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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20240717BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F17/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021188648
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075629
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】今田 勝久
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194980(JP,A)
【文献】特開2021-125598(JP,A)
【文献】特開2019-016726(JP,A)
【文献】特開2013-062292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0008295(US,A1)
【文献】実開平05-057817(JP,U)
【文献】特開2013-157402(JP,A)
【文献】特開2019-047015(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084794(WO,A1)
【文献】特開2016-139784(JP,A)
【文献】特開2021-052105(JP,A)
【文献】特開2001-060745(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0013991(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、
前記積層体の外表面に設けられ、前記コイルに電気的に接続されている外部電極と、を備える積層コイル部品であって、
前記コイルは、前記絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が、電気的に接続されることにより構成されており、
前記コイル導体は、導体ペーストの焼成層から構成されており、前記コイル導体の幅方向の断面において、前記積層体の積層方向に直交する方向に対向する内側端面および外側端面を備え、
前記内側端面は、前記コイル導体の幅方向の断面において、前記積層体の内側に位置し、
前記外側端面は、前記コイル導体の幅方向の断面において、前記積層体の外側に位置し、
少なくとも1つの前記コイル導体において、前記内側端面および前記外側端面のうちの少なくとも一方の端面は、第1面と、前記第1面に連続し、かつ、前記積層方向に垂直な面に対する角度が前記第1面とは異なる第2面と、を備え
前記積層方向に垂直な面のうち前記コイル導体側の面であって、前記第1面の、前記第2面と接しない端を通る面を第1基準面とし、かつ、前記積層方向に垂直な面のうち前記コイル導体側の面であって、前記第1面と前記第2面との境界を通る面を第2基準面として、前記第1基準面と前記第1面とのなす角度を第1角度、前記第2基準面と前記第2面とのなす角度を第2角度と定義した場合、前記第1角度が前記第2角度よりも大きいことを特徴とする積層コイル部品。
【請求項2】
前記第1角度が90°以下であり、前記第2角度が90°未満である、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第1角度が40°以上、85°以下であり、前記第2角度が5°以上30°以下である、請求項2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記第1面および前記第2面を備える前記コイル導体の少なくとも1つと前記絶縁層との間に空隙部が存在する、請求項1~のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記コイル導体は、前記積層方向に対向する2つの主面を備え、
前記空隙部がいずれか一方の前記主面に接するように存在する、請求項に記載の積層コイル部品。
【請求項6】
前記コイル導体の幅よりも、前記空隙部の幅が狭い、請求項に記載の積層コイル部品。
【請求項7】
前記コイルは、ビア導体を介して電気的に並列に接続された、異なる層に存在する2層以上の前記コイル導体から構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の積層コイル部品。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の積層コイル部品の製造方法であって、
フェライトシートを準備する工程と、
前記フェライトシート上のコイル導体を形成する箇所に導体ペーストを印刷し、導体ペースト層を形成する工程と、
前記導体ペースト層をカレンダーロールを用いて加圧することにより、前記導体ペースト層の表面を平坦化する工程と、
表面が平坦化された前記導体ペースト層が形成されていない領域にフェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層を形成する工程と、
前記フェライトシート上に表面が平坦化された前記導体ペースト層および前記フェライトペースト層が形成されたパターンシートを複数積層し、積み重ねたシートに加圧および圧着処理を行う行程と、を備え、
前記フェライトペースト層を形成する工程では、表面が平坦化された前記導体ペースト層の端部に部分的に重なるように前記フェライトペースト層を印刷することを特徴とする積層コイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁性材料を含んでいる素体と、上記素体内において第一方向に互いに離間しており且つ互いに電気的に接続されている複数の内部導体を含んでいるコイルと、各上記内部導体の表面に接しており且つ粉体が存在している複数の応力緩和空間と、を備える積層コイル部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-59749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、コイル導体の幅方向での断面が台形状または矩形状である構成が開示されている。コイル導体の幅方向での断面が台形状または矩形状であると、焼成時のコイル導体と素体の収縮差による応力がコイル導体の角部に集中しやすくなる。その結果、積層コイル部品の内部にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、コイル導体での応力集中が抑制される積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層コイル部品は、複数の絶縁層が積層されてなり、内部にコイルを内蔵する積層体と、上記積層体の外表面に設けられ、上記コイルに電気的に接続されている外部電極と、を備える積層コイル部品であって、上記コイルは、上記絶縁層とともに積層された複数のコイル導体が、電気的に接続されることにより構成されており、上記コイル導体は、上記コイル導体の幅方向の断面において、上記積層体の積層方向に直交する方向に対向する内側端面および外側端面を備え、上記内側端面は、上記コイル導体の幅方向の断面において、上記積層体の内側に位置し、上記外側端面は、上記コイル導体の幅方向の断面において、上記積層体の外側に位置し、少なくとも1つの上記コイル導体において、上記内側端面および上記外側端面のうちの少なくとも一方の端面は、第1面と、上記第1面に連続し、かつ、上記積層方向に垂直な面に対する角度が上記第1面とは異なる第2面と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コイル導体での応力集中が抑制される積層コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の積層コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、本発明の積層コイル部品を、コイルの構造が分かるように内部を透過して示した模式図である。
図3図3は、本発明の積層コイル部品の内部構造を模式的に示すLT断面図である。
図4図4は、本発明の積層コイル部品の内部構造を模式的に示すWT断面図である。
図5図5は、コイル導体の幅方向の断面の形状の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、積層体の作製方法を模式的に示す分解図である。
図7図7は、導体ペースト層およびフェライトペースト層を積層する過程を説明するための断面図である。
図8図8は、焼成後のコイル導体および絶縁層を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の積層コイル部品の別の一例の内部構造を模式的に示すLT断面図である。
図10-1】図10-1は、本発明の積層コイル部品の別の一例の積層体の作製方法を模式的に示す分解図である。
図10-2】図10-2は、本発明の積層コイル部品の別の一例の積層体の作製方法を模式的に示す分解図である。
図11図11は、積層コイル部品の焼成過程においてコイル導体の角部にかかる応力のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の積層コイル部品について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成および態様に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成および態様を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
図1は、本発明の積層コイル部品の一例を模式的に示す斜視図である。
【0011】
図1に示す積層コイル部品1は、積層体10と、積層体10の外表面に設けられた第1の外部電極21および第2の外部電極22と、を備えている。積層体10は、6面を有する略直方体形状である。積層体10の構成については後述する。
【0012】
積層コイル部品1および積層体10では、第1の外部電極21と第2の外部電極22が対向する方向を長さ方向Lとする。長さ方向Lに直交する方向を高さ方向Tとし、長さ方向Lおよび高さ方向Tに直交する方向を幅方向Wとする。
図1には積層コイル部品1および積層体10における長さ方向L、幅方向W、高さ方向Tを、それぞれ両矢印L方向、W方向、T方向として示している。
長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは互いに直交する。
積層コイル部品1の実装面は長さ方向Lと幅方向Wに平行な面(LW面)である。
【0013】
図1に示す積層体10は、長さ方向Lに相対する第1の端面11および第2の端面12と、長さ方向Lに直交する高さ方向Tに相対する第1の主面13および第2の主面14と、長さ方向Lおよび高さ方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1の側面15および第2の側面16とを有する。
【0014】
図1には示されていないが、積層体は、角部および稜線部に丸みが付けられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。
【0015】
第1の外部電極21は、図1に示すように、積層体10の第1の端面11を覆い、第1の端面11から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、第2の側面16の一部を覆って配置されている。また、第2の外部電極22は、図1に示すように、積層体10の第2の端面12を覆い、第2の端面12から延伸して第1の主面13の一部、第2の主面14の一部、第1の側面15の一部、第2の側面16の一部を覆って配置されている。
第2の主面14が実装面となる。
【0016】
図2は、本発明の積層コイル部品を、コイルの構造が分かるように内部を透過して示した模式図である。
【0017】
積層体10は複数のコイル導体31、32、33および34と、引出導体35および36と、複数のビア導体41、42および43とを備えている。
高さ方向Tの下側から順にコイル導体31、32、33および34が配置されている。
コイル導体31は引出導体36と連続している。コイル導体31は引出導体36を介して、第2の外部電極22と第2の端面12で電気的に接続されている。コイル導体34は引出導体35と連続している。コイル導体34は引出導体35を介して第1の外部電極21と第1の端面11で電気的に接続されている。
【0018】
各コイル導体31~34はビア導体41~43を介して、互いに電気的に接続されている。
コイル導体31は引出導体36と連続していない端部でビア導体41と電気的に接続されている。コイル導体32は一方の端部でビア導体41と電気的に接続されている。コイル導体32はビア導体41と電気的に接続されていない端部でビア導体42と電気的に接続されている。コイル導体33は一方の端部でビア導体42と電気的に接続されている。コイル導体33はビア導体42と電気的に接続されていない端部でビア導体43と電気的に接続されている。コイル導体34は引出導体36と連続していない端部でビア導体43と電気的に接続されている。
【0019】
図3は、本発明の積層コイル部品の内部構造を模式的に示すLT断面図である。図3は、図2の積層コイル部品のA-A線断面図である。
図4は、本発明の積層コイル部品の内部構造を模式的に示すWT断面図である。図4は、図2の積層コイル部品のB-B線断面図である。
【0020】
積層体10は、複数の絶縁層51、52、53、54および55が積層されてなり、内部にコイル30を内蔵している。
【0021】
コイル30は、絶縁層51、52、53、54および55とともに積層された複数のコイル導体31、32、33、34が、電気的に接続されることにより構成されている。第1の外部電極21および第2の外部電極22は、それぞれ、コイル30に電気的に接続されている。図2図4においてコイル30を第1の端面11に引き出す導体が引出導体35であり、コイル30を第2の端面12に引き出す導体が引出導体36である。コイル導体を積層体の外部に引き出す位置を変更することによりコイル導体と外部電極の接続位置を変更することができる。引出位置を変更して積層体の主面または側面においてコイル導体と外部電極を電気的に接続するようにしてもよい。
【0022】
コイル導体31と積層体10の第2の主面14との間には絶縁層51が存在する。コイル導体31とコイル導体32との間には絶縁層52が存在する。コイル導体32とコイル導体33との間には絶縁層53が存在する。コイル導体33とコイル導体34との間には絶縁層54が存在する。コイル導体31と積層体10の第1の主面13との間には絶縁層55が存在する。
【0023】
ビア導体41、42、および43はそれぞれ絶縁層52、53および54を高さ方向Tに貫通している。
【0024】
コイル導体31、32、33および34と絶縁層51、52、53および54との間にそれぞれ空隙部56が存在することが好ましい。図3および図4では空隙部56がコイル導体31、32、33および34の高さ方向Tにおける下側に存在している。空隙部56については後に詳しく説明する。
【0025】
図5は、コイル導体の幅方向の断面の形状の一例を模式的に示す断面図である。
コイル導体31は、幅方向の断面において、積層体の積層方向に直交する方向に対向する2つの端面である内側端面61および外側端面62を有する。
コイル導体31は、幅方向の断面において、積層体の積層方向に対向する2つの主面である第1主面63および第2主面64を有することが好ましい。
【0026】
内側端面61は、積層体の積層方向に直交する方向に対向する2つの端面のうち、積層体の内側に存在する端面である。外側端面62は、積層体の積層方向に直交する方向に対向する2つの端面のうち、積層体の外側に存在する端面である。
【0027】
本発明の積層コイル部品では、少なくとも1つのコイル導体において、内側端面および外側端面のうちの少なくとも一方の端面は、第1面と、第1面に連続し、かつ、積層方向に垂直な面に対する角度が前記第1面とは異なる第2面とを備える。
【0028】
コイル導体において内側端面および外側端面のうちの少なくとも一方の端面が第1面および第2面を備えていると以下の効果が生じる。
焼成時にはコイル導体と絶縁層との間で収縮差が生じるため、収縮差による応力がコイル導体の角部に集中しやすくなる。コイル導体において内側端面および外側端面のうちの少なくとも一方の端面が第1面と、第1面に連続し、かつ、前記積層方向に垂直な面に対する角度が前記第1面とは異なる第2面とを備えていると、第1面と第2面が接する角部にも応力が分散される。その結果、コイル導体の角部における応力の集中が抑えられる。そのため、積層コイル部品の内部のクラック発生が抑制される。
【0029】
図5ではコイル導体31の幅方向の断面において、内側端面61には第1面61aおよび第2面61bが存在する。
【0030】
内側端面61の第1面61aは、一方の端部において、内側端面61の第2面61bと接している。内側端面61の第1面61aと内側端面61の第2面61bは連続している。積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面を基準面としたとき、内側端面61の第1面61aの内側端面61の第2面61bと接しない端部における上記基準面に対する角度が内側端面61の第1角度θ1である。なお、図5において、内側端面61の第1面61aにおける内側端面61の第2面61bと接しない端部は第1主面63と接する端部と同じである。また、図5において、積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面は第1主面63と同じである。
【0031】
内側端面61の第2面61bは、一方の端部において、内側端面61の第1面61aと接している。図5において、内側端面61の第2面61bは、他方の端部において、積層体の積層方向に対向する2つの主面の1つである第2主面64と接している。積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面を基準面としたとき、内側端面61の第2面61bの内側端面61の第1面61aと接する端部における上記基準面に対する角度が内側端面61の第2角度θ2である。
【0032】
図5ではコイル導体31の幅方向の断面において、外側端面62には第1面62aおよび第2面62bが存在する。
【0033】
外側端面62の第1面62aは、一方の端部において、外側端面62の第2面62bと接している。外側端面62の第1面62aと外側端面62の第2面62bは連続している。積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面を基準面としたとき、外側端面62の第1面62aの外側端面62の第2面62bと接しない端部における上記基準面に対する角度が外側端面62の第1角度θ3である。なお、図5において、外側端面62の第1面62aにおける外側端面62の第2面62bと接しない端部は第1主面63と接する端部と同じである。また、図5において、積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面は第1主面63と同じである。
【0034】
外側端面62の第2面62bは、一方の端部において、外側端面62の第1面62aと接している。図5において、外側端面62の第2面62bは、他方の端部において、積層体の積層方向に対向する2つの主面の1つである第2主面64と接している。積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面を基準面としたとき、外側端面62の第2面62bの外側端面62の第1面62aと接する端部における上記基準面に対する角度が外側端面62の第2角度θ4である。
【0035】
図5では一例としてコイル導体31を示しているが、コイルを構成する複数のコイル導体のうち少なくとも1つのコイル導体における内側端面および外側端面のうちの少なくとも一方の端面が第1面および第2面を備えていればよい。積層コイル部品1では、コイル導体31、32、33または34の内側端面および外側端面のうちの少なくとも1つの端面が第1面および第2面を備えていればよい。コイルを構成する複数のコイル導体におけるすべての内側端面および外側端面が第1面および第2面を備えていてもよい。
【0036】
内側端面61の第1角度θ1および内側端面61の第2角度θ2のうち、一方の角度が90°以下であり、他方の角度が90°未満であることが好ましい。内側端面61の第1角度θ1および内側端面61の第2角度θ2が上記の条件を満たすと、コイル導体の角部における応力の集中がさらに抑制される。内側端面61の第1角度θ1が90°以下であり、内側端面61の第2角度θ2が90度未満であってもよく、内側端面61の第1角度θ1が90°未満であり、内側端面61の第2角度θ2が90度以下であってもよい。
【0037】
内側端面61の第1角度θ1および内側端面61の第2角度θ2のうち、一方の角度が40°以上、85°以下であり、他方の角度が5°以上30°以下であることがより好ましい。内側端面61の第1角度θ1および内側端面61の第2角度θ2が上記の条件を満たすと、コイル導体の角部における応力の集中がさらに抑制される。内側端面61の第1角度θ1が40°以上、85°以下であり、内側端面61の第2角度θ2が5°以上30°以下であってもよく、内側端面61の第1角度θ1が5°以上30°以下であり、内側端面61の第2角度θ2が40°以上、85°以下であってもよい。
【0038】
内側端面61の第1角度θ1が内側端面61の第2角度θ2よりも大きいことが好ましい。内側端面61の第1角度θ1および内側端面61の第2角度θ2が上記の関係を満たすと、コイル導体の角部における応力の集中がさらに抑制される。
【0039】
外側端面62の第1角度θ3および外側端面62の第2角度θ4のうち、一方の角度が90°以下であり、他方の角度が90°未満であることが好ましい。外側端面62の第1角度θ3および外側端面62の第2角度θ4が上記の条件を満たすと、コイル導体の角部における応力の集中がさらに抑制される。外側端面62の第1角度θ3が90°以下であり、外側端面62の第2角度θ4が90度未満であってもよく、外側端面62の第1角度θ3が90°未満であり、外側端面62の第2角度θ4が90度以下であってもよい。
【0040】
外側端面62の第1角度θ3および外側端面62の第2角度θ4のうち、一方の角度が40°以上、85°以下であり、他方の角度が5°以上30°以下であることがより好ましい。外側端面62の第1角度θ3および外側端面62の第2角度θ4が上記の条件を満たすと、コイル導体の角部における応力の集中がさらに抑制される。外側端面62の第1角度θ3が40°以上、85°以下であり、外側端面62の第2角度θ4が5°以上30°以下であってもよく、外側端面62の第1角度θ3が5°以上30°以下であり、外側端面62の第2角度θ4が40°以上、85°以下であってもよい。
【0041】
外側端面62の第1角度θ3が外側端面62の第2角度θ4よりも大きいことが好ましい。外側端面62の第1角度θ3および外側端面62の第2角度θ4が上記の関係を満たすと、コイル導体の角部における応力の集中がさらに抑制される。
【0042】
内側端面61の第1角度θ1と外側端面62の第1角度θ3は同じであっても、異なっていてもよい。
内側端面61の第2角度θ2と外側端面62の第2角度θ4は同じであっても、異なっていてもよい。
【0043】
図5において内側端面61の第1面61aおよび内側端面61の第2面61bは直線状で示されているが、曲線状であってもよい。
【0044】
内側端面61の第1角度θ1の測定方法は以下の通りである。内側端面61の第1面61aの内側端面61の第2面61bと接する端部と、内側端面61の第1面61aの内側端面61の第2面61bと接しない端部との間に直線を引く。上記直線が積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面となす角度を測定し、内側端面61の第1角度θ1とする。
【0045】
内側端面61の第2角度θ2の測定方法は以下の通りである。内側端面61の第2面61bの内側端面61の第1面61aと接する端部と内側端面61の第2面61bの内側端面61の第1面61aと接しない端部との間に直線を引く。上記直線が積層体の積層方向に垂直な面のうちコイル導体側の面となす角度を測定し、内側端面61の第2角度θ2とする。
【0046】
図5において外側端面62の第1面62aおよび外側端面62の第2面62bは直線状で示されているが、曲線状であってもよい。
【0047】
外側端面62の第1角度θ3の測定方法は、内側端面61の第1角度θ1と同様である。また、外側端面62の第2角度θ4の測定方法は、内側端面61の第2角度θ2と同様である。
【0048】
本明細書において、コイル導体の幅方向とは、コイル導体が存在する面において、コイル導体の長さ方向と直交する方向である。コイル導体の長さ方向とは、コイル導体が存在する面において、コイル導体が延びている方向である。したがって、コイル導体の幅方向は図1図4における幅方向Wと必ずしも一致するわけではなく、コイル導体の長さ方向は図1図4における長さ方向Lと必ずしも一致するわけではない。
【0049】
例えば、図3に示されている、コイル導体31および34の断面は全てコイル導体の長さ方向の断面である。
一方でコイル導体32の図3における右側の断面はコイル導体の幅方向の断面であり、コイル導体32の図3における左側の断面はコイル導体の長さ方向の断面である。また、コイル導体33の図3における左側の断面はコイル導体の幅方向の断面であり、コイル導体32の図3における右側の断面はコイル導体の長さ方向の断面である。
図4に示されている、コイル導体31、32、33および34の断面は全てコイル導体の幅方向の断面である。
【0050】
第1面および第2面を備えるコイル導体の少なくとも1つと絶縁層との間に空隙部が存在することが好ましい。
コイル導体31には絶縁層51との間に空隙部56が存在する。
図5では絶縁層51の上にコイル導体31が存在し、絶縁層51とコイル導体31との間に空隙部56が存在する構成を示している。空隙部56はコイル導体31の端部から少し内側に入った位置に形成されている。
【0051】
焼結時に絶縁層を構成するセラミック材料(フェライト材料など)はコイル導体を構成する金属材料(銀など)よりも収縮が大きいためにセラミック材料と金属材料との間に余計な力が加わり、積層コイル部品のインダクタンスやインピーダンスが劣化してしまう原因となる。
絶縁層とコイル導体との間に空隙部が設けられていると、セラミック材料と金属材料の接触が減るため、焼結時にセラミック材料と金属材料との間に加わる力が緩和される。
そのため、積層コイル部品のインダクタンスやインピーダンスが劣化してしまうことを抑制できる。
【0052】
コイル導体31は、積層体の積層方向に対向する2つの主面である第1主面63および第2主面64を備え、空隙部56が第1主面63および第2主面64のうちのいずれか一方に接するように存在してもよい。
【0053】
コイル導体31の幅よりも、空隙部56の幅が狭くてもよい。
コイル導体31の幅はコイル導体31の積層方向での断面において、最も幅が長くなる部分での幅を意味する。図5においては、コイル導体31の幅は第1主面63の幅と同じである。
【0054】
続いて、本発明の積層コイル部品を製造する方法の一例について説明する。
【0055】
まず、材料としてのフェライトシート、フェライトペースト、樹脂ペーストおよび導体ペーストを準備する。
【0056】
フェライトシートとしては、Fe、Zn、CuおよびNiを主成分として含むフェライト材料を用いることが好ましい。フェライト材料はFeをFeに換算して40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して5mol%以上、35mol%以下、CuをCuOに換算して4mol%以上、12mol%以下含有することが好ましい。フェライト材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。上記の材料に、Bi、Sn、Mn、Coなどの微量添加物(不可避不純物を含む)を含有させても良い。
【0057】
フェライトシートの作製方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
Fe、ZnO、CuO、NiO、および必要に応じて添加物を所定の組成になるように秤量する。秤量物、純水、分散剤およびPSZメディア(部分安定化ジルコニア)をボールミルに入れ、混合および粉砕する。得られたスラリーを乾燥させた後、700℃以上、800℃以下の温度で仮焼し、フェライト材料の仮焼粉末を得る。
上記で得られたフェライト材料の仮焼粉末とポリビニルブチラール系などの有機バインダ、エタノール、トルエンなどの有機溶剤およびPSZメディアとをボールミルに投入し、混合および粉砕する。得られた混合物を、ドクターブレード法で、所定の厚みのシートに成形加工した後、所定の大きさに打ち抜いてフェライトシートを作製することができる。
【0058】
フェライトペーストとしては、Fe、Zn、CuおよびNiを主成分として含むフェライト材料を用いることが好ましい。フェライト材料はFeをFeに換算して40mol%以上、49.5mol%以下、ZnをZnOに換算して5mol%以上、35mol%以下、CuをCuOに換算して4mol%以上、12mol%以下含有することが好ましい。フェライト材料において、Ni含有量は、特に限定されず、上記した他の主成分であるFe、ZnおよびCuの残部とし得る。上記の材料に、Bi、Sn、Mn、Coなどの微量添加物(不可避不純物を含む)を含有させても良い。
【0059】
フェライトペーストの作製方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
上記フェライトシートの作製方法と同じようにして得られたフェライト材料の仮焼粉末に、所定量のケトン系溶剤などの溶剤、ポリビニルアセタールなどの樹脂、および、アルキド系可塑剤などの可塑剤を入れ、プラネタリーミキサーで混練する。その後、さらに3本ロールミルで分散することで、フェライトペーストを作製することができる。
【0060】
樹脂ペーストはセラミックペーストと導体ペーストとの間に樹脂層を形成するためのペーストであり、焼成後に樹脂層を焼失させることによって空隙部を形成させる。
樹脂ペーストの作製方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
溶剤(イソホロンなど)に、焼成時に焼失する樹脂(アクリル樹脂など)を含有させることで、樹脂ペーストを作製する。
【0061】
導体ペーストとしては導電材料として銀を含むペーストを使用することが好ましい。
導体ペーストの作製方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
銀粉末を準備し、所定量の溶剤(オイゲノールなど)、樹脂(エチルセルロースなど)、および分散剤を入れ、プラネタリーミキサーで混錬した後、3本ロールミルで分散させることで導体ペーストを作製する。
【0062】
続いて、上記の材料を用いた積層体の作製方法の一例を説明する。
図6は、積層体の作製方法を模式的に示す分解図である。
図7は、導体ペースト層およびフェライトペースト層を積層する過程を説明するための断面図である。
【0063】
まず、フェライトシート71を準備する(図6A1)。
【0064】
次に、フェライトシート71上で空隙部を形成する箇所に樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層81を形成する(図6A2)。
【0065】
次に、コイル導体を形成する箇所に導体ペーストを印刷し、導体ペースト層91および引出導体部96を形成する(図6A3)。この時、導体ペースト層91の幅方向の端面は、表面が丸みを帯び、中央部での積層方向の厚みが端部での積層方向の厚みよりも大きい、いわゆるドーム状の形状となっている(図7A)。
【0066】
次に、導体ペースト層91をカレンダーロール100を用いて加圧することにより、導体ペースト層91の表面を平坦化する(図7B)。これにより、導体ペースト層91の表面に角部が形成される。
【0067】
次に、導体ペースト層91が形成されていない領域にフェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層72を形成する(図6A4)。このフェライトペースト層72は焼成後、コイル導体の周囲の絶縁層51となる。ここで、導体ペースト層91の端部の一部にフェライトペースト層72が所定の長さ(図7Cにおける両矢印Xで示す長さ)と所定の厚み(図7Cにおける両矢印Yで示す厚み)で重なるように印刷する(図7C)。
【0068】
上記工程により、樹脂ペースト層81、引出導体部96、導体ペースト層91およびフェライトペースト層72が印刷されたパターンシート1が形成される。
【0069】
別途フェライトシート71を準備し、パターンシート1に形成した導体ペースト層91と接続する箇所にレーザーを照射しビアホール44を形成する(図6B1)。
【0070】
次に、空隙部を形成する箇所に樹脂ペーストを印刷し、樹脂ペースト層81を形成する(図6B2)。
【0071】
次に、コイル導体を形成する箇所に導体ペーストを印刷し、導体ペースト層92を形成するとともに、ビアホール44に導体ペーストを充填する(図6B3)。
【0072】
次に、導体ペースト層92が形成されていない領域にフェライトペーストを印刷し、フェライトペースト層72を形成する。ここで、パターンシート1と同様に導体ペースト層92の端部の一部にフェライトペースト層72が重なるように印刷する(図6B4)。
【0073】
上記工程により、樹脂ペースト層81、導体ペースト層92およびフェライトペースト層72が印刷された、パターンシート2が形成される。
【0074】
パターンシート2と同じような手順でパターンシート3およびパターンシート4を作製する(図6C1~C4および図6D1~D4)。なお、パターンシート4には、導体ペースト層94および引出導体部95を形成する(図6D3)。
【0075】
以上のようにして作製したパターンシート1、パターンシート2、パターンシート3およびパターンシート4を順番に積層し、上下に所定枚数の何も印刷していないフェライトシートを積み重ねる。積み重ねたシートに、温度が70℃以上、90℃以下、圧力が60MPa以上、100MPa以下の条件で加圧、圧着処理を行うことで積層体ブロック(素子の集合体)が得られる。
【0076】
次に、積層体ブロックをダイサーなどで切断し、個片化することで素子が得られる。その後、得られた素子を焼成炉で880℃以上950℃以下の温度で、1時間以上8時間以下の間焼成を行う。
【0077】
焼成した素子をメディアとともに回転バレル機に入れ回転することで、素子の稜線部および角部に丸みを形成することが好ましい。以上の工程により電子部品素体が得られる。
【0078】
次に、素子の側面のコイルが引き出された端面に銀およびガラスを含む導電性ペーストを塗布する。600℃以上850℃以下の温度で導電性ペーストの焼き付けを行うことで、外部電極の下地電極を形成する。その後、電解めっきにより、下地電極の上に、Ni被膜およびSn被膜を順次形成することにより、外部電極を形成し、図1に示すような積層コイル部品1が得られる。Ni被膜およびSn被膜の厚みは例えば約3μmであってもよい。上記の方法で作製される積層コイル部品のサイズは、例えば、L(長さ)=1.0mm、W(幅)=0.5mm、T(高さ)=0.5mmであってもよい。
【0079】
なお、図6におけるフェライトシート71およびフェライトペースト層72は焼成後に絶縁層51、52、53および54となる。図6における樹脂ペースト層81は焼成後に空隙部56となる。図6における導体ペースト層91、92、93および94はそれぞれ焼成後にコイル導体31、32、33および34となる。図6における引出導体部95および96はそれぞれ焼成後に引出導体35および36となる。図6におけるビアホール44、45および46に充填された導体ペーストはそれぞれ焼成後にビア導体41、42および43となる。
【0080】
図8は、焼成後のコイル導体および絶縁層を模式的に示す断面図である。
図7および図8を参照して、コイル導体の幅方向の断面において、端面に第1面および第2面を形成する方法を説明する。
図7Cに示しているように、焼成前のパターンシート1において、導体ペースト層91の端部の一部にフェライトペースト層72が所定の長さXと所定の厚みYで重なっている。加圧、圧着工程において、導体ペースト層91にフェライトペースト層72が重なっている部分には、フェライトペースト層72が重なっていない部分に比べて大きな圧力がかかる。その結果、コイル導体31は、幅方向の断面において、内側端面61および外側端面62のうちの少なくとも一方の端面が、第1面61a、62aと、第1面61a、62aに連続し、かつ、積層体の積層方向に垂直な面に対する角度が第1面61a、62aとは異なる第2面61b、62bと、を備える(図8)。なお、図7Bに示しているように導体ペースト層91の表面がカレンダーロール100によって平坦化されていない場合は、導体ペースト層91に角部が存在せず、フェライトペースト層72が横に流れてしまう。そのため、形成されるコイル導体は、幅方向の断面において、第1面および第2面を備えていない。
【0081】
導体ペースト層91の端部の一部にフェライトペースト層72が重なる部分の長さXおよび、導体ペースト層91の端部の一部にフェライトペースト層72が重なる部分の厚みYを変更することによって、コイル導体の幅方向の断面における内側端面61の第2角度θ2および外側端面62の第2角度θ4を適宜変更することができる。
【0082】
本発明の積層コイル部品において、コイルは、ビア導体を介して電気的に並列に接続された、異なる層に存在する2層以上のコイル導体から構成されていることが好ましい。
【0083】
コイルがビア導体を介して電気的に並列に接続された、異なる層に存在する2層以上のコイル導体から構成されているとコイルの直流抵抗が低下するため、さらに大電流を付加することができる。
【0084】
図9は、本発明の積層コイル部品の別の一例の内部構造を模式的に示すLT断面図である。
【0085】
積層コイル部品2において、積層体10は複数のコイル導体31a、31b、32a、32b、33a、33b、34aおよび34bと、複数のビア導体41a、41b、41c、42a、42b、42c、43a、43bおよび43cとを備えている。図9では、高さ方向Tの下側から順にコイル導体31a、31b、32a、32b、33a、33b、34aおよび34bが配置されている。また、コイル導体31aとコイル導体31bはコイル導体パターンが同じである。同様にコイル導体32aとコイル導体32b、コイル導体33aとコイル導体33b、コイル導体34aとコイル導体34bはそれぞれコイル導体パターンが同じである。
【0086】
コイル導体31aおよび31bはビア導体41aを介して電気的に接続されている。コイル導体31bおよび32aはビア導体41bを介して電気的に接続されている。コイル導体32aおよび32bはビア導体41cを介して電気的に接続されている。なお、ビア導体41a、ビア導体41bおよびビア導体41cは積層体の積層方向から見て重なるように存在している。
同様に、コイル導体32aおよび32bはビア導体42aを介して電気的に接続されている。コイル導体32bおよび33aはビア導体42bを介して電気的に接続されている。コイル導体33aおよび33bはビア導体42cを介して電気的に接続されている。なお、ビア導体42a、ビア導体42bおよびビア導体42cは積層体の積層方向から見て重なるように存在している。
同様に、コイル導体33aおよび33bはビア導体43aを介して電気的に接続されている。コイル導体33bおよび34aはビア導体43bを介して電気的に接続されている。コイル導体34aおよび34bはビア導体43cを介して電気的に接続されている。なお、ビア導体43a、ビア導体43bおよびビア導体43cは積層体の積層方向から見て重なるように存在している。
【0087】
図9のような構成であると、コイル導体31aとコイル導体31bは電気的に並列に接続されている。同様にコイル導体32aとコイル導体32b、コイル導体33aとコイル導体33b、コイル導体34aとコイル導体34bもそれぞれ電気的に並列に接続されている。
【0088】
続いて、図10-1および図10-2を参照して、積層コイル部品2の作製方法を説明する。
図10-1および図10-2は、本発明の積層コイル部品の別の一例の積層体の作製方法を模式的に示す分解図である。
図10-1および図10-2は、積層コイル部品2における積層体10の作製方法を示している。
【0089】
図6A1図6A4と同様の方法でパターンシート1を作製する(図10-1A1~A4)。
【0090】
次に、ビアホール44aが存在する以外はパターンシート1と同様であるパターンシート1´を作製する(図10-1A1´~A4´)。パターンシート1´のビアホール44aに充填された導体ペーストは焼成後にビア導体41aとなる。
【0091】
次に、図6B1図6B4と同様の方法でパターンシート2を作製する(図10-1B1~B4)。なお、パターンシート2のビアホール44bに充填された導体ペーストは焼成後にビア導体41bとなる。
【0092】
次に、ビアホール45aが存在する以外はパターンシート2と同様であるパターンシート2´を作製する(図10-1B1´~B4´)。なお、パターンシート2´のビアホール44cに充填された導体ペーストは焼成後にビア導体41cとなる。パターンシート2´のビアホール45aに充填された導体ペーストは焼成後にビア導体42aとなる。
【0093】
パターンシート2と同じような手順でパターンシート3およびパターンシート4を作製する(図10-2C1~C4および図10-2D1~D4)。パターンシート2´と同じような手順でパターンシート3´およびパターンシート4´を作製する(図10-2C1´~C4´および図10-2D1´~D4´)。
【0094】
以上のようにして作製したパターンシート1、パターンシート1´、パターンシート2、パターンシート2´、パターンシート3、パターンシート3´、パターンシート4およびパターンシート4´を順番に積層し、上下に所定枚数の何も印刷していないフェライトシートを積み重ねる。積み重ねたシートに、温度が70℃以上、90℃以下、圧力が60MPa以上、100MPa以下の条件で加圧、圧着処理を行うことで積層体ブロック(素子の集合体)が得られる。
【0095】
上記以外の工程については積層コイル部品1と同様の工程を行うことで、図9に示すような積層コイル部品2が得られる。
【0096】
図10-1または図10-2における導体ペースト層91a、91b、92a、92b、93a、93b、94aおよび94bはそれぞれ焼成後にコイル導体31a、31b、32a、32b、33a、33b、34aおよび34bとなる。図10-1または図10-2におけるビアホール44a、44b、44c、45a、45b、45c、46a、46bおよび46cに充填された導体ペーストはそれぞれ焼成後にビア導体41a、41b、41c、42a、42b、42c、43a、43bおよび43cとなる。
【0097】
図11は、積層コイル部品の焼成過程においてコイル導体の角部にかかる応力のシミュレーション結果を示す図である。
【0098】
コイル導体の角部にかかる応力のシミュレーションには、コイル導体が端面に第1面と第2面とを備える形状である実施例1、コイル導体が矩形状である比較例1およびコイル導体が台形状である比較例2の積層コイル部品を用いた。
なお、応力のシミュレーションは、ムラタソフトウエア株式会社製 Femtet(登録商標)を用いて行った。
【0099】
図11Aは、コイル導体が端面に第1面と第2面とを備える形状である実施例1の積層コイル部品において、コイル導体部および絶縁層にかかる応力をシミュレーションした結果である。
図11Bは、コイル導体が矩形状である比較例1の積層コイル部品において、コイル導体部および絶縁層にかかる応力をシミュレーションした結果である。
図11Cは、コイル導体が台形状である比較例2の積層コイル部品において、コイル導体部および絶縁層にかかる応力をシミュレーションした結果である。
【0100】
図11Aにおいて、コイル導体の第1面および第2面が接する角部(A1)にかかる応力と、図11Bにおいて、コイル導体の左上の角部(B)にかかる応力と、を比較したところ、角部(A1)にかかる応力は、角部(B)にかかる応力の0.70倍であった。
図11Aにおいて、コイル導体の第2面における第1面と接しない端部である角部(A2)にかかる応力と、図11Bにおいて、コイル導体の左上の角部(B)にかかる応力と、を比較したところ、角部(A2)にかかる応力は、角部(B)にかかる応力の0.66倍であった。
このことから、実施例1の積層コイル部品では、比較例1の積層コイル部品に比べて、コイル導体の角部への応力の集中が、30%以上34%以下低減されていることが分かる。
【0101】
図11Aにおいて、コイル導体に第1面および第2面が接する角部(A1)にかかる応力と、図11Cにおいて、コイル導体の左上の角部(C)にかかる応力と、を比較したところ、角部(A1)にかかる応力は、角部(C)にかかる応力の0.89倍であった。
図11Aにおいて、第2面における第1面と接しない端部である角部(A2)にかかる応力と、図11Cにおいて、コイル導体の左上の角部(C)にかかる応力と、を比較したところ、角部(A2)にかかる応力は、角部(C)にかかる応力の0.83倍であった。
このことから、実施例1の積層コイル部品では、比較例2の積層コイル部品に比べて、コイル導体の角部への応力の集中が、11%以上17%以下低減されていることが分かる。
【0102】
以上の結果から、本発明の積層コイル部品では、コイル導体の形状が矩形状または台形状である積層コイル部品と比較して、コイル導体の角部への応力の集中が抑えられていることが分かる。
【符号の説明】
【0103】
1、2 積層コイル部品
10 積層体
11 第1の端面
12 第2の端面
13 第1の主面
14 第2の主面
15 第1の側面
16 第2の側面
21 第1の外部電極
22 第2の外部電極
22a 第2の外部電極の端点
30 コイル
31、31a、31b、32、32a、32b、33、33a、33b、34、34a、34b コイル導体
35 第1の外部電極と接続される引出導体
36 第2の外部電極と接続される引出導体
41、41a、41b、41c、42、42a、42b、42c、43、43a、43b、43c ビア導体
44、44a、44b、44c、45、45a、45b、45c、46、46a、46b、46c ビアホール
51、52、53、54、55 絶縁層
56 空隙部
61 内側端面
61a、62a 第1面
61b、62b 第2面
62 外側端面
63 第1主面
64 第2主面
71 フェライトシート
72 フェライトペースト層
81 樹脂ペースト層
91、91a、91b、92、92a、92b、93、93a、93b、94、94a、94b 導体ペースト層
95、96 引出導体部
100 カレンダーロール

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11