(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】空冷式燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04701 20160101AFI20240717BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240717BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04014
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/0432
H01M8/04746
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2021092783
(22)【出願日】2021-06-02
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】野々山 順朗
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-140672(JP,A)
【文献】特開2017-217986(JP,A)
【文献】特開2010-108619(JP,A)
【文献】特開2005-044621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式燃料電池システムであって、
前記空冷式燃料電池システムは、燃料電池、
前記空冷式燃料電池システムの外部から空気を取り入れる、空気導入部、
反応用空気を前記燃料電池に供給する、反応用空気供給部、
前記反応用空気供給部と前記燃料電池の反応用空気入口とを接続する反応用空気供給流路、
前記燃料電池の反応用空気出口と前記外部とを接続する反応用空気排出流路、
前記空気導入部と前記燃料電池の冷却用空気入口とを接続する冷却用空気供給流路、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部、
前記燃料ガス供給部と前記燃料電池の燃料ガス入口とを接続する燃料ガス供給流路、
前記燃料電池の燃料ガス出口と
前記外部とを接続する燃料オフガス排出流路、
前記燃料電池の温度を測定する、温度取得部、
制御部、を備え、
前記反応用空気供給流路は、前記反応用空気供給部の下流且つ前記燃料電池の前記反応用空気入口の上流の領域に第1バルブを有し、
前記反応用空気排出流路は、前記燃料電池の前記反応用空気出口の下流に第2バルブを有し、
前記燃料ガス供給流路は、前記燃料電池の前記燃料ガス入口の上流に第3バルブを有し、
前記燃料オフガス排出流路は、前記燃料電池の前記燃料ガス出口の下流に第4バルブを有し、
前記燃料電池は、反応用空気マニホールドと冷却用空気マニホールドとが独立した構造を備え、
前記制御部は、前記温度取得部で測定された前記温度を監視し、
前記制御部は、前記温度取得部で測定された前記温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、前記温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えたときに、前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブの開度を小さくすることを特徴とする空冷式燃料電池システム。
【請求項2】
前記空冷式燃料電池システムは、前記燃料電池の冷却用空気出口と
前記外部とを接続する冷却用空気排出流路を備え、
前記冷却用空気排出流路は、エアポンプ又はエアファンを有する、請求項1に記載の空冷式燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記燃料電池の発電停止時に、前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブを閉弁する、請求項1又は2に記載の空冷式燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空冷式燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、1つの単セル(以下、セルと記載する場合がある)又は複数の単セルを積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)で構成され、水素等の燃料ガスと酸素等の酸化剤ガスとの電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、実際に燃料電池に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、酸化・還元に寄与しないガスとの混合物である場合が多い。特に酸化剤ガスは酸素を含む空気である場合が多い。
なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。また、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0003】
燃料電池車両(以下車両と記載する場合がある)に車載されて用いられる燃料電池に関して、様々な技術が提案されている。
例えば特許文献1では、全体的なシステムの大きさを小型化して、システムの効率及び性能をさらに向上させるよう、スタックを冷却しながら暖められた空気とスタックを通して排出される未反応空気を混合することで、未反応空気が凝縮されないまま気化された状態で排出できる構造を有する燃料電池システムが開示されている。
【0004】
特許文献2では、空冷式燃料電池が開示されている。
【0005】
特許文献3では、燃料電池冷却方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-216852号公報
【文献】特開1988-294670号公報
【文献】特開1992-286869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空冷式の燃料電池は、空気取り入れ口から取り入れた外部の空気を反応用ガスと冷却用ガスとに分配して使う。
上記特許文献1をはじめとした、従来の空冷の燃料電池は反応空気と冷却空気とを独立に制御できないため、過乾燥や過加湿により性能低下を招く虞がある。そこで一般的な水冷式の燃料電池システムのように、反応用ガスと冷却用ガスとを独立に制御する方法が考えられる。しかし冷媒である空気の熱容量が小さいため、水冷式の燃料電池システムを、熱容量を考慮せずに空冷式に適用すると、水を冷媒としたときと比較して熱暴走しやすくなる場合がある。そのため、熱容量が小さい空気を冷媒とした場合の制御方法が求められる。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、熱暴走を抑制できる空冷式燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の空冷式燃料電池システムは、空冷式燃料電池システムであって、
前記空冷式燃料電池システムは、燃料電池、
前記空冷式燃料電池システムの外部から空気を取り入れる、空気導入部、
前記反応用空気を前記燃料電池に供給する、反応用空気供給部、
前記反応用空気供給部と前記燃料電池の反応用空気入口とを接続する反応用空気供給流路、
前記燃料電池の反応用空気出口と前記外部とを接続する反応用空気排出流路、
前記空気導入部と前記燃料電池の冷却用空気入口とを接続する冷却用空気供給流路、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部、
前記燃料ガス供給部と前記燃料電池の燃料ガス入口とを接続する燃料ガス供給流路、
前記燃料電池の燃料ガス出口と外部とを接続する燃料オフガス排出流路、
前記燃料電池の温度を測定する、温度取得部、
制御部、を備え、
前記反応用空気供給流路は、前記反応用空気供給部の下流且つ前記燃料電池の前記反応用空気入口の上流の領域に第1バルブを有し、
前記反応用空気排出流路は、前記燃料電池の前記反応用空気出口の下流に第2バルブを有し、
前記燃料ガス供給流路は、前記燃料電池の前記燃料ガス入口の上流に第3バルブを有し、
前記燃料オフガス排出流路は、前記燃料電池の前記燃料ガス出口の下流に第4バルブを有し、
前記燃料電池は、反応用空気マニホールドと冷却用空気マニホールドとが独立した構造を備え、
前記制御部は、前記温度取得部で測定された前記温度を監視し、
前記制御部は、前記温度取得部で測定された前記温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、前記温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えたときに、前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブの開度を小さくすることを特徴とする。
【0010】
本開示の空冷式燃料電池システムにおいては、前記空冷式燃料電池システムは、前記燃料電池の冷却用空気出口と外部とを接続する冷却用空気排出流路を備え、
前記冷却用空気排出流路は、エアポンプ又はエアファンを有してもよい。
【0011】
本開示の空冷式燃料電池システムにおいては、前記制御部は、前記燃料電池の発電停止時に、前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブを閉弁してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の空冷式燃料電池システムによれば、熱暴走を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の空冷式燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本開示の空冷式燃料電池システムの別の一例を示す概略構成図である。
【
図3】
図3は、本開示の空冷式燃料電池システムの制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の燃料電池システムは、空冷式燃料電池システムであって、
前記空冷式燃料電池システムは、燃料電池、
前記空冷式燃料電池システムの外部から空気を取り入れる、空気導入部、
前記反応用空気を前記燃料電池に供給する、反応用空気供給部、
前記反応用空気供給部と前記燃料電池の反応用空気入口とを接続する反応用空気供給流路、
前記空気導入部と前記燃料電池の冷却用空気入口とを接続する冷却用空気供給流路、
前記燃料電池に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部、
前記燃料ガス供給部と前記燃料電池の燃料ガス入口とを接続する燃料ガス供給流路、
前記燃料電池の燃料ガス出口と外部とを接続する燃料オフガス排出流路、
前記燃料電池の温度を測定する、温度取得部、
制御部、を備え、
前記反応用空気供給流路は、前記反応用空気供給部の下流且つ前記燃料電池の前記反応用空気入口の上流の領域に第1バルブを有し、
前記反応用空気供給流路は、前記燃料電池の反応用空気出口の下流に第2バルブを有し、
前記燃料ガス供給流路は、前記燃料電池の前記燃料ガス入口の上流に第3バルブを有し、
前記燃料オフガス排出流路は、前記燃料電池の前記燃料ガス出口の下流に第4バルブを有し、
前記燃料電池は、反応用空気マニホールドと冷却用空気マニホールドとが独立した構造を備え、
前記制御部は、前記温度取得部で測定された前記温度を監視し、
前記制御部は、前記温度取得部で測定された前記温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、前記温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えたときに、前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブの開度を小さくすることを特徴とする。
【0015】
本開示によれば、反応用空気と冷却用空気とを独立に制御する空冷式の燃料電池システムにおいて、燃料電池の温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、温度の上昇速度が所定の速度閾値を超えたときに、反応用空気を遮断しつつ冷却用空気は遮断しない制御を行う。
上記制御により、冷媒として水と比較して熱容量が小さい空気を用いる空冷式燃料電池システムにおいて過昇温が起きたときでも、冷却しながら反応用空気を酸素欠乏状態とすることができるため、熱暴走を抑制又は未然に防止することができる。
【0016】
燃料電池の運転停止時に、反応空気系(酸化剤ガス系)が封止されていないか、又は、封止されていても残留水素量より残留酸素量が多いと、水素系の残留する水素との反応では消費しきれずに、酸素が残ってしまう。部分的にでも酸素が残ると、燃料電池の劣化が進行するリスクがある。空冷式燃料電池システムでは、水冷式燃料電池システムよりも空気の流路体積が大きくなるため、より燃料電池が劣化しやすい。
本開示によれば、反応空気系の燃料電池出入口にバルブを設置し、反応空気系を密封できる構造とした。これにより、反応空気系への酸素の流入を防ぎ、反応空気系へのコンタミを防ぐことができ、燃料電池の発電停止時の燃料電池の劣化を防ぐことができる。
燃料電池の発電停止時に、封止された水素系の水素モル数を封止された反応空気系の酸素モル数の2倍よりも大きくすることで、燃料電池が水素リッチな状態で封止をすることができる。
反応空気系の燃料電池出入口にバルブが無く、反応空気系に酸素が徐々に入ってくると、いつまでも燃料電池の電圧が高い状態が続く。反応空気系の燃料電池出入口にバルブを設置することで、燃料電池の運転停止時に電圧が比較的早く落ちるために、安全性に優れる。
本開示の構成により、燃料電池の起動と停止を繰り返しても燃料電池が劣化しにくく、燃料電池の寿命が数倍以上伸びる。
【0017】
反応空気系の圧力が冷却系の圧力よりも大きくなっていない場合、冷却系から反応空気系へのコンタミネーションのリスクがある。空気ポンプが反応空気系と冷却系とで共用していると反応用空気と冷却用空気の流量及び圧力の制御が独立にできない。
反応空気系の出口の酸化剤ガス圧力調整弁により反応用空気の流量及び圧力の制御を行い、過乾燥や過加湿による燃料電池の性能低下を防ぐことができる。
本開示によれば、燃料電池の運転時の反応空気系の圧力を冷却系の圧力よりも高くする。そのために、反応空気系では燃料電池の反応用空気入口にエアコンプレッサー等の反応用空気供給部を設け、燃料電池の反応用空気出口に酸化剤ガス圧力調整弁等の第2バルブを設置する。冷却系は燃料電池の冷却用空気入口側に圧損体を設置し、燃料電池の冷却用空気出口側に冷却ファン等の冷媒駆動部を設置することで、大気圧よりも低い圧力とする。
本開示によれば、反応用空気と冷却用空気の流量及び圧力を独立に制御することで高温では冷却用空気は流量を増大させ、反応用空気は流量を低下させて、セル温度適正化と湿度保持を図る。
本開示によれば、反応用空気と冷却用空気の流量及び圧力を独立に制御することで低温では冷却用空気は流量を低下させ、反応用空気は流量を増大させて、セル温度適正化と排水性の向上を図る。冷却系と反応空気系の隔離が不完全な簡易シール材を用いる場合でも、反応空気系の圧力が冷却系の圧力よりも高くなっていれば、冷却系から反応空気系への冷却空気のコンタミネーションを防止できる。
【0018】
本開示の燃料電池システムは、空冷式燃料電池システムである。
空冷式燃料電池システムは、冷媒として空気を用いる。本開示においては、冷媒としての空気を冷却用空気と称する場合がある。本開示においては、酸化剤ガスとしての空気を反応用空気と称する場合がある。
【0019】
空冷式燃料電池システムは、燃料電池、空気導入部、反応用空気供給部、反応用空気供給流路、反応用空気排出流路、冷却用空気供給流路、燃料ガス供給部、燃料ガス供給流路、燃料オフガス排出流路、温度取得部、制御部等を備える。
【0020】
燃料電池は、通常、単セルを有する。
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、20~600個であってもよく、40~200個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレート、集電板、加圧板等を備えていてもよい。
【0021】
燃料電池の単セルは、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)を有していてもよい。燃料電池の単セルは、膜電極ガス拡散層接合体を挟持する第1セパレータ及び第2セパレータを有していてもよい。
【0022】
膜電極ガス拡散層接合体は、第1ガス拡散層、第1触媒層、電解質膜、第2触媒層、及び、第2ガス拡散層をこの順に有する。
膜電極ガス拡散層接合体は、具体的には、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0023】
第1触媒層と第2触媒層は、一方がカソード触媒層であり、もう一方がアノード触媒層である。
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
第1触媒層及び第2触媒層をまとめて触媒層と称する。カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
【0024】
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層は、一方がカソード側ガス拡散層であり、もう一方がアノード側ガス拡散層である。
第1ガス拡散層は、第1触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側ガス拡散層であり、第1触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側ガス拡散層である。
第2ガス拡散層は、第2触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側ガス拡散層であり、第2触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側ガス拡散層である。
第1ガス拡散層と第2ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層又は拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0025】
燃料電池は、触媒層とガス拡散層との間にマイクロポーラス層(MPL)を有していてもよい。マイクロポーラス層は、PTFE等の撥水性樹脂とカーボンブラック等の導電性材料との混合物を含んでいてもよい。
【0026】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0027】
第1セパレータと第2セパレータは、一方がカソード側セパレータであり、もう一方がアノード側セパレータである。
第1セパレータは、第1触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側セパレータであり、第1触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側セパレータである。
第2セパレータは、第2触媒層がカソード触媒層の場合はカソード側セパレータであり、第2触媒層がアノード触媒層の場合はアノード側セパレータである。
第1セパレータと第2セパレータをまとめてセパレータと称する。アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータと称する。
膜電極ガス拡散層接合体は、第1セパレータと第2セパレータにより挟持される。
セパレータは、反応ガス及び冷媒等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。冷媒としては、気体の場合は、冷却用の空気等を用いることができる。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよい。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがアノード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、アノード側セパレータは、アノード側ガス拡散層に接する面に燃料ガス供給孔から燃料ガス排出孔に燃料ガスを流す燃料ガス流路を有していてもよく、必要に応じてアノード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータがカソード側セパレータである場合は、1つ以上の燃料ガス供給孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス供給孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒供給孔を有していてもよく、1つ以上の燃料ガス排出孔を有していてもよく、1つ以上の酸化剤ガス排出孔を有していてもよく、必要に応じて1つ以上の冷媒排出孔を有していてもよく、カソード側セパレータは、カソード側ガス拡散層に接する面に酸化剤ガス供給孔から酸化剤ガス排出孔に酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路を有していてもよく、必要に応じてカソード側ガス拡散層に接する面とは反対側の面に冷媒供給孔から冷媒排出孔に冷媒を流す冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、熱硬化樹脂、熱可塑樹脂、樹脂繊維等の樹脂材、及び、カーボン粉末、カーボン繊維等のカーボン材を含む混合物をプレス成形したカーボンコンポジット材、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、チタン、鉄、アルミニウム、及び、SUS等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
セパレータの形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、長丸形状等であってもよい。
【0028】
燃料電池は、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、反応用空気入口マニホールド(カソード入口マニホールド)、及び、冷却用空気入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、反応用空気出口マニホールド(カソード出口マニホールド)、及び、冷却用空気出口マニホールド等が挙げられる。
本開示においては、反応用空気入口マニホールド(カソード入口マニホールド)、及び、反応用空気出口マニホールド(カソード出口マニホールド)は、まとめて反応用空気マニホールドという。
本開示においては、冷却用空気入口マニホールド、及び、冷却用空気出口マニホールドは、まとめて冷却用空気マニホールドという。
燃料電池は、反応用空気マニホールドと冷却用空気マニホールドとが独立した構造を備える。
【0029】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは酸素、空気、乾燥空気等であってもよい。
【0030】
燃料電池は樹脂フレームを備えていてもよい。
樹脂フレームは、膜電極ガス拡散層接合体の外周に配置され、且つ、第1セパレータと第2セパレータとの間に配置されてもよい。
また、樹脂フレームは、クロスリークや膜電極ガス拡散層接合体の触媒層同士の電気的短絡を防ぐための部材であってもよい。
樹脂フレームは、骨格部と、開口部と、供給孔と、排出孔を有していてもよい。
骨格部は、膜電極ガス拡散層接合体と接続する樹脂フレームの主要部分である。
開口部は、膜電極ガス拡散層接合体の保持領域であり、膜電極ガス拡散層接合体を収納するために骨格部の一部を貫通する貫通孔である。開口部は、樹脂フレームにおいて、膜電極ガス拡散層接合体の周囲(外周部)に骨格部が配置される位置に配置されていればよく、樹脂フレームの中央に有していてもよい。
供給孔及び排出孔は、反応ガス及び冷媒等を単セルの積層方向に流通させる。樹脂フレームの供給孔は、セパレータの供給孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。樹脂フレームの排出孔は、セパレータの排出孔と連通するように位置合わせされて配置されていてもよい。
樹脂フレームは、枠状のコア層と、コア層の両面に設けられた枠状の二つのシェル層、即ち、第1シェル層と第2シェル層とを含んでいてもよい。
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層と同様に、コア層の両面に枠状に設けられていてもよい。
【0031】
コア層は、ガスシール性、絶縁性を有する構造部材であればよく、燃料電池の製造工程での熱圧着時の温度条件下でも構造が変化しない材料により形成されていてもよい。具体的には、コア層の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PC(ポリカーボネート)、PPS(ポリフェニレンスルファイド)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PA(ポリアミド)、PI(ポリイミド)、PS(ポリスチレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、シクロオレフィン、PES(ポリエーテルサルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、LCP(液晶ポリマー)、エポキシ樹脂等の樹脂等であってもよい。コア層の材料は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、フッ素系ゴム、シリコン系ゴム等のゴム材であってもよい。
コア層の厚さは、絶縁性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
【0032】
第1シェル層及び第2シェル層は、コア層とアノード側セパレータ及びカソード側セパレータとを接着してシール性を確保するために、他の物質との接着性が高く、熱圧着時の温度条件下で軟化し、コア層よりも粘度及び融点が低い性質を有していてもよい。具体的には、第1シェル層及び第2シェル層は、ポリエステル系及び変性オレフィン系等の熱可塑性樹脂であってもよく、変性エポキシ樹脂である熱硬化性樹脂であってもよい。第1シェル層及び第2シェル層は、接着剤層と同種の樹脂であってもよい。
第1シェル層を構成する樹脂と第2シェル層を構成する樹脂とは、同種の樹脂であってもよく、異なる種類の樹脂であってもよい。コア層の両面にシェル層を設けることで、樹脂フレームと2つのセパレータとの間の加熱プレスによる接着が容易になる。
第1シェル層及び第2シェル層のそれぞれのシェル層の厚さは、接着性を担保する観点から、5μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、セル厚さを低減する観点から、100μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
【0033】
樹脂フレームにおいて、第1シェル層及び第2シェル層は、それぞれアノード側セパレータ及びカソード側セパレータと接着する部分にのみに設けられていてもよい。コア層の一方の面に設けられた第1シェル層は、カソード側セパレータと接着していてもよい。コア層の他方の面に設けられた第2シェル層は、アノード側セパレータと接着していてもよい。そして、樹脂フレームは、一対のセパレータにより挟持されてもよい。
【0034】
燃料電池は隣り合う2つの単セルの間にガスケットを備えていてもよい。
ガスケットは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)ゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー樹脂等を材料として用いてもよい。
【0035】
燃料電池は、金属製の冷却フィンを有していてもよい。金属としては、Al、Ti、SUS等が挙げられる。燃料電池は隣り合う2つの単セルの間に冷却フィンを備えていてもよい。
冷却フィンは、冷媒流路として機能する複数の凹溝を有するコルゲート状の板であってもよい。
冷却フィンは例えば、金属板をコルゲート状に折り曲げ加工されたもの等を用いることができる。冷却フィンは、表面に銀、ニッケル、カーボン等の導電処理がされていてもよい。
冷却フィンの凹溝は、折り曲げ加工により形成してもよい。
凹溝の深さは例えば、1.0~2.0mmであってもよい。
折り曲げ加工は、例えば凹溝深さ1.0~2.0mm、幅1.0~2.0mmのピッチで凹凸成型してもよい。
冷却フィンは、互いに隣り合う2つの単セルの間に配置されていれば、隣り合う2つの単セルの間の面方向の少なくとも一部の領域に配置されていてもよい。
冷却フィンは、面方向において隣り合う2つの単セルの間の少なくともMEGAと対向する領域に配置されていてもよい。
冷却フィンは、面方向において隣り合う2つの単セルの間のガスケットが配置される領域以外の領域に配置されていてもよい。
冷却フィンは単セル外形から突出した突出部を有していてもよい。
冷却フィンの形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、長丸形状等であってもよい。
【0036】
空冷式燃料電池システムは、空気系として空気導入部を備える。
空気導入部は、空冷式燃料電池システムの外部から空気を取り入れる。
空気導入部は、例えば、吸気口等であってもよい。
空気導入部には、圧損体が設けられていてもよい。圧損体としては、フィルター等が挙げられる。
【0037】
空気導入部は、空気分配部を備えていてもよい。空気分配部は、外部から取り入れた空気を、燃料電池に導入する前に、反応用空気と冷却用空気とに分配する。なお、空気導入部として、反応用空気を外部から取り入れる反応用空気導入部と冷却用空気を外部から取り入れる冷却用空気導入部を有する場合は、空気分配部は必ずしも必要ではない。
空気分配部が空気を分配する反応用空気と冷却用空気との分配比は、流量比で1:20~1:50であってもよい。
空気分配部は空気を取り込むことが可能なハウジング等であってもよい。ハウジングの材質は特に限定されず、金属、樹脂、炭素系材料等であってもよい。
【0038】
燃料電池システムは、燃料電池の冷却系を備える。
冷却系は、冷却用空気供給流路を備えていてもよい。
冷却用空気供給流路は、空気導入部と燃料電池の冷却用空気入口とを接続する。冷却用空気入口は、冷媒供給孔、冷却用空気入口マニホールド等であってもよい。
冷却系は、冷却用空気排出流路を備えていてもよい。
冷却用空気排出流路は、燃料電池の冷却用空気出口と外部とを接続する。冷却用空気出口は、冷媒排出孔、冷却用空気出口マニホールド等であってもよい。
冷却用空気排出流路は、冷媒駆動部を有してもよい。
冷媒駆動部は、制御部と電気的に接続される。冷媒駆動部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。冷媒駆動部は、制御部によって冷媒駆動部から燃料電池に供給される冷媒の流量を制御される。これにより燃料電池の温度が制御されてもよい。
冷媒駆動部は、エアポンプ、エアコンプレッサー、エアブロワー、エアファン等が挙げられる。
冷却系は冷却用空気の出口側に冷媒駆動部を設置することで、燃料電池の冷却用空気マニホールド内の圧力を大気圧以下とすることができる。
冷却系はバルブを持たない大気開放構造とし、冷却用空気を外気圧と等圧(例えば-0.01~-0.3 kPaG)にすることで、燃料電池の構造への差圧ストレスを防ぐことができ、安価で軽量のハウジング部材を使用することができる。冷却用空気供給流路、冷却用空気排出流路は、具体的には配管であってもよい。
【0039】
燃料電池システムは、酸化剤ガス系(反応用空気系)を備える。
酸化剤ガス系は、反応用空気供給部、反応用空気供給流路、反応用空気排出流路、反応用空気バイパス流路、バイパス弁、反応用空気流量センサ等を備えていてもよい。反応用空気供給流路、反応用空気排出流路、反応用空気バイパス流路は、具体的には配管であってもよい。
反応用空気供給部は、燃料電池に反応用空気を供給する。具体的には、反応用空気供給部は、燃料電池のカソードに反応用空気を供給する。
酸化剤ガス系の密閉体積は燃料ガス系の密閉体積の5倍以下であってもよい。
【0040】
反応用空気供給部としては、例えば、エアポンプ、エアコンプレッサー、エアブロワー、エアファン等が挙げられる。
酸化剤ガス系は反応用空気を燃料電池に導入する前に独立した反応用空気供給部を備える。冷却系と酸化剤ガス系のそれぞれの系に独立して冷媒駆動部、反応用空気供給部を備えることにより、冷却用空気と反応用空気の流量を独立して制御することができ、排水性の制御、湿度の制御を精度よく行うことができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
反応用空気供給部は、制御部と電気的に接続される。反応用空気供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。反応用空気供給部は、制御部によって反応用空気供給部からカソードに供給される反応用空気の流量及び圧力からなる群より選ばれる少なくとも1つを制御されてもよい。
【0041】
反応用空気供給流路は、反応用空気供給部と燃料電池の反応用空気入口とを接続する。反応用空気供給流路は、反応用空気供給部から燃料電池のカソードへの反応用空気の供給を可能にする。反応用空気入口は、酸化剤ガス供給孔、カソード入口マニホールド等であってもよい。反応用空気供給流路は、空気分配部から分岐していてもよい。
反応用空気供給流路は、反応用空気供給部の下流且つ燃料電池の反応用空気入口の上流の領域に第1バルブを有する。
第1バルブは、燃料電池の反応用空気入口に直接配置されていてもよい。
第1バルブは、反応用空気供給部の上流に配置されていてもよい。
第1バルブは、制御部と電気的に接続され、制御部によって第1バルブが開弁されることにより、反応用空気を反応用空気供給流路から燃料電池の反応用空気入口へ供給する。
反応用空気供給流路には、反応用空気供給部の上流に圧損体が設けられていてもよい。圧損体としては、フィルター等が挙げられる。反応用空気供給流路に設けられる圧損体は、空気導入部に設けられる圧損体よりも、圧損の高い、よりきめの細かいフィルター等を用いてもよい。空気導入系全体を清浄化すると、燃料電池のエネルギー損失が大きくなるが、酸化剤ガス系のみを清浄化することで、燃料電池のエネルギー損失を抑制することができる。また、よりきめの細かいフィルターを用いるため、冷却用空気のコンタミネーションを減らすことができ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0042】
反応用空気排出流路は、燃料電池の反応用空気出口と空冷式燃料電池システムの外部とを接続する。反応用空気排出流路は、燃料電池のカソードから排出される反応用空気の空冷式燃料電池システムの外部への排出を可能にする。反応用空気出口は、酸化剤ガス排出孔、カソード出口マニホールド等であってもよい。
反応用空気排出流路は、燃料電池の反応用空気出口の下流に第2バルブを有する。第2バルブは封止弁であってもよく、酸化剤ガス圧力調整弁であってもよい。
第2バルブは、制御部と電気的に接続され、制御部によって第2バルブが開弁されることにより、反応用空気を反応用空気排出流路から外部へ排出する。また、第2バルブの開度を調整することにより、カソードに供給される反応用空気圧力(カソード圧力)を調整してもよい。
【0043】
反応用空気バイパス流路は、反応用空気供給流路から分岐し、燃料電池を迂回し、反応用空気供給流路の分岐部と反応用空気排出流路の合流部とを接続する。
反応用空気バイパス流路には、バイパス弁が配置される。
バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によってバイパス弁が開弁されることにより、燃料電池への反応用空気の供給が不要な場合に燃料電池を迂回して反応用空気を反応用空気排出流路から外部へ排出することができる。第1バルブは、3方弁とすることで、バイパス弁を兼ねることができる。
【0044】
反応用空気流量センサは、反応用空気供給流路に配置されてもよい。
反応用空気流量センサは、酸化剤ガス系内の反応用空気の流量を検出する。反応用空気流量センサは、制御部と電気的に接続される。制御部は、反応用空気流量センサで検出した反応用空気の流量からエアコンプレッサーの回転数を推定してもよい。反応用空気流量センサは、反応用空気供給流路の反応用空気供給部よりも上流に配置されていてもよい。
反応用空気流量センサは、従来公知の流量計等を採用することができる。
【0045】
酸化剤ガス系は入口側反応用空気供給部と第2バルブにより、燃料電池の反応用空気マニホールド内は大気圧以上の圧力(例えば5~15 kPaG)とすることができる。
酸化剤ガス系の第2バルブにより、反応用空気の圧力を上げることができるので、酸素分圧向上と燃料電池の乾燥防止により燃料電池の性能を向上させることができる。
酸化剤ガス系と冷却系を分離しない場合には、反応用空気の流量の約30倍の冷却用空気の圧力も上げる必要が生じ、エネルギー損失は30倍以上となる。
【0046】
燃料電池システムは、燃料ガス系を備える。
燃料ガス系は、燃料電池に燃料ガスを供給する。
燃料ガス系は燃料ガス供給部を備える。
燃料ガス供給部は、燃料ガスを燃料電池のアノードに供給する。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、圧縮水素タンク等が挙げられる。
燃料ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。燃料ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って、燃料ガス供給部の主止弁の開閉が制御されることにより燃料ガスの燃料電池への供給のON/OFFが制御されてもよい。
【0047】
燃料ガス系は、燃料ガス供給流路を備える。燃料ガス供給流路は、具体的には配管であってもよい。
燃料ガス供給流路は、燃料ガス供給部と燃料電池の燃料ガス入口とを接続する。燃料ガス供給流路は、燃料電池のアノードへの燃料ガスの供給を可能にする。燃料ガス入口は、燃料ガス供給孔、アノード入口マニホールド等であってもよい。
燃料ガス供給流路は、燃料電池の燃料ガス入口の上流に第3バルブを有する。
第3バルブは、燃料電池の燃料ガス入口に直接配置されていてもよい。
第3バルブは、エジェクタの上流に配置されていてもよい。
第3バルブは、制御部と電気的に接続され、制御部によって第3バルブが開弁されることにより、燃料ガスを燃料ガス供給流路から燃料電池の燃料ガス入口へ供給する。
【0048】
燃料ガス供給流路には、エジェクタが配置されていてもよい。
エジェクタは、例えば、燃料ガス供給流路上の循環流路との合流部に配置されていてもよい。エジェクタは、燃料ガスと循環ガスとを含む混合ガスを燃料電池のアノードに供給する。エジェクタとしては、従来公知のエジェクタを採用することができる。
【0049】
燃料ガス供給流路の燃料ガス供給部とエジェクタとの間の領域には、調圧弁及び中圧水素センサが配置されていてもよい。
調圧弁は、燃料ガス供給部からエジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調節する。
調圧弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって調圧弁の開閉及び開度等を制御されることにより、エジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調整してもよい。
中圧水素センサは、制御部と電気的に接続され、制御部は、中圧水素センサによって測定された燃料ガスの圧力を検知し、検知した圧力から調圧弁の開閉及び開度等を制御することにより、エジェクタに供給される燃料ガスの圧力を調整してもよい。
【0050】
燃料ガス系は、燃料オフガス排出流路を備える。燃料オフガス排出流路は、具体的には配管であってもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口と燃料電池システムの外部とを接続する。
燃料オフガス排出流路には、燃料ガス出口と燃料電池システムの外部との間の領域に気液分離器が配置されていてもよい。
燃料オフガス排出流路は、循環流路から気液分離器を介して分岐していてもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口から排出される燃料オフガスを燃料電池システムの外部に排出する。燃料ガス出口は、燃料ガス排出孔、アノード出口マニホールド等であってもよい。
【0051】
燃料オフガス排出流路は、燃料電池の燃料ガス出口の下流に第4バルブ(燃料オフガス排出弁、排気排水弁)を有する。
第4バルブは、燃料電池の燃料ガス出口に直接配置されていてもよい。
第4バルブは、燃料オフガス排出流路の気液分離器よりも下流に配置されていてもよい。
第4バルブは、燃料オフガス及び水分等を外部(系外)へ排出することを可能にする。なお、外部とは、燃料電池システムの外部であってもよく、車両の外部であってもよい。
第4バルブは、制御部と電気的に接続され、制御部によって第4バルブの開閉を制御されることにより、燃料オフガスの外部への排出流量及び水分(液水)の排水流量を調整してもよい。また、第4バルブの開度を調整することにより、燃料電池のアノードに供給される燃料ガス圧力(アノード圧力)を調整してもよい。
燃料オフガスは、アノードにおいて未反応のまま通過した燃料ガス及び、カソードで生成した生成水がアノードに到達した水分等を含んでいてもよい。燃料オフガスは、触媒層及び電解質膜等で生成した腐食物質及び、掃気時にアノードに供給されてもよい酸化剤ガス等を含む場合がある。
【0052】
燃料ガス系は、循環流路を備えてもよい。循環流路は、具体的には配管であってもよい。
循環流路は、燃料電池の燃料ガス出口とエジェクタとを接続してもよい。
循環流路は、燃料オフガス排出流路から分岐し、燃料ガス供給流路に配置されるエジェクタと接続することにより燃料ガス供給流路と合流してもよい。
循環流路は、燃料オフガス排出流路から気液分離器を介して分岐し、燃料ガス供給流路に配置されるエジェクタと接続することにより燃料ガス供給流路と合流してもよい。
循環流路は、燃料電池の燃料ガス出口から排出された燃料ガスである燃料オフガスを回収し、循環ガスとして燃料電池に供給することを可能にする。
【0053】
循環流路には、ガス循環ポンプが配置されていてもよい。ガス循環ポンプは、燃料オフガスを循環ガスとして循環させる。ガス循環ポンプは、制御部と電気的に接続され、制御部によってガス循環ポンプの駆動のオン・オフ及び回転数等を制御されることにより、循環ガスの流量を調整してもよい。
【0054】
循環流路には、気液分離器(アノード気液分離器)が配置されていてもよい。
気液分離器は、燃料オフガス排出流路と循環流路との分岐点に配置されていてもよい。したがって、燃料ガス出口から気液分離器までの流路は、燃料オフガス排出流路であってもよく、循環流路であってもよい。
気液分離器は、燃料オフガス排出流路の第4バルブよりも上流に配置される。
気液分離器は、燃料ガス出口から排出される燃料ガスである燃料オフガスと水分(液水)を分離する。これにより、燃料オフガスを循環ガスとして循環流路に戻してもよいし、不要なガス及び水分等を燃料オフガス排出流路の排気排水弁を開弁して外部に排出してもよい。また、気液分離器により、余分な水分が循環流路に流れることを抑制することができるため、当該水分による循環ポンプ等の凍結の発生を抑制することができる。
【0055】
温度取得部は、燃料電池の温度を測定する。
温度取得部は、制御部と電気的に接続され、制御部は、温度取得部によって測定された燃料電池の温度を検知する。
温度取得部は、従来公知の温度センサ、温度計等を用いることができる。
【0056】
燃料電池システムは、二次電池を備えていてもよい。
二次電池(バッテリ)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、電動機及びエアコンプレッサー等に電力を供給する。二次電池は、例えば、車両の外部の電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。二次電池の充放電は、制御部によって制御されてもよい。
【0057】
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)等の制御装置であってもよい。
制御部は、車両に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。制御部はイグニッションスイッチが切られていても外部電源により動作可能であってもよい。
【0058】
制御部は、温度取得部で測定された温度を監視する。制御部は、燃料電池の運転中に温度取得部で測定された温度を監視してもよい。
制御部は、温度取得部で測定された温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えたときに、第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、及び、第4バルブの開度を判定時の開度よりも小さくする。
制御部は、温度取得部で測定された温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えたときに、燃料電池の発電を停止してもよい。
制御部は、燃料電池の発電停止時に、第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、及び、第4バルブを閉弁してもよい。
所定の温度閾値、所定の速度閾値は、燃料電池の性能に応じて適宜設定してもよい。
【0059】
図1は、本開示の空冷式燃料電池システムの一例を示す概略構成図である。
図1に示す空冷式燃料電池システムは、燃料電池10、空気系20、酸化剤ガス系30、冷却系40、燃料ガス系50、制御部60、温度取得部70を有する。
空気系20は、フィルター及び空気分配部を備えた空気導入部21を有する。
空気導入部21で取り込まれた空気は、空気分配部によって酸化剤ガス系30、冷却系40に分配される。
酸化剤ガス系30は、フィルター31、反応用空気供給部32、反応用空気供給流路33、反応用空気排出流路34、第1バルブ35、第2バルブ36を有する。
反応用空気供給流路33には、空気の流れ方向に沿ってフィルター31、反応用空気供給部32、第1バルブ35が配置される。
反応用空気排出流路34には、第2バルブ36が配置される。
冷却系40は、冷却用空気供給流路41、冷却用空気排出流路42、冷媒駆動部43を有する。
燃料ガス系50は、燃料ガス供給部51、燃料ガス供給流路52、燃料オフガス排出流路53、循環流路54、気液分離器55、ガス循環ポンプ56、第3バルブ(インジェクタ等)57、第4バルブ(パージ弁等)58を有する。
温度取得部70は、燃料電池10の温度を取得し、制御部60は、温度取得部70が取得した温度を検知する。
【0060】
図2は、本開示の空冷式燃料電池システムの別の一例を示す概略構成図である。
図2において
図1と同じ構成については同じ番号を付し、その説明は省略する。
図2の空冷式燃料電池システムでは、空気系20は、酸化剤ガス系30に空気を供給する反応用空気導入部22、冷却系40に空気を供給する冷却用空気導入部23を有する。反応用空気導入部22、冷却用空気導入部23は、それぞれフィルターを有する。
酸化剤ガス系30、冷却系40は、それぞれ大気からフィルターを通して空気を取り込む。
酸化剤ガス系30は、フィルター31、反応用空気供給部32、反応用空気供給流路33、反応用空気排出流路34、第1バルブ35、第2バルブ36、反応用空気バイパス流路37を有する。
反応用空気供給流路33には、空気の流れ方向に沿ってフィルター31、反応用空気供給部32、第1バルブ35が配置される。第1バルブ35は三方弁であり、燃料電池10を迂回して反応用空気を反応用空気バイパス流路37から反応用空気排出流路34に流すことを可能にする。
反応用空気排出流路34には、第2バルブ36が配置される。
燃料ガス系50は、燃料ガス供給部51、燃料ガス供給流路52、燃料オフガス排出流路53、循環流路54、気液分離器55、第3バルブ(インジェクタ等)57、第4バルブ(パージ弁等)58、エジェクタ59を有する。
【0061】
図3は、本開示の空冷式燃料電池システムの制御の一例を示すフローチャートである。
制御部は、燃料電池の運転中に温度取得部で測定された温度を監視する。
制御部は、温度取得部で測定された温度が所定の温度閾値を超えているか否か、又は、温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えているか否か判定する。
制御部は、温度取得部で測定された温度が所定の温度閾値を超えたとき、又は、温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値を超えたときに、第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、及び、第4バルブの開度を判定時の開度よりも小さくするか、又は、燃料電池の発電を停止する。制御部は、燃料電池の発電停止時に、第1バルブ、第2バルブ、第3バルブ、及び、第4バルブを閉弁してもよい。制御部は、温度取得部で測定された温度が所定の温度閾値以下のとき、又は、温度の上昇速度が所定の昇温速度閾値以下のときは、制御を終了するか、現状を維持してもよい。
【0062】
過昇温が見られた場合、反応空気系のバルブを封止する。これにより燃料電池の酸素欠により燃料電池の電圧が低下し、安全に燃料電池の発電を停止することができる。また、燃料電池の劣化を抑えることができる。燃料電池内で発火した場合でも、酸素が遮断されることで、延焼を防ぐことができる。
封止された燃料ガス系の水素モル数が、封止された反応空気系の酸素モル数の2倍よりも大きくなることにより、燃料電池システム内の酸素が消費され、燃料電池の電圧が下がる。また、燃料電池内が水素リッチな状態で封止されているため、燃料電池の劣化の進行を遅くすることができる。酸素を完全に消費するために、反応空気系を封止した後、所定の時間、燃料ガスの供給は継続して、ある程度酸素の消費が進んでから、燃料ガス系を封止してもよい。すなわち、第1バルブ及び第2バルブを閉じた後、所定時間経過後に第3バルブ及び第4バルブを閉じてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 燃料電池
20 空気系
21 空気導入部
22 反応用空気導入部
23 冷却用空気導入部
30 酸化剤ガス系
31 フィルター
32 反応用空気供給部
33 反応用空気供給流路
34 反応用空気排出流路
35 第1バルブ
36 第2バルブ
37 反応用空気バイパス流路
40 冷却系
41 冷却用空気供給流路
42 冷却用空気排出流路
43 冷媒駆動部
50 燃料ガス系
51 燃料ガス供給部
52 燃料ガス供給流路
53 燃料オフガス排出流路
54 循環流路
55 気液分離器
56 ガス循環ポンプ
57 第3バルブ
58 第4バルブ
59 エジェクタ
60 制御部
70 温度取得部