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特許7521544給電システム、サーバ、及び電力調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】給電システム、サーバ、及び電力調整方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240717BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022001808
(22)【出願日】2022-01-07
(65)【公開番号】P2023101274
(43)【公開日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智之
(72)【発明者】
【氏名】豊良 幸男
(72)【発明者】
【氏名】福岡 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】徐 梓丹
(72)【発明者】
【氏名】梁 文鋒
(72)【発明者】
【氏名】村田 宏樹
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-150988(JP,A)
【文献】特開2022-122687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 7/00
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から電力の供給を受け、走行レーンを走行中の車両に対して給電を行なう給電設備と、
前記給電設備を使用可能に構成される複数の車両を管理し、前記複数の車両の中から前記外部電源の電力調整のための調整車両を選ぶ車両選定を実行する車両管理装置とを備え、
前記車両管理装置は、前記車両選定において、前記給電設備が設けられた走行レーンを走行中の車群のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、その選定候補の少なくとも一部を前記調整車両として選ぶように構成され、
前記x及び前記yの各々は、1以上の整数である、給電システム。
【請求項2】
前記車両管理装置は、前記走行レーンを走行中の車両の台数を用いて、前記x及び前記yの少なくとも一方を決定するように構成される、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記車両管理装置は、前記走行レーンに対する車両の出入り状況に基づいて、前記x及び前記yの少なくとも一方を決定するように構成される、請求項1に記載の給電システム。
【請求項4】
前記車両管理装置は、前記外部電源の電力調整が要求されたときに、要求された電力調整の種類を用いて、前記x及び前記yの少なくとも一方を決定するように構成される、請求項1に記載の給電システム。
【請求項5】
前記車両管理装置は、前記選定候補の台数が一定になるように、前記走行レーンから先頭の車両が退出したときに前記xを減らし、前記走行レーンに新たな車両が進入したときに前記yを増やすように構成される、請求項1に記載の給電システム。
【請求項6】
所定の調整期間における前記外部電源の電力調整が要求されたときに、前記車両管理装置は、前記調整期間において、少なくとも、前記走行レーンから先頭車両が退出したタイミングと、前記走行レーンに新たな車両が進入したタイミングとにおいて、前記x及び前記yの各々の更新と前記車両選定とを実行する、請求項1~5のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項7】
前記車両管理装置は、前記走行レーンを走行中の車両の台数が所定数よりも多い場合に前記車両選定を実行し、前記走行レーンを走行中の車両の台数が前記所定数よりも少ない場合には前記車両選定を実行しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項8】
前記車両管理装置は、前記外部電源の電力調整が要求されたときに、要求された調整力の大きさを用いて、前記選定候補の中から前記調整車両を選ぶように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項9】
前記車両管理装置は、所定の期間における前記走行レーンを走行中の車両の台数を予測し、予測された車両の台数を用いて、電力市場で前記所定の期間における調整力の入札を行なうように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項10】
前記外部電源の電力調整のための充電が要求されたときに前記調整車両として選ばれる各車両は、前記走行レーンを走行中に前記給電設備からの電力で充電可能に構成される蓄電装置を備え、
前記車両管理装置は、前記外部電源の電力調整のための充電が要求されたときに、前記調整車両ごとの充電電力を決定し、前記走行レーンを走行中の前記調整車両に対して、決定された充電電力での充電を実行させる指令を送信するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項11】
前記外部電源の電力調整のための放電が要求されたときに前記調整車両として選ばれる各車両は、前記走行レーンを走行中に前記給電設備を介して前記外部電源へ放電可能に構成される蓄電装置を備え、
前記車両管理装置は、前記外部電源の電力調整のための放電が要求されたときに、前記調整車両ごとの放電電力を決定し、前記走行レーンを走行中の前記調整車両に対して、決定された放電電力での放電又は充電停止を実行させる指令を送信するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の給電システム。
【請求項12】
外部電源から電力の供給を受け、走行レーンを走行中の車両に対して給電を行なう給電設備を使用可能に構成される複数の車両を管理するサーバであって、
前記サーバは、前記複数の車両の中から前記外部電源の電力調整のための調整車両を選ぶ車両選定を実行するように構成され、
前記サーバは、前記車両選定において、前記給電設備が設けられた走行レーンを走行中の車群のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、その選定候補の少なくとも一部を前記調整車両として選ぶように構成され、
前記x及び前記yの各々は、1以上の整数である、サーバ。
【請求項13】
サーバが、x及びyを決定することと、
前記サーバが、外部電源から電力の供給を受ける給電設備が設けられた走行レーンを走行中の車群のうち、先頭から前記x台目までの車両と最後尾から前記y台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、前記選定候補の少なくとも一部を、前記外部電源の電力調整のための調整車両として選ぶことと、
前記サーバが、前記調整車両を、前記外部電源の電力調整のために動作させることと、
を含み、
前記x及び前記yの各々は、1以上の整数である、電力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電システム、サーバ、及び電力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開2015-95983号公報(特許文献1)には、住戸の敷地内に駐車された車両による非接触での充電(受電)又は給電を通じてエネルギーマネジメントを行なうことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-95983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両外部から供給される電力を蓄えることができるxEV(たとえば、電気自動車)は、外部電源の調整力(たとえば、電力需給を平準化させる調整力)として動作し得る。近年、走行中のxEVに対して給電を行なう技術が注目されているため、こうした技術を利用して外部電源の電力調整を行なうことが考えられる。以下、給電設備が設けられた車線を、「給電レーン」とも称する。給電レーンは、一般に「充電レーン」とも称される。
【0005】
給電レーンを走行中の車両によって外部電源の電力調整を行なうことで、給電レーンは外部電源に対して調整力を提供できる。しかしながら、こうした調整力は不安定になりやすい。具体的には、給電レーンを走行中のxEVの台数は変動する。たとえば、給電レーンを走行する先頭の車両が、給電レーンの出口に到達し、給電レーンから抜けると、給電レーンを走行中のxEVの台数は減少する。他方、給電レーンの入り口から新たな車両が給電レーンに進入すると、給電レーンを走行中のxEVの台数は増加する。このように、給電レーン全体で調整可能な電力(調整力)は、給電レーンに対する車両の出入り状況に応じて変動する。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなるように、給電レーンを走行中の車群の中から調整車両(外部電源の電力調整のための車両)を選ぶことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点に係る給電システムは、給電設備と、車両管理装置とを備える。給電設備は、外部電源から電力の供給を受け、走行レーンを走行中の車両に対して給電を行なうように構成される。車両管理装置は、給電設備を使用可能に構成される複数の車両を管理し、管理される複数の車両の中から外部電源の電力調整のための調整車両を選ぶ車両選定を実行するように構成される。車両管理装置は、車両選定において、走行レーンを走行中の車群のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、その選定候補の少なくとも一部を調整車両として選ぶように構成される。x及びyの各々は、1以上の整数である。以下では、上記の走行レーン(上記のように給電設備が設けられた走行レーン)を「給電レーン」とも称する。
【0008】
上記構成によれば、給電レーンを走行中の車両のうち先頭付近の車両(先頭からx台目までの車両)と最後尾付近の車両(最後尾からy台目までの車両)とは、外部電源の電力調整に使用されない。新たに給電レーンに進入した最後尾の車両は、外部電源の電力調整に使用されないため、新たな車両が給電レーンに進入して最後尾車両になっても給電レーンの調整力は変動しない。また、先頭車両も、外部電源の電力調整に使用されないため、先頭車両が給電レーンから退出しても給電レーンの調整力は変動しない。このため、上記のように選ばれた調整車両(外部電源の電力調整のための車両)によれば、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなる。
【0009】
調整力は、外部電源の電力調整(周波数制御、需給バランス調整など)を行なう能力全般を意味し、予備力も含む。上記外部電源は、電力網(たとえば、マイクログリッド、又はインフラストラクチャとして整備された大規模な電力網)であってもよい。上記外部電源は、交流電力を供給してもよいし、直流電力を供給してもよい。上記車両管理装置は、定置式のサーバであってもよいし、モバイル端末に搭載されてもよい。上記車両管理装置は、クラウドサーバであってもよい。
【0010】
x及びyが大きくなるほど、車両の出入りに対して給電レーンの調整力は変動しにくくなる。ただし、x及びyが大き過ぎると、給電レーンの調整力が不足する可能性がある。
【0011】
車両管理装置は、給電レーンを走行中の車両の台数を用いて、x及びyの少なくとも一方を決定するように構成されてもよい。
【0012】
給電レーンを走行中の車両の台数が多い場合には、給電レーンに対する単位時間あたりの車両の出入り台数が多くなる傾向がある。このため、給電レーンを走行中の車両の台数が多いときにはx及びyの少なくとも一方を増やして、車両の出入りに対する給電レーンの調整力の変動を抑制してもよい。また、給電レーンを走行中の車両の台数が少ない場合には、給電レーンの調整力が不足しやすくなる。このため、給電レーンを走行中の車両の台数が少ないときにはx及びyの少なくとも一方を減らして、給電レーンの調整力不足を抑制してもよい。
【0013】
車両管理装置は、給電レーンに対する車両の出入り状況に基づいて、x及びyの少なくとも一方を決定するように構成されてもよい。車両の出入り状況に応じてx及びyの少なくとも一方を調整することで、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなる。
【0014】
車両管理装置は、外部電源の電力調整が要求されたときに、要求された電力調整の種類を用いて、x及びyの少なくとも一方を決定するように構成されてもよい。要求された電力調整の種類を用いてx及びyの少なくとも一方を調整することで、給電レーンが要求に応じた調整力を外部電源に提供しやすくなる。
【0015】
車両管理装置は、選定候補の台数が一定になるように、給電レーンから先頭の車両が退出したときにxを減らし、給電レーンに新たな車両が進入したときにyを増やすように構成されてもよい。こうした構成によれば、選定候補として一定数の車両が確保されるため、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなる。また、選定候補の数が変動しないことで、車両管理装置が車両管理を行ないやすくなる。
【0016】
車両管理装置は、給電レーンから先頭車両が退出したタイミング(以下、「退出タイミング」とも称する)と、給電レーンに新たな車両が進入したタイミング(以下、「進入タイミング」とも称する)とにおいて、x及びyの各々の更新と車両選定とを実行するように構成されてもよい。
【0017】
給電レーンから先頭車両が退出したり、給電レーンに新たな車両が進入したりすると、選定候補が変わる。このため、少なくとも上記の退出タイミング及び進入タイミングの各々で車両管理装置が改めてx及びyの設定と車両選定とを実行することで、給電レーンが要求に応じた調整力を外部電源に提供しやすくなる。調整期間における退出タイミング及び進入タイミングの各々においてxの更新とyの更新と車両選定とが実行されるように、車両管理装置は、調整期間においてx及びyの各々の更新と車両選定とを繰り返し実行するように構成されてもよい。調整期間は、調整力の提供が要求される期間であり、一般に「提供期間」とも称される。
【0018】
車両管理装置は、給電レーンを走行中の車両の台数が所定数よりも多い場合に上述の車両選定を実行し、給電レーンを走行中の車両の台数が上記所定数よりも少ない場合には上述の車両選定を実行しないように構成されてもよい。
【0019】
給電レーンを走行中の車両の台数が十分でない場合には、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供することが難しくなる。このため、給電レーンを走行中の車両の台数が少ない場合には、車両管理装置が車両選定を実行しないように構成されてもよい。車両管理装置は、給電レーンを走行中の車両の台数が少ない場合に、給電レーンに代わって他のリソースが外部電源の電力調整を行なうように、所定の手配を行なってもよい。
【0020】
車両管理装置は、外部電源の電力調整が要求されたときに、要求された調整力の大きさを用いて、選定候補の中から調整車両を選ぶように構成されてもよい。こうした構成によれば、要求された調整力を給電レーンが外部電源に提供しやすくなる。また、車両管理装置は、選定候補における蓄電装置のSOC(State Of Charge)、定格充電電力、及び定格放電電力の少なくとも1つをさらに用いて、選定候補の中から調整車両を選んでもよい。定格充電電力は、蓄電装置のメーカによって示される蓄電装置の最大充電電力である。定格放電電力は、蓄電装置のメーカによって示される蓄電装置の最大放電電力である。
【0021】
車両管理装置は、所定の期間における給電レーンを走行中の車両の台数を予測し、予測された車両の台数を用いて、電力市場で上記所定の期間における調整力の入札を行なうように構成されてもよい。こうした構成によれば、電力調整が要求される当日の車両の台数(詳しくは、給電レーンを走行中の車両の台数)から予測される提供可能な調整力を車両管理装置が電力市場で落札(約定)しやすくなる。そして、車両管理装置によって落札された調整力が給電レーンから外部電源に契約どおりに提供されやすくなる。
【0022】
外部電源の電力調整のための充電が要求されたときに調整車両として選ばれる各車両は、給電レーンを走行中に給電設備からの電力で充電可能に構成される蓄電装置を備えてもよい。そして、車両管理装置は、外部電源の電力調整のための充電が要求されたときに、調整車両ごとの充電電力を決定し、給電レーンを走行中の調整車両に対して、決定された充電電力での充電を実行させる指令を送信するように構成されてもよい。
【0023】
上記構成では、車両管理装置が、たとえば遠隔操作で調整車両の制御(詳しくは、蓄電装置の充電制御)を行なうことにより、容易かつ的確に蓄電装置を調整力として動作させることが可能になる。
【0024】
外部電源の電力調整のための放電が要求されたときに調整車両として選ばれる各車両は、給電レーンを走行中に給電設備を介して外部電源へ放電可能に構成される蓄電装置を備えてもよい。そして、車両管理装置は、外部電源の電力調整のための放電が要求されたときに、調整車両ごとの放電電力を決定し、給電レーンを走行中の調整車両に対して、決定された放電電力での放電又は充電停止を実行させる指令を送信するように構成されてもよい。
【0025】
上記構成では、車両管理装置が、たとえば遠隔操作で調整車両の制御(詳しくは、蓄電装置の放電制御又は充電停止制御)を行なうことにより、容易かつ的確に蓄電装置を調整力として動作させることが可能になる。
【0026】
本開示の第2の観点に係るサーバは、複数の車両を管理するように構成される。サーバによって管理される複数の車両の各々は、給電設備を使用可能に構成される。給電設備は、外部電源から電力の供給を受け、走行レーンを走行中の車両に対して給電を行なうように構成される。サーバは、上記複数の車両の中から外部電源の電力調整のための調整車両を選ぶ車両選定を実行するように構成される。サーバは、車両選定において、走行レーンを走行中の車群のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、その選定候補の少なくとも一部を調整車両として選ぶように構成される。x及びyの各々は、1以上の整数である。
【0027】
上記サーバによっても、前述した給電システムと同様、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなるように、給電レーンを走行中の車群の中から調整車両を選ぶことが可能になる。
【0028】
本開示の第3の観点に係る電力調整方法は、x及びyを決定することと、外部電源から電力の供給を受ける給電設備が設けられた走行レーンを走行中の車群のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、選定候補の少なくとも一部を、外部電源の電力調整のための調整車両として選ぶことと、調整車両を、外部電源の電力調整のために動作させることとを含む。
【0029】
上記電力調整方法によっても、前述した給電システムと同様、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなるように、給電レーンを走行中の車群の中から調整車両を選ぶことが可能になる。そして、選ばれた調整車両によって外部電源の電力調整を行なうことが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
本開示によれば、給電レーンが外部電源に対して安定した調整力を提供しやすくなるように、給電レーンを走行中の車群の中から調整車両を選ぶことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の実施の形態に係る給電システムの全体構成を示す図である。
図2図1に示した車両、サーバ、及び給電設備の各々の構成を示す図である。
図3図2に示した車両、サーバ、及び給電設備によって実行される給電に係る処理を示すフローチャートである。
図4】本開示の実施の形態に係る給電設備の配置態様について説明するための図である。
図5図4に示した道路の全体構成を示す平面図である。
図6図1に示した車両管理装置によって実行される市場取引に係る処理を示すフローチャートである。
図7図1に示した車両管理装置によって実行される需給バランスの監視に係る処理を示すフローチャートである。
図8】本開示の実施の形態に係る電力調整方法を示すフローチャートである。
図9図8に示した車両選定に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
図10図8に示した電力調整に係る処理の詳細を示すフローチャートである。
図11図8に示した調整中止処理の詳細を示すフローチャートである。
図12図9に示した処理の第1変形例を示すフローチャートである。
図13図9に示した処理の第2変形例を示すフローチャートである。
図14図9に示した処理の第3変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0033】
図1は、本開示の実施の形態に係る給電システムの全体構成を示す図である。図1を参照して、給電システムは、車両管理装置1000と複数の給電設備(以下、区別しない場合は、各給電設備を「給電設備300」と称する)とを備える。車両管理装置1000は、相互通信可能なサーバ200及び500を含む。サーバ200は、アグリゲータに帰属するコンピュータ(以下、「アグリゲータサーバ」と表記する場合がある)に相当する。
【0034】
電力系統PGは、送配電設備によって構築される電力網である。電力系統PGには、複数の発電所が接続されている。電力系統PGは、それらの発電所から電力の供給を受けている。この実施の形態では、電力会社が、電力系統PG(商用電源)を保守及び管理する。電力会社は、一般送配電事業者であり、TSO(Transmission System Operator)に相当する。電力系統PGは、交流電力(たとえば、三相交流電力)を供給する。サーバ700は、TSOに帰属するコンピュータ(以下、「TSOサーバ」と表記する場合がある)に相当する。サーバ700は、中給システム(中央給電指令所システム)及び簡易指令システムを内蔵してもよい。サーバ200とサーバ700とは通信ネットワークNWを介して相互に通信可能に構成される。この実施の形態に係る電力系統PGは、本開示に係る「外部電源」の一例に相当する。
【0035】
サーバ500は、車群VGを管理するように構成される。車群VGは、給電設備300を使用可能に構成される複数の車両を含む。サーバ500は、車群VGに含まれる各車両と周期的に通信を行なうように構成される。車群VGに含まれる車両の数は、10台以上100台未満であってもよいし、100台以上500台未満であってもよいし、500台以上であってもよい。この実施の形態では、車群VGが200台程度の車両を含むものとする。以下では、区別しない場合は、車群VGに含まれる各車両を「車両100」と称する。車両100は、車両管理装置1000によって管理される車両(管理車両)である。
【0036】
給電設備300は、道路に設けられた送電コイル320を含む。車両100は、給電システム(より特定的には、送電コイル320)から給電を受けるように構成される。車両100は、通信ネットワークNWを介してサーバ200及び500の各々と通信可能に構成される。通信ネットワークNWは、たとえばインターネットと無線基地局とによって構築される広域ネットワークである。サーバ200及び500の各々は、たとえば通信線を介して通信ネットワークNWと接続されている。サーバ200とサーバ500とは、通信ネットワークNWを介さずに直接的に通信してもよいし、通信ネットワークNWを介して通信してもよい。給電設備300は、車両100と無線通信可能に構成される。車群VGに含まれる車両100は相互に車車間通信(V2V通信)可能に構成されてもよい。この実施の形態では、給電設備300が、無線通信で通信ネットワークNWにアクセスし、通信ネットワークNWを介してサーバ200と通信する。しかしこうした形態に限られず、サーバ200と給電設備300とは、通信線によって直接接続され、通信ネットワークNWを介さずに通信してもよい。
【0037】
車両100は、以下に説明する図2に示す構成を有する。車両100は、給電システムにおいて給電設備300が給電を行なう対象(給電対象)の一例に相当する。図2は、車両100、サーバ200、及び給電設備300の各々の構成を示す図である。
【0038】
図2を参照して、車両100は、バッテリ110と、監視モジュール110aと、PCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ(以下、「MG」と表記する)130と、電子制御装置(以下、「ECU」と表記する)150と、受電コイル160と、充放電器(D-CHG)165と、自動運転センサ170と、ナビゲーションシステム(以下、「NAVI」と表記する)180と、HMI(Human Machine Interface)185と、通信装置190とを備える。
【0039】
ECU150は、プロセッサ151、RAM(Random Access Memory)152、及び記憶装置153を含むコンピュータである。プロセッサ151はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。RAM152は、プロセッサ151によって処理されるデータを一時的に記憶する作業用メモリとして機能する。記憶装置153は、格納された情報を保存可能に構成される。記憶装置153には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置153に記憶されているプログラムをプロセッサ151が実行することで、車両100における各種制御が実行される。ただしこれに限られず、各種制御は専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
【0040】
車両100は、走行用の電力を蓄電するバッテリ110を備える。車両100は、バッテリ110に蓄えられた電力を用いて走行可能に構成される。この実施の形態に係る車両100は、エンジン(内燃機関)を備えない電気自動車(BEV)である。バッテリ110としては、公知の車両用蓄電装置(たとえば、液式二次電池、全固体二次電池、又は組電池)を採用できる。車両用二次電池の例としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池が挙げられる。監視モジュール110aは、バッテリ110の状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果をECU150へ出力する。監視モジュール110aは、上記センサ機能に加えて、SOC推定機能、SOH(State of Health)推定機能、セル電圧の均等化機能、診断機能、及び通信機能をさらに有するBMS(Battery Management System)であってもよい。ECU150は、監視モジュール110aの出力に基づいてバッテリ110の状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。SOC(State Of Charge)は、蓄電装置の蓄電残量を示し、たとえば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0041】
PCU120は、たとえば、インバータと、コンバータと、リレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)とを含んで構成される。PCU120は、ECU150によって制御される。MG130は、たとえば三相交流モータジェネレータである。MG130は、PCU120によって駆動され、車両100の駆動輪を回転させるように構成される。PCU120は、バッテリ110から供給される電力を用いてMG130を駆動する。また、MG130は、回生発電を行ない、発電した電力をバッテリ110に供給するように構成される。走行のためのモータ(MG)の数は任意であり、1つでも2つでも3つ以上でもよい。走行のためのモータはインホイールモータであってもよい。SMRは、バッテリ110からMG130までの電路の接続/遮断を切り替えるように構成される。SMRは、車両100の走行時に閉状態(接続状態)にされる。
【0042】
この実施の形態では、受電コイル160が車両100の車体下部(たとえば、床下)に設置される。ただし、受電コイルの位置は適宜変更可能であり、ホイールの近傍に受電コイルが設けられてもよい。受電コイル160は、給電システムの送電コイル320に対してワイヤレス電力伝送(すなわち、非接触での電力の授受)を行なうように構成される。ワイヤレス電力伝送(WPT)の方式は任意であり、磁界共鳴方式でもよいし、電磁誘導方式でもよい。また、他の方式が採用されてもよい。充放電器165は、受電コイル160からバッテリ110までの電路に位置する。充放電器165は、給電システムから受電コイル160に供給される電力を、バッテリ110の充電に適した電力に変換するように構成される。また、充放電器165は、バッテリ110の電力を外部放電(車両外部への放電)に適した電力に変換するように構成される。
【0043】
充放電器165は、たとえば、双方向に電力変換を行なうAC/DC変換回路と、受電コイル160からバッテリ110までの電路の接続/遮断を切り替える充放電リレーとを含む。AC/DC変換回路は、受電コイル160から入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ110へ直流電力を出力する。また、AC/DC変換回路は、バッテリ110から入力された直流電力を交流電力に変換して受電コイル160へ交流電力を出力する。充放電器165は、DC/DCコンバータ及びフィルタ回路をさらに含んでもよい。充放電リレーは、ECU150によって制御される。充放電リレーは、基本的には開状態(遮断状態)になっているが、受電コイル160で受けた電力によってバッテリ110の充電が実行されるときには閉状態(接続状態)にされる。また、受電コイル160を通じて外部放電が実行されるときにも、充放電リレーは閉状態(接続状態)にされる。
【0044】
車両100は、走行中充電可能に構成される。車両100の走行中充電は、車両100の走行中に給電システム(より特定的には、送電コイル320)からの電力が受電コイル160及び充放電器165を経てバッテリ110に入力される充電である。走行中充電が実行されるときには、車両100の走行中に充放電リレーが閉状態にされる。
【0045】
車両100は、自動運転可能に構成される自動運転車両である。この実施の形態に係る車両100は、有人走行(車内に人がいる状態での走行)と無人走行(車内に人がいない状態での走行)の両方を実行可能に構成される。車両100は、無人で自律走行可能に構成されるが、ユーザによる手動運転で走行(有人走行)することもできる。車両100は隊列走行可能に構成されてもよい。
【0046】
自動運転センサ170は、自動運転に使用されるセンサである。ただし、自動運転センサ170は、自動運転が実行されていないときに所定の制御で使用されてもよい。自動運転センサ170は、車両100の外部環境を認識するための情報を取得するセンサ(以下、「外部環境センサ」とも称する)と、車両100の車内環境を認識するための情報を取得するセンサ(以下、「車内環境センサ」とも称する)と、車両100の挙動に関する情報を取得するセンサ(以下、「挙動センサ」とも称する)とを含む。各センサの検出結果はECU150へ出力される。
【0047】
外部環境センサの例としては、車両外部に向けたカメラ、ミリ波レーダ、及びライダーの少なくとも1つが挙げられる。ECU150は、外部環境センサの出力に基づいて、車両100の外部環境を認識することができる。車内環境センサの例としては、車内に向けたカメラ及び赤外線センサの少なくとも一方が挙げられる。ECU150は、車内環境センサの出力に基づいて、車両100が有人/無人のいずれの状態かを判別することができる。自動運転センサ170は、着座センサ又はシートベルトセンサを、車内環境センサとして含んでもよい。挙動センサの例としては、IMU(Inertial Measurement Unit)及びGPS(Global Positioning System)センサの少なくとも1つが挙げられる。GPSセンサは、GPSを利用した位置センサである。自動運転センサ170は、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサの少なくとも1つを、挙動センサとして含んでもよい。ECU150は、挙動センサの出力に基づいて、車両100の位置及び姿勢(現在の状態又は今後の状態)を検出又は予測することができる。
【0048】
NAVI180は、GPSモジュールと記憶装置とを含んで構成される。記憶装置は、地図情報を記憶している。GPSモジュールは、図示しないGPS衛星からの信号(以下、「GPS信号」と称する)を受信するように構成される。NAVI180は、GPS信号を用いて車両100の位置を特定することができる。NAVI180は、地図情報を参照して、車両100の現在位置から目的地までの最適ルート(たとえば、最短ルート)を見つけるための経路探索を行なうように構成される。NAVI180は、データセンタと無線通信を行なって地図情報を逐次更新してもよい。ユーザはNAVI180に走行計画を設定できる。NAVI180に走行計画が設定されると、その走行計画が車両100からサーバ500へ送信される。走行計画は、走行ルート、目的地、走行スケジュール(たとえば、設定場所ごとの到着時刻)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0049】
HMI185は入力装置及び表示装置を含む。HMI185は、タッチパネルディスプレイを含んでもよい。HMI185は、音声入力を受け付けるスマートスピーカを含んでもよい。HMI185は、ユーザから入力された各種の情報、及び、車両外部(たとえば、サーバ200)から取得した各種の情報を表示してもよい。HMI185は、NAVI180によって探索されたルートを表示してもよい。
【0050】
ECU150は、車両100の走行に関する各種制御(たとえば、駆動制御、制動制御、及び操舵制御)を実行する。ECU150は、所定の自動運転プログラムに従い、自動運転を実行するように構成される。ECU150は、自動運転センサ170によって取得される各種情報を用いて、車両100のアクセル装置、ブレーキ装置、及び操舵装置(いずれも図示せず)を制御することにより、NAVI180に設定された走行ルート及び走行スケジュールに従う自動運転を実行してもよい。自動運転プログラムは、OTA(Over The Air)によって逐次更新されてもよい。
【0051】
通信装置190は、遠距離通信モジュールと近距離通信モジュールとを含む。
遠距離通信モジュールは、遠距離通信のための通信I/F(インターフェース)に相当する。遠距離通信モジュールは、たとえばDCM(Data Communication Module)を含む。さらに、遠距離通信モジュールは、5G(第5世代移動通信システム)及びWiMAX(登録商標)の少なくとも一方に対応する通信I/Fを含んでもよい。遠距離通信モジュールは、図1に示した通信ネットワークNW(広域ネットワーク)にアクセス可能に構成される。車両100(ECU150)は、遠距離通信モジュールによって通信ネットワークNWにアクセスし、通信ネットワークNWを通じてサーバ200と無線通信を行なうように構成される。
【0052】
近距離通信モジュールは、近距離通信のための通信I/Fに相当する。近距離通信は、遠距離通信に比べて通信距離が短い。近距離通信モジュールの通信距離は、200m未満であってもよく、1m以上30m以下であってもよい。近距離通信の例としては、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、又はZigBee(登録商標)による通信が挙げられる。近距離通信において、RFID(Radio Frequency Identification)とDSRC(dedicated Short Range Communication)との少なくとも一方が採用されてもよい。車両100(ECU150)は、近距離通信モジュールによって給電設備300(より特定的には、後述する通信装置340)と近距離無線通信を行なうように構成される。
【0053】
通信装置190は、車車間(V2V)の無線通信を行なう通信モジュールと、路車間(V2I)の無線通信を行なう通信モジュールと、車内に持ち込まれた端末(たとえば、スマートフォン又はウェアラブルデバイス)と無線通信を行なう通信モジュールとの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0054】
給電設備300は、道路に設けられた複数の送電コイル320と、送電コイル320ごとに設けられた電力変換回路330と、電力変換回路330ごとに設けられた監視モジュール330aと、給電リレー335と、通信装置340と、コンピュータ(以下、「COM」と表記する)350と、電源ラインPLとを含む。なお、給電設備300に含まれる送電コイル320の数は任意である。
【0055】
道路に設けられた複数の送電コイル320と複数の電力変換回路330とは、道路を走行中の車両に対して給電を行なう給電回路310を構成する。監視モジュール330aは、対応する電力変換回路330の入出力電力を検出する給電センサを含む。電力変換回路330は、対応する送電コイル320に電気的に接続されている。給電回路310に含まれる各電力変換回路330は電源ラインPLに電気的に接続されている。電源ラインPLは、給電リレー335を介して、電力系統PGに電気的に接続されている。
【0056】
COM350は、プロセッサ351(たとえば、CPU)、RAM352、及び記憶装置353を含む。記憶装置353には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。詳細は後述するが、給電設備300に給電が予約された場合には、給電を予約した車両に関する情報(たとえば、識別情報)が記憶装置353に記憶される。この実施の形態では、記憶装置353に記憶されているプログラムをプロセッサ351が実行することで、給電設備300における各種制御が実行される。ただしこれに限られず、各種制御は専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
【0057】
電力変換回路330は、たとえば、双方向に電力変換を行なうインバータ(INV)を含む。給電リレー335は、給電路の接続と遮断とを切り替えるように構成される。電力変換回路330及び給電リレー335は、COM350によって制御される。給電リレー335は、基本的には開状態(遮断状態)になっているが、送電コイル320によるWPTが実行されるときには閉状態(接続状態)にされる。給電設備300から車両(給電レーン)へのWPTにおいては、電力変換回路330は、電源ラインPLから電力の供給を受けて、WPTのための電力を生成し、生成した電力を送電コイル320へ出力する。また、電力変換回路330は、車両(給電レーン)から給電設備300へのWPTによって送電コイル320が受電した電力に、電源ラインPLの電力に応じた電力変換を行なうことによって、電力系統PGに対する逆潮流を実行する。
【0058】
監視モジュール330aは、対応する電力変換回路330の状態を検出する各種センサ(たとえば、電流センサ、電圧センサ、及び温度センサ)を含み、検出結果をCOM350へ出力する。監視モジュール330aは、送電コイル320を経て道路上の車両に供給される電力変換回路330の出力電力と、道路上の車両から送電コイル320を経て電力変換回路330に入力される電力変換回路330の入力電力との各々を検出するように構成される。具体的には、監視モジュール330aは、対応する電力変換回路330の入出力電力を検出するための電流センサ及び電圧センサを含む。
【0059】
電源ラインPLには電力量計335aが設けられている。電力量計335aは、給電設備300に含まれる全ての電力変換回路330の入出力電力の合計値の推移を計測する。電力量計335aによって給電設備単位の調整量(ΔkW)が計測される。電力量計335aはスマートメータであってもよい。電力量計335aは、所定時間経過ごとに電力量を計測し、計測した電力量を記憶するとともにサーバ200へ送信する。
【0060】
通信装置340は、前述した通信装置190と同様、遠距離通信モジュールと近距離通信モジュールとを含む。給電設備300(COM350)は、遠距離通信モジュールによって通信ネットワークNWにアクセスし、通信ネットワークNWを通じてサーバ200と無線通信を行なうように構成される。また、給電設備300(COM350)は、近距離通信モジュールによって車両100(より特定的には、通信装置190)と近距離無線通信を行なうように構成される。このため、車両100が給電設備300に接近すると、両者の間での近距離無線通信による情報のやり取りが可能になる。
【0061】
サーバ200は、通信装置210と、データベース220と、制御装置250とを含む。通信装置210は通信ネットワークNWを通じて車両100及び給電設備300の各々と通信を行なうように構成される。制御装置250は、給電設備300(COM350)及び車両100(ECU150)の各々と双方向に情報のやり取りを行なうように構成される。
【0062】
制御装置250は、プロセッサ251(たとえば、CPU)、RAM252、及び記憶装置253を含む。記憶装置253には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。この実施の形態では、記憶装置253に記憶されているプログラムをプロセッサ251が実行することで、サーバ200における各種処理が実行される。ただしこれに限られず、各種処理は専用のハードウェア(電子回路)によって実行されてもよい。
【0063】
データベース220は、地図情報データベース221と、車両情報データベース222と、給電設備データベース223とを含む。以下では、データベースを「DB」と表記する。
【0064】
車両情報DB222は、サーバ200に登録された各車両に関する情報を記憶する。この実施の形態では、車群VG(図1)に含まれる複数の車両100がサーバ200に登録され、複数の車両100に関する情報が車両情報DB222で管理される。車両情報DB222は、車両を識別する情報(以下、「車両ID」とも称する)と関連付けて、車両に関する情報(以下、「車両情報」とも称する)を個別に管理する。車両情報には、たとえば、車両の仕様を示す情報(たとえば、車種、満充電容量、定格充電電力、及び定格放電電力)と、車両の位置と、走行状況(有人走行、無人走行、車速など)と、走行計画(たとえば、目的地)と、自動運転に関する情報(たとえば、走行制御の目標値)と、蓄電装置の状態(たとえば、SOC)と、給電要求に関する情報(要求の有無、要求電力など)と、充電料金に関する情報と、電力調整の実績に関する情報(たとえば、電力調整の実績に応じたインセンティブ及びペナルティ)とが含まれる。
【0065】
給電設備DB223は、サーバ200に登録された各給電設備に関する情報を記憶する。この実施の形態では、複数の給電設備300がサーバ200に登録され、複数の給電設備300に関する情報が給電設備DB223で管理される。給電設備DB223は、給電設備を識別する情報(以下、「設備ID」とも称する)と関連付けて、給電設備に関する情報(以下、「設備情報」とも称する)を個別に管理する。設備情報には、たとえば、給電設備の仕様を示す情報(たとえば、メーカ、型式番号、給電方式、及び定格給電電力)と、給電設備の位置と、給電実績に関する情報(たとえば、給電対象の車両ID)と、メンテナンス情報(たとえば、検査時期、部品交換時期、及び使用履歴)とが含まれる。
【0066】
地図情報DB221には地図情報が記憶されている。地図情報は、所定地域内の各種道路を示す。制御装置250は、地図情報DB221、車両情報DB222、及び給電設備DB223を参照して、地図上における車両及び給電設備の各々の位置を把握してもよい。サーバ200は、さらに各地の渋滞情報及び気象情報を外部から取得してもよい。渋滞情報及び気象情報は、たとえば公知のサービスによって通信ネットワークNW上に提供されてもよい。地図情報DB221、車両情報DB222、及び給電設備DB223は、定期的に又は所定のタイミングで最新の情報に更新される。この実施の形態では、サーバ500が、車群VGに含まれる各車両から所定の車両情報(たとえば、車両の位置、走行状況、及び蓄電装置の状態)を逐次受信している。サーバ200は、必要に応じて、サーバ500に車両情報を要求して、サーバ500から受け取った最新の車両情報によって車両情報DB222を更新してもよい。
【0067】
図1に示した給電システムにおいては、給電設備300が走行中の車両100に対して非接触で給電を行なうように構成される。図3は、車両100が給電設備300から給電を受けるときに、車両100、給電設備300、及びサーバ200によって実行される処理を示すフローチャートである。以下では、フローチャート中の各ステップを、単に「S」と表記する。
【0068】
図1及び図2とともに図3を参照して、まず、S200において、車両100(ECU150)がサーバ200に対して給電要求を行なう。給電要求(S200)は、所定の条件(以下、「給電開始条件」と称する)が成立したときに実行される。たとえば、車両100の有人走行中にユーザがHMI185に対して所定の入力(給電を要求する入力)を行なうと、給電開始条件が成立してもよい。
【0069】
上記給電要求(S200)においては、ECU150が所定の給電要求信号をサーバ200へ送信する。給電要求信号は、車両100の識別情報(車両ID)及び要求電力[kW]を含む。ECU150は、給電を要求する給電設備を指定して給電要求を行なってもよい。この場合、ECU150は、その給電設備を特定するための情報(たとえば、設備ID及び/又は位置)を含む給電要求信号をサーバ200へ送信する。以下、サーバ200に対して給電要求を行なった車両100を、「対象車両」と称する。
【0070】
サーバ200は、対象車両からの上記給電要求信号を受信すると、S400の処理を実行する。S400では、制御装置250が、対象車両が給電を要求する給電設備を特定し、特定された給電設備へ所定の給電予約信号を送信する。給電要求信号によって給電設備が指定されていない場合には、制御装置250は、対象車両の車両情報(たとえば、車両の位置、走行計画、及びバッテリ110のSOC)を用いて、対象車両が給電を要求する給電設備を特定してもよい。制御装置250は、たとえば対象車両の予定走行ルート上に位置する1つ以上の給電設備へ給電予約信号を送信してもよい。この場合、給電が予約された給電設備の位置情報がサーバ200から対象車両へ送信され、その給電設備を含む走行ルートが対象車両のNAVI180に設定されてもよい。対象車両は、予約された給電設備を含む走行ルートがNAVI180に設定されたときに、その走行ルートに従って予約された給電設備に向かう自動運転を開始してもよい。
【0071】
給電予約信号は、対象車両に関する情報(たとえば、車両ID及び要求電力)を含む。制御装置250は、給電要求信号が示す車両IDに基づいて車両情報DB222から抽出した車両情報を、給電予約信号に追加してもよい。以下では、給電が予約された給電設備(すなわち、サーバ200が給電予約信号を送信した給電設備)を、「対象設備」と称する。この実施の形態では、図2に示した給電設備300が対象設備になる。
【0072】
対象設備(給電設備300)が上記給電予約信号を受信すると、給電予約信号に含まれる車両情報(たとえば、車両ID及び要求電力)が対象設備に登録され、S310の処理が実行される。サーバ200が複数の給電設備300へ給電予約信号を送信した場合には、図3に示す一連の処理(S310~S350)が、対象設備(給電設備300)ごとに実行される。また、1つの給電設備300が複数の車両100からの給電予約信号を受信した場合には、対象設備(給電設備300)は、図3に示す一連の処理(S310~S350)を対象車両ごとに実行する。
【0073】
S310では、対象設備のCOM350が、道路に設けられた対象設備の通信装置340に対象車両が接近したか否かを判断する。通信装置340は、車両100と近距離通信可能に構成される。以下、対象設備が近距離通信可能な範囲を、「給電ゾーン」とも称する。給電ゾーン内に車両100が存在することは、車両100が対象設備(給電回路310及び通信装置340を含む)に接近したことを意味する。COM350は、近距離通信によって対象車両の車両IDを受信した場合に、S310においてYESと判断する。対象車両が接近しない間は(S310にてNO)、S310の判断が繰り返し実行される。COM350は、給電の予約(給電予約信号の受信)から所定時間経過しても対象車両の接近が確認されない場合には、タイムアウトにより図3に示す一連の処理を終了するとともに、当該予約をキャンセルしてもよい。
【0074】
給電要求信号の送信(S200)の後に対象車両(車両100)が対象設備に接近すると(S210にてYES)、対象設備と対象車両との近距離通信が開始される。そして、対象車両のECU150が、S220において、所定の給電開始信号を近距離通信によって対象設備へ送信する。給電開始信号は、対象車両の識別情報(車両ID)を含む。対象設備と対象車両との近距離通信が継続していることは、対象設備の給電ゾーン内に対象車両が存在することを意味する。
【0075】
対象設備(給電設備300)が上記給電開始信号を受信すると、対象設備のCOM350が、給電予約信号によって登録された車両IDと、給電開始信号に含まれる車両IDとを照合する。そして、両者が一致すると、S310においてYESと判断され、処理がS320に進む。S320では、COM350が給電回路310を送電アクティブ状態(WPT可能な状態)とする。これにより、電力変換回路330から送電コイル320に電力が供給される。送電中は給電リレー335が閉状態(接続状態)に維持される。送電コイル320の上に車両100の受電コイル160が存在すれば、対象設備から車両100へのWPTが行なわれる。COM350は、上記車両IDによる認証の後、車両通過のタイミングに合わせて送電が開始されるように、給電回路310及び給電リレー335を制御してもよい。続けて、COM350は、S330において送電制御を行なう。具体的には、COM350は、対象車両の要求電力に対応する電力が送電コイル320に供給されるように、電力変換回路330(インバータ)を制御する。給電中の監視モジュール330aによる給電電力の検出値は、取得時刻とともに記憶装置353に逐次記録される。
【0076】
一方、対象車両のECU150は、給電開始信号の送信(S220)の後、S230において充放電器165を受電アクティブ状態(走行中充電可能な状態)とする。これにより、充放電リレーが閉状態(接続状態)になり、対象設備(給電設備300)からの電力が対象車両の受電コイル160及び充放電器165を経てバッテリ110に入力される。続けて、ECU150は、S240においてバッテリ110の充電制御を行なう。具体的には、ECU150は、バッテリ110に入力される電力(充電電力)が要求電力[kW]に近づくように充放電器165を制御する。また、ECU150は、要求電力量[kWh]に基づいて対象車両の車速制御を行なう。対象車両の車速が遅いほど、バッテリ110に入力される電力量は多くなる。ECU150は、バッテリ110の電圧及び電流の検出値を用いて、対象設備からの受電電力[kW]と、受電電力を時間積分した受電電力量[kWh]とを算出することができる。
【0077】
続くS250では、バッテリ110の充電が終了したか否かを、対象車両のECU150が判断する。たとえば、充電量が要求電力量に達した場合、又はバッテリ110が満充電になった場合には、充電が終了したと判断される。また、対象設備との近距離通信が途絶えた場合(すなわち、対象車両が給電ゾーンから出た場合)にも、充電が終了したと判断される。充電が終了しない間は(S250にてNO)、S240においてバッテリ110の充電が実行される。
【0078】
充電が終了すると(S250にてYES)、対象車両のECU150が、S260において、充放電器165の受電アクティブ状態を解除する。これにより、充放電器165が停止されるとともに、充放電リレーが開状態(遮断状態)になる。S260の処理が実行されると、対象車両における充電処理が終了する。
【0079】
対象設備のCOM350は、S340において、対象車両が給電ゾーンから離脱したか否かを判断し、対象車両が給電ゾーン内に存在する間は(S340にてNO)、S330において送電を実行する。そして、対象車両が給電ゾーンから離脱すると(S340にてYES)、COM350が、S350において、給電回路310の送電アクティブ状態を解除する。これにより、電力変換回路330(インバータ)が停止され、送電コイル320への電力の供給が停止される。給電リレー335は、S350において開状態(遮断状態)にされてもよいし、次の車両に備えて閉状態(接続状態)に維持されてもよい。S350の処理が実行されると、対象設備における送電処理が終了する。
【0080】
この実施の形態では、車両100と給電設備300との間での近距離通信が確立したか否かに基づいて、給電設備300が車両100の接近を検出している。しかし、車両の接近を検出する手法は、こうした手法に限られず任意である。たとえば、道路又はその周辺に設けられたセンサによって車両の接近が検出されてもよい。
【0081】
図4は、この実施の形態に係る給電設備の配置態様について説明するための図である。図4を参照して、道路R10は、3車線の走行レーンR1~R3を含む。走行レーンR1及びR2の各々は給電レーンに相当し、走行レーンR3は無給電レーンに相当する。走行レーンR2は、走行レーンR1及びR3の間に位置する。
【0082】
この実施の形態に係る給電システムは、道路R10に埋め込まれた複数の給電設備300Aと複数の給電設備300Bとを備える。走行レーンR1には、給電設備300Aが所定の間隔で配列されている。走行レーンR2には、給電設備300Bが所定の間隔で配列されている。走行レーンR1における給電設備300A同士の間隔と走行レーンR2における給電設備300B同士の間隔とは、同じであってもよいし、異なってもよい。給電設備300Aと給電設備300Bとの各々は、図2に示した給電設備300と同じ構成を有する。給電設備300Aは、電力系統PGから電力の供給を受け、走行レーンR1を走行中の車両に対して給電を行なうように構成される。給電設備300Bは、電力系統PGから電力の供給を受け、走行レーンR2を走行中の車両に対して給電を行なうように構成される。走行レーンR1,R2の各々は、本開示に係る「走行レーン」の一例に相当する。給電設備300A,300Bの各々は、本開示に係る「給電設備」の一例に相当する。
【0083】
図5は、図4に示した道路R10の全体構成を示す平面図である。図1及び図2とともに図5を参照して、道路R10は、給電レーンの入口及び出口を有する。道路R10において入口から出口までの範囲に給電レーン(走行レーンR1,R2)が設けられている。図5に示す例において、道路R10を走行中の各車両は、車群VG(図1)に含まれる車両100(図2)である。サーバ200の制御装置250は、通信ネットワークNWを介して道路R10を走行中の各車両及び給電設備300A,300Bの各々と通信可能に構成される。以下、道路R10を走行中の車両100のうち、給電レーンを走行中の車両100を「給電レーン車両」とも称する。
【0084】
走行レーンR1,R2のいずれかを走行している車両は、給電レーン車両に該当する。図5に示す例では、給電レーン(走行レーンR1,R2)上にN台の給電レーン車両が存在する。図5では、これらの給電レーン車両を、V,V,V,V,・・・,VN-3,VN-2,VN-1,Vのように表記している。「V」の添え字は最後尾から何台目かを示している。たとえば、Vは、最後尾から5台目の給電レーン車両である。なお、給電レーンの入口よりも手前の車両Vaは、給電レーン車両に該当しない。給電レーンの出口を過ぎた車両Vbも、給電レーン車両に該当しない。走行レーンR3(無給電レーン)を走行している車両(たとえば、車両Vc)も、給電レーン車両に該当しない。
【0085】
電力系統PGと道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)との間には、電力量計Srが設けられている。電力量計Srは、道路R10の給電レーンに設けられた全ての給電設備(給電設備300A,300B)の入出力電力の合計値の推移を計測する。電力量計Srは、電力系統PGから道路R10の給電レーンに入力される総電力と道路R10の給電レーンから電力系統PGへ出力される総電力との各々を逐次計測し、逐次記録する。道路R10の給電レーンによる調整量(ΔkW)は、電力量計Srによって計測される。電力量計Srはスマートメータであってもよい。電力量計Srは、所定時間経過ごとに電力量を計測し、計測した電力量を記憶するとともにサーバ200へ送信する。以下、電力量計Srで検出される電力を、「レーン電力」とも称する。
【0086】
サーバ200の制御装置250は、調整力要求が発生したとき(すなわち、電力系統PGの電力調整が要求されたとき)に、車群VG(図1)の中から電力系統PGの電力調整のための調整車両(すなわち、調整力を提供するために動作又は待機する車両)を選ぶ車両選定を実行する。この実施の形態では、制御装置250が、上記車両選定において、複数の給電レーン車両(給電レーンを走行中の車群)のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、その選定候補の少なくとも一部を調整車両として選ぶように構成される。そして、選ばれた調整車両によって、要求された電力系統PGの電力調整が実行される。なお、除外台数x及びyの各々は、1以上の整数であり、後述する図9に示す処理によって決定される。
【0087】
この実施の形態では、制御装置250が電力市場で電力系統PGの調整力を落札したときに調整力要求が発生する。電力市場では、電力を商品とした取引きが行なわれる。各商品は、たとえば入札方式によって売買される。電力系統PGの調整力も、電力市場で取引きされる。調整力は、電力系統PGにフレキシビリティ(電力変動に応じて電力の生産又は消費を変更できる能力)を付与する。電力市場では、コマ単位の商品が取引きされる。コマは、単位時間ごとに1日が分割されたフレームである。この実施の形態では、1日を30分単位に区切った48コマについて取引きが行なわれる。コマごとの市場閉場時刻は、「GC(ゲートクローズ)」と称される。この実施の形態では、コマ開始時刻の1時間前がGCである。
【0088】
アグリゲータは、サーバ200を用いて電子商取引を行なう。サーバ200は、電力市場で調整力の取引きを行なう。市場取引の会計はサーバ200で管理される。サーバ200は、電力市場で調整力を落札した場合には、落札された調整力に対応する調整力要求を発生させる。
【0089】
図6は、サーバ200によって実行される市場取引に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の条件が成立すると、実行される。所定の条件は、所定の時刻に成立してもよいし、定期的に成立してもよい。サーバ200がユーザから入札指示を受けたときに、所定の条件が成立してもよい。サーバ200は、市場価格と、気象情報(気象予測情報を含む)と、車群VGの需要履歴との少なくとも1つに基づいて、入札に適したタイミングを決定し、入札に適したタイミングに図6に示す処理を実行してもよい。電力市場は、たとえばスポット市場(前日市場)である。ただしこれに限られず、電力市場は、時間前市場(当日市場)、需給調整市場、又は容量市場であってもよい。
【0090】
図1図2、及び図5とともに図6を参照して、S11では、サーバ200の制御装置250が、所定の期間(たとえば、各商品に対応するコマ)において道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)を走行中の車両100の台数を予測する。以下、上記所定の期間を、「取引対象期間」とも称する。制御装置250は、車両情報DB222で管理される車両情報(たとえば、走行計画)を用いて、上記台数の予測を行なってもよい。制御装置250は、交通情報から予測される給電レーンの渋滞度合いに基づいて、上記台数の予測を行なってもよい。サーバ200は、VICS(Vehicle Information and Communication System)(登録商標)を通じて交通情報を取得してもよい。
【0091】
続くS12では、制御装置250が、S11で予測された車両100の台数を用いて、上記取引対象期間において道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)が提供可能な調整力を予測する。S11で予測された車両100の台数が多いほど、上記取引対象期間において道路R10の給電レーンが提供可能な調整力(調整力の上限値)は大きくなる。制御装置250は、上記取引対象期間において道路R10の給電レーン上に存在すると予測される各車両100の充放電スペックに関する情報(たとえば、満充電容量、定格充電電力、及び定格放電電力の少なくとも1つ)をさらに用いて、上記調整力の予測を行なってもよい。
【0092】
続くS13では、制御装置250が、S12で予測された調整力を用いて、取引対象を選択し、選択された取引対象に対して入札を行なう。そして、制御装置250は、S14において、入札した商品(調整力)が落札された旨の通知を市場管理者から受ける。その後、落札された調整力の開始時刻(取引対象期間の開始時刻)になると、制御装置250は、S15において、落札された調整力に対応する調整力要求を発生させる。上記のように、サーバ200は、所定の期間における給電レーンを走行中の車両の台数を予測し(S11)、予測された車両の台数を用いて、電力市場で所定の期間における調整力の入札(S13)を行なうように構成される。
【0093】
S15において調整力要求が発生すると、取引対象期間における調整力の提供がサーバ200(アグリゲータ)に要求される。すなわち、取引対象期間が調整期間(調整力の提供が要求される期間)になる。調整力を落札したアグリゲータ(落札者)は、基準値(kW)に対して落札量(ΔkW約定量)の範囲で電力を調整する。落札量は、プラス(上げ調整力)であってもよいし、マイナス(下げ調整力)であってもよい。落札者は、GC(落札されたコマの開始時刻1時間前)までに基準値を市場管理者に通知する。道路R10の給電レーンは、電力調整に使用するリソース(たとえば、リストパターン)として、予め市場管理者に通知される。サーバ200は、落札した1つ以上のコマ(調整期間)において、道路R10の給電レーンを用いて電力調整を行なう。サーバ200は、たとえばサーバ700(TSOサーバ)からの指令に従ってレーン電力(電力量計Srで検出される電力)を制御する。調整期間において出力指令値が変更された場合、サーバ200は、商品要件の応動時間内に給電レーンの出力(レーン電力)をその値に変化させる。調整期間において出力指令値が同じ値で継続する場合、サーバ200は、少なくとも商品要件の継続時間はその指令に従って給電レーンの出力(レーン電力)を継続する。サーバ200は、落札した全てのコマの終了後に、当該コマにおける電力調整の実績データをサーバ700へ送信する。
【0094】
アグリゲータは、上述した市場取引とは別に、電力系統PGに関して同時同量を達成する責任を負う。アグリゲータは、BRP(Balance Responsible Party)に相当する。この実施の形態では、計画値同時同量制度が採用される。アグリゲータは、事前に所定の機関にコマごとの計画値を提出する。この実施の形態では、コマの長さ(単位時間)を30分とする。所定の機関は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)であってもよい。計画値同時同量制度における計画値の変更期限(需給計画値提出期限)はGC(コマの1時間前)であり、GCを過ぎると計画値を変更できなくなる。同時同量のインバランス(計画値との不一致分)は、コマごとに評価される。インバランスを発生させたアグリゲータは、インバランス料金(ペナルティ)を支払う義務を負う。
【0095】
アグリゲータは、サーバ200を用いて、電力系統PGの需給バランス(同時同量)を監視する。図7は、サーバ200によって実行される需給バランスの監視に係る処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定のコマ(監視対象のコマ)の開始時刻に開始されてもよい。
【0096】
図1図2、及び図5とともに図7を参照して、S21では、サーバ200の制御装置250が、アグリゲータ(より特定的には、アグリゲータが管理する各リソース)と電力系統PGとの関係における実需給を取得する。実需給は、電力系統PGから供給を受けてアグリゲータが使用した電力量(電力需要量)と、アグリゲータが電力系統PGへ供給した電力量(電力供給量)との少なくとも一方を含んでもよい。実需給は、たとえばアグリゲータが管理する各リソース(道路R10の給電レーンを含む)においてセンサによって検出される。
【0097】
続くS22では、制御装置250が、監視対象のコマにおいて、電力系統PGの同時同量に関するインバランスが所定の許容範囲を超えたか否かを判断する。インバランスが許容範囲内である間は(S22にてNO)、S21及びS22の処理が繰り返される。そして、インバランスが許容範囲を超えた場合には(S22にてYES)、制御装置250が、S23において、インバランスを解消するための調整力要求を発生させる。
【0098】
同時同量のインバランスは、たとえば、需給計画値と需給実績値との差分に相当する。たとえば需要予測が外れて、需要(消費電力)の実績値が計画値よりも大きくなった場合には、同時同量のインバランスが生じる。また、発電予測(たとえば、太陽光発電又は風力発電によって生成される電力の予測)が外れて、供給(発電電力)の実績値が計画値よりも大きくなった場合にも、同時同量のインバランスが生じる。
【0099】
S23において調整力要求が発生すると、監視対象のコマにおける調整力の提供がサーバ200(アグリゲータ)に要求される。すなわち、監視対象のコマ(30分間)が調整期間になる。サーバ200は、監視対象のコマにおける計画値(kWh)に対するインバランスが十分小さくなるように、道路R10の給電レーンを用いて実需給を調整する。
【0100】
図6のS15又は図7のS23において調整力要求が発生すると、サーバ200は、以下に説明する図8に示す一連の処理を開始する。図8は、この実施の形態に係る電力調整方法を示すフローチャートである。
【0101】
図1図2、及び図5とともに図8を参照して、S51では、サーバ200の制御装置250が、道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)を走行中の車両100の台数(以下、「台数N」と表記する)を取得する。
【0102】
制御装置250は、車両情報DB222で管理される車両情報(たとえば、車両の位置)を用いて、台数Nを検出してもよい。制御装置250は、サーバ500から最新のデータを取得できる。制御装置250は、給電設備300から取得した情報を用いて、台数Nを検出してもよい。たとえば、道路R10の給電レーンに設けられた各給電設備(給電設備300A,300B)が、当該給電設備を通過した車両の車両IDを、当該給電設備の設備IDと一緒にサーバ200へ逐次送信してもよい。
【0103】
制御装置250は、道路R10又は道路R10を走行中の車両100から取得した情報を用いて、台数Nを検出してもよい。たとえば、制御装置250は、道路R10に設けられたセンサ又はカメラ(たとえば、Nシステム又はトラフィックカウンタ)を用いて、台数Nを検出してもよい。あるいは、道路R10の給電レーンの入口付近に設けられた第1通信装置(図示せず)が、新たに給電レーンに進入した車両と無線通信を行なってもよい。第1通信装置は、給電レーンに入ったことを当該車両に通知するとともに、当該車両の車両ID(最後尾車両の車両ID)を受信し、最後尾車両の車両IDをサーバ200へ送信してもよい。また、道路R10の給電レーンの出口付近に設けられた第2通信装置(図示せず)が、給電レーンから退出した車両と無線通信を行なってもよい。第2通信装置は、給電レーンから出たことを当該車両(直前まで先頭車両であった退出車両)に通知するとともに、当該車両から車両ID(退出車両の車両ID)を受信し、退出車両の車両IDをサーバ200へ送信してもよい。また、道路R10の給電レーン上における車両100同士が、V2V通信(車車間通信)によって情報(たとえば、車両ID及び車両位置)のやり取りを行なってもよい。給電レーン上における各車両100の周辺状況を示す情報が各車両100からサーバ200へ送信されてもよい。
【0104】
続くS52では、S51で取得された台数Nが所定数(以下、「Th」と表記する)以上であるか否かを、制御装置250が判断する。Thには、要求される電力調整を道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)が行なうために必要な最低台数(詳しくは、後述するx,yの最低台数を加味した給電レーン車両の最低台数)が設定される。制御装置250は、発生した調整力要求に基づいて、要求される調整力の大きさに応じたThを設定してもよい。制御装置250は、要求される調整力が大きいほどThを大きくしてもよい。なお、図5には、台数Nが10以上である例を示したが、給電レーンに対する車両100の出入り状況に応じて台数Nは時々刻々と変化する。給電レーンの状況によっては台数Nが10未満になることもある。
【0105】
台数NがTh以上である場合には(S52にてYES)、制御装置250は、S53においてレーン電力(電力量計Srで検出される電力)を取得する。続くS54では、制御装置250が、要求調整力(発生した調整力要求によって要求される調整力の大きさ)を用いて、目標調整力を決定する。制御装置250は、電力市場での落札に起因した調整力要求に関しては、たとえば、サーバ700(TSOサーバ)からの指令によって示される要求調整力と、電力量計Srで検出されるレーン電力とに基づいて、目標調整力を決定してもよい。制御装置250は、同時同量のインバランスに起因した調整力要求に関しては、たとえば計画値と実需給とレーン電力とに基づいて目標調整力を決定してもよい。その後、制御装置250は、S55において車両選定を実行する。図9は、車両選定の詳細を示すフローチャートである。
【0106】
図1図2、及び図5とともに図9を参照して、S101では、制御装置250が、台数N(給電レーンを走行中の車両100の台数)と、目標調整力とを用いて除外台数x及びyを決定する。制御装置250は、台数Nが大きいほど除外台数x及びyを大きくする。また、制御装置250は、目標調整力が大きいほど除外台数x及びyを小さくする。台数N及び目標調整力の各々と除外台数x,yとを関連付ける係数を設定し、除外台数x及びyに対する影響度が係数によって調整(重み付け)されてもよい。この実施の形態では、xとyとを同じ数にする。ただしこれに限られず、xとyとは異なる数であってもよい。この実施の形態では、x及びyの各々が所定の最低台数以上に設定される。そして、x及びyの各々の最低台数を1とする。ただしこれに限られず、x及びyの各々の最低台数としては、各々独立して1以上の任意の整数が設定可能であり、2以上の整数が設定されてもよい。
【0107】
続くS102において、制御装置250は、道路R10の給電レーンを走行中の複数の車両100(車群)のうち、先頭からx台目までの車両100と最後尾からy台目までの車両100とを除いて残った車両を選定候補とする。たとえば、x及びyの各々が1であれば、N台の給電レーン車両(V~V)のうち、VとVとを除いて残った車両(V~VN-1)が選定候補となる。また、x及びyの各々が5であれば、N台の給電レーン車両(V~V)のうち、V~VとVN-4~Vとを除いて残った車両(V~VN-5)が選定候補となる。そして、制御装置250は、選定候補の少なくとも一部を調整車両として選ぶ。この実施の形態では、制御装置250が、目標調整力(詳しくは、要求された調整力の大きさに基づいて決定された目標調整力)を用いて、選定候補の中から調整車両を選ぶ。具体的には、制御装置250は、選定候補に含まれる各車両の車両情報(たとえば、バッテリ110の満充電容量、SOC、定格充電電力、及び定格放電電力)に基づき、選定候補から目標調整力(要求調整力)に対応していない車両を除いて残った車両を調整車両とする。ただしこれに限られず、制御装置250は選定候補の全部を調整車両としてもよい。
【0108】
続くS103では、制御装置250が、選ばれた各調整車両のユーザ端末に電力調整の開始を通知する。ユーザ端末は、車両に搭載された端末であってもよいし、車両ユーザによって携帯されるモバイル端末であってもよい。この実施の形態では、N台の給電レーン車両のうち、選ばれた各調整車両に関しては、図3に示した処理は実行されず、後述する図10に示す処理による充放電制御が実行される。他方、調整車両として選ばれなかった給電レーン車両は、図3に示した処理によって道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)から給電を受けることができる。しかしこれに限られず、サーバ200(制御装置250)は、電力系統PGの電力調整のための放電が要求されたときに、道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)を利用した充電を禁止してもよい。
【0109】
S103の処理が実行されると、図9に示す一連の処理は終了し、処理が図8のS56に進む。S56では、制御装置250が電力系統PGの電力調整を実行する。図10は、電力調整の詳細を示すフローチャートである。
【0110】
図1図2、及び図5とともに図10を参照して、S201では、制御装置250が、目標調整力を各調整車両に分配する。たとえば、目標調整力が充電側の調整力である場合(すなわち、電力調整のための充電が要求された場合)には、制御装置250は調整車両ごとの充電電力を決定する。制御装置250は、各調整車両の車両情報(たとえば、バッテリ110のSOC及び定格充電電力)に基づき、調整車両ごとの充電電力を決定してもよい。制御装置250は、定格充電電力が大きい調整車両、及び低SOCの調整車両に対して、大きな充電電力を割り当ててもよい。また、目標調整力が放電側の調整力である場合(すなわち、電力調整のための放電が要求された場合)には、制御装置250は調整車両ごとの放電電力を決定する。調整車両に割り当てられる放電電力は0kW(充電停止)であってもよい。制御装置250は、各調整車両の車両情報(たとえば、バッテリ110のSOC及び定格放電電力)に基づき、調整車両ごとの放電電力を決定してもよい。制御装置250は、定格放電電力が大きい調整車両、及び高SOCの調整車両に対して、大きな放電電力を割り当ててもよい。
【0111】
続くS202では、制御装置250が、S201で決定された調整力(充電電力又は放電電力)に従って各調整車両を動作させるための指令(以下、「調整指令」と称する)を、道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)を走行中の各調整車両と、道路R10の給電レーンに設けられた各給電設備(給電設備300A,300B)との各々へ送信する。給電設備300A,300Bには、調整指令が調整車両の車両IDと一緒に送信される。
【0112】
調整車両と給電設備300(給電設備300A又は300B)との間で行なわれるWPTによる電力調整は、図3に示した処理に準ずる態様で行なわれる。ただし、調整車両は、S240において、サーバ200(制御装置250)からの調整指令に従う充放電制御を実行する。給電設備300は、近距離通信で調整車両から車両IDを受信すると(S310にてYES)、S330において、その車両IDに対応する調整指令に従う充放電制御を実行する。道路R10の給電レーンを走行中の各調整車両が、サーバ200からの調整指令に従う充電制御、放電制御、又は充電停止制御を実行することで、電力系統PGの電力調整が行なわれる。制御装置250は、調整車両におけるバッテリ110の充電電力を増加させる指令(指令A)を調整車両に送ることで、電力系統PGの需要を増加させることができる。また、制御装置250は、調整車両におけるバッテリ110の充電を禁止する指令(指令B)を調整車両に送ることで、電力系統PGの需要増加を抑制できる。また、制御装置250は、調整車両から電力系統PGへのV2G(Vehicle to Grid)を実行させる指令(指令C)を調整車両に送ることで、電力系統PGの供給を増加させることができる。
【0113】
発生した調整力要求によって充電が要求されたときには、制御装置250は、各調整車両に対して、S201で決定された充電電力での充電を実行させる指令を送信する。他方、発生した調整力要求によって放電が要求されたときには、制御装置250は、各調整車両に対して、S201で決定された放電電力での放電又は充電停止を実行させる指令を送信する。これにより、発生した調整力要求に応じてレーン電力が制御される。S202の処理が実行されると、図10に示す一連の処理は終了し、処理が図8のS57に進む。
【0114】
図1図2、及び図5とともに図8を参照して、S57では、発生した調整力要求の調整期間が終了したか否かを、制御装置250が判断する。調整期間内であれば(S57にてNO)、処理がS51に戻り、上述した各ステップ(S51~S56)を経て、道路R10の給電レーンによる電力系統PGの電力調整が実行される。そして、調整期間を経過すると(S57にてYES)、S58の処理が実行された後、図8に示す一連の処理が終了する。S58では、制御装置250が、各調整車両のユーザ端末に電力調整の終了を通知する。ユーザ端末は、車両に搭載された端末であってもよいし、車両ユーザによって携帯されるモバイル端末であってもよい。
【0115】
台数NがThに満たない場合には(S52にてNO)、制御装置250は、要求される電力調整を道路R10の給電レーンによって行なうことはできないと判断する。この場合、処理はS59に進む。S59では、制御装置250が所定の調整中止処理を実行する。図11は、調整中止処理の詳細を示すフローチャートである。
【0116】
図1図2、及び図5とともに図11を参照して、サーバ200は、S301において、アグリゲータが管理する他のリソース(たとえば、定置式の蓄電装置、又は道路R10以外の道路に設けられた給電レーン)の中から、道路R10の給電レーンの代わりに電力調整を実行させるリソース(以下、「代替リソース」とも称する)を決定する。その後、サーバ200は、S302において、代替リソースのユーザ端末に電力調整の開始を通知した後、要求される電力系統PGの電力調整を代替リソースに要請する。これにより、代替リソースによって、要求される電力系統PGの電力調整が実行される。
【0117】
図11のS302の処理が実行されると、処理は図8のフローチャートに戻り、図8に示す一連の処理が終了する。上記のように、サーバ200(制御装置250)は、道路R10の給電レーンを走行中の車両の台数が所定数よりも多い場合には(S52にてYES)車両選定(S55)を実行し、道路R10の給電レーンを走行中の車両の台数が所定数よりも少ない場合には(S52にてNO)上記車両選定を実行しないように構成される。図8に示す処理では、台数NがThと一致する場合に、処理がS53に進むが、処理がS59に進むように変更してもよい。
【0118】
以上説明した構成を有する給電システム(図1図11参照)によれば、給電レーンが外部電源(電力系統PG)に対して安定した調整力を提供しやすくなるように、給電レーンを走行中の車群の中から調整車両(外部電源の電力調整のための車両)を選ぶことが可能になる。また、この実施の形態に係る電力調整方法は、図6図11の各々に示した処理を含む。図9のS101では、サーバ200がx及びyを決定する。図9のS102では、サーバ200が、電力系統PGから電力の供給を受ける給電設備が設けられた走行レーン(走行レーンR1,R2)を走行中の車群のうち、先頭からx台目までの車両と最後尾からy台目までの車両とを除いて残った車両を選定候補として、選定候補の少なくとも一部を、電力系統PGの電力調整のための調整車両として選ぶ。図8のS56(図10に示した処理)では、サーバ200が、外部電源(電力系統PG)の電力調整のために調整車両を動作させる。こうした方法によっても、給電レーンが外部電源(電力系統PG)に対して安定した調整力を提供しやすくなる。
【0119】
上記実施の形態では、サーバ200が、調整期間においてx及びyの各々の更新と車両選定とを繰り返し実行する(図8参照)。しかしこれに限られず、サーバ200は、調整期間における所定タイミングのみにx及びyの各々の更新を実行してもよい。また、上記実施の形態では、台数N(給電レーンを走行中の車両100の台数)及び目標調整力に合わせて除外台数x及びyを変動させている(図9のS101参照)。このため、選定候補の台数も除外台数x及びyに応じて変動する。しかし、こうした形態に限られず、サーバ200は、選定候補の台数が一定になるように除外台数x及びyを決定してもよい。たとえば、制御装置250は、通常モード(非定数モード)と定数モードとを切替え可能に構成されてもよい。動作モードの切替え(非定数モード/定数モードの切替え)は、ユーザからの指示に応じて行なわれてもよい。
【0120】
図12は、図9に示した処理の第1変形例を示すフローチャートである。サーバ200の制御装置250は、図8のS55において、図9に示した処理に代えて、以下に説明する図12に示す処理を実行してもよい。
【0121】
図1図2、及び図5とともに図12を参照して、S501では、動作モードが定数モードであるか否かを、制御装置250が判断する。動作モードが非定数モードである場合には(S501にてNO)、制御装置250は、S506、S507、S508において、それぞれ図9のS101、S102、S103と同様の処理を実行する。
【0122】
他方、動作モードが定数モードである場合には(S501にてYES)、制御装置250は、S502において、道路R10の給電レーンから先頭の車両100が退出したか否かを判断する。たとえば、前回の処理ルーチンで給電レーンの先頭を走行していた車両100(以下、「前回の先頭車両」とも称する)が、今回の処理ルーチンにおいてすでに給電レーンの出口を過ぎている場合には、S502においてYESと判断される。他方、前回の先頭車両が、今回の処理ルーチンにおいてもまだ給電レーンを走行している場合には、S502においてNOと判断される。
【0123】
S502においてYESと判断された場合には、制御装置250は、S503において、給電レーンから退出した台数と同じ数だけ除外台数xを減らす。給電レーンから退出した台数は、前回の処理ルーチンの状態を基準にしてカウントする。その後、制御装置250は、処理をS504に進める。他方、S502においてNOと判断された場合には、制御装置250は、除外台数xを変更することなく、処理をS504に進める。これにより、前回の処理ルーチンにおける除外台数xが維持される。
【0124】
S504では、制御装置250が、道路R10の給電レーンに新たな車両100が進入したか否かを判断する。この判断も、前回の処理ルーチンの状態を基準にして行なわれる。給電レーンに新たな車両100が進入した場合には(S504にてYES)、制御装置250は、S505において、給電レーンに進入した台数と同じ数だけ除外台数yを増やす。給電レーンに進入した台数は、前回の処理ルーチンの状態を基準にしてカウントする。その後、制御装置250は、S507及びS508において、図9のS102及びS103に準ずる処理を実行する。他方、給電レーンに新たな車両100が進入していない場合には(S504にてNO)、制御装置250は、除外台数yを変更することなく、S507及びS508の処理を実行する。これにより、前回の処理ルーチンにおける除外台数yが維持される。
【0125】
上記第1変形例に係るサーバ200は、定数モードにおいて、選定候補の台数が一定になるように、給電レーンから先頭の車両100が退出したときにxを減らし、給電レーンに新たな車両100が進入したときにyを増やす。こうした定数モードによれば、選定候補として一定数の車両100が確保されるため、給電レーンが安定した調整力を提供しやすくなる。また、選定候補の数が変動しないことで、サーバ200が車両選定及び車両制御を行ないやすくなる。
【0126】
また、上記第1変形例に係るサーバ200は、定数モードにおいて、退出タイミング(給電レーンから先頭車両が退出したタイミング)と、進入タイミング(給電レーンに新たな車両が進入したタイミング)とに限定して、x及びyの各々の更新を実行する。更新処理のタイミングが限定されることで、サーバ200の処理負荷は軽減される。
【0127】
サーバ200は、電力系統PG(外部電源)の電力調整が要求されたときに、要求された電力調整の種類を用いて、x及びyの少なくとも一方を決定するように構成されてもよい。たとえば、サーバ200の制御装置250は、図8のS55において、図9に示した処理に代えて、以下に説明する図13に示す処理を実行してもよい。図13は、図9に示した処理の第2変形例を示すフローチャートである。図13に示す処理は、S101(図9)の代わりにS101Aが採用されたこと以外は、図9に示した処理と同じである。
【0128】
図1図2、及び図5とともに図13を参照して、S101Aでは、制御装置250が、要求された電力調整の種類を用いて除外台数x及びyを決定する。具体的には、制御装置250は、安定した調整力(たとえば、三次調整力-1、三次調整力-2、又は電源I’)が要求される場合には、早期応動の調整力(たとえば、一次調整力又は二次調整力-1)が要求される場合よりも除外台数x及びyを大きくする。制御装置250は、電力市場での落札に起因した調整力要求に関しては、商品要件に基づいて除外台数x及びyを決定してもよい。制御装置250は、商品要件の継続時間が所定時間よりも長い場合に安定した調整力が要求されたと判断し、商品要件の応動時間が所定時間よりも短い場合に早期応動が要求されたと判断してもよい。また、制御装置250は、同時同量のインバランスに起因して調整力要求が発生した場合に、早期応動が要求されたと判断してもよい。
【0129】
上記第2変形例に係るサーバ200によれば、道路R10の給電レーンが、要求に応じた調整力を電力系統PG(外部電源)に提供しやすくなる。図13のS101Aにおいて、xとyとは同じ数に決定されてもよい。ただしこれに限られず、xとyとは、異なる数に決定されてもよく、異なる基準で決定されてもよい。
【0130】
サーバ200は、給電レーンに対する車両の出入り状況に基づいてx及びyの少なくとも一方を決定するように構成されてもよい。たとえば、サーバ200の制御装置250は、図8のS55において、図9に示した処理に代えて、以下に説明する図14に示す処理を実行してもよい。図14は、図9に示した処理の第3変形例を示すフローチャートである。図14に示す処理は、S101(図9)の代わりにS101Bが採用されたこと以外は、図9に示した処理と同じである。
【0131】
図1図2、及び図5とともに図14を参照して、S101Bでは、制御装置250が、道路R10の給電レーン(走行レーンR1,R2)に対する車両100の出入り状況に基づいて除外台数x及びyを決定する。具体的には、制御装置250は、道路R10の給電レーンに対する単位時間あたりの車両100の出入り台数を用いて、除外台数x及びyを決定する。
【0132】
制御装置250は、道路R10の給電レーンにおける単位時間あたりの車両100の退出台数が多くなるほど除外台数xを大きくしてもよい。退出台数は、給電レーンの出口付近に設けられたセンサ又はカメラで計測されてもよい。あるいは、制御装置250は、給電レーンの出口付近に存在する車両100の車速に基づいて除外台数xを決定してもよい。制御装置250は、給電レーンの出口付近に存在する車両100の車速が低い場合に、出口付近で渋滞が発生していると判断して、道路R10の給電レーンにおける単位時間あたりの車両100の退出台数が多くなると推定してもよい。
【0133】
制御装置250は、道路R10の給電レーンにおける単位時間あたりの車両100の進入台数が多くなるほど除外台数yを大きくしてもよい。進入台数は、給電レーンの入口付近に設けられたセンサ又はカメラで計測されてもよい。あるいは、制御装置250は、給電レーンの入口付近に存在する車両100の車速に基づいて除外台数yを決定してもよい。制御装置250は、給電レーンの入口付近に存在する車両100の車速が低い場合に、入口付近で渋滞が発生していると判断して、道路R10の給電レーンにおける単位時間あたりの車両100の進入台数が多くなると推定してもよい。
【0134】
上記第3変形例に係るサーバ200によれば、道路R10の給電レーンが、安定した調整力を電力系統PG(外部電源)に提供しやすくなる。
【0135】
車両管理装置1000によって管理される車群VGに、契約によって電力調整に協力することが約束された車両(VPP契約車)と、それ以外の車両(非VPP契約車)とが含まれる形態においては、後者の非VPP契約車を、図6図14に示した処理における処理対象から除外してもよい。
【0136】
上記実施の形態における車両100(図2)は、走行中の道路R10の走行レーンからの電力で充電可能に構成される蓄電装置を備える。車両管理装置1000によって管理される車群VGに、走行中の道路R10の走行レーンからの電力で充電可能に構成される蓄電装置を備えない車両(非充電車)が含まれる形態においては、車両管理装置1000は、電力系統PG(外部電源)の電力調整のための充電が要求されたときに、こうした非充電車を、図8図14に示した処理における処理対象から除外してもよい。
【0137】
上記実施の形態における車両100(図2)は、走行中の道路R10の走行レーンを介して電力系統PGへ放電可能に構成される蓄電装置を備える。車両管理装置1000によって管理される車群VGに、走行中の道路R10の走行レーンを介して電力系統PGへ放電可能に構成される蓄電装置を備えない車両(非V2G車)が含まれる形態においては、車両管理装置1000は、電力系統PGの電力調整のための放電が要求されたときに、こうした非V2G車を、図8図14に示した処理における処理対象から除外してもよい。
【0138】
給電システムが適用される道路は、図5に示した道路R10に限られない。給電システムが適用される道路は、一般道であってもよいし、高速道路であってもよい。道路R10の給電レーンの入口に、所定の車両(たとえば、管理車両、又は給電レーンに設けられた給電設備を予約した車両)のみが通過可能なゲートが設けられてもよい。給電レーン(道路において給電設備が設置された領域)の長さは任意であり、たとえば5km以上100km以下であってもよいし、数kmであってもよい。図5に示した道路R10では、給電レーンの数が2車線であり、無給電レーンの数が1車線であるが、給電レーンよりも多い車線の無給電レーンが設けられてもよい。1車線の給電レーンもしくは3車線以上の給電レーンを有する道路、又は無給電レーンを有しない道路に、上述した給電システムが適用されてもよい。
【0139】
システムの構成は、図1に示した構成に限られない。サーバ700とサーバ200との間に他のサーバ(たとえば、上位アグリゲータのサーバ)が設けられてもよい。上記実施の形態では、サーバ200及び500の各々としてオンプレミスサーバが採用されている(図1参照)。しかしこれに限られず、クラウドコンピューティングによってクラウド上にサーバ200及び500の機能(特に、車両管理に係る機能)が実装されてもよい。また、サーバ500の少なくとも一部の機能は、サーバ200に実装されてもよい。
【0140】
管理車両の構成は、上記実施の形態で説明した構成(図2参照)に限られない。車群VGは、異なる構成を有する複数種の管理車両を含んでもよい。管理車両の構成は、有人走行専用の構成、又は無人走行専用の構成に適宜変更されてもよい。たとえば、無人走行専用の車両は、人が車両を操作するための部品(ステアリングホイールなど)を備えなくてもよい。管理車両の構成は、必ずしも自動運転機能を具備する構成に限定されない。
【0141】
BEV以外のxEVが管理車両として採用されてもよい。走行中充電及び/又は走行中放電を可能に構成されるxEV(ハイブリッド車、燃料電池車、レンジエクステンダーEVなど)が、管理車両として採用されてもよい。管理車両は、水素エンジン及び蓄電装置を備えるハイブリッド車であってもよい。管理車両は、ソーラーパネルを備えてもよいし、飛行機能を備えてもよい。管理車両は、乗用車に限られず、バス又はトラックであってもよい。管理車両は、個人が所有する車両(POV)であってもよいし、MaaS(Mobility as a Service)車両であってもよい。MaaS車両は、MaaS事業者が管理する車両である。管理車両は、ユーザの使用目的に応じてカスタマイズされる多目的車両であってもよい。管理車両は、移動店舗車両、ロボタクシー、無人搬送車(AGV)、又は農業機械であってもよい。管理車両は、無人又は1人乗りの小型BEV(たとえば、マイクロパレット又は電動スケータ)であってもよい。
【0142】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
100 車両、110 バッテリ、150 ECU、160 受電コイル、165 充放電器、200,500,700 サーバ、250 制御装置、300,300A,300B 給電設備、310 給電回路、320 送電コイル、330 電力変換回路、1000 車両管理装置、PG 電力系統、R1,R2,R3 走行レーン、R10 道路、Sr 電力量計。
図1
図2
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