IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特許7521553炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法
<>
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図1
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図2
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図3
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図4
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図5
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図6
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図7
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図8
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図9
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図10
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図11
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図12
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図13
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図14
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図15
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図16
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図17A
  • 特許-炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法 図17B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240717BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01L29/78 652G
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652N
H01L29/78 652H
H01L29/78 652C
H01L29/06 301M
H01L29/78 658J
H01L29/78 658H
H01L29/78 658E
H01L21/265 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022045676
(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公開番号】P2022151776
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2021049875
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上原 準市
(72)【発明者】
【氏名】羽山 優介
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044921(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110703(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047276(WO,A1)
【文献】特開2018-133377(JP,A)
【文献】特開2013-21304(JP,A)
【文献】特開2019-140242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 21/336
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチゲート構造を有するMOS構造のスイッチング素子が形成された炭化珪素半導体装置であって、
前記スイッチング素子が形成されるセル部(1)と、
前記セル部を囲む外周部(2)と、を有し、
前記セル部は、
炭化珪素からなる第1導電型の基板(11)と、
前記基板上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のバッファ層(12)と、
前記バッファ層上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の低濃度層(13)と、
前記低濃度層上に形成され、前記基板の面方向における一方向を長手方向とする複数の線状部分を有する第2導電型の第1ディープ層(15)と、
前記低濃度層上に配置され、前記第1ディープ層に挟まれた線状部分を有する第1導電型のJFET部(14)と、
前記JFET部上に配置され、前記低濃度層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の電流分散層(17)と、
前記第1ディープ層上に配置された第2導電型の第2ディープ層(18)と、
前記電流分散層および前記第2ディープ層の上に配置された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(22)と、
前記不純物領域および前記ベース層を貫通して前記電流分散層に達するトレンチ(24)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(25)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(26)とを有する前記トレンチゲート構造と、
前記不純物領域および前記ベース層と電気的に接続される第1電極(28)と、
前記基板と電気的に接続される第2電極(31)と、を備え、
前記JFET部には、欠陥部(D)が形成されている炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記セル部は、前記外周部より、前記スイッチング素子が逆導通状態である際の順方向電圧が低くされている請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記JFET部は、前記第1ディープ層と前記低濃度層との間にも配置されている請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記JFET部は、イオン注入層で構成され、不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記ベース層は、前記基板と前記バッファ層との積層方向において、前記トレンチと接する部分の長さが0.4μm以下とされている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記ベース層は、不純物濃度が3.0×1017/cm以下とされている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第1ディープ層は、前記長手方向と交差する方向であって、前記基板の面方向に沿った幅(L1)が0.9μm以下とされている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第1ディープ層は、前記セル部から前記外周部まで延設されている請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
隣合う前記トレンチの中心間の距離は、3.0μm以下とされている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
隣合う前記第1ディープ層の間隔(L2)は、0.75~1.1μmとされている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記ベース層、前記第1ディープ層、および前記第2ディープ層の少なくとも1つには、欠陥部が形成されている請求項1ないし10のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項12】
前記ベース層に欠陥部(D1)が形成されており、
前記電流分散層は、第2導電型の不純物を含む構成とされ、欠陥部(D2)が形成されている請求項11に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項13】
前記電流分散層は、第2導電型の不純物濃度が1.0×1015/cm以上とされている部分を有している請求項12に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項14】
MOSFET(S11)と還流ダイオード(S12)とが並列に接続されたアームを有するインバータ回路であって、
請求項1ないし13のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置を備え、
前記MOSFETは、前記スイッチング素子で構成され、
前記還流ダイオードは、前記スイッチング素子内に構成される寄生ダイオードによって構成されているインバータ回路。
【請求項15】
MOS構造のスイッチング素子が形成されるセル部(1)と、
前記セル部を囲む外周部(2)と、を有し、
前記セル部は、
炭化珪素からなる第1導電型の基板(11)と、
前記基板上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のバッファ層(12)と、
前記バッファ層上に形成され、前記基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の低濃度層(13)と、
前記低濃度層上に形成され、前記基板の面方向における一方向を長手方向とする複数の線状部分を有する第2導電型の第1ディープ層(15)と、
前記低濃度層上に配置され、前記第1ディープ層に挟まれた線状部分を有する第1導電型のJFET部(14)と、
前記JFET部上に配置され、前記低濃度層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の電流分散層(17)と、
前記第1ディープ層上に配置された第2導電型の第2ディープ層(18)と、
前記電流分散層および前記第2ディープ層の上に配置された第2導電型のベース層(21)と、
前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(22)と、
前記不純物領域および前記ベース層を貫通して前記電流分散層に達するトレンチ(24)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(25)と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(26)とを有するトレンチゲート構造と、
前記不純物領域および前記ベース層と電気的に接続される第1電極(28)と、
前記基板と電気的に接続される第2電極(31)と、を備え、
前記JFET部には、欠陥部(D)が形成されている炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記低濃度層をエピタキシャル層で配置することと、
前記低濃度層の表層部にイオン注入を行うことで前記JFET部を構成することを行い、
前記イオン注入を行うことで前記JFET部に前記欠陥部を形成する炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記電流分散層上に、前記ベース層を構成するベース層構成層(210)をエピタキシャル層で配置することと、
前記ベース層構成層に加速電圧を変更しながら複数回のイオン注入を行い、前記ベース層を構成すると共に前記ベース層に欠陥部(D1)を形成し、さらに前記ベース層を構成する際の不純物を前記電流分散層に入り込ませて前記電流分散層に欠陥部(D2)を形成する請求項15に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記ベース層構成層を配置することでは、前記ベース層を構成した際の不純物濃度よりも1桁以上小さい不純物濃度とされた前記ベース層構成層を配置する請求項16に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。

【請求項18】
前記イオン注入を行うことでは、前記エピタキシャル層を配置する際に発生し得る欠陥部よりも多量の前記欠陥部が形成される温度で行う請求項15ないし17のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレンチゲート構造を有する炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、SiC半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレンチゲート構造を有するMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistorの略)が形成されたSiC半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、このSiC半導体装置では、n型の基板上に、基板よりも低不純物濃度とされたn型のバッファ層が形成され、バッファ層上に、バッファ層よりも低不純物濃度とされた低濃度層が形成されている。そして、低濃度層上には、一方向を長手方向として延設されたp型の第1ディープ層と、n型のJFET部とが形成されている。なお、第1ディープ層およびJFET部は、隣合う第1ディープ層の間にJFET部が配置されるように、第1ディープ層とJFET部とが長手方向と交差する方向に沿って交互に配置されている。
【0003】
第1ディープ層およびJFET部上には、n型の電流分散層およびp型の第2ディープ層が配置されている。電流分散層および第2ディープ層上には、p型のベース層が配置されている。なお、第2ディープ層は、第1ディープ層とベース層とを接続するように配置されている。
【0004】
ベース層の表層部には、n型のソース領域が形成されている。そして、ソース領域およびベース層を貫通して電流分散層に達するように複数のトレンチが形成されており、各トレンチには、ゲート絶縁膜およびゲート電極が順に形成されている。これにより、トレンチゲート構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-016775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のようなSiC半導体装置は、ベース層等と電流分散層等とのpn接合によって寄生ダイオードが構成される。このため、このようなSiC半導体装置は、逆導通した際に寄生ダイオードを利用することが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記のようなSiC半導体装置では、基板に基底面転位(すなわち、basal plane dislocation:以下では、単にBPDともいう)が存在する場合がある。そして、上記のようなSiC半導体装置では、逆導通時に注入されるホールが基底面転位に達することにより、基底面転位が積層欠陥(stacking fault:以下では、単にSFともいう)に拡張してしまう可能性がある。この場合、BPDは、線状欠陥であるために素子動作に及ぼす影響が小さいが、SFは、面状欠陥となるために素子動作に及ぼす影響が大きくなる。したがって、上記のようなSiC半導体装置では、オン電圧が高くなる可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、オン電圧が高くなることを抑制できるSiC半導体装置およびそれを用いたインバータ回路、SiC半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1では、トレンチゲート構造を有するMOS構造のスイッチング素子が形成されたSiC半導体装置であって、スイッチング素子が形成されるセル部(1)と、セル部を囲む外周部(2)と、を有し、セル部は、SiCからなる第1導電型の基板(11)と、基板上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型のバッファ層(12)と、バッファ層上に形成され、基板よりも低不純物濃度とされた第1導電型の低濃度層(13)と、低濃度層上に形成され、基板の面方向における一方向を長手方向とする複数の線状部分を有する第2導電型の第1ディープ層(15)と、低濃度層上に配置され、第1ディープ層に挟まれた線状部分を有する第1導電型のJFET部(14)と、JFET部上に配置され、低濃度層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の電流分散層(17)と、第1ディープ層上に配置された第2導電型の第2ディープ層(18)と、電流分散層および第2ディープ層の上に配置された第2導電型のベース層(21)と、ベース層の表層部に形成された第1導電型の不純物領域(22)と、不純物領域およびベース層を貫通して電流分散層に達するトレンチ(24)の壁面に形成されたゲート絶縁膜(25)と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極(26)とを有するトレンチゲート構造と、不純物領域およびベース層と電気的に接続される第1電極(28)と、基板と電気的に接続される第2電極(31)と、を備えている。そして、JFET部には、欠陥部(D)が形成されている。
【0010】
これによれば、SiC半導体装置の逆導通時において、キャリア(例えば、ホール)が欠陥部にトラップされることでBPDに到達することを抑制できる。したがって、BPDがSFに拡張することを抑制でき、オン電圧が高くなることを抑制できる。
【0011】
請求項14は、MOSFET(S11)と還流ダイオード(S12)とが並列に接続されたアームを有するインバータ回路であって、請求項1ないし13のいずれか1つに記載のSiC半導体装置を備え、MOSFETは、スイッチング素子で構成され、還流ダイオードは、スイッチング素子内に構成される寄生ダイオードによって構成されている。
【0012】
これによれば、インバータ回路に備えられる還流ダイオードとして、SiC半導体装置に構成される寄生ダイオードを利用している。このため、MOSFETとは別に還流ダイオードを構成する別部材を用意する必要がなく、構成の簡略化を図ることができる。
【0013】
また、請求項15は、上記のSiC半導体装置に関する製造方法であり、低濃度層の表層部にイオン注入を行うことでJFET部を構成することを行い、イオン注入を行うことでJFET部に欠陥部を形成する。
【0014】
これによれば、逆導通時にキャリア(例えば、ホール)をトラップする欠陥部が形成されたSiC半導体装置を容易に製造できる。
【0015】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
図2図1中のセル部を示す斜視図である。
図3図1に示すSiC半導体装置を用いて構成したインバータ回路を示す図である。
図4】SiC半導体装置が逆導通時である際の順方向電圧と電流密度との関係を示す図である。
図5】順方向電流とSF面積占有率との関係を示す図である。
図6】JFET部の不純物濃度とSF面積占有率との関係を示す図である。
図7】チャネル長とSF面積占有率との関係を示す図である。
図8】ベース層の不純物濃度とSF面積占有率との関係を示す図である。
図9】第1ディープ層の幅とホール電流密度との関係を示す図である。
図10】トレンチの間隔とホール電流密度との関係を示す図である。
図11】第1ディープ層の間隔とオン電圧との関係を示す図である。
図12】第1ディープ層の間隔とゲート絶縁膜に印加される電界との関係を示す図である。
図13】第1ディープ層の間隔と帰還容量との関係を示す図である。
図14】第2実施形態におけるSiC半導体装置のセル部を示す斜視図である。
図15】第3実施形態におけるSiC半導体装置のセル部を示す斜視図である。
図16】深さとp型の不純物濃度との関係を示す図である。
図17A】第3実施形態におけるSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図17B図17Aに続くSiC半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1および図2を参照しつつ説明する。本実施形態のSiC半導体装置S1は、スイッチング素子として、トレンチゲート構造の反転型のMOSFETが形成されている。
【0019】
SiC半導体装置S1は、トレンチゲート構造のMOSFETが形成されるセル部1と、このセル部1を囲む外周部2とを有する構成とされている。外周部2は、ガードリング部2aと、ガードリング2a部よりも内側に配置される繋ぎ部2bとを有する構成とされている。言い換えると、外周部2は、ガードリング部2aと、セル部1とガードリング部2aとの間に配置される繋ぎ部2bとを有する構成とされている。以下では、後述する基板11の面方向における一方向をX軸方向とし、基板の面方向における一方向と交差する方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向と直交する方向をZ軸方向として説明する。なお、本実施形態では、X軸方向とY軸方向とは直交している。また、図1では、紙面左右方向がX軸方向に相当し、紙面奥行き方向がY軸方向に相当し、紙面上下方向がZ軸方向に相当している。
【0020】
SiC半導体装置S1は、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置S1は、SiCからなるn型の基板11を備えている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cmとされ、厚さが300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものである。
【0021】
基板11の表面上には、SiCからなるn型のバッファ層12が形成されている。バッファ層12は、基板11の表面にエピタキシャル成長を行うことによって構成される。そして、バッファ層12は、n型不純物濃度が、基板11と、後述する低濃度層13との間の不純物濃度とされ、厚さが1μm程度とされている。
【0022】
バッファ層12の表面上には、例えば、n型不純物濃度が5.0~10.0×1015/cmとされ、厚さが10~15μm程度とされたSiCからなるn型の低濃度層13が形成されている。この低濃度層13は、不純物濃度がZ軸方向において一定とされていてもよいが、濃度分布に傾斜が付けられ、低濃度層13のうちの基板11側の方が基板11から離れる側よりも高濃度となるようにされると好ましい。例えば、低濃度層13は、基板11の表面から3~5μm程度の部分の不純物濃度が2.0×1015/cm程度他の部分よりも高くされるのが好ましい。このような構成にすることにより、低濃度層13の内部抵抗を低減でき、オン抵抗を低減することができる。また、低濃度層13は、エピタキシャル成長によるエピタキシャル層で構成される。
【0023】
低濃度層13の表層部には、セル部1および外周部2の繋ぎ部2bにおいて、JFET部14および第1ディープ層15が形成されている。本実施形態では、JFET部14および第1ディープ層15は、それぞれX軸方向に沿って延設されると共に、Y軸方向において交互に繰り返し並べて配置された線状部分を有している。つまり、JFET部14および第1ディープ層15は、基板11の表面に対する法線方向(以下では、単に法線方向ともいう)において、それぞれX軸方向に沿って延設されたストライプ状とされ、それらがY軸方向に沿って交互に並べられたレイアウトとなる構成とされている。なお、基板11の表面に対する法線方向においてとは、言い換えると、基板11の表面に対する法線方向から視たときということもできる。
【0024】
JFET部14は、低濃度層13よりも高不純物濃度とされたn型とされており、深さが0.3~1.5μmとされている。本実施形態では、JFET部14は、n型不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている。また、本実施形態のJFET部14は、低濃度層13に対してn型不純物をイオン注入することによって形成されたイオン注入層とされており、イオン注入することで構成される欠陥部Dが形成されている。
【0025】
第1ディープ層15は、例えば、ボロン等のp型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cmとされている。なお、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14よりもガードリング部2a側まで延設されている。
【0026】
そして、本実施形態の第1ディープ層15は、JFET部14より浅く形成されている。つまり、第1ディープ層15は、底部がJFET部14内に位置するように形成されている。言い換えると、第1ディープ層15は、低濃度層13との間にJFET部14が位置するように形成されている。
【0027】
また、本実施形態の第1ディープ層15は、幅L1が0.9μm以下とされている。なお、第1ディープ層15の幅L1とは、第1ディープ層15の長手方向と直交する方向の長さであって、半導体基板10の面方向に沿った方向の長さである。すなわち、第1ディープ層15の幅L1とは、第1ディープ層15のY軸方向に沿った長さのことである。
【0028】
さらに、第1ディープ層15は、隣合う第1ディープ層15の間隔L2が0.75~1.1μmとされている。なお、隣合う第1ディープ層15の間隔L2とは、JFET部14のうちの第1ディープ層15で挟まれる部分のY軸方向に沿った長さのことである。
【0029】
また、低濃度層13の表層部には、外周部2のガードリング部2aにおいて、セル部1を囲むように、複数本のp型のガードリング16が備えられている。本実施形態では、ガードリング16の上面レイアウトは、法線方向において、四隅が丸められた四角形状や円形状等とされている。
【0030】
セル部1におけるJFET部14および第1ディープ層15上には、電流分散層17および第2ディープ層18が形成されている。
【0031】
電流分散層17は、n型不純物層で構成され、厚さが0.5~2μmとされている。また、電流分散層17のn型不純物濃度は、例えば、1.0×1016~5.0×1017/cmとされている。また、電流分散層17は、JFET部14と繋がっている。このため、本実施形態では、低濃度層13、JFET部14、および電流分散層17が繋がり、これらによってドリフト層19が構成されている。
【0032】
第2ディープ層18は、セル部1に形成されており、例えば、p型不純物濃度が2.0×1017~2.0×1018/cmとされており、厚さが電流分散層17と等しくされている。また、第2ディープ層18は、第1ディープ層15と接続されるように形成されている。
【0033】
電流分散層17および第2ディープ層18は、JFET部14のうちのストライプ状とされた部分や、第1ディープ層15の長手方向に対して交差する方向に延設されている。本実施形態では、電流分散層17および第2ディープ層18は、Y軸方向を長手方向として延設されると共に、X軸方向において交互に複数本並べたレイアウトとされている。なお、電流分散層17および第2ディープ層18の形成ピッチは、後述するトレンチゲート構造の形成ピッチに合わせてあり、第2ディープ層18は、後述するトレンチ24を挟むように形成されている。
【0034】
また、外周部2における低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、ガードリング16上には、電流分散層17およびリサーフ層20が形成されている。リサーフ層20は、外周部2のうちの繋ぎ部2bに形成されており、第1ディープ層15と接続されるように形成されている。
【0035】
電流分散層17、第2ディープ層18、リサーフ層20上には、P型のベース層21が形成されている。そして、セル部1におけるベース層21の表層部には、n型のソース領域22およびp型のコンタクト領域23が形成されている。ソース領域22は、後述するトレンチ24の側面に接するように形成され、コンタクト領域23は、ソース領域22を挟んでトレンチ24と反対側に形成されている。なお、本実施形態では、ソース領域22が不純物領域に相当している。
【0036】
ベース層21は、例えば、p型不純物濃度が3.0×1017/cm以下とされている。また、本実施形態のベース層21は、例えば、イオン注入等で形成され、セル部1の方が外周部2よりも不純物濃度が高くなっている。ソース領域22は、表層部におけるn型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cmとされている。コンタクト領域23は、表層部におけるp型不純物濃度、すなわち表面濃度が例えば1.0×1021/cmとされている。
【0037】
また、ベース層21およびソース領域22は、チャネル長が0.4μm以下となるように、厚さが調整されている。なお、ここでのチャネル長とは、Z軸方向(すなわち、基板11とバッファ層12との積層方向)において、ベース層21のうちのトレンチ24の側面に沿った部分の長さのことである。言い換えると、チャネル長とは、ベース層21のうちのソース領域22と電流分散層17との間の長さのことである。
【0038】
本実施形態では、このように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、電流分散層17、第2ディープ層18、ベース層21、ソース領域22、コンタクト領域23等が積層されて半導体基板10が構成されている。以下、半導体基板10のうちの基板11側の面を半導体基板10の他面10bとし、ソース領域22およびコンタクト領域23側の面を半導体基板10の一面10aとする。そして、ソース領域22およびコンタクト領域23は、半導体基板10の一面10aから露出した状態となっている。
【0039】
半導体基板10には、セル部1において、ベース層21等を貫通して電流分散層17に達すると共に、底面が電流分散層17内に位置するように、例えば幅が1.4~2.0μmとされたトレンチ24が形成されている。なお、トレンチ24は、JFET部14および第1ディープ層15に達しないように形成されている。つまり、トレンチ24は、底面よりも下方にJFET部14および第1ディープ層15が位置するように形成されている。
【0040】
また、トレンチ24は、Y軸方向に沿って延びるように複数本が延設されていると共に、X軸方向に等間隔で並べられてストライプ状に形成されている。つまり、本実施形態では、トレンチ24は、長手方向が第1ディープ層15の長手方向と直交するように形成されている。また、トレンチ24は、法線方向において、第2ディープ層18に挟まれるように形成されている。そして、本実施形態のトレンチ24は、隣合うトレンチ24の中心間の距離(すなわち、トレンチピッチ)が3.0μm以下となるように形成されている。
【0041】
トレンチ24は、内壁面に形成されたゲート絶縁膜25と、ゲート絶縁膜25の表面に形成されたドープトPoly-Siによって構成されるゲート電極26によって埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。特に限定されるものではないが、ゲート絶縁膜25は、トレンチ24の内壁面を熱酸化またはCVD(chemical vapor depositionの略)で形成される。そして、ゲート絶縁膜25は、厚さがトレンチ24の側面側および底面側で共に100nm程度とされている。
【0042】
なお、ゲート絶縁膜25は、トレンチ24の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜25は、半導体基板10の一面10aの一部も覆うように形成されている。より詳しくは、ゲート絶縁膜25は、ソース領域22の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜25には、ゲート電極26が配置される部分と異なる部分において、コンタクト領域23およびソース領域22の残部を露出させるコンタクトホール25aが形成されている。
【0043】
また、ゲート絶縁膜25は、繋ぎ部2bにおけるベース層21の表面にも形成されている。ゲート電極26についても、ゲート絶縁膜25と同様に、繋ぎ部2bにおけるゲート絶縁膜25の表面上まで延設されている。以上のようにして、本実施形態のトレンチゲート構造が構成されている。
【0044】
また、半導体基板10には、外周部2のうちのガードリング部2aにおいて、ベース層21を貫通してリサーフ層20および電流分散層17に達するように凹部10cが形成されている。本実施形態のSiC半導体装置S1は、このような構造とされたメサ構造が形成されている。そして、繋ぎ部2bには、セル部1と同様に、ベース層21の表層部にコンタクト領域23が形成されている。
【0045】
半導体基板10の一面10a上には、ゲート電極26やゲート絶縁膜25等を覆うように、層間絶縁膜27が形成されている。層間絶縁膜27は、BPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成されている。
【0046】
層間絶縁膜27には、コンタクトホール25aと連通してソース領域22およびコンタクト領域23を露出させるコンタクトホール27aが形成されている。また、層間絶縁膜27には、ゲート電極26のうちの繋ぎ部2bまで延設された部分を露出させるコンタクトホール27bが形成されている。つまり、層間絶縁膜27には、セル部1にコンタクトホール27aが形成され、外周部2にコンタクトホール27bが形成されている。
【0047】
なお、層間絶縁膜27に形成されたコンタクトホール27aは、ゲート絶縁膜25に形成されたコンタクトホール25aと連通するように形成されており、当該コンタクトホール25aと共に1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール25aおよびコンタクトホール27aを纏めてコンタクトホール25bともいう。そして、コンタクトホール25bのパターンは、任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、または、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。本実施形態では、コンタクトホール25bは、トレンチ24の長手方向に沿ったライン状とされている。
【0048】
層間絶縁膜27上には、コンタクトホール25bを通じてソース領域22およびコンタクト領域23と電気的に接続されるソース電極28が形成されている。なお、本実施形態のソース電極28は、外周部2のベース層21に形成されたコンタクト領域23とも接続されている。また、層間絶縁膜27上には、コンタクトホール27bを通じてゲート電極26と電気的に接続されるゲート配線29が形成されている。なお、本実施形態では、ソース電極28が第1電極に相当している。
【0049】
本実施形態のソース電極28は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域22)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、コンタクト領域23)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、ゲート配線29は、ソース電極と同様の構成とされていてもよいし、Al-Si等で構成されていてもよい。
【0050】
さらに、繋ぎ部2bおよびガードリング部2aを覆うように、ポリイミド等によって構成される保護膜30が形成されている。本実施形態では、保護膜30は、ソース電極28と後述するドレイン電極31との間で沿面放電が発生することを抑制するため、外周部2からセル部1の外縁部上まで形成されている。具体的には、保護膜30は、セル部1において、ソース電極28のうちの外周部2側の部分を覆いつつ、ソース電極28のうちの内縁側の部分を露出させるように形成されている。
【0051】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続されるドレイン電極31が形成されている。なお、本実施形態では、ドレイン電極31が第2電極に相当している。本実施形態のSiC半導体装置S1では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。また、本実施形態のSiC半導体装置S1では、このような構造により、ドリフト層19とベース層21等とのpn接合によって寄生ダイオードが構成される。
【0052】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置S1の構成である。なお、本実施形態では、n型、n型、n型が第1導電型に相当しており、p型、p型、p型が第2導電型に相当している。次に、上記SiC半導体装置S1の作動および効果について説明する。
【0053】
上記SiC半導体装置S1は、例えば、図3に示されるようなインバータ回路100を構成するのに用いられる。インバータ回路100は、例えば、三相モータ101の駆動等に用いられ、直流電源102を用いて三相モータ101に対して交流電流を供給する際に用いられる。
【0054】
具体的には、インバータ回路100は、直流電源102に対して上アームと下アームを直列接続したブリッジ回路を複数個並列接続し、各ブリッジ回路の上アームと下アームを交互に繰り返しオンオフさせることで、負荷に対して交流電流を供給する。インバータ回路100は、MOSFETS11に対して還流ダイオードS12が並列接続されることで構成される。そして、本実施形態のSiC半導体装置S1を用いてインバータ回路100を構成する場合、各相の上アームと下アームのそれぞれが上記SiC半導体装置S1で構成される。さらに詳しくは、SiC半導体装置S1のMOSFETによって各アームのMOSFETS11が構成され、SiC半導体装置S1の寄生ダイオードによって各アームの還流ダイオードS12が構成される。
【0055】
そして、このようなインバータ回路100の各ブリッジ回路では、上アームのMOSFETS11をオン、下アームのMOSFETS11をオフすることで負荷に対して電流供給を行う。また、その後に、上アームのMOSFETS11をオフ、下アームのMOSFETS11をオンすることで電流供給を停止する。
【0056】
この際、例えば、上アームのSiC半導体装置S1の作動は次のようになる。すなわち、このSiC半導体装置S1では、ゲート電極26にゲート電圧が印加される前のオフ状態では、ベース層21に反転層が形成されない。このため、ドレイン電極31に正の電圧、例えば1600Vが印加されたとしても、ソース領域22からベース層21内に電子が流れず、SiC半導体装置S1は、ソース電極28とドレイン電極31との間に電流が流れないオフ状態となる。
【0057】
また、SiC半導体装置S1がオフ状態である場合には、ドレイン-ゲート間に電界がかかり、ゲート絶縁膜25の底部に電界集中が発生し得る。しかしながら、上記SiC半導体装置S1では、トレンチ24よりも深い位置に、第1ディープ層15およびJFET部14が備えられている。このため、第1ディープ層15およびJFET部14との間に構成される空乏層により、ドレイン電圧の影響による等電位線のせり上がりが抑制され、高電界がゲート絶縁膜25に入り込み難くなる。したがって、本実施形態では、ゲート絶縁膜25が破壊されることを抑制できる。
【0058】
そして、ゲート電極26に所定のゲート電圧、例えば20Vが印加されると、ベース層21のうちのトレンチ24に接している表面にチャネルが形成される。これにより、ソース電極28とドレイン電極31との間に電流が流れ、SiC半導体装置S1がオン状態となる。なお、本実施形態では、チャネルを通過した電子が電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を通過して基板11へ流れるため、電流分散層17、JFET部14および低濃度層13を有するドリフト層19が構成されているといえる。
【0059】
その後、SiC半導体装置S1は、オン状態からオフ状態になると、逆バイアスが印加されて逆導通状態となるため、寄生ダイオードが還流ダイオードS12として機能し、寄生ダイオードを通じて還流電流が流れる。そして、寄生ダイオードを構成するpn接合のp型層側からn型層側に拡散したホールとn型層中の電子が再結合する。この際、再結合エネルギーが大きいために、基板11やバッファ層12内の基底面転位(以下、BPDという)が拡張して積層欠陥になる可能性がある。
【0060】
このため、本実施形態では、JFET部14に欠陥部Dを形成している。これにより、SiC半導体装置S1が逆導通時である場合、欠陥部Dがホールトラップとして機能する。したがって、図4に示されるように、欠陥部Dが形成されていないSiC半導体装置S1と比較すると、逆導通時である際の電流密度を低減でき、ホールが低濃度層13に達することを抑制できる。これにより、BPDがSFに拡張することを抑制でき、オン電圧が高くなることを抑制できる。
【0061】
また、本実施形態では、ベース層21は、セル部1の方が外周部2よりも不純物濃度が高くされている。このため、SiC半導体装置S1が逆導通状態である際、セル部1の順方向電圧が外周部2の順方向電圧よりも低くなり易い。したがって、順方向電流は、欠陥部Dが形成されているセル部1に流れ易くなり、外周部2にてBPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0062】
以下、本実施形態のSiC半導体装置S1におけるさらなる詳細な条件および効果について説明する。
【0063】
まず、上記SiC半導体装置S1では、第1ディープ層15がJFET部14よりも浅く形成されている。そして、第1ディープ層15と低濃度層13との間にもJFET部14が配置されている。このため、第1ディープ層15と低濃度層13との間のJFET部14によってもホールをトラップすることができる。したがって、図5に示されるように、SF面積占有率を小さくすることができる。
【0064】
なお、図5中では、JFET部14と第1ディープ層15とを同じ深さとし、第1ディープ層15と低濃度層13との間にJFET部14を配置していないSiC半導体装置S1を比較例として示してある。また、SF面積占有率とは、SiC半導体装置S1における積層欠陥の割合を示している。そして、SF面積占有率が小さいとは、BPDがSFに拡張し難くなっていることを示している。
【0065】
また、SiC半導体装置S1では、逆導通時にバッファ層12へ流れるホールのホール密度が4.5×1016/cm以上になると、BPDがSFに拡張し易いことが報告されている。そして、本発明者らにおいても、バッファ層12へ流れるホールのホール密度が4.5×1016/cm以上になると、BPDがSFに拡張し易いことを確認している。このため、本実施形態のSiC半導体装置S1では、以下の条件を満たすように構成されている。
【0066】
まず、本実施形態のJFET部14は、低濃度層13にn型不純物がイオン注入されたイオン注入層で構成されている。このため、JFET部14は、不純物濃度が高くなる(すなわち、ドーズ量が多くなる)につれて欠陥部Dが多くなり、ホールトラップ層としての機能が大きくなる。具体的には、図6に示されるように、JFET部14は、不純物濃度が7.0×1016/cm以上になると、SF面積占有率が小さくなることが確認される。但し、JFET部14は、不純物濃度が5.0×1017/cm以上になると、SF面積占有率が増加することが確認される。これは、JFET部14に形成される欠陥部Dが多くなり過ぎることにより、BPDがSFに拡張するのではなく、当該欠陥部Dに起因してSFが形成されるためであると推定される。したがって、本実施形態では、JFET部14は、イオン注入層で構成され、不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている。
【0067】
そして、SiC半導体装置S1における逆導通時においては、チャネル長さを短くすることにより、ベース層21内をパンチスルーモードによって流れる電子電流の割合を増加できるため、ホール電流の割合を低減できる。そして、ホール電流の割合を低減することにより、BPDに達するホールも低減できるため、BPDがSFに拡張することを抑制できる。具体的には、図7に示されるように、チャネル長が0.4μm以下になるとSF面積占有率が0となる場合があり、チャネル長が0.4μmより小さくなるについてSF面積占有率が小さくなることが確認される。したがって、本実施形態では、チャネル長が0.4μm以下となるように、ベース層21の厚さやソース領域22の深さが調整されている。
【0068】
また、電子電流の割合を増加してホール電流の割合を低減する構造としては、ベース層21の不純物濃度を低くするようにしてもよい。具体的には、図8に示されるように、ベース層21の不純物濃度を3.0×1017/cm以下とすると、SF面積占有率が0となる場合がある。したがって、本実施形態では、ベース層21の不純物濃度が3.0×1017/cm以下とされている。
【0069】
さらに、電子電流の割合を増加してホール電流の割合を低減する構造としては、第1ディープ層15の幅L1を規定するようにしてもよい。具体的には、図9に示されるように、第1ディープ層15の幅L1は、0.9μm以下であると、ホール電流密度を4.5×1016/cm以下とできる。したがって、本実施形態では、第1ディープ層15の幅L1は、0.9μm以下とされている。なお、図9のホール電流密度は、バッファ層12へ流れるホール電流の密度を示している。
【0070】
また、電子電流の割合を増加してホール電流の割合を低減する構造としては、隣合うトレンチ24の中心間の距離(すなわち、トレンチピッチ)を規定するようにしてもよい。具体的には、図10に示されるように、隣合うトレンチ24の中心間の距離を3.0μm以下とすることにより、ホール電流密度を4.5×1016/cm以下とできる。なお、図10のホール電流密度は、バッファ層12へ流れるホール電流の密度を示している。
【0071】
そして、上記のようなSiC半導体装置S1では、以下の特性も重要な特性となる。
【0072】
まず、図11に示されるように、SiC半導体装置S1がオン状態である際のオン電圧(すなわち、Von)は、隣合う第1ディープ層15の間隔L2を長くするほど第1ディープ層15で挟まれるJFET部14の幅が広がるため、小さくなる。そして、現状では、200Aを流す場合において、オン電圧を0.9V以下とすることが望まれている。したがって、隣合う第1ディープ層15の間隔L2は、0.75μm以上とされている。
【0073】
また、図12に示されるように、オフ状態においてゲート絶縁膜25に印加される電界(すなわち、Emax)は、隣合う第1ディープ層15の間隔L2を長くするほど第1ディープ層15で挟まれるJFET部14の幅が広がるため、高くなる。そして、現状では、オフ状態においてゲート絶縁膜25に印加される電界を5MV/cm以下とすることが望まれている。したがって、隣合う第1ディープ層15の間隔L2は、1.2μm以下とされている。
【0074】
さらに、図13に示されるように、帰還容量(すなわち、Crss)は、隣合う第1ディープ層15の間隔L2を長くするほど第1ディープ層15で挟まれるJFET部14の幅が広がるため、高くなる。そして、現状では、帰還容量を50pF以下とすることが望まれている。したがって、隣合う第1ディープ層15の間隔L2は、1.1μm以下とされている。
【0075】
つまり、本実施形態では、隣合う第1ディープ層15の間隔L2が0.75~1.1μmとされている。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、JFET部14には、欠陥部Dが形成されている。このため、SiC半導体装置S1の逆導通時において、ホールが欠陥部DにトラップされることでBPDに到達することを抑制できる。したがって、BPDがSFに拡張することを抑制でき、オン電圧が高くなることを抑制できる。
【0077】
(1)本実施形態では、セル部1は、外周部2よりも、ベース層21の不純物濃度が高くされている。このため、SiC半導体装置S1が逆導通状態である際、セル部1の順方向電圧が外周部2の順方向電圧よりも低くなる。したがって、順方向電流は、欠陥部Dが形成されているセル部1に流れ易くなり、外周部2にてBPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0078】
(2)本実施形態では、第1ディープ層15は、JFET部14よりも浅く形成されている。そして、第1ディープ層15と低濃度層13との間には、JFET部14が配置されている。このため、第1ディープ層15と低濃度層13との間のJFET部14によってもホールをトラップすることができる。したがって、さらにホールがBPDに到達することを抑制でき、さらにBPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0079】
(3)本実施形態では、JFET部14は、不純物濃度が7.0×1016~5.0×1017/cmとされている。このため、バッファ層12に流れ込むホール電流の密度を4.5×1016/cm以下とでき、BPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0080】
(4)本実施形態では、チャネル長が0.4μmとされている。このため、バッファ層12に流れ込むホール電流の密度を4.5×1016/cm以下とでき、BPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0081】
(5)本実施形態では、ベース層21の不純物濃度が3.0×1017/cmとされている。このため、バッファ層12に流れ込むホール電流の密度を4.5×1016/cm以下とでき、BPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0082】
(6)本実施形態では、第1ディープ層15は、幅L1が0.9μm以下とされている。このため、バッファ層12に流れ込むホール電流の密度を4.5×1016/cm以下とでき、BPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0083】
(7)本実施形態では、第1ディープ層15が外周部2まで延設されている。このため、外周部2でのダイオード特性を向上できる。
【0084】
(8)本実施形態では、隣合うトレンチ24の中心間の距離は、3.0μm以下とされている。このため、バッファ層12に流れ込むホール電流の密度を4.5×1016/cm以下とでき、BPDがSFに拡張することを抑制できる。
【0085】
(9)本実施形態では、隣合う第1ディープ層15の間隔L2が0.75μm以上とされている。このため、オン電圧が増加することを抑制できる。
【0086】
(10)本実施形態では、隣合う第1ディープ層15の間隔L2が1.1μm以下とされている。このため、オフ状態である際にゲート絶縁膜25に印加される電界が大きくなることを抑制できると共に、帰還容量が大きくなることを抑制できる。
【0087】
(11)本実施形態では、インバータ回路100に備えられる還流ダイオードS12として、SiC半導体装置S1に構成される寄生ダイオードを利用している。このため、MOSFETS11とは別に還流ダイオードS12を構成する別部材を用意する必要がなく、構成の簡略化を図ることができる。
【0088】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1ディープ層15の長手方向を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0089】
本実施形態では、図14に示されるように、セル部1において、第1ディープ層15および電流分散層17は、線状部分がY軸方向を長手方向として延設されている。また、第1ディープ層15は、法線方向において、トレンチ24を挟むように形成されている。
【0090】
以上説明した本実施形態のように、第1ディープ層15および電流分散層17をY軸方向に沿って延設するようにしても、JFET部14に欠陥部Dが形成されていることにより、上記第1実施形態と同様に、オン電圧が高くなることを抑制できる。
【0091】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ベース層21および電流分散層17に欠陥部を形成したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0092】
本実施形態では、図15に示されるように、ベース層21に欠陥部D1が形成されていると共に、電流分散層17に欠陥部D2が形成されている。ベース層21の欠陥部D1は、ベース層21をイオン注入によって構成することで形成される。電流分散層17の欠陥部D2は、ベース層21をイオン注入で形成する際のp型の不純物が電流分散層17に入り込むことで形成される。
【0093】
具体的には、図16に示されるように、ベース層21および電流分散層17は、p型の不純物濃度分布において、電流分散層17にもp型の不純物が存在するように構成されている。言い換えると、ベース層21および電流分散層17は、p型の不純物濃度分布におけるテール部Tが電流分散層17内に位置するように形成されている。不純物濃度分布におけるテール部Tとは、深さ方向における他面10b側の部分のことである。なお、このようなベース層21および電流分散層17は、加速電圧を変更しながら複数回のイオン注入を行ってベース層21を形成し、ベース層21を形成する際のp型の不純物を電流分散層17に入り込ませることで形成される。図16は、加速電圧を変更しながら3回のイオン注入を行った場合の図を示している。
【0094】
また、本実施形態のベース層21および電流分散層17は、電流分散層17に欠陥部D2が十分に形成されるように、電流分散層17内にp型の不純物濃度が1.0×1015/cm以上となる部分を有するように構成されている。なお、本発明者らの検討によれば、p型の不純物濃度が1.0×1015/cm以上となる部分を有するように電流分散層17が構成されている場合、十分に欠陥部D2が形成されることが確認されている。
【0095】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置S1の構成である。次に、上記SiC半導体装置S1におけるベース層21の欠陥部D1および電流分散層17の欠陥部D2の形成方法について、図17A図17Bを参照しつつ説明する。
【0096】
まず、図17Aに示されるように、基板11、バッファ層12、低濃度層13、JFET部14、第1ディープ層15、電流分散層17、第2ディープ層18が形成されたものを用意する。そして、電流分散層17および第2ディープ層18上に、ベース層21を構成するベース層構成層210をエピタキシャル成長させたエピタキシャル層で配置する。本実施形態では、ベース層構成層210は、後述するイオン注入を行ってベース層21を構成した際の不純物濃度よりも1桁以上小さい不純物濃度となるように、エピタキシャル成長で構成される。これにより、所望の不純物濃度を有するベース層21をエピタキシャル成長によって形成する場合と比較して、不純物濃度の面内ばらつきを抑制できる。なお、本実施形態のベース層構成層210は、厚さがベース層21と等しくされている。但し、ベース層構成層210は、厚さがベース層21の厚さおよびソース領域22の厚さの和と等しくされていてもよい。
【0097】
次に、図17Bに示されるように、加速電圧を変更しながら複数回のイオン注入を行うことでベース層21を構成する。例えば、ベース層21を構成する際には、図16に示されるように、電流分散層17にp型の不純物濃度が1.5×1015/cmとなる部分が含まれるように、加速電圧を変更しながらイオン注入を行ってベース層21を構成する。なお、図16では、加速電圧を変更しながら3回のイオン注入を行った場合の図が示されている。これにより、ベース層21に欠陥部D1が構成されると共に、電流分散層17に欠陥部D2が構成される。
【0098】
また、上記のように、JFET部14の欠陥部Dは、イオン注入を行うことによって形成される。ベース層21の欠陥部D1および電流分散層17の欠陥部D2は、イオン注入を行うことによって形成される。ここで、SiCにイオン注入を行う場合、高温でイオン注入すると欠陥部が発生し難くなることが報告されている。このため、本実施形態では、イオン注入は、JFET部14を構成するための低濃度層13やベース層構成層210をエピタキシャル成長させて配置する際に発生し得る欠陥部よりも、多量の欠陥部D、D1、D2が形成される温度で行う。具体的には、本実施形態では、各イオン注入を行う際の温度を室温から200℃以下の温度とする。これにより、イオン注入時に各欠陥部D、D1、D2が形成されないことを抑制できる。なお、本発明者らの検討によれば、200℃以下の温度でイオン注入を行うことにより、各欠陥部D、D1、D2が適切に形成されることが確認されている。また、本実施形態における室温とは、1~30℃程度の温度のことである。
【0099】
その後は、特に図示しないが、ソース領域22、コンタクト領域23、トレンチゲート構造等を形成することにより、上記SiC半導体装置S1が製造される。
【0100】
以上説明した本実施形態によれば、JFET部14に欠陥部Dが形成されているため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
(1)本実施形態では、ベース層21に欠陥部D1を形成すると共に電流分散層17に欠陥部D2を形成している。このため、ホール電流が流れる経路において、欠陥部D1、D2となる部分が増加し、JFET部14の欠陥部D以外でもホールをトラップすることができるため、さらにBPDにホールが達することを抑制できる。
【0102】
(2)本実施形態では、電流分散層17は、p型の不純物濃度が1.0×1015/cm以上となる部分を有するように構成されている。このため、電流分散層17にp型の不純物に起因する欠陥部D2を容易に形成できる。
【0103】
(3)本実施形態では、複数回のイオン注入を行ってベース層21を形成している。このため、p型の不純物濃度が1.0×1015/cm以上となる部分を有する電流分散層17を容易に形成できる。また、複数回のイオン注入行ってベース層21を形成するため、例えば、1回のイオン注入でベース層21を形成する場合と比較とすると、ベース層21における深さ方向の不純物濃度分布がばらつくことを抑制できる。したがって、SiC半導体をオン状態とするのに必要なゲート電極26への閾値電圧が変動することも抑制できる。
【0104】
(4)本実施形態では、ベース層構成層210を構成する際には、不純物濃度がベース層21の不純物濃度よりも1桁以上小さくなるようにしている。これにより、所望の不純物濃度を有するベース層21をエピタキシャル成長によって形成する場合と比較して、不純物濃度の面内ばらつきを抑制できる。
【0105】
(5)本実施形態では、イオン注入を200℃以下の温度で行っている。このため、イオン注入時に各欠陥部D、D1、D2が適切に形成されないことを抑制できる。
【0106】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0107】
例えば、上記各実施形態では、第1導電型をn型とすると共に第2導電型をp型とした例について説明したが、第1導電型をp型とすると共に第2導電型をn型としてもよい。
【0108】
また、上記各実施形態において、第1ディープ層15および第2ディープ層18の少なくとも一方において、内部に欠陥部Dが形成されるようにしてもよい。つまり、ホール電流が流れる経路において、欠陥部Dとなる部分が増えるようにしてもよい。この場合、例えば、第1ディープ層15に欠陥部Dが形成されるようにする場合には、第1ディープ層15に欠陥部Dが形成されるように、第1ディープ層15をイオン注入等で形成すればよい。これによれば、JFET部14の欠陥部D以外でもホールをトラップすることができるため、さらにBPDにホールが達することを抑制できる。
【0109】
さらに、上記各実施形態において、欠陥部Dは、イオン注入で形成されていなくてもよい。例えば、欠陥部Dは、JFET部14をエピタキシャル成長等で構成した後、ヘリウム等の電子線を照射することで形成されるようにしてもよい。また、JFET部14をエピタキシャル成長等で構成する場合には、ボロン、ガリウム、アルミニウム等のp型の不純物を混入し、不純物の総量を増加させることによって欠陥部Dを構成するようにしてもよい。つまり、欠陥部Dは、イオン注入や電子線等の照射ではなく、エピタキシャル膜を形成する際に同時に形成されるようにしてもよい。なお、このようにp型の不純物を混入させて欠陥部Dを構成する場合には、JFET部14の全体の不純物濃度が低くなり過ぎないように、n型不純物の総量を調整することが好ましい。また、JFET部14をエピタキシャル成長で構成する場合には、バナジウム、チタン、鉄等のホール捕獲率が電子捕獲率よりも高い不純物を混入させるようにしてもよい。これによれば、さらにJFET部14からホールが排出されることを抑制できる。
【0110】
また、エピタキシャル成長でJFET部14を構成しつつJFET部14に欠陥部Dを構成する場合、第1ディープ層15は次のように形成される。すなわち、第1ディープ層15は、セル部1において低濃度層13上の全体にJFET部14を形成した後、JFET部14の所定箇所にイオン注入等をすることによって形成される。この場合、低濃度層13上の全体に配置されたJFET部14には欠陥部Dが形成されているため、第1ディープ層15にも欠陥部Dが形成された状態となる。したがって、第1ディープ層15からホールが排出されることも抑制できる。
【0111】
また、上記各実施形態において、セル部1は、逆導通時において、外周部2と同じ順方向電圧となるように構成されていてもよい。上記各実施形態において、JFET部14と第1ディープ層15とが同じ厚さとされていてもよい。すなわち、第1ディープ層15と低濃度層13との間にJFET部14が配置されていなくてもよい。また、上記各実施形態において、JFET部14等の不純物濃度、ベース層21の不純物濃度、第1ディープ層15の幅L1等は、適宜変更してもよい。このようなSiC半導体装置S1としても、JFET部14に欠陥部Dが形成されていることにより、BPDがSFに拡張することを抑制でき、オン電圧が高くなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0112】
1 セル部
2 外周部
11 基板
12 バッファ層
13 低濃度層
14 JFET部
15 第1ディープ層
17 電流分散層
18 第2ディープ層
22 ソース領域(不純物領域)
24 トレンチ
25 ゲート絶縁膜
26 ゲート電極
28 ソース電極(第1電極)
31 ドレイン電極(第2電極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B