なくとも一方に基づいて充電電力制限が実行されるか否かを示してもよい。
【0025】
ユーザに通知される複数の充放電条件の各々は、許容される放電方式と、許容される最大放電電力値と、放電が許容される蓄電装置のSOC下限値と、放電が許容される時間帯との少なくとも1つを示してもよい。
【0026】
上記構成によれば、蓄電装置のユーザが、エネルギーマネジメントのための放電の形態を把握しやすくなる。複数の充放電条件の各々は、蓄電装置の温度と外気温との少なくとも一方に基づいて放電電力制限が実行されるか否かを示してもよい。
【0027】
なお、SOC(State Of Charge)は、蓄電残量を示し、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0028】
本開示の第2の観点に係るエネルギーマネジメント方法は、複数の充放電条件と、複数の充放電条件の各々に従ってエネルギーマネジメントのための充放電を蓄電装置が行なったと仮定した場合の蓄電装置の劣化の予測進行度とを、蓄電装置のユーザに知らせることと、複数の充放電条件のいずれかの条件に従ってエネルギーマネジメントのための充放電を実行することとを含む。
【0029】
上記エネルギーマネジメント方法によっても、前述した管理システムと同様、蓄電装置のユーザはエネルギーマネジメントに参加するか否かを適切に判断しやすくなる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、蓄電装置のユーザがエネルギーマネジメントに参加するか否かを適切に判断しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示の実施の形態に係る車両の構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る管理システムの構成を示す図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法における充放電条件の決定、通知、及び選択に係る処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示した充放電条件の決定に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】
図3に示した処理において表示される入力画面の一例を示す図である。
【
図6】
図5に示した入力画面の第1変形例を示す図である。
【
図7】
図5に示した入力画面の第2変形例を示す図である。
【
図8】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法において、ユーザ端末に設定された充放電条件を削除する処理を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法において、ユーザ端末にエネルギーマネジメントの参加許可/参加禁止を設定する処理を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法において、ユーザ端末がエネルギーマネジメントの要請を受けたときに実行する処理を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法におけるリモート充放電制御に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0033】
図1は、この実施の形態に係る車両の構成を示す図である。
図1を参照して、車両50は、走行用の電力を蓄電するバッテリ130を備える。車両50は、バッテリ130に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。この実施の形態に係る車両50は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(EV)である。
【0034】
バッテリ130は、たとえばリチウムイオン電池又はニッケル水素電池のような二次電池を含んで構成される。この実施の形態では、二次電池として、複数のリチウムイオン電池を含む組電池を採用する。組電池は、複数の二次電池(一般に「セル」とも称される)が互いに電気的に接続されて構成される。なお、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタのような他の蓄電装置を採用してもよい。この実施の形態に係るバッテリ130は、本開示に係る「蓄電装置」の一例に相当する。
【0035】
車両50は、電子制御装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)150を備える。ECU150は、バッテリ130の充電制御及び放電制御を行なうように構成される。また、ECU150は、車両50の外部との通信を制御するように構成される。
【0036】
車両50は、バッテリ130の状態を監視する監視モジュール131をさらに備える。監視モジュール131は、バッテリ130の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。監視モジュール131は、上記センサ機能に加えて、SOC(State Of Charge)推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、監視モジュール131の出力に基づいてバッテリ130の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。
【0037】
EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)40は、車両外部の給電設備に相当する。EVSE40の本体には、電源回路41が内蔵されている。EVSE40の本体には、充電ケーブル42が接続される。充電ケーブル42は、常にEVSE40の本体に接続されていてもよいし、EVSE40の本体に対して着脱可能であってもよい。充電ケーブル42は、先端にコネクタ43を有し、内部に電力線を含む。
【0038】
車両50は、接触充電のためのインレット110及び充放電器120を備える。インレット110は、車両50の外部から供給される電力を受電するように構成される。インレット110は、充電ケーブル42のコネクタ43が接続可能に構成される。EVSE40の本体につながる充電ケーブル42のコネクタ43が車両50のインレット110に接続(プラグイン)されることによって、車両50がプラグイン状態になる。
【0039】
充放電器120は、インレット110とバッテリ130との間に位置する。充放電器120は、インレット110からバッテリ130までの電力経路の接続/遮断を切り替えるリレーと、電力変換回路と(いずれも図示せず)を含んで構成される。充放電器120は、整流回路、力率改善(Power Factor Correction)回路、絶縁回路、変圧器(たとえば、絶縁トランス)、及びフィルタ回路の少なくとも1つを含んでもよい。充放電器120に含まれるリレー及び電力変換回路の各々は、ECU150によって制御される。
【0040】
車両50は、充放電器120の状態を監視する監視モジュール121をさらに備える。監視モジュール121は、充放電器120の状態を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。この実施の形態では、監視モジュール121が、上記電力変換回路に入力される電圧及び電流と、上記電力変換回路から出力される電圧及び電流とを検出するように構成される。監視モジュール121は、バッテリ130の充電電力及び放電電力を検出可能に構成される。
【0041】
プラグイン状態の車両50では、外部充電(すなわち、車両外部から供給される電力によってバッテリ130を充電すること)と外部給電(すなわち、車両50から車両外部へ給電を行なうこと)とが可能になる。外部充電のための電力は、たとえばEVSE40からインレット110に供給される。充放電器120は、インレット110が受電した電力をバッテリ130の充電に適した電力に変換し、変換された電力をバッテリ130へ出力するように構成される。外部給電のための電力は、バッテリ130から充放電器120に供給される。充放電器120は、バッテリ130から供給される電力を外部給電に適した電力に変換し、変換された電力をインレット110へ出力するように構成される。外部充電及び外部給電のいずれかが実行されるときには充放電器120のリレーが閉状態(接続状態)にされ、外部充電及び外部給電のいずれも実行されないときには充放電器120のリレーが開状態(遮断状態)にされる。
【0042】
ECU150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、記憶装置153、及びタイマ154を含んで構成される。ECU150はコンピュータであってもよい。プロセッサ151はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、ECU150における各種制御が実行される。ただし、ECU150における各種制御は、ソフトウェアによる実行に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で実行することも可能である。なお、ECU150が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
【0043】
タイマ154は、設定時刻の到来をプロセッサ151に知らせるように構成される。タイマ154に設定された時刻になると、タイマ154からプロセッサ151へその旨を知らせる信号が送信される。この実施の形態では、タイマ154としてタイマ回路を採用する。ただし、タイマ154は、ハードウェア(タイマ回路)ではなく、ソフトウェアによって実現されてもよい。また、ECU150は、ECU150に内蔵されるリアルタイムクロック(RTC)回路(図示せず)を利用して現在時刻を取得できる。
【0044】
車両50は、走行駆動部140と、入力装置161と、メータパネル162と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」と称する)170と、通信機器180と、駆動輪Wとをさらに備える。なお、車両50の駆動方式は、
図1に示される前輪駆動に限られず、後輪駆動又は4輪駆動であってもよい。
【0045】
走行駆動部140は、図示しないPCU(Power Control Unit)とMG(Motor Generator)とを含み、バッテリ130に蓄えられた電力を用いて車両50を走行させるように構成される。PCUは、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)と(いずれも図示せず)を含んで構成される。PCUは、ECU150によって制御される。MGは、たとえば三相交流モータジェネレータである。MGは、PCUによって駆動され、駆動輪Wを回転させるように構成される。PCUは、バッテリ130から供給される電力を用いてMGを駆動する。また、MGは、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ130に供給するように構成される。SMRは、バッテリ130からMGまでの電力経路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両50の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0046】
入力装置161は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置161は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号をECU150へ出力する。入力装置161の例としては、各種スイッチ、各種ポインティングデバイス、キーボード、タッチパネルが挙げられる。入力装置161は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。
【0047】
ユーザは、入力装置161を通じてECU150に走行予定情報を設定できる。走行予定情報は、車両50の走行予定に関する情報である。走行予定情報は、走行予定の時間帯、走行距離、目的地、走行ルートの少なくとも1つを含んでもよい。
【0048】
メータパネル162は、車両50に関する情報を表示するように構成される。メータパネル162は、たとえば車両50に搭載された各種センサによって計測された車両50に関する各種情報を表示する。メータパネル162は、タッチパネルディスプレイであってもよい。メータパネル162は、ECU150によって制御される。
【0049】
NAVI170は、プロセッサと、記憶装置と、タッチパネルディスプレイと、GPS(Global Positioning System)モジュールと(いずれも図示せず)を含んで構成される。NAVI170は、GPSモジュールを用いて車両50の位置を特定することができる。NAVI170は、車両50の現在位置から目的地までの走行ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行ない、経路探索により見つかった走行ルートを地図上に表示するように構成される。
【0050】
通信機器180は、各種通信I/F(インターフェース)を含んで構成される。通信機器180は、後述するサーバ30(
図2参照)と無線通信するための通信I/Fを含む。通信機器180は、DCM(Data Communication Module)を含んでもよい。通信機器180は、5G(第5世代移動通信システム)対応の通信I/Fを含んでもよい。ECU150は、通信機器180を通じて車両50の外部の通信装置と通信を行なうように構成される。
【0051】
図2は、この実施の形態に係る管理システムの構成を示す図である。
図2に示される管理システム1は、VGI(Vehicle Grid Integration)システムである。管理システム1は、VPP(仮想発電所)として機能する。VPPは、IoT(モノのインターネット)を利用した高度なエネルギーマネジメント技術により多数の分散型エネルギーリソース(以下、「DER(Distributed Energy Resources)」とも称する)を束ね、これらDERを遠隔・統合制御することによってあたかも1つの発電所のように機能させる仕組みである。DERの例としては、各需要家が保有するエネルギーリソース(以下、「DSR(Demand Side Resources)」とも称する)が挙げられる。管理システム1では、VPPを実現するためのDSRとして、車両50(すなわち、蓄電装置を備える電動車両)を採用する。たとえば、車両50はPOV(個人が所有する車両)である。EVSE40は、車両50のユーザの自宅に設置された家庭用のEVSEであってもよいし、公共のEVSEであってもよい。
【0052】
この実施の形態では、電力系統PGと、サーバ10,30と、スマートメータ11と、複数のEVSE(EVSE40のみ図示)と、複数のDSR(車両50のみ図示)とによって、管理システム1が構築される。管理システム1に含まれる電動車両及びEVSEの数は、各々独立して任意であり、10個以上であってもよいし、100個以上であってもよい。
【0053】
携帯端末80は、車両50のユーザが携帯する携帯端末に相当する。この実施の形態では、携帯端末80として、タッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンを採用する。ただしこれに限られず、携帯端末80としては、任意の携帯端末を採用可能であり、タブレット端末、ウェアラブルデバイス(たとえば、スマートウォッチ)、又は電子キーなども採用可能である。
【0054】
図2に示す車両50はEVSE40と電気的に接続されている。EVSE40の本体につながれた充電ケーブル42のコネクタ43が車両50のインレット110に接続されることで、車両50とEVSE40との間での通信が可能になるとともに、EVSE40と車両50との間で電力の授受を行なうことが可能になる。これにより、外部充電及び外部給電の準備が完了する。車両50に搭載された通信機器180は、充電ケーブル42を介してEVSE40と通信するように構成される。
【0055】
EVSE40の本体に内蔵される電源回路41は、スマートメータ11を介して電力系統PGと電気的に接続されている。たとえば、電力系統PGから電源回路41及び充電ケーブル42を経由して車両50へ電力が供給されることで、バッテリ130の外部充電が行なわれる。また、車両50がEVSE40に対して外部給電を行なうことによって、車両50から充電ケーブル42及び電源回路41を経由して電力系統PGへ電力を逆潮流させることができる。電源回路41は、電力系統PGから供給される電力を外部充電に適した電力に変換するとともに、車両50から供給される電力を逆潮流に適した電力に変換する。
【0056】
スマートメータ11は、EVSE40から車両50に供給された電力量を計測するように構成される。また、スマートメータ11は、車両50からEVSE40に逆潮流された電力量も計測するように構成される。スマートメータ11は、所定時間経過ごと(たとえば、30分経過ごと)に電力使用量を計測し、計測した電力使用量を記憶するとともにサーバ10へ送信するように構成される。また、サーバ10は、サーバ30へスマートメータ11の計測値を随時送信する。サーバ10は、定期的に送信してもよいし、サーバ30からの要求に応じて送信してもよい。
【0057】
車両50に搭載された通信機器180は、サーバ30と無線通信するように構成される。この実施の形態に係るサーバ30は、本開示に係る「管理コンピュータ」の一例に相当する。通信機器180とサーバ30との間でやり取りされる信号は暗号化されていてもよい。さらに、この実施の形態では、車両50に搭載された通信機器180と携帯端末80とが相互に無線通信するように構成される。ECU150は、無線通信により携帯端末80を制御して、ユーザに対する報知を携帯端末80に行なわせることができる。通信機器180と携帯端末80との通信は、Bluetooth(登録商標)のような近距離通信(たとえば、車内及び車両周辺の範囲での直接通信)であってもよい。
【0058】
車両50に搭載された各種センサの検出値はECU150に入力される。車両50には、前述した監視モジュール121及び131のほか、図示しない位置センサ、車速センサ、アクセルセンサ、外気温センサ、及び充電ケーブル接続検出回路なども搭載されている。ECU150は、必要に応じて、これらの検出値を制御に用いる。また、ECU150は、車両50の状態をサーバ30へ逐次送信する。たとえば、サーバ30は、後述するリモート充放電制御において、車両50から受け取った情報を参照しながら車両50を遠隔操作する。
【0059】
携帯端末80には所定のアプリケーションソフトウェア(以下、単に「アプリ」と称する)がインストールされている。携帯端末80は、車両50のユーザによって携帯され、上記アプリを通じてサーバ30と情報のやり取りを行なうことができる。ユーザは、たとえば携帯端末80のタッチパネルディスプレイを通じて、上記アプリを操作できる。また、携帯端末80のタッチパネルディスプレイは、車両50のユーザに対して情報を報知可能に構成される。
【0060】
車両50のユーザは、携帯端末80に対して車両50の仕様を入力できる。この実施の形態では、車両50の充放電に関するスペックが、車両50の仕様として携帯端末80に入力される。そして、携帯端末80に入力された車両50の仕様は、携帯端末80からサーバ30へ送信される。車両50の充放電に関するスペックは、車両50が実行可能な充放電方式を含んでもよい。ユーザは、車両50の装備だけでなく、利用可能なEVSE(たとえば、自宅周辺のEVSE及び/又は職場周辺のEVSE)の性能も考慮して、車両50が実行可能な充放電方式を携帯端末80に入力してもよい。また、車両50の充放電に関するスペックは、最大充放電電力値と、バッテリ130の温度特性との少なくとも一方を含んでもよい。
【0061】
サーバ10は、送配電事業者に帰属するサーバである。この実施の形態では、電力会社が発電事業者及び送配電事業者を兼ねる。図示しない発電所及び送配電設備によって電力網(すなわち、電力系統PG)が構築されている。送配電設備は、送電線、変電所、及び配電線を含み、発電所から供給される電力の送電及び配電を行なうように構成される。発電所の例としては、火力発電所、水力発電所、原子力発電所、及び自然変動電源(太陽光発電設備、風力発電設備等)が挙げられる。
【0062】
電力会社は、サーバ10、スマートメータ11、及び電力系統PGを保守及び管理する。電力会社は、たとえば電力を使用する需要家(たとえば、個人又は会社)と取引を行なうことにより利益を得ることができる。この実施の形態では、電力会社が、電力系統PGを運用する系統運用者に相当する。
【0063】
DERを束ねてエネルギーマネジメントサービスを提供する電気事業者は、「アグリゲータ」と称される。電力会社は、たとえばアグリゲータと連携することにより、電力系統PGの電力調整(たとえば、需給調整)を行なうことができる。電力会社又はアグリゲータが各需要家に電力系統PGの電力調整を要請し、各需要家がその要請に応じて電力系統PGの電力調整を行なう。こうした仕組みは、一般に「DR(デマンドレスポンス)」と称される。以下、電力系統PGの電力調整の要請を、「VPP要請」とも称する。VPP要請は、本開示に係る「エネルギーマネジメントの要請」の一例に相当する。
【0064】
サーバ10及び30の各々は、電力系統PGを管理するコンピュータに相当する。サーバ30は、アグリゲータに帰属するサーバである。自動車メーカがアグリゲータを兼ねてもよい。自動車メーカは、自らが製造した各車両の情報を入手しやすい。管理システム1に含まれる各車両はサーバ30に登録される。そして、各車両からサーバ30へ車両の情報(たとえば、車両の位置、充電ケーブルの接続状態、及び蓄電量など)が逐次送信される。
【0065】
サーバ30は、制御装置31と、記憶装置32と、通信装置33とを含んで構成される。制御装置31は、コンピュータであってもよい。制御装置31は、プロセッサを含み、所定の情報処理を行なうとともに通信装置33を制御するように構成される。記憶装置32は、各種情報を保存可能に構成される。通信装置33は各種通信I/Fを含む。制御装置31は、通信装置33を通じて外部と通信するように構成される。サーバ30は、サーバ10、車両50、及び携帯端末80の各々と通信可能に構成される。この実施の形態では、サーバ30とEVSE40との間では通信が行なわれないが、サーバ30とEVSE40とは相互通信可能に構成されてもよい。サーバ30はEVSE40を経由して車両50と通信するように構成されてもよい。
【0066】
サーバ30には、複数の車両(車両50を含む)と複数のユーザ(車両50のユーザを含む)とが登録されている。また、ユーザとともにユーザ端末(携帯端末80を含む)も、サーバ30に登録されている。サーバ30は、登録された各ユーザの情報(以下、「ユーザ情報」とも称する)と、登録された各車両の情報(以下、「車両情報」とも称する)とを管理するように構成される。ユーザ端末に関する情報は、ユーザ情報及び車両情報の少なくとも一方に含まれる。ユーザ情報及び車両情報は、記憶装置32に記憶される。
【0067】
ユーザを識別するための識別情報(ユーザID)がユーザごとに付与されており、サーバ30はユーザ情報をユーザIDで区別して管理している。ユーザIDは、ユーザに携帯される携帯端末を識別する情報(端末ID)としても機能する。ユーザ情報には、ユーザが携帯する携帯端末の通信アドレスと、ユーザに帰属する車両を識別する情報(車両ID)とが含まれる。さらに、車両を識別するための識別情報(車両ID)が車両ごとに付与されており、サーバ30は車両情報を車両IDで区別して管理している。車両情報には、車両の仕様(たとえば、充放電に関するスペック)と、車両に搭載された無線通信機(たとえば、通信機器180)の通信アドレスと、車両から受信した情報(たとえば、車両の位置及び状態を示す情報)とが含まれる。
【0068】
この実施の形態では、アグリゲータの端末(サーバ30)が、電力会社の端末(サーバ10)及び車両ユーザの端末(通信機器180及び携帯端末80)の各々と通信可能に構成される。しかしこれに限られず、管理システム1は、電力会社に連絡するサーバと、車両ユーザに連絡するサーバとを別々に含んでもよい。これらのサーバは、異なる電気事業者(たとえば、上位/下位アグリゲータ)に管理されてもよい。
【0069】
サーバ10が電力調整を行なうときには、まず、複数のアグリゲータの中から、電力調整に必要な数のアグリゲータを選び、選ばれたアグリゲータにVPP要請を行なう。そして、サーバ30は、サーバ10からのVPP要請に応えるために必要な数のVPP協力車両を選定する。VPP協力車両は、VPP(要請された電力調整)に参加する車両である。上記VPP協力車両の選定が終了すると、サーバ30が、各VPP協力車両のユーザ端末へVPP要請信号を送信する。VPP要請信号は、要請される電力調整の種類(たとえば、充電促進、充電抑制、又は放電)と、VPP要請期間(より特定的には、要請される電力調整の開始時刻及び終了時刻)とを含んでもよい。
【0070】
VPP協力車両のユーザは、アグリゲータからの要請に従う充放電を行なうことによって所定の報酬(インセンティブ)を受け取ることができる。サーバ30は、所定の電力量計によってVPP協力車両ごとの電力調整量を計測する。所定の電力量計は、スマートメータ11であってもよいし、車両50に搭載された電力量計(たとえば、監視モジュール121及び131)であってもよい。電力量計の設置場所は任意である。EVSE40に電力量計が内蔵されてもよい。持運び可能な充電ケーブルに電力量計を付けてもよい。
【0071】
この実施の形態では、サーバ30の制御装置31が、制御部311及び通知部312を含む。この実施の形態に係る制御装置31においては、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって、上記各部が具現化される。プログラムは、制御装置31が保有する記憶装置(図示せず)に記憶されていてもよいし、記憶装置32に記憶されていてもよい。また、上記各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
【0072】
制御部311は、エネルギーマネジメントのための充放電(以下、「VPP充放電」とも称する)をバッテリ130に行なわせるように構成される。この実施の形態では、後述するリモート充放電制御(
図11参照)により、制御部311がVPP充放電をバッテリ130に行なわせる。
【0073】
通知部312は、車両50のユーザ(バッテリ130のユーザ)に通知(以下、「VPP通知」とも称する)を行なう。通知部312は、VPP通知において、複数の充放電条件をユーザに知らせるとともに、それら充放電条件の各々について、当該充放電条件に従って制御部311がVPP充放電を実行したと仮定した場合のバッテリ130の劣化の予測進行度をユーザに知らせるように構成される。
【0074】
図3は、車載端末及びサーバ30によって実行される充放電条件の決定、通知、及び選択に係る処理を示すフローチャートである。この実施の形態では、車両50に搭載されたECU150、入力装置161、メータパネル162、NAVI170、及び通信機器180が、車載端末として機能する。この実施の形態に係る車載端末は、本開示に係る「ユーザ端末」の一例に相当する。たとえば、ユーザが入力装置161を通じてECU150にVPP通知を要求すると、以下に説明する
図3に示す処理が開始される。以下、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0075】
図1及び
図2とともに
図3を参照して、S11では、車両50のECU150が、サーバ30にVPP通知を要求する。この際、ECU150は、VPP通知を要求する信号とともに、車両ID及び走行予定情報をサーバ30へ送信する。ただし、ECU150に走行予定情報が設定されていない場合には、走行予定情報は送信されない。また、ECU150は、S11において、ユーザが入力装置161を通じて指定した劣化区分の数をサーバ30へさらに送信してもよい。ユーザによって指定される劣化区分の数は、2~10であってもよいし、11以上であってもよい。その後、ECU150は、VPP通知を受けるまでS12において待機する。
【0076】
サーバ30の制御装置31(より特定的には、通知部312)は、上記VPP通知を要求する信号を受信すると、S21において、車両IDに基づいて車両50を特定し、記憶装置32から車両50の仕様を読み出す。
【0077】
続けて、通知部312は、S22において劣化区分を決定する。通知部312は、車両50(より特定的には、車載端末)から劣化区分の数を受信した場合には、その数の劣化区分を決定し、劣化区分の数を受信しなかった場合には、所定の数(たとえば、2つ)の劣化区分を決定する。以下では、S22において第1区分(小区分)及び第2区分(大区分)が劣化区分として決定された例について説明する。
【0078】
続けて、通知部312は、S23において、車両50の仕様と走行予定情報とに基づいて、劣化区分ごとの充放電条件(たとえば、2つの充放電条件)を決定する。具体的には、通知部312は、S23において、第1区分及び第2区分の各々に属する充放電条件を決定する。第1区分に属する充放電条件は、予測劣化進行度が基準値(所定値)以上になるように決定される。第2区分に属する充放電条件は、予測劣化進行度が上記基準値未満になるように決定される。なお、充放電条件に対応する予測劣化進行度は、その充放電条件に従ってエネルギーマネジメントのための充放電が実行されたと仮定した場合の蓄電装置(この実施の形態では、バッテリ130)の劣化の予測進行度に相当する。
【0079】
図4は、
図3のS23の詳細を示すフローチャートである。この実施の形態では、第1区分及び第2区分の各々に属する充放電条件は、充電を許容するか否かを示す。そして、充電を許容する充放電条件は、許容される充電方式と、許容される最大充電電力値と、充電が許容されるバッテリ130のSOC上限値と、充電が許容される時間帯と、温度による充電電力制限の有無とをさらに示す。また、第1区分及び第2区分の各々に属する充放電条件は、放電を許容するか否かをさらに示す。そして、放電を許容する充放電条件は、許容される放電方式と、許容される最大放電電力値と、放電が許容されるバッテリ130のSOC下限値と、放電が許容される時間帯と、温度による放電電力制限の有無とをさらに示す。各充放電条件は、以下に示すS221~S225の処理によって決定される。
図4では、S221、S222、S223、S224、S225の順に処理が示されているが、これらの処理の順序は適宜変更可能である。また、これらの処理は同時に実行されてもよい。
【0080】
図1及び
図2とともに
図4を参照して、S221では、通知部312が、各区分に属する充放電条件について、許容される充放電方式を決定する。この実施の形態では、通知部312が、充電(外部充電に相当)及び放電(外部給電に相当)に関して、両方許容/両方禁止/充電のみ許容/放電のみ許容のいずれかを選択する。予測劣化進行度は、大きいほうから、両方許容、充電又は放電のみ許容、両方禁止の順になる傾向がある。また、通知部312は、AC(交流)方式及びDC(直流)方式に関して、両方許容/ACのみ許容/DCのみ許容のいずれかを選択する。予測劣化進行度は、大きいほうから、両方許容、DCのみ許容、ACのみ許容の順になる傾向がある。
【0081】
S222では、通知部312が、各区分に属する充放電条件について、許容される最大電力値を決定する。この実施の形態では、通知部312が、最大電力値として、10kW/20kW/50kW/100kWのいずれかを選択する。最大電力値が大きくなるほど予測劣化進行度が大きくなる傾向がある。充電を許容する充放電条件については、許容される最大充電電力値が決定される。放電を許容する充放電条件については、許容される最大放電電力値が決定される。充電及び放電の両方が許容される充放電条件においては、充電と放電とで、許容される最大電力値が異なってもよい。
【0082】
S223では、通知部312が、各区分に属する充放電条件について、充放電が許容されるSOC限界値を決定する。充電を許容する充放電条件については、バッテリ130のSOC上限値が決定される。この実施の形態では、通知部312が、充電が許容されるバッテリ130のSOC上限値として、60%/80%/100%のいずれかを選択する。SOC上限値が高くなるほど予測劣化進行度が大きくなる傾向がある。放電を許容する充放電条件については、バッテリ130のSOC下限値が決定される。この実施の形態では、通知部312が、放電が許容されるバッテリ130のSOC下限値として、40%/20%/0%のいずれかを選択する。SOC下限値が低くなるほど予測劣化進行度が大きくなる傾向がある。
【0083】
S224では、通知部312が、各区分に属する充放電条件について、充放電が許容される時間帯を決定する。この実施の形態では、通知部312が、充放電が許容される時間帯として、制限なし/日中のみ/夜間のみのいずれかを選択する。予測劣化進行度は、大きいほうから、制限なし、日中のみ、夜間のみの順になる傾向がある。充電及び放電の両方が許容される充放電条件においては、充電と放電とで、許容される時間帯が異なってもよい。
【0084】
S225では、通知部312が、各区分に属する充放電条件について、温度による充放電制限の有無を決定する。この実施の形態では、バッテリ130の温度及び外気温のいずれかが所定温度を超えると、充放電電力の上限が10kWよりも小さい値(たとえば、5kW)に制限される。この実施の形態では、通知部312が、制限なし/制限ありのいずれかを選択する。制限ありよりも制限なしのほうが予測劣化進行度が大きくなる傾向がある。充電及び放電の両方が許容される充放電条件においては、充電及び放電のいずれか一方のみで制限ありが選択されてもよい。
【0085】
具体例については後述するが、通知部312は、上記
図4に示したS221~S225(
図3のS23)において、車両50の仕様と走行予定情報とに合うように、第1区分及び第2区分の各々に属する充放電条件を決定する。上記
図4に示した処理により、第1区分に属する充放電条件と、第2区分に属する充放電条件とが決定されると、処理は、
図3のS24に進む。
【0086】
再び
図1及び
図2とともに
図3を参照して、S24では、通知部312が、車両50(より特定的には、車載端末)に対してVPP通知を行なう。具体的には、通知部312は、第1区分(予測劣化進行度が基準値以上であることを示す劣化区分)と、第1区分に属する充放電条件と、第2区分(予測劣化進行度が基準値未満であることを示す劣化区分)と、第2区分に属する充放電条件とを知らせる信号(以下、「通知信号」とも称する)を車載端末へ送信する。この実施の形態では、この通知信号が、本開示に係る「通知のための信号」の一例に相当する。こうした通知信号によって、充放電条件ごとの予測劣化進行度が車両50のユーザ(バッテリ130のユーザ)に通知される。この実施の形態では、劣化区分(第1区分/第2区分)によって予測劣化進行度が車両50のユーザに通知される。各劣化区分が示す予測劣化進行度は、予め車載端末(ユーザ端末)に記憶されていてもよい。また、VPP通知において、劣化区分に代えて劣化区分が示す予測劣化進行度が、サーバ30から車載端末へ送信されてもよい。予測劣化進行度は数値で表わされてもよい。
【0087】
サーバ30は、上記VPP通知を行なった後、車両50から後述するユーザ条件を受信するまでS25において待機する。以下では、第1区分、第2区分に属する充放電条件を、それぞれ「第1充放電条件」、「第2充放電条件」とも称する。
【0088】
車両50のECU150は、サーバ30から上記通知信号を受信すると(S12にてYES)、S13において、以下に説明する入力画面を所定の表示装置(たとえば、メータパネル162又はNAVI170のタッチパネルディスプレイ)に表示させる。なお、ECU150は、携帯端末80に入力画面を表示させてもよい。
【0089】
図5は、
図3のS13において表示される入力画面の一例を示す図である。
図5を参照して、この入力画面は、第1充放電条件を選択するためのチェックボックスCB1と、第1充放電条件の予測劣化進行度を示すテキストM1と、第1充放電条件を示すテキストM2と、第2充放電条件を選択するためのチェックボックスCB2と、第2充放電条件の予測劣化進行度を示すテキストM3と、第2充放電条件を示すテキストM4と、決定ボタンM5とを表示し、第1充放電条件及び第2充放電条件のいずれかの選択をユーザに促す。
【0090】
テキストM1は、第1充放電条件の予測劣化進行度が小さいことを示す。テキストM2は、VPP通知によって知らされた第1充放電条件の内容を示す。
図5に示す例では、AC充電のみ許容、最大充電電力値10kW、充電許容SOC上限値80%、日中のみ充電許容、温度による充電制限あり(高温時に充電電力を5kWに制限)という内容の第1充放電条件が示されている。
【0091】
テキストM3は、第2充放電条件の予測劣化進行度が大きいことを示す。テキストM4は、VPP通知によって知らされた第2充放電条件の内容を示す。
図5に示す例では、AC充電及びDC充電の両方許容、最大充電電力値100kW、充電許容SOC上限値100%、AC放電及びDC放電の両方許容、最大放電電力値100kW、放電許容SOC下限値0%、時間帯による充放電制限なし、温度による充放電制限なしという内容の第2充放電条件が示されている。
【0092】
前述したように、サーバ30(より特定的には、通知部312)は、車両50の仕様と走行予定情報とに基づいて、第1充放電条件及び第2充放電条件を決定する。このため、通知部312によって決定される各充放電条件は、車両50の仕様と走行予定情報とによって変わり得る。
【0093】
図6は、
図5に示した入力画面の第1変形例を示す図である。
図6を参照して、通知部312は、走行予定情報が長距離走行の予定を示す場合には、
図5に示した条件(テキストM2)に代えて、テキストM2Aが示す条件を、第1充放電条件として決定してもよい。テキストM2Aに示す第1充放電条件における最大充電電力値及び充電許容SOC上限値の各々は、
図5に示した第1充放電条件(テキストM2)よりも高くなっている。こうした第1充放電条件(テキストM2A)によれば、長距離走行を行ないやすくなる。
【0094】
図7は、
図5に示した入力画面の第2変形例を示す図である。
図7を参照して、通知部312は、装備が外部給電(放電)に対応していない車両のユーザ端末からVPP通知を要求された場合には、
図5に示した条件(テキストM4)に代えて、テキストM4Aが示す条件を、第2充放電条件として決定してもよい。テキストM4Aが示す第2充放電条件では、外部給電(放電)が禁止される。
【0095】
図3のS14では、ユーザによって第1充放電条件及び第2充放電条件のいずれか一方が選択されたか否かを、ECU150が判断する。ユーザは、
図5に示したチェックボックスCB1によって第1充放電条件の選択/非選択を切り替えることができる。また、ユーザは、
図5に示したチェックボックスCB2によって第2充放電条件の選択/非選択を切り替えることができる。
図5に示す例では、第1充放電条件が選択されている。第1充放電条件及び第2充放電条件のいずれか一方が選択された状態で、ユーザによって決定ボタンM5が押されると、
図3のS14においてYESと判断され、処理がS15に進む。以下では、ユーザによって選択された充放電条件(第1充放電条件又は第2充放電条件)を、「ユーザ条件」とも称する。
【0096】
再び
図1及び
図2とともに
図3を参照して、S15では、ECU150が、ユーザ条件を記憶装置153に保存した後、ユーザ条件をサーバ30へ送信する。その後、ECU150は、S16においてユーザ条件フラグをONにする。ユーザ条件フラグは予め記憶装置153に用意されている。ユーザ条件フラグがONであることは、ユーザ条件がECU150に設定されていることを意味する。一方、サーバ30は、車両50から上記ユーザ条件を受信すると(S25にてYES)、S26において、そのユーザ条件を記憶装置32に登録する。
【0097】
上記のように、この実施の形態に係る車載端末(ユーザ端末)は、サーバ30から通知信号を受信した後(S12にてYES)、通知信号が示す複数の充放電条件のいずれかを選択する入力をユーザから受けると(S14にてYES)、ユーザ条件(ユーザが選択した充放電条件)をサーバ30へ送信する(S15)。このため、サーバ30は、ユーザから受信したユーザ条件(ユーザが希望する充放電条件)を用いて、そのユーザにエネルギーマネジメントを要請するか否かを判断することができる。
【0098】
この実施の形態に係る車載端末は、ECU150に設定されたユーザ条件をユーザが削除できるように構成される。
図8は、車載端末(ユーザ端末)に設定されたユーザ条件(充放電条件)を削除する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえばユーザが入力装置161を通じてECU150にユーザ条件の削除を指示した場合に実行される。
【0099】
図1及び
図2とともに
図8を参照して、S41では、記憶装置153に保存されたユーザ条件をECU150が削除する。続くS42では、ECU150がユーザ条件フラグをOFFにする。ユーザ条件フラグがOFFであることは、ユーザ条件がECU150に設定されていないことを意味する。
【0100】
この実施の形態に係る車載端末は、ユーザからの入力に基づいて、エネルギーマネジメントへの参加許可/参加禁止のいずれかが設定されるように構成される。
図9は、車載端末(ユーザ端末)にエネルギーマネジメントの参加許可/参加禁止を設定する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、たとえばユーザが入力装置161を通じてECU150にエネルギーマネジメントへの参加許可/参加禁止のいずれかを入力した場合に実行される。
【0101】
図1及び
図2とともに
図9を参照して、S51では、ユーザからの入力が参加禁止を示すか否かを、ECU150が判断する。そして、ユーザからの入力が参加禁止を示す場合(S51にてYES)には、ECU150が、S52において、参加フラグをOFFにする。他方、ユーザからの入力が参加許可を示す場合(S51にてNO)には、ECU150が、S53において、参加フラグをONにする。参加フラグは予め記憶装置153に用意されている。参加フラグがONであることは、バッテリ130がエネルギーマネジメントに利用されることをユーザが許可したことを意味する。参加フラグがOFFであることは、バッテリ130がエネルギーマネジメントに利用されることをユーザが許可していないことを意味する。
【0102】
この実施の形態に係るサーバ30は、
図3のS26で登録されたユーザ条件が、要請に係るエネルギーマネジメントに合っている場合に、車両50の車載端末(ユーザ端末)にエネルギーマネジメントを要請する。
図10は、車載端末がエネルギーマネジメントの要請を受けたとき(たとえば、VPP要請信号を受信したとき)に実行する処理を示すフローチャートである。
【0103】
図1及び
図2とともに
図10を参照して、S61では、参加フラグがONであるか否かを、ECU150が判断する。参加フラグがONである場合(S61にてYES)には、ECU150が、S62において、ユーザ条件フラグがONであるか否かを判断する。ユーザ条件フラグがONである場合(S62にてYES)には、処理がS64に進む。
【0104】
また、ユーザ条件フラグがOFFである場合(S62にてNO)には、ECU150が、S63において、デフォルト条件でエネルギーマネジメントに参加するか否かを判断する。デフォルト条件は、ユーザ条件ではない充放電条件であり、初期状態(たとえば、出荷時)においてECU150に設定されている充放電条件である。デフォルト条件は任意に設定される。デフォルト条件でのエネルギーマネジメントは、サーバ30がデフォルト条件に従ってバッテリ130の充放電を実行することによって行なわれるエネルギーマネジメントである。ECU150は、デフォルト条件に従うバッテリ130の充放電によって要請に応えることができるか否かに基づいて、要請に係るエネルギーマネジメントに参加するか否かを判断する。たとえば、要請される充電電力値が、デフォルト条件が規定する最大充電電力値よりも大きい場合には、S63においてNOと判断され、処理がS65に進む。ECU150がデフォルト条件でエネルギーマネジメントに参加すると判断した場合(S63にてYES)には、処理がS64に進む。
【0105】
S64では、ECU150がリモートフラグをONにする。リモートフラグは予め記憶装置153に用意されている。リモートフラグがONであることは、サーバ30によるバッテリ130のリモート充放電制御が許可されていることを意味する。
【0106】
続くS67では、ECU150が、ユーザに対する報知を行なう。ECU150は、たとえばメータパネル162又はNAVI170に報知処理を行なわせる。ただしこれに限られず、ECU150は、携帯端末80に報知処理を行なわせてもよい。リモートフラグがONである場合には、ECU150は、S67において、エネルギーマネジメントに参加することが決定した旨をユーザに報知する。また、リモートフラグがONであり、かつ、車両50がプラグイン状態でない場合には、ECU150は、上記報知処理により、車両50をプラグイン状態にすることをユーザに促す。
【0107】
上述したS61において参加フラグがOFFである場合には、ECU150は、要請に係るエネルギーマネジメントに参加しない旨判断する。この場合、S61においてNOと判断され、処理がS65に進む。S65では、ECU150が、サーバ30に対して不参加通知(要請に係るエネルギーマネジメントに参加しない旨の通知)を行なう。このように、予め参加禁止(参加フラグ=OFF)が車載端末(ユーザ端末)に設定されている場合には、エネルギーマネジメントの要請を受けたときにユーザが参加/不参加を選択しなくても、自動的にユーザ端末からサーバ30に不参加通知が行なわれる。このため、ユーザの利便性が向上する。
【0108】
続けて、ECU150は、S66においてリモートフラグをOFFにする。リモートフラグがOFFであることは、サーバ30によるバッテリ130のリモート充放電制御が禁止されていることを意味する。その後、処理はS67に進む。リモートフラグがOFFである場合には、ECU150は、S67において、エネルギーマネジメントに参加しないことが決定した旨をユーザに報知する。
【0109】
図11は、この実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法におけるリモート充放電制御に係る処理を示すフローチャートである。たとえば、車両50がプラグイン状態であり、かつ、リモートフラグがONである状態になると、開始される。前述したエネルギーマネジメントの要請からエネルギーマネジメントの開始までに所定の猶予時間があってもよい。ユーザは、この猶予時間に車両50をプラグイン状態にしてもよい。
【0110】
図1及び
図2とともに
図11を参照して、S71では、ECU150が、サーバ30(より特定的には、制御部311)から充放電指令を受信したか否かを判断する。そして、サーバ30から充放電指令を受信すると(S71にてYES)、ECU150は、S72において、その充放電指令に従ってバッテリ130の充放電制御を行なう。ここで実行されるバッテリ130の充放電制御は、VPP充放電に相当する。その後、処理はS73に進む。
【0111】
S73では、実行された充放電制御が所定の充放電条件を満たすか否かを、ECU150が判断する。所定の充放電条件は、ユーザ条件フラグがONである場合はユーザ条件、ユーザ条件フラグがOFFである場合はデフォルト条件である。通常は、所定の充放電条件に従わない充放電制御は行なわれないが、何らかの異常によって、所定の充放電条件に従わない充放電制御が行なわれる可能性もある。所定の充放電条件に従わない充放電制御が行なわれた場合(S73にてNO)には、ECU150は、S75において、リモート充放電制御の終了をサーバ30に通知した後、S76において、リモートフラグをOFFにする。ECU150は、こうした処理によりリモート充放電制御を中止する。これにより、所定の充放電条件に従わない充放電制御が行なわれることを抑制できる。
【0112】
実行された充放電制御が所定の充放電条件を満たす場合(S73にてYES)には、処理がS74に進む。S74では、エネルギーマネジメントが終了したか否かを、ECU150が判断する。エネルギーマネジメントが終了すると、ECU150は、サーバ30から終了通知を受信する。ECU150は、この終了通知を受信したか否かに基づいて、エネルギーマネジメントが終了したか否かを判断してもよい。エネルギーマネジメントが終了していない場合(S74にてNO)には、処理がS71に戻る。エネルギーマネジメントが終了した場合(S74にてYES)には、処理がS76に進む。なお、サーバ30から充放電指令を受信しない状態(S71にてNO)で所定時間経過した場合にも、処理がS76に進むようにしてもよい。
【0113】
S76では、ECU150がリモートフラグをOFFにする。S76の処理が実行されることにより、
図11に示す一連の処理は終了する。上記のように、リモート充放電制御では、サーバ30からの充放電指令に従い、プラグイン状態の車両50がバッテリ130の充放電制御を実行する。充放電指令は、無線通信によりサーバ30から車両50へ送信される。サーバ30は、充放電指令により車両50を遠隔操作する。要請に係るエネルギーマネジメントが充電である場合には上記充放電指令により外部充電が実行され、要請に係るエネルギーマネジメントが放電である場合には上記充放電指令により外部給電が実行される。
【0114】
リモートフラグがOFFである場合には、上述したリモート充放電制御は行なわれず、ECU150は通常の充放電制御を実行する。通常の充放電制御の一例では、即時充電又はタイマ充電を行なう充電制御と、ユーザからの要求に応じて外部給電を実行する放電制御とが実行される。即時充電は、車両50がプラグイン状態になると、すぐに開始される外部充電である。タイマ充電は、車両50がプラグイン状態であるときに所定の開始時刻が到来すると開始される外部充電である。ECU150にタイマ充電が予約されていない場合には即時充電が実行され、ECU150にタイマ充電が予約されている場合にはタイマ充電が実行される。
【0115】
以上説明したように、この実施の形態に係るエネルギーマネジメント方法は、複数の充放電条件と、複数の充放電条件の各々に従ってエネルギーマネジメントのための充放電をバッテリ130(蓄電装置)が行なったと仮定した場合のバッテリ130の劣化の予測進行度とを、バッテリ130のユーザに知らせること(
図3のS24)と、複数の充放電条件のいずれかの条件に従ってエネルギーマネジメントのための充放電を実行すること(
図11のS72)とを含む。こうしたエネルギーマネジメント方法によれば、ユーザはエネルギーマネジメントに参加するか否かを適切に判断しやすくなる。
【0116】
車両50は、交流電力を供給するAC給電のみ実行可能なEVSEを用いてエネルギーマネジメントを行なってもよいし、直流電力を供給するDC給電のみ実行可能なEVSEを用いてエネルギーマネジメントを行なってもよい。また、車両50は、AC給電とDC給電との両方を実行可能なEVSEを用いてエネルギーマネジメントを行なってもよい。EVSEは、車両50からの指示に従ってAC給電/DC給電を切り替えるように構成されてもよい。車両50は、複数のインレット(AC方式のインレット、及びDC方式のインレット)を備えてもよい。
【0117】
充放電器120の電力変換回路は、車両ではなくEVSEに搭載されていてもよい。管理コンピュータ(たとえば、サーバ30)は、車両と通信しながらEVSEに搭載された電力変換回路を遠隔操作することにより、エネルギーマネジメントを行なってもよい。
【0118】
図3に示した処理では、バッテリ130のユーザからの要求に応じてサーバ30がVPP通知(S24)を実行する。しかしこれに限られず、サーバ30は、ユーザからの要求がなくてもVPP通知を実行してもよい。たとえば、サーバ30は、エネルギーマネジメントの実行前に(たとえば、エネルギーマネジメント実行時刻から所定時間さかのぼったタイミングで)、エネルギーマネジメントを要請するDSRの候補として選ばれた車両のユーザ端末に対して、
図3に示した処理(S21~S26)を実行してもよい。
【0119】
また、上記実施の形態では、サーバ30が車載端末(ユーザ端末)から走行予定情報を取得している。しかしこれに限られず、サーバ30は、過去のデータに基づく学習によって走行予定情報を取得してもよい。たとえば、車両50について、平日は通勤のための短距離走行、休日はレジャー目的の長距離走行を予定していることを示す走行予定情報を、サーバ30が学習によって取得するかもしれない。この場合、サーバ30は、エネルギーマネジメントが実行される日に応じて、第1充放電条件を変更してもよい。たとえば、エネルギーマネジメントが平日に実行される場合には、VPP通知において、
図5に示した第1充放電条件(テキストM2)がユーザに通知され、エネルギーマネジメントが休日に実行される場合には、VPP通知において、
図6に示した第1充放電条件(テキストM2A)がユーザに通知されてもよい。ビッグデータ及びAI(人工知能)を利用して上記学習が行なわれてもよい。
【0120】
ユーザに知らせる複数の充放電条件を決定する方法は、
図4に示した方法に限られない。たとえば、
図4に示した処理において、S225が割愛されてもよい。また、S222、S223、及びS224の少なくとも1つが割愛されてもよい。
【0121】
VPP通知において、充放電条件ごとの予測劣化進行度に加えて、エネルギーマネジメント参加確率(エネルギーマネジメントに参加できる確率)が通知され、
図3のS13において入力画面中に充放電条件ごとのエネルギーマネジメント参加確率が表示されてもよい。許容される充放電方式が多いほど、エネルギーマネジメント参加確率は高くなる。また、許容される時間帯が広いほど、エネルギーマネジメント参加確率は高くなる。
【0122】
上記実施の形態では、車両50に搭載された車載端末を、ユーザ端末として採用している。しかしこれに限られず、車載端末に代えて又は加えて、車両50のユーザが携帯する携帯端末80を、ユーザ端末として採用してもよい。携帯端末80は、無線通信によりサーバ30から通知、要請、及び指令を受け、無線通信により車載端末に指示を出して車載端末に車両制御(たとえば、バッテリ130の充放電制御)を実行させてもよい。
【0123】
管理コンピュータを含む管理システムの構成は、
図2に示した構成に限られない。たとえば、サーバ30の機能をサーバ10に搭載し、サーバ30を割愛してもよい。サーバ10は、管理コンピュータとして機能し得る。電力網は、インフラストラクチャとして整備された大規模な電力網(電力系統)に限られず、マイクログリッドであってもよい。VPP要請信号を送信するコンピュータは、電力市場(たとえば、需給調整市場)のサーバであってもよい。
【0124】
車両の構成は、
図1に示した構成に限られない。たとえば、車両は、非接触充電可能に構成されてもよい。車両は、EVに限られず、PHVであってもよい。車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。車両は、POVに限られず、MaaS(Mobility as a Service)車両であってもよい。車両は、自動運転可能に構成されてもよいし、飛行機能を備えてもよい。車両は、無人で走行可能な車両(たとえば、無人搬送車(AGV)又は農業機械)であってもよい。
【0125】
エネルギーマネジメントに使用される蓄電装置は、車両以外の電力調整リソースに搭載されていてもよい。電力調整リソースは、車両以外の移動体(船、飛行機、ドローン、歩行ロボット、ロボットクリーナ、宇宙探査機等)であってもよいし、定置式のESS(Energy Storage System)であってもよい。
【0126】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 管理システム、10,30 サーバ、31 制御装置、32 記憶装置、33 通信装置、40 EVSE、50 車両、80 携帯端末、110 インレット、120 充放電器、121,131 監視モジュール、130 バッテリ、150 ECU、151 プロセッサ、152 RAM、153 記憶装置、154 タイマ、161 入力装置、162 メータパネル、170 NAVI、180 通信機器、311 制御部、312 通知部、PG 電力系統。