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特許7521504運転支援装置、車両、走行制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】運転支援装置、車両、走行制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20240717BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60W30/16
G08G1/16 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021138706
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2023032527
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 雄基
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184664(JP,A)
【文献】特開2004-301833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0061756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の所定領域を撮影することによりカメラ画像を取得するカメラ装置と、
前記自車両の加速度を、前記自車両の前方を走行する先行車と前記自車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるための追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
前記先行車が大型車である場合、前記目標車間距離を、前記カメラ画像において当該先行車の上方に所定高さの信号機を検出したときの前記カメラ装置から前記信号機までの距離を表す信号機距離が、前記自車両が所定の減速度で減速したとの仮定下において前記自車両が停車するまでに前記自車両が走行する距離を表す停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定し、
前記自車両の加速度を前記追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる、
ように構成され、
更に、前記制御ユニットは、前記先行車が大型車である場合、前記自車両の速度を表す自車速が所定の速度以上であるときの前記目標車間距離を、前記先行車が前記大型車でない場合よりも長くなるように取得するように構成された、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記先行車が大型車でない場合、前記目標車間距離を、予め設定された設定車間距離から所定範囲で前記自車速が大きいほど長くなる通常車間距離に設定し、
前記先行車が大型車である場合、前記目標車間距離を、前記通常車間距離及び前記大型車用車間距離のうち長い方に設定する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記大型車用車間距離を、前記停車必要距離に予め設定された定数を乗算することにより得られた距離以上となるように取得する、ように構成された、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の運転支援装置において、
前記定数は、予め設定された前記大型車の高さを表す大型車高さから予め設定された前記カメラ装置の高さを表すカメラ高さを減じた値を、予め設定された前記信号機の高さを表す信号機高さから前記カメラ高さを減じた値で除算した値に設定されている、
運転支援装置。
【請求項5】
請求項3及び請求項4のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記大型車用車間距離を、前記自車両の速度を表す自車速の二乗に応じて変化し、且つ、前記自車速が大きいほど長くなるように取得する、ように構成された、
運転支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、前記信号機が停止信号を表示している場合に前記信号機距離が前記停車必要距離に所定距離を加算した開始距離以下となると、前記自車両の加速度を、前記追従加速度及び前記信号機の手前で前記自車両が停車するための減速度の小さい方と一致するように前記自車両を走行させるように構成された、
運転支援装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記先行車が前記大型車でない場合、予め設定された設定車間距離から所定範囲で前記自車両の速度を表す自車速が大きいほど長くなる通常車間距離を前記目標車間距離として取得し、
前記自車両から前方に向かって所定距離以内に存在する前記先行車以外の車両が前記大型車である場合、
前記通常車間距離、及び、前記大型車用車間距離を取得し、
前記車間距離から前記通常車間距離を減じた第1距離偏差が前記自車両と前記大型車との間の車間距離から前記大型車用車間距離を減じた第2距離偏差より小さければ、前記目標車間距離を前記通常車間距離に設定し、
前記第1距離偏差が前記第2距離偏差以上であれば、前記目標車間距離を前記大型車用車間距離に設定する、
ように構成された、
運転支援装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の運転支援装置を搭載した車両。
【請求項9】
自車両に搭載されたコンピュータが、前記自車両の加速度を、前記自車両の前方を走行する先行車と前記自車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるための追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる走行制御方法において、
前記先行車が大型車である場合、前記コンピュータが、前記目標車間距離を、前記自車両に搭載されたカメラ装置が前記自車両の前方の所定領域を撮影することにより取得したカメラ画像において前記先行車の上方に所定高さの信号機を検出したときの前記カメラ装置から前記信号機までの距離を表す信号機距離が、前記自車両が所定の減速度で減速したとの仮定下において前記自車両が停車するまでに前記自車両が走行する距離を表す停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定する第1ステップと、
前記コンピュータが、前記自車両の加速度を前記追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる第2ステップと、
を含み、
更に、前記第1ステップでは、前記先行車が大型車である場合、前記コンピュータが、前記自車両の速度を表す自車速が所定の速度以上であるときの前記目標車間距離を、前記先行車が前記大型車でない場合よりも長くなるように取得する、
走行制御方法。
【請求項10】
車両に適用され、且つ、前記車両の加速度を、前記車両の前方を走行する先行車と前記車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるための追従加速度と一致するように前記車両を走行させるプログラムであって、前記車両に備わるコンピュータに、
前記先行車が大型車である場合、前記目標車間距離を、前記車両に搭載されたカメラ装置が前記車両の前方の所定領域を撮影することにより取得したカメラ画像において前記先行車の上方に所定高さの信号機を検出したときの前記カメラ装置から前記信号機までの距離を表す信号機距離が、前記車両が所定の減速度で減速したとの仮定下において前記車両が停車するまでに前記車両が走行する距離を表す停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定する第1ステップと、
前記車両の加速度を前記追従加速度と一致するように前記車両を走行させる第2ステップと、
を含む処理を実行させ、
更に、前記第1ステップでは、前記コンピュータに、前記先行車が大型車である場合、前記車両の速度を表す車速が所定の速度以上であるときの前記目標車間距離を、前記先行車が前記大型車でない場合よりも長くなるように取得させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の前方を走行する先行車との間の車間距離を目標車間距離に一致させるように自車両を走行させる追従制御を実行する運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、追従制御を実行する運転支援装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された運転支援装置(以下、「第1従来装置」と称呼する。)は、先行車との間の車間距離を最終目標距離よりも大きく維持するために、運転者のフィーリングに合った適切な減速度で減速制御を行う。
【0003】
特許文献2に記載された運転支援装置(以下、「第2従来装置」と称呼する。)は、信号機が停止信号を表示している場合、その信号機の手前で停止するために減速制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-149167号公報
【文献】特開2011-154619号公報
【発明の概要】
【0005】
第2従来装置が第1従来装置のように追従制御を行うと仮定する。先行車が大型車(トラック及びバス等)である場合、信号機がこの大型車によって遮られる可能性がある。このため、第2従来装置は、信号機を初めて検出したときの信号機までの距離が短くなり、大きな減速度で減速制御を行わなければならない可能性がある。このような大きな減速度での減速制御は、運転者に不安を与える可能性がある。
【0006】
本発明は前述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、停止信号を表示している信号機(停止信号機)手前で減速するために自車両の乗員に不安を与えるような大きな減速度で自車両が減速することを防止する運転支援装置を提供することにある。
【0007】
本発明の運転支援装置(以下、「本発明装置」とも称呼する。)は、
自車両の前方の所定領域を撮影することによりカメラ画像を取得するカメラ装置(22)と、
前記自車両の加速度を、前記自車両の前方を走行する先行車と前記自車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるための追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる制御ユニット(20、30、36、40、44)と、
を備える。
【0008】
前記制御ユニットは、
前記先行車が大型車である場合(ステップ510「Yes」)、前記目標車間距離を、前記カメラ画像において当該先行車の上方に所定高さの信号機を検出したときの前記信号機までの距離を表す信号機距離が、前記自車両が所定の減速度で減速したとの仮定下において前記自車両が停車するまでに前記自車両が走行する距離を表す停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定し(ステップ530)、
前記自車両の加速度を前記追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる(ステップ455)、
ように構成されている。
【0009】
大型車である先行車との車間距離が長いほど信号機距離がより長い状態で、カメラ画像において先行車の上方に信号機が検出される。本発明装置によれば、先行車が大型車である場合には、目標車間距離が、カメラ画像において先行車の上方に信号機を検出したときの信号機距離が停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定され、車間距離を目標車間距離と一致するように自車両が走行する。このため、停止信号機が検出された場合、所定の減速度での減速を行えば停止信号機の手前で自車両を停車させることができる。よって、停止信号機の手前で減速するために自車両の乗員に不安を与えるような大きな減速度で自車両が減速することを防止できる。
【0010】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記先行車が大型車である場合、前記自車両の速度を表す自車速が所定の速度(Vsd)以上であるときの前記目標車間距離を、前記先行車が前記大型車でない場合よりも長くなるように取得するように構成されている(図3を参照。)。
【0011】
上記したように、先行車が大型車である場合には、目標車間距離は信号機距離が停車必要距離よりも長くなるようにするための目標車間距離が取得される。自車速が大きいほど停車必要距離が長くなり、自車速が小さいほど停車必要距離が短くなる。このため、先行車が大型車である場合の目標車間距離は、自車速が所定の速度以上となると、先行車が大型車でない場合の目標車間距離よりも長くなる。
【0012】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、
前記先行車が大型車でない場合(ステップ510「No」)、前記目標車間距離を、予め設定された設定車間距離から所定範囲で前記自車速が大きいほど長くなる通常車間距離に設定し(ステップ515)、
前記先行車が大型車である場合(ステップ510「Yes」)、前記目標車間距離を、前記通常車間距離及び前記大型車用車間距離のうち長い方に設定する(ステップ535乃至ステップ545)、
ように構成されている。
【0013】
本態様によれば、自車速が所定の速度未満である場合に、自車両と先行車とが接近しすぎてしまうことを防止でき、自車両の乗員に不安を与える可能性を低減できる。
【0014】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記大型車用車間距離を、前記停車必要距離に予め設定された定数を乗算することにより得られた距離以上となるように取得する(ステップ530、(4)式)、ように構成されている。
【0015】
更に、前記定数は、予め設定された前記大型車の高さを表す大型車高さ(Hlv)から予め設定された前記カメラ装置の高さを表すカメラ高さ(Hca)を減じた値(H2)を、予め設定された前記信号機の高さを表す信号機高さ(Htr)から前記カメラ高さを減じた値(H1)で除算した値に設定されている((4式))。
【0016】
本態様によれば、先行車の上方に信号機を検出したときの信号機距離が停車必要距離よりも確実に長くするように大型車用車間距離を取得できる。これによって、停止信号機の手前で減速するために大きな減速度で自車両が減速しなければならない事態(以下、「急減速事態」と称呼する。)が発生する可能性を低減できる。
【0017】
上記態様において、
前記制御ユニットは、前記大型車用車間距離を、前記自車両の速度を表す自車速の二乗に応じて変化し、且つ、前記自車速が大きいほど長くなるように取得する、ように構成されている(ステップ530、(4)式、図4)。
【0018】
上記したように、大型車用車間距離は停車必要距離に定数を乗算することにより得られる距離よりも長く設定される。停車必要距離は、後述する(3)式に示したように、自車速の二乗に応じて変化する値であり自車速が大きいほど長くなる。このため、大型車用車間距離も、このように変化する。本態様によれば、先行車の上方に信号機を検出したときの信号機距離が停車必要距離よりも確実に長くするように大型車用車間距離を取得できるので、上記急減速事態が発生する可能性を低減できる。
【0019】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、前記信号機が停止信号を表示している場合に前記信号機距離が前記停車必要距離に所定距離を加算した開始距離以下となると(ステップ465「Yes」)、前記自車両の加速度を、前記追従加速度及び前記信号機の手前で前記自車両が停車するための減速度の小さい方と一致するように前記自車両を走行させるように構成されている(ステップ445、ステップ450、ステップ475)。
【0020】
本態様によれば、信号機距離が開始距離以下となると、自車両の加速度が追従加速度及び上記減速度の小さい方と一致するように自車両が走行する。このため、停止信号を表示している停止信号機の手前で自車両を停車させることができる。更に、先行車が停止信号機の手前で急減速している場合であっても、先行車との車間距離を目標車間距離に維持して減速を行うことができる。
【0021】
本発明装置の一態様において、
前記制御ユニットは、
前記先行車が前記大型車でない場合(ステップ510「No」)、予め設定された設定車間距離から所定範囲で前記自車両の速度を表す自車速が大きいほど長くなる通常車間距離を前記目標車間距離として取得し(ステップ505、ステップ515)、
前記自車両から前方に向かって所定距離以内に存在する前記先行車以外の車両が前記大型車である場合(ステップ705「Yes」)、
前記通常車間距離、及び、前記大型車用車間距離を取得し(ステップ505、ステップ710)、
前記車間距離から前記通常車間距離を減じた第1距離偏差が前記自車両と前記大型車との間の車間距離から前記大型車用車間距離を減じた第2距離偏差より小さければ(ステップ725「Yes」)、前記目標車間距離を前記通常車間距離に設定し(ステップ515)、
前記第1距離偏差が前記第2距離偏差以上であれば(ステップ725「No」)、前記目標車間距離を前記大型車用車間距離に設定する(ステップ730)、
ように構成されている。
【0022】
本態様によれば、先行車以外の車両が大型車である場合であっても、カメラ画像において先行車以外の車両である大型車の上方に信号機を検出したときの信号機距離が停車必要距離よりも長くなるような車間距離で自車両を走行させることができる。このため、急減速事態が発生する可能性を低減できる。
【0023】
本発明の車両は、上記した本発明装置を搭載している。
【0024】
本発明の走行制御方法は、
自車両の加速度を、自車両の前方を走行する先行車と前記自車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるための追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる方法であり、
前記先行車が大型車である場合(ステップ510「Yes」)、前記目標車間距離を、前記自車両に搭載されたカメラ装置(22)が前記自車両の前方の所定領域を撮影することにより取得したカメラ画像において前記先行車の上方に所定高さの信号機を検出したときの前記信号機までの距離を表す信号機距離が、前記自車両が所定の減速度で減速したとの仮定下において前記自車両が停車するまでに前記自車両が走行する距離を表す停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定する第1ステップと(ステップ530)、
前記自車両の加速度を前記追従加速度と一致するように前記自車両を走行させる第2ステップと(ステップ455)、
を含む。
【0025】
本発明のプログラムは、
車両に適用され、且つ、前記車両の加速度を、前記車両の前方を走行する先行車と前記車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるための追従加速度と一致するように前記車両を走行させるプログラムであり、
前記車両に備わるコンピュータに、
前記先行車が大型車である場合(ステップ510「Yes」)、前記目標車間距離を、前記車両に搭載されたカメラ装置(22)が前記車両の前方の所定領域を撮影することにより取得したカメラ画像において前記先行車の上方に所定高さの信号機を検出したときの前記信号機までの距離を表す信号機距離が、前記車両が所定の減速度で減速したとの仮定下において前記車両が停車するまでに前記車両が走行する距離を表す停車必要距離よりも長くなるようにするための大型車用車間距離に設定する第1ステップと(ステップ530)、
前記車両の加速度を前記追従加速度と一致するように前記車両を走行させる第2ステップと(ステップ455)、
を含む処理を実行させる。
【0026】
上記走行制御方法及び上記プログラムによれば、停止信号機が検出された場合、所定の減速度での減速を行えば停止信号機の手前で自車両を停車させることができる。よって、停止信号機の手前で減速するために自車両の乗員に不安を与えるような大きな減速度で自車両が減速することを防止できる。
【0027】
更に、本発明装置は、以下のように表現することが可能である。
本発明装置は、
自車両の前方の所定領域を撮影することによりカメラ画像を取得するカメラ装置(22)と、
前記自車両の前方を走行する先行車と前記自車両との間の車間距離を目標車間距離と一致させるように前記自車両を走行させるように構成された制御ユニット(20、30、36、40、44)と、
を備え、
前記制御ユニットは、前記先行車が大型車である場合、前記自車両の速度を表す自車速が所定の速度(Vsd)以上であるときの前記目標車間距離を、前記先行車が前記大型車でない場合よりも長くするように構成されている。
【0028】
なお、上記説明においては、発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態に係る運転支援装置の概略システム構成図である。
図2図2は、先行車が大型車である場合に取得される第2車間距離を説明するための図である。
図3図3は、第1車間距離及び第2車間距離と自車速との関係を示したグラフである。
図4図4は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行するACCルーチンを示したフローチャートである。
図5図5は、図1に示した運転支援ECUのCPUが実行する追従加速度取得サブルーチンを示したフローチャートである。
図6図6は、本発明の実施形態の第1変形例の概要の説明図である。
図7図7は、本発明の実施形態の第1変形例の運転支援ECUのCPUが実行する追従加速度取得サブルーチンの一部を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<構成>
図1に示すように、本発明の実施形態に係る運転支援装置(以下、「本支援装置」と称呼される。)10は、車両(以下、「自車両」と称呼する。)VAに搭載される。
【0031】
本支援装置10は、運転支援ECU20、エンジンECU30及びブレーキECU40を備えている。以下、運転支援ECU20を「DSECU20」と称呼する。
【0032】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える制御ユニット(Electronic Control Unit)であり、「コントローラ」及び「コンピュータ」と称呼する場合がある。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、及びインターフェース(I/F)等を含む。これらのECUは、CAN(Controller Area Network)を介して相互にデータ交換可能に接続されている。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。これらのECUは、幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。
【0033】
本支援装置10は、車輪速センサ21、カメラ装置22及びミリ波レーダ装置23を備えている。これらは、DSECU20とデータ交換可能に接続されている。
【0034】
車輪速センサ21は、自車両VAの車輪毎に設けられている。各車輪速センサ21は、対応する車輪が所定角度回転する毎に一つの車輪パルス信号を発生させる。DSECU20は、各車輪速センサ21から受け取った車輪パルス信号の単位時間におけるパルス数をカウントし、そのパルス数に基いて各車輪の回転速度を取得する。そして、DSECU20は、各車輪の車輪速度に基いて自車両VAの速度を示す自車速Vsを取得する。一例として、DSECU20は、四つの車輪の車輪速度の平均値を自車速Vsとして取得する。
【0035】
カメラ装置22は、自車両VAの車室内のフロントウィンドウの中央上部に配設され、自車両VAの前方の所定領域を撮影した画像(以下、「カメラ画像」とも称呼される。)を取得する。カメラ装置22は、カメラ画像に基いて物体情報及び白線情報を取得し、これらを含むカメラ物体情報をDSECU20に送信する。物体情報は、上記所定領域に存在する物体までの距離及びその物体の方向を含む。白線情報は、自車両VAが現在走行している車線である自車線を区画する右白線及び左白線の自車両VAに対する位置等を含む。
【0036】
ミリ波レーダ装置23は、ミリ波を自車両VAの前方に送信する。ミリ波レーダ装置23は、物体に反射されたミリ波(反射波)を受信することによって物体を検出する周知のセンサである。ミリ波レーダ装置23は、受信した反射波に基いて、物体までの距離(物体距離)、物体の自車両VAに対する相対速度(物体相対速度)Vr及び物体の方向を算出する。そして、ミリ波レーダ装置23は、所定時間が経過する毎に、「物体距離、物体相対速度Vr、及び物体の方向を含むレーダ物体情報」をDSECU20に送信する。
【0037】
DSECU20は、カメラ物体情報及びレーダ物体情報に基いて自車両VAの前方に存在する物体の自車両VAに対する位置を特定する。
【0038】
エンジンECU30は、アクセルペダル操作量センサ32及びエンジンセンサ34と接続され、これらのセンサの検出信号を受け取る。
【0039】
アクセルペダル操作量センサ32は、自車両VAのアクセルペダル32aの操作量(即ち、アクセルペダル操作量AP)を検出する。運転者がアクセルペダル32aを操作していない場合のアクセルペダル操作量APは「0」である。
【0040】
エンジンセンサ34は、図示しない「自車両VAの駆動源である内燃機関」の運転状態量を検出するセンサである。エンジンセンサ34は、スロットル弁開度センサ、機関回転速度センサ及び吸入空気量センサ等である。
【0041】
更に、エンジンECU30は、「スロットル弁アクチュエータ及び燃料噴射弁」等のエンジンアクチュエータ36と接続されている。エンジンECU30は、エンジンアクチュエータ36を駆動することによって内燃機関が発生するトルクを変更し、以て、自車両VAの駆動力を調整する。
【0042】
エンジンECU30は、アクセルペダル操作量APが大きくなるほど目標スロットル弁開度TAtgtが大きくなるように目標スロットル弁開度TAtgtを決定する。エンジンECU30は、スロットル弁の開度が目標スロットル弁開度TAtgtに一致するようにスロットル弁アクチュエータを駆動する。
【0043】
ブレーキECU40は、車輪速センサ21及びブレーキペダル操作量センサ42と接続され、これらのセンサの検出信号を受け取る。
【0044】
ブレーキペダル操作量センサ42は、自車両VAのブレーキペダル42aの操作量(即ち、ブレーキペダル操作量BP)を検出する。ブレーキペダル42aが操作されていない場合のブレーキペダル操作量BPは「0」である。
【0045】
ブレーキECU40は、車輪速センサ21からの車輪パルス信号に基いて自車速VsをDSECU20と同様に取得する。なお、ブレーキECU40は自車速VsをDSECU20から取得してもよい。
【0046】
更に、ブレーキECU40は、ブレーキアクチュエータ44と接続されている。ブレーキアクチュエータ44は油圧制御アクチュエータである。ブレーキアクチュエータ44は、ブレーキペダル42aの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダと、各車輪に設けられる周知のホイールシリンダを含む摩擦ブレーキ装置と、の間の油圧回路(何れも、図示略)に配設される。ブレーキアクチュエータ44はホイールシリンダに供給する油圧を調整し、自車両VAの制動力を調整する。
【0047】
ブレーキECU40は、ブレーキペダル操作量BPに基いて「負の値である目標加速度」を決定する。ブレーキECU40は、自車両VAの実際の加速度が目標加速度に一致するようにブレーキアクチュエータ44を駆動する。
【0048】
(ACC)
DSECU20は、ACC(Adaptive Cruise Control)を実行する。ACCは、定速制御及び追従制御の2種類の制御を含む。
【0049】
定速制御は、自車両VAの前方を走行する先行車VBが存在しない場合に実行され、自車速Vsを「自車両VAの運転者により予め設定された設定車速Vset」に維持しながら自車両VAを走行させる制御である。詳細には、VCECU20は、自車両VAの加速度Gを「自車速Vsを設定車速Vsetと一致させるための目標加速度」と一致するように自車両VAを走行させる。
【0050】
追従制御は、先行車VBが存在する場合に実行され、先行車VBと自車両VAとの間の車間距離Dを「設定車間距離Dsetから所定範囲で自車速Vsが大きいほど長くなる第1車間距離D1」と一致させながら先行車を追従するよう、自車両VAを走行させる制御である。詳細には、VCECU20は、加速度Gを「車間距離Dを第1車間距離D1に維持するための目標加速度」と一致するように自車両VAを走行させる。なお、第1車間距離D1を「通常車間距離」と称呼する場合がある。
【0051】
定速制御又は追従制御で取得される目標加速度を「ACC目標加速度Gacc」と称呼する。
定速制御及び追従制御の何れにおいても、運転者のアクセルペダル32a及びブレーキペダル42aの操作を要することなく、自車両VAは走行する。
【0052】
更に、DSECU20は、ACCが実行されている間、カメラ画像に基いて自車両VAの前方に停止信号機TRが存在するか否かを判定している。停止信号機TRは、停止信号を表示している信号機であり、例えば灯色が赤色及び黄色の何れかである信号機である。
【0053】
DSECU20は、停止信号機TRが存在し、且つ、停止信号機TRまでの信号機距離Dtrが「後述する開始距離Ds」以下である場合、所定の減速度Gdecを停車目標加速度Gtrとして取得する。そして、DSECU20は、加速度Gを「ACC目標加速度及び停車目標加速度Gtrのうちの小さい方」と一致するように自車両VAを走行させる。これにより、自車両VAは停止信号機TRの手前で停車する。
【0054】
減速度Gdecは、自車両VAの乗員に不安を与えないような減速度(例えば、-2.0m/s)に設定されている。
【0055】
開始距離Dsは、停車必要距離Dnに所定距離Dpを加算した距離である。停車必要距離Dnは、自車両VAが上記減速度Gdecで減速した場合に自車速Vsが「0km/h」となるまでに(即ち、自車両VAが停車するまでに)自車両VAが走行する距離である。
【0056】
(作動の概要)
本支援装置10は、大型車である先行車VBを追従するように追従制御を行っていると仮定する。なお、大型車は、後述する大型車高さHlv(図2を参照。)を有する可能性が高い車両であり、トラック及びバス等である。この場合に、自車両VAの前方に存在する信号機TRは大型車によって遮られることにより、カメラ装置22は、信号機距離Dtrが比較的長い場合には信号機TRを撮影できず、比較的短くなった場合に初めて信号機TRを撮影できる事態が発生する場合がある。
【0057】
このような場合には、本支援装置10が信号機TR(停止信号機TR)を初めて検出したときには、信号機距離Dtrが開始距離Dsよりも大幅に短くなっている可能性がある。そして、このように信号機距離Dtrが開始距離Dsよりも大幅に短くなっている時点から、上記減速度Gdecで自車両VAが減速しても信号機TRの手前で停車できない可能性が高い。この場合、上記減速度Gdecの大きさよりも大きな減速度で自車両VAを減速させる必要があるが、このような大きさの大きな減速度は乗員に不安を与えてしまう可能性が高い。
【0058】
そこで、本支援装置10は、先行車VBが大型車である場合、その大型車の上方に「所定の信号機高さHtrの信号機TR」を初めて検出したときの信号機距離Dtrが開始距離Dsとなるような(即ち、信号機距離Dtrが停車必要距離Dnよりも長くなるような)第2車間距離D2を取得する。そして、本支援装置10は、車間距離Dを第2車間距離D2と一致するように自車両VAを走行させる。なお、第2車間距離D2を「大型車用車間距離」と称呼する場合がある。
【0059】
これにより、本支援装置10は、先行車VBが大型車である場合に、停止信号機TRを初めて検出したときに上記減速度Gdecでの減速を開始すると、停止信号機TRの手前で自車両VAを停車させることができる。よって、大きな減速度で自車両VAの乗員に不安を与えることなく、自車両VAを停止信号機TRの手前で停車させることができる。
【0060】
(作動)
図2を参照しながら上記第2車間距離D2について詳細に説明する。
図2に示したカメラ高さHca、大型車高さHlv及び信号機高さHtrは、予め設定された値であり、それぞれ、「1m」、「3m」及び「5m」に予め設定されている。カメラ高さHcaはカメラ装置22の高さであり、大型車高さHlvは大型車の高さであり、信号機高さHtrは信号機Trの高さである。
【0061】
図2に示したように、直角三角形T1及び「その直角三角形T1に含まれている直角三角形T2」は相似関係にある。
直角三角形T1は、長さが信号機距離Dtrである辺、及び、長さが「信号機高さHtrからカメラ高さHcaを減じた高さH1」である辺を有する三角形である。
直角三角形T2は、長さが第2車間距離D2である辺、及び、長さが「大型車高さHlvからカメラ高さHcaを減じた高さH2」である辺を有する三角形である。
【0062】
上記相似関係により、第2車間距離D2は信号機距離Dtrを用いて以下の(1)式で表すことができる。
【0063】
【数1】
【0064】
ここで、減速度Gdecで減速したときに自車速Vsが「0km/h」となるまでに必要な時間を停車必要時間Tは、以下の(2)式で表すことができる。
T=Vs/Gdec ・・・(2)
【0065】
更に、上記停車必要時間Tに渡って減速度Gdecで減速している自車両VAが走行する停車必要距離Dnは、減速開始時の自車速Vsを用いて以下の(3)式で表すことができる。
【0066】
【数2】
【0067】
上記(1)式の信号機距離Dtrに「停車必要距離Dnに所定距離Dpを加算した開始距離Ds」を代入すると、第2車間距離D2は以下の(4)式で表すことができる。
【0068】
【数3】
【0069】
上記(4)式において、高さH1、高さH2、減速度Gdec及び所定距離Dpは予め設定された固定値であるので、第2車間距離D2は、自車速Vsを変数とする2次関数により表現されている。
【0070】
本支援装置10は、大型車である先行車VBとの車間距離Dを上記第2車間距離D2と一致させるように追従制御を行う。これにより、先行車VBの上方に停止信号機TRを初めて検出した時点の信号機距離Dtrが開始距離Dsとなるので、この時点から信号減速制御を開始することにより減速度Gdecでの減速を開始しても、停止信号機TRの手前で自車両VAを停車させることができる。
【0071】
第1車間距離D1及び第2車間距離D2と自車速Vsとの関係を図3のグラフに示す。
第1車間距離D1は、設定車間距離Dset(=20m)から所定範囲内において自車速Vsが大きくなるほど長くなる。
第2車間距離D2は、上記(4)式で示されるように、自車速Vsを二乗した値に応じて変化し、自車速Vsが大きくなるほど長くなる。
自車速Vsが大きいほど停車必要距離Dnが長くなっていくため、自車速Vsが所定の速度Vsd以上となった場合、開始距離Ds(即ち、第2車間距離D2)が第1車間距離D1よりも長くなる。
【0072】
第1車間距離D1と自車速Vsとの関係を規定したルックアップテーブルがROMに予め記憶されている。第2車間距離D2と自車速Vsとの関係を規定したルックアップテーブルがROMに予め記憶されていてもよいし、第2車間距離D2は、自車速Vsを(4)式に適用することによりその都度取得されてもよい。
【0073】
(具体的作動)
<ACCルーチン>
DSECU20のCPU(以下、「CPU」と表記した場合、特に断りがない限り、DSECU20のCPUを指す。)は、所定時間が経過する毎に図4にフローチャートにより示したACCルーチンを実行する。
【0074】
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図4のステップ400から処理を開始し、ステップ405に進む。ステップ405にて、CPUは、ACCフラグXaccの値が「1」であるか否かを判定する。
【0075】
ACCフラグXaccの値は、所定のACC開始条件が成立した場合に「1」に設定され、所定のACC終了条件が成立した場合に「0」に設定される。なお、ACCフラグXaccの値は、イニシャルルーチンにおいても「0」に設定される。イニシャルルーチンは、自車両VAの図示しないイグニッション・キー・スイッチがオフ位置からオン位置へと変更されたときにCPUによって実行されるルーチンである。
ACC開始条件は、図示しないACC開始スイッチが操作されたときに成立する条件である。
ACC終了条件は、図示しないACC終了スイッチが操作されたときに成立する条件である。
【0076】
ACCフラグXaccの値が「0」である場合、CPUは、ステップ405にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
ACCフラグXaccの値が「1」である場合、CPUは、ステップ405にて「Yes」と判定し、ステップ410乃至ステップ420を順に実行する。
【0077】
ステップ410:CPUは、カメラ装置22からカメラ物体情報を取得する。
ステップ415:CPUは、ミリ波レーダ装置23からレーダ物体情報を取得する。
ステップ420:CPUは、カメラ画像に基いて停止信号機TRが自車両VAの前方に存在するか否かを判定する。
【0078】
停止信号機TRが存在しない場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ425及びステップ430を順に実行する。
ステップ425:CPUは、停車目標加速度Gtrを無限大に設定する。
ステップ430:CPUは、カメラ物体情報及びレーダ物体情報に基いて先行車VBが存在するか否かを判定する。
【0079】
先行車VBが存在しない場合、CPUは、ステップ430にて「No」と判定し、ステップ435乃至ステップ445を順に実行する。
ステップ435:CPUは、設定車速Vsetから自車速Vsを減じることにより車速偏差ΔVsを取得する。
ステップ440:CPUは、車速偏差ΔVsを以下の(5)式に適用することにより、ACC目標加速度Gaccを取得する。

Gacc=k1×ΔVs ・・・(5)

上記(5)式におけるk1は所定のゲイン(係数)である。
【0080】
ステップ445:CPUは、ACC目標加速度Gaccが停車目標加速度Gtrよりも小さいか否かを判定する。
ここで、停止信号機TRが存在しない場合には上述したように停車目標加速度Gtrが無限大に設定されているため(ステップ425を参照。)、ACC目標加速度Gaccが停車目標加速度Gtrよりも小さくなる。よって、CPUは、ステップ445にて「Yes」と判定し、ステップ450及びステップ455を順に実行する。
【0081】
ステップ450:CPUは、目標加速度GtgtをACC目標加速度Gaccに設定する。
ステップ455:CPUは、目標加速度Gtgtを含む加減速指令をエンジンECU30及びブレーキECU40に送信する。
その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
エンジンECU30は、加減速指令を受信すると、自車両VAの加速度Gを加減速指令に含まれる目標加速度Gtgtと一致するようにエンジンアクチュエータ36を制御する。
ブレーキECU40は、加減速指令を受信すると、自車両VAの加速度Gを加減速指令に含まれる目標加速度Gtgtと一致するようにブレーキアクチュエータ44を制御する。
なお、自車両VAの加速度Gは、自車速Vsを時間微分することにより取得される。
【0083】
一方、CPUがステップ420に進んだときに停止信号機TRが存在する場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ460及びステップ465を順に実行する。
【0084】
ステップ460:CPUは、自車速Vsを上記(3)式に適用することにより停車必要距離Dnを取得する。
ステップ465:CPUは、カメラ画像に基いて取得される信号機距離Dtrが開始距離Ds以下であるか否かを判定する。
【0085】
信号機距離Dtrが開始距離Dsよりも長い場合、CPUは、ステップ465にて「No」と判定し、ステップ425にて停車目標加速度Gtrを無限大に設定する。その後、CPUは、ステップ430以降の処理に進む。
【0086】
信号機距離Dtrが開始距離Ds以下である場合、CPUは、ステップ465にて「Yes」と判定し、ステップ470に進む。ステップ470にて、CPUは、停車目標加速度Gtrを上記減速度Gdecに設定し、ステップ430に進む。
【0087】
先行車が存在しない場合、CPUは、ステップ430にて「No」と判定し、ステップ435及びステップ440を順に実行することによりACC目標加速度Gaccを取得する。ACC目標加速度Gaccが停車目標加速度Gtr以上である場合(即ち、停車目標加速度GtrがACC目標加速度Gacc以下である場合)、CPUは、ステップ445にて「No」と判定し、ステップ475に進む。ステップ475にて、CPUは、目標加速度Gtgtを停車目標加速度Gtrに設定する。その後、CPUは、ステップ455に進んで加減速指令を送信し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0088】
一方、CPUがステップ430に進んだときに先行車VBが存在する場合、CPUは、ステップ430にて「Yes」と判定し、ステップ480に進む。ステップ480にて、CPUは、図5に示したフローチャートにより示した追従加速度取得サブルーチンを実行する。追従加速度取得サブルーチンでは、CPUは、目標車間距離Dtgtを第1車間距離D1又は第2車間距離D2と一致させるための目標加速度Gtgtを取得する。CPUは、ステップ480にて追従加速度取得サブルーチンを実行した後、ステップ445以降の処理に進む。
【0089】
<追従加速度取得サブルーチン>
CPUは、図4に示したステップ480に進むと、図5に示したステップ500から処理を開始し、ステップ505及びステップ510を順に実行する。
【0090】
ステップ505:CPUは、第1車間距離D1と自車速Vsとの関係を規定しているルックアップテーブルに自車速Vsを適用することにより第1車間距離D1を取得する。
ステップ510:CPUは、カメラ画像に基いて先行車VBが大型車であるか否かを判定する。
より詳細には、CPUは、カメラ画像における先行車VBの横方向の画素数に対する縦方向の画素数の比(アスペクト比)が閾値以上であれば、先行車VBが大型車であると判定する。なお、ROMには、少なくとも一つの種類の大型車の画像(登録画像)が予め記憶されており、CPUは、カメラ画像における先行車VBの画像と登録画像との類似度を取得し、類似度が閾値以上であれば、先行車VBが大型車であると判定してもよい。
【0091】
先行車VBが大型車でない場合、CPUは、ステップ510にて「No」と判定し、ステップ515乃至ステップ525を順に実行する。
ステップ515:CPUは、目標車間距離Dtgtを第1車間距離D1に設定する。
ステップ520:CPUは、車間距離Dから目標車間距離Dtgtを減じることにより距離偏差ΔDを取得する。
ステップ525:CPUは、距離偏差ΔD及び物体相対速度Vrを(6)式に適用することにより、ACC目標加速度Gaccを取得する。

Gacc=ka1×(k2×ΔD+k3×Vr) ・・・(6)

上記(6)式におけるka1、k2及びk3は所定のゲイン(係数)である。
【0092】
その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了し、図4に示したステップ445に進む。
【0093】
CPUがステップ510に進んだときに先行車VBが大型車であると判定された場合、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定し、ステップ530及びステップ535を順に実行する。
【0094】
ステップ530:CPUは、自車速Vsを上記(4)式に適用することにより第2車間距離D2を取得する。
ステップ535:CPUは、第1車間距離D1が第2車間距離D2よりも大きいか否かを判定する。
【0095】
第1車間距離D1が第2車間距離D2よりも大きい場合、CPUは、ステップ535にて「Yes」と判定し、ステップ540に進む。ステップ540にて、CPUは、目標車間距離Dtgtを第1車間距離D1に設定する。
【0096】
一方、第1車間距離D1が第2車間距離D2以下である場合、CPUは、ステップ535にて「No」と判定し、ステップ545に進む。ステップ545にて、CPUは、目標車間距離Dtgtを第2車間距離D2に設定する。
【0097】
ステップ540又はステップ545の実行後、CPUは、ステップ520及びステップ525を実行してACC目標加速度Gaccを取得する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了し、図4に示したステップ445に進む。
【0098】
本実施形態によれば、先行車VBが大型車である場合、車間距離Dを第1車間距離D1及び上記(4)式により表わされる第2車間距離D2のうち長い方と一致するように自車両VAが走行する。これにより、大型車である先行車VBの上方に停止信号機TRを初めて検出するときの信号機距離Dtrを開始距離Ds以上とすることができるので、大きな減速度で減速せずとも停止信号機TRの手前で自車両VAを停車させることができる。
【0099】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。
【0100】
(第1変形例)
図6を参照しながら、本変形例の作動の概要を説明する。
本変形例に係るDSECU20は、先行車VBが大型車でない場合であっても、自車両VAの前端から所定距離Dth以内に大型車が存在する場合には、第1車間距離D1及び第2車間距離D2を取得する。図6に示した例では、先行車VBの前方を走行する先先行車VCが大型車であると仮定する。DSECU20は、先行車VBとの間の車間距離Dから第1車間距離D1を減じた第1距離偏差ΔDaを取得し、先先行車VCとの間の車間距離D’から第2車間距離D2を減じた第2距離偏差ΔDbを取得する。そして、DSECU20は、第1距離偏差ΔDaが第2距離偏差ΔDbよりも小さければ、目標車間距離Dtgtを第1車間距離D1に設定し、第1距離偏差ΔDaが第2距離偏差ΔDb以上であれば、目標車間距離Dtgtを第2車間距離D2に設定する。
【0101】
図6に示した例では、車間距離Dは第1車間距離D1よりも長いため第1距離偏差ΔDaは正の値となり、車間距離D’は第2車間距離D2よりも短いため第2距離偏差ΔDbは負の値となる。このため、第1距離偏差ΔDaが第2距離偏差ΔDbよりも大きくなるため、DSECU20は、目標車間距離Dtgtを第2車間距離D2に設定する。
【0102】
先行車が大型車でなくても、所定距離Dth以内に大型車が存在する場合には、信号機距離Dtrが比較的長いときには、DSECU20がこの大型車により信号機TRを検出できない可能性がある。本変形例によれば、このような場合であっても、停止信号機TRを初めて検出したときの信号機距離Dtrが開始距離Ds以上となるので、上記減速度Gdecでの減速で停止信号機TRの手前で自車両VAを停車させることができる。
【0103】
本変形例に係るDSECU20のCPUは、図5に示したステップ510にて「No」と判定した場合(即ち、先行車VBが大型車でない場合)、図7に示したステップ705に進む。ステップ705にて、CPUは、自車両VAの前端から前方に向かって所定距離Dth以内の領域に大型車が存在するか否かを判定する。
【0104】
大型車が存在しない場合、CPUは、ステップ705にて「No」と判定し、図5に示したステップ515に進んで目標車間距離Dtgtを第1車間距離D1に設定し、図5に示したステップ520及びステップ525を順に実行する。
【0105】
一方、大型車が存在する場合、CPUは、図7に示したステップ705にて「Yes」と判定し、ステップ710乃至ステップ725を順に実行する。
ステップ710:CPUは、自車速Vsを上記(4)式に適用することにより第2車間距離D2を取得する。
ステップ715:CPUは、車間距離Dから第1車間距離D1を減じることにより第1距離偏差ΔDaを取得する。
ステップ720:CPUは、車間距離D’から第2車間距離D2を減じることにより第2距離偏差ΔDbを取得する。
ステップ725:CPUは、第1距離偏差ΔDaが第2距離偏差ΔDbよりも小さいか否かを判定する。
【0106】
第1距離偏差ΔDaが第2距離偏差ΔDbよりも小さい場合、CPUは、ステップ725にて「Yes」と判定し、図5に示したステップ515に進んで目標車間距離Dtgtを第1車間距離D1に設定する。その後、CPUは、図5に示したステップ520及びステップ525を順に実行する。
【0107】
一方、第1距離偏差ΔDaが第2距離偏差ΔDb以上である場合、CPUは、ステップ725にて「No」と判定し、ステップ730及びステップ735を順に実行する。
ステップ730:CPUは、目標車間距離Dtgtを第2車間距離D2に設定する。
ステップ735:CPUは、上記第2距離偏差ΔDb及び物体相対速度Vrを(7)式に適用することにより、ACC目標加速度Gaccを取得する。

Gacc=ka1×(k2×ΔDb+k3×Vr) ・・・(7)

(7)式は、(6)式の距離偏差ΔDの代わりに第2距離偏差ΔDbを用いている点で(6)式と異なっている。
【0108】
CPUは、ステップ735を実行した後、図5に示したステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了し、図4に示したステップ445に進む。
【0109】
(第2変形例)
上記実施形態では、DSECU20は、停止信号機TRまでの信号機距離Dtrが開始距離Ds以下である場合、停車目標加速度Gtrを所定の減速度Gdecに設定した。本変形例では、DSECU20は、自車両VAが停止信号機TRよりも所定距離だけ前の位置に到達したときに自車両VAが停車するために必要な加速度を取得し、停車目標加速度Gtrをその加速度に設定する。
【0110】
本変形例のように停車目標加速度Gtrを取得する場合であっても、自車両VAは、停止信号機TRを初めて検出したときの信号機距離Dtrが開始距離Ds以下となるような車間距離Dで走行しているので、大きな減速度で減速することなく停止信号機TRの手前で停車できる。
【0111】
(第3変形例)
上記実施形態では、CPUは、カメラ画像に基いて自車両以外の他の車両が大型車であるか否かを判定したが、大型車か否かの判定には他の情報が用いられてもよい。以下に一例を説明する。
【0112】
自車両VAは、自車両VAから所定の通信範囲内に存在する他の車両と車車間通信を行うことにより、他の車両から大型車か否かの判定に用いる情報を取得してもよい。
例えば、上記情報は他の車両の型式を表す型式情報である。DSCEU20のROMには、大型車の型式を登録した大型車型式情報が予め記憶されている。DSECU20のCPUは、車車間通信により型式情報及びその車両の位置情報を取得し、型式情報が大型車型式情報に登録されていれば、その車両が大型車であると判定する。
【0113】
(第4変形例)
ミリ波レーダ装置23は、ミリ波の代わりに無線媒体を送信し、反射された無線媒体を受信することによって物体を検出できるリモートセンシング装置であればよい。
【0114】
(第5変形例)
本支援装置10は、上記エンジン自動車だけでなく、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)及び電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)に適用可能である。
【0115】
本発明は、上記運転支援装置10の機能を実現するためのプログラムが記憶され且つコンピュータが読み取り可能な非一時的な記憶媒体として捉えることも可能である。
【符号の説明】
【0116】
10…運転支援装置、20…運転支援ECU、22…カメラ装置、30…エンジンECU30、36…エンジンアクチュエータ、40…ブレーキECU、44…ブレーキアクチュエータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7