(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車体後部補強構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/02 20060101AFI20240717BHJP
B62D 25/04 20060101ALI20240717BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B62D25/02 A
B62D25/04 B
B62D25/04 D
B62D25/08 K
(21)【出願番号】P 2021096146
(22)【出願日】2021-06-08
【審査請求日】2023-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/02
B62D 25/04
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に開口するバックドア開口部の側縁部を形成するリヤピラーを備え、
前記リヤピラーは、前記車体の前向きに上り傾斜して延びる上部分と、前記車体の下向きに延びる下部分と、前記上部分と前記下部分とを接続する屈曲部と、を有する車体後部補強構造であって、
前記リヤピラーは、リヤピラーインナパネルと、前記リヤピラーインナパネルに車幅方向の外側から接続されたリヤピラーアウタパネルと、によって閉断面を構成し、
前記リヤピラーアウタパネルは、前記車体の前記後部において前記車幅方向の最も外側に位置して外装面を構成するリヤクォータパネルに覆われており、
前記リヤピラーにおける前記屈曲部よりも上方の第1位置から前記屈曲部よりも下方の第2位置までの範囲を特定範囲とし、
前記車体の捩じれ時に前記特定範囲に作用する圧縮力の方向を特定圧縮方向とし、
前記特定範囲を前記リヤピラーが延びる方向に直交する断面で見た場合、
前記リヤピラーインナパネルは、前記閉断面の前端から前記車幅方向の内側に延びながら前記車体の後向きに傾斜する第1壁と、前記閉断面の後端から少なくとも前記前向きに延びて前記第1壁に接続する第2壁と、を有し、
前記リヤピラーアウタパネルは、前記閉断面の前記前端と前記後端との間で前記特定圧縮方向と平行に延びる第3壁を有していることを特徴とする車体後部補強構造。
【請求項2】
前記第2壁と前記第3壁とは、前記特定範囲内の少なくとも一部の区間において前記閉断面の前記後端で接続している請求項1記載の車体後部補強構造。
【請求項3】
前記リヤピラーアウタパネルは、前記特定範囲内の少なくとも一部の区間において、前記閉断面の前記前端から少なくとも前記後向きに延びて前記第3壁に接続する第4壁を有している請求項1又は2記載の車体後部補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体後部補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車体後部補強構造が開示されている。この車体後部補強構造は、リヤピラーを備えている。リヤピラーは、上補強部材及び下補強部材によって、車体の後部に開口するバックドア開口部の側縁部を形成している。
【0003】
リヤピラーの下補強部材は、車体の前向きに上り傾斜して延びる上部分と、車体の下向きに延びる下部分と、上部分と下部分とを接続する屈曲部と、を有している。また、下補強部材は、断面「L」字形状の内側部材と、内側部材に車幅方向の外側から接続された断面「コ」字形状の外側部材と、によって閉断面を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の車体後部補強構造では、車体の捩じれ時にリヤピラーの下補強部材における屈曲部及びその周辺に圧縮力が作用し易く、その圧縮力によって閉断面がつぶれるように変形し易いため、屈曲部及びその周辺の剛性の向上が求められている。このため、リヤピラーを構成するパネルの板厚を増加させたり、そのパネルに補強板を追加したり、リヤピラーの閉断面に発泡材料等を充填したりすることが考えられるが、それらの場合、車体重量の増加及び製造コストの高騰を招き易くなる。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、車体重量の増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、リヤピラーの屈曲部及びその周辺において剛性の向上を実現できる車体後部補強構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車体後部補強構造は、車体の後部に開口するバックドア開口部の側縁部を形成するリヤピラーを備え、
前記リヤピラーは、前記車体の前向きに上り傾斜して延びる上部分と、前記車体の下向きに延びる下部分と、前記上部分と前記下部分とを接続する屈曲部と、を有する車体後部補強構造であって、
前記リヤピラーは、リヤピラーインナパネルと、前記リヤピラーインナパネルに車幅方向の外側から接続されたリヤピラーアウタパネルと、によって閉断面を構成し、
前記リヤピラーアウタパネルは、前記車体の前記後部において前記車幅方向の最も外側に位置して外装面を構成するリヤクォータパネルに覆われており、
前記リヤピラーにおける前記屈曲部よりも上方の第1位置から前記屈曲部よりも下方の第2位置までの範囲を特定範囲とし、
前記車体の捩じれ時に前記特定範囲に作用する圧縮力の方向を特定圧縮方向とし、
前記特定範囲を前記リヤピラーが延びる方向に直交する断面で見た場合、
前記リヤピラーインナパネルは、前記閉断面の前端から前記車幅方向の内側に延びながら前記車体の後向きに傾斜する第1壁と、前記閉断面の後端から少なくとも前記前向きに延びて前記第1壁に接続する第2壁と、を有し、
前記リヤピラーアウタパネルは、前記閉断面の前記前端と前記後端との間で前記特定圧縮方向と平行に延びる第3壁を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明の車体後部補強構造において、リヤピラーインナパネルと共に閉断面を構成するリヤピラーアウタパネルは、リヤピラーにおける屈曲部及びその周辺を含む特定範囲において、第3壁を有している。そして、第3壁は、閉断面の前端と後端との間で特定圧縮方向と平行に延びることにより、車体の捩じれ時にリヤピラーの特定範囲に作用する圧縮力に対して確実性高く突っ張ることができ、その圧縮力によって閉断面がつぶれるように変形することを確実性高く抑制できる。
【0009】
その結果、この車体後部補強構造は、リヤピラーインナパネル及びリヤピラーアウタパネルの少なくとも一方の板厚を増加させたり、リヤピラーインナパネル及びリヤピラーアウタパネルの少なくとも一方に補強板を追加したり、リヤピラーインナパネル及びリヤピラーアウタパネルによって構成される閉断面に発泡材料等を充填したりする必要性を減らし、又は無くすことができる。
【0010】
したがって、本発明の車体後部補強構造は、車体重量の増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、リヤピラーの屈曲部及びその周辺において剛性の向上を実現できる。
【0011】
第2壁と第3壁とは、特定範囲内の少なくとも一部の区間において閉断面の後端で接続していることが望ましい。この場合、第3壁と閉断面の後端との間に介在して圧縮力によって変形し得る壁を減らし、又は無くすことができる。その結果、第3壁は、車体の捩じれ時にリヤピラーの特定範囲に作用する圧縮力に対して一層確実性高く突っ張ることができ、その圧縮力によって閉断面がつぶれるように変形することを一層確実性高く抑制できる。
【0012】
リヤピラーアウタパネルは、特定範囲内の少なくとも一部の区間において、閉断面の前端から少なくとも後向きに延びて第3壁に接続する第4壁を有していることが望ましい。この場合、閉断面の形状の自由度が低下することを第4壁によって抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車体後部補強構造は、車体重量の増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、リヤピラーの屈曲部及びその周辺において剛性の向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例の車体後部補強構造が適用された車両の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例の車体後部補強構造の部分斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例の車体後部補強構造の部分斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例の車体後部補強構造に係り、リヤピラーを示す部分側面図である。
【
図5】
図5は、実施例の車体後部補強構造が適用された車両の模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
(実施例)
図1~
図4に示すように、実施例の車体後部補強構造1は、本発明の車体後部補強構造の具体的態様の一例であり、乗用自動車の車体9に適用されている。本実施例では、特に説明しない場合、車体9を構成するパネル部材がプレス加工された鋼板製であって、パネル部材同士がスポット溶接によって接続されている。
【0017】
なお、本発明に係るパネル部材は鋼板製には限定されず、例えばアルミ板製等であってもよい。また、パネル部材の接続方法もスポット溶接には限定されず、例えばレーザー溶接等であってもよい。
【0018】
また、車体後部補強構造1は、車体9における左側面側と右側面側で勝手違いの同一構成である。このため、
図1~
図4に示す車体9の左側面側の構成について説明し、車体9の右側面側の構成については説明及び図示を省略する。
【0019】
図1に示すように、車体9は、車体9の上部に位置して車室を覆うルーフパネル8と、車体9の床部分を構成するフロアパネル6と、後輪4Tを収容するリヤホイールハウス4とを有している。
【0020】
また、車体9は、リヤクォータパネル5を有している。リヤクォータパネル5は、リヤドア開口部9Dよりも後方において車幅方向の最も外側に位置して外装面を構成している。なお、
図2及び
図3では、リヤクォータパネル5が車体9から取り除かれている。
【0021】
図1に示すように、リヤクォータパネル5の上部は、ルーフパネル8に接続されている。リヤクォータパネル5の下部は、フロアパネル6及びリヤホイールハウス4に接続されている。リヤクォータパネル5の上部分には、リヤクォータガラス開口部9Gが開口している。
【0022】
図1~
図3に示すように、車体9の後部には、バックドア開口部7が開口している。
図1に示すように、バックドア開口部7は、バックドア7Dによって閉鎖及び開放される。
【0023】
バックドア7Dの上部分には、バックドアガラス7Gが組み付けられている。バックドアガラス7Gは、車体9の前向きに上り傾斜し、かつ車幅方向に延びている。バックドア7Dの下部分は、バックドアガラス7Gの下端から車体9の略鉛直方向下向きに延び、かつ車幅方向に延びている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、車体後部補強構造1は、ルーフサイドレール80を備えている。ルーフサイドレール80は、車体9の上部で前後方向に延びてリヤドア開口部9Dの上縁部を形成し、さらにリヤドア開口部9Dよりも後方まで延びて、ルーフパネル8の側端縁を補強している。
【0025】
車体後部補強構造1は、
図2及び
図3に示すCピラー60及びルーフサイドインナパネル30と、
図1~
図4に示すリヤピラー70と、
図2に示すルーフサイドリンフォースパネル40とをさらに備えている。
【0026】
Cピラー60は、
図3に示すCピラーインナパネル61と、
図2に示すCピラーアウタパネル62とを有している。Cピラー60は、Cピラーインナパネル61と、Cピラーインナパネル61に車幅方向の外側から接続されたCピラーアウタパネル62と、によって閉断面を構成している。
【0027】
図2に示すように、Cピラー60は、上下方向に延びてリヤドア開口部9Dの後縁部を形成している。Cピラー60の上端は、ルーフサイドレール80に接続されている。Cピラー60の下端は、リヤホイールハウス4に接続されている。
【0028】
図1及び
図2に示すように、リヤピラー70は、バックドア開口部7の側縁部を形成している。リヤピラー70の上端は、ルーフサイドレール80の後端に接続されている。
【0029】
図4に示すように、リヤピラー70は、上部分70U、下部分70D及び屈曲部70Bを有している。
【0030】
上部分70Uは、バックドアガラス7Gの側端縁に沿うように車体9の前向きに上り傾斜して延びている。下部分70Dは、バックドア7Dの下部分の側端縁に沿うように車体9の略鉛直方向下向きに延びている。
【0031】
屈曲部70Bは、上部分70Uと下部分70Dとを接続している。屈曲部70Bは、上部分70Uと下部分70Dとの間である程度の長さを有して延びる方向が変化している。
【0032】
リヤピラー70は、
図3に示すリヤピラーインナパネル10と、
図2及び
図4に示すリヤピラーアウタパネル20とを有している。リヤピラー70は、リヤピラーインナパネル10と、リヤピラーインナパネル10に車幅方向の外側から接続されたリヤピラーアウタパネル20とによって閉断面を構成している。
【0033】
図5に示すように、車体9の左側面側で前後方向に延びる仮想線をLW1とする。仮想線LW1と車体9の左側面との間で前後方向に延びる仮想線をLW2とする。
【0034】
図6~
図10は、
図4に示す5カ所におけるリヤピラー70の閉断面71(71A、71B、71C、71D、71E)を図示している。また、閉断面71(71A~71E)同士の車幅方向の位置関係を判り易くするため、
図6~
図10に仮想線LW1、LW2を図示している。リヤピラー70の閉断面71の具体的形状については、後で詳しく説明する。
【0035】
図4及び
図6~
図8に示すように、リヤピラー70は、リヤピラーサブパネル29を有している。リヤピラーサブパネル29は、リヤピラーアウタパネル20の後端に接続し、車幅方向の外側に向かって延びている。
【0036】
リヤピラーサブパネル29の上部分は、
図1に示すリヤクォータパネル5の後端部に接続されている。リヤピラーサブパネル29の下部分は、
図1に示すテールランプ7Lにおける車体9側に設けられた一部を収容する凹部を形成している。
【0037】
図2に示すように、ルーフサイドインナパネル30の前端縁30Fは、Cピラー60に接続されている。ルーフサイドインナパネル30の後縁端30Rは、リヤピラー70の上部分70Uに接続されている。ルーフサイドインナパネル30の上端縁30Uは、ルーフサイドレール80に接続されている。
【0038】
図3に示すように、ルーフサイドインナパネル30の下端縁30Dは、リヤホイールハウス4から上向きに延びる下側サイドインナパネル50の上端縁に接続されている。
【0039】
こうして、ルーフサイドインナパネル30は、ルーフサイドにおけるルーフサイドレール80、Cピラー60及びリヤピラー70によって囲まれた領域を補強している。
【0040】
また、ルーフサイドインナパネル30は、開口部30Gを有している。開口部30Gの位置及び形状は、
図1に示すリヤクォータガラス開口部9Gに整合している。
【0041】
図2に示すように、ルーフサイドリンフォースパネル40は、ルーフサイドインナパネル30に対して車幅方向の外側に位置し、かつ上下方向において、ルーフサイドインナパネル30における開口部30Gと下端縁30Dとの間に位置している。
【0042】
ルーフサイドリンフォースパネル40は、断面略ハット形状をなして前後方向に延びており、上端縁及び下端縁がルーフサイドインナパネル30に接続されている。
【0043】
ルーフサイドリンフォースパネル40の前端は、Cピラー60に接続されている。ルーフサイドリンフォースパネル40の後端は、リヤピラー70の上部分70Uにおける屈曲部70Bに近い部位に接続されている。
【0044】
こうして、ルーフサイドリンフォースパネル40は、ルーフサイドインナパネル30、Cピラー60及びリヤピラー70を補強している。
【0045】
次に、リヤピラー70の閉断面71の具体的形状について詳しく説明する。
図4に示すように、車体後部補強構造1は、リヤピラー70の屈曲部70B及びその周辺において剛性の向上を実現するため、リヤピラー70について、第1位置P1、第2位置P2及び特定範囲E1を設定し、特定範囲E1内において閉断面71を以下に説明する特徴的な形状としている。
【0046】
第1位置P1は、リヤピラー70における屈曲部70Bよりも上方の位置であって、屈曲部70Bの上端から100mm程度上方かつ前方に離れている。
【0047】
第2位置P2は、リヤピラー70における屈曲部70Bよりも下方の位置であって、屈曲部70Bの下端から100mm程度下方に離れている。
【0048】
特定範囲E1は、リヤピラー70における第1位置P1から第2位置P2までの範囲である。
【0049】
A-A断面は、特定範囲E1外であって、リヤピラー70の上部分70Uにおける第1位置P1よりも上方に位置する部分の特徴を代表する断面である。
【0050】
B-B断面は、特定範囲E1内であって、リヤピラー70の上部分70Uにおける第1位置P1と屈曲部70Bの上端との間に位置する部分の特徴を代表する断面である。
【0051】
C-C断面は、特定範囲E1内であって、リヤピラー70の屈曲部70Bの特徴を代表する断面である。
【0052】
D-D断面は、特定範囲E1内であって、リヤピラー70の下部分70Dにおける屈曲部70Bの下端と第2位置P2との間に位置する部分の特徴を代表する断面である。
【0053】
E-E断面は、特定範囲E1外であって、リヤピラー70の下部分70Dにおける第2位置P2よりも下方に位置する部分の特徴を代表する断面である。
【0054】
A-A断面、B-B断面、C-C断面、D-D断面及びE-E断面はそれぞれ、リヤピラー70が延びる方向に直交している。
【0055】
車体9の開発において、ソフトウェアを用いてプログラム上で車体後部補強構造1の三次元モデルを作成し、その三次元モデルに対して静的荷重や動的荷重を加えることで生じる変位や挙動を算出する構造解析手法が一般的に実施されている。
【0056】
発明者は、そのような構造解析手法を用いてリヤピラー70について詳しく検討し、車体9の捩じれ時にリヤピラー70の特定範囲E1及びその周辺に作用する圧縮力を算出した。それらの圧縮力を
図4及び
図6~
図10において白抜き矢印で示す。
【0057】
図7~
図9に示すように、車体9の捩じれ時にリヤピラー70の特定範囲E1に作用する圧縮力の方向を特定圧縮方向D1とする。特定圧縮方向D1は、車体9の前後方向及び車幅方向に対して傾斜している。
図6及び
図10に示すように、車体9の捩じれ時にリヤピラー70の特定範囲E1とは異なる部分に作用する圧縮力の方向は、特定圧縮方向D1と略平行である。
【0058】
特定範囲E1を
図7に示すB-B断面、
図8に示すC-C断面及び
図9に示すD-D断面で見た場合、リヤピラーインナパネル10は、第1壁11及び第2壁12を有し、リヤピラーアウタパネル20は、第3壁23及び第4壁24を有している。
【0059】
特定範囲E1外を
図6に示すA-A断面及び
図10に示すE-E断面で見た場合も、リヤピラーインナパネル10は、第1壁11及び第2壁12を有し、リヤピラーアウタパネル20は、第3壁23及び第4壁24を有している。
【0060】
図6~
図10に示すように、第1壁11は、閉断面71(71A~71E)の前端71Fから車幅方向の内側に延びながら車体9の後向きに傾斜している。第2壁12は、閉断面71の後端71Rから前向きに延びながら車幅方向の外側に向かって傾斜して第1壁11に接続している。
【0061】
図7に示すB-B断面及び
図8に示すC-C断面で見た場合、第3壁23は、閉断面71(71B、71C)の前端71Fと後端71Rとの間で特定圧縮方向D1と平行に延びている。また、第2壁12と第3壁23とは、閉断面71(71B、71C)の後端71Rで接続している。第4壁24は、閉断面71(71B、71C)の前端71Fから後向きに延びながら車幅方向の内側に向かって傾斜して第3壁23に接続している。
【0062】
図9に示すD-D断面で見た場合、リヤピラーアウタパネル20は、第5壁25をさらに有している。第2壁12と第5壁25とは、閉断面71(71D)の後端71Rで接続している。第3壁23は、閉断面71(71D)の前端71Fと後端71Rとの間で第5壁25と接続し、特定圧縮方向D1と平行に延びている。第4壁24は、閉断面71(71D)の前端71Fから後向きに延びて第3壁23に接続している。
【0063】
つまり、第3壁23は、特定範囲E1内の全区間において閉断面71(71B~71D)の前端71Fと後端71Rとの間で特定圧縮方向D1と平行に延びている。第2壁12と第3壁23とは、特定範囲E1内の一部の区間において閉断面71(71B、71C)の後端71Rで接続している。
【0064】
図10に示すE-E断面で見た場合も、第2壁12と第5壁25とは、閉断面71(71E)の後端71Rで接続している。第3壁23は、閉断面71(71E)の前端71Fと後端71Rとの間で第5壁25と接続し、特定圧縮方向D1とは異なる方向であって車幅方向の外側に向けて延びている。第4壁24は、閉断面71(71E)の前端71Fから後向きに延びながら車幅方向の内側に向かって傾斜して第3壁23に接続している。
【0065】
図6に示すA-A断面で見た場合、リヤピラーアウタパネル20は、第6壁26をさらに有している。第2壁12と第6壁26とは、閉断面71(71A)の後端71Rで接続している。第3壁23は、閉断面71(71A)の前端71Fと後端71Rとの間で第6壁26と接続し、特定圧縮方向D1とは異なる方向であって車幅方向の外側に向けて延びている。第4壁24は、閉断面71(71A)の前端71Fから後向きに延びながら車幅方向の内側に向かって傾斜して第3壁23に接続している。
【0066】
<作用効果>
実施例の車体後部補強構造1において、リヤピラーインナパネル10と共に閉断面71を構成するリヤピラーアウタパネル20は、
図7~
図9に示すように、リヤピラー70における屈曲部70B及びその周辺を含む特定範囲E1において、第3壁23を有している。そして、第3壁23は、閉断面71(71B~71D)の前端71Fと後端71Rとの間で特定圧縮方向D1と平行に延びている。
【0067】
これにより、第3壁23は、車体9の捩じれ時にリヤピラー70の特定範囲E1に作用する圧縮力に対して確実性高く突っ張ることができ、その圧縮力によって閉断面71がつぶれるように変形することを確実性高く抑制できる。
【0068】
その結果、この車体後部補強構造1は、リヤピラーインナパネル10及びリヤピラーアウタパネル20の少なくとも一方の板厚を増加させたり、リヤピラーインナパネル10及びリヤピラーアウタパネル20の少なくとも一方に補強板を追加したり、リヤピラーインナパネル10及びリヤピラーアウタパネル20によって構成される閉断面71に発泡材料等を充填したりする必要性を減らし、又は無くすことができる。
【0069】
したがって、実施例の車体後部補強構造1は、車体9の重量の増加及び製造コストの高騰を抑制しつつ、リヤピラー70の屈曲部70B及びその周辺において剛性の向上を実現できる。
【0070】
また、この車体後部補強構造1において、
図7及び
図8に示すように、第2壁12と第3壁23とは、特定範囲E1内の一部の区間において閉断面71(71B、71C)の後端71Rで接続している。この構成により、第3壁23と閉断面71の後端71Rとの間に介在して圧縮力によって変形し得る壁を減らし、又は無くすことができる。その結果、第3壁23は、車体9の捩じれ時にリヤピラー70の特定範囲E1に作用する圧縮力に対して一層確実性高く突っ張ることができ、その圧縮力によって閉断面71がつぶれるように変形することを一層確実性高く抑制できる。
【0071】
さらに、この車体後部補強構造1において、
図7~
図9に示すように、リヤピラーアウタパネル20は、特定範囲E1内の全区間において、閉断面71(71B~71D)の前端71Fから少なくとも後向きに延びて第3壁23に接続する第4壁24を有している。このような第4壁24により、閉断面71の形状の自由度が低下することを抑制できる。
【0072】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0073】
図9に示すD-D断面において第5壁25を無くし、第2壁12と第3壁23とが特定範囲E1内の全区間において閉断面71(71B、71C、71D)の後端71Rで接続するように変更した構成も本発明に含まれる。また、
図10に示すE-E断面において第5壁25を無くしたり、
図6に示すA-A断面において第6壁26を無くしたりすることも可能である。
【0074】
実施例では、特定範囲E1内の全区間においてリヤピラーアウタパネル20が第4壁24を有しているが、本発明はこの構成には限定されない。例えば、特定範囲内の少なくとも一部の区間において第4壁を無くし、第1壁と第3壁とが閉断面の前端で接続する構成や、特定範囲内の少なくとも一部の区間において閉断面が第1壁、第2壁及び第3壁のみによって三角形状に形成される構成も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、乗用自動車の他、運送車両や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…車体後部補強構造
9…車体
7…バックドア開口部
70…リヤピラー
70U…上部分
70D…下部分
70B…屈曲部
10…リヤピラーインナパネル
20…リヤピラーアウタパネル
71…閉断面
P1…第1位置
P2…第2位置
E1…特定範囲
D1…特定圧縮方向
71F…閉断面の前端
11…第1壁
71R…閉断面の後端
12…第2壁
23…第3壁
24…第4壁