(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車載機器診断装置、車載機器診断装置を備える車両、車載機器診断方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B60R16/02 660N
(21)【出願番号】P 2021082605
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 理史
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083917(JP,A)
【文献】特開2017-134717(JP,A)
【文献】特開2009-081948(JP,A)
【文献】特開2009-126299(JP,A)
【文献】特開2009-292330(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010070(WO,A1)
【文献】特開2016-059274(JP,A)
【文献】特開2001-282302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリに接続された
1本の特定電力線と、
前記特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、前記各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させる状態切替部と、
前記特定電力線に直列に接続され、前記電力線が1本のみ前記特定電力線に接続されている場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより前記電力線の電流値を測定し、前記電力線が前記特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより得られた前記各電力線の電流値の合計値を測定する電流測定部と、
前記状態切替部が一つの前記電力線である対象電力線に接続された複数の前記ECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときに前記電流測定部によって測定された前記対象電力線の電流値に基づいて、前記各ECUが異常状態にあるか否かを判定する異常判定部と、
を備え、
単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、前記対象電力線に接続された複数の前記ECU毎に設定された優先順位に基づいて、前記各ECUが前記異常状態にあるか否かを前記異常判定部が判定する車載機器診断装置。
【請求項2】
前記対象電力線に接続された全ての前記ECUが、前記第1状態であるウェイク状態と、前記ウェイク状態にあるときより消費電力が少ない前記第2状態であるスリープ状態と、に移行可能である請求項1に記載の車載機器診断装置。
【請求項3】
前記対象電力線に接続された全ての前記ECUが、前記第1状態であるアイドル状態と、前記アイドル状態にあるときより消費電力が多い前記第2状態である非アイドル状態と、に移行可能である請求項1に記載の車載機器診断装置。
【請求項4】
前記対象電力線に接続された一つの前記ECUである対象ECUに前記状態移行信号が送信されたときの前記対象電力線の電流値の変化量が所定のECU診断用閾値未満のときに、前記対象ECUが前記異常状態にあると前記異常判定部が判定する請求項1~3の何れか1項に記載の車載機器診断装置。
【請求項5】
前記対象電力線に接続された全ての前記ECUが、前記第1状態であるウェイク状態と、前記ウェイク状態にあるときより消費電力が少ない前記第2状態であるスリープ状態と、に移行可能であり、
前記電流測定部によって測定された電流値に基づいて、前記異常判定部が、前記対象電力線に電流値に関する異常があるか否かを判定し、
電流値に関して異常があると判定された前記対象電力線に接続された全ての前記ECUについて、前記異常判定部が前記異常状態にあるか否かを判定する請求項1又は請求項4に記載の車載機器診断装置。
【請求項6】
前記各ECUに接続された少なくとも一つのバスと、
前記各ECUから前記バスを介して送信される信号に基づいて、前記各ECUが前記第1状態と前記第2状態のいずれにあるかを判定する状態判定部と、
を備え、
前記異常判定部が、前記状態判定部によって自身に接続された全ての前記ECUが前記第2状態にあると判定され且つ電流値が所定の電力線診断用閾値より大きい前記電力線が、電流値に関して異常がある前記対象電力線であると判定する請求項5に記載の車載機器診断装置。
【請求項7】
前記異常判定部によって前記異常状態にあると判定された前記各ECUを、前記電力線毎に定められたリセット方法に基づいてリセットするリセット部を備える
請求項1~6の何れか1項に記載の車載機器診断装置。
【請求項8】
一つの前記ECUに対する前記異常判定部による判定及び前記リセット部によるリセットが行われた後に、リセットされた前記ECUと同じ前記対象電力線に接続された別の前記ECUに対する前記異常判定部による判定及び前記リセット部によるリセットが行われる
請求項7に記載の車載機器診断装置。
【請求項9】
前記対象電力線に接続された一つの前記ECUが前記異常判定部によって前記異常状態にあると判定されたときに、前記リセット部が、前記対象電力線に接続された全ての前記ECUを同時にリセットする請求項7に記載の車載機器診断装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の車載機器診断装置を備える車両。
【請求項11】
車両に搭載されたバッテリに接続された
1本の特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、前記各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させ、
前記特定電力線に直列に接続され、前記電力線が1本のみ前記特定電力線に接続されている場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより前記電力線を測定し、前記電力線が前記特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより得られた前記各電力線の電流値の合計値を測定し、
一つの前記電力線である対象電力線に接続された複数の前記ECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときの前記対象電力線の電流値に基づいて、前記各ECUが異常状態にあるか否かを
判定し、
単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、前記対象電力線に接続された複数の前記ECU毎に設定された優先順位に基づいて、前記各ECUが前記異常状態にあるか否かを判定する、
車載機器診断方法。
【請求項12】
車両に搭載されたバッテリに接続された
1本の特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、前記各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させる処理、
前記特定電力線に直列に接続され、前記電力線が1本のみ前記特定電力線に接続されている場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより前記電力線を測定し、前記電力線が前記特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより得られた前記各電力線の電流値の合計値を測定する処理、
一つの前記電力線である対象電力線に接続された複数の前記ECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときの前記対象電力線の電流値に基づいて、前記各ECUが異常状態にあるか否かを
判定する処理、及び
単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、前記対象電力線に接続された複数の前記ECU毎に設定された優先順位に基づいて、前記各ECUが前記異常状態にあるか否かを判定する処理、
を車載機器診断装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器診断装置、車載機器診断装置を備える車両、車載機器診断方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両に設けられたバッテリと、バッテリに接続された複数の電力線と、各電力線に接続されたECUと、各ECUが接続されたバスと、電力線及びバスと接続された制御装置と、を備える車載機器診断装置が開示されている。
【0003】
この車載機器診断装置の制御装置は、各電力線を流れる暗電流の大きさに基づいて、各電力線に接続されたECUが異常状態にあるか否かを判定する。より詳細には、ECUからバスへ送信された信号に基づいて、スリープ状態にあると制御装置によって判定されたECUが、実際にはウェイク状態にあるか否かを、制御装置が暗電流の大きさに基づいて判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの電力線に接続された複数のECUのうちの一つのECUが異常状態にある場合、上記特許文献1の制御装置は、この電力線に接続された少なくとも一つのECUが異常状態にあることを判定できる。しかし制御装置は、異常状態にあるECUを特定できない。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、一つの電力線に接続された複数のECUの中の何れかのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを特定できる車載機器診断装置、車載機器診断装置を備える車両、車載機器診断方法及びプログラムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の車載機器診断装置は、車両に搭載されたバッテリに接続された1本の特定電力線と、前記特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、前記各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させる状態切替部と、前記特定電力線に直列に接続され、前記電力線が1本のみ前記特定電力線に接続されている場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより前記電力線を測定し、前記電力線が前記特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより得られた前記各電力線の電流値の合計値を測定する電流測定部と、前記状態切替部が一つの前記電力線である対象電力線に接続された複数の前記ECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときに前記電流測定部によって測定された前記対象電力線の電流値に基づいて、前記各ECUが異常状態にあるか否かを判定する異常判定部と、を備え、単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、前記対象電力線に接続された複数の前記ECU毎に設定された優先順位に基づいて、前記各ECUが前記異常状態にあるか否かを前記異常判定部が判定する。
【0008】
請求項1に記載の車載機器診断装置の状態切替部は、車両に搭載されたバッテリに接続された1本の特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させる。さらに特定電力線に直列に接続され電流測定部が、電力線が1本のみ特定電力線に接続されている場合は、特定電力線の電流値を測定することにより電力線を測定し、電力線が特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、特定電力線の電流値を測定することにより得られた各電力線の電流値の合計値を測定する。
【0009】
さらに、異常判定部が、状態切替部が一つの電力線である対象電力線に接続された複数のECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときに電流測定部によって測定された対象電力線の電流値に基づいて、各ECUが異常状態にあるか否かを判定する。さらに、異常判定部が、単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、対象電力線に接続された複数のECU毎に設定された優先順位に基づいて、各ECUが異常状態にあるか否かを判定する。従って、請求項1に記載の車載機器診断装置は、一つの電力線に接続された複数のECUの中の何れのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを特定できる。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項1記載の発明において、前記対象電力線に接続された全ての前記ECUが、前記第1状態であるウェイク状態と、前記ウェイク状態にあるときより消費電力が少ない前記第2状態であるスリープ状態と、に移行可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明では、一つの電力線に接続され且つウェイク状態とスリープ状態とに移行可能な複数のECUの中の何れかのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを特定できる。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項1の発明において、前記対象電力線に接続された全ての前記ECUが、前記第1状態であるアイドル状態と、前記アイドル状態にあるときより消費電力が多い前記第2状態である非アイドル状態と、に移行可能である。
【0013】
請求項3に記載の発明では、一つの電力線に接続され且つアイドル状態と非アイドル状態とに移行可能な複数のECUの中の何れかのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを特定できる。
【0014】
請求項4に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記対象電力線に接続された一つの前記ECUである対象ECUに前記状態移行信号が送信されたときの前記対象電力線の電流値の変化量が所定のECU診断用閾値未満のときに、前記対象ECUが前記異常状態にあると前記異常判定部が判定する。
【0015】
請求項4に記載の発明では、対象電力線に接続された一つのECUである対象ECUに状態移行信号が送信されたときの対象電力線の電流値の変化量がECU診断用閾値未満のときに、対象ECUが異常状態にあると異常判定部が判定する。従って、請求項4に記載の車載機器診断装置は、一つの電力線に接続された複数のECUの中の何れかのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを正確に特定できる。
【0016】
請求項5に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項1又は請求項4の発明において、前記対象電力線に接続された全ての前記ECUが、前記第1状態であるウェイク状態と、前記ウェイク状態にあるときより消費電力が少ない前記第2状態であるスリープ状態と、に移行可能であり、前記電流測定部によって測定された電流値に基づいて、前記異常判定部が、前記対象電力線に電流値に関する異常があるか否かを判定し、電流値に関して異常があると判定された前記対象電力線に接続された全ての前記ECUについて、前記異常判定部が異常状態にあるか否かを判定する。
【0017】
請求項5に記載の発明では、電流測定部によって測定された電流値に基づいて、異常判定部が、対象電力線に電流値に関する異常があるか否かを判定する。さらに、電流値に関して異常があると判定された対象電力線に接続された全てのECUについて、異常判定部が異常状態にあるか否かを判定する。従って、請求項5に記載の車載機器診断装置は、電流値に関して異常がある対象電力線に接続された複数のECUの中の何れかのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを正確に特定できる。
【0018】
請求項6に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項5記載の発明において、前記各ECUに接続された少なくとも一つのバスと、前記各ECUから前記バスを介して送信される信号に基づいて、前記各ECUが前記第1状態と前記第2状態のいずれにあるかを判定する状態判定部と、を備え、前記異常判定部が、前記状態判定部によって自身に接続された全ての前記ECUが前記第2状態にあると判定され且つ電流値が所定の電力線診断用閾値より大きい前記電力線が、電流値に関して異常がある前記対象電力線であると判定する。
【0019】
請求項6に記載の発明では、状態判定部が、各ECUからバスを介して送信される信号に基づいて、各ECUが第1状態と第2状態のいずれにあるかを判定する。さらに異常判定部が、状態判定部によって自身に接続された全てのECUが第2状態にあると判定され且つ電流値が電力線診断用閾値より大きい電力線が、電流値に関して異常がある対象電力線であると判定する。従って、請求項6に記載の車載機器診断装置は、電力線が複数存在する場合に、何れの電力線が対象電力線であるかを正確に特定できる。
【0022】
請求項7に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項1~6の何れか1項に記載の発明において、前記異常判定部によって前記異常状態にあると判定された前記各ECUを、前記電力線毎に定められたリセット方法に基づいてリセットするリセット部を備える。
【0023】
請求項7に記載の発明では、異常判定部によって異常状態にあると判定された各ECUを、リセット部が電力線毎に定められたリセット方法に基づいてリセットする。従って、請求項8に記載の車載機器診断装置は、異常判定部によって異常状態にあると判定された各ECUをリセットできる。
【0024】
請求項8に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項7記載の発明において、一つの前記ECUに対する前記異常判定部による判定及び前記リセット部によるリセットが行われた後に、リセットされた前記ECUと同じ前記対象電力線に接続された別の前記ECUに対する前記異常判定部による判定及び前記リセット部によるリセットが行われる。
【0025】
請求項8に記載の発明では、対象電力線に接続された複数のECUの少なくとも一つが異常状態にある場合に、異常状態にあると判定されたECUの異常状態が長時間に渡って放置されることが防止される。
【0026】
請求項9に記載の発明に係る車載機器診断装置は、請求項7記載の発明において、前記対象電力線に接続された一つの前記ECUが前記異常判定部によって前記異常状態にあると判定されたときに、前記リセット部が、前記対象電力線に接続された全ての前記ECUを同時にリセットする。
【0027】
請求項9に記載の発明では、対象電力線に接続された少なくとも一つのECUが異常状態にある場合に、このECUと同じ対象電力線に接続された全てのECUがリセット部によって同時にリセットされる。従って、請求項10に記載の車載機器診断装置は、対象電力線に接続された複数のECUが実際に異常状態にある場合に、異常判定部によって異常状態にあると判定されたECU及び異常判定部による判定は行われていないものの実際には異常状態にあるECUの異常状態が、長時間に渡って放置されることが防止される。
【0028】
請求項10に記載の発明に係る車両は、請求項1~9の何れか1項に記載の車載機器診断装置を備える。
【0029】
請求項11に記載の発明に係る車載機器診断方法は、車両に搭載されたバッテリに接続された1本の特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、前記各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させ、前記特定電力線に直列に接続され、前記電力線が1本のみ前記特定電力線に接続されている場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより前記電力線を測定し、前記電力線が前記特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより得られた前記各電力線の電流値の合計値を測定し、一つの前記電力線である対象電力線に接続された複数の前記ECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときの前記対象電力線の電流値に基づいて、前記各ECUが異常状態にあるか否かを判定し、単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、前記対象電力線に接続された複数の前記ECU毎に設定された優先順位に基づいて、前記各ECUが前記異常状態にあるか否かを判定する。
【0030】
請求項12に記載の発明に係るプログラムは、車両に搭載されたバッテリに接続された1本の特定電力線に接続された少なくとも一つの電力線にそれぞれ接続された複数のECUへ状態移行信号を送ることにより、前記各ECUを1つずつ第2状態から第1状態へ移行させる処理、前記特定電力線に直列に接続され、前記電力線が1本のみ前記特定電力線に接続されている場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより前記電力線を測定し、前記電力線が前記特定電力線に並列に接続された複数本を有する場合は、前記特定電力線の電流値を測定することにより得られた前記各電力線の電流値の合計値を測定する処理、一つの前記電力線である対象電力線に接続された複数の前記ECUを1つずつ前記第1状態へ移行させたときの前記対象電力線の電流値に基づいて、前記各ECUが異常状態にあるか否かを判定する処理、及び単位時間当たりの消費電力が大きくなる程順位が高くなるように、前記対象電力線に接続された複数の前記ECU毎に設定された優先順位に基づいて、前記各ECUが前記異常状態にあるか否かを判定する処理、を車載機器診断装置に実行させる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る車載機器診断装置、車載機器診断装置を備える車両、車載機器診断方法及びプログラムは、一つの電力線に接続された複数のECUの中の何れかのECUが異常状態にある場合に異常状態にあるECUを特定できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態に係る車載機器診断装置を備える車両の模式図である。
【
図2】
図1に示される車載機器診断装置のECU(ゲートウェイ)の制御ブロック図である。
【
図3】
図2に示されるECUの機能ブロック図である。
【
図4】
図1に示される車載機器診断装置のECUの制御ブロック図である。
【
図5】
図4に示されるECUの機能ブロック図である。
【
図6】
図2に示されるECUが生成するウェイクアップフレーム及びアイドル状態移行フレームを示す図である。
【
図7】
図2に示されるECUのROMに記録された電力線診断用閾値マップを示す図である。
【
図8】
図2に示されるECUのROMに記録された優先順位マップを示す図である。
【
図9】
図2に示されるECUのROMに記録されたECU診断用閾値マップを示す図である。
【
図10】
図2に示されるECUが実行する処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る車載機器診断装置10、車載機器診断装置10を備える車両12、車載機器診断方法及びプログラムの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、実施形態の車載機器診断装置10(以下、診断装置10と称する)を備える車両12を示している。診断装置10は、バッテリ14、電流センサ(電流測定部)16、ECU(Electronic Control Unit)18、ECU20、コネクタ26、電力線(ハーネス)28、第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38を備える。ECU20には、ECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5、20-6、20-7、20-8、20-9が含まれる。即ち、ECU20は、ECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5、20-6、20-7、20-8、20-9の総称である。ECU20は、車両12に設けられた様々な装置である制御対象(図示省略)に接続され且つ制御対象を制御する。これらの制御対象には、例えば、エンジン、ブレーキ装置、ステアリング装置、GPS受信機、オーディオ機器及び照明機器が含まれる。バッテリ14、電流センサ16、ECU18及びECU20は電力線28によって接続されている。
【0035】
電力線28は、第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C及び第4電力線28Dを有する。第1電力線28Aには、電力線28(の一部)を介してECU18が接続されている。さらに第1電力線28AにはECU20-1及びECU20-2が接続されている。第2電力線28Bには、ECU20-3、ECU20-4及びECU20-5が接続されている。第3電力線28Cには、ECU20-6及びECU20-7が接続されている。第4電力線28Dには、ECU20-8及びECU20-9が接続されている。
【0036】
第2電力線28Bにはスイッチ30Bが設けられ、第3電力線28Cにはスイッチ30Cが設けられ、第4電力線28Dにはスイッチ30Dが設けられている。スイッチ30B、スイッチ30C及びスイッチ30DはON位置とOFF位置との間を移動可能である。スイッチ30B、スイッチ30C及びスイッチ30Dは、ECU18による制御によって、ON位置とOFF位置との間を移動する。第1電力線28Aにはバッテリ14の電力が常に流れる。即ち、第1電力線28Aは常時電源(+B)に接続されている。例えば、車両12のイグニッションスイッチ(スタートスイッチ)(図示省略)がOFF位置に位置する状態で車両12の乗員が所持するスマートキー(図示省略)と車両12との距離が所定距離以下になったことをECU18が検知すると、スイッチ30BがON位置へ移動する。即ち、第2電力線28Bは+BA電源に接続されている。第3電力線28CはIGR電源に接続されている。スイッチ30CはイグニッションスイッチがON位置に位置するときに、ON位置に位置する。第3電力線28Cに接続されたECU20-6及びECU20-7の一方は、例えばステアリング装置に接続される。第4電力線28DはIGP電源に接続されている。スイッチ30DはイグニッションスイッチがON位置に位置するときに、ON位置に位置する。第4電力線28Dに接続されたECU20-8及びECU20-9の一方は、例えばオーディオ機器に接続される。
【0037】
ECU20-1及びECU20-2は、第1バス32を介してECU18に接続されている。ECU20-3、ECU20-4及びECU20-6は、第2バス34を介してECU18に接続されている。ECU20-5及びECU20-8は、第3バス36を介してECU18に接続されている。ECU20-7及びECU20-9は、第4バス38を介してECU18に接続されている。ECU18、ECU20、第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38を有するネットワークは、例えば、CAN(Controller Area Network)、Ethernet(登録商標)又はFlex Ray(登録商標)である。ECU18とECU20は、第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38を介して、様々な情報を互いに送受信可能である。
【0038】
ECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5は、NM(Network Management)メッセージを送受信することにより、制御対象の動作を制御するウェイク状態(稼働状態)と、制御を休止するスリープ状態(省電力状態)とに移行可能である。なお、ECU20がスリープ状態にあるときも、後述するトランシーバ20Gは動作する。ECU20-6、20-7、20-8、20-9は、制御対象の動作を制御する非アイドル状態(稼働状態)と、制御を休止するアイドル状態(省電力状態)とに移行可能である。なお、ECU20-6、20-7、20-8、20-9がアイドル状態にあるときも、後述するトランシーバ20Gは動作する。ウェイク状態及びアイドル状態は、特許請求の範囲の「第1状態」に相当する。スリープ状態及び非アイドル状態は、特許請求の範囲の「第2状態」に相当する。スリープ状態にあるECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5の単位時間当たりの消費電力は、ウェイク状態にあるECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5の単位時間当たりの消費電力より小さい。アイドル状態にあるECU20-6、20-7、20-8、20-9の単位時間当たりの消費電力は、非アイドル状態にあるECU20-6、20-7、20-8、20-9の単位時間当たりの消費電力より小さい。
【0039】
図2に示されるように、ゲートウェイとしての機能を有するECU18は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)18A、ROM(Read Only Memory)18B、RAM(Random Access Memory)18C、ストレージ18D、通信I/F(Inter Face)18E及び入出力I/F18Fを含んで構成されている。CPU18A、ROM18B、RAM18C、ストレージ18D、通信I/F18E及び入出力I/F18Fは、バス18Zを介して相互に通信可能に接続されている。ECU18は、タイマー(図示省略)から時刻に関する情報を取得可能である。ROM18B及びストレージ18Dは非一時的記録媒体である。
【0040】
CPU18Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU18Aは、ROM18B又はストレージ18Dからプログラムを読み出し、RAM18Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU18Aは、ROM18B又はストレージ18Dに記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0041】
ROM18Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。ROM18Bには、
図7に示される電力線診断用閾値マップ15、
図8に示される優先順位マップ17及び
図9に示されるECU診断用閾値マップ21が記録されている。
【0042】
電力線診断用閾値マップ15は、第1電力線28A、第2電力線28Bを流れる電流の電流値の閾値を表す。電力線診断用閾値マップ15によって規定された各閾値は、各電力線に異常があるか否かを診断するための電力線診断用閾値である。電力線診断用閾値は、各電力線に接続されたECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5がスリープ状態にあるときの電流値である。第1閾値は、スイッチ30B、スイッチ30C、スイッチ30DがOFF位置に位置するときの第1電力線28Aの電流値の閾値である。このときの第1電力線28Aの電流値は電流センサ16が検出する。第2閾値は、スイッチ30BがON位置に位置し且つスイッチ30C、スイッチ30DがOFF位置に位置するときの第1電力線28A、第2電力線28Bの電流値の合計値の閾値である。このときの第1電力線28A、第2電力線28Bの電流値の合計値は電流センサ16が検出する。例えば、第1閾値は「2mA(ミリアンペア)」であり、第2閾値は「4mA」である。
【0043】
優先順位マップ17によって規定された第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C、第4電力線28D毎の優先順位は、後述する異常判定診断を実施する順番を表している。例えば、第1電力線28Aに接続されたECU20の異常判定診断を行う場合は、ECU20-2の異常判定診断を行なう前に、ECU20-1の異常判定診断がECU18によって実行される。本実施形態の優先順位は、各ECU20の単位時間当たりの消費電力に基づいて規定されている。より詳細には、単位時間当たりの消費電力が大きい程、ECU20の優先順位が高くなる。
【0044】
ECU診断用閾値マップ21は、ECU18が後述するウェイクアップフレーム(状態移行信号)19A又はアイドル状態移行フレーム(状態移行信号)19Bを送信したときの第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C及び第4電力線28Dを流れる電流の電流値の変化量の閾値を表す。ECU診断用閾値マップ21によって規定された各閾値は、各ECU20に異常があるか否かを診断するためのECU診断用閾値である。ECU診断用閾値マップ21は、ECU診断用閾値として、第5閾値及び第6閾値を規定する。第5閾値は、ECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5がスリープ状態からウェイク状態に変化するときの第1電力線28A又は第2電力線28Bを流れる電流の電流値の変化量である。例えば第5閾値は50mAである。第6閾値は、ECU20-6、20-7、20-8、20-9が非アイドル状態からアイドル状態に変化するときの第3電力線28C又は第4電力線28Dを流れる電流の電流値の変化量である。例えば第6閾値は50A(アンペア)である。
【0045】
RAM18Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ18Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。通信I/F18Eは、ECU18が他の機器と通信するためのインタフェースである。入出力I/F18Fは、車両12に搭載される各装置と通信するためのインタフェースである。
【0046】
図3には、ECU18の機能構成の一例がブロック図で示されている。ECU18は、機能構成として、メッセージ生成部(状態切替部)181、送信部(状態切替部)182、受信部183、状態判定部184、異常判定部185及びリセット部186を有する。メッセージ生成部181、送信部182、受信部183、状態判定部184、異常判定部185及びリセット部186は、プロセッサ(コンピュータ)の一例であるCPU18Aが、非一時的記録媒体の一例であるROM18B又はストレージ18Dに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0047】
メッセージ生成部181は、
図6に示されるウェイクアップフレーム19A及びアイドル状態移行フレーム19Bを生成する。ウェイクアップフレーム19A及びアイドル状態移行フレーム19Bには、ウェイクアップフレーム19A又はアイドル状態移行フレーム19Bを受信するECU20のIDに関する情報が付されている。本実施形態では、ECU20-1のIDは「20-1」である。ECU20-2のIDは「20-2」である。ECU20-3のIDは「20-3」である。ECU20-4のIDは「20-4」である。ECU20-5のIDは「20-5」である。ECU20-6のIDは「20-6」である。ECU20-7のIDは「20-7」である。ECU20-8のIDは「20-8」である。ECU20-9のIDは「20-9」である。ウェイクアップフレーム19Aには、ECU20-1~20-5のID情報が付される。アイドル状態移行フレーム19Bには、ECU20-6~20-9のID情報が付される。各ID(ECU20-6~20-9)毎にアイドル状態移行フレーム19Bの内容は互いに異なる。
【0048】
送信部182は、メッセージ生成部181が生成したウェイクアップフレーム19A及びアイドル状態移行フレーム19Bを第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38へ送信可能である。後述するように、送信部182が第1バス32、第2バス34及び第3バス36へ送信したウェイクアップフレーム19Aをスリープ状態にあるECU20-1~20-5が受信すると、ウェイクアップフレーム19Aと同じIDのECU20-1~20-5(対象ECU)がウェイク状態へ移行する。また、送信部182が第2バス34、第3バス36及び第4バス38へ送信したアイドル状態移行フレーム19Bを非アイドル状態にあるECU20-6~20-9が受信すると、アイドル状態移行フレーム19Bと同じIDのECU20-6~20-9(対象ECU)がアイドル状態へ移行する。
【0049】
受信部183は、ECU20が送信した信号を第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38を介して受信可能である。
【0050】
状態判定部184は、受信部183が第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38を介して受信した信号に基づいて、ECU20-1~20-5がウェイク状態とスリープ状態のいずれにあるか、及び、ECU20-6~20-9がアイドル状態と非アイドル状態のいずれにあるかを判定する。例えば、ECU20がウェイク状態又は非アイドル状態にある場合は、ECU20が第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38に定期的に送信する信号を受信部183が受信する。そのため状態判定部184は、これらの信号が検出された場合に、ECU20がウェイク状態又は非アイドル状態にあると判定する。一方、ECU20がスリープ状態又はアイドル状態にある場合は、受信部183がこれらの信号を受信しない。そのため状態判定部184は、第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38を介してこれらの信号を検出しない場合に、ECU20がスリープ状態又はアイドル状態にあると判定する。
【0051】
異常判定部185は、第1電力線28A及び第2電力線28Bに異常があるか否かを判定する。さらに異常判定部185は、送信部182からウェイクアップフレーム19A又はアイドル状態移行フレーム19Bを受信したECU20が異常状態にあるか否かを、電流センサ16が検出した第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C、第4電力線28Dの電流値及びECU診断用閾値マップ21に基づいて判定する。
【0052】
リセット部186の機能については後述する。
【0053】
図4に示されるようにECU20は、CPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D、通信I/F20E、入出力I/F20F及びトランシーバ20Gを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D、通信I/F20E、入出力I/F20F及びトランシーバ20Gは、バス20Zを介して相互に通信可能に接続されている。ECU20は、タイマー(図示省略)から時刻に関する情報を取得可能である。
【0054】
セレクティブウェイクアップトランシーバであるトランシーバ20Gは、ECU20の状態に拘わらず動作する。即ち、ECU20がウェイク状態又は非アイドル状態にあるときに動作し、さらにECU20がスリープ状態又はアイドル状態にあるときも動作する。トランシーバ20Gは、ECU18が送信したウェイクアップフレーム19A及びアイドル状態移行フレーム19Bに付されたID情報を認識しながらこれらのフレームを受信する。
【0055】
図5には、ECU20の機能構成の一例がブロック図で示されている。ECU20は、機能構成として、信号生成部201、送信部202、受信部203及び状態制御部204を有する。信号生成部201、送信部202、受信部203及び状態制御部204は、CPU20AがROM20Bに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0056】
信号生成部201は、所定の信号を生成する。
【0057】
送信部202は、信号生成部201が生成した信号を第1バス32、第2バス34、第3バス36及び第4バス38の少なくとも一つに送信する。
【0058】
受信部203は、制御対象から送信された信号を受信する。
【0059】
状態制御部204は、トランシーバ20Gからウェイクアップフレーム19Aを受信したときに、スリープ状態にあるECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5をウェイク状態に移行させる。状態制御部204は、トランシーバ20Gからアイドル状態移行フレーム19Bを受信したときに、非アイドル状態にあるECU20-6、20-7、20-8、20-9をアイドル状態に移行させる。
【0060】
図1に示されるコネクタ26には、診断装置42が着脱可能に接続される。診断装置42は、車両12のイグニッションスイッチがOFF位置に位置する状態でコネクタ26に接続される。コネクタ26に接続された診断装置42の操作部(図示省略)を作業者が操作すると、診断装置42からECU18へ操作信号が送信される。この操作信号をECU18が受信することにより、ECU18が後述する処理(
図10の処理)を実行する。
【0061】
続いて、本実施形態のECU18が行う処理(診断処理)の流れについて、
図10のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の処理は、車両12のイグニッションスイッチがOFF位置に位置し、スマートキーが車両12から上記所定距離より離れた場所に位置し、且つコネクタ26に診断装置42が接続された状態で行われる。そのため、以下の処理の開始時点において、スイッチ30B、スイッチ30C及びスイッチ30DはOFF位置に位置する。診断装置42の制御に基づいてECU18が診断処理を開始すると、ECU18は所定時間が経過する毎に、
図10のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0062】
まずステップS10においてECU18の状態判定部184は、ECU20-1及びECU20-2が第1バス32へ定期的に送信する信号に基づいて、第1電力線28Aに接続されたECU20-1及びECU20-2がスリープ状態にあるか否かを判定する。
【0063】
ステップS10においてYesと判定したとき、ECU18はステップS11へ進む。一方、ステップS10においてNoと判定したとき、ECU18はYesと判定するまでステップS10の処理を繰り返す。
【0064】
ステップS11へ進んだECU18の異常判定部185は、
図7に示された電力線診断用閾値マップ15を参照して、第1電力線28Aに異常があるか否かを判定する。ECU20-1及びECU20-2が実際にスリープ状態にあるとき、ECU20-1及びECU20-2の機能はトランシーバ20Gを除いて停止する。そのため、ECU20-1及びECU20-2が実際にスリープ状態にあるとき、第1電力線28Aを流れる電流の電流値は第1閾値以下(例えば、2mA以下)になる。従って、電流センサ16から受信した信号に基づいて、第1電力線28Aを流れる電流の電流値が第1閾値以下であると異常判定部185が判定したとき、ECU18はステップS11でNoと判定してステップS15へ進む。
【0065】
一方、電流センサ16から受信した信号に基づいて、第1電力線28Aを流れる電流の電流値が第1閾値より大きいと異常判定部185が判定したとき、ECU18はステップS11でYesと判定してステップS12へ進む。例えば、実際にはECU20-1及びECU20-2の少なくとも一方がウェイク状態にあるとき、ECU20-1及びECU20-2の少なくとも一方に大きな電流が供給されるので、第1電力線28Aの電流値は100mA以上の大きさになる。
【0066】
ステップS12へ進んだECU18のメッセージ生成部181は、
図8に示された優先順位マップ17を参照して、ECU20-1及びECU20-2の異常判定診断を実施する。即ち、メッセージ生成部181は、ECU20-2の異常判定診断を実施する前に、ECU20-1の異常判定診断を実施する。より詳細にはメッセージ生成部181は、IDが「20-1」のウェイクアップフレーム19Aを生成し且つ送信部182が当該ウェイクアップフレーム19Aを第1バス32へ送信する。第1バス32へ送信された当該ウェイクアップフレーム19Aは、ECU20-1のトランシーバ20G及びECU20-2のトランシーバ20Gによって受信される。このときECU20-1のトランシーバ20Gは、状態制御部204へウェイクアップフレーム19Aを送信する。これによりスリープ状態にあったECU20-1がウェイク状態へ移行する。一方、ECU20-2のトランシーバ20Gは、状態制御部204へウェイクアップフレーム19Aを送信しない。
【0067】
このとき、第1電力線28AからECU20-1に供給される電力量が実質的に変化しない場合がある。即ち、電流センサ16によって検出される第1電力線28Aの電流値の変化量が第5閾値未満の場合がある。この場合は、送信部182がウェイクアップフレーム19Aを第1バス32へ送信する前からECU20-1がウェイク状態にあったと考えられる。即ち、送信部182がウェイクアップフレーム19Aを第1バス32へ送信した後の第1電力線28Aの電流値が約100mAであり、且つ、送信する前の第1電力線28Aの電流値が約100mAであったと推測される。そのためこの場合は、ステップS10において状態判定部184によって「スリープ状態にある」と判定されたECU20-1が、実際にはウェイク状態にあったと異常判定部185によって判定される。即ち、異常判定部185は「スリープ状態(ウェイク状態)に関してECU20-1は異常状態にある」と判定する。この場合、ECU18はステップS12でYesと判定して、ステップS13へ進む。
【0068】
ステップS13へ進んだECU18のリセット部186は、RAM処理化フレーム(図示省略)を生成する。RAM処理化フレームには、リセット対象のECU20のIDを表すID情報が付される。この場合にRAM処理化フレームに付加されるIDは「20-1」である。さらにステップS13において、生成されたRAM初期化フレームを送信部182が第1バス32を介してECU20-1及びECU20-2へ送信する。RAM初期化フレームをECU20-1及びECU20-2のトランシーバ20Gが受信すると、ECU20-1のRAM20Cが初期化される。一方、ECU20-2のRAM20Cは初期化されない。そのため、スリープ状態(ウェイク状態)に関して異常状態にあったECU20-1が正常化される。
【0069】
ステップS13の処理を終えたECU18はステップS12へ進み、ECU20-1及びECU20-2が第1バス32へ定期的に送信する信号に基づいて、ECU20-1及びECU20-2がスリープ状態にあると状態判定部184が判定した後に、メッセージ生成部181が優先順位マップ17を参照してIDが「20-2」のウェイクアップフレーム19Aを生成する。さらに送信部182が当該ウェイクアップフレーム19Aを第1バス32へ送信する。第1バス32へ送信された当該ウェイクアップフレーム19Aは、ECU20-1のトランシーバ20G及びECU20-2のトランシーバ20Gによって受信される。このときECU20-2のトランシーバ20Gは、状態制御部204へウェイクアップフレーム19Aを送信する。これによりスリープ状態にあったECU20-2がウェイク状態へ移行する。一方、ECU20-1のトランシーバ20Gは、状態制御部204へウェイクアップフレーム19Aを送信しない。
【0070】
スリープ状態にあったECU20-2がウェイク状態に移行したときに、第1電力線28AからECU20-2に供給される電力量が急激に増大する場合がある。例えば、電流センサ16によって検出される第1電力線28Aの電流値が、約1mAから約100mAに変化する。即ち、電流センサ16によって検出される第1電力線28Aの電流値の変化量が第5閾値以上になる。この場合は、ステップS10において状態判定部184によって「スリープ状態にある」と判定されたECU20-2が、実際にスリープ状態にあると異常判定部185によって判定される。即ち、この場合は、スリープ状態(ウェイク状態)に関してECU20-2が正常状態にあると異常判定部185によって判定される。この場合、ECU18はステップS12でNoと判定する。即ち、この場合、異常判定部185は、ECU20-1及びECU20-2が正常状態にあると判定する。
【0071】
ステップS12でNoと判定したECU18はステップS14へ進み、異常判定部185が、第1電力線28Aに接続されたECU20-1及びECU20-2の診断が完了したか否かを判定する。ステップS14でYesと判定した場合、ECU18は当該フローチャートに示された処理を一旦終了する。
【0072】
なお、例えば、車両12に設けられ且つバッテリ14に接続されたコネクタ(図示省略)に、車両12を製造したメーカーとは別のメーカーが製造した電装品(図示省略)が接続された場合は、ECU20-1及びECU20-2に異常がないにも拘わらず、第1電力線28Aを流れる電流の電流値が第1閾値より大きくなることがある。例えばこのような場合に、ECU18は、ステップS11においてYesと判定し、ステップS12においてNoと判定し、且つステップS14でYesと判定する。
【0073】
ECU20-1及びECU20-2の診断を完了したECU18は、再びステップS10の処理を行う。この場合、ECU18はステップS10でYesと判定し且つステップS11でNoと判定して、ステップS15へ進む。
【0074】
ステップS15へ進んだECU18は、第2電力線28Bに関してステップS10と同様の処理を行う。即ち、状態判定部184が、ECU20-3及びECU20-4が第2バス34へ定期的に送信する信号並びにECU20-5が第3バス36へ定期的に送信する信号に基づいて、ECU20-3、ECU20-4及びECU20-5がスリープ状態にあるか否かを判定する。
【0075】
ステップS15でYesと判定したECU18はステップS16へ進み、第2電力線28Bに関してステップS11と同様の処理を行う。まずECU18がOFF位置に位置するスイッチ30BをON位置へ移動させる。さらにECU18の異常判定部185は、
図7に示された電力線診断用閾値マップ15を参照して、第2電力線28Bに異常があるか否かを判定する。即ち、電流センサ16から受信した信号に基づいて、第1電力線28A及び第2電力線28Bの電流値の合計値が第2閾値以下であると異常判定部185が判定したとき、ECU18はステップS16でNoと判定してステップS20へ進む。
【0076】
一方、電流センサ16から受信した信号に基づいて、第1電力線28A及び第2電力線28Bの電流値の合計値が第2閾値より大きいと異常判定部185が判定したとき、ECU18はステップS16でYesと判定してステップS17へ進む。
【0077】
ステップS17へ進んだECU18のメッセージ生成部181は、第2電力線28Bに関してステップS12と同様の処理を行う。即ち、ECU18は優先順位マップ17を参照して、ECU20-4、20-3、20-5の順で異常判定診断を実施する。なお、ECU20-4及びECU20-3の異常判定診断において、送信部182がウェイクアップフレーム19Aを第2バス34へ送信する。ECU20-5の異常判定診断において、送信部182がウェイクアップフレーム19Aを第3バス36へ送信する。
【0078】
ECU20-4に対する異常判定診断の結果、異常判定部185が「スリープ状態(ウェイク状態)に関してECU20-4は異常状態にある」と判定した場合、ECU18はステップS18へ進む。ステップS18へ進んだECU18のリセット部186は、IDが「20-4」のRAM処理化フレームを生成し、さらに生成されたRAM初期化フレームを送信部182が第2バス34を介してECU20-3、20-4、20-6へ送信する。この場合、ECU20-4のRAM20Cのみが初期化される。そのため、スリープ状態(ウェイク状態)に関して異常状態にあったECU20-4が正常化される。
【0079】
ステップS18の処理を終えたECU18はステップS17へ進み、ECU20-3、20-5の順で異常判定診断を実施する。さらにステップS17でYesと判定した場合は、ECU18はステップS18においてリセット処理を行う。
【0080】
ステップS17でNoと判定したECU18はステップS19へ進み、異常判定部185が、第2電力線28Bに接続されたECU20-3、ECU20-4及びECU20-5の診断が完了したか否かを判定する。ステップS19でYesと判定した場合、ECU18は当該フローチャートに示された処理を一旦終了する。このときECU18がON位置に位置するスイッチ30BをOFF位置へ移動させる。
【0081】
ECU20-3、ECU20-4及びECU20-5の診断を完了したECU18は、再びステップS10の処理を行う。この場合、ECU18はステップS10でYesと判定し、ステップS11でNoと判定し、ステップS15でYesと判定し、且つステップS16でNoと判定してステップS20へ進む。
【0082】
ステップS20へ進んだECU18のメッセージ生成部181は、非アイドル状態移行フレームを生成する。この非アイドル状態移行フレームにはECU20のIDに関する情報が付されている。即ち、ステップS20においてメッセージ生成部181は、IDが「20-6」の非アイドル状態移行フレーム及びIDが「20-7」の非アイドル状態移行フレームを生成する。さらにステップS20において、送信部182がこれらの非アイドル状態移行フレームを第2バス34及び第4バス38へ送信する。これによりECU20-6及びECU20-7が非アイドル状態となる。なお、本実施形態では、各ECU20-6、20-7、20-8、20-9は、非アイドル状態移行フレームを受信したときに、アイドル状態から非アイドル状態へ移行するか又は非アイドル状態を維持するものとする。即ち、各ECU20-6、20-7、20-8、20-9のアイドル状態から非アイドル状態への移行機能に異常はない。さらにステップS20において、ECU18がOFF位置に位置するスイッチ30B、30CをON位置へ移動させる。
【0083】
ステップS20の処理を終えたECU18はステップS21へ進む。ステップS21へ進んだECU18のメッセージ生成部181は、第3電力線28Cに関してステップS12と同様の処理を行う。即ち、ECU18は優先順位マップ17を参照して、ECU20-7、20-6の順で異常判定診断を実施する。
【0084】
ECU18のメッセージ生成部181は、IDが「20-7」のアイドル状態移行フレーム19Bを生成し且つ送信部182が当該アイドル状態移行フレーム19Bを第4バス38へ送信する。第4バス38へ送信されたアイドル状態移行フレーム19Bは、ECU20-7、20-9のトランシーバ20Gによって受信される。
【0085】
このとき、第3電力線28CからECU20-7に供給される電力量が実質的に変化しない場合がある。即ち、電流センサ16によって検出される第1電力線28A、第2電力線28B及び第3電力線28Cの電流値の合計値の変化量が第6閾値未満の場合がある。この場合は、ECU20-7のトランシーバ20Gがアイドル状態移行フレーム19Bを受信したにも拘わらず、ECU20-7が非アイドル状態からアイドル状態へ移行しなかったと考えられる。この場合は、送信部182がアイドル状態移行フレーム19Bを第4バス38へ送信する前後の第3電力線28Cの電流値が共に約200Aであると推測される。この場合、非アイドル状態からアイドル状態への移行に関してECU20-7は異常状態にあると異常判定部185が判定する。従って、ECU18はステップS21でYesと判定して、ステップS22へ進む。
【0086】
なお、このときECU20-9のトランシーバ20Gは、状態制御部204へアイドル状態移行フレーム19Bを送信しない。
【0087】
ステップS22へ進んだECU18のリセット部186は、IDが「20-7」のRAM処理化フレームを生成し、さらに生成されたRAM初期化フレームを送信部182が第4バス38を介してECU20-7、20-9へ送信する。この場合、ECU20-7のRAM20Cのみが初期化される。そのため、非アイドル状態からアイドル状態への移行に関して異常状態にあったECU20-7が正常化される。
【0088】
ステップS22の処理を終えたECU18はステップS21へ進み、ECU20-6の異常判定診断を実施する。ECU18のメッセージ生成部181は、IDが「20-6」のアイドル状態移行フレーム19Bを生成し且つ送信部182が当該アイドル状態移行フレーム19Bを第2バス34へ送信する。第2バス34へ送信されたアイドル状態移行フレーム19Bは、ECU20-3、20-4、20-6のトランシーバ20Gによって受信される。このとき第3電力線28CからECU20-6に供給される電力量が急激に減少する場合がある。例えば、電流センサ16によって検出される第1電力線28A、第2電力線28B及び第3電力線28Cの電流値の合計値の変化量が、約200Aから約100Aに変化する。即ち、電流センサ16によって検出される第1電力線28A、第2電力線28B及び第3電力線28Cの電流値の合計値の変化量が第6閾値以上になる。この場合は、非アイドル状態からアイドル状態への移行に関してECU20-6が正常状態にあると異常判定部185によって判定される。従って、ECU18はステップS21でNoと判定する。
【0089】
ステップS21でNoと判定したECU18はステップS23へ進み、異常判定部185が、第3電力線28Cに接続されたECU20-6、20-7の診断が完了したか否かを判定する。ステップS23でYesと判定した場合、ECU18はステップS24へ進む。
【0090】
ステップS24へ進んだECU18のメッセージ生成部181は、IDが「20-8」の非アイドル状態移行フレーム19B及びIDが「20-9」の非アイドル状態移行フレーム19Bを生成する。さらに送信部182がこれらの非アイドル状態移行フレーム19Bを第3バス36及び第4バス38へ送信する。これによりECU20-8及びECU20-9が非アイドル状態となる。このときECU18がOFF位置に位置するスイッチ30DをON位置へ移動させる。即ち、スイッチ30B、30C、30DがON位置に位置する。
【0091】
ステップS24の処理を終えたECU18はステップS25へ進む。ステップS25へ進んだECU18のメッセージ生成部181は、第4電力線28Dに関してステップS21と同様の処理を行う。即ち、ECU18は優先順位マップ17を参照して、ECU20-8、20-9の順で異常判定診断を実施する。なお、ECU20-8の異常判定診断において、送信部182がアイドル状態移行フレーム19Bを第3バス36へ送信する。ECU20-9の異常判定診断において、送信部182がアイドル状態移行フレーム19Bを第4バス38へ送信する。
【0092】
ECU20-8に対する異常判定診断の結果、ステップS25でYesと判定したECU18はステップS26へ進む。ステップS26へ進んだECU18のリセット部186は、IDが「20-8」のRAM処理化フレームを生成し、さらに生成されたRAM初期化フレームを送信部182が第3バス36を介してECU20-5、20-8へ送信する。この場合、ECU20-8のRAM20Cのみが初期化される。
【0093】
ステップS18の処理を終えたECU18はステップS25へ進み、ECU20-9の異常判定診断を実施する。さらにステップS25でNoと判定した場合は、ECU18はステップS27へ進む。ステップS27において異常判定部185が、第4電力線28Dに接続されたECU20-8、20-9の診断が完了したか否かを判定する。ステップS27でYesと判定した場合、ECU18は当該フローチャートに示された処理を一旦終了する。このときECU18が、ON位置に位置するスイッチ30B、30C、30DをOFF位置へ移動させる。
【0094】
(作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0095】
本実施形態の診断装置10では、第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C又は第4電力線28Dに接続された一つのECU20がメッセージ生成部181及び送信部182によって第1状態(ウェイク状態又はアイドル状態)へ移行させられたときの当該電力線28の電流値の変化量がECU診断用閾値マップ21に規定されたECU診断用閾値未満のときに、このECU20が異常状態にあると異常判定部185が判定する。従って、本実施形態の診断装置10は、電流値に関して異常がある第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C又は第4電力線28Dに接続された複数のECU20の中の何れかのECU20が異常状態にある場合に異常状態にあるECU20を正確に特定できる。さらに本実施形態の診断装置10は、異常状態にあるECU20を特定するために、各ECU20を流れる暗電流の大きさを測定可能な電流センサ及び電気の流れを許容又は遮断するON/OFFスイッチを有し且つ各ECU20毎に設けられる専用の回路を備える必要がない。
【0096】
本実施形態の診断装置10では、ECU18の状態判定部184が、ECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5から第1バス32、第2バス34及び第3バス36を介して送信される信号に基づいて、ECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5がウェイク状態とスリープ状態のいずれにあるかを判定する。さらに異常判定部185が、自身に接続された全てのECU20-1、20-2、20-3、20-4、20-5がスリープ状態にあり且つ電流値が電力線診断用閾値マップ15に規定された電力線診断用閾値より大きい電力線が、電流値に関して異常がある電力線(対象電力線)28A、28Bであると判定する。従って、診断装置10は、第1電力線28A及び第2電力線28Bの何れが電流値に関して異常があるかを正確に特定できる。
【0097】
さらに診断装置10は、優先順位マップ17によって規定された優先順位に基づいて、各ECU20の異常判定診断を行う。本実施形態の優先順位マップ17は、各ECU20の単位時間当たりの消費電力に基づいて規定されている。そのため本実施形態の診断装置10は、単位時間当たりの消費電力が大きいECU20の異常状態が長時間放置されることにより、無駄な電力が大量に消費されることを防止できる。
【0098】
さらにECU18のリセット部186が、異常判定部185によって異常状態にあると判定されたECU20をリセットする。従って、本実施形態の診断装置10は、異常状態にあると判定されたECU20を正常な状態に戻すことが可能である。
【0099】
さらに本実施形態の診断装置10では、一つのECU20に対する異常判定部185による判定及びリセット部186によるリセットが行われた後に、リセットされたECUと同じ電力線28A、28B、28C、28Dに接続された別のECU20に対する異常判定部185による判定及びリセット部186によるリセットが行われる。従って、本実施形態の診断装置10は、電流値に関して異常がある電力線28A、28B、28C、28Dに接続された複数のECU20の少なくとも一つが異常状態にある場合に、異常状態にあると判定されたECU20の異常状態が長時間に渡って放置されることを防止できる。
【0100】
以上、本実施形態に係る診断装置10、車両12、車載機器診断方法及びプログラムについて説明したが、診断装置10、車両12、車載機器診断方法及びプログラムは本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0101】
例えば、第2電力線28B、第3電力線28C及び第4電力線28Dの少なくとも一つに接続された複数のECU20の中の一つのECU20が異常状態にあると異常判定部185が判定したときに、リセット部186が、異常状態にあると判定された電力線28B、28C、28Dに設けられたスイッチ30B、30C、30DをON位置からOFF位置へ移動させた後に再びON位置に移動させることにより、この電力線28B、28C、28Dに接続された全てのECU20を同時にリセットしてもよい。本変形例によれば、電流値に関して異常がある電力線28B、28C、28Dに接続された複数のECU20が実際に異常状態にある場合に、異常判定部185によって異常状態にあると判定された1つのECU20及び異常判定部185による判定は行われていないものの実際には異常状態にある別のECU20の異常状態が、長時間に渡って放置されることが防止される。
【0102】
優先順位マップ17が、ECU20-1~20-5のスリープ待機時間の長さに基づいて優先順位を規定してもよい。このスリープ待機時間とは、ウェイク状態にあるECU20-1~20-5がスリープ状態に切り替わるための待機時間である。このスリープ待機時間が短いECU20-1~20-5の異常判定診断をスリープ待機時間が長いECU20-1~20-5に優先させて実行すれば、一つの電力線に接続された複数のECU20-1~20-5の異常判定診断を短時間で実行可能になる。
【0103】
ECU18のROM18Bに診断用プログラムをインストールしてもよい。この診断用プログラムは、例えばイグニッションスイッチがON位置からOFF位置に切り替えられたときに起動し、ECU18に上記処理を実行させる。従って、この変形例ではコネクタ26及び診断装置42は不要になる。
【0104】
全てのECU20を、ウェイク状態とスリープ状態とに切り替わるECU20にしてもよい。また、全てのECU20を、非アイドルとアイドル状態とに切り替わるECU20にしてもよい。
【0105】
バス(第1バス32、第2バス34、第3バス36、第4バス38)及び電力線(第1電力線28A、第2電力線28B、第3電力線28C、第4電力線28D)数は、1つ以上であれば幾つであってもよい。
【符号の説明】
【0106】
10 車載機器診断装置(診断装置)
12 車両
14 バッテリ
16 電流センサ(電流測定部)
181 メッセージ生成部(状態切替部)
182 送信部(状態切替部)
184 状態判定部
185 異常判定部
186 リセット部
19A ウェイクアップフレーム(状態移行信号)
19B アイドル状態移行フレーム(状態移行信号)
20 ECU
28 電力線(ハーネス)(電力線)
32 第1バス
34 第2バス
36 第3バス
38 第4バス