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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】切断溶接装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20240717BHJP
   H01T 19/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01T13/20 E
H01T19/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021125218
(22)【出願日】2021-07-30
(65)【公開番号】P2023020059
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 隼矢
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/035655(WO,A1)
【文献】実開昭57-178403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
H01T 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のワーク(W)を切断してハウジング(H)に溶接する切断溶接装置(X)であって、
ハウジングを保持して上下に移動可能なハウジング供給装置(1)と、
水平方向に中心軸を有する円板の外周面から径内方向に凹む凹部(51)が周方向に複数形成されており、外部のワーク供給装置から前記凹部に一端が挿入されたワークを保持して周方向に回転するワーク回転装置(5)と、
ワークの前記凹部から露出した部分を所定の長さに切断するワーク切断装置(7)と、
ワーク回転装置に保持されたワークの切断部とハウジング供給装置に保持されたハウジングとを溶接する溶接装置(9)と、
を備え
前記ワークは点火プラグに取り付ける銅入り接地電極であり、前記ハウジングは前記点火プラグのハウジングである切断溶接装置。
【請求項2】
棒状のワーク(W)を切断してハウジング(H)に溶接する切断溶接方法(100)であって、
ハウジングを保持して上下に移動可能なハウジング供給装置(1)がハウジングを供給するハウジング供給ステップ(101)と、
水平方向に中心軸を有する円板の外周面から径内方向に凹む凹部(51)が周方向に複数形成されたワーク回転装置(5)に対し、外部のワーク供給装置から前記凹部にワークの一端が挿入されるワーク供給ステップ(103)と、
前記ワーク回転装置が前記凹部に挿入されたワークを保持して周方向に回転するワーク回転ステップ(105)と、
ワーク切断装置(5)がワークの前記凹部から露出した部分を所定の長さに切断するワーク切断ステップ(107)と、
溶接装置(9)が前記ワーク回転装置の前記凹部に挿入されたワークの切断部と前記ハウジング供給装置に保持されたハウジングとを溶接する溶接ステップ(109)と、
を含み、
前記ワークは点火プラグに取り付ける銅入り接地電極であり、前記ハウジングは前記点火プラグのハウジングである切断溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば点火プラグを製造する際、接地電極をハウジングに溶接する方法が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、所定長さに切断した接地電極用素材を、溶接用治具に固定し、主体金具(ハウジング)の先端側に、接地電極用素材の基端側を溶接する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-270189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、銅入り接地電極を切断してハウジングに溶接する工程では、ハウジングを作業者がシャトル治具で投入、銅入り接地電極をパーツフィーダから投入する必要があり、接地電極の切断、溶接といった工程に搬送ローダで銅入り接地電極を供給していた。しかし、作業効率が悪いため必ず一定の工数を要し、対策も進んでいなかった。
【0006】
本発明はこの点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、回転式接地電極搬送方式を採用してシンプル且つコンパクトに構成した装置により、供給、切断、溶接の工程毎のピックアンドプレース(以下「P&P」)を廃して作業を効率化し、同時に装置の小型化を実現する切断溶接装置及び切断溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第一の態様)
本発明の第一の態様は、棒状のワーク(W)を切断してハウジング(H)に溶接する切断溶接装置(X)であって、ハウジング供給装置(1)と、ワーク回転装置(5)と、ワーク切断装置(7)と、溶接装置(9)とを備える。
【0008】
ワーク回転装置は、水平方向に中心軸を有する円板の外周面から径内方向に凹む凹部(51)が周方向に複数形成されており、外部のワーク供給装置から前記凹部に一端が挿入されたワークを保持して周方向に回転する。ワーク切断装置は、ワークの前記凹部から露出した部分を所定の長さに切断する。ハウジング供給装置は、ハウジングを保持して上下に移動可能である。溶接装置は、ワーク回転装置に保持されたワークの切断部とハウジング供給装置に保持されたハウジングとを溶接する。ワークは点火プラグに取り付ける銅入り接地電極であり、ハウジングは点火プラグのハウジングである。
【0009】
(第一の態様の効果)
本発明の第一の態様により、供給、切断、溶接工程がスムーズに接続され、工程毎のP&P作業が不要となって作業が効率化され、また装置の小型化が実現される。
【0010】
(第二の態様)
【0011】
本発明の第二の態様は、棒状のワーク(W)を切断してハウジング(H)に溶接する切断溶接方法(100)であって、ハウジング供給ステップ(101)と、ワーク供給ステップ(103)と、ワーク回転ステップ(105)と、ワーク切断ステップ(107)と、溶接ステップ(109)とを含む。
【0012】
ハウジング供給ステップでは、ハウジングを保持して上下に移動可能なハウジング供給装置(1)がハウジングを供給する。ワーク供給ステップでは、ワークを把持して上下又は水平に移動可能なワーク供給装置によって、水平方向に中心軸を有する円板の外周面から径内方向に凹む凹部(51)が周方向に複数形成されたワーク回転装置(5)の凹部(51)に対し、外部のワーク供給装置から前記ワークの一端が挿入される。ワーク回転ステップでは、前記ワーク回転装置が前記凹部に挿入されたワークを保持して回転する。ワーク切断ステップでは、ワーク切断装置(7)がワークを所定の長さに切断する。溶接ステップでは、溶接装置(9)が前記ワーク回転装置の前記凹部に挿入されたワークの切断部と前記ハウジング供給装置に保持されたハウジングとを溶接する。ワークは点火プラグに取り付ける銅入り接地電極であり、ハウジングは点火プラグのハウジングである。
【0013】
(第二の態様の効果)
本発明の第二の態様により、第一の態様と同じ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態の概略斜視図。
図2】一実施形態の全体ワークフロー。
図3】一実施形態の拡大斜視図。
図4】一実施形態の拡大正面図。
図5】一実施形態の溶接ワークフロー。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態による装置とそれを用いる方法を図面に基づいて説明する。この実施形態では、切断される「ワーク」は点火プラグに取り付ける銅入り接地電極、「ハウジング」は点火プラグのハウジングであり、どちらも略円筒形である。また、各構成要件(装置、部品、ステップ等)は初出の際にかぎ括弧「」を付して示す。
【0016】
(一実施形態)
図1に、一実施形態の全体像を示す。これは「ワークW」を切断して「ハウジングH」に溶接する「切断溶接装置X」であって、「ハウジング供給装置1」と、「インデックステーブルZ」と、「ワーク供給装置3」と、「凹部51」を有する「ワーク回転装置5」と、「ワーク切断装置7」と、「溶接装置9」とを備える。
【0017】
また、図2に一実施形態の全体ワークフローを示す。これは、切断溶接装置Xを用いる切断溶接方法100であって、「ハウジング供給ステップ101」と、「ワーク供給ステップ103」と、「ワーク回転ステップ105」と、「ワーク切断ステップ107」と、「溶接ステップ109」とを含む。
【0018】
[ハウジング供給装置とハウジング供給ステップ]
図3図4に一実施形態の主要部を拡大して示す。ハウジング供給装置1はハウジングHを保持して上下に移動可能な装置であって、突上げ装置11を有する。ハウジング供給装置1はハウジングHの下部を収容可能な円筒形の空間を内部に有し、インデックステーブルZに設置された「貫通孔hZ」に挿入されて使用される。なお、図3のF1~F8については図5を参照して後述する。
【0019】
本実施形態では、インデックステーブルZの「中心点cZ」を中心とする円を45°毎に分割する線上に貫通孔hZが各1個、計8個設けられ、それぞれハウジング供給装置1が設置され得る。
【0020】
ハウジング供給装置1には、図示しないピックアンドプレース(以下「P&P」)装置が併設されている。このP&P装置がハウジングHをピックアップし、ハウジング供給装置1に挿入する(「ステップ1.1」)。インデックステーブルZは各ステップ45°ずつ回転し、溶接装置9の直下までハウジングHを移動させる(「ステップ1.2」)。
【0021】
ハウジング供給装置1の下側には「突上げ装置11」が設置されている(図4)。溶接装置9の直下において、突上げ装置11はハウジング供給装置1に挿入されたハウジングHをハウジング供給装置1ごと待機位置まで持上げ、ワーク回転装置5によってワークWが供給されるまで待機させる(「ステップ1.3」)。
【0022】
以上、ステップ1.1からステップ1.3までが「ハウジング供給ステップ101」を構成する。なお、突上げ装置11は「溶接ステップ109」の間、ハウジングHをさらに突上げる機能を有し、溶接中に継続して上向きに荷重を加える。
【0023】
[ワーク供給装置とワーク供給ステップ]
ワーク供給装置3は、ワーク回転装置5にワークWを供給するためのP&P装置であって、各ワークWを把持して上下又は水平に移動可能であり、ワーク供給装置3の後方に設置された図示しないワーク供給プラットフォームからレール移送方式で押し出された一群のワークの先頭のワークWをピックアップし、その一端をワーク回転装置5の頂点に位置する凹部51に挿入する(「ワーク供給ステップ103」)。本実施形態では、ワーク供給装置3はロボットグリッパである。
【0024】
[ワーク回転装置とワーク回転ステップ(1)]
ワーク回転装置5は縦型の回転テーブルのような形状であり、その側面に周方向に一定間隔で、回転軸r5に向かって穿たれた凹部51を複数有し、回転軸r5を中心に回転する機能を有する。本実施形態では、ワーク回転装置5の外周面に30°等間隔で12個の凹部51が放射状に形成されている。
【0025】
ここで、ワーク回転装置5の中心点c5を通り且つ鉛直方向に延びる直線と回転テーブルの外縁をなす円との交点2個のうち上側の交点の位置を、中心点c5から見たときの角度で「0°」と定義する。この位置を「L1」とし、L1から図4の反時計回りに60°、120°、180°各回転した位置をそれぞれ「L2」、「L3」、「L4」とすると、ワーク回転装置5は図4の回転方向d5に沿って、L1、L2、L3、L4の順に回転する。よってワークWの一端が挿入されるのはL1位置となる。
【0026】
ワーク回転装置5は、ワークWがL1位置の凹部51に挿入されると、回転方向d5に沿って回転し、L2位置でワークWを所定の長さに切断するために停止する(「ワーク回転ステップ105」1回目)。図3にはワーク回転装置5の片側(図の奥側)だけ示しているが、実際は手前にも部材が存在し、ワークWが脇に落下することはない。
【0027】
[ワーク切断装置とワーク切断ステップ]
このL2位置にはワーク切断装置7とワーク押さえ71が設置されており、ワーク押さえ71が運ばれて来たワークWを押さえて固定し、ワーク切断装置7がカッター刃で所定の長さに切断する(「ワーク切断ステップ107」)。切除された部分は図示しない別の装置により回収される。
【0028】
[ワーク回転装置とワーク回転ステップ(2)]
その後ワーク回転装置5は切断されて短くなったワークW(以下「切断後ワーク」)をさらに120°回転させ、L4位置、すなわち段落[0025]で述べた交点2個のうち下側の交点の位置で停止する(「ワーク回転ステップ105」2回目)。このときハウジングHは既にハウジング溶接装置1の突上げ装置11により支持された状態で待機しており、ワーク回転装置5によって運ばれた切断後ワークは溶接するべき側の断面を下にして、待機中のハウジングHの上面に接するように差し込まれる。
【0029】
以上、ワーク回転ステップ105は、ワークWを回転移動させる途中でワークWの切断を行うため、ワーク切断ステップ107を挟んでその前後2回に分けて行われる。
【0030】
また、本実施形態はワークWを凹部51からワーク回転装置5の径方向外側に落下させないための機構を有しないが、L1位置からL2位置までは切断前ワークの高さに、L2位置からL4位置までは切断後ワークWの高さに、それぞれ適合するように形成されたガイド53が設置されているため、ワークWが落下することはない。
【0031】
[溶接装置と溶接ステップ]
溶接装置9は、溶接クランプ91を有し、溶接クランプ91が切断後ワークを押さえて固定する。次に切断後ワークの下端とハウジングHの上端との界面に溶接装置9が接触し、電圧を印加して溶接を行う(「溶接ステップ109」)。
【0032】
溶接が進行するにしたがって、切断後ワークの溶接側端面が融解するため、ハウジングHとの溶接界面に空隙が生じる。これを防止するため、突上げ装置11は溶接中、ハウジングHに対し継続的に上向きの荷重を掛けて突上げ続ける。なお図示は略するが、ワーク回転装置5の凹部51の底面より内側の部分(「荷重受け」)が硬質材料で形成されており、突上げ装置11からの連続的荷重を受け止めることが出来る。なお、荷重受けの硬質材料には表面処理や熱処理で硬度を上げたものを含む。
【0033】
以上、溶接ステップ109までは、ワーク供給ステップ103からワーク切断ステップ107までと、ハウジング供給ステップ101とが平行して行われるが、切断後ワークが到着する時点では既にハウジングHが待機位置に到着している必要があるため、ハウジング供給ステップ101は2回目のワーク回転ステップ105が行われるまでに完了する。
【0034】
溶接後、切断後ワークが溶接されて一体となったハウジングH(以下「溶接後ハウジング」)を突上げ装置11がインデックステーブルZによって運ばれてきた元の高さまで降下させる。次にインデックステーブルZが回転し、溶接後ハウジングを搬出するとともに、次の溶接作業に用いるハウジングHを待機地点まで移動させる。
【0035】
[溶接ワークフロー]
図5に、本発明の切断溶接方法100から、ハウジング供給ステップ101から溶接ステップ109までの流れを取り出し、「溶接ワークフロー159」として示す。なお、F1からF8までの各ステップは図3に示した矢印と対応しているため、図3をも参照する。以下、ハウジング供給ステップ101に対応するステップF6から説明を始める。
【0036】
ステップF6でインデックステーブルZが回転し、ハウジングを供給する。ステップF7では、溶接前のハウジングHが突上げ装置11によって待機位置まで持上げられる。ステップF8でワーク回転装置5によって切断後ワークが供給され、待機位置にあるハウジングHと切断後ワークが接する。
【0037】
ステップF1では、溶接前のハウジングHがその上面に切断後ワークを載置したまま、溶接位置まで突上げられる。ステップF2では、切断後ワークが溶接クランプ91により固定される。ステップF3では、溶接クランプ91により固定された切断後ワークとハウジングHが溶接装置9により溶接され、この間、突上げ装置11がハウジングHを突上げ続ける。
【0038】
溶接完成後、ステップF4で溶接クランプ91が解除され、ステップF5で切断後ワークと溶接されて一体となった溶接後ハウジングが下降する。この後、次のハウジング供給ステップ101及びワーク供給ステップ103を開始するか、切断溶接ルーチンを終了する。
【0039】
[一実施形態の効果]
本発明の一実施形態により、以下の効果が期待できる。
(1)供給、切断、溶接工程がスムーズに接続されて工程毎のP&P作業が不要となり、作業が効率化される。
(2)各設備がワーク回転装置を中心に集中的且つ合理的に配置され、装置全体が小型化される。
【0040】
(その他の実施形態)
上記の実施形態は、「ワーク」が点火プラグの銅入り接地電極、「ハウジング」が点火プラグのハウジングである場合を想定したものであるが、本発明の対象はこれに限らず、複数の棒状の部材を切断、溶接して組み立てる工程に適用することで、同じように工程の合理化・作業の効率化が可能である。
【0041】
以上、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、さまざまな形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ハウジング供給装置
5 ワーク回転装置、 51 凹部
7 ワーク切断装置
9 溶接装置
H ハウジング
W ワーク
X 切断溶接装置
図1
図2
図3
図4
図5