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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】缶体の成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/26 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B21D51/26 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021555905
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2020030889
(87)【国際公開番号】W WO2021095309
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2019204285
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新畠 数洋
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-285832(JP,A)
【文献】実開昭59-025318(JP,U)
【文献】国際公開第2013/118728(WO,A1)
【文献】特開2013-103246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状胴部と缶底部が一体に成形された缶体の成形装置であって、
前記缶底部の中央に凹状のドーム部を有し前記ドーム部の周囲に環状の脚部が成形された缶体に対して、前記脚部の形状をリフォーム成形するツールを備え、
前記ツールは、前記缶体内に挿入され、前記ドーム部の内面に当接する押圧体と、前記脚部の下端部に内向きの湾曲端部を成形する成形型とを備え、
前記成形型は、前記缶底部の前記ドーム部の中央に対向する位置である中央部から前記缶底部を前記押圧体の当接面に当接させるエアを噴出する噴出部を有することを特徴とする缶体成形装置。
【請求項2】
前記筒状胴部の周囲を支持する缶体支持部と、
前記湾曲端部が形成された缶体を前記押圧体から離間させる際に、前記缶体の上端を受
け止めるストッパ部を備えることを特徴とする請求項1記載の缶体成形装置。
【請求項3】
回転軸周りに前記押圧体と前記成形型を複数組備えた成形ターレットを備えることを特
徴とする請求項1または2に記載の缶体成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体の缶底部(ボトム)をリフォーム成形する成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シームレス缶(或いは2ピース缶)と呼ばれる缶体は、絞りしごき加工によって缶胴部などが成形される。このような缶体は、省資源化や軽量化のために、缶胴部の薄肉化が進められており、耐圧強度を確保するために、缶底部に凹状のドーム部を形成して、その周辺に環状の脚部を形成している。そして、バックリング対策などのために、前述した脚部における接地部形状に各種の工夫を施すことがなされている。
【0003】
前述した缶底部の成形加工は、第1段階の加工で、中央部を凹状に成形して、前述したドーム部と脚部を形成し、第2段階の加工で、脚部のリフォーム成形を行う。従来、このようなリフォーム成形を行う装置は、基体となるフレームと、フレームに支持されて回転駆動される回転軸と、回転軸に支持されて外周に缶体を保持するポケットが形成されたターレットと、回転軸に支持されてターレットの各ポケットに対応して設けられたリフォーム機構とを備え、リフォーム機構は、トップスピンドルとボトムスピンドルとを備えているものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-103227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術によると、缶底部における脚部のリフォームの成形時に、環状の脚部の内周壁をローラなどを使用して押圧することがなされており、これによると、缶の材料であるアルミニウム合金の酸化皮膜が損なわれ内容物充填後の加熱殺菌時等において、押圧箇所に黒変を生じ易いという問題や、ローラなどに缶底の金属材料が凝着することによる、成形装置のメンテナンスの煩雑さの問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、缶底部のリフォーム成形において、成形箇所に黒変が生じる不具合を抑止すること、成形装置のメンテナンス性を改善すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
筒状胴部と缶底部が一体に成形された缶体の成形装置であって、前記缶底部の中央に凹状のドーム部を有し前記ドーム部の周囲に環状の脚部が成形された缶体に対して、前記脚部の形状をリフォーム成形するツールを備え、前記ツールは、前記缶体内に挿入され、前記ドーム部の内面に当接する押圧体と、前記脚部の下端部に内向きの湾曲端部を成形する成形型とを備え、前記成形型は、前記缶底部の前記ドーム部の中央に対向する位置である中央部から前記缶底部を前記押圧体の当接面に当接させるエアを噴出する噴出部を有することを特徴とする缶体成形装置。



【発明の効果】
【0008】
このような特徴を有する本発明は、缶底部における脚部のリフォーム成形において、成形箇所に黒変が生じる不具合を抑止することができ、また、成形装置のメンテナンス性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る缶体成形装置におけるツールの断面図。
図2】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(押圧体のストローク開始)。
図3】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(缶体の受け取り)。
図4】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(押圧体と缶底部との接触)。
図5】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(成形開始)。
図6】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(成形終了)。
図7】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(エア噴出)。
図8】缶体成形装置による一成形工程を示した説明図(缶体の受け渡し)。
図9】成形ターレットの工程タイミングを示す説明図。
図10】リフォーム成形された缶体の缶底部を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0011】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る缶体成形装置は、筒状胴部W1と缶底部W2が一体に成形された缶体(例えば、2ピース缶)Wの缶底部W2における脚部Gをリフォーム成形するツール1を備えている。ツール1は、缶底部W2の中央に凹状のドーム部Dを形成し、ドーム部Dの周囲に環状の脚部Gを形成した缶体(1次成形された缶体)に対してリフォーム成形を施すものである。
【0012】
ツール1は、押圧体2と成形型3とを備えている。押圧体2は、缶体W内に挿入され、ドーム部Dの内面に当接する当接面2Aを有している。また、成形型3は、脚部Gの下端部に内向きの湾曲端部Gp(図6参照)を成形する型部3Aと脚部Gを型部に案内するテーパー部3Bを有している。
【0013】
ツール1を用いたリフォーム成形の工程を、図2図8を参照しながら説明する。図2に示すように、押圧体2と成形型3からなるツール1の周囲には、缶体支持部4とストッパ部5が配備されており、押圧体2が成形型3に近づく方向に移動するストロークを開始する際には、押圧体2は、缶体Wの受入領域Fの外側に位置している。また、成形型3の中央部には、エア噴出部6が配備されている。
【0014】
図3に示すように、前述された受入領域Fにて缶体Wの受け取りがなされると、缶体Wの筒状胴部W1が、受入領域Fの周囲に配備されている缶体支持部4にて支持される。その間、押圧体2は矢印方向に移動を続けており、缶体Wの受入後に押圧体2が缶体Wの中に挿入される。
【0015】
図4に示すように、押圧体2を更に矢印方向に移動させて、押圧体2の当接面2Aが缶底部W2のドーム部Dの内面に当接すると、前述したエア噴出部6からドーム部Dの外側に向けてエアが噴出される。このエアの噴出で、押圧体2の当接面2Aに対して缶底部W2のドーム部Dが安定した状態で当接される。
【0016】
その後、図5に示すように、更に押圧体2を矢印方向に移動させることで、押圧体2に押圧された缶底部W2が成形型3に向かって移動し、缶底部W2の脚部Gの下端部が成形型3のテーバー部3Bに沿って押し込まれると、型部3Aによって環状の脚部Gが変形して、図6に示すように、その下端部に内向きの湾曲端部Gpが形成されてリフォーム成形が終了する。
【0017】
その後は、図7に示すように、押圧体2を成形型3から離れる方向に移動させながら、エア噴出部6からエアを噴出することで、リフォーム成形が終わった缶体Wを成形型3から離間させる。この際、前述した受入領域Fの缶軸方向外側にはストッパ部5が配備されているので、缶体Wは、エア噴出部6から噴出されるエアを受けて、缶体Wの上端部がストッパ部5に当接するところまで移動する。
【0018】
更にその後は、図8に示すように、前述した受入領域Fの外側に押圧体2を移動させ、受入領域Fから缶体Wを取り出し、次の缶体Wに対する工程に移行する。これによると、ローラなどを使用して押圧する従来技術とは異なり缶体Wと成形型3との間の摩擦力が少ないので、成形型3に金属材料が蓄積することも無い。
【0019】
このような工程は、図9に示した成形ターレット10の一回転内で行われる。図9に示した例では、0°の位置から、回転位置S1(例えば、約30°)において、押圧体2の移動が開始され、回転位置S2(例えば、約45°)において、缶体Wの受け入れが行われ、回転位置S3(例えば、約145°)において、押圧体2の当接面2Aをドーム部Dの内面に当接させ、回転位置S4(例えば、約163°)において、成形型3内での成形を開始し、回転位置S5(例えば、約192°)において、リフォーム成形を終了し、回転位置S6(例えば、約210°)において、エア噴出で缶体Wをストッパ部5まで移動させ、回転位置S7(例えば、約315°)において缶体Wの受け渡しを行い、回転位置S8(例えば、約330°)において、押圧体2の移動を終了する。
【0020】
成形ターレット10に対しては、缶体Wの受け入れターレット11と受け取りターレット12が隣接して配備されている。受け入れターレット11は、回転位置S2にて、成形ターレット10にリフォーム成形前(1次成形後)の缶体Wを送り込み、受け取りターレット12は、回転位置S7にて、リフォーム成形後の缶体Wの受け取りを行う。
【0021】
このようなツール1でリフォーム成形された缶体Wの缶底部W2は、脚部Gに湾曲端部Gpが内向きに湾曲して形成される。より具体的には、図10に示すように、缶底部W2の脚部Gは、外側脚部G1、接地端部G2、内側端部G3、傾斜立ち上がり部G4、内側脚部G5を有しており、接地端部G2と内側端部G3と傾斜立ち上がり部G4で湾曲端部Gpが形成されている。
【0022】
ここで、湾曲端部Gpの内側は、内側端部G3から傾斜立ち上がり部G4を介して内側脚部G5にてドーム部Dの周囲に繋がっており、内側端部G3における内径よりも内側脚部G5における内径が大きくなるように成形されている。図10のt1~t4は各部の板厚を示している。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施形態によると、缶底部W2における脚部Gのリフォーム成形において、ローラなどを接触させる成形を行わないので、成形箇所に黒変が生じる不具合を抑止することができる。また、ツール1に脚部Gの金属が蓄積することも無いので、成形装置のメンテナンス性を改善することができる。なお、前述した実施形態では、成形型3に対して押圧体2を移動させる例を示しているが、これとは逆に、押圧体2に対して成形型3を移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1:ツール,2:押圧体,3:成形型,4:缶体支持部,5:ストッパ部,
6:エア噴出部,10:成形ターレット,
2A:当接面,3A:型部,3B:テーパー部,
W:缶体,W1:筒状胴部,W2:缶底部,D:ドーム部,G:脚部,
G1:外側脚部,G2:接地端部,G3:内側端部,G4:傾斜立ち上がり部,G5:内側脚部,Gp:湾曲端部,受入領域F
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10