(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両の自動減速制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240717BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20240717BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240717BHJP
B60W 50/12 20120101ALI20240717BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/08
B60W40/06
B60W50/12
(21)【出願番号】P 2022004379
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190048(JP,A)
【文献】特開2021-165070(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008649(WO,A1)
【文献】特開2018-020692(JP,A)
【文献】特開2019-123327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00- 1/16
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の状態を検出する運転者状態検出装置と、前記運転者状態検出装置により運転者が運転に不適合な状態であることが検出されると、制動装置を制御することにより所定の減速度にて車両を自動的に減速し停止させるよう構成された制御ユニットと、を含む車両の自動減速制御装置において、
前記制御ユニットは、前記車両が走行している道路が自動車専用道路であるか否かを判定し、道路が自動車専用道路であると判定したときには、前記所定の減速度を第一の減速度に設定し、道路が自動車専用道路ではないと判定したときには、前記所定の減速度
を第二の減速度に設定するよう構成さ
れ、
更に、前記第一の減速度にて前記車両を自動的に減速するときには、減速開始後にハザードランプの点滅を開始させ、前記第二の減速度にて前記車両を自動的に減速するときには、減速開始以前にハザードランプの点滅を開始させるよう構成された、
車両の自動減速制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の自動減速制御装置において、前記制御ユニットは、第一の減速度を最小値から最大値まで増大させるよう構成され、前記第二の減速度は前記最大値よりも大きい、車両の自動減速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の自動減速制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の運転支援装置の一つとして、車両を減速して停止させる必要があると判定されると、制動装置を制御することにより、運転者の制動操作を要することなく車両を自動的に減速して停止させる自動減速制御装置が知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、運転者が運転不能な異常状態にあると判定されると、車両が車線内を走行するように操舵支援を行いつつ、車両を自動的に減速して停止させるよう構成された自動減速制御装置が記載されている。
【0004】
上記公開公報に記載された自動減速制御装置のような自動減速制御装置によれば、運転者が運転不能な異常状態になると、車両が車線内を走行するように操舵支援が行われながら、車両が自動的に減速されて停止される。よって、運転者が運転できない状態で車両の走行が継続することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
〔発明が解決しようとする課題〕
一般に、上記公開公報に記載された自動減速制御装置のような従来の自動減速制御装置は、車両が自動車専用道路を走行している状況において車両を自動的に減速して停止させるよう構成されている。車両を自動的に減速させるための減速度は、運転者が運転できる状態に回復し、運転に復帰することに対応できるよう、比較的穏やかな減速度に設定されている。
【0007】
車両が自動車専用道路以外の道路(「一般道」という)を走行している状況においても、運転者が運転不能な異常状態になることがある。従って、車両が一般道を走行している状況において、運転者が運転不能な異常状態になった場合にも、自動減速制御装置により車両が自動的に減速され停止されることが好ましい。
【0008】
しかし、一般道においては、複数の車両が互いに接近して走行することが多く、交差点や踏切のような車両を停止させることができない場所があるので、一般道は自動車専用道路に比して車両の走行環境が複雑である。そのため、車両が比較的穏やかな減速度にて自動的に減速される場合には、車両が複雑な走行環境において走行する状況にて操舵支援をしつつ車両を減速しなければならず、周囲に悪影響を及ぼすことなく停車可能な場所に車両を停止させることが困難である。
【0009】
逆に、自動減速の減速度が一般道での自動減速に適した比較的高い減速度に設定されると、車両が自動車専用道路を走行する状況における自動減速の減速度が過剰になる。そのため、後続車などに与える減速の影響が大きくなり、運転者が運転できる状態に回復した際に運転に復帰するための対応を取り難くなる.
【0010】
本発明は、車両が自動車専用道路及び一般道の何れを走行している場合にも、運転者が運転不能な異常状態になったときに、従来に比して安全に車両を減速し停止させることができるよう改良された自動減速制御装置を提供する。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
【0011】
本発明によれば、運転者の状態を検出する運転者状態検出装置(運転者撮影カメラセンサ16)と、運転者状態検出装置により運転者が運転に不適合な状態であることが検出されると(S10)、制動装置(32)を制御することにより所定の減速度にて車両を自動的に減速し停止させる(S40、S80)よう構成された制御ユニット(運転支援ECU10)と、を含む車両の自動減速制御装置(100)が提供される。
【0012】
制御ユニットは、車両(102)が走行している道路が自動車専用道路であるか否かを判定し(S20)、道路が自動車専用道路であると判定したときには、所定の減速度を第一の減速度に設定し(S40)、道路が自動車専用道路ではないと判定したときには、所定の減速度を第二の減速度に設定する(S80)よう構成され、
更に、第一の減速度にて車両を自動的に減速するときには、減速開始後にハザードランプの点滅を開始させ(S40)、第二の減速度にて車両を自動的に減速するときには、減速開始以前にハザードランプの点滅を開始させる(S80)よう構成される。
【0013】
上記の構成によれば、運転者が運転に不適合な状態であることが検出されると、制動装置が制御されることにより所定の減速度にて車両が自動的に減速され停止される。車両が走行している道路が自動車専用道路であるか否かが判定され、道路が自動車専用道路であると判定されたときには、所定の減速度が第一の減速度に設定され、道路が自動車専用道路ではないと判定されたときには、所定の減速度が第二の減速度に設定される。
【0014】
よって、道路が自動車専用道路であるときの所定の減速度を過剰に高くすることなく、道路が自動車専用道路以外の一般道であるときの所定の減速度を第二の減速度に設定することができる。従って、車両が自動車専用道路及び一般道の何れを走行している場合にも、運転者が運転不能な異常状態になったときに、従来に比して安全に車両を減速し停止させることができる。
車両が自動車専用道路を走行するときの車速は、車両が一般道を走行するときの車速よりも高いので、車両が自動車専用道路を走行するときには、車速が低下し車両が停止するまでの時間及び走行距離が長い。上記態様によれば、第一の減速度にて車両を自動的に減速するときには、減速開始後にハザードランプの点滅が開始される。よって、車両が自動車専用道路を走行するときの車速の変動範囲内において、過剰に早くハザードランプの点滅が開始することを回避することができる。
これに対し、の車速は、車両が自動車専用道路を走行するときの車速よりも低いが、一般道においては複数の車両が接近して走行することが多い。よって、車両が一般道を走行する状況において、車両が自動的に減速される場合には、ハザードランプの点滅が早期に開始されることが好ましい。
上記態様によれば、第二の減速度にて車両を自動的に減速するときには、減速開始以前に、即ち減速開始時又はそれよりも前に、ハザードランプの点滅が開始される。従って、車両が一般道を走行するときには、減速開始以前に車両が減速することの注意喚起を遅滞なく車両の周囲に与えることができる。
【0015】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、制御ユニット(運転支援ECU10)は、第一の減速度を最小値から最大値まで増大させる(S40)よう構成され、第二の減速度は最大値よりも大きい(S80)。
【0016】
上記態様によれば、第一の減速度は最小値から最大値まで増大されるので、道路が自動車専用道路であるときの自動減速の初期の減速度を過剰に高くすることなく、自動減速の開始から車両が停止するまでの車両の走行距離が過剰に長くなることを回避することができる。また、第二の減速度は最大値よりも大きいので、道路が一般道であるときの所定の減速度を第一の減速度よりも高い減速度に設定することができる。
【0021】
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いられる名称及び/又は符号が括弧書きで添えられている。しかし、本発明の各構成要素は、括弧書きで添えられた名称及び/又は符号に対応する実施形態の構成要素に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態にかかる自動減速制御装置を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態における自動減速制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図3】自動車専用道路における自動減速制御の具体例を示す図である。
【
図4】一般道における自動減速制御の具体例を示す図である。
【
図5】修正例における自動減速制御ルーチンの要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる自動減速制御装置について詳細に説明する。
【0024】
<構成>
図1に示されているように、本発明の実施形態にかかる自動減速制御装置100は、車両102に適用され、運転支援ECU10を含んでいる。車両102は、駆動ECU20、制動ECU30、電動パワーステアリングECU40及びメータECU50を備えている。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。なお、以下の説明においては、電動パワーステアリングECUはEPS・ECUと呼称される。
【0025】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)104を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0026】
運転支援ECU10は、追従車間距離制御、車線維持制御などの運転支援制御を行う中枢の制御装置である。実施形態においては、運転支援ECU10は、後に詳細に説明するように、運転者が運転に不適合な状態になると、車両102を自動制動により減速し停止させる自動減速制御を実行する。
【0027】
運転支援ECU10には、車外撮影カメラセンサ12、レーダセンサ14及び運転者撮影カメラセンサ16が接続されている。カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、それぞれ複数のカメラ装置及び複数のレーダ装置を含んでいる。カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、車両102の周囲の物標などの情報を検出する周囲情報検出装置18として機能する。
【0028】
車外撮影カメラセンサ12の各カメラ装置は、図には示されていないが、車両102の周囲を撮影するカメラ部と、カメラ部によって撮影して得られた画像データを解析して道路の白線、他車両などの物標を認識する認識部とを備えている。認識部は、認識した物標に関する情報を所定時間の経過毎に運転支援ECU10に供給する。なお、カメラセンサ12に代えて、LiDAR(Light Detection And Ranging)が使用されてもよい。
【0029】
レーダセンサ14の各レーダ装置は、レーダ送受信部及び信号処理部(図示せず)を備えており、レーダ送受信部が、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する)を放射し、放射範囲内に存在する立体物(例えば、他車両、自転車、ガードレールなど)によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。信号処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間などに基づいて、自車両と立体物との距離、自車両と立体物との相対速度、自車両に対する立体物の相対位置(方向)などを表す情報を所定時間の経過毎に取得して運転支援ECU10に供給する。
【0030】
運転者撮影カメラセンサ16は、
図1には示されていないダッシュボードあるいはステアリングコラムに設けられ、運転者の上半身を撮影するカメラ部と、カメラ部によって撮影して得られた運転者の上半身の画像データを処理する画像処理部とを備えている。画像処理部は、運転者の上半身の画像データの情報を所定の時間毎に運転支援ECU10に供給する。よって、運転者撮影カメラセンサ16は、運転者モニタカメラとして機能する。
【0031】
運転支援ECU10のCPUは、運転者の上半身の画像データの情報に基づいて、運転者の姿勢、運転者の顔の向き、視線の方向、運転者の毎分の閉眼率、眼の開眼の状況、まばたきの頻度、又は眼球運動などから運転者の運転適合度Rdを演算する。
【0032】
運転適合度Rdは、運転者が安全に運転することに適した状況にあるか否かを示す度合であり、運転適合度Rdが基準値Rdc(正の定数)未満であるときには、運転者が安全に運転することができない異常な状況にあると判定される。運転適合度Rdは、上記各項目に評価値を設定し、それらの評価値の和として演算されてよい。また、運転適合度の演算に際しては、後述の操舵トルクセンサにより検出される操舵トルク、運転者のステアリングホイールのグリップ圧、アームレストへの押圧力、心拍数、筋電の情報及び脳波パターンの少なくとも何れかが考慮されてもよい。
【0033】
駆動ECU20には、
図1には示されていない駆動輪に駆動力を付与することにより車両102を加速させる駆動装置22が接続されている。駆動ECU20は、通常時には、駆動装置22により発生される駆動力が運転者による駆動操作に応じて変化するよう、駆動装置を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて駆動装置22を制御する。
【0034】
実施形態においては、駆動装置22は、
図1には詳細に示されていないが、ガソリンエンジンのような内燃機関及び自動変速機のような変速機を含んでいる。なお、駆動装置22は、内燃機関及び変速機の組合せに限定されない。即ち、駆動装置22は、車両102を駆動する駆動力を発生する限り、内燃機関及び無段変速機の組合せ、内燃機関及びモータの組合せである所謂ハイブリッドシステム、所謂プラグインハイブリッドシステム、燃料電池及びモータの組合せ、モータのように、当技術分野において公知の任意の駆動装置であってよい。
【0035】
制動ECU30には、
図1には示されていない車輪に制動力を付与することにより車両102を制動により減速させる制動装置32が接続されている。制動ECU30は、通常時には、制動装置32により発生される制動力が運転者による制動操作に応じて変化するよう、制動装置を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて制動装置32を制御することにより自動制動を行う。なお、車輪に制動力が付与されているときには、
図1には示されていないブレーキランプが点灯される。
【0036】
更に、実施形態の制動装置32は、電動パーキングブレーキアクチュエータを含んでおり、電動パーキングブレーキはEPB(Electric Parking Brake)と略称される。
図1には示されていないが、EPBアクチュエータは、制動力発生装置を作動させることにより電動パーキングブレーキを作動させる。パーキングブレーキが作動されると、車輪がロックされる。
【0037】
EPS・ECU40には、EPS装置42が接続されている。EPS・ECU40は、後述の運転操作センサ60及び車両状態センサ70により検出された操舵トルクTs及び車速Vに基づいて、当技術分野において公知の要領にてEPS装置42を制御することにより、操舵アシストトルクを制御し、運転者の操舵負担を軽減する。また、EPS・ECU40は、EPS装置42を制御することにより、必要に応じて転舵輪を転舵することができる。よって、EPS・ECU40及びEPS装置42は、必要に応じて転舵輪を自動的に転舵する転舵装置として機能する。
【0038】
メータECU50には、運転支援ECU10による制御の状況などを表示する表示器52、警報音を鳴動するブザー54及び周囲に異常が発生したことを報知するハザードランプ56が接続されている。表示器52は、例えばヘッドアップディスプレイ或いはメータ類及び各種の情報が表示されるマルチインフォーメーションディスプレイであってよく、ナビゲーション装置のディスプレイであってもよい。
【0039】
運転操作センサ60及び車両状態センサ70は、CAN104に接続されている。運転操作センサ60及び車両状態センサ70によって検出された情報(センサ情報と呼ぶ)は、CAN104に送信される。CAN104に送信されたセンサ情報は、各ECUにおいて適宜に利用可能である。なお、センサ情報は、特定のECUに接続されたセンサの情報であって、その特定のECUからCAN104に送信されてもよい。
【0040】
運転操作センサ60は、アクセルペダルの操作量を検出する駆動操作量センサ、マスタシリンダ圧力又はブレーキペダルに対する踏力を検出する制動操作量センサ、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチを含んでいる。更に、運転操作センサ60は、操舵角θを検出する操舵角センサ、操舵トルクTsを検出する操舵トルクセンサ、シフトレバーのシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ、運転支援スイッチなどを含んでいる。
【0041】
なお、実施形態においては、駆動ECU20は、シフトポジションセンサにより検出されるシフトポジションに基づいて、また運転支援ECU10からの指令に基づいて、シフトバイワイヤ式に変速機のシフトレンジを制御する。また、運転支援ECU10は、
図1には示されていない運転支援スイッチがオンであるときに、運転者が異常時の自動減速制御、車線逸脱防止制御などの運転支援制御を実行する。なお、運転支援スイッチは中止スイッチを含み、自動減速が実行されている状況において、中止スイッチが押されると、自動減速が中止される。
【0042】
車線逸脱防止制御は、周囲情報検出装置18により検出された車線及び車線に対する車両102の位置関係に基づいて、車両102が車線から逸脱する虞があると判定されると、車両が車線から逸脱しないよう、当技術分野において公知の要領にて実行される。例えば、運転支援ECU10は、車両102が車線から逸脱しないように、EPS・ECU40を介してEPS装置42を制御することにより、運転者の操舵操作を要することなく転舵輪を自動的に転舵する。
【0043】
車両状態センサ70は、車両102の車速Vを検出する車速センサ、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ、車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサ、及び車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサなどを含んでいる。
【0044】
CAN104には、ナビゲーション装置80が接続されている。ナビゲーション装置80は、車両102の位置を検出するGPS受信機と、地図情報及び道路情報を記憶する記憶装置と、地図情報及び道路情報の最新情報を外部から取得する通信装置とを備えている。道路情報には、道路の種類の情報、即ち高速道路のような自動車専用道路、一般道路などの情報が含まれている。ナビゲーション装置80は、地図上における車両の位置及び進行方向などの情報に加えて、車両102が走行している道路の種類に関する情報も運転支援ECU10に出力する。
【0045】
実施形態においては、運転支援ECU10のROMは、
図2に示されたフローチャートに対応する自動減速制御のプログラムを記憶しており、運転支援ECU10のCPUは、該プログラムに従って自動減速制御を実行する。
【0046】
<実施形態における自動減速制御ルーチン>
次に、
図2に示されたフローチャートを参照して実施形態における自動減速制御ルーチンについて説明する。
図2に示されたフローチャートによる自動減速制御は、
図1には示されていないイグニッションスイッチがオンであるときに運転支援ECU10のCPUにより実行される。
【0047】
まず、ステップS10においては、CPUは、運転者撮影カメラセンサ16により取得された運転者の上半身の画像データの情報に基づいて、運転者の運転適合度Rdを演算する。更に、CPUは、運転適合度Rdが基準値Rdc未満であるとの判定が連続して基準回数(正の一定の整数)以上行われたか否かの判定により、運転者が安全に運転することができない異常な状況にあるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、自動減速制御をステップS30へ進め、否定判定をしたときには、自動減速制御をステップS20へ進める。
【0048】
ステップS20においては、CPUは、自動減速制御以外の運転支援制御、例えば車線逸脱防止制御を実行する。
【0049】
ステップS30においては、CPUは、ナビゲーション装置80からの情報に基づいて、車両102が現在走行している道路が自動車専用道路であるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、即ち道路が一般道であると判定したときには、自動減速制御をステップS50へ進め、肯定判定をしたときには、自動減速制御をステップS40へ進める。
【0050】
道路が自動車専用道路であるか否かの判定及び後述のステップS30における交差点の有無の判定に際し、車外撮影カメラセンサ12の検出結果及び/又はレーダセンサ14の検出結果が使用されてもよい。更には、ナビゲーション装置80からの情報及び車外撮影カメラセンサ12の検出結果及び/又はレーダセンサ14の検出結果の組合せが使用されてもよい。
【0051】
ステップS40においては、CPUは、予め設定された自動車専用道路における減速パターンにて車両102が停止するまで車両が自動的に減速するよう、制動ECU30へ減速指令を出力する。なお、自動車専用道路における減速パターンについては、後に
図3を参照して具体例について説明する。
【0052】
ステップS50においては、CPUは、ナビゲーション装置80からの情報に基づいて、車両102の前方に交差点があるか否かを判定する。更に、CPUは、一般道における減速パターンにて車両102を減速させると、車両が交差点内にて停止する虞があるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、自動減速をステップS70へ進め、肯定判定をしたときには、自動減速制御をステップS60へ進める。
【0053】
ステップS60においては、CPUは、車両102が交差点の手前又は交差点を過ぎた位置において停止するよう、減速パターンを変更し、変更後の減速パターンにて車両102が減速するようよう、制動ECU30へ減速指令を出力する。
【0054】
ステップS70においては、CPUは、車両102の後方に後続車があるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、自動減速制御をステップS90へ進め、否定判定をしたときには、即ち車両102の後方に後続車が存在しないと判定したときには、自動減速制御をステップS80へ進める。
【0055】
ステップS80においては、CPUは、車両102が一般道における減速パターンにて減速するようよう、制動ECU30へ減速指令を出力する。なお、一般道における減速パターンについては、後に
図4を参照して具体例について説明する。
【0056】
ステップS90においては、CPUは、後続車が車両102に追突したりしないよう、減速パターンを変更し、変更後の減速パターンにて車両102が減速するようよう、制動ECU30へ減速指令を出力する。
【0057】
ステップS100においては、CPUは、運転者により自動減速制御に凌駕するオーバーライド操作が行われたか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、自動減速制御をステップS30へ戻し、肯定判定をしたときには、即ち運転者が車両の運転に適合する状態になったと判定したときには、ステップS110において、自動減速制御を解除する。なお、オーバーライド操作は、例えば制駆動操作、操舵操作、各種のスイッチなどの操作の何れかであってよい。
【0058】
<自動車専用道路における減速パターンの具体例>
次に、
図3を参照して、自動車専用道路における減速パターンの具体例を説明する。なお、
図3に示された減速パターンは例示の減速パターンであり、自動車専用道路における減速パターンは、
図3に示された減速パターンに限定されない。
【0059】
図3に示されているように、車両102が例えば120km/hの車速Vsにて自動車専用道路106を走行しているとする。また、時点t11において、運転者が異常な状態になり、時点t12において、運転者が異常な状態であると判定され(S10)、道路が自動車専用道路であると判定された(S30)とする。
【0060】
時点t12において、表示器52に「ハンドルを操作してください。」のような手放しについての警告の表示が開始される。時点t12から時間Δt13(正の定数)が経過した時点t13において、表示器52の表示が「運転操作がありません。ハンドルを保持してください。」のような警告に変更されると共に、「ピッピッ」のようにブザー54の鳴動が開始される。
【0061】
時点t13から時間Δt14(正の定数)が経過した時点t14において、gを週力加速度として、第一の減速度Gb1が例えば0.05gの第一段階の減速度Gb11(最小値)に設定されて自動減速が開始される。また、表示器52の表示が「ハンドルを保持してください自動減速が開始します。」のような警告に変更されると共に、「ピッピッピッピッ」のようにブザー54の鳴動が変更される。
【0062】
時点t14における車速Vsから変化量ΔVs15(正の定数)だけ車速が低下した時点t15において、第一の減速度Gb1が例えば0.07gの第二段階の減速度Gb12(中間値)に増大される。また、ハザードランプ56の点滅が開始される。
【0063】
時点t14から時間Δt16(正の定数)が経過した時点t16において、第一の減速度Gb1が例えば0.1gの第三段階の減速度Gb13(最大値)に増大される。また、表示器52の表示が「停車支援中。中止するには中止スイッチを押す。」のような警告に変更されると共に、「ピー」のようにブザー54の鳴動が連続音に変更される。更に、
図1には示されていないブレーキランプの点灯が開始される。
【0064】
なお、第一乃至第三の減速度Gb1~Gb13は、それぞれ予め設定された定数であってよいが、第一乃至第三の減速度Gb1~Gb13の少なくとも一つは、自動減速開始時の車速Vsが高いほど大きくなるよう、車速Vsに応じて可変設定されてもよい。
【0065】
時点t17において、車両102が停止したとすると、表示器52の表示が「停車支援継続中。中止するには中止スイッチを押す。」のような警告に変更されると共に、ブレーキランプが消灯される。更に、駆動ECU20に指令信号が出力されることにより、変速機のシフトレンジがPレンジに切り替えられ、制動ECU30に指令信号が出力されることにより、電動パーキングブレーキが作動される。
【0066】
なお、車線逸脱防止制御は、時点t11以降も継続されるが、時点t17において、終了される。また、車両102が車外の施設と無線通信可能である場合には、時点t17において、無線通信により救援要請の発信が開始されてよい。
【0067】
<一般道における減速パターンの具体例>
次に、
図4を参照して、一般道における減速パターンの具体例を説明する。なお、
図4に示された減速パターンは例示の減速パターンであり、一般道における減速パターンは、
図4に示された減速パターンに限定されない。
【0068】
図4に示されているように、車両102が例えば60km/hの車速Vnにて一般道108を走行しているとする。また、時点t21において、運転者が異常な状態になり、時点t22において、運転者が異常な状態であると判定され(S10)、道路が一般道であると判定された(S30)とする。
【0069】
時点t22において、表示器52に「運転操作がありません。ハンドルを保持してください。」のような警告の表示が開始されると共に、「ピッピッ」のようにブザー54の鳴動が開始される。また、時点t22、又は時点t22から時間Δt23(正の定数)が経過する時点t23までの間、又は時点t23において、ハザードランプ56の点滅が開始される。
【0070】
時点t23において、第二の減速度Gb2が例えば0.25gの減速度に設定されて自動減速が開始される。また、表示器52の表示が「停車支援中。中止するには中止スイッチを押す。」のような警告に変更されると共に、「ピー」のようにブザー54の鳴動が連続音に変更される。更に、
図1には示されていないブレーキランプの点灯が開始され、クラクションの鳴動が開始される。
【0071】
なお、第二の減速度Gb2は、車両102の車速Vに関係なく予め設定された定数であってよいが、自動減速開始時の車速Vnが高いほど大きくなるよう、車速Vnに応じて可変設定されてもよい。
【0072】
時点t24において、車両102が停止したとすると、表示器52の表示が「停車支援継続中。中止するには中止スイッチを押す。」のような警告に変更されると共に、ブレーキランプが消灯される。更に、駆動ECU20に指令信号が出力されることにより、変速機のシフトレンジがPレンジに切り替えられ、制動ECU30に指令信号が出力されることにより、電動パーキングブレーキが作動される。
【0073】
なお、車線逸脱防止制御は、時点t21以降も継続されるが、時点t24において、終了される。また、車両102が車外の施設と無線通信可能である場合には、時点t24において、無線通信により救援要請の発信が開始されてよい。
【0074】
以上の説明から解るように、実施形態によれば、運転者が運転に不適合な状態であることが検出されると(S10)、制動装置32が制御されることにより所定の減速度にて車両102が自動的に減速され停止される(S40、S80)。車両102が走行している道路が自動車専用道路106であるか否かが判定される(S20)。道路が自動車専用道路であると判定されたときには、自動減速の減速度が第一の減速度Gb1に設定され(S40)、道路が一般道108であると判定されたときには、自動減速の減速度が第一の減速度Gb1よりも高い第二の減速度Gb2に設定される(S80)。
【0075】
よって、道路が自動車専用道路であるときの自動減速の減速度を過剰に高くすることなく、道路が一般道であるときの自動減速の減速度を高くすることができる。従って、車両102が自動車専用道路及び一般道の何れを走行している場合にも、運転者が運転不能な異常状態になったときに、従来に比して安全に車両を減速し停止させることができる。
【0076】
また、実施形態によれば、第一の減速度Gb1は、最小値である第一段階の減速度Gb11から最大値である第三段階の減速度Gb13まで三段階にて増大される。よって、道路が自動車専用道路106であるときの自動減速の初期の減速度を過剰に高くすることなく、自動減速の開始から車両102が停止するまでの車両の走行距離が過剰に長くなることを回避することができる。また、第二の減速度Gb2は第三段階の減速度Gb13よりも大きいので、道路が一般道であるときの自動減速の減速度を第一の減速度Gb1よりも高い減速度に設定することができる。
【0077】
更に、実施形態によれば、第一の減速度Gb1にて車両102を自動的に減速するときには、減速開始後にハザードランプ56の点滅が開始される。よって、車両が自動車専用道路を走行するときの車速の変動範囲内において、過剰に早くハザードランプの点滅が開始することを回避することができる。
【0078】
これに対し、道路が一般道であり、車両が第二の減速度Gb2にて自動的に減速されるときには、減速開始以前に、即ち減速開始時又はそれよりも前に、ハザードランプの点滅が開始される。従って、減速開始以前に車両が減速することの注意喚起を遅滞なく車両の周囲に与えることができる。
【0079】
特に、実施形態によれば、ステップS30において、車両102が現在走行している道路が一般道であると判定されたときには、ステップS50において、車両が交差点内にて停止する虞があるか否かが判定される。車両が交差点内にて停止する虞があると判定されたときには、ステップS60において、車両102が交差点の手前又は交差点を過ぎた位置において停止するよう、減速パターンを変更される。よって、車両102の前方に交差点がある状況において自動減速が行われる場合に、車両が交差点内にて停止することを防止することができる。
【0080】
また、実施形態によれば、車両102が一般道を走行しているときには、ステップS70において、車両102の後方に後続車があるか否かが判定される。車両102の後方に後続車があると判定されたときには、ステップS90において、後続車が車両102に追突したりしないよう、減速パターンが変更される。よって、後続車が車両102に追突する虞を低減することができる。
【0081】
なお、ステップS50及びS60、又はステップS70及びステップS90が省略されてもよい。更にステップS50乃至S70及びステップS90が省略され、ステップS30において否定判定が行われたときには、自動減速制御はステップS80へ進められてもよい。
【0082】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0083】
例えば、上述の実施形態においては、車両102が走行している道路が自動車専用道路106であるときには、第一の減速度Gb1は、最小値である第一段階の減速度Gb11から最大値である第三段階の減速度Gb13まで三段階にて増大される。しかし、第一の減速度Gb1の増大は、三段階以外の多段階にて行われてもよく、第一の減速度Gb1は、少なくとも部分的に連続的に増大されてもよい。
【0084】
また、上述の実施形態においては、車両102が走行している道路が一般道108であるときの第二の減速度Gb2は、第一の減速度Gb1の第三段階の減速度Gb13よりも大きい一定の値である。しかし、第二の減速度Gb2も多段階又は少なくとも部分的に連続的に増大されてもよい。その場合にも、第二の減速度Gb2の最小値は、第一の減速度Gb1の最大値よりも大きい値に設定される。
【0085】
また、上述の実施形態においては、ステップS50において肯定判定が行われたときには、自動減速制御はステップS60へ進められる。しかし、ステップS50において肯定判定が行われたときには、ステップS70と同様の判定が行われ、否定判定が行われたときには、自動減速制御がステップS60へ進められ、肯定判定が行われたときには、ステップS60及びS90と同様の制御が行なわれてよい。即ち、車両102が交差点の手前又は交差点を過ぎた位置において停止するよう、また後続車が車両102に追突したりしないよう、減速パターンが変更され、変更後の減速パターンにて車両102が減速するよう、制動ECU30へ減速指令が出力されてよい。
【0086】
また、上述の実施形態においては、ステップS100において、運転者により自動減速制御に凌駕するオーバーライド操作が行われたか否かが判定され、否定判定が行われると、自動減速制御をステップS30へ戻される。しかし、修正例として
図5に示されているように、ステップS30において、肯定判定が行われたときには、ステップS32においてフラグFが1に設定され、否定判定が行われたときには、ステップS34においてフラグFが0に設定されてよい。更に、ステップS100において、否定判定が行われたときには、ステップS102において、フラグFが1であるか否かが判定され、肯定判定が行われたときには、自動減速制御がステップS40へ戻され、否定判定が行われたときには、自動減速制御がステップS50へ戻されてよい。この修正例によれば、ステップS100において、否定判定が行われる度にステップS30が行われることを回避することができる。
【符号の説明】
【0087】
10…運転支援ECU、12…車外撮影カメラセンサ、14…レーダセンサ、16…運転者撮影カメラセンサ、18…周囲情報検出装置、20…駆動ECU、22…駆動装置、30…制動ECU、32…制動装置、40…EPS・ECU、42…EPS装置、50…メータECU、60……運転操作センサ、70…車両状態センサ、80…ナビゲーション装置、100…運転支援装置、102…車両、106…自動車専用道路、108…一般道