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特許7521526有機EL表示装置、硬化物の製造方法および有機EL表示装置の製造方法
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  • 特許-有機EL表示装置、硬化物の製造方法および有機EL表示装置の製造方法 図1
  • 特許-有機EL表示装置、硬化物の製造方法および有機EL表示装置の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】有機EL表示装置、硬化物の製造方法および有機EL表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 59/12 20230101AFI20240717BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20240717BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240717BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20240717BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240717BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240717BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
H10K59/12
H10K59/122
H10K50/844
H10K85/10
G03F7/023
G03F7/004 503Z
G09F9/30 365
H10K71/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021513354
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004535
(87)【国際公開番号】W WO2021171984
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2020029051
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀本 聡
(72)【発明者】
【氏名】小森 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】三好 一登
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047483(WO,A1)
【文献】特開2007-016214(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00
G03F 7/023
G03F 7/004
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物を具備する有機EL表示装置であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、それらの共重合体およびポリシロキサンからなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.006以下である有機EL表示装置。
【請求項2】
前記有機EL表示装置が、少なくとも基板、第一電極、第二電極、有機EL層、平坦化層及び画素分割層を具備し、前記硬化物が平坦化層および/または画素分割層に含まれる、請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記感光性樹脂組成物がさらに(C)塩基発生剤を含有する、請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物が(B1)ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の総量100質量%に対して、前記(B1)ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物の含有量が60質量%以上100質量%以下である、請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記(C)塩基発生剤が、グアニジン誘導体および/またはビグアニド誘導体を含有する、請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物の製造方法であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、それらの共重合体およびポリシロキサンからなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、該感光性樹脂組成物を基板に塗布し感光性樹脂膜を形成する工程、前記感光性樹脂膜を乾燥する工程、乾燥した感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程、現像した感光性樹脂膜に紫外線照射する工程、および現像した感光性樹脂膜を加熱処理して硬化物を得る工程を、この順で含む硬化物の製造方法であり、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.006以下である、硬化物の製造方法。
【請求項8】
前記加熱処理して硬化物を得る工程の最高加熱温度が240℃以上420℃以下である請求項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項9】
基板上に、平坦化層、第一電極、画素分割層、有機EL層、第二電極の順に形成する工程を有する有機EL表示装置の製造方法において、該平坦化層および/または該画素分割層に含まれる硬化物の製造方法が、請求項7または8に記載の方法により硬化物を形成する工程を含む有機EL表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置、硬化物の製造方法および有機EL表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、タブレットPC及びテレビなど、薄型ディスプレイを有する表示装置において、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」)表示装置を用いた製品が多く開発されている。
【0003】
一般に、有機EL表示装置は、基板上に、駆動回路、平坦化層、第一電極、画素分割層、有機EL層および第二電極を有し、対向する第一電極と第二電極との間に電圧を印加することで、あるいは、電流を流すことで発光することができる。これらのうち、平坦化層用材料および画素分割層用材料としては、紫外線照射によるパターニング可能な感光性樹脂組成物が一般に用いられている。
【0004】
一方、有機EL表示装置に対する高信頼化要求は年々厳しくなっており、平坦化層用材料および画素分割層用材料に対しても、高温、高湿、光照射といった加速条件での信頼性試験後においても発光輝度低下や画素シュリンクが発生しない材料が求められている。ここで画素シュリンクとは、画素の端部から発光輝度が低下する、もしくは不点灯となる現象を指す。
【0005】
これまでに提案されてきたポジ型感光性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性樹脂に感光成分のナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合したもので、樹脂としてポリイミド前駆体を用いたもの(例えば特許文献1参照)、ポリベンゾオキサゾール前駆体を用いたもの(例えば特許文献2参照)が挙げられる。さらには、硬化膜中の硫黄濃度を一定範囲とすることで長期信頼性を高めたもの(例えば特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-91343号公報
【文献】特開2002-116715号公報
【文献】国際公開第2016-047483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記に挙げた特許文献で提案された材料は、車載用ディスプレイなど高信頼化要求がさらに厳しい用途においては十分な性能を有するとは言い難い。本発明は、上記問題点を鑑み、発光輝度低下や画素シュリンクを引き起さず、長期信頼性に優れた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む光性樹脂組成物の硬化物を具備する有機EL表示装置であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、それらの共重合体およびポリシロキサンからなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.006以下である有機EL表示装置である。
または、本発明は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物の製造方法であって、前記(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、それらの共重合体およびポリシロキサンからなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、該感光性樹脂組成物を基板に塗布し感光性樹脂膜を形成する工程、前記感光性樹脂膜を乾燥する工程、乾燥した感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程、現像した感光性樹脂膜に紫外線照射する工程、および現像した感光性樹脂膜を加熱処理して硬化物を得る工程を、この順で含む硬化物の製造方法であり、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.006以下である、硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機EL表示装置は、発光輝度低下や画素シュリンクを引き起さず、長期信頼性に優れた有機EL表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】TFT基板の断面図である。
図2】有機EL表示装置の基板の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施形態の有機EL表示装置は、マトリックス上に形成された複数の画素を有する有機EL表示装置である。有機EL表示装置の駆動方式としては、電極を列と行に分け、電極間に挟まれている画素だけを発光させるパッシブマトリックス型と、数個のTFTをそれぞれの画素に設けてスイッチングするアクティブマトリックス型に大別されるが、特に限定されない。有機EL表示装置は、基板上に、平坦化層、第一電極、画素分割層、有機EL層、第二電極の順に形成される。アクティブマトリックス型の有機EL表示装置は、ガラスなどの基板上にTFT(薄膜トランジスタ)とTFTの側方部に位置しTFTと接続された配線とを有し、その駆動回路上に凹凸を覆うようにして平坦化層を有し、さらに平坦化層上に有機EL素子が設けられている。有機EL素子と配線とは、平坦化層に形成されたコンタクトホールを介して接続される。また、本発明の実施形態の有機EL表示装置では、第一電極上に画素分割層が形成される。
【0013】
図1に基板1上に設けられた有機EL表示装置の断面図を示す。基板1上に、ボトムゲート型またはトップゲート型のTFT2が行列状に設けられ、このTFT2を覆う状態でTFT絶縁層3が形成される。また、このTFT絶縁層3の下にTFT2に接続された配線4が設けられている。さらにTFT絶縁層3上には、配線4を開口するコンタクトホールとこれらを埋め込む状態で平坦化層5が設けられる。平坦化層5には、配線4のコンタクトホール6に達するように開口部が設けられる。そして、このコンタクトホール6を介して、配線4に接続された状態で、平坦化層5上に第一電極7が形成される。そして第一電極7の周縁を覆うように画素分割層8が形成される。さらにその上には有機EL層9と第二電極10が形成される。この有機EL表示装置は、基板1の反対側から発光光を放出するトップエミッション型でもよいし、基板1側から光を取り出すボトムエミッション型でもよい。
【0014】
また、この基板に赤、緑、青色領域にそれぞれ発光ピーク波長を有する有機EL素子が配列したもの、もしくは全面に白色の有機EL素子を作製して別途カラーフィルタと組み合わせて使用するようなものをカラーディスプレイと呼び、通常、表示される赤色領域の光のピーク波長は560~700nm、緑色領域は500~560nm、青色領域は420~500nmの範囲である。
【0015】
発光画素と呼ばれる範囲は、対向配置された第一電極と第二電極とが交差し重なる部分、さらに、第一電極上の画素分割層により規制される範囲である。アクティブマトリックス型ディスプレイにおいては、スイッチング手段が形成される部分が発光画素の一部を占有するように配置されることがあり、発光画素の形状は矩形状ではなく、一部分が欠落したような形でもよい。しかしながら、発光画素の形状はこれらに限定されるものではなく、例えば円形でもよく、画素分割層の形状によっても容易に変化させることができる。
【0016】
本発明の有機EL素子の作製は、マスク蒸着法によって有機EL層が形成される。マスク蒸着法とは、蒸着マスクを用いて有機化合物を蒸着してパターニングする方法で、所望のパターンを開口部とした蒸着マスクを基板の蒸着源側に配置して蒸着を行う。高精度の蒸着パターンを得るためには、平坦性の高い蒸着マスクを基板に密着させることが重要であり、一般的に、蒸着マスクに張力をかける技術や、基板背面に配置した磁石によって蒸着マスクを基板に密着させる技術などが用いられる。
【0017】
蒸着マスクの製造方法としては、エッチング法や機械的研磨、サンドブラスト法、焼結法、レーザー加工法、感光性樹脂の利用などが挙げられるが、微細なパターンが必要な場合は、加工精度に優れるエッチング法や電鋳法を用いることが多い。
【0018】
本発明の有機EL素子に含まれる有機EL層の構成は特に限定されず、例えば、(1)正孔輸送層/発光層、(2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層、(3)発光層/電子輸送層のいずれであってもよい。
【0019】
続いて第二電極を形成する。アクティブマトリックス型では、発光領域全体に渡って第二電極がベタで形成されることが多い。第二電極には、電子を効率よく注入できる陰極としての機能が求められるので、電極の安定性を考慮して金属材料が多く用いられる。なお、第一電極を陰極に、第二電極を陽極にすることも可能である。
【0020】
第二電極を形成後、封止をおこない有機EL表示装置が得られる。一般的に、有機EL素子は酸素や水分に弱いとされ、信頼性の高い表示装置を得るためには出来るだけ酸素と水分の少ない雰囲気下で封止をおこなうことが好ましい。封止に使用する部材についても、ガスバリア性の高いものを選定することが好ましい。
【0021】
本発明の有機EL表示装置は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物を具備する有機EL表示装置であって、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.008以下である。
【0022】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、硬化膜中に含有する硫黄原子が、有機EL装置の長期信頼性を低下させる因子であることを突き止めるに至った。より具体的には、平坦化層または画素分割層中の硫黄成分がガス化して画素内部に染み出ることで、画素の端部から発光輝度が低下する、もしくは不点灯となる、画素シュリンクと呼ばれる現象を引き起こすことを特定した。画素分割層は画素端部と接しており、長期信頼性試験中にガス化した硫黄成分が画素内部に染み出ることで画素シュリンクが発生する。また平坦化層は、画素端部と接していないが、長期信頼性試験中にガス化した硫黄成分が、画素分割層と接する領域を通じて画素分割層内部に移動し、さらに画素内部に染み出ることで画素シュリンクが発生する。
【0023】
この課題に対し、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.008以下、好ましくは0.006以下、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.004以下、特に好ましくは0.003以下とすることで、発光輝度の低下や画素シュリンクが起こらず、有機EL表示装置として十分な長期信頼性を与えることが可能となる。また、前記強度比I(S)/I(TOTAL)は0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましい。
【0024】
ここで、I(S)/I(TOTAL)が0.008以下となる硬化物を得るためには、加熱処理工程で(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の炭素-硫黄結合解裂により二酸化硫黄を硬化物外へ除去し、硬化物に含まれる硫黄原子量を低減すればよい。
【0025】
(S)/I(TOTAL)が0.008以下となる硬化物を得るための具体的な方法としては、以下を挙げることができる。
[方法1]
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物において、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物として(B1)ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物を含有し、感光性樹脂組成物の硬化物を製造する際に、感光性樹脂膜を現像する工程と感光性樹脂膜を加熱処理する工程との間に感光性樹脂膜に紫外線照射する工程を行い、加熱処理して硬化物を得る工程の最高加熱温度を400℃以上とする方法
[方法2]
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物において、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物としてナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物のみを含有し、さらに(C)塩基発生剤を含有し、感光性樹脂組成物の硬化物を製造する際に、加熱処理して硬化物を得る工程の最高加熱温度を400℃以上とする方法
[方法3]
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物において、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物として(B1)ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物を含有し、さらに(C)塩基発生剤を含有し、感光性樹脂組成物の硬化物を製造する際に、加熱処理して硬化物を得る工程の最高加熱温度を230℃以上とする方法
上述の方法1~3のいずれの方法でも、加熱処理工程で(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の炭素-硫黄結合解裂により二酸化硫黄を硬化物外へ除去し、硬化物に含まれる硫黄原子量を低減できる。その中でも、相対的に加熱処理温度が低く、TFT素子の熱劣化の影響を避けられる点で、方法3が最も好ましい。
【0026】
本発明の有機EL表示装置は、少なくとも基板、第一電極、第二電極、有機EL層、平坦化層及び画素分割層を具備し、前記硬化物が平坦化層および/または画素分割層に含まれることが好ましい。平坦化層および/または画素分割層に前記硬化物が含まれることで、長期信頼性に非常に優れた有機EL表示装置を提供することが可能となる。
【0027】
ここで、硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析手法について詳細に説明する。
【0028】
飛行時間型二次イオン質量分析法は、TOF-SIMS(Time-Of-Flight Secondary Ion Spectrometry)と一般的に呼ばれる。TOF-SIMSは、高真空中で固体試料表面にパルス化された一次イオンを照射し、固体から放出された二次イオンを、軽いイオンは高速、重いイオンは低速と、質量に応じた速度分布を利用して質量分離する分析法である。この飛行時間分布を計測することで試料最表面の質量スペクトルが得られる。このTOF-SIMS分析にスパッタイオンガンを併用し、深さ方向にスパッタしながらTOF-SIMS分析することにより、深さ方向の質量スペクトルを得ることができる。
【0029】
次に、硬化物の分析箇所について説明する。硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)とするが、これは該硬化物の表面から内部に向かう方向において硬化物の表面から500nmの地点をTOF-SIMS分析して得られた質量スペクトル情報を意味する。有機EL表示装置の平坦化層及び画素分割層の膜厚は、一般に1000~5000nmの範囲であり、硬化物の表面から500nmの地点というのは、硬化物内部の中央領域を分析することを実質的に意味する。硬化物が有機EL表示素子の平坦化層および/または画素分割層に含まれる場合、コンタクトホール端部あるいは画素開口端部から平面方向に2μm以上離れた領域の硬化物表面部をTOF-SIMS分析することが好ましい。コンタクトホール端部あるいは画素開口端部から平面方向に2μm以下の領域は、膜厚が500nm以下となる可能性があり、その場合、硬化物内部以外の下層成分の質量スペクトル情報が混在する可能性がある。
【0030】
TOF-SIMS分析で得られる硬化物の表面から内部に向かう方向の情報は、通常、スパッタ時間を対象物の表面から内部の方向の距離に変換することで得られる。スパッタ時間を対象物の表面から内部の方向の距離に変換する方法としては、例えば、予め測定した硬化物の膜厚と、硬化物表面から硬化物内部までのスパッタ時間の関係から時間を距離に換算する方法、あるいは、硬化物のTOF-SIMS分析中にプロファイルの取得を中断し、得られた分析クレーターの表面から内部までの距離を触針式膜厚計で測定し、硬化物におけるスパッタレートをあらかじめ算出しておく方法などがある。硬化物の膜厚の測定方法は、特に制限されない。例えば、樹脂硬化物断面の電子顕微鏡観察などにより膜厚が測定できる。
【0031】
膜成分が膜深さ方向に分布を有する場合など、組成が均一でない場合、スパッタリングレート、すなわち、単位時間当たりにスパッタリングされる膜厚は正確には一定ではないが、本発明においては、硬化物表面から500nmの地点を正確に特定する必要はないため、前述した求め方で問題になることはない。
【0032】
なお、例えば、有機EL表示装置に具備された硬化物について、上記TOF-SIMSを用いた分析をする場合、硬化物の表面を露出させる必要がある。以下に、硬化物の表面を露出させる方法の一例を説明するが、露出方法は以下に限定されない。
【0033】
硬化物の表面を露出させる方法として、例えば、アルゴン、セシウム、酸素、ガリウムなどのスパッタ銃を用いることにより、目的とする硬化物の表面上部を除去して、硬化物表面を露出させることができる。
【0034】
あるいは、ケミカルエッチングを使った露出方法としては、画素分割層の上下に挟まれている電極の両方又は一方を、酸又はアルカリにより溶解することにより硬化物の上下に間隙を作り、積層体を剥離する方法で、硬化物表面を露出させることができる。
【0035】
さらには、斜め切削法を使った露出方法としては、有機EL表示装置のカバーガラスを取り除き、むき出しになった有機EL層や画素分割層などを含む積層体をまとめて光取り出し方向に対し斜めに裁断することにより、硬化物の表面を露出させることができる。
【0036】
次に(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物について説明する。
感光性樹脂組成物は(A)アルカリ可溶性樹脂を含有する。アルカリ可溶性とは、樹脂をγ-ブチロラクトンに溶解した溶液をシリコンウェハー上に塗布し、120℃で4分間プリベークを行って膜厚10μm±0.5μmのプリベーク膜を形成し、該プリベーク膜を23±1℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間浸漬した後、純水でリンス処理したときの膜厚減少から求められる溶解速度が50nm/分以上であることをいう。
【0037】
(A)アルカリ可溶性樹脂としては、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリアミノアミド、アクリル樹脂、カルド樹脂、フェノール樹脂、環状オレフィン重合体、シロキサン樹脂などが挙げられるが、これに限定されない。これらの樹脂を2種以上含有してもよい。これらのアルカリ可溶性樹脂の中でも、耐熱性に優れ、高温下におけるアウトガス量が少ないものが好ましい。具体的には、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、それらの共重合体およびポリシロキサンからなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂が好ましい。また、折り曲げ耐性など膜物性に優れる点でポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂がさらに好ましい。
【0038】
(A)アルカリ可溶性樹脂として用いることができるポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびそれらの共重合体からなる群より選択される1種類以上のアルカリ可溶性樹脂は、上記アルカリ可溶性を付与するため、樹脂の構造単位中および/またはその主鎖末端に酸性基を有することが好ましい。酸性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基などが挙げられ、これらの中で、カルボキシル基またはフェノール性水酸基が、硫黄原子を含まない点で好ましい。また、フッ素原子を有することが好ましく、アルカリ水溶液で現像する際に、膜と基材との界面に撥水性を付与し、界面へのアルカリ水溶液のしみこみを抑制することができる。アルカリ可溶性樹脂中のフッ素原子含有量は、界面へのアルカリ水溶液のしみこみ防止効果の観点から5質量%以上が好ましく、アルカリ水溶液に対する溶解性の点から20質量%以下が好ましい。
【0039】
(A)アルカリ可溶性樹脂は公知の方法により合成される。ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの場合、製造方法として例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を反応させた後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタールなどでアミド酸構造を部分的にエステル化する方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後アミンと縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、アミンと反応させる方法などで合成することができる。
【0040】
ポリイミドの場合、例えば、前述の方法で得られたポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを溶剤中で加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0041】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の場合、製造方法としては、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸を縮合反応させることで得ることができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物を加える方法やピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下するなどがある。
【0042】
ポリベンゾオキサゾールの場合、例えば、前述の方法で得られたポリベンゾオキサゾール前駆体を溶剤中で加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することにより得ることができる。
【0043】
ポリイミド、ポリイミド前駆体およびその共重合体として用いられる酸二無水物としては、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族のテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0044】
ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体およびその共重合体として用いられる酸成分としては、ジカルボン酸の例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、トリフェニルジカルボン酸など、トリカルボン酸の例としてトリメリット酸、トリメシン酸、ジフェニルエーテルトリカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸など、テトラカルボン酸の例としてピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸や、ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族のテトラカルボン酸などを挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。
【0045】
ジアミンの具体的な例としては、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンあるいはこれらの芳香族環の水素原子の少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンおよび下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0046】
【化1】
【0047】
、Rは酸素原子、C(CF、またはC(CHを表す。R、R、R~R12はそれぞれ独立に水素原子、または水酸基を表す。
これらのジアミンは、ジアミンとして、または対応するジイソシアネート化合物、トリメチルシリル化ジアミンとして使用できる。
【0048】
また、これらの樹脂の末端を、公知の酸性基を有するモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸により封止することで、主鎖末端に酸性基を有する樹脂を得ることができる。
上記したモノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤の含有量は、樹脂を構成する酸およびアミン成分の総和100モル%に対して、2~25モル%が好ましい。
【0049】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルをラジカル重合したものが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキセニル、(メタ)アクリル酸4-メトキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-シクロプロピルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-シクロペンチルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-シクロヘキシルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-シクロヘキセニルオキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸2-(4-メトキシシクロヘキシル)オキシカルボニルエチル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸テトラシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アダマンチルメチル、(メタ)アクリル酸1-メチルアダマンチル等の公知のものが用いられる。スチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物を、上記の(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルと共重合してもよい。
【0050】
また、エチレン性不飽和二重結合基を有するエポキシ化合物を(メタ)アクリル酸に付加反応することによりエチレン性不飽和二重結合基を導入することができる。
【0051】
カルド樹脂としては、カルド構造、即ち、環状構造を構成している4級炭素原子に二つの環状構造が結合した骨格構造、を有する樹脂が挙げられる。カルド構造の一般的なものはフルオレン環にベンゼン環が結合したものである。
環状構造を構成している4級炭素原子に二つの環状構造が結合した骨格構造の具体例としては、フルオレン骨格、ビスフェノールフルオレン骨格、ビスアミノフェニルフルオレン骨格、エポキシ基を有するフルオレン骨格、アクリル基を有するフルオレン骨格等が挙げられる。
【0052】
カルド樹脂は、このカルド構造を有する骨格がそれに結合している官能基間の反応等により重合して形成される。カルド樹脂は、主鎖と嵩高い側鎖が一つの元素で繋がれた構造(カルド構造)をもち、主鎖に対してほぼ垂直方向に環状構造を有している。
カルド構造を有する単量体の具体例としては、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノ-ル類や9,9-ビス(シアノメチル)フルオレン等の9,9-ビス(シアノアルキル)フルオレン類、9,9-ビス(3-アミノプロピル)フルオレン等の9,9-ビス(アミノアルキル)フルオレン類等の公知のものが挙げられる。
カルド樹脂は、カルド構造を有する単量体を重合して得られる重合体であるが、その他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。
【0053】
フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂やレゾールフェノール樹脂などの公知のものがあり、種々のフェノール類の単独あるいはそれらの複数種の混合物をホルマリンなどのアルデヒド類で重縮合することにより得られる。
【0054】
ノボラックフェノール樹脂およびレゾールフェノール樹脂を構成するフェノール類としては、例えばフェノール、p-クレゾール、m-クレゾール、o-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2,4,5-トリメチルフェノール、メチレンビスフェノール、メチレンビスp-クレゾール、レゾルシン、カテコール、2-メチルレゾルシン、4-メチルレゾルシン、o-クロロフェノール、m-クロロフェノール、p-クロロフェノール、2,3-ジクロロフェノール、m-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、p-ブトキシフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-ジエチルフェノール、2,5-ジエチルフェノール、p-イソプロピルフェノール、α-ナフトール、β-ナフトールなどが挙げられ、これらは単独で、または複数の混合物として用いることができる。
【0055】
また、アルデヒド類としては、ホルマリンの他、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒドなどが挙げられ、これらは単独でまたは複数の混合物として用いることができる。
【0056】
本発明で用いられるフェノール樹脂の好ましい重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算で2000~50000、好ましくは3000~30000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が50000を超えると現像性、感度が悪化する傾向があり、2000未満ではパターン形状、解像度、現像性、耐熱性が劣化しやすい。
【0057】
ポリシロキサンとしては、例えば、4官能オルガノシラン、3官能オルガノシラン、2官能オルガノシラン及び一官能オルガノシランから選ばれる一種類以上を加水分解し、脱水縮合させて得られる公知のポリシロキサンが挙げられる。
【0058】
オルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシラン等の4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p-ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(p-ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシ-5-(p-ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリメトキシシラン、〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕プロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、1-ナフチルトリメトキシシラン、1-ナフチルトリエトキシシラン、1-ナフチルトリ-n-プロポキシシラン、2-ナフチルトリメトキシシラン、等の3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn-ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、ジ(1-ナフチル)ジメトキシシラン、ジ(1-ナフチル)ジエトキシシラン等の2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn-ブチルエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン等の1官能性シランが挙げられる。これらのオルガノシランを2種以上用いてもよい。また、扶桑化学工業株式会社製メチルシリケート51、多摩化学工業株式会社製Mシリケート51などのシリケート化合物を共重合してもよい。
【0059】
ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィ)で測定されるポリスチレン換算で1,000以上であれば、塗膜性が向上するため好ましい。一方、現像液に対する溶解性の観点からは100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。
【0060】
ポリシロキサンは、オルガノシランなどのモノマーを加水分解および部分縮合させることにより合成される。ここで、部分縮合とは、加水分解物のSi-OHを全て縮合させるのではなく、得られるポリシロキサンに一部Si-OHを残存させることを指す。加水分解および部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、オルガノシラン混合物に溶剤、水、必要に応じて触媒を添加し、50~150℃で0.5~100時間程度加熱撹拌する方法等が挙げられる。撹拌中、必要に応じて、加水分解副生物(メタノール等のアルコール)や縮合副生物(水)を蒸留により留去してもよい。
【0061】
触媒に特に制限はないが、酸触媒、塩基触媒が好ましく用いられる。酸触媒の具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0062】
感光性樹脂組成物は、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含有する。ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、フェノール性水酸基を有した化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。
【0063】
ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP,DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6-ジメトキシメチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業(株)製)などの化合物にナフトキノンジアジド-4-スルホン酸あるいはナフトキノンジアジド-5-スルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することが出来るが、これ以外の化合物を使用することもできる。
【0064】
上記ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物と、キノンジアジドスルホン酸化合物とのエステル化反応によって、合成することが可能であって、公知の方法により合成することができる。これらのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を使用することで解像度、感度、残膜率がより向上する。
【0065】
ナフトキノンジアジドスルホン酸-4-エステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適しており、ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明は、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物、ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物のどちらも使用することができ、同一分子中にナフトキノンジアジド-4-スルホニル基、ナフトキノンジアジド-5-スルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を使用することもできるし、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物とナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物を混合して使用することもできる。
【0066】
これらのうち、加熱処理工程において、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物が分解し、一部が二酸化硫黄となり膜外に除去されるため、硬化物に含まれる硫黄原子量を低減できる観点から、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物が好ましい。また、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物は、後述の(C)塩基発生剤と併用することで、加熱処理工程におけるナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の分解と二酸化硫黄の膜外への除去が格段に促進されるため、硬化物に含まれる硫黄原子量をさらに低減できる。結果、硫黄原子に由来する画素シュリンクをさらに抑制できることから、特に好ましく用いられる。
【0067】
(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の総量100質量%に対して、前記(B1)ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物の含有量は60質量%以上100質量%以下の範囲が好ましい。60質量%以上とすることで硬化物に含まれる硫黄原子量を効果的に低減でき、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0068】
(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の添加量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上で、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。4質量%以上とすることで優れた感度でパターン形成することができ、20質量%以下とすることで、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の硫黄原子に由来する画素シュリンクを抑制でき、有機EL装置の長期信頼性を高めることができる。
【0069】
感光性樹脂組成物は、(C)塩基発生剤を含有することが好ましい。(C)塩基発生剤とは、加熱することでアミンなどの塩基を発生する化合物をいう。塩基を発生する温度は、感光性樹脂組成物を加熱乾燥する工程では塩基を発生させない点で100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、現像後に加熱処理する工程で十分に塩基を発生させる点で240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。(C)塩基発生剤は、露光波長における光分解度合いが小さい化合物が好ましい。本発明において露光波長とは、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)のいずれかの波長を含むことが好ましく、これらの波長照射で光分解が実質的に生じない化合物が好ましい。これにより露光処理において熱塩基発生剤から塩基が発生することを抑制できるので、露光により(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物から発生した酸が失活する現象を抑制することができる。
【0070】
上記(C)塩基発生剤から加熱処理工程で塩基が発生することで、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の分解と二酸化硫黄の膜外への除去が促進される。この二酸化硫黄の膜外への除去効果は、(B)成分としてナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物を用いる場合に特に顕著である。これは、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物の炭素-硫黄結合エネルギーが、ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物の炭素-硫黄結合エネルギーより小さいため、加熱処理中の熱と塩基の作用による炭素-硫黄結合の切断が、ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物の方が格段に発生しやすいためと推察される。加熱処理工程で酸化硫黄の膜外への除去が促進された結果、硫黄原子に由来する画素シュリンクをさらに抑制することができる。
【0071】
(C)塩基発生剤から発生する塩基の例としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム、イミダゾール、ピラゾール、グアニジン、ビグアニドなどを挙げることができる。これらのうち、(C)塩基発生剤から発生する塩基の塩基性度が高い点で、(C)塩基発生剤はグアニジン誘導体および/またはビグアニド誘導体が好ましい。
【0072】
(C)塩基発生剤としては、具体的にはU-CAT(登録商標) SA810、U-CAT SA831、U-CAT SA841、U-CAT SA851、U-CAT SA506、U-CAT 5002(以上商品名 サンアプロ(株)製)、WPBG-165、WPBG-027、WPBG-082、WPBG-266、WPBG-300、WPBG-345(以上商品名、富士フィルム和光純薬(株)製)、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、N-(イソプロポキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(ベンジロキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリジル酢酸、N-tert-ブトキシカルボニル-ピペリジル-4-カルボン酸、N-tert-ブトキシカルボニル-4-アミノ安息香酸、4-(tert-ブトキシカルボニル-アミノ)シクロヘキサノン、4-(tert-ブトキシカルボニル-アミノ)フェノール、N-tert-ブトキシカルボニル-チラミン、4-(tert-ブトキシカルボニル-アミノ)フェノール、N-tert-ブトキシカルボニルジメチルピペリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-プロリノール、1,3-ビス(4-tert-ブトキシカルボニル-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(tert-ブトキシカルボニル-アミノ)ジフェニルエーテル、3,4’-ビス(tert-ブトキシカルボニル-アミノ)ジフェニルエーテル、N-フェニルイミノ2酢酸、1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-4酢酸、N-メチルイミノ2酢酸、N-ベンジルイミノ2酢酸、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオン酸塩などが挙げられる。これらの塩基発生剤は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
これらの塩基発生剤うち、グアニジン誘導体および/またはビグアニド誘導体としては、WPBG-266、WPBG-300、WPBG-345(以上商品名、富士フィルム和光純薬(株)製)、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンなどが挙げられる。
【0074】
(C)塩基発生剤の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。0.1質量%以上とすることでナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の硫黄原子に由来する画素シュリンクを抑制でき、有機EL装置の長期信頼性を高めることができ、15質量%以下とすることで膜物性低下などの副作用を抑制できる。
【0075】
感光性樹脂組成物は、(D)有機溶剤を含有することが好ましい。これによりワニスの状態にすることができ、塗布性を向上させることができる。
【0076】
前記有機溶剤は、γ-ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、等の他のエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、などの溶剤を単独、または混合して使用することができる。
【0077】
前記有機溶剤の使用量は、特に限定されないが、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、100~3000質量%が好ましく、150~2000質量%がさらに好ましい。また有機溶剤全量に対する沸点180℃以上の溶剤が占める割合は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。沸点180℃以上の溶剤の割合を20質量%以下にすることで、熱硬化後の平坦化層または絶縁層からのアウトガス量を低く抑えることができ、結果として有機EL装置の長期信頼性を高めることができる。
【0078】
感光性樹脂組成物は、熱架橋剤を含有することができる。熱架橋剤とは、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基をはじめとする熱反応性の官能基を分子内に少なくとも2つ有する化合物を指す。熱架橋剤は(A)成分の樹脂またはその他添加成分を架橋し、熱硬化後の膜の耐熱性、耐薬品性および硬度を高めることができ、さらには硬化物からのアウトガス量を低減し、有機EL表示装置の長期信頼性を高めることができることから、含有することが好ましい。
【0079】
熱架橋剤は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
熱架橋剤の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して1質量%以上30質量%以下が好ましい。熱架橋剤の含有量が1質量%以上30質量%以下であれば、焼成後または硬化後の膜の耐薬品性および硬度を高めることができ、さらには硬化物からのアウトガス量を低減し、有機EL表示装置の長期信頼性を高めることができ、感光性樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
【0081】
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、着色剤を含有することができる。着色剤とは、電子情報材料の分野で一般的に用いられる、有機顔料、無機顔料または染料をいう。着色剤は、好ましくは有機顔料および/または無機顔料であるとよい。
【0082】
有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾもしくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニンもしくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロンもしくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、ベンゾフラノン系、又は金属錯体系顔料が挙げられる。
【0083】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット又はコバルトバイオレットが挙げられる。
【0084】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン又はポリメチン染料が挙げられる。
【0085】
有機EL表示装置のコントラストを向上させる目的においては、着色剤の色は可視光を全波長域に渡って遮光できる黒色が好ましく、有機顔料、無機顔料、および染料から選ばれる少なくとも1種以上を用い、硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いればよい。そのためには、上述の黒色有機顔料および黒色無機顔料を用いてもよいし、二種以上の有機顔料および染料を混合することで疑似黒色化してもよい。疑似黒色化する場合は、上述の赤色、橙色、黄色、紫色、青色、緑色などの有機顔料および染料から二種以上を混合することで得ることができる。なお、本発明の感光性樹脂組成物自体は必ずしも黒色である必要はなく、加熱硬化時に色が変化することで硬化膜が黒色を呈するような着色剤を用いてもよい。
【0086】
これらのうち、高い耐熱性を確保できる観点においては、有機顔料および/または無機顔料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。また、高い絶縁性を確保できる観点においては、有機顔料および/または染料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。すなわち、高い耐熱性と絶縁性を両立できる点で、有機顔料を含有し、かつ硬化膜とした時に黒色を呈するような着色剤を用いることが好ましい。
【0087】
着色剤の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。着色剤の含有量を5質量%以上とすることで硬化膜に必要な着色性が得られ、50質量%以下とすることで保存安定性が良好となる。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物において、着色剤として顔料を用いる場合は分散剤を併用することが好ましい。分散剤を併用することで、着色剤を樹脂組成物中に均一かつ安定に分散させることができる。分散剤は、特に制限されるものではないが、高分子分散剤が好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系高分子分散剤、アクリル系高分子分散剤、ポリウレタン系高分子分散剤、ポリアリルアミン系高分子分散剤又はカルボジイミド系分散剤が挙げられる。より具体的には、高分子分散剤とは、主鎖がポリアミノ、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート等からなり、側鎖または主鎖末端にアミン、カルボン酸、リン酸、アミン塩、カルボン酸塩、リン酸塩等の極性基を有する高分子化合物のことをいう。極性基が顔料に吸着し、主鎖ポリマーの立体障害により顔料の分散が安定化される役割を果たす。
【0089】
分散剤は、アミン価のみを有する(高分子)分散剤、酸価のみを有する(高分子)分散剤、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、又は、アミン価も酸価も有さない(高分子)分散剤に分類されるが、アミン価及び酸価を有する(高分子)分散剤、アミン価のみを有する(高分子)分散剤が好ましく、アミン価のみを有する(高分子)分散剤がより好ましい。
【0090】
着色剤に対する分散剤の割合は、耐熱性を維持しながら分散安定性を向上させるため、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。また100質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0091】
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、密着改良剤を含有することができる。密着改良剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、チタンキレート剤、アルミキレート剤、芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハー、ITO、SiO2、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、洗浄などに用いられる酸素プラズマ、UVオゾン処理に対する耐性を高めることができる。密着改良剤の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、0.1~10質量%が好ましい。
【0092】
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、必要に応じて基板との濡れ性を向上させる目的で界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は市販の化合物を用いることができ、具体的にはシリコーン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコーン社のSHシリーズ、SDシリーズ、STシリーズ、ビックケミー・ジャパン社のBYKシリーズ、信越シリコーン社のKPシリーズ、日本油脂社のディスフォームシリーズ、東芝シリコーン社のTSFシリーズなどが挙げられ、フッ素系界面活性剤としては、大日本インキ工業社の“メガファック(登録商標)”シリーズ、住友スリーエム社のフロラードシリーズ、旭硝子社の“サーフロン(登録商標)”シリーズ、“アサヒガード(登録商標)”シリーズ、新秋田化成社のEFシリーズ、オムノヴァ・ソルーション社のポリフォックスシリーズなどが挙げられ、アクリル系および/またはメタクリル系の重合物からなる界面活性剤としては、共栄社化学社のポリフローシリーズ、楠本化成社の“ディスパロン(登録商標)”シリーズなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
界面活性剤の含有量は溶剤を除く樹脂組成物全量に対して好ましくは0.001~1質量%である。
【0094】
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、必要に応じて感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を補う目的で、フェノール性水酸基を有する化合物を含有してもよい。フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis-Z、BisOC-Z、BisOPP-Z、BisP-CP、Bis26X-Z、BisOTBP-Z、BisOCHP-Z、BisOCR-CP、BisP-MZ、BisP-EZ、Bis26X-CP、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisCRIPZ、BisOCP-IPZ、BisOIPP-CP、Bis26X-IPZ、BisOTBP-CP、TekP-4HBPA(テトラキスP-DO-BPA)、TrisPHAP、TrisP-PA、TrisP-PHBA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOFP-Z、BisRS-2P、BisPG-26X、BisRS-3P、BisOC-OCHP、BisPC-OCHP、Bis25X-OCHP、Bis26X-OCHP、BisOCHP-OC、Bis236T-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BisRS-OCHP、(商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシキノリン、2,6-ジヒドロキシキノリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、アントラセン-1,2,10-トリオール、アントラセン-1,8,9-トリオール、8-キノリノールなどが挙げられる。これらのフェノール性水酸基を有する化合物を含有することで、得られる感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。そのため、感度が向上しやすくなる。
【0095】
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
【0096】
また、本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、無機粒子を含んでもよい。好ましい具体例としては酸化珪素、酸化チタン、チタン酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられるがこれらに限定されない。これら無機粒子の一次粒子径は100nm以下、より好ましくは60nm以下が好ましい。
【0097】
無機粒子の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、好ましくは5~90質量%である。
【0098】
本発明で用いられる感光性樹脂組成物は、有機EL表示装置の長期信頼性を損なわない範囲で熱酸発生剤を含有してもよい。熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、熱架橋剤の架橋反応を促進する他、(A)成分の樹脂に未閉環のイミド環構造、オキサゾール環構造を有している場合はこれらの環化を促進し、硬化膜の機械特性をより向上させることができる。
【0099】
本発明に用いられる熱酸発生剤の熱分解開始温度は、50℃~270℃が好ましく、250℃以下がより好ましい。また、本発明の感光性樹脂組成物を基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70~140℃)時には酸を発生せず、その後の露光、現像でパターニングした後の最終加熱(キュア:約100~400℃)時に酸を発生するものを選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。
【0100】
本発明に用いられる熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸やトリフルオロメチルスルホン酸などのハロアルキルスルホン酸などが好ましい。これらはオニウム塩のような塩として、またはイミドスルホナートのような共有結合化合物として用いられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0101】
本発明に用いられる熱酸発生剤の含有量は、溶剤を除く樹脂組成物全量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。0.01質量%以上含有することで、架橋反応および樹脂の未閉環構造の環化が促進されるため、硬化膜の機械特性および耐薬品性をより向上させることができる。また、有機EL表示装置の長期信頼性の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がより好ましい。
【0102】
本発明の(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物の製造方法は、該感光性樹脂組成物を基板に塗布し感光性樹脂膜を形成する工程、前記感光性樹脂膜を乾燥する工程、乾燥した感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を加熱処理して硬化物を得る工程を、この順で含む硬化物の製造方法であり、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.008以下である。また、前記硬化物の製造方法は、前記加熱処理して硬化物を得る工程の最高加熱温度が250℃以上400℃以下であることが好ましい。また、前記感光性樹脂膜を現像する工程と前記感光性樹脂膜を加熱処理して硬化物を得る工程との間に、現像した感光性樹脂膜に紫外線照射する工程を含むことが好ましい。
【0103】
次に、感光性樹脂組成物を基板に塗布し感光性樹脂膜を形成する工程について説明する。感光性樹脂組成物をスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、印刷法などで基板に塗布し、感光性樹脂組成物の塗布膜を得る。塗布に先立ち、感光性樹脂組成物を塗布する基材を予め前述した密着改良剤で前処理してもよい。例えば、密着改良剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶剤に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、基材表面を処理する方法が挙げられる。基材表面の処理方法としては、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法が挙げられる。
【0104】
基板は、金属やガラス、樹脂フィルムなど、表示装置の支持や後工程の搬送に好ましいものを適宜選択することができる。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどを用いることができ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよい。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましいが、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することができる。樹脂フィルムであれば、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリアミドイミド、およびポリ(p-キシリレン)から選択される樹脂材料を含むものが好ましく、これらの樹脂材料を単独で含んでいてもよいし、複数種が組み合わされていてもよい。例えば、ポリイミド樹脂で形成する場合には、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸(一部がイミド化されたポリアミック酸を含む。)または、可溶性ポリイミドを含む溶液を支持基板に塗布し、焼成することで形成することもできる。
【0105】
次に、感光性樹脂膜を乾燥する工程について説明する。
塗布後、必要に応じて減圧乾燥処理を施し、その後、ホットプレート、オーブン、赤外線などを用いて、50℃~180℃の範囲で1分間~数時間の熱処理を施すことで感光性樹脂膜を得る。
【0106】
次に、乾燥した感光性樹脂膜を露光する工程について説明する。
感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0107】
次に、露光した感光性樹脂膜を現像する工程について説明する。
露光後、現像液を用いて露光部を除去する。現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像方式としては、スプレー、パドル、浸漬、超音波等の方式が可能である。
【0108】
次に、現像によって形成したパターンを蒸留水にてリンス処理をすることが好ましい。
ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを蒸留水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0109】
次に、現像した感光性樹脂膜に紫外線照射する工程について説明する。
紫外線照射により(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物がインデンカルボン酸化合物に変化する。インデンカルボン酸化合物は、後述の加熱処理工程において、スルホン酸エステル構造由来の二酸化硫黄の膜外への除去がさらに促進される。このため、硬化物中の硫黄濃度をさらに低減でき、有機EL装置として長期信頼性をさらに高めることができる。ここで、紫外線は、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)のいずれかの波長を含む光が好ましく、照射量は100~10000mJ/cmの範囲であることが好ましい。これらの波長および照射量で処理することで、インデンカルボン酸化合物へ効率よく変化させることができる。
【0110】
次に現像した感光性樹脂膜を加熱処理して硬化物を得る工程について説明する。
加熱処理により残留溶剤や耐熱性の低い成分を除去できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。特に、本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)アルカリ可溶性樹脂が、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体、またはそれらの共重合体を含む場合は、加熱処理によりイミド環、オキサゾール環を形成できるため、耐熱性および耐薬品性を向上させることができ、また、熱架橋剤を含む場合は、加熱処理により熱架橋反応を進行させることができ、耐熱性および耐薬品性を向上させることができる。さらには(C)塩基発生剤を含む場合は、加熱処理により塩基を発生させ、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物のスルホン酸エステル構造由来の二酸化硫黄を膜外に除去することができる。
この加熱処理は、段階的に昇温後、最高加熱温度で保持しても、連続的に昇温後、最高加熱温度で保持しても、最初から最高加熱温度で保持してもよい。ここで最高加熱温度とは、加熱により樹脂膜が経験する温度のうち、樹脂膜が累計1分以上その温度以上を経験する温度範囲を確認し、その中で最も高い温度を指す。(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物のスルホン酸エステル構造由来の二酸化硫黄を膜外に除去する反応を十分進める点で、最高加熱温度は240℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。またTFT素子の熱劣化の影響を避ける点で、420℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、350℃以下がさらに好ましく、320℃以下が特に好ましい。また最高加熱温度での保持時間は特に制限はないが、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物のスルホン酸エステル構造由来の二酸化硫黄を膜外に除去する反応を十分進める点で、15分以上が好ましく、30分以上がより好ましく、45分以上がさらに好ましい。また生産性の観点で180分以下が好ましく、150分以下がより好ましく、120分以下がさらに好ましい。
次に、有機EL表示装置の製造方法について説明する。
【0111】
基板上に、平坦化層、第一電極、画素分割層、有機EL層、第二電極の順に形成する工程を有する有機EL表示装置の製造方法において、該平坦化層および/または該画素分割層に含まれる硬化物の製造方法が、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物を基板に塗布し感光性樹脂膜を形成する工程、前記感光性樹脂膜を乾燥する工程、乾燥した感光性樹脂膜を露光する工程、露光した感光性樹脂膜を現像する工程および現像した感光性樹脂膜を加熱処理して硬化物を得る工程を、この順で含む硬化物の製造方法であり、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.008以下であることが好ましい。
また、前記硬化物の製造方法は、前記加熱処理して硬化物を得る工程の最高加熱温度が250℃以上400℃以下であることが好ましい。
また、前記感光性樹脂膜を現像する工程と前記感光性樹脂膜を加熱処理する工程との間に感光性樹脂膜に紫外線照射する工程を含むことが好ましい。紫外線は、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)のいずれかの波長を含む光が好ましく、照射量は100~10000mJ/cmの範囲であることが好ましい。これらの波長および照射量で処理することで、インデンカルボン酸化合物へ効率よく変化させることができる。
【実施例
【0112】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるも
のではない。なお、実施例中の感光性樹脂組成物および有機EL表示装置の評価は以下の方法により行った。
【0113】
(1)感度評価
<露光感度の算出>
各実施例および比較例により得られた感光性樹脂組成物を塗布現像装置ACT-8(東京エレクトロン(株)製)を用いて、8インチシリコンウェハー上にスピンコート法で塗布し、120℃で3分間ホットプレートにてベークをして膜厚3.0μmのプリベーク膜を作製した。なお、膜厚は大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM-602を使用し、屈折率1.63の条件で測定した。その後、露光機i線ステッパーNSR-2005i9C(ニコン社製)を用い、10μmのコンタクトホールのパターンを有するマスクを介して、100~700mJ/cmの露光量にて10mJ/cmステップで露光した。露光後、前記ACT-8の現像装置を用いて、2.38質量%のテトラメチルアンモニウム水溶液(以下、TMAH、多摩化学工業(株)製)を用いて現像時の膜減りが0.5μmになる時間で現像した後、蒸留水でリンス後、振り切り乾燥し、パターンを得た。
【0114】
得られた現像膜のパターンをFDP顕微鏡MX61(オリンパス(株)社製)を用いて倍率20倍で観察し、コンタクトホールの開口径が10μmに達した最低必要露光量を求め、これを露光感度とした。
【0115】
(2)硬化物のTOF-SIMS分析
<硬化物の作製>
図2に使用した基板の概略図を示す。まず、38×46mmの無アルカリガラス基板11に、スパッタ法によりITO透明導電膜100nmを基板全面に形成し、第一電極12としてエッチングした。また、同時に第二電極を取り出すため補助電極13も同時に形成した。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で10分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。次にこの基板全面に、後述の各実施例および比較例に即した感光性樹脂組成物(ワニス)をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で2分間プリベークした。この膜にパラレルライトマスクアライナー(以下PLAという)(キヤノン(株)製PLA-501F)を用いて超高圧水銀灯を光源(g線、h線、i線の混合線)として、フォトマスクを介してUV露光した後、2.38%TMAH水溶液で現像し、露光部分のみを溶解させた後、純水でリンスした。表1~4で「現像後ブリーチ有」と記載の実施例および比較例については、PLA-501Fを用いて500mJ/cmの露光量で全面露光した。得られたパターン付き基板を、イナートオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)を用いて窒素雰囲気下のオーブン中で各実施例および比較例に記載の温度で60分間キュアした。このようにして、幅50μm、長さ260μmの開口部が幅方向にピッチ155μm、長さ方向にピッチ465μmで配置され、それぞれの開口部が第一電極を露出せしめる形状の画素分割層14を、基板有効エリアに限定して形成した。このようにして、1辺が16mmの四角形である基板有効エリアに開口率18%の画素分割層を設け、その画素分割層の厚さは約2.0μmであった。
【0116】
<TOF-SIMS深さ方向分析による負二次イオン検出>
得られた画素分割層付き基板の硬化物部分について、以下の装置を用いてTOF-SIMS深さ方向分析を行い、TOF-SIMS深さ方向分析の際に生じる二次イオンを測定した。
【0117】
装置:TOF.SIMS5(ION-TOF社製)
エッチングイオン種:Cs
エッチングイオン加速エネルギー:2keV
1次イオン種:Bi
1次イオンエネルギー:25keV
1次イオンの電流値:0.4pA
2次イオン極性:Negative
測定面積:10μm角
測定モード:高質量分解能
帯電防止:フラッドガン(電子銃)から電子ビームを照射
炭素負二次イオンの質量数:12
酸素負二次イオンの質量数:16
フッ素負二次イオンの質量数:19
ケイ素負二次イオンの質量数:28
硫黄負二次イオンの質量数:32
硬化物の膜深さ方向において膜表面から500nmの地点をTOF-SIMS分析して得られた質量スペクトル情報のうち、硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする。膜表面から500nmの地点は、予め測定した硬化膜の膜厚と、硬化物表面から硬化物底面までのスパッタ時間の関係から時間を距離に換算する方法により求めた。
【0118】
(3)有機EL表示装置の長期信頼性試験
<有機EL表示装置の作製>
(2)と同様の方法で、第一電極、補助電極、画素分割層を形成した基板を用いて有機EL表示装置の作製を行った。前処理として窒素プラズマ処理をおこなった後、真空蒸着法により有機EL層15を形成した。なお、蒸着時の真空度は1×10-3Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。まず、正孔注入層として化合物(HT-1)を10nm、正孔輸送層として化合物(HT-2)を50nm蒸着した。次に発光層に、ホスト材料としての化合物(GH-1)とドーパント材料としての化合物(GD-1)を、ドープ濃度が10%になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送材料として化合物(ET-1)と化合物(LiQ)を体積比1:1で40nmの厚さに積層した。有機EL層で用いた化合物の構造を以下に示す。
【0119】
【化2】
【0120】
次に、化合物(LiQ)を2nm蒸着した後、MgおよびAgを体積比10:1で60nm蒸着して第二電極16とした。最後に、低湿窒素雰囲気下でエポキシ樹脂系接着剤を用いてキャップ状ガラス板を接着することで封止をし、1枚の基板上に1辺が5mmの四角形である発光装置を4つ作製した。なお、ここで言う膜厚は水晶発振式膜厚モニターにおける表示値である。
【0121】
<長期信頼性の評価>
作製した有機EL表示装置を、キセノン試験装置(Q-LAB社製Q-SUN)に入れ、照度800W/m、温度50℃でUV照射処理を施した。50時間毎に有機EL表示装置を取出し、10mA/cmで直流駆動にて発光させ、発光画素における発光面積を測定した。UV照射処理試験前の初期発光面積を100とした時にUV照射処理試験後の発光面積が50以下となる最小時間を有機EL表示装置信頼性(単位:hr)とし、以下の基準で判定し、信頼性300hr以上を合格とした。
A+:信頼性650hr以上
A :信頼性600hr
A-:信頼性550hr
B+:信頼性500hr
B :信頼性450hr
B-:信頼性400hr
C :信頼性350hr
D :信頼性300hr
E :信頼性200~250hr
F :信頼性100~150hr
G :評価不可。
【0122】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物の合成
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(以降BAHFと呼ぶ)18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、-15℃に冷却した。ここに3-ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、-15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0123】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム-炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行なった。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、濾過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物を得た。
【0124】
【化3】
【0125】
合成例2 ポリイミド前駆体(A-1)の合成
乾燥窒素気流下、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以降ODPAと呼ぶ)31.0g(0.10モル)をNMP500gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物45.35g(0.075モル)と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)をNMP50gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で2時間反応させた。次に末端封止剤として4-アミノフェノール4.36g(0.04モル)をNMP5gとともに加え、50℃で2時間反応させた。その後、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール28.6g(0.24モル)をNMP50gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を室温まで冷却した後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を得た。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂であるポリイミド前駆体(A-1)を得た。
【0126】
合成例3 ポリイミド(A-2)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF29.3g(0.08モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)、末端封止剤として、3-アミノフェノール3.27g(0.03モル)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)150gに溶解した。ここにODPA31.0g(0.1モル)をNMP50gとともに加えて、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。その後、キシレンを15g添加し、水をキシレンとともに共沸しながら、150℃で5時間撹拌した。撹拌終了後、溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、アルカリ可溶性樹脂であるポリイミド(A-2)を得た。
【0127】
合成例4 ポリベンゾオキサゾール前駆体(A-3)の合成
乾燥窒素気流下、BAHF18.3g(0.05モル)をNMP50g、グリシジルメチルエーテル26.4g(0.3モル)に溶解させ、溶液の温度を-15℃まで冷却した。ここにジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド(日本農薬(株)製)7.4g(0.025モル)、イソフタル酸クロリド(東京化成(株)製)5.1g(0.025モル)をγ-ブチロラクトン(GBL)25gに溶解させた溶液を内部の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、-15℃で6時間撹拌を続けた。反応終了後、メタノールを10質量%含んだ水3Lに溶液を投入して白色の沈殿を集めた。この沈殿を濾過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、目的のアルカリ可溶性樹脂であるポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体(A-3)を得た。
【0128】
合成例5 ポリシロキサン(A-4)の合成
500mlの三口フラスコに、p-スチリルトリメトキシシラン(St)を44.86g(0.200mol)、フェニルトリメトキシシラン(Ph)を39.66g(0.200mol)、メチルトリメトキシシラン(Me)6.81g(0.050mol)、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(Suc)を13.12g(0.050mol)、TBCを0.522g、PGMEを74.58g仕込み、室温で撹拌しながら、水27.90gにリン酸0.448g(仕込みモノマーに対して0.50質量%)を溶かしたリン酸水溶液を30分間かけて添加した。その後、三口フラスコを70℃のオイルバスに浸けて90分間撹拌した後、オイルバスを30分間かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に三口フラスコの内温(溶液温度)が100℃に到達し、そこから2時間加熱撹拌し(内温は100~110℃)、ポリシロキサン溶液を得た。なお、昇温および加熱撹拌中、窒素を0.05リットル/分流した。反応中に、副生成物であるメタノールおよび水が合計58.90g留出した。得られたポリシロキサン溶液に、固形分濃度が40質量%となるようにPGMEを追加し、ポリシロキサン(A-4)溶液を得た。
【0129】
合成例6 アクリル樹脂(A-5)の合成
500mlのフラスコに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を5g、t-ドデカンチオールを5g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと略する)を150g入れた。その後、メタクリル酸を30g、ベンジルメタクリレートを35g、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルメタクリレートを35g加え、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内を窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌した。次に、得られた溶液にメタクリル酸グリシジルを15g、ジメチルベンジルアミンを1g、p-メトキシフェノールを0.2g添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、アクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂溶液に、固形分濃度が40質量%となるようにPGMEAを追加し、アクリル樹脂(A-5)溶液を得た。
【0130】
合成例7 ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル化合物(B-1)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)とナフトキノンジアジド-4-スルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表される4-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物(B-1)を得た。
【0131】
【化4】
【0132】
合成例8 ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル化合物(B-2)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP-PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)とナフトキノンジアジド-5-スルホニル酸クロリド36.27g(0.135モル)を1,4-ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4-ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(B-2)を得た。
【0133】
【化5】
【0134】
実施例および比較例に用いられる塩基発生剤を以下に示す。
C-1:WPBG-266(富士フィルム和光純薬(株)製)、分子中にビグアニド構造を有する下記構造の化合物
【0135】
【化6】
【0136】
C-2:WPBG-300(富士フィルム和光純薬(株)製)、分子中にビグアニド構造を有する下記構造の化合物
【0137】
【化7】
【0138】
C-3:4-(tert-ブトキシカルボニル-アミノ)フェノール
【0139】
【化8】
【0140】
C-4:N-tert-ブトキシカルボニル-2,6-ジメチルピペリジン
【0141】
【化9】
【0142】
C-5:N-(tert-ブトキシカルボニル)-プロリノール
【0143】
【化10】
【0144】
C-6:1,3-ビス(4-tert-ブトキシカルボニル-アミノフェノキシ)ベンゼン
【0145】
【化11】
【0146】
C-7:N-フェニルイミノ2酢酸
【0147】
【化12】
【0148】
C-8:[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン
【0149】
【化13】
【0150】
C-9:WPBG082(富士フィルム和光純薬(株)製)、下記構造の化合物
【0151】
【化14】
【0152】
実施例1
前記合成例2で得られたポリイミド前駆体(A-1)10.0g、(B-1)1.0g、(C-1)0.5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMEと呼ぶ)40.0gとγ-ブチロラクトン(以下GBLと呼ぶ)10.0gに溶解した後、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製のフィルター(住友電気工業(株)製)で濾過して感光性樹脂組成物Aを得た。
【0153】
得られた感光性樹脂組成物Aを用い、前記<露光感度の算出>に記載の方法で露光感度を求めた。また前記<硬化物の作製>に記載の方法で硬化物を作製し、得られた硬化物に対し、前記<TOF-SIMS深さ方向分析による負二次イオン検出>に記載の方法で、硫黄の負二次イオン強度I(S)、および炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和I(TOTAL)を求め、I(S)/I(TOTAL)を算出した。さらに前記<有機EL表示装置の作製>に記載の方法で有機EL表示装置を作製し、得られた有機EL表示装置に対し、前記<長期信頼性の評価>に記載の方法で有機EL表示装置信頼性を求めた。評価結果を表1に示す。
【0154】
実施例2~6、8~24、比較例1~21、参考例1、2
実施例1と同様の方法で、化合物の種類と量は表1~5に記載の通りでワニスB~Y、およびワニスa~uを得た。また実施例1と同様の方法で露光感度、I(S)/I(TOTAL)、有機EL表示装置信頼性を求めた。評価結果を表1~5に示す。
表1の実施例7を参考例1に読み替える。表3の実施例25を参考例2に読み替える。
【0155】
有機EL表示装置の長期信頼性試験結果
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物を含む硬化物を具備する有機EL表示装置であって、該硬化物の飛行時間型二次イオン質量分析により得られる硫黄の負二次イオン強度をI(S)(単位:counts)、炭素、酸素、フッ素、ケイ素および硫黄の負二次イオン強度の総和をI(TOTAL)(単位:counts)とする時の強度比I(S)/I(TOTAL)が0.0001以上0.008以下の条件を満たす実施例1~25は、上記条件を満たさない比較例1~21と比べて長期信頼性が極めて良好な結果となった。なお、比較例3は露光部だけでなく非露光部も現像時に溶解してしまい、所望のパターンを得ることができなかったため、TOF-SIMS深さ方向分析および長期信頼性試験を実施できなかった。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
【表6】
【符号の説明】
【0162】
1:基板
2:TFT
3:TFT絶縁層
4:配線
5:平坦化層
6:コンタクトホール
7:第一電極
8:画素分割層
9:有機EL層
10:第二電極
11:ガラス基板
12:第一電極
13:補助電極
14:画素分割層
15:有機EL層
16:第二電極
図1
図2