(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙製品の包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 75/04 20060101AFI20240717BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240717BHJP
B65D 85/671 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65D75/04
B65D65/02 E
B65D85/671
(21)【出願番号】P 2021196148
(22)【出願日】2021-12-02
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 遥絵
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0237964(US,A1)
【文献】国際公開第2021/095780(WO,A1)
【文献】特開2018-053400(JP,A)
【文献】特開2018-120035(JP,A)
【文献】特開2016-150769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 65/02
B65D 83/08
B65D 85/671
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のロール状衛生薄葉紙製品、積層状衛生薄葉紙製品、または複数個の箱入り積層状衛生薄葉紙製品を包装紙で包装した包装体であって、
前記包装紙は、艶面と非艶面とを有する片艶紙であり、
前記包装紙の前記非艶面が前記包装体の外面側となり、前記包装紙の前記艶面が前記包装体の内面側となるように構成され、および
前記包装体の封止部は、前記包装紙の前記艶面と前記非艶面とが対接するように接合された接合部を含むことを特徴とする、衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項2】
前記包装紙の前記非艶面についてKES試験法により測定される表面粗さの平均偏差値(SMD値)が1.0μm以上1.7μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項3】
前記包装紙の前記艶面について測定される平滑度が210秒以上310秒以下であり、かつ、前記包装紙の前記非艶面について測定される平滑度が16秒以上26秒以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項4】
前記接合部における前記包装紙の前記艶面および前記非艶面のそれぞれには、両者を接合するヒートシール層が設けられており、
前記艶面の前記ヒートシール層における単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量は、前記非艶面の前記ヒートシール層における単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量よりも少ないことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項5】
前記包装紙の坪量は、30g/m
2以上65g/m
2以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生薄葉紙製品を包装する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレットペーパー、キッチンペーパー等のロール状衛生薄葉紙製品またはティシュペーパー、ワイパー等の積層状衛生薄葉紙製品を被包装物として収容する、衛生薄葉紙製品の包装体が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、ロール状衛生薄葉紙製品を包装する包装体として、ポリエチレン等の筒状のフィルムの下部にガゼット(ガセットともいう)を対称的に折り込み、当該筒状のフィルムの上部を平面状に折り畳んで把持部を構成した包装体を開示している。また、特許文献2は、積層状衛生薄葉紙製品を包装する包装体として、可撓性の樹脂フィルムから形成された包装袋の上面の中央部にミシン目が設けられた包装体を開示している。
【0004】
ところで、近年、世界的にプラスチックゴミ問題が深刻化しており、地球環境の改善のため、包装の素材をプラスチックから他の素材に代えることが望まれている。例えば特許文献3は、包装の素材をプラスチックフィルムから紙に代えて、少なくとも紙基材を含む包装基材で衛生薄葉紙製品を包装した包装体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-269010号公報
【文献】特開2016-188092号公報
【文献】特開2021-70501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のフィルムで衛生用薄葉紙製品を包装した包装体と比較すると、包装紙で包装した包装体は滑りやすく、商品棚に陳列するときや持ち運び時等に手で包装体を掴む際に把持しにくいという課題がある。また、紙とプラスチックフィルムとでは、接着剤の浸透性が異なる。
【0007】
本発明は、衛生薄葉紙製品を包装紙(包装用の紙基材)で包装した包装体において、包装体の把持しやすさと封止部の接着性とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、複数個のロール状衛生薄葉紙製品、積層状衛生薄葉紙製品、または複数個の箱入り積層状衛生薄葉紙製品を包装紙で包装した包装体であって、包装紙は、艶面と非艶面とを有する片艶紙であり、包装紙の非艶面が包装体の外面側となり、包装紙の艶面が包装体の内面側となるように構成され、および包装体の封止部は、包装紙の艶面と非艶面とが対接するように接合された接合部を含むことを特徴とする、衛生薄葉紙製品の包装体により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] 複数個のロール状衛生薄葉紙製品、積層状衛生薄葉紙製品、または複数個の箱入り積層状衛生薄葉紙製品を包装紙で包装した包装体であって、
包装紙は、艶面と非艶面とを有する片艶紙であり、
包装紙の非艶面が包装体の外面側となり、包装紙の艶面が包装体の内面側となるように構成され、および
包装体の封止部は、包装紙の艶面と非艶面とが対接するように接合された接合部を含むことを特徴とする、衛生薄葉紙製品の包装体。
【0011】
[2] 前記包装紙の前記非艶面側についてKES試験法により測定される表面粗さの平均偏差値(SMD値)が1.0μm以上1.7μm以下であることを特徴とする[1]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【0012】
[3] 包装紙の艶面について測定される平滑度が210秒以上310秒以下であり、かつ、包装紙の非艶面について測定される平滑度が16秒以上26秒以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【0013】
[4] 接合部における包装紙の艶面および非艶面のそれぞれには、両者を接合するヒートシール層が設けられており、
艶面のヒートシール層における単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量は、非艶面のヒートシール層における単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量よりも少ないことを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【0014】
[5] 包装紙の坪量は、30g/m2以上65g/m2以下であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、衛生薄葉紙製品を包装紙(包装用の紙基材)で包装した包装体において、包装体の把持しやすさと封止部の接着性との実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る包装体を構成する包装紙の概略展開図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る包装体の封止部に含まれる接合部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。これらは例示の目的で掲げたものであり、これらにより本発明を限定するものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
図1の(a)は、本発明の第1の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体の概略斜視図である。説明の便宜のため、包装体1の被包装物2は透視的に示されている。
【0019】
図1の(a)に示される本発明の第1の実施形態において、包装体1は、衛生薄葉紙製品2と、衛生薄葉紙製品2を包装する包装紙10と、を含む。
【0020】
[衛生薄葉紙製品]
本実施形態では、衛生薄葉紙製品2は、2列×2段に配置された計4個のロール状トイレットペーパー(トイレットロールともいう)であり、包装紙10は、かかる複数個のトイレットロール2を一纏めに包んでいる。
【0021】
本発明において、包装体1に包装される衛生薄葉紙製品2の例には、非限定的に、(1)トイレットペーパー、キッチンペーパー等の長尺の衛生薄葉紙シートをロール状に巻き取った「ロール状衛生薄葉紙製品」、(2)ティシュペーパー、ワイパー等の複数枚もしくは複数組の衛生薄葉紙シートを積層した積層体の形態の「積層状衛生薄葉紙製品」、(3)ティシュペーパー、ワイパー等の複数枚もしくは複数組の衛生薄葉紙シートを積層した積層体を箱または袋に収容した形態の衛生薄葉紙製品(以下、「箱入り積層状衛生薄葉紙製品」と総称する)等が挙げられる。
【0022】
本発明において、包装体1に包装される衛生薄葉紙製品2の数(個数)または量(枚数、組数)は、衛生薄葉紙製品2の寸法、重さや包装紙10の強度(破けやすさ)などによる、包装体1の取り扱いやすさ、製品販売戦略等により決定されてもよい。包装体1は、例えば、2個から12個のロール状衛生薄葉紙製品、または2個から5個の箱入り積層状衛生薄葉紙製品を含んでいてもよい。あるいはまた、包装体1は、例えば、20枚から400枚(または10組から200組)の衛生薄葉紙シートが積層された1束の積層状衛生薄葉紙製品を含んでいてもよい。
【0023】
[包装紙]
図1の(b)は、本発明に適用可能な包装紙10の概略的な部分断面図である。図中、両矢印Tは、包装紙10の厚さ方向を示す。包装紙10としては、表面凹凸の表裏差が大きい紙基材が用いられ、いわゆる片艶紙を好ましく用いることができる。
【0024】
片艶紙とは、片面の平滑を高め光沢をもたせた紙であり、相対的に平滑度が低くザラザラとした感触の非艶面(低平滑面)10aと、相対的に平滑度が高くツルツルとした感触の艶面(高平滑面)10bと、を有する。
【0025】
[平滑度]
本発明の実施形態において、包装紙10の非艶面10aの平滑度は、包装紙10の艶面10bの平滑度よりも低い。平滑度は、例えば、JIS P 8155:2010に従って測定することができる。
【0026】
包装紙10の非艶面10aについてJIS P 8155:2010に従って測定される平滑度は、好ましくは16秒以上26秒以下である。
【0027】
また、包装紙10の艶面10bについてJIS P 8155:2010に従って測定される平滑度は、好ましくは、210秒以上310秒以下である。
【0028】
[包装紙の製造方法]
本発明に適用可能な、非艶面10aと艶面10bとを有する包装紙(片艶紙)10は、例えば、パルプ原料から紙を抄造するにあたり、鏡面仕上げしたヤンキードライヤーを備えた抄紙機において抄紙を行い、鏡面仕上げしたヤンキードライヤーの表面に湿紙を圧接して乾燥させることにより、製造することができる。ヤンキードライヤーに接触する面の平滑度および光沢は、ヤンキードライヤーと接触しない面の平滑度および光沢と比べて高くなり、このようにして、非艶面10aと艶面10bとを有する包装紙(片艶紙)10を製造することができる。
【0029】
[パルプ]
包装紙10の主原料となるパルプ成分としては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプを挙げることができる。
【0030】
木材パルプとしては例えば、広葉樹パルプ(広葉樹クラフトパルプ(LKP))、針葉樹パルプ(針葉樹クラフトパルプ(NKP))、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプが挙げられるが、特に限定されない。
【0031】
非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0032】
古紙パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。例えば、新聞紙、チラシ、ザラ紙系雑誌、コート紙系雑誌、感熱記録紙、感圧記録紙、模造紙、色上質紙、コピー用紙、コンピューターアウトプット用紙、またはこれらを任意に組み合わせた混合古紙のような、従来知られている古紙パルプなどが挙げられる。
【0033】
パルプ成分は上記の1種が単独で用いられていてもよいし、2種以上混合されていてもよい。これらパルプ成分は紙基材の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。
【0034】
例えば、針葉樹クラフトパルプ(NKP)および/または広葉樹クラフトパルプ(LKP)を、好ましくは0~60:100~40、より好ましくは20~60:80~40、さらに好ましくは40~60:60~40の配合率(質量%)で用いてもよい。
【0035】
針葉樹クラフトパルプは、概して、広葉樹クラフトパルプと比べて繊維長が長い。そのため、パルプ原料中において針葉樹クラフトパルプの配合率が高くなると、概して、得られる包装紙10の紙力が強くなる。例えば、MD方向(抄紙方向、または縦方向ともいう)の引張強度が高くなり、MD方向への力が掛かっても破れにくい包装紙10が得られる。
【0036】
[引張強度]
包装紙10のMD方向の乾燥引張強度は、好ましくは3.5kN/m以上5.5kN/m以下であり、より好ましくは4.1kN/m以上5.1kN/m以下である。
【0037】
また、包装紙10のCD方向(横方向ともいう)の乾燥引張強度は、好ましくは1.8kN/m以上3.6kN/m以下であり、より好ましくは2.3kN/m以上3.1kN/m以下である。
【0038】
[引張強度の測定方法]
乾燥引張強度は、JIS P8113に準じて、包装紙10のMD方向およびCD方向のそれぞれについて、測定方向と直交する方向の長さを15mmとした短冊状の試験片を切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC1250)にて、スパン長を100mmとして、測定することができる。
【0039】
[任意成分]
包装紙10には、要求品質および製造時の操業の安定のために、任意成分として、一般的に用いられている様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤等を挙げることができる。
【0040】
乾燥紙力剤としては、例えば、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を挙げることができる。湿潤紙力剤としては、通常用いられる公知のものの中から選択して使用することができる。例えば、ポリアミド・ポリアミン系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、メラミン系樹脂等を挙げることができ、特には、ポリアミドエピクロロヒドリン、尿素、メラミン、熱架橋性ポリアクリルアミド等を挙げることができる。柔軟剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を挙げることができる。上記の任意成分は1種が単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
[包装体]
図1の(a)を参照して、本発明の実施形態において、包装体1は、包装紙10の非艶面10aが包装体1の外面側となり、包装紙10の艶面10bが包装体1の内面側となるように構成されている。また、包装体1は、包装紙10の端部(両側端部、および上下端部)がそれぞれ接合されることによって封止される封止部を有する。包装体1の封止部は、包装紙10の非艶面10aと艶面10bとが接着剤層20を介して対接するように接合される第1の接合部12を含む。
【0042】
[包装体の包装形式および製造方法]
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態に係る包装体1に適用可能な包装形式および包装体1の製造方法の非限定的な例について説明する。
【0043】
図2は、
図1の(a)に示される包装体1を構成する包装紙10の概略展開図である。
図2の(a)は包装紙10の非艶面10aの平面図であり、
図2の(b)は包装紙10の艶面10bの平面図である。本例において、包装紙10は、矩形OPQRである。
【0044】
包装紙10には、包装体1を封止するための接着剤が付与されている。
図2の(a)および(b)を参照して、本例において、図中、ハッチングで示される領域(逆コの字形およびI字形の領域)に、接着剤が付与されている。これにより、包装紙10の非艶面10aおよび艶面10bには、それぞれ接着剤層20a、20bが形成されている。
【0045】
図1の(a)に示される例において、包装体1の包装には、キャラメルのようなソフトキャンディの個別包装や箱たばこのパッケージなどで知られている、いわゆるキャラメル包装形式と呼ばれる包装形式が採用されている。
【0046】
図1の(a)に示されるキャラメル包装形式の包装体1は、例えば、以下に示す工程を経て製造することができる。
【0047】
(工程1)
図2の(a)および(b)に示されるような、包装体1を封止するための接着剤が包装紙10の表裏面の所定領域(図中、逆コの字形およびI字形領域)に付与されて接着剤層20a、20bが形成された、矩形OPQRの包装紙10を準備する工程。
【0048】
(工程2)
図2の(b)に示される包装紙10の艶面10b上に、被包装物である2列×2段に配置された計4個のトイレットロール2を、トイレットロールの軸方向が
図2の(b)において矢印Yで示される方向と一致するように、配置する工程。
【0049】
(工程3) 包装紙10で、包装紙10の非艶面10aが外面となるように被包装物2を巻き込み、包装紙10の両側端部を重ね合わせて、筒状に包装する工程。
【0050】
この工程3により、
図2の(a)に示される包装紙10の非艶面10aの接着剤層20aのうちの矩形OPP
1O
1で示される部分と、
図2の(b)に示される包装紙10の艶面10bの接着剤層20bのうちの矩形R
1Q
1QRで示される部分と、が対接するように重ね合わされる。これにより、包装紙10は、その両側端部が、非艶面10aと艶面10bとが対接するように、接着剤層20(20a、20b)を介して接合される。
【0051】
(工程4) 次いで、工程3により形成された筒状の包装の開口する両端部のそれぞれにおいて、被包装物2の周面からはみ出た包装紙10の部分を、2対の対向するフラップ状部分が形成されるように互いに折り畳み、被包装物2の端面に沿わせて接合して、被包装物2を包封する工程。
【0052】
図2の(a)および(b)において、矩形OO
2R
2Rおよび矩形P
2PQQ
2で示される包装紙10の上下端部の領域が、図中の山折り線UFL(破線)および谷折り線DFL(一点鎖線)に従って折り畳まれて、フラップ状部分が形成される。非艶面10aに設けられた接着剤層20aを介して、フラップ状部分が包装体1の上下端面に沿って接合されることにより、
図1の(a)に示される状態が得られる。
【0053】
なお、本明細書において、包装紙10の「上下端部」および包装体1の「上下端面」における「上下端」とは、
図1の(a)ならびに
図2に示されるY方向における両端を指し、包装紙10の「(両)側端部」とは、
図2に示されるX方向における(両)端部を指す。
【0054】
以上の工程により、包装体1は、包装紙10の両側端部が非艶面10aと艶面10bとが対接するように重ね合わされて接合される第1の接合部12と、包装紙10の上下端部のそれぞれが主に非艶面10a同士が対接するように折り畳まれて接合される第2の接合部と、を有する封止部により、封止される。
【0055】
図3は、包装紙10の両側端部が重ね合わされた包装体1の第1の接合部12を説明する概略的な部分断面図である。
図3中、両矢印Tは、包装紙10の厚さ方向を示す。第1の接合部12において、重なり合わされた包装紙10同士は、対接する非艶面10aおよび艶面10bに設けられた接着剤層20aおよび20bの接着を介して、接合されている。
【0056】
[接着剤]
本発明の実施形態に適用可能な接着剤としては、好ましくは、ヒートシール性を発現する任意の材料、すなわちヒートシール剤を使用することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂や、他の熱可塑性樹脂を使用することができ、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、非晶性ポリエステル、ポリプロピレン、スチレン-アクリル共重合体、プロピレン-エチレン共重合体(好ましくはエチレン含有量が10モル%以下の共重合体)、または、ポリプロピレンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体等をグラフト重合または共重合したポリプロピレン系樹脂、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。これらの材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
[接着剤層]
接着剤層20(20a、20b)は、接着剤を含む層である。接着剤層20a、20bを構成する材料は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。接着剤層20a、20b同士の接着性の観点からは、両層を構成する材料は、相溶性の高い材料であることが好ましく、同一であることが好ましい。
【0058】
接着剤としてヒートシール剤を含みヒートシール性を発現する接着剤層を、以下、単にヒートシール層とも称する。
【0059】
ヒートシール層20a、20bは、例えば、以下に挙げるような通常用いられる方法を用いて包装紙10に付与することができる。
(1)包装紙10上に、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂を含有する組成物を、押出法によって製膜する方法。
(2)知られているヒートシール加工装置(貼合処理装置)を用いて、包装紙10に熱可塑性樹脂からなるフィルムまたは熱可塑性樹脂を含有するフィルムを貼り付ける方法。
(3)熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂組成物を水に溶解もしくは分散させた水系ヒートシール剤、または熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解もしくは分散させた溶剤系ヒートシール剤を、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等の知られている方法で、包装紙10上に塗工する方法。
【0060】
本発明の実施形態において、包装体1の第1の接合部12において、重ね合わされた包装紙10の端部同士は、包装紙10の非艶面10aおよび艶面10bのそれぞれの接着剤層20a、20b同士の接着により、接合される。接着剤層がヒートシール層である場合において、第1の接合部12は、ヒートシール層20a、20b同士のヒートシール(熱融着)により接合される。
【0061】
ヒートシール処理には、知られているヒートシーラーを用いることができる。ヒートシール処理により、包装紙10の両側端部が重ね合わされた第1の接合部12となる領域には、熱と圧力が加えられ、非艶面10aと艶面10bとが対接する包装紙10の接合面(相対するヒートシール層20a、20bの接着面)において、各ヒートシール層20a、20bのヒートシール剤が軟化および溶融する。次いで、ヒートシール層20a、20b同士の接着面において、軟化したヒートシール剤のミクロの食い込みや溶融したヒートシール剤の混合一体化などの現象が生じて、部分的または全体的に接着界面がなくなり、冷却後、ヒートシール層20a、20bが強固に接着されたヒートシール層20が得られる。これにより、第1の接合部12において、重ね合わされた包装紙10間に、十分な接合強度が得られる。
【0062】
なお、第2の接合部における、包装紙10の非艶面10a同士が対接するように接合される場合のヒートシール層20a同士の接着についても、同様のヒートシール処理を適用することができ、同様の作用効果により、ヒートシール層20a同士が接着される。
【0063】
[作用効果]
1.接着性
本発明の実施形態に係る包装体1の封止部は、包装紙10の表裏面である非艶面10aと艶面10bとが対接するように接合された第1の接合部12を有する。
【0064】
包装紙10の非艶面10aは、艶面10bと比べて表面凹凸が顕著で粗い。そのため、非艶面10aに接着剤を付与して接着剤層20aを設けた場合は、包装紙10の非艶面10aの表面凹凸の凹部や繊維間に接着剤が入り込んで(浸透して)嵌合状態となる「アンカー効果」が大きくなりやすい。
【0065】
これに対して、艶面10bに接着剤を付与して接着剤層20bを設けた場合は、包装紙10の艶面10bは非艶面10aほど表面凹凸が顕著ではなく滑らかであるため、非艶面10aの場合と比べて、表面凹凸の凹部や繊維間に接着剤が入り込んで(浸透して)嵌合状態となるアンカー効果は小さくなる。
【0066】
このようなアンカー効果の大小により、相対的に、包装紙10の非艶面10aにおける包装紙10と接着剤層20aとの間の接着強度は高くなり、包装紙10の艶面10bにおける包装紙10と接着剤層20bとの間の接着強度は低くなる。
【0067】
ここで、本発明の実施形態とは異なり、包装体1の封止部が、包装紙10の非艶面10aと艶面10bとが対接するように接合されている第1の接合部12を有さない場合を想定する。例えば、ガセット包装形式や、ピロー包装形式として一般に知られている包装形式は、キャラメル方式と同様に、包装紙で被包装物を巻き込んで筒状に包装する工程を含むが、キャラメル方式とは異なり、筒状部分を形成する包装紙10の両側端部は、概して、非艶面10a同士あるいは艶面10b同士が対接するように、いわゆる合掌貼り形式に接合される。
【0068】
このような、包装紙10の非艶面10a同士が対接するように接着剤層20を介して接合されている接合部においては、接着剤層20の両側において、包装紙10の非艶面10aと接着剤層20aとの間に働くアンカー効果が大きく、高い接着強度を示す。そのため、接合部では、包装体1の封止のための包装紙同士の十分な接着性が得られる反面、包装紙10と接着剤層20との間が剥がれにくく、当該接合部から包装体1を開封することが困難になる場合がある。
【0069】
また、包装紙10の艶面10b同士が接着剤層20を介して接合されている接合部においては、当該接着剤層20と包装紙10との間に働くアンカー効果は小さく、接着剤層20の両側において、接着強度が低くなる。そのため、接合部では、包装紙10と接着剤層20との間が剥がれやすく、当該接合部から包装体1を開封することが容易になる反面、包装体1の封止のための包装紙同士の十分な接着性が得られない場合がある。
【0070】
これに対して、本発明の実施形態に係る、包装体1の封止部が包装紙10の非艶面10aと艶面10bとが対接するように接合されている第1の接合部12を有する構成によれば、包装紙10の艶面10bと接着剤層20との間では、アンカー効果が相対的に小さく、相対的に接着強度が低い一方で、包装紙10の非艶面10aと接着剤層20との間ではアンカー効果が大きく働き、高い接着強度を示す。そのため、第1の接合部12では、相対的に低い接着強度を示す包装紙10の艶面10bと接着剤層20との間において、包装体1の開封が容易でありつつ、相対的に高い接着強度を示す包装紙10の非艶面10aと接着剤層20との間において、包装体の封止のために十分な接着性を実現することができる。
【0071】
2.包装体の把持しやすさ
包装体1は、製造されてから、流通過程や、消費者が包装体1の被包装物である衛生薄葉紙製品2の使用を開始するまでの間に、商品棚に陳列するときや持ち運び時等に人の手によって掴んで持ち上げられる機会がある。例えば、包装体1は、片手で掴まれることもある。そのようなとき、本発明の実施形態によれば、包装体1の外面側は、包装紙10の平滑度が低く表面凹凸が顕著な非艶面10aであるため、滑りにくく、包装体1をしっかりと把持することができる。
【0072】
3.包装紙の破れにくさ(強度)
表面凹凸の表裏差が小さく表裏面の両方を艶面(高平滑面)とした紙(例えば、上質紙)は、通常、抄紙機により抄造された原紙に対してオンマシンまたはオフマシンにてカレンダー処理を施すことにより製造される。カレンダー処理では、原紙は、平滑度を向上させるために、カレンダーロール間に挟持されて圧力および/または熱が印加される。そのため、原紙に含まれるパルプ繊維の繊維間結合が破壊され、その結果、得られる紙の紙力強度が弱くなる傾向にある。
【0073】
これに対して、本発明の実施形態に係る、非艶面10aと艶面10bとを有する包装紙(片艶紙)10のような表面凹凸の表裏差が大きい紙は、その表裏差を得るために、原紙に対してカレンダー処理が施されないか、カレンダー処理が施される場合であっても両面を艶面とする紙と比べて緩やかなカレンダー処理条件で製造される。そのため、原紙に含まれるパルプ繊維の繊維間結合は相対的に破壊されにくく、その結果、相対的に紙力強度の高い紙を得ることができる。
【0074】
したがって、包装紙に片艶紙を用いる本発明の実施形態によれば、包装紙に上質紙等の両面を艶面とする紙を使用する態様と比べて、包装紙10の強度が高く、これを用いる包装体1は、包装体の持ち運び時に、包装体を摘まみ上げることによって包装体の重さにより指圧の掛かる部分から包装紙が破けるといった現象が、生じにくい。
【0075】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態の好適な態様である。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成および上述の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0076】
本発明の第2の実施形態は、包装紙10の非艶面10aについてKES試験法により測定された表面粗さの平均偏差値(SMD値)が1.0μm以上1.7μm以下であることを特徴とするものである。
【0077】
包装紙10の非艶面10aのSMD値は、好ましくは1.1μm以上1.6μm以下であり、より好ましくは1.2μm以上1.5μm以下である。
【0078】
[KES試験法により測定された表面粗さの平均偏差値(SMD値)]
KES試験法は、人が物に触れたときに感じる感触や着心地などの感覚的な「風合い」を客観的な数値データで表す方法である。KES試験法では、感覚的な「風合い」を客観的な数値データで表すことができるため、共有化が可能なデータを得ることができる。KES試験法においては、KES表面試験機を用いて表面粗さの平均偏差値(SMD値)を測定することができる。KES表面試験機においては、指先をシミュレートしたセンサーで摩擦抵抗や変動、凹凸を測定することで、人の触った感覚と一致したす滑りやすさ、ざらつき感、粗さ等を数値で表すことができる。
【0079】
SMD値は、表面凹凸の指標の1つであり、概して、SMD値が小さい程、表面は滑らかであり、SMD値が大きい程、表面は粗いことを示す。
【0080】
[SMD値の測定方法]
包装紙10の非艶面10aについての表面粗さの平均偏差値(SMD値)は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)で、KES自動化表面試験機(カトーテック株式会社製、KES FB4-A-SE)を用いて、次のようにして測定することができる。
(1) 1cm四方のシリコン端子の接触子を、包装紙10の試験片の非艶面10aに25gfの力で接した状態とし、1mm/secの速度で一方向に3cm移動させ、動作を逆転して逆方向にも3cm移動させ、表面粗さを測定する。
(2) 包装紙10の試験片の縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)についてそれぞれ5回ずつ測定し、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、縦方向の表面粗さと横方向の表面粗さの幾何平均値を算出して、SMD値とする。
【0081】
[作用効果]
包装体1の外面側にくる包装紙10の非艶面10aについてKES試験法により測定される表面粗さの平均偏差値(SMD値)が小さい程、表面が滑らかであり、包装体1を掴んだ際に滑りやすくなる。また、SMD値が大きい程、表面は粗く、包装体1を掴んだ際に、手指が引っかかるなど、ザラザラした手触り感が増す傾向にある。
【0082】
本実施形態によれば、包装体1の外面側にくる包装紙10の非艶面10aについて測定されるSMD値を上記範囲内とすることにより、掴んだ際に滑りにくく、かつ、手指が引っかかるようなザラザラとした手触りを感じない包装体を実現し得る。
【0083】
包装体1の外面側にくる包装紙10の非艶面10aについて測定されるSMD値を、上記範囲内とする方法としては、例えば、包装紙10のパルプ成分の種類や繊維幅、包装紙10製造時のカレンダー処理条件等による調整がある。
【0084】
包装紙10のパルプ成分としては、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプから選択されるすくなくとも1種を用いることが好ましい。中でも、本発明においては、針葉樹パルプと広葉樹パルプを併用することが好ましく、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)を併用することが好ましい。
【0085】
一般的に針葉樹パルプは広葉樹パルプと比較して繊維幅が広く、すなわち繊維が太いため、パルプ成分として針葉樹の含有量が多いほど、包装紙10の表面は粗くなり、SMD値が高くなる。針葉樹パルプの含有率は、包装紙10に含まれるパルプ成分の全質量に対して、30質量%以上70%質量%以下であることが好ましく、40%質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。針葉樹パルプの含有率を上記範囲内とすることにより、包装紙10の非艶面10aについて測定されるSMD値を所望の範囲内とすることができる。
【0086】
SMD値の調整手段としてカレンダー処理も挙げられるが、本発明の実施形態に係る、非艶面10aと艶面10bとを有する包装紙(片艶紙)10のような表面凹凸の表裏差が大きい紙は、カレンダー処理を施す場合は両面を艶面とする紙と比べて緩やかなカレンダー処理条件で製造される。また、カレンダーの種類は特に限定されないが、金属ロール同士、あるいは金属ロールと弾性ロール、あるいは弾性ロール同士の組み合わせがある。このうち、包装紙(片艶紙)10のような表面凹凸の表裏差が大きい紙は、金属ロールと弾性ロールの組み合わせが好ましく、さらに非艶面10aが弾性ロールに接するように、艶面10bが金属ロールに接するようにカレンダー処理されることが好ましい。
【0087】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、上述の実施形態の好適な態様である。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成および上述の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0088】
本発明の第3の実施形態は、包装紙10の艶面(高平滑面)10bについてJIS P 8155:2010に従って測定される平滑度が210秒以上310秒以下であり、かつ、包装紙10の非艶面(低平滑面)10aについてJIS P 8155:2010に従って測定される平滑度が16秒以上26秒以下であることを特徴とするものである。
【0089】
[作用効果]
概して、包装紙10の非艶面10aの平滑度が高い程、包装体の表面は掴んだ際に滑りやすく、包装体は把持しにくくなる。また、包装紙10の非艶面10aと接着剤層20aとの間に働くアンカー効果が小さくなって接着強度が低下して、第1の接合部12において、開封しやすくなる反面、接合部における包装紙同士の接着性は低くなる傾向がある。
【0090】
また、概して、非艶面10aの平滑度が低い程、非艶面10aと接着剤層20bとの間にアンカー効果が働きやすくなって接着強度が向上し、その結果、接合部における包装紙同士の接着性が高くなる傾向がある。しかしながら、接合部における包装紙同士の接着性が高くなりすぎると、当該接合部からの包装体1の開封に困難が生じ得る。また、非艶面10aの平滑度が低い程、接着剤が包装紙10の表面凹凸や繊維間に浸透しやすく、非艶面10a上の接着剤層20aが薄くなり、接着剤層同士の間に十分な接着性が得られなくなる傾向がある。
【0091】
そこで、第3の実施形態においては、包装体1の把持のしやすさと、非艶面10aと接着剤層20aとの間および艶面10bと接着剤層20bとの間の接着強度と、非艶面10a側における包装紙10への接着剤の浸透性と、を考慮して、包装紙10の艶面の平滑度の範囲と、非艶面の平滑度の範囲と、の両方を決定したものである。
【0092】
第3の実施形態によれば、包装体1の把持しやすさと、第1の接合部12における、包装紙10同士の接着性と、包装体1の第1の接合部12の開封のしやすさと、のバランスの取れた包装体1を得ることができる。
【0093】
[包装紙10の艶面側と非艶面側の平滑度]
本実施形態では、包装紙10の非艶面10aについて測定される平滑度は、16秒以上26秒以下であり、より好ましくは18秒以上24秒以下であり、さらに好ましくは20秒以上22秒以下である。
【0094】
また、包装紙10の艶面10bについて測定される平滑度は、210秒以上310秒以下であり、より好ましくは225秒以上295秒以下であり、さらに好ましくは240秒以上280秒以下である。
【0095】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。特段の記載のない限り、第1から第3の実施形態に適用可能な構成および上述の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0096】
第4の実施形態は、接合部12において対接するように接合される包装紙10の非艶面10aおよび艶面10bのそれぞれには、両者を接合するヒートシール層20a、20bが設けられており、艶面10bのヒートシール層20bにおける単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量は、非艶面10aのヒートシール層20aにおける単位面積あたりのシール剤の塗工量よりも少ないことを特徴とするものである。
【0097】
[作用効果]
包装紙10の艶面10bは、包装紙10の非艶面10aと比べて、平滑度が高く表面凹凸が微小であるため、包装紙10にヒートシール剤を付与した際および/またはヒートシール処理により接合部に熱や圧力を印加した際の、表面凹部や繊維間へのヒートシール剤の浸透性が低い。
【0098】
そのような構造上、非艶面10aと艶面10bとで、単位面積当たりのヒートシール剤の塗工量(g/m2)を同じにすると、艶面10b上のヒートシール層20bの厚さは、非艶面10a上のヒートシール層20aの厚さよりも厚くなる。そのため、ヒートシール層20a、20b同士が十分な接着性を持って接着するのに必要十分な量(厚さ)以上のヒートシール剤が艶面10b上に付与されて、無駄が生じるおそれがある。
【0099】
これに対し、艶面10b上のヒートシール層20aの厚さを必要十分量とするようにヒートシール剤の塗工量を調整すると、非艶面10aに同じ塗工量でヒートシール剤を付与した場合、ヒートシール剤が非艶面10aの表面凹部や繊維間に浸透する浸透性は相対的に高いので、非艶面10a上のヒートシール層20bの厚さが足りなくなって、ヒートシール層同士の間に十分な接着性が得られなくなるおそれがある。
【0100】
そこで、本実施形態では、非艶面10a側と艶面10b側とにおける包装紙10へのヒートシール剤の浸透性の違いを考慮して、ヒートシール剤の塗工量を決定したものである。
【0101】
本実施形態によれば、艶面のヒートシール層における単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量を、非艶面のヒートシール層における単位面積あたりのシール剤の塗工量よりも少なくすることで、包装紙10の非艶面10aと艶面10bとが対接するように接合される第1の接合部12において、ヒートシール剤を過剰に付与するような無駄を回避しつつ、十分な接合強度を効果的に得ることができる。
【0102】
[ヒートシール剤の塗工量]
本実施形態では、艶面10bのヒートシール層20bにおける単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量が、非艶面10aのヒートシール層20aにおける単位面積あたりのヒートシール剤の塗工量よりも少ないことを前提とした上で、ヒートシール剤の塗工量は、好ましくは、艶面10bに対して3.0g/m2以上5.0g/m2以下であり、より好ましくは3.5g/m2以上4.7g/m2以下、かつ、非艶面10aに対して4.0g/m2以上6.0g/m2以下であり、より好ましくは4.3g/m2以上5.5g/m2以下である。
【0103】
本実施形態において、非艶面10aおよび艶面10bのそれぞれのヒートシール層20a、20bにおける単位面積当たりのヒートシール剤の塗工量は、特には、塗工処理および/またはヒートシール処理によってヒートシール剤が包装紙10に浸透した後に、浸透せずに包装紙10の表面にヒートシール層として残るヒートシール剤の量の観点から、決定することができる。ヒートシール層として残るヒートシール剤は、対接するように接合されるヒートシール層同士の接着(熱融着)に関与し得るため、ヒートシール処理のための加熱温度がヒートシール層に適切に伝わる限りは、ヒートシール層として残るヒートシール剤の量を多くする程、接着性が向上する傾向にある。
【0104】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、上述の実施形態の好適な態様である。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成および上述の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0105】
本発明の第5の実施形態は、包装紙10の坪量が30g/m2以上65g/m2以下であることを特徴とするものである。坪量は、JIS P8124に従って測定する包装紙1枚当たりの坪量(g/m2)である。
【0106】
包装紙10の坪量は、より好ましくは35g/m2以上60g/m2以下であり、さらに好ましくは45g/m2以上55g/m2以下である。
【0107】
包装紙10の坪量が低い場合、概して、包装紙10を構成するパルプ繊維は少なく、繊維間結合も少なく、そのため、包装紙10自体の強度が低く、包装紙10は破れ易い傾向にある。したがって、包装紙10の破れにくさの観点からは、包装紙10の坪量は高い方が好ましい。
【0108】
一方、包装紙10の坪量が高くなると、ヒートシール処理時に包装体1の接合部12の領域に適用するヒートシール処理のための加熱温度がヒートシール層20(20a、20b)まで伝わりにくくなる。そうすると、ヒートシール層20a、20bのヒートシール剤が溶融し、ヒートシール層同士の接着面において混合一体化し、次いで冷却されて接着界面がなくなることで生じ得る、包装紙10同士の高い接着性が、得られにくくなる。したがって、包装体1の封止部における接合部の接着性の観点からは、包装紙10の坪量は低い方が好ましい。
【0109】
包装紙10の坪量を上記範囲とする本実施形態によれば、包装紙10自体の強度が高くて破れにくく、かつ、接合部においてヒートシール層20a、20b間の接着性が高くて不用意な層間剥離が生じにくい、包装体を得ることができる。
【0110】
[その他]
第1の実施形態において、包装体1の包装形式の例として、キャラメル包装形式を例に挙げたが、本発明に適用可能な包装形式はこれに限定されない。本発明の実施形態に係る包装体1の包装形式には、包装紙10の非艶面10aが包装体1の外面側となり、包装紙10の艶面10bが包装体1の内面側となり、包装体1の封止部が、包装紙10の非艶面10aと艶面10bとが対接するように接合される接合部(第1の接合部12)を含むこととなる、知られている任意の包装形式を採用することができる。
【0111】
包装体1の第1の接合部12において、包装紙10の非艶面10aおよび艶面10bのそれぞれに接着剤層(ヒートシール層)20a、20bを設け、それぞれの接着剤層(ヒートシール層)20a、20bを介して包装紙10の端部同士を接合したが、包装紙10の一方の端部のみに接着剤層(ヒートシール層)を設けて包装紙10の端部同士を接合するようにしてもよい。
【0112】
包装紙10、接合部12、ヒートシール層20の形状、大きさ、配置関係等は、実施可能であって互いに矛盾のない限り、適宜設定することができる。
【0113】
本発明の1つの実施形態では、包装紙10には、接着剤層(ヒートシール層)20に加えて、他の層が設けられていてもよい。他の層の例としては、例えば、水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層のような機能性を有する層が挙げられる。これら他の層は、必要に応じて、例えば、包装体1の外面側となる包装紙10の面、包装体1の内面側となる包装紙10の面、包装紙10と接着剤層(ヒートシール層)20との間、接着剤層(ヒートシール層)の接着性(ヒートシール性)を損なわないように接着剤層(ヒートシール層)の上面、等に設けられていてもよい。他の層は、1層であってもよく、2以上の複数層であってもよい。
【実施例】
【0114】
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0115】
(実施例1)
非艶面10aと艶面10bとを有する片艶紙を包装紙10として用い、包装紙10の非艶面10aが包装体1の外面側となり包装紙10の艶面10bが包装体1の内面側となるように、被包装物としての2列×2段に配置された計4個のロール状トイレットペーパー2を一纏めにして上述したキャラメル包装形式で包装して、包装体1を得た。このとき、ロール状トイレットペーパーの軸方向(
図1の(a)において矢印Yで示される方向)が包装紙10のMD方向と一致するように包装紙10を用いて、被包装物を包んだ。
【0116】
また、包装体1を封止するための接合部となる所定領域に塗工したヒートシール剤の層により、包装体1を封止した。ヒートシール剤は、ポリオレフィン系水性ヒートシール剤を用い、ロールコーターにより塗工した。また、ヒートシール剤は、包装紙10の表裏面(非艶面10aおよび艶面10b)に対して、それぞれ表1に示す固形分塗工量(g/m2)で塗工した。
【0117】
[包装紙の物性]
用いられた包装紙10の物性を表1に示す。物性の測定は、開封した包装体1から封止部を避けるようにして包装紙10の試験片を切り出して、以下に示す方法により行った。また、物性の測定は、ISO187に準拠した環境(温度23±1℃、相対湿度50±2%)下で、48時間調湿後、ISO187に準拠した環境下で行った。
【0118】
(包装紙の坪量)
JIS P8124に従い、包装紙1枚当たりの坪量(g/m2)を測定した。
【0119】
(包装紙の紙厚)
ISO534に従い、包装紙1枚あたりの紙厚(μm)を測定した。
【0120】
(包装紙の密度)
上記坪量と紙厚から、包装紙の密度(g/cm3)を算出した。
【0121】
(包装紙の非艶面の表面粗さ(SMD値))
KES自動化表面試験機(カトーテック株式会社製、KES FB4-A-SE)を用いて、下記の測定方法により、包装紙10の非艶面10aについての表面粗さの平均偏差値(SMD値)(μm)を測定した。
(1) 1cm四方のシリコン端子の接触子を、包装紙10の試験片の非艶面10aに25gfの力で接した状態とし、1mm/secの速度で一方向に3cm移動させ、動作を逆転して逆方向にも3cm移動させ、表面粗さを測定した。
(2) 包装紙10の試験片の縦方向(MD方向)と横方向(CD方向)についてそれぞれ5回ずつ測定し、得られた測定データからHampel identifierの方法で異常値を除外し、縦方向の表面粗さと横方向の表面粗さの幾何平均値を算出して、SMD値とした。
【0122】
(包装紙の非艶面および艶面の平滑度)
JIS P8155に従い、包装紙の非艶面10aおよび艶面10bのそれぞれについて、平滑度(秒)を測定した。
【0123】
(包装紙の乾燥引張強度)
JIS P8113に準じて、包装紙のMD方向(縦方向)およびCD方向(横方向)のそれぞれについて、測定方向と直交する方向の長さを15mmとした短冊状の試験片を切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC1250)にて、包装紙の乾燥引張強度(kN/m))を測定した。スパン長は100mmとした。なお、スパン長を100mmするための長さを有する試験片を採取できない場合は、試験片の長さを短くすることができるものとした。
【0124】
[官能試験]
包装体に関して以下の官能試験を行い、結果を第1表に示した。官能評価は、モニター30人により実施し、結果を5段階にて評価した。評価の数値が大きい程、優れていることを示す(5(優)→1(劣))。
【0125】
(把持しやすさ)
包装体を片手で掴んで持ち上げた際の、包装体の把持しやすさについて評価を行った。包装体を滑らずに持ち上げることができたものを5(優)とし、滑りやすい程、劣っていると評価した。
【0126】
(手触り感)
包装体を片手で掴んで持ち上げた際の、手触り感について評価を行った。包装体を掴んだ際に感じる手指の引っ掛かりやざらつきが大きい程、劣っていると評価した。
【0127】
(包装紙同士の接着性)
包装紙の両側端部が重なり合う包装体の接合部における、包装紙同士の接着性について、評価を行った。合わせ目での接着状態が良好である程、接着性が優れていると評価した。
【0128】
(接合部の開封性)
包装紙の両側端部が重なり合う包装体の接合部から包装体を開封する際の開封のしやすさについて評価を行った。合わせ目が剥がしやすい程、開封性が優れていると評価した。
【0129】
(包装紙の破れにくさ)
包装体を片手で摘まんで持ち運ぶ際の、指圧の加わった箇所などからの包装紙の破れの有無を観察した。包装体20個について試験を行い、破れがなかったものの割合の結果を5段階評価で示した。破れがなかったものの割合が高い程、破れにくさが優れていると評価した。なお、包装紙の破れにくさの官能評価については、モニター30人に代えて、試験官1名により試験を行った。
【0130】
(実施例2)~(実施例27)
実施例1と同様に、包装紙として片艶紙を用いて、包装体(キャラメル包装)を得た。ただし、実施例2から5は、実施例1と、包装紙の非艶面のSMD値の点で異なる。実施例6から9は、包装紙の艶面の平滑度の点で異なる。実施例10から13は、実施例1と、包装紙の非艶面の平滑度の点で異なる。実施例14から17は、実施例1と、包装紙の艶面に対するヒートシール剤の塗工量の点で異なる。実施例18から21は、実施例1と、包装紙の非艶面に対するヒートシール剤の塗工量の点で異なる。実施例22および23は、実施例1と、包装紙の艶面に対するヒートシール剤の塗工量および包装紙の非艶面に対するヒートシール剤の塗工量の点で異なる。実施例24から27は、実施例1と、包装紙の坪量の点で異なる。
【0131】
(比較例1)
実施例1と同様に片艶紙を用いたが、実施例1とは異なり、包装紙10の非艶面10aが包装体1の内面側となり包装紙10の艶面10bが包装体1の外面側となるようにして、包装体(キャラメル包装)を得た。
【0132】
(比較例2)、(比較例3)
実施例1とは異なり、包装紙として、両面が同程度の平滑度を有する紙を用いて、包装体(キャラメル包装)を得た。具体的には、比較例2では、両面が非艶面である紙として両更紙を用い、比較例3では、両面が艶面である紙として上質紙を用いた。
【0133】
実施例2から27、および比較例1から3についても、実施例1と同様に、包装紙の物性の測定および官能試験を行った。ただし、比較例1に関しては、SMD値は、包装体の外面側となる艶面について測定した。結果を以下の第1表から第7表に示す。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
包装紙に片艶紙を用い、非艶面を包装体の外面側に配置した、本発明に係る実施例1から27はいずれも、把持しやすさ、手触り感、包装紙同士の接着性、接合部の開封性、および包装紙のやぶれにくさの5つの官能評価試験の結果のすべてが3以上であり、バランスがとれていた。
【0142】
(比較例1)
実施例と同様に包装紙に片艶紙を用いるが、表裏を反転させて用いた比較例1は、包装体の外面側が艶面(高平滑面)となっており、包装体の外面側の面を評価している手触り感は5であり優れていたが、把持しやすさは2であり、実施例1と比べて劣っていた。比較例1の他の評価項目の評価は、実施例1と同等であった。
【0143】
(比較例2)
包装紙に両面が非艶面である両更紙を用いた比較例2は、包装体の両面側が非艶面(低平滑面)となり、すなわち実施例1と同様に包装体の外面側が非艶面(低平滑面)となっているが、比較例2においては、包装体の外面側の面を評価している把持しやすさは5であり優れていた。一方、手触り感が2であり、実施例1と比べて劣っていたが、これは、比較例2における包装体の外面側である両更紙の非艶面のSMD値が、実施例1における包装体の外面側である片艶紙の非艶面よりも大きいことに起因するものと推測される。
【0144】
実施例1では、接合部においてヒートシール層を介して接合されている包装紙の両面は、非艶面(低平滑面)と艶面(高平滑面)であるのに対し、比較例2では、非艶面(低平滑面)同士である。かかる比較例2では、接合部の開封性は4であり良好であったが、実施例1の開封性が5であるのに対して評価が低かった。また、比較例2では、包装紙同士の接着性が3であり、実施例1の包装紙同士の接着性が4であるのに対して劣っていた。
【0145】
比較例2の開封性の評価が実施例1の開封性の評価よりも低かった理由としては、次のように考えられる。
【0146】
比較例2では、ヒートシール層の両側が、表面凹凸が顕著な包装紙の非艶面(低平滑面)であるため、ヒートシール層の両側において包装紙へのヒートシール剤の浸透が進み、包装紙とヒートシール層との間に働くアンカー効果が、ヒートシール層の両側において大きくなる。これに対して、実施例1では、ヒートシール層の両側は、包装紙の非艶面(低平滑面)と相対的に表面凹凸が微小である包装紙の艶面(高平滑面)とであるため、ヒートシール層の片側(非艶面側)では、包装紙とヒートシール層との間に働くアンカー効果が大きいが、ヒートシール層のもう一方の側(艶面側)では、包装紙へのヒートシール剤の浸透の程度は相対的に小さく、包装紙とヒートシール層との間に働くアンカー効果が相対的に小さい。そのため、実施例1では、相対的に小さいアンカー効果が働く包装紙の艶面(高平滑面)とヒートシール層との間から接合部の合わせ目を剥がしやすく、開封性に優れる。これに対して、比較例2では、ヒートシール層の両側で包装紙とヒートシール層との間に働くアンカー効果が大きいため、実施例1と比べて接合部の合わせ目を剥がしにくく、開封性の評価が実施例1よりも低くなる。
【0147】
また、比較例2の包装紙同士の接着性の評価が実施例1の包装紙同士の接着性の評価よりも低く劣っていた理由としては、次のように考えられる。
【0148】
比較例2では、接合部において対接するように接合される包装紙の面は両方とも表面凹凸が顕著な非艶面(低平滑面)であるため、両方の面に対してヒートシール剤が浸透しやすい。これに対して、実施例1では、接合部において対接するように接合される包装紙の面は、一方は、表面凹凸が顕著な非艶面(低平滑面)であって、ヒートシール剤が浸透しやすいが、他方は、表面凹凸が微小な艶面(平滑面)であって、ヒートシール剤が相対的に浸透しにくい。そのため、包装紙の表面凹凸の凹部や繊維間へのヒートシール剤の浸透量は、比較例2において実施例1よりも多くなる。実施例1と比較例2とでは、単位面積当たりのヒートシール剤の塗工量が同程度であるので、接合される包装紙同士の対接面間に存在するヒートシール層の厚さ(ヒートシール剤の量)は、比較例2において、実施例1と比べて薄く(少なく)なる。このような、接合される包装紙同士の間で接合に関与し得るヒートシール層(ヒートシール剤)の厚さ(量)の違いにより、比較例2では、実施例1と比べて、包装紙同士の接着性が低くなる。
【0149】
(比較例3)
包装紙に両面が艶面である上質紙を用いた比較例3は、包装体の両面側が艶面(高平滑面)となっており、すなわち包装体の外面側は艶面(高平滑面)であるところ、手触り感は5であり優れていた。一方、把持しやすさは2であり実施例1と比べて劣っていたが、これは、比較例3における包装体の外面側である上質紙の艶面のSMD値が、実施例1における包装体の外面側である片艶紙の非艶面よりも小さいことに起因するものと推測される。
【0150】
実施例1では、接合部においてヒートシール層を介して接合されている包装紙の両面は、非艶面(低平滑面)と艶面(高平滑面)であるのに対し、比較例3では、艶面(高平滑面)同士である。かかる比較例3では、接合部の開封性は5であり、実施例1の開封性と同程度であり、優れていた。一方、包装紙同士の接着性は2であり、実施例1の包装紙同士の接着性が4であるのに対して劣っていた。
【0151】
比較例3の開封性の評価が5であり優れていた理由としては、次のように考えられる。
【0152】
比較例3では、ヒートシール層の両側が、表面凹凸が微小な包装紙の艶面(高平滑面)であるため、ヒートシール層の両側において包装紙へのヒートシール剤が浸透しにくく、包装紙とヒートシール層との間に働くアンカー効果が、ヒートシール層の両側において小さくなる。また、比較例3では、包装紙の坪量が実施例1よりも高いため、比較例3は実施例1と比べてヒートシール処理のための加熱温度がヒートシール層まで伝わりにくく、ヒートシール層同士の接着性が低くなる。そのため、比較例3では、ヒートシール層の両側およびヒートシール層間で、接合部の合わせ目を剥がしやすく、開封性に優れる。
【0153】
比較例3の包装紙同士の接着性の評価が2であり劣っていた理由としては、次のように考えられる。
【0154】
上述したように、比較例3においては、包装紙とヒートシール層との間に働くアンカー効果はヒートシール層の両側において小さい。そのため、接合部では、包装紙とヒートシール層との間の接着強度が低くなる。また、比較例3においては、ヒートシール処理のための加熱温度がヒートシール層まで伝わりにくく、ヒートシール層同士の接着強度が低くなる。その結果として、合わせ目における包装紙同士およびヒートシール層同士の接着状態が弱化して、包装紙同士の接着性が低くなる。
【0155】
本発明は、上述した実施形態や、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 包装体
2 衛生薄葉紙製品(被包装物)
10 包装紙
10a 包装紙の非艶面(低平滑面)
10b 包装紙の艶面(高平滑面)
UFL 山折り線
DFL 谷折り線
12 第1の接合部
12a 包装紙の非艶面における第1の接合部
12b 包装紙の艶面における第1の接合部
20 接着剤層
20a 包装紙の非艶面に設けられた接着剤層
20b 包装紙の艶面に設けられた接着剤層