(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 611C
B60H1/22 611
B60H1/22 671
(21)【出願番号】P 2021082431
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】弁理士法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊集院 幸久
(72)【発明者】
【氏名】河野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】横尾 康弘
(72)【発明者】
【氏名】一志 好則
(72)【発明者】
【氏名】林 芳生
(72)【発明者】
【氏名】平山 順基
(72)【発明者】
【氏名】武藤 騎士
(72)【発明者】
【氏名】加藤 吉毅
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000948(JP,A)
【文献】特開2019-057429(JP,A)
【文献】特開2021-063644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0129627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が循環する熱媒体回路(30)と、
前記熱媒体回路に配置され、
作動に伴って発熱し、前記熱媒体に吸熱される複数の吸熱源(36、37)と、
複数の吸熱源に対して前記熱媒体に吸熱させるか否かを切り替える切替部(33)と、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒を、空調対象空間へ送風される空気に放熱させる放熱部(12)と、
前記放熱部で放熱された前記冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
前記減圧部で減圧された前記冷媒を前記熱媒体からの吸熱により蒸発させる蒸発器(17)と、
前記複数の吸熱源のうちいずれの吸熱源で前記熱媒体に吸熱させるかを前記複数の吸熱源の温度および発熱量に基づいて決定して前記切替部を制御する制御部(60)とを備え
、
前記複数の吸熱源は、第1吸熱源(36)および第2吸熱源(37)を有しており、
前記制御部は、
必要な熱量が不足しているか否かを判定し、
必要な熱量が不足していると判定した場合、前記第1吸熱源から吸熱可能な熱量が必要な熱量を上回っているか否かを判定し、
前記第1吸熱源から吸熱可能な熱量が必要な熱量を上回っていると判定した場合、前記熱媒体に吸熱させる前記吸熱源を前記第1の吸熱源に決定し、
前記第1吸熱源から吸熱可能な熱量が必要な熱量を上回っていないと判定した場合、前記熱媒体に吸熱させる前記吸熱源を前記第1吸熱源および前記第2吸熱源に決定する車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記熱媒体に吸熱させる前記吸熱源の温度が保証温度範囲の下限値以上になり、かつ前記空調対象空間の暖房に必要な熱量が得られるように、前記熱媒体に吸熱させる前記吸熱源を決定する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の吸熱源のそれぞれにおける保証温度範囲および発熱の容易さに基づいて、前記複数の吸熱源のうち一部の吸熱源から前記熱媒体に吸熱させる際の優先順位を決定する請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記複数の吸熱源は、走行用電力を供給するための電池(36a)を含んでいる請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記電池の発熱量を、前記電池の出力電流の値に基づいて推定する請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記複数の吸熱源は走行用補機(37)を含んでいる請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記走行用補機の発熱量を、車両の走行状態に基づいて推定する請求項6に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吸熱源から吸熱して空気を加熱する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、クーラントサイクルのクーラントに、熱源として、換気排熱回収器、モータ/バッテリ、電気ヒータがつなげられた車両空調システムが記載されている。
【0003】
これらの熱源によって加熱されたクーラントを、冷媒/クーラント熱交換器で冷媒に吸熱させることによって、第2冷媒凝縮器で空気を加熱して暖房に利用している。
【0004】
この従来技術では、各熱源のうちいずれの熱源からクーラントに吸熱させるかを、各熱源付近のクーラントの温度に基づいて選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、クーラントの温度のみに基づいて熱源を選択しているので、各熱源の発熱量の大きいときと小さいときとでクーラントへの温度変動挙動が異なり、場合によっては吸熱対象の熱源の切り替えが頻繁に起こって空調性や各熱源の耐久性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みて、吸熱の切り替えが頻繁に起こることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の車両用空調装置は、
熱媒体が循環する熱媒体回路(30)と、
熱媒体回路に配置され、熱媒体に吸熱される複数の吸熱源(36、37)と、
複数の吸熱源に対して熱媒体に吸熱させるか否かを切り替える切替部(33)と、
冷媒を吸入して圧縮し吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機から吐出された冷媒を、空調対象空間へ送風される空気に放熱させる放熱部(12)と、
放熱部で放熱された冷媒を減圧させる減圧部(16)と、
減圧部で減圧された冷媒を熱媒体からの吸熱により蒸発させる蒸発器(17)と、
複数の吸熱源のうちいずれの吸熱源で熱媒体に吸熱させるかを複数の吸熱源の温度および発熱量に基づいて決定して切替部を制御する制御部(60)とを備え、
複数の吸熱源は、第1吸熱源(36)および第2吸熱源(37)を有しており、
制御部は、
必要な熱量が不足しているか否かを判定し、
必要な熱量が不足していると判定した場合、第1吸熱源から吸熱可能な熱量が必要な熱量を上回っているか否かを判定し、
第1吸熱源から吸熱可能な熱量が必要な熱量を上回っていると判定した場合、熱媒体に吸熱させる吸熱源を第1の吸熱源に決定し、
第1吸熱源から吸熱可能な熱量が必要な熱量を上回っていないと判定した場合、熱媒体に吸熱させる吸熱源を第1吸熱源および第2吸熱源に決定する。
【0009】
これによると、温度のみならず発熱量に基づいて吸熱の切り替えを行うので、温度変動挙動を安定化でき、ひいては吸熱の切り替えが頻繁に起こることを抑制できる。
【0010】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態の車両用空調装置の全体構成図であり、冷房モードの作動状態を示している。
【
図2】一実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態の車両用空調装置の全体構成図であり、除湿暖房モードの作動状態を示している。
【
図4】一実施形態の車両用空調装置の全体構成図であり、暖房モードの作動状態を示している。
【
図5】一実施形態の車両用空調装置の制御装置が実行する制御処理を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態の車両用空調装置の作動例における吸熱源の温度変化を示すタイムチャートである。
【
図7】一実施形態の車両用空調装置の作動例における機器、冷却水および冷媒の温度変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について図に基づいて説明する。
図1に示す車両用空調装置1は、車室内空間(換言すれば、空調対象空間)を適切な温度に調整する空調装置である。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有している。
【0013】
冷凍サイクル装置10は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されている。電気自動車は、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る自動車である。ハイブリッド自動車は、エンジン(換言すれば内燃機関)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る自動車である。
【0014】
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17を備える蒸気圧縮式冷凍機である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。
【0015】
第2膨張弁16および冷却水側蒸発器17は、冷媒流れにおいて、第1膨張弁13、空気側蒸発器14および定圧弁15に対して並列に配置されている。
【0016】
冷凍サイクル装置10には、第1冷媒循環回路と第2冷媒循環回路とが形成される。第1冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第1膨張弁13、空気側蒸発器14、定圧弁15、圧縮機11の順に循環する。第2冷媒循環回路では、冷媒が圧縮機11、凝縮器12、第2膨張弁16、冷却水側蒸発器17の順に循環する。
【0017】
圧縮機11は、電池から供給される電力によって駆動される電動圧縮機であり、冷凍サイクル装置10の冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機11の電動モータは、
図2に示す制御装置60によって制御される。圧縮機11は、ベルトによって駆動される可変容量圧縮機であってもよい。
【0018】
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させる高圧側熱交換器である。凝縮器12は、圧縮機11から吐出された冷媒と冷却水とを熱交換させることにより冷媒を放熱させて冷却水を加熱する放熱部である。
【0019】
電気自動車の場合、圧縮機11および凝縮器12は、車両のモータールーム内に配置されている。モータールームは、走行用電動モータが収容される空間である。ハイブリッド自動車の場合、圧縮機11および凝縮器12は、車両のエンジンルーム内に配置されている。エンジンルームは、エンジンが収容される空間である。
【0020】
凝縮器12は、凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cを有している。凝縮器12において冷媒は凝縮部12a、レシーバ12bおよび過冷却部12cの順番に流れる。
【0021】
凝縮部12aは、圧縮機11から吐出された高圧側冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させることによって高圧側冷媒を凝縮させる。レシーバ12bは、凝縮器12から流出した高圧冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒を下流側へ流出させるとともに、サイクルの余剰冷媒を貯える気液分離部である。過冷却部12cは、レシーバ12bから流出した液相冷媒と高温冷却水回路20の冷却水とを熱交換させて液相冷媒を過冷却する。
【0022】
高温冷却水回路20の冷却水は、熱媒体としての流体である。高温冷却水回路20の冷却水は高温熱媒体である。本実施形態では、高温冷却水回路20の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。高温冷却水回路20は、冷却水が循環する第1循環回路である。高温冷却水回路20は、高温熱媒体が循環する高温熱媒体回路である。
【0023】
第1膨張弁13は、レシーバ12bから流出した液相冷媒を減圧膨張させる第1減圧部である。第1膨張弁13は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
【0024】
第1膨張弁13は、空気側蒸発器14に冷媒が流れる状態と冷媒が流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第1膨張弁13は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0025】
第1膨張弁13は機械式の温度膨張弁であってもよい。第1膨張弁13が機械式の温度膨張弁である場合、第1膨張弁13側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第1膨張弁13とは別個に設けられている必要がある。
【0026】
空気側蒸発器14は、第1膨張弁13から流出した冷媒と車室内へ送風される空気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発器である。空気側蒸発器14では、冷媒が車室内へ送風される空気から吸熱する。空気側蒸発器14は、車室内へ送風される空気を冷却する空気冷却器である。
【0027】
定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力を所定値に維持する圧力調整部である。定圧弁15は、機械式の可変絞り機構で構成されている。具体的には、定圧弁15は、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を下回ると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を減少させ、空気側蒸発器14の出口側における冷媒の圧力が所定値を超えると冷媒通路の通路面積(すなわち絞り開度)を増加させる。定圧弁15で圧力調整された気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0028】
サイクルを循環する循環冷媒流量の変動が少ない場合等には、定圧弁15に代えて、オリフィス、キャピラリチューブ等からなる固定絞りを採用してもよい。
【0029】
第2膨張弁16は、凝縮器12から流出した液相冷媒を減圧膨張させる第2減圧部である。第2膨張弁16は、電気式膨張弁である。電気式膨張弁は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁16は冷媒流路を全閉可能になっている。
【0030】
第2膨張弁16は、冷却水側蒸発器17に冷媒が流れる状態と流れない状態とを切り替える冷媒流れ切替部である。第2膨張弁16は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0031】
第2膨張弁16は機械式の温度膨張弁であってもよい。第2膨張弁16が機械式の温度膨張弁である場合、第2膨張弁16側の冷媒流路を開閉する開閉弁が、第2膨張弁16とは別個に設けられている必要がある。
【0032】
冷却水側蒸発器17は、第2膨張弁16から流出した冷媒と低温冷却水回路30の冷却水とを熱交換させて冷媒を蒸発させる蒸発部である。冷却水側蒸発器17では、冷媒が低温冷却水回路30の冷却水から吸熱する。冷却水側蒸発器17は、低温冷却水回路30の冷却水を冷却する熱媒体冷却器である。冷却水側蒸発器17で蒸発した気相冷媒は圧縮機11に吸入されて圧縮される。
【0033】
低温冷却水回路30の冷却水は、熱媒体としての流体である。低温冷却水回路30の冷却水は低温熱媒体である。本実施形態では、低温冷却水回路30の冷却水として、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、または不凍液体が用いられている。低温冷却水回路30は、低温の熱媒体が循環する低温熱媒体回路である。低温冷却水回路30は、冷却水が循環する第2循環回路である。
【0034】
高温冷却水回路20には、凝縮器12、高温側ポンプ21、ヒータコア22、ラジエータ45、第1リザーブタンク24および電気ヒータ25が配置されている。
【0035】
高温側ポンプ21は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。高温側ポンプ21は電動式のポンプである。高温側ポンプ21は、吐出流量が一定となる電動式のポンプであるが、高温側ポンプ21は、吐出流量が可変な電動式のポンプであってもよい。
【0036】
ヒータコア22は、高温冷却水回路20の冷却水と車室内へ送風される空気とを熱交換させて車室内へ送風される空気を加熱する空気加熱部である。ヒータコア22では、冷却水が、車室内へ送風される空気に放熱する。ヒータコア22は、凝縮器12で加熱された冷却水の熱を利用する熱利用部である。高温冷却水回路20は、ヒータコア22に冷却水を循環させる暖房用回路である。
【0037】
ラジエータ45は、高温冷却水回路20の冷却水と外気とを熱交換させて冷却水から外気に放熱させる放熱器である。ラジエータ45は、高温冷却水回路20と低温冷却水回路30とで共通のラジエータである。
【0038】
凝縮器12および高温側ポンプ21は、凝縮器流路20aに配置されている。凝縮器流路20aは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0039】
凝縮器12における冷却水の流れ方向は、凝縮器12における冷媒の流れ方向と対向している。すなわち、凝縮器12において冷却水は、過冷却部12c、凝縮部12aの順番に流れる。
【0040】
ヒータコア22は、ヒータコア流路20bに配置されている。ヒータコア流路20bは、高温冷却水回路20の冷却水が流れる流路である。
【0041】
ラジエータ45は、ラジエータ流路20cに配置されている。ラジエータ流路20cは、高温冷却水回路20の冷却水がヒータコア22に対して並列に流れる流路である。
【0042】
高温冷却水回路20の分岐部20dには、第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bが配置されている。分岐部20dは、凝縮器流路20aからヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとに分岐する分岐部である。
【0043】
第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bは、高温冷却水回路20における冷却水の流路を切り替える流路切替部である。第1開閉弁26aは、ヒータコア流路20bを開閉する。第1開閉弁26aは、ヒータコア流路20bの開度を調整する。第2開閉弁26bは、ラジエータ流路20cを開閉する。第2開閉弁26bは、ラジエータ流路20cの開度を調整する。第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bは、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとの開度比を調整する。第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bは、ヒータコア22を流れる冷却水とラジエータ45を流れる冷却水との流量比を調整する。
【0044】
高温冷却水回路20の合流部20eの下流側かつ高温側ポンプ21の上流側には、第1リザーブタンク24が配置されている。合流部20eは、ヒータコア流路20bとラジエータ流路20cとから凝縮器流路20aに合流する合流部である。
【0045】
第1リザーブタンク24は、余剰冷却水を貯留する貯留部である。第1リザーブタンク24に余剰冷却水を貯留しておくことによって、各流路を循環する冷却水の液量の低下を抑制することができる。
【0046】
第1リザーブタンク24は、密閉式リザーブタンクまたは大気開放式リザーブタンクである。密閉式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を所定圧力にするリザーブタンクである。大気開放式リザーブタンクは、蓄えている冷却水の液面における圧力を大気圧にするリザーブタンクである。
【0047】
第1リザーブタンク24は、冷却水中に混在する気泡を冷却水から分離させる気液分離機能を有している。
【0048】
電気ヒータ25は、凝縮器12の下流側かつ分岐部20dの上流側に配置されている。電気ヒータ25は、電池から電力が供給されることによってジュール熱を発生して冷却水を加熱する熱源機器である。電気ヒータ25は第2熱源である。電気ヒータ25は、高温冷却水回路20の冷却水を補助的に加熱する。電気ヒータ25は、制御装置60によって制御される。
【0049】
低温冷却水回路30には、低温側ポンプ31、冷却水側蒸発器17、ラジエータ45および第2リザーブタンク32が配置されている。低温側ポンプ31は、冷却水を吸入して吐出する熱媒体ポンプである。低温側ポンプ31は電動式のポンプである。
【0050】
低温冷却水回路30の一部の流路は、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cと共通になっている。ラジエータ45は、低温冷却水回路30のうち高温冷却水回路20のラジエータ流路20cと共通の流路の部分に配置されている。したがって、ラジエータ45には、高温冷却水回路20のラジエータ流路20cの冷却水と、低温冷却水回路30の冷却水の両方が流通可能になっている。
【0051】
ラジエータ45および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時にはラジエータ45に走行風を当てることができるようになっている。
【0052】
室外送風機40は、ラジエータ45へ向けて外気を送風する外気送風部である。室外送風機40は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室外送風機40の作動は、制御装置60によって制御される。
【0053】
ラジエータ45および室外送風機40は、車両の最前部に配置されている。従って、車両の走行時にはラジエータ45に走行風を当てることができるようになっている。
【0054】
第2リザーブタンク32は、ラジエータ45の下流側かつ低温側ポンプ31の上流側に配置されている。第2リザーブタンク32は、第1リザーブタンク24と同様の構造および機能を有している。
【0055】
空気側蒸発器14およびヒータコア22は、室内空調ユニット50の空調ケーシング51に収容されている。室内空調ユニット50は、車室内前部の図示しない計器盤の内側に配置されている。空調ケーシング51は、空気通路を形成する空気通路形成部材である。
【0056】
ヒータコア22は、空調ケーシング51内の空気通路において、空気側蒸発器14の空気流れ下流側に配置されている。空調ケーシング51には、内外気切替箱52と室内送風機53とが配置されている。
【0057】
内外気切替箱52は、空調ケーシング51内の空気通路に内気と外気とを切替導入する内外気切替部である。室内送風機53は、内外気切替箱52を通して空調ケーシング51内の空気通路に導入された内気および外気を吸入して送風する。室内送風機53の作動は、制御装置60によって制御される。
【0058】
空調ケーシング51内の空気通路において空気側蒸発器14とヒータコア22との間には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、空気側蒸発器14を通過した冷風のうちヒータコア22に流入する冷風と冷風バイパス通路55を流れる冷風との風量割合を調整する。
【0059】
冷風バイパス通路55は、空気側蒸発器14を通過した冷風がヒータコア22をバイスして流れる空気通路である。
【0060】
エアミックスドア54は、空調ケーシング51に対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合されたドア基板部とを有する回転式ドアである。エアミックスドア54の開度位置を調整することによって、空調ケーシング51から車室内に吹き出される空調風の温度を所望温度に調整できる。
【0061】
エアミックスドア54の回転軸は、サーボモータ56によって駆動される。エアミックスドア用サーボモータ56の作動は、制御装置60によって制御される。
【0062】
エアミックスドア54は、空気流れと略直交する方向にスライド移動するスライドドアであってもよい。スライドドアは、剛体で形成された板状のドアであってもよいし。可撓性を有するフィルム材で形成されたフィルムドアであってもよい。
【0063】
エアミックスドア54によって温度調整された空調風は、空調ケーシング51に形成された吹出口57から車室内へ吹き出される。
【0064】
低温冷却水回路30は、四方弁33、第1吸熱流路34および第2吸熱流路35を有している。四方弁33は、低温冷却水回路30において冷却水側蒸発器17の出口側かつラジエータ45の入口側に配置されている。四方弁33には第1吸熱流路34および第2吸熱流路35が接続されている。
【0065】
四方弁33は、低温冷却水回路30における冷却水の流路を切り替える流路切替部である。四方弁33は、第1吸熱流路34と第2吸熱流路35とを開閉する。第1吸熱流路34および第2吸熱流路35は、低温冷却水回路30の冷却水の流れにおいて、ラジエータ45と並列に配置されている。第1吸熱流路34および第2吸熱流路35は、低温冷却水回路30の冷却水の流れにおいて、互いに並列に配置されている。
【0066】
第1吸熱流路34には第1吸熱対象機器群36が配置されている。第2吸熱流路35には第2吸熱対象機器群37が配置されている。第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37に含まれる各機器は、作動に伴って発熱する発熱機器であり、冷却水に吸熱される吸熱源である。
【0067】
本例では、第1吸熱対象機器群36は電池36aおよび充電器36bであり、第2吸熱対象機器群37はトランスアクスル37a、モータジェネレータ37bおよびインバータ37cである。
【0068】
電池36aは、走行用電動モータ、圧縮機11、種々の補機類に電力を供給する。充電器36bは、電池36aを充電するために用いられる。
【0069】
トランスアクスル37aは、トランスミッションやディファレンシャルギア等を一体化させた動力伝達機構である。モータジェネレータ37bは、電力が供給されることによって走行用の駆動力を出力するとともに、減速時等には回生電力を発生させる。インバータ37cは、電池36aから供給された直流電流を交流電流に変換してモータジェネレータ37bに出力する。
【0070】
第1吸熱対象機器群36は、第2吸熱対象機器群37と比較して、保証温度範囲が狭く、かつ容易に発熱する機器であることが好ましい。保証温度範囲は、機器の作動と耐久性が保証される温度の範囲である。
【0071】
図2に示す制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置60は、ROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置60の出力側には各種制御対象機器が接続されている。制御装置60は、各種制御対象機器の作動を制御する制御部である。
【0072】
制御装置60によって制御される制御対象機器は、圧縮機11、第1膨張弁13、第2膨張弁16、第1開閉弁26a、第2開閉弁26b、室外送風機40、室内送風機53、エアミックスドア用サーボモータ56および四方弁33等である。
【0073】
制御装置60のうち圧縮機11の電動モータを制御するソフトウェアおよびハードウェアは、冷媒吐出能力制御部である。制御装置60のうち第1膨張弁13および第2膨張弁16を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、絞り制御部である。
【0074】
制御装置60のうち第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bおよび第2三方弁83を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、三方弁制御部である。制御装置60、第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bおよび第2三方弁83は、冷却水の流路を切り替える流路切替部である。
【0075】
制御装置60のうち室外送風機40を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、外気送風能力制御部である。制御装置60のうち室内送風機53を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、空気送風能力制御部である。制御装置60のうちエアミックスドア用サーボモータ56を制御するソフトウェアおよびハードウェアは、風量割合制御部である。
【0076】
制御装置60の入力側には、種々の制御用センサ群が接続されている。種々の制御用センサ群は、内気温度センサ61、外気温度センサ62、日射量センサ63、高温冷却水温度センサ64、ラジエータ温度センサ65、機器温度センサ群66等である。
【0077】
内気温度センサ61は車室内温度Trを検出する。外気温度センサ62は外気温Tamを検出する。日射量センサ63は車室内の日射量Tsを検出する。
【0078】
高温冷却水温度センサ64は、高温冷却水回路20の冷却水の温度TWHを検出する。例えば、高温冷却水温度センサ64は、電気ヒータ25から流出した冷却水の温度を検出する。ラジエータ温度センサ65は、ラジエータ45に流入する冷却水の温度TWRを検出する。
【0079】
機器温度センサ群66は、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37の温度を検出するセンサ群であり、電池温度センサ、充電器温度センサ、トランスアクスル温度センサ、モータジェネレータ温度センサおよびインバータ温度センサを含んでいる。
【0080】
電池温度センサは電池36aの温度を検出する。充電器温度センサは充電器36bの温度を検出する。トランスアクスル温度センサはトランスアクスル37aの温度を検出する。モータジェネレータ温度センサはモータジェネレータ37bの温度を検出する。インバータ温度センサはインバータ37cの温度を検出する。
【0081】
制御装置60の入力側には、図示しない各種操作スイッチが接続されている。各種操作スイッチは操作パネル70に設けられており、乗員によって操作される。操作パネル70は車室内前部の計器盤付近に配置されている。制御装置60には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0082】
各種操作スイッチは、オートスイッチ、エアコンスイッチ、温度設定スイッチ等である。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転の設定および解除を行うスイッチである。エアコンスイッチは、室内空調ユニット50にて空気の冷却を行うか否かを設定するスイッチである。温度設定スイッチは、車室内の設定温度を設定するスイッチである。
【0083】
次に、上記構成における作動を説明する。以下では、制御装置60は、操作パネル70のオートスイッチが乗員によってオンされている場合の作動について説明する。操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオンされている場合、目標吹出温度TAO等に基づいて運転モードを切り替える。運転モードとしては、少なくとも冷房モードおよび除湿暖房モードがある。
【0084】
目標吹出温度TAOは、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である。制御装置60は、目標吹出温度TAOを以下の数式に基づいて算出する。
【0085】
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
この数式において、Tsetは操作パネル70の温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温度センサ61によって検出された内気温、Tamは外気温度センサ62によって検出された外気温、Tsは日射量センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0086】
制御装置60は、目標吹出温度TAOの低温域では冷房モードに切り替え、目標吹出温度TAOの高温域では除湿暖房モードに切り替える。
【0087】
除湿暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿し、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気をヒータコア22で加熱することによって車室内を除湿暖房する。
【0088】
制御装置60は、操作パネル70のエアコンスイッチが乗員によってオフされており且つ目標吹出温度TAOが高温域にある場合、暖房モードに切り替える。
【0089】
暖房モードでは、車室内へ送風される空気を空気側蒸発器14で冷却除湿することなくヒータコア22で加熱することによって車室内を暖房する。
【0090】
次に、冷房モード、除湿暖房モードおよび暖房モードにおける作動について説明する。冷房モード、除湿暖房モードおよび暖房モードでは、制御装置60は、目標吹出温度TAOや上述のセンサ群の検出信号等に基づいて、制御装置60に接続された各種制御機器の作動状態(換言すれば、各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
【0091】
(1)冷房モード
冷房モードでは、制御装置60は、圧縮機11および高温側ポンプ21を作動させる。冷房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を絞り開度で開弁させる。冷房モードでは、制御装置60は、第1開閉弁26aを開弁させ、第2開閉弁26bを開弁させる。冷房モードでは、制御装置60は、ラジエータ45側への冷却水流路が閉じられるように四方弁33を制御する。
【0092】
これにより、冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、
図1の太実線に示すように冷媒が流れる。すなわち、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、高温冷却水回路20の冷却水に放熱する。これにより、凝縮器12で冷媒が冷却されて凝縮する。
【0093】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却される。
【0094】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0095】
このように、冷房モードでは、空気側蒸発器14にて低圧冷媒に空気から吸熱させて、冷却された空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0096】
冷房モード時の高温冷却水回路20では、
図1の太実線に示すようにラジエータ45に高温冷却水回路20の冷却水が循環してラジエータ45で冷却水から外気に放熱される。
【0097】
このとき、ヒータコア22にも高温冷却水回路20の冷却水が循環するが、ヒータコア22における冷却水から空気への放熱量はエアミックスドア54によって調整される。
【0098】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54によって温度調整された空調風が目標吹出温度TAOとなるように決定される。具体的には、エアミックスドア54の開度が、目標吹出温度TAO、空気側蒸発器14の温度、および高温冷却水回路20の冷却水の温度TW等に基づいて決定される。
【0099】
(2)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および低温側ポンプ31を作動させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13および第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、第1開閉弁26aを開弁させ、第2開閉弁26bを閉弁させる。除湿暖房モードでは、制御装置60は、ラジエータ45側への冷却水流路が開けられるように四方弁33を制御する。
【0100】
除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図3の太実線に示すように冷媒が流れる。すなわち、冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒は、凝縮器12へ流入して、高温冷却水回路20の冷却水と熱交換して放熱する。これにより、高温冷却水回路20の冷却水が加熱される。
【0101】
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13へ流入して、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、空気側蒸発器14に流入し、車室内へ送風される空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が冷却除湿される。
【0102】
そして、空気側蒸発器14から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0103】
これと同時に、冷凍サイクル装置10では、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0104】
そして、冷却水側蒸発器17から流出した冷媒は、圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
【0105】
除湿暖房モード時の高温冷却水回路20では、
図3の太実線に示すように凝縮器12とヒータコア22との間で冷却水が循環するが、
図3の破線に示すようにラジエータ45には冷却水が循環しない。
【0106】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が
図3の実線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0107】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14で冷却除湿された空気がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0108】
このとき、第2開閉弁26bがラジエータ流路20cを閉じているので、ラジエータ45に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、ラジエータ45で冷却水から外気に放熱されない。
【0109】
除湿暖房モード時の低温冷却水回路30では、
図3の太実線に示すようにラジエータ45に低温冷却水回路30の冷却水が循環してラジエータ45にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0110】
このように、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0111】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿された空気が加熱される。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
【0112】
(3)暖房モード
暖房モードでは、制御装置60は、圧縮機11、高温側ポンプ21および低温側ポンプ31を作動させる。暖房モードでは、制御装置60は、第1膨張弁13を閉弁させ、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させる。暖房モードでは、制御装置60は、第1開閉弁26aを開弁させ、第2開閉弁26bを閉弁させる。暖房モードでは、制御装置60は、ラジエータ45側への冷却水流路が開けられるように四方弁33を制御する。
【0113】
暖房モードの冷凍サイクル装置10では、
図4の太実線に示すように冷媒が流れる。すなわち、冷凍サイクル装置10では、凝縮器12から流出した冷媒は、第2膨張弁16へ流入して、第2膨張弁16にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁16にて減圧された低圧冷媒は、冷却水側蒸発器17に流入し、低温冷却水回路30の冷却水から吸熱して蒸発する。これにより、低温冷却水回路30の冷却水が冷却される。
【0114】
このとき、第1膨張弁13が閉弁されているので、空気側蒸発器14に冷媒が流れない。したがって、空気側蒸発器14で空気が冷却除湿されない。
【0115】
暖房モード時の高温冷却水回路20では、
図4の太実線に示すように凝縮器12とヒータコア22との間で冷却水が循環するが、
図4の破線に示すようにラジエータ45には冷却水が循環しない。
【0116】
エアミックスドア54のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア54が
図4の実線位置に位置してヒータコア22の空気通路を全開し、空気側蒸発器14を通過した送風空気の全流量がヒータコア22を通過するように決定される。
【0117】
これにより、ヒータコア22で高温冷却水回路20の冷却水から、車室内へ送風される空気に放熱される。したがって、空気側蒸発器14を通過した空気(すなわち、空気側蒸発器14で冷却除湿されていない空気)がヒータコア22で加熱されて車室内に吹き出される。
【0118】
このとき、第1開閉弁26aおよび第2開閉弁26bがラジエータ流路20cを閉じているので、ラジエータ45に高温冷却水回路20の冷却水が循環しない。したがって、ラジエータ45で冷却水から外気に放熱されない。
【0119】
暖房モード時の低温冷却水回路30では、
図4の太実線に示すようにラジエータ45に低温冷却水回路30の冷却水が循環してラジエータ45にて低温冷却水回路30の冷却水に外気から吸熱される。
【0120】
このように、暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を凝縮器12にて高温冷却水回路20の冷却水に放熱させ、高温冷却水回路20の冷却水が有する熱をヒータコア22にて空気に放熱させ、ヒータコア22で加熱された空気を車室内へ吹き出すことができる。
【0121】
ヒータコア22では、空気側蒸発器14にて冷却除湿されることなく空気側蒸発器14にてを通過した空気を加熱する。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0122】
上記運転モードにおいて、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37のうち少なくとも一つの機器を冷却する必要がある場合、低温側ポンプ31を作動させ、第2膨張弁16を絞り開度で開弁させるとともに、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37のうち冷却が必要な機器に冷却水が循環するように四方弁33が制御される。
【0123】
これにより、冷却水側蒸発器17で冷却された冷却水によって、冷却が必要な機器が冷却される。
【0124】
除湿暖房モードまたは暖房モードでは、制御装置60は、
図5のフローチャートに示す制御処理を実行する。この制御処理は、制御装置60が実行する制御プログラムのサブルーチンとして実行される。
【0125】
ステップS100では、暖房に必要な熱量が不足しているか否かが判定される。ステップS100にて、暖房に必要な熱量(以下、必要暖房熱量と言う。)が不足していないと判定された場合、処置を行うことなくメインルーチンへ戻る。
【0126】
ステップS100にて、暖房に必要な熱量が不足していると判定された場合、ステップS110へ進み、第1吸熱対象機器群36から吸熱すれば必要暖房熱量の不足が解消されるか否かが判定される。すなわち、第1吸熱対象機器群36から吸熱可能な熱量が必要暖房熱量を上回っているか否かが判定される。
【0127】
例えば、必要暖房熱量は、室内送風機53の送風量、空気側蒸発器14の吸込空気温度、および目標吹出温度TAOに基づいて算出される。例えば、空気側蒸発器14の吸込空気温度は、内外気切替箱52における内気と外気の導入割合と、車室内温度Trと、外気温Tamとに基づいて算出される。
【0128】
第1吸熱対象機器群36から吸熱可能な熱量は、第1吸熱対象機器群36の各機器における発熱量と現在の温度と保証温度範囲の下限値とに基づいて算出される。すなわち、機器の温度を保証温度範囲内に保ちながら吸熱できる熱量が、第1吸熱対象機器群36から吸熱可能な熱量として算出される。
【0129】
ステップS110にて、第1吸熱対象機器群36から吸熱すれば必要暖房熱量の不足が解消されると判定された場合、ステップS120へ進み、第1吸熱対象機器群36から吸熱する運転モードに切り替えられる。
【0130】
ステップS110にて、第1吸熱対象機器群36から吸熱しても必要暖房熱量の不足が解消されないと判定された場合、ステップS130へ進み、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37から吸熱すれば必要暖房熱量の不足が解消されるか否かが判定される。すなわち、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37から吸熱可能な熱量が必要暖房熱量を上回っているか否かが判定される。第2吸熱対象機器群37から吸熱可能な熱量は、第1吸熱対象機器群36から吸熱可能な熱量と同様に算出される。
【0131】
ステップS130にて、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37から吸熱すれば必要暖房熱量の不足が解消されると判定された場合、ステップS140へ進み、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37から吸熱する運転モードに切り替えられる。
【0132】
このように、吸熱する機器を発熱量に基づいて切り替えるので、
図6に示すように、吸熱する機器を温度のみに基づいて切り替える場合と比較して切り替えの頻度を低減できる。その結果、切り替えが頻繁に起こることによる四方弁33の耐久性の低下や各機器に与えるヒートショックや空調への悪影響を低減できる。
【0133】
図7に示すように、吸熱対象機器から吸熱することにより冷却水の温度が上昇するので、暖房に使用可能な熱量が増加する。しかも、吸熱対象機器から吸熱することにより機器の温度が低下するので、機器の作動効率が悪化して機器の発熱量が大きくなる。そのため、暖房に使用可能な熱量が一層増加する。
【0134】
本実施形態では、制御装置60は、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37のうちいずれの吸熱対象機器群で冷却水に吸熱させるかを第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37の温度および発熱量に基づいて決定して四方弁33を制御する。
【0135】
これによると、温度のみならず発熱量に基づいて吸熱の切り替えを行うので、温度変動挙動を安定化でき、ひいては吸熱の切り替えが頻繁に起こることを抑制できる。
【0136】
本実施形態では、制御装置60は、吸熱対象機器群の温度が保証温度範囲の下限値以上になり、かつ車室内空間の暖房に必要な熱量が得られるように、冷却水に吸熱させる吸熱対象機器群を決定する。これにより、吸熱の切り替えを適切に行うことができる。
【0137】
本実施形態では、制御装置60は、第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37のそれぞれにおける保証温度範囲および発熱の容易さに基づいて、いずれの吸熱対象機器群から冷却水に吸熱させる際の優先順位を決定する。これにより、冷却水に吸熱させる吸熱対象機器群を適切に決定できる。
【0138】
本実施形態では、制御装置60は、電池36aの発熱量を、電池36aの出力電流の値に基づいて推定する。これにより、電池36aの発熱量に基づいて吸熱の切り替えを適切に行うことができる。
【0139】
本実施形態では、制御装置60は、走行用補機である第2吸熱対象機器群37の発熱量を、車両の走行状態に基づいて推定する。これにより、第2吸熱対象機器群37の発熱量に基づいて吸熱の切り替えを適切に行うことができる。
【0140】
(他の実施形態)
上記実施形態を例えば以下のように種々変形可能である。
【0141】
(1)上記実施形態では、熱媒体として冷却水を用いているが、油などの各種媒体を熱媒体として用いてもよい。熱媒体として、ナノ流体を用いてもよい。ナノ流体とは、粒子径がナノメートルオーダーのナノ粒子が混入された流体のことである。
【0142】
(2)上記実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒としてフロン系冷媒を用いているが、冷媒の種類はこれに限定されるものではなく、二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を用いてもよい。
【0143】
また、上記実施形態の冷凍サイクル装置10は、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成しているが、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0144】
(3)上記実施形態では、吸熱源として第1吸熱対象機器群36および第2吸熱対象機器群37を有しているが、3つ以上の吸熱対象機器群を有していてもよい。3つ以上の吸熱対象機器群は、低温冷却水回路30の冷却水の流れにおいて互いに並列に配置されていて、3つ以上の吸熱対象機器群のそれぞれに対して冷却水が流れる状態と流れない状態とを切替可能になっていればよい。
【0145】
3つ以上の吸熱対象機器群に対して、冷却水に吸熱させる吸熱対象機器群を、予め定められた優先順位に基づいて決定すればよい。
【0146】
冷却水に吸熱させる吸熱対象機器群を、3つ以上の吸熱対象機器群から個別に組み合わせて決定してもよい。
【符号の説明】
【0147】
11 圧縮機
12 凝縮器(放熱部)
16 第2膨張弁(減圧部)
17 冷却水側蒸発器(蒸発部)
26 第1三方弁(流路切替部)
30 低温冷却水回路(熱媒体回路)
33 四方弁(切替部)
36 第1吸熱対象機器群(吸熱源)
37 第2吸熱対象機器群(吸熱源)
60 制御装置(制御部)