(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】表示制御装置、表示システム、車両、表示制御方法および表示制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G09G 5/00 20060101AFI20240717BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240717BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240717BHJP
G09G 5/37 20060101ALI20240717BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G09G5/00 510G
G01C21/36
G02B27/01
G09G5/00 510A
G09G5/37 600
G09G5/38
(21)【出願番号】P 2021079539
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松延 剛
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/067574(WO,A1)
【文献】特開2019-219547(JP,A)
【文献】特開2021-015166(JP,A)
【文献】特開2019-202708(JP,A)
【文献】特開2014-052531(JP,A)
【文献】特開2020-016675(JP,A)
【文献】特開2012-141502(JP,A)
【文献】特開2018-172088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105974583(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0003851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 5/00
G01C 21/36
G02B 27/01
G09G 5/37
G09G 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーとスクリーンとを含み前記ミラーで反射された光を前記スクリーンへ投影することで画像を表示する表示装置
の前記ミラーの角度と、
ユーザの視線が路面と交叉する位置を示すと共に、前記表示装置に表示される画像の
、前記スクリーンを挟んでユーザの反対側に位置する外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報と、の対応関係を記憶する記憶部と、
ユーザからの
第1入力を受け付ける受付部と、
前記受付部によって受け付けられた前記
第1入力に応じて前記ミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する前記奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる表示制御部と、
を含
み、
前記記憶部は、前記ミラーの複数の角度を纏めたグループ毎に対応する前記奥行情報が記憶されており、
前記表示制御部は、前記角度変更後の前記ミラーの角度が属するグループと対応付けられた前記奥行情報を用いて前記表示位置を調整する表示制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記ミラーの角度毎に対応する前記奥行情報が記憶されており、
前記表示制御部は、前記角度変更後の前記ミラーの角度と対応付けられた前記奥行情報を用いて前記表示位置を調整する請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記受付部は、前記第1入力を受け付けた後、ユーザからの第2入力を受け付け、
前記表示制御部は、前記受付部によって受け付けられた前記第2入力に応じて前記ミラーの角度を更に変更する請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記記憶部に記憶された前記奥行情報は、前記画像が表示される矩形範囲の上辺及び下辺の外界における仮想的な位置を示す請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の表示制御装置と、
前記表示装置と、
を含む表示システム。
【請求項6】
請求項5記載の表示システムが搭載された車両。
【請求項7】
ミラーとスクリーンとを含み前記ミラーで反射された光を前記スクリーンへ投影することで画像を表示する表示装置の前記ミラーの角度と、ユーザの視線が路面と交叉する位置を示すと共に、前記表示装置に表示される画像の、前記スクリーンを挟んでユーザの反対側に位置する外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報と、の対応関係が記憶部に記憶された状態で、
ユーザからの第1入力を受け付け、
受け付けた前記第1入力に応じて前記ミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する前記奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる、
ことを含む処理をコンピュータによって実行させる表示制御方法であって、
前記記憶部は、前記ミラーの複数の角度を纏めたグループ毎に対応する前記奥行情報が記憶されており、
前記角度変更後の前記ミラーの角度が属するグループと対応付けられた前記奥行情報を用いて前記表示位置を調整する表示制御方法。
【請求項8】
ミラーとスクリーンとを含み前記ミラーで反射された光を前記スクリーンへ投影することで画像を表示する表示装置の前記ミラーの角度と、ユーザの視線が路面と交叉する位置を示すと共に、前記表示装置に表示される画像の、前記スクリーンを挟んでユーザの反対側に位置する外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報と、の対応関係が記憶部に記憶された状態で、
コンピュータに、
ユーザからの第1入力を受け付け、
受け付けた前記第1入力に応じて前記ミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する前記奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる、
ことを含む処理を実行させるための表示制御プログラムであって、
前記記憶部は、前記ミラーの複数の角度を纏めたグループ毎に対応する前記奥行情報が記憶されており、
前記角度変更後の前記ミラーの角度が属するグループと対応付けられた前記奥行情報を用いて前記表示位置を調整する表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は表示制御装置、表示システム、車両、表示制御方法および表示制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、撮像ユニットにより環境の影像を発生すると共に、ナビゲーションシステムで発生したナビゲーションデータから指示信号(例えば、たどるべき方向を示す矢印など)を形成し、ビデオ結合モジュールなどにより環境の影像と指示信号とを重畳して表示ユニット上に表示させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように進行すべき道路を示し、或いは、進行方向の前方に存在する物体を強調する、などの目的にHUD(Head-Up Display)装置を用いる場合には、スクリーン(車両であればウィンドシールド)の前方の実像とスクリーンに投影した虚像(画像)とが、ユーザから見てずれなく重なっている必要がある。
【0005】
本開示は上記事実を考慮して成されたもので、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示できる表示制御装置、表示システム、車両、表示制御方法および表示制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る表示制御装置は、表示装置に表示する光を反射するミラーの角度と、前記表示装置に表示される画像の外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報と、の対応関係を記憶する記憶部と、ユーザからの入力を受け付ける受付部と、前記受付部によって受け付けられた前記入力に応じて前記ミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する前記奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる表示制御部と、を含んでいる。
【0007】
第1の態様では、AR(Augmented Reality)-HUD等の表示装置に表示する光を反射するミラーの角度と、表示装置に表示可能な画像の表示装置の奥行情報方向に沿った位置を表す奥行情報と、の対応関係が記憶部に記憶されている。そして、ユーザからの入力に応じてミラーの角度を変更し、表示装置に表示させる画像を、角度変更後のミラーの角度に対応する奥行情報と、に基づいて求まる表示位置に表示させる。これにより、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記記憶部は、前記ミラーの角度毎に対応する前記奥行情報が記憶されており、前記表示制御部は、前記角度変更後の前記ミラーの角度と対応付けられた前記奥行情報を用いて前記表示位置を調整する。
【0009】
第2の態様では、ミラーの角度変更と連動して画像の表示位置が切り替わることになり、ミラーの角度を変更する入力を受け付けた場合にも、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様において、前記記憶部は、前記ミラーの複数の角度を纏めたグループ毎に対応する前記奥行情報が記憶されており、前記表示制御部は、前記角度変更後の前記ミラーの角度が属するグループと対応付けられた前記奥行情報を用いて前記表示位置を調整する。
【0011】
第3の態様では、ミラーの角度のグループを跨ぐミラーの角度変更と連動して画像の表示位置が切り替わることになり、ミラーの角度を変更する入力を受け付けた場合にも、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0012】
第4の態様は、第3の態様において、前記受付部は、ユーザからの追加の入力を受け付け、前記表示制御部は、前記受付部によって受け付けられた前記追加の入力に応じて前記ミラーの角度を更に変更する。
【0013】
第4の態様によれば、何らかの原因によりユーザから見て画像が実像とずれた場合にも、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0014】
第5の態様は、第1の態様~第4の態様の何れかにおいて、前記記憶部に記憶された前記奥行情報は、前記画像が表示される矩形範囲の上辺及び下辺の外界における仮想的な位置を示す。
【0015】
第5の態様によれば、表示装置に表示する画像の表示位置として、画像の前記奥行情報方向の位置に対応する前記表示装置の高さ方向に沿った位置を求めることができる。
【0016】
第6の態様に係る表示装置は、第1の態様~第5の態様の何れかに係る表示制御装置と、前記表示装置と、を含んでいる。第6の態様は、第1の態様~第5の態様のいずれかに記載の表示制御装置を含んでいるので、第1の態様と同様に、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0017】
第7の態様に係る車両は、第6の態様に係る表示装置が搭載されている。第7の態様は、第6の態様に係る表示装置が搭載されているので、第6の態様と同様に、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0018】
第8の態様に係る表示制御方法は、表示装置に表示する光を反射するミラーの角度と、前記表示装置に表示される画像の外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報と、の対応関係が記憶部に記憶された状態で、ユーザからの入力を受け付け、受け付けた前記入力に応じて前記ミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する前記奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる、ことを含む処理をコンピュータによって実行させる。
【0019】
第8の態様によれば、第1の態様と同様に、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【0020】
第9の態様に係る表示制御プログラムは、表示装置に表示する光を反射するミラーの角度と、前記表示装置に表示される画像の外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報と、の対応関係が記憶部に記憶された状態で、コンピュータに、ユーザからの入力を受け付け、受け付けた前記入力に応じて前記ミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する前記奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる、ことを含む処理を実行させる。
【0021】
第9の態様によれば、第1の態様と同様に、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示は、ユーザから見て画像が実像とずれなく重なるように表示装置に画像を表示できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る表示制御装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図2】表示制御ECUのCPUの機能ブロック図である。
【
図3】AR-HUDの構成の一例を示したブロック図である。
【
図4】表示制御ECUにおける処理の一例を示したフローチャートである。
【
図5】(A1)は、ユーザの目の高さが高い場合のAR-HUDの表示枠の一例を、(A2)は、ユーザの目の高さが高い場合のユーザの目の高さとアイボックスとの関係を、(B1)は、ユーザの目の高さが中程度の場合のAR-HUDの表示枠の一例を、(B2)は、ユーザの目の高さが中程度の場合のユーザの目の高さとアイボックスとの関係を、(C1)は、ユーザの目の高さが低い場合のAR-HUDの表示枠の一例を、(C2)は、ユーザの目の高さが低い場合のユーザの目の高さとアイボックスとの関係を、各々示した説明図である。
【
図6】(A1)は、ユーザの目の高さが低い場合のAR-HUDの表示の一例を、(A2)は、ユーザの目の高さが低い場合のミラー角度とユーザの目の高さとの関係を、(B1)は、ユーザの目の高さが中程度の場合のAR-HUDの表示の一例を、(B2)は、ユーザの目の高さが中程度の場合のミラー角度とユーザの目の高さとの関係を、(C1)は、ユーザの目の高さが高い場合のAR-HUDの表示の一例を、(C2)は、ユーザの目の高さが高い場合のミラー角度とユーザの目の高さとの関係を、各々示した説明図である。
【
図7】ユーザの目の位置の高さと、ユーザの視線が路面と交叉する位置を示す奥行情報と、ユーザの視線の中心俯角との関係を示した説明図である。
【
図8】ミラー角、EP高さ、俯角、及び奥行情報との対応表を用い、表示枠の位置、及び表示画像のパースペクティブを各々調整している場合の説明図である。
【
図9】第2の実施形態において、ステップ、ミラー角、EP高さ、俯角、及び奥行情報との対応表を用い、表示枠の位置、及び表示画像のパースペクティブを各々調整している場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態に係る表示制御装置100の構成の一例を示したブロック図である。表示制御装置100は、車両に搭載され、表示装置であるAR-HUD30の表示を制御する装置であり、表示制御ECU(Electronic Control Unit)10と、車両周辺の状況に係る情報を取得する周辺状況取得デバイス群50と、AR-HUD30とを含む。
【0026】
表示制御ECU10は、CPU(Central Processing Unit)12、メモリ14、通信インターフェース(I/F)16及び記憶部18を備え、CPU12、メモリ14、通信I/F16、及び記憶部18がアドレスバス、データバス、及び制御バス等の各種バスを介して互いに接続されている。通信I/F16には、周辺状況取得デバイス群50と、ユーザが操作するAR-HUD操作部(図示せず)が接続されている。
【0027】
記憶部18は、情報及びプログラム等を格納する装置であり、例えば、ハードディスク(HDD)、又はフラッシュメモリ等の不揮発のストレージである。
図1に示したように、記憶部18には一例として、AR-HUD30の表示を制御するための表示制御プログラム20と、ユーザの視線に応じたAR-HUD30の虚像の外界における仮想的な表示位置を規定した対応関係テーブル22とが格納されている。本実施形態では、表示制御プログラム20をメモリ14に展開し、CPU12が当該プログラムを実行することにより、CPU12は、
図2に示したように表示制御部24として機能する。
【0028】
周辺状況取得デバイス群50は、衛星からの情報に基づいて自車位置を測位するGPS(Global Positioning System)装置52、車両の外部の通信機器といわゆるV2X通信が可能な車載通信機54と、GPS装置52による測位結果及び地図情報記憶部58に格納された地図情報に基づいて車両を目的地に誘導するナビゲーションシステム56と、車両周囲に照射した電波(ミリ波)の反射波から車両周囲の障害物等を検出するレーダ装置60と、車両周囲の画像情報を取得するカメラ62等を含む。
【0029】
図2は、表示制御ECU10のCPU12の機能ブロック図を示す。CPU12は表示制御プログラムを実行することで実現される機能について説明する。表示制御プログラムは、ユーザからの画像の表示位置の指示を受け付ける受付機能、及び記憶部18の対応関係テーブル22を参照し、ユーザからの指示に応じてAR-HUD30の表示を制御する表示制御機能を備えている。CPU41がこれら各機能を有する表示制御プログラムを実行することで、CPU12は、
図2に示すように、表示制御部24、及び受付部26として機能する。
【0030】
図3は、AR-HUD30の構成の一例を示したブロック図である。AR-HUD30は、生成した表示画像を凹面鏡であるミラー36を介して車両のウィンドシールド40に投影する表示部と、ミラー36の角度を変更して表示画像の投影位置を変更するミラー角変更アクチュエータ34と、を備える。ウィンドシールド40の室内側表面には、ハーフミラー等の投影画像が表示可能であると共に、ウィンドシールド40を通して車両の外の光景をユーザが視認できる処理が施されている。また、ミラー角変更アクチュエータ34は、ステッピングモータ等の正確な位置決め制御が可能な装置で構成されている。
【0031】
図4は、表示制御ECU10における処理の一例を示したフローチャートである。
図4に示した処理は、例えば車両の運転席側のドアが開けられると開始される。
【0032】
ステップ400では、ユーザの乗車の検出の有無を判定する。ユーザの乗車の有無は、一例として、運転席の座面等に設けられた着座センサ(図示せず)が検出したか否かを判定する。着座センサは、例えば圧電素子等を用いたユーザの着座による圧力変化を検出するセンサである。ステップ400で、ユーザの乗車を検出した場合は、手順をステップ402に移行し、ユーザの乗車を検出しない場合は、ユーザの乗車が検出されるまで待機する。
【0033】
ステップ402では、ユーザが乗車に際して用いたキー情報を取得する。本実施形態では、ユーザは各々識別可能なキーを用いて車両のドアの施錠、解錠、エンジンの始動等を行う。ステップ402では、ユーザが車両のドアを解錠した際に当該ユーザの使用したキーのキー情報を取得してもよいし、当該ユーザが所持するキーが常時発信している情報を受信してキー情報を取得してもよい。
【0034】
ステップ404では、車両のイグニッションスイッチがオンになったか否かを判定し、イグニッションスイッチがオンになった場合は手順をステップ406に移行する。ステップ404で、車両のイグニッションスイッチがオンになっていない場合は、イグニッションスイッチがオンになるまで待機する。
【0035】
ステップ406では、取得したキー情報が車両の記憶部18等に登録された情報であるか否かを判定する。ステップ406で、取得したキー情報が登録された情報である場合は、手順をステップ410に移行し、取得したキー情報が登録されたものでない場合は、手順をステップ408に移行する。
【0036】
ステップ408では、AR-HUD30の高さ調整を行う。本実施形態では、目の位置EPが変動しても映像を視認できる範囲として、アイボックス(EB)という概念を導入している。
図5では、アイボックスEBの高さを40mmとし、アイボックスEBに対応した範囲を
図5(A1)、(B1)、(C1)において表示枠70として表示している。表示枠70はミラー36の角度を変更することにより、
図5(A1)、(B1)、(C1)に示したように上下に調整される。
【0037】
図5(A2)、(B2)、(C2)は、アイボックスEBに対する目の位置の変化を示している。
図5(A2)は、目の位置EPがアイボックスEBの上限にある状態を示している。その結果、ユーザが視認できる表示枠70は、ミラー36の角度調整によって表示位置が上方向に調整されていても、
図5(A1)に示したように下端部が不可視となる。
【0038】
図5(B2)は、目の位置EPがアイボックスEBの範囲内にある状態を示している。その結果、ユーザが視認できる表示枠70は、
図5(B1)に示したように全域となる。
【0039】
図5(C2)は、目の位置EPがアイボックスEBの下限にある状態を示している。その結果、ユーザが視認できる表示枠70は、ミラー36の角度調整によって表示位置が下方向に調整されていても、
図5(C1)に示したように上端部が不可視となる。
【0040】
図6(A1)は、ユーザの座高が低く、目の位置EPが
図6(A2)に示したように低い位置にある場合のAR-HUD30の表示の説明図である。
【0041】
図6(B1)は、ユーザの座高が中程度で、目の位置EPが
図6(B2)に示したように中程度の位置にある場合のAR-HUD30の表示の説明図である。前述のように、ユーザの目の位置EPが中程度の高さの場合は、表示枠70の全体が視認できる。
【0042】
図6(C1)は、ユーザの座高が高く、目の位置EPが
図6(C2)の示したように高い位置にある場合のAR-HUD30の表示の説明図である。
【0043】
図6(A2)、(B2)、(C2)の各々に示した楕円形の領域は、体格の異なるユーザの自の位置の分布を示すアイリスプ82である。原則として、目の位置EPは、アイリスプ82上に存在するが、ユーザの体格によっては、
図6(B2)のように、目の位置EPがアイリスプ82から外れる場合もある。
【0044】
図6(B1)において、車両の進行方向を示す矢印状の虚像である表示画像76のパースペクティブ(遠近感)は、ユーザの目の位置EPが
図6(B2)に示したように中程度の高さの場合を想定して調整されているとすると、表示画像76は、実像である進路80(曲がりたい道路)と一致させることができる。
【0045】
しかしながら、
図6(A2)に示したように、ユーザの目の位置EPが低いと、表示枠70の位置が上方に移動し、表示画像76と同様のパースペクティブを有するように表示画像72を表示すると、表示画像72は、実像である進路80と一致しなくなる。
【0046】
また、
図6(C2)に示したように、ユーザの目の位置EPが高いと、表示枠70の位置が下方に移動し、表示画像76と同様のパースペクティブを有するように表示画像72を表示すると、表示画像72は、実像である進路80と一致しなくなる。
【0047】
図6(A1)、(C1)のように、表示画像72と進路80とが一致しなくなる現象を抑制するには、ユーザの目の位置EPに応じて表示画像72のパースペクティブを調整することを要する。
【0048】
図6(A1)に示した場合では、表示画像72を遠近方向に圧縮した表示画像74を生成して表示することで、表示画像74と進路80とを一致させる。
図6(C1)に示した場合では、表示画像72を遠近方向に拡大した表示画像78を生成して表示することで、表示画像78と進路80とを一致させる。なお、
図6(A1)、(B1)、(C1)では、表示枠70を表示しているが、表示枠70は表示画像76等を表示する範囲の目安なので、量産された製品では表示しなくてもよい。
【0049】
図7は、ユーザの目の位置の高さEP1、EP2、EP3と、ユーザの視線が路面と交叉する位置を示す奥行情報L1max-L1min、L2max-L2min、L3max-L3minと、ユーザの視線の中心俯角φ1、φ2、φ3との関係を示した説明図である。本実施形態では、
図8に示したように、ミラー36の角度であるミラー角、ユーザの目の位置の高さであるEP高さ、俯角、及び奥行情報との対応表を用い、表示枠70の位置、及び表示画像のパースペクティブを各々調整している。
【0050】
EP高さ、俯角、及び奥行情報の各々の関係は、例えば、以下のように算出される。
図7では、前提として、奥行情報L1max-L1min、L2max-L2min、L3max-L3min等が予め定まっているものとする。L1max、L1min、L2max、L2min、L3max、L3minの各々は、EP高さの垂線の足と路面との交点Oからの距離であると共に、虚像である表示枠70の上辺及び下辺の外界における仮想的な位置を示している。表示制御ECU10は、奥行情報L1max-L1min、L2max-L2min、L3max-L3minの各々に従って表示画像のパースペクティブを調整するアルゴリズムを備えたソフトウェアで画像処理を行う。
【0051】
図7では、代表例として、EP高さがEP2の場合を取り上げる。EP2の場合、奥行情報はL2max-L2minであるから、当該奥行情報の中間点L2Mは、下記の式(1)で示される交点Oからの距離L2Mとなる。
L2M=(L2max-L2min)/2 …(1)
【0052】
また、中心俯角φ2の正接は、下記の式(2)となる。
tanφ2=EP2/L2M …(2)
【0053】
従って、中心俯角φ2は、下記の式(3)で求められる。
φ2=tan-1(EP2/L2M) …(3)
【0054】
以下、同様にして多様なEP高さ、及び奥行情報で中心俯角を算出する。中心俯角が算出されれば、ミラー角度も算出可能となる。
【0055】
図8は、本実施形態におけるミラー角変更アクチュエータ34の動作回数であるステップ、ミラー角、EP高さ、俯角、及び奥行情報との対応表の一例である。
図8中のステップは、ミラー36の角度が所定のミラー角になるまでのミラー角変更アクチュエータ34を構成するステッピングモータ等の動作回数である。例えば、ミラー角変更アクチュエータ34を構成するステッピングモータ等の1動作での角度変化量をΔθとすると、ミラー角θ1とステップN1との関係は、下記の式(4)のようになる。そして、以下、同様にしてステップN12、N25等が算出される。
N1=θ1/Δθ …(4)
【0056】
本実施形態では、
図8に示した対応表に基づき、表示枠70の表示位置、表示画像のパースペクティブの調整を行う。具体的には、
図4のステップ408において、ユーザが、表示枠70の位置の調整、EP高さの変更、又は俯角の調整等の操作を行うと、当該操作に係る信号がCPU12の受付部26に入力される。一例として、ユーザが操作を行うに際して、AR-HUD30には表示枠70及び調整用の表示画像を表示し、ユーザは表示枠70及び調整用の表示画像が見えやすくなるように調整する。受付部26は、ユーザからの追加の入力を受け付け可能で、表示制御部24は、受付部26によって受け付けられた追加の入力に応じてミラー36の角度を更に変更する。
【0057】
CPU12の表示制御部24は、受付部26にユーザの操作に係る信号が入力されると、記憶部18に格納された
図8のような対応表を参照して、ミラー角の調整、及び表示画像のパースペクティブを調整する。そして、調整に係る各々の情報は、ユーザのキー情報に対応付けて記憶部18に記憶する。
【0058】
ステップ406で、取得したキー情報が登録されたものの場合は、ステップ410において、記憶部18からキー情報に対応付けられた情報を取得し、取得した情報に従ってAR-HUD30の表示を調整する。
【0059】
ステップ412では、ステップ408、410でのAR-HUD30の表示の調整に従って表示画像を表示するコンテンツ表示処理を行う。ステップ414では、車両のイグニッションスイッチがオフになったか否かを判定し、イグニッションスイッチがオフになった場合は処理を終了し、イグニッションスイッチがオフになっていない場合はステップ412のコンテンツ表示処理を継続する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、ミラー角変更アクチュエータ34の動作回数であるステップ、ミラー角、EP高さ、俯角、及び奥行情報の各々を予め定めた対応表を参照して、ユーザの視線が路面と交叉する位置までの距離である奥行情報に応じて表示画像のパースペクティブを調整し、表示画像が表示される範囲である表示枠70の位置を調整している。かかる調整により、虚像である表示画像の位置と、実像である外界の目標物の位置とを一致させてユーザに視認させることができる。
【0061】
本実施形態のように、表示画像のパースペクティブの調整、及び表示画像が表示される範囲である表示枠70の位置を調整しない場合、アイボックスEBを拡大することが考えられるが、アイボックスを徒に大きくすると、必要な凹面鏡のサイズが大きくなり、AR-HUDの筐体サイズが拡大するため、車両への搭載が困難となる。また、情報を確認するために、ユーザが視点を移動させる範囲が拡大されることになり、ユーザを疲労させると共に、情報の視認性、安全性において問題がある。
【0062】
本実施形態では、上述のように、表示画像のパースペクティブの調整と、表示画像が表示される範囲の調整とにより、虚像である表示画像の位置と、実像である外界の目標物の位置とを一致させてユーザに視認させることができるので、ユーザの疲労を抑制しながら、情報の視認性及び安全性を担保することができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
次に本開示の第2実施形態について説明する。本実施形態では、
図8とは異なる対応表に基づき、表示画像のパースペクティブの調整と、ミラー角の調整とを行う点で前述の第1実施形態と相違するが、他の構成は第1実施形態と同一である。従って、本実施形態で第1実施形態と同一の構成については同一の符号が付されているものとして、詳細な説明は省略する。
【0064】
図9は、本実施形態におけるミラー角変更アクチュエータ34の動作回数であるステップ、ミラー角、EP高さ、俯角、及び奥行情報との対応表の一例である。本実施形態では、ステップN1~N8に対応するミラー角、EP高さ、及び俯角の各々をグループG1、ステップN9~N16に対応するミラー角、EP高さ、及び俯角の各々をグループG2、そしてステップN17~N24に対応するミラー角、EP高さ、及び俯角の各々をグループG3とし、各々のグループ内では奥行情報を同一の値としている。
【0065】
図8に示した対応表では、ステップ、ミラー角、EP高さ、及び俯角が異なれば、異なる奥行情報を対応させ、ステップ、ミラー角、EP高さ、及び俯角が変化する度に、表示画像のパースペクティブを調整していた。
【0066】
しかしながら、表示画像のパースペクティブの調整は、CPU12における演算負荷が少なからずあるので、本実施形態では、ステップ、ミラー角、EP高さ、及び俯角の変化が所定範囲内であれば、表示画像には同じパースペクティブ調整を行う。そして、虚像である表示画像の位置と実像である外界の目標物の位置との微調整は、ミラー角を調整することで対処する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、ステップ、ミラー角、EP高さ、及び俯角の変化が所定範囲内であれば、表示画像には同じパースペクティブ調整を行うことにより、CPU12の演算負荷を抑制できる。
【0068】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0069】
また、上記各実施形態では、プログラムがディスクドライブ60等に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0070】
(付記項1)
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
ユーザからの入力を受け付け、
受け付けた入力に応じて表示装置に表示する光を反射するミラーの角度を変更し、前記表示装置に表示させる画像を、記憶部に記憶された、角度変更後の前記ミラーの角度に対応する、前記表示装置に表示される画像の外界に対応した仮想的な表示位置を示す奥行情報に基づいて前記画像の表示位置を調整して表示させる、
ように構成されている表示制御装置。
【符号の説明】
【0071】
10 表示制御ECU
12 CPU
14 メモリ
18 記憶部
20 表示制御プログラム
22 対応関係テーブル
24 表示制御部
26 受付部
30 AR-HUD
34 ミラー角変更アクチュエータ
36 ミラー
40 ウィンドシールド
70 表示枠
72、74、76、78 表示画像
100 表示制御装置
θ1 ミラー角
φ1、φ2、φ3 中心俯角
G1、G2、G3 グループ
L1max-L1min、L2max-L2min、L3max-L3min 奥行情報