(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】モジュール配信システム、サーバ、車両、およびモジュール配信方法
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20240717BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
(21)【出願番号】P 2021197915
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】白石 真一
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 直弥
【審査官】武田 広太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132979(JP,A)
【文献】特開2020ー176974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0212997(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプログラムを実行するプロセッサを搭載する車両と、前記複数のプログラムのそれぞれを新たなバージョンに更新するための更新モジュールを前記車両に通信ネットワークを介して配信するサーバとを含むモジュール配信システムであって、
前記車両は、
前記複数のプログラムのうち、前記サーバから配信された配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを前記車両の運転者に通知する通知部と、
前記通知に対応した前記運転者による所定の操作に応じて、前記配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新し、当該配信済み更新モジュールが配信されてから当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータを前記サーバに送信する更新部と、
を備え、
前記サーバは、
複数の属性ごとに、当該属性を有する配信済み更新モジュールにおける保留時間の代表値を算出する算出部と、
前記保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、前記車両に前記通信ネットワークを介して配信する配信部と、
を備える、モジュール配信システム。
【請求項2】
前記通知部は、現在時刻に前記車両が走行可能状態であり、かつ、以前に所定時間よりも長く継続する前記車両の走行可能状態の開始が記録された時間帯に現在時刻が含まれている場合に、前記プログラムが更新可能であることを前記運転者に通知する、請求項1に記載のモジュール配信システム。
【請求項3】
前記通知部は、現在時刻に前記車両が走行可能状態であり、かつ、前記車両が停止している場合に、前記プログラムが更新可能であることを前記運転者に通知する、請求項1または2に記載のモジュール配信システム。
【請求項4】
前記配信部は、前記保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど先に配信し、または、前記保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど広い帯域を有する通信回線を用いて前記通信ネットワークを介して前記車両に配信する、請求項1-3のいずれか一項に記載のモジュール配信システム。
【請求項5】
車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうちいずれかのプログラムを更新する更新モジュールを、通信ネットワークを介して前記車両に配信する配信部と、
前記更新モジュールが配信されてから配信された前記更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータを前記車両から受信し、複数の属性ごとに、当該属性を有する更新モジュールの前記保留時間の代表値を算出する算出部と、を備え、
前記配信部は、前記保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、前記車両に前記通信ネットワークを介して配信する、サーバ。
【請求項6】
車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうち、通信ネットワークを介してサーバから配信された更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを前記車両の運転者に通知する通知部と、
前記通知に対応した前記運転者による所定の操作に応じて、前記サーバから配信された更新モジュールにより、当該更新モジュールに対応するプログラムを更新し、当該更新モジュールが配信されてから当該更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータを前記サーバに送信する更新部と、
を備える車両。
【請求項7】
車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうち、通信ネットワークを介してサーバから前記車両に配信された配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを前記車両の運転者に通知し、
前記通知に対応した前記運転者による所定の操作に応じて、前記配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新し、
複数の属性ごとに、当該属性を有する前記配信済み更新モジュールが配信されてから当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間の代表値を算出し、
前記保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、前記車両に前記通信ネットワークを介して配信する、
ことを含む、モジュール配信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信ネットワークを介してプログラムの更新モジュールを配信するモジュール配信システム、サーバ、車両、およびモジュール配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両に搭載された各種機器の動作を制御するために、それぞれ所定のプログラムを実行する複数のECU(Electronic Control Unit)が搭載されることがある。ECUで実行されるプログラムは、通信ネットワークを介して配信される更新モジュールにより、更新可能である。車両においては、通信ネットワークを介して更新モジュールを配信可能な時間が、エンジンやモーターといった動力源がオンになっていて走行可能な状態の時間などに制限される場合がある。また、車両においては、通信ネットワークに接続するために十分な広さの帯域の回線を使用できない場合がある。このような場合に、複数のECUで実行されるプログラムのそれぞれを更新する複数の更新モジュールを、通信ネットワークを介して配信するには、多大な時間が必要となる。かかる状況においては、車両の運転者にとって優先順位の高い更新モジュールが優先順位の低い更新モジュールよりも後に配信され適用されるなど、運転者の利便性の低下が懸念される。
【0003】
特許文献1には、車両に搭載された制御装置のソフトウェア更新に対する優先度に基づいて、更新用ソフトウェア配信部が配信する更新用ソフトウェアを管理するソフトウェア管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のソフトウェア管理システムにおいて、ソフトウェア更新の優先度は、ソフトウェアを実行するECUの機能カテゴリ等に基づいて、サーバ側で定められる。そのため、特許文献1に記載のソフトウェア管理システムは、車両の運転者にとって優先順位の高い更新モジュールを優先して車両に配信することができない。
【0006】
本開示は、車両の運転者にとって優先順位の高い更新モジュールを優先して車両に配信することができるモジュール配信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかるモジュール配信システムは、複数のプログラムを実行するプロセッサを搭載する車両と、複数のプログラムのそれぞれを新たなバージョンに更新するための更新モジュールを車両に通信ネットワークを介して配信するサーバとを含むモジュール配信システムであって、車両は、複数のプログラムのうち、サーバから配信された配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを車両の運転者に通知する通知部と、通知に対応した運転者による所定の操作に応じて、配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新し、当該配信済み更新モジュールが配信されてから当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータをサーバに送信する更新部と、を備え、サーバは、複数の属性ごとに、当該属性を有する配信済み更新モジュールにおける保留時間の代表値を算出する算出部と、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両に通信ネットワークを介して配信する配信部と、を備える。
【0008】
本開示にかかるモジュール配信システムにおいて、通知部は、現在時刻に車両が走行可能状態であり、かつ、所定時間よりも長く継続する車両の走行可能状態の開始が記録された時間帯に現在時刻が含まれている場合に、プログラムが更新可能であることを運転者に通知することが好ましい。
【0009】
本開示にかかるモジュール配信システムにおいて、通知部は、現在時刻に車両が走行可能状態であり、かつ、車両が停止している場合に、プログラムが更新可能であることを運転者に通知することが好ましい。
【0010】
本開示にかかるモジュール配信システムにおいて、配信部は、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど先に配信し、または、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど広い帯域を有する通信回線を用いて、通信ネットワークを介して車両に配信することが好ましい。
【0011】
本開示にかかるサーバは、車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうちいずれかのプログラムを更新する更新モジュールを、通信ネットワークを介して車両に配信する配信部と、更新モジュールが配信されてから配信された更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータを車両から受信し、複数の属性ごとに、当該属性を有する更新モジュールの保留時間の代表値を算出する算出部と、を備え、配信部は、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両に通信ネットワークを介して配信する。
【0012】
本開示にかかる車両は、車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうち、通信ネットワークを介してサーバから配信された更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを車両の運転者に通知する通知部と、通知に対応した運転者による所定の操作に応じて、サーバから配信された更新モジュールにより、当該更新モジュールに対応するプログラムを更新し、当該更新モジュールが配信されてから当該更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータをサーバに送信する更新部と、を備える。
【0013】
本開示にかかるモジュール配信方法は、車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうち、通信ネットワークを介してサーバから車両に配信された配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを車両の運転者に通知し、通知に対応した運転者による所定の操作に応じて、配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新し、複数の属性ごとに、当該属性を有する配信済み更新モジュールが配信されてから当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間の代表値を算出する算出し、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両に通信ネットワークを介して配信する、ことを含む。
【0014】
本開示にかかるモジュール配信システムによれば、車両の運転者にとって優先順位の高い更新モジュールを優先して車両に配信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】モジュール配信システムの概略構成図である。
【
図2】モジュール配信システムにおけるモジュール配信処理の動作シーケンス図である。
【
図5】属性ごとの保留時間の代表値の例を示す図である。
【
図6】サーバが有するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図8】車両が有するECUのハードウェア構成図である。
【
図9】ECUが有するプロセッサの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、車両の運転者にとって優先順位の高いプログラムの更新モジュールを優先して車両に配信することができるモジュール配信システムについて詳細に説明する。モジュール配信システムは、複数のプログラムを実行するプロセッサを搭載する車両と、複数のプログラムのそれぞれを新たなバージョンに更新するための更新モジュールを車両に通信ネットワークを介して配信するサーバとを含む。車両は、複数のプログラムのうち、サーバから配信された配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを車両の運転者に通知する。また、車両は、通知に対応した運転者による所定の操作に応じて、配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新し、当該配信済み更新モジュールが配信されてから当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間を表すデータをサーバに送信する。サーバは、複数の属性ごとに、当該属性を有する配信済み更新モジュールにおける保留時間の代表値を算出する。更新モジュールの有する属性とは、例えば、更新によりプログラムに機能が追加されることを表す「機能追加」および更新によりプログラムが改善されることを表す「改善」などである。サーバは、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両に通信ネットワークを介して配信する。
【0017】
図1は、モジュール配信システムの概略構成図である。
【0018】
本実施形態のモジュール配信システム1は、サーバ2と車両3とを有する。サーバ2と車両3とは、例えば、サーバ2が接続される通信ネットワーク4と、通信ネットワークにゲートウェイ(不図示)などを介して接続される無線基地局5とを介して、通信可能に接続される。サーバ2は、車両3に搭載されたプロセッサにより実行されるプログラムを更新する更新モジュールを、車両3に配信する。なお、車両3は、モジュール配信システム1に含まれる複数の車両のうちの一つである。また、モジュール配信システム1において、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。
【0019】
図2は、モジュール配信システム1におけるモジュール配信処理の動作シーケンス図である。
【0020】
モジュール配信システム1において、車両3は、無線基地局5および通信ネットワーク4を介して、サーバ2に更新モジュールの配信を要求する信号を送信する(ステップS1)。更新モジュールの配信を要求する信号は、車両3を識別する車両識別情報、および、車両3で実行される複数のプログラムのそれぞれのバージョン情報を含む。
【0021】
サーバ2は、更新モジュールの配信要求に応じて、通信ネットワーク4および無線基地局5を介して車両3に更新モジュールを配信する(ステップS2)。
【0022】
車両3は、車両3に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうち、配信された更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを、車両3の運転者に通知する(ステップS3)。
【0023】
車両3は、通知に対応した運転者による所定の操作の有無を判定し(ステップS4)、所定の操作がないと判定された場合(ステップS4:N)、ステップS4に戻って所定の操作の判定を繰り返す。
【0024】
所定の操作があると判定された場合(ステップS4:Y)、車両3は、配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新する(ステップS5)。
【0025】
次に、車両3は、無線基地局5および通信ネットワーク4を介して、保留時間を表すデータをサーバに送信する(ステップS6)。保留時間は、更新モジュールが配信されてから更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの期間の長さである。
【0026】
サーバ2は、複数の属性ごとに保留時間の代表値を算出し(ステップS7)、サーバ2の処理はステップS1の前に戻り、車両3からの更新モジュールの配信要求を待つ。保留時間は、更新モジュールが車両3に配信されてから当該更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの時間である。
【0027】
ステップS2における更新モジュールの配信において、サーバ2は、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両3に配信する。
【0028】
【0029】
サーバ2は、車両3で実行される複数のプログラムを更新する更新モジュールのうち保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両3に通信ネットワーク4を介して配信する。そのために、サーバ2は、通信インタフェース21と、ストレージ装置22と、メモリ23と、プロセッサ24とを備える。
【0030】
通信インタフェース21は、通信部の一例であり、サーバ2を通信ネットワーク4に接続するためのインタフェース回路を有する。そして、通信インタフェース21は、通信ネットワーク4および無線基地局5を介して車両3と通信可能に構成される。すなわち、通信インタフェース21は、車両3から無線基地局5および通信ネットワーク4を介して保留時間を表すデータ等をプロセッサ24に渡す。また、通信インタフェース21は、プロセッサ24から受け取った更新モジュール等を、通信ネットワーク4および無線基地局5を介して車両3に送信する。
【0031】
ストレージ装置22は、記憶部の一例であり、例えばハードディスク装置または不揮発性の半導体メモリ装置などの記憶装置を有する。ストレージ装置22は、車両3で実行される複数のプログラムのいずれかに関連づけて、当該プログラムを更新する更新モジュールおよび当該更新モジュールが有する属性を記憶する。また、ストレージ装置22は、複数の車両のそれぞれに対応づけて、更新モジュールの属性ごとの保留時間の代表値を記憶する。
【0032】
【0033】
ストレージ装置22は、プログラムに関連づけて記憶された更新モジュールの特徴を表す属性を記憶する。そのような属性には、例えば、プログラムに機能を追加する更新モジュールであることを示す「機能追加」、または、プログラムを改善する更新モジュールであることを示す「改善」が含まれる。また、ストレージ装置22は、更新モジュールにより更新されるプログラムのバージョン情報を記憶する。
【0034】
図4の例では、更新モジュールM0011-121はプログラムP0011をバージョン1.21に更新する更新モジュールであり、属性「改善」を有する。更新モジュールM0012-200はプログラムP0012をバージョン2.00に更新する更新モジュールであり、属性「機能追加」を有する。更新モジュールM0013-111はプログラムP0013をバージョン1.11に更新する更新モジュールであり、属性「改善」を有する。
【0035】
図5は、属性ごとの保留時間の代表値の例を示す図である。
【0036】
ストレージ装置22は、複数の車両のそれぞれを識別する車両識別情報に関連づけて、更新モジュールの属性ごとの保留時間の代表値を記憶する。
図5の例では、車両識別情報がV001の車両において、「機能追加」属性に対応する保留時間の代表値は2:20であり、「改善」属性に対応する保留時間の代表値は7:55である。また、車両識別情報がV022の車両において、「機能追加」属性に対応する保留時間の代表値は12:40であり、「改善」属性に対応する保留時間の代表値は8:05である。なお、車両3は、車両識別情報がV001の車両である。
【0037】
メモリ23は、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ23は、プロセッサ24による処理に用いられる各種データ、例えば通信インタフェース21を介して車両3から受信した保留時間を表すデータ等を記憶する。また、メモリ23は、各種アプリケーションプログラム、例えば車両3に更新モジュールを配信する更新モジュール配信プログラム等を記憶する。
【0038】
プロセッサ24は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を有する。プロセッサ24は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0039】
図4は、サーバ2が有するプロセッサ24の機能ブロック図である。
【0040】
サーバ2のプロセッサ24は、機能ブロックとして、配信部241と、算出部242とを有する。プロセッサ24が有するこれらの各部は、プロセッサ24上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ24の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ24が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとしてサーバ2に実装されてもよい。
【0041】
配信部241は、通信インタフェース21および通信ネットワーク4を介して、車両3から配信要求を受信する。配信部241は、配信要求の受信に応じて、通信インタフェース21および通信ネットワーク4を介して更新モジュールを車両3に配信する。
【0042】
配信部241は、ストレージ装置22に記憶された更新モジュールから、配信対象となる更新モジュールを選択する。例えば、配信部241は、車両3で実行される複数のプログラムのそれぞれのバージョン情報を含む配信要求を受け付ける。そして、配信部241は、ストレージ装置22に記憶された更新モジュールのうち、対応するプログラムのバージョン情報よりも配信要求に含まれるプログラムのバージョン情報の方が若い更新モジュールを、配信対象の更新モジュールとして選択する。
【0043】
例えば、車両3から受信した配信要求に含まれるバージョン情報が、プログラムP0011について1.20、プログラムP0012について1.80、プログラムP0013について1.11であるとする。この場合、プログラムP0011およびプログラムP0012は、ストレージ装置22に記憶されたプログラムのバージョン情報よりも配信要求に含まれるプログラムのバージョン情報の方が若い。従って、配信部241は、プログラムP0011に対応する更新モジュールM0011-121およびプログラムP0012に対応する更新モジュールM0012-200を配信対象の更新モジュールとして選択する。
【0044】
配信部241は、通信インタフェース21および通信ネットワーク4を介して、配信対象として選択された更新モジュールを車両3に配信する。このとき、配信部241は、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど優先して、車両3に配信する。車両3(車両識別情報V001)において、「機能追加」属性に対応する保留時間の代表値は2:20であり、「改善」属性に対応する保留時間の代表値の7:55よりも短い。従って、配信部241は、「機能追加」属性を有する更新モジュールが「改善」属性を有する更新モジュールよりも優先されるように、車両3に配信する。
【0045】
例えば、配信部241は、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど先に配信されるように、配信対象の更新モジュールを選択する。上述の例では、配信対象の更新モジュールとして選択される更新モジュールのうち、更新モジュールM0011-121は「改善」属性を有し、更新モジュールM0012-200は「機能追加」属性を有する。配信部241は、保留時間の代表値がより短い「機能追加」属性を有する更新モジュールM0012-200を、保留時間の代表値がより長い「改善」属性を有する更新モジュールM0011-121よりも先に、車両3に配信する。
【0046】
また、配信部241は、保留時間の代表値の短い属性を有する更新モジュールほど広い帯域を有する通信回線を用いて、通信ネットワーク4を介して車両3に配信してもよい。上述の例では、配信部241は、保留時間の代表値がより短い「機能追加」属性を有する更新モジュールM0012-200を、いわゆる5G(5th Generation)無線通信規格による通信が可能な無線基地局5を経由する通信回線を用いて配信する。一方、配信部241は、保留時間の代表値がより長い「改善」属性を有する更新モジュールM0011-121を、いわゆる4G(4th Generation)無線通信規格による通信が可能な無線基地局5を経由する通信回線を用いて配信する。
【0047】
算出部242は、更新モジュールの有する属性ごとに、当該更新モジュールが配信されてから当該更新モジュールに対応するプログラムが更新されるまでの保留時間の代表値を算出する。
【0048】
算出部242は、通信インタフェース21および通信ネットワーク4を介して、車両3から配信済み更新モジュールに対応する保留時間を表す情報を受信する。算出部242は、保留時間を表す情報の受信に応じて保留時間の代表値を算出し、算出された代表値によりストレージ装置22に記憶された属性ごとの保留時間の代表値を更新する。保留時間の代表値は、所定の属性を有する配信済み更新モジュールにおける保留時間の平均値である。保留時間の代表値は、最頻値、中央値といった平均値以外の統計量であってもよい。更新された保留時間の代表値は、以降の配信部241による更新モジュールの配信に使用される。
【0049】
図7は、車両3の概略構成図である。車両3は、メーターディスプレイ31と、データ通信モジュール32と、ECU33(Electronic Control Unit)とを有する。メーターディスプレイ31およびデータ通信モジュール32とECU33とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0050】
メーターディスプレイ31は、ユーザインタフェース機器の一例であり、例えば液晶ディスプレイを有する。メーターディスプレイ31は、車内ネットワークを介してECU33から受け取った信号に従って所定の画像を運転者に視認可能に表示する。メーターディスプレイ31には、運転者によるタッチを検出可能なタッチパネルが重畳されている。また、車両3は、スピーカ(不図示)等の他のユーザインタフェース機器を備えていてもよい。
【0051】
データ通信モジュール32は、車両通信部の一例であり、いわゆる5Gまたは4Gといった所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器である。データ通信モジュール32は、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5および通信ネットワーク4を介してサーバ2と接続される。データ通信モジュール32は、無線基地局5から受信したダウンリンクの無線信号に含まれるデータをECU33に渡す。また、データ通信モジュール32は、ECU33から受け取ったデータをアップリンクの無線信号に含め、その無線信号を無線基地局5へ送信することで、データをサーバ2へ送信する。なお、データ通信モジュール32は、ECU33の一部として実装されてもよい。
【0052】
図8は、車両3が有するECU33のハードウェア構成図である。
【0053】
ECU33は、車両3で実行される複数のプログラムを更新する更新モジュールの配信をサーバ2に要求し、サーバ2から配信された更新モジュールによりプログラムが更新可能であることを運転者に通知し、更新モジュールごとの保留時間をサーバ2に送信する。そのために、ECU33は、通信インタフェース34と、メモリ35と、プロセッサ36とを備える。
【0054】
通信インタフェース34は、車両通信部の他の一例であり、ECU33を車内ネットワークへ接続するための通信インタフェース回路を有する。通信インタフェース34は、受信したデータをプロセッサ36に供給する。また、通信インタフェース34は、プロセッサ36から供給されたデータを外部に出力する。
【0055】
メモリ35は、車両記憶部の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ35は、プロセッサ36による処理に用いられる各種データ、例えば、サーバ2から配信された配信済み更新モジュールおよび当該配信済み更新モジュールが配信された時刻を保存する。また、メモリ35は、時間帯ごとに、当該時間帯に開始が記録された車両3の走行可能状態の継続時間を保存する。車両3の走行可能状態とは、車両3に動力を供給するエンジンまたはモーターといった動力源のイグニションスイッチがオン状態であるなど、車両3が運転者の操作に応じて走行可能な状態であることをいう。また、メモリ35は、各種アプリケーションプログラム、例えばプログラム更新処理を実行するプログラム更新用プログラム、配信済み更新モジュールを用いてプログラム更新処理により更新されるプログラム等を保存する。
【0056】
プロセッサ36は、車両制御部の一例であり、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を有する。プロセッサ36は、論理演算ユニット、数値演算ユニット、またはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0057】
図9は、ECU33が有するプロセッサ36の機能ブロック図である。
【0058】
ECU33のプロセッサ36は、機能ブロックとして、要求部361と、通知部362と、更新部363とを有する。プロセッサ36が有するこれらの各部は、メモリ35に記憶されプロセッサ36上で実行されるプコンピュータプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ36の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ36が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとしてECU33に実装されてもよい。
【0059】
要求部361は、無線基地局5および通信ネットワーク4を介して、サーバ2に更新モジュールの配信を要求する信号(要求信号)を送信する。要求部361は、例えば、車両3の使用の開始に伴い、ECU33が動作を開始したときに要求信号を送信する。また、要求部361は、メモリ35に記憶された時間帯ごとの車両3の走行可能状態の継続時間を参照し、所定時間(例えば1時間)よりも長く継続する車両3の走行可能状態の開始が記録された時間帯に現在時刻が含まれている場合に、要求信号を送信してもよい。
【0060】
通知部362は、車両に搭載されたプロセッサにより実行される複数のプログラムのうち、通信ネットワークを介してサーバから車両に配信された配信済み更新モジュールに対応するプログラムが更新可能であることを車両の運転者に通知する。
【0061】
通知部362は、メーターディスプレイ31に「○○プログラムが更新可能です。この更新により、△△機能が追加されます。」といった文字列を含む画像を表示させることにより、車両3で実行される複数のプログラムのうちいずれかが更新可能であることを運転者に通知する。
【0062】
また、通知部362は、スピーカに「○○プログラムが更新可能です。この更新により、△△機能が追加されます。」といった音声を再生させることにより、車両3で実行される複数のプログラムのうちいずれかが更新可能であることを運転者に通知してもよい。
【0063】
通知部362は、現在時刻に車両3が走行可能状態であり、かつ、所定時間(例えば30分)よりも長い車両3の使用が開始される時間帯に現在時刻が含まれている場合に、プログラムが更新可能であることを運転者に通知してもよい。通知部362がこのように動作することで、モジュール配信システム1は、車両3が十分な長さで走行可能状態となる時間に、配信済み更新モジュールによるプログラムの更新を行うことができる。通知部362は、メモリ35に記憶された、時間帯ごとの、車両3の走行可能状態の継続時間を参照することで、所定時間よりも長く継続する車両3の走行可能状態の開始が記録された時間帯に現在時刻が含まれているか否かを判定する。
【0064】
また、通知部362は、現在時刻に車両3が走行可能状態であり、かつ、車両3が停止している場合、プログラムが更新可能であることを運転者に通知してもよい。通知部362がこのように動作することで、モジュール配信システム1は、車両3の運転者が通知に対して確実に対応可能なときに、プログラムの更新についての通知を行うことができる。通知部362は、車両3の走行機構から車両3の移動速度を取得することにより、車両3が停止しているか否かを判定する。
【0065】
更新部363は、プログラムが更新可能であることを表す通知に対応した運転者による所定の操作の有無を判定する。所定の操作とは、メーターディスプレイ31の所定領域(例えば「はい」といった文字列が表示された領域)へのタッチである。また、所定の操作は、「はい」といった音声の発話であってもよい。更新部363は、不図示のマイクロフォンにより取得された音声データを分析することで、所定の操作の有無を判定する。
【0066】
更新部363は、所定の操作があると判定された場合、メモリ35に保存された配信済み更新モジュールにより、当該配信済み更新モジュールに対応するプログラムを更新する。プログラムの更新は、プロセッサ36により配信済み更新モジュールを実行することにより行われる。また、プログラムの更新は、配信済み更新モジュールおよび対応するプログラムを指定して所定のプログラム更新プログラムを実行することにより行われてもよい。
【0067】
更新部363は、配信済み更新モジュールによりプログラムの更新が行われると、通信インタフェース34およびデータ通信モジュール32を介して、当該配信済み更新モジュールにおける保留時間を表すデータをサーバ2に送信する。保留時間は、配信済み更新モジュールによりプログラムの更新が行われた時刻(現在時刻)と、メモリ35に記憶された当該配信済み更新モジュールの配信された時刻との差により求められる。
【0068】
モジュール配信システム1は、上述のように動作することにより、配信されてから更新が行われるまでの保留時間の短い属性を有する更新モジュールを優先して車両に配信する。そのため、モジュール配信システム1は、車両の運転者にとって優先順位の高いプログラムの更新モジュールを優先して車両に配信することができる。
【0069】
変形例のモジュール配信システムにおいて、車両3は、ECU33以外のECU(配下ECU)を有する。ECU33は、配下ECUで実行されるプログラムを更新する更新モジュールの配信をサーバ2に要求し、配下ECUで実行されるプログラムが更新可能であることを運転者に通知する。ECU33は、通知に対応した運転者による所定の操作に応じて、例えば配信済み更新モジュールを配下ECUに実行させることで、配信済み更新モジュールにより配下ECUの対応するプログラムを更新する。そして、配下ECUで実行されるプログラムを更新する配信済み更新モジュールの保留時間をサーバ2に送信する。かかる構成により、モジュール配信システムは、車両が有する複数のECUのそれぞれで実行されるプログラムの更新モジュールを、適切に配信することができる。
【0070】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0071】
1 モジュール配信システム
2 サーバ
241 配信部
242 算出部
3 車両
36 プロセッサ
361 要求部
362 通知部
363 更新部