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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】燃料噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 61/18 20060101AFI20240717BHJP
   F02M 51/06 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F02M61/18 330Z
F02M51/06 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022082929
(22)【出願日】2022-05-20
(65)【公開番号】P2023170861
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森 幸生
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-242668(JP,A)
【文献】特開2000-329036(JP,A)
【文献】特開2013-249826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関における吸気ポート間に対応する位置にある燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁は、そのボディの内部にニードルが位置しており、前記ニードルを弁座に押し付けることによって閉弁する一方、前記ニードルを前記弁座から離れる方向に移動させることによって開弁し、その開弁に伴って内燃機関の燃焼室内に気体燃料を噴射する燃料噴射装置において、
前記燃料噴射弁は、前記吸気ポートよりも内燃機関のピストン寄りに位置しており、
前記燃料噴射弁の前記弁座から内燃機関の前記燃焼室までの間には、前記気体燃料を流すための単独の燃料噴射通路が存在しており、
前記燃料噴射通路における前記気体燃料の流通断面は、前記燃料噴射通路の延びる方向の定められた長さに亘って、内燃機関の点火プラグ寄りの片側よりも内燃機関のピストン寄りの片側の方が大きくされている燃料噴射装置。
【請求項2】
前記燃料噴射通路の前記流通断面のうち、前記点火プラグ寄りの片側の流通断面は、前記ピストン寄りの片側の前記流通断面から前記点火プラグに向かう方向に突出する形状であり、且つ、前記吸気ポートの並び方向において前記燃料噴射通路の中央を中心とする対称形状となっている請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記燃料噴射弁の前記ボディには、前記気体燃料を噴射するための単独の噴孔が、前記弁座から前記燃焼室に向けて延びるように形成されており、
前記燃料噴射通路は、前記噴孔の内壁によって形成されている請求項1又は2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
内燃機関における前記燃料噴射弁と前記燃焼室との間の部材には、前記燃料噴射弁から噴射された前記気体燃料を通過させる単独の貫通孔が形成されており、
前記燃料噴射通路は、前記貫通孔の内壁によって形成されている請求項1又は2に記載の燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃料噴射装置として、内燃機関の燃焼室内に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えたものが知られている。燃料噴射弁は、そのボディの内部にニードルが位置しており、ニードルを弁座に押し付けることによって閉弁する。一方、ニードルを弁座から離れる方向に移動させると、燃料噴射弁が開弁する。これにより、燃料噴射弁から燃焼室内に燃料が噴射される。
【0003】
特許文献1の燃料噴射弁は、ボディに形成された噴孔の開口部に弁座が形成されている。この弁座に対し、燃料噴射弁におけるニードルの先端に形成された弁体が押し付けられている。ニードルを燃料噴射弁に対し突出する方向に移動させると、弁体が弁座から離れる。これにより燃料噴射弁が開弁する。このときには弁座と弁体との間から燃料が噴射される。
【0004】
また、上記燃料噴射弁では、噴孔の開口部の形状を楕円形としている。これにより、ニードルの弁体が弁座に押し付けられた位置からの同ニードルの移動量(リフト量)が少ないとき、燃料が噴孔の開口部の長径方向に噴射されやすく、且つ噴孔の短径方向に噴射されにくくなるようにしている。こうした燃料噴射弁における燃料の噴射方向の調整を利用すれば、内燃機関の吸気バルブ及び排気バルブといった部材に上記燃料が当たりにくくなるようにすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-125475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1における燃料噴射弁からの燃料の噴射方向の調整は、ニードルのリフト量が小さいときには有効なものの、ニードルのリフト量が大きいときには上記調整を効果的に行うことが難しい。これは、ニードルのリフト量が大きいときには、弁座と弁体との間を通過する燃料の流量が多くなるため、噴孔の開口部の形状が燃料の噴射方向に及ぼす影響が小さくなることが原因である。
【0007】
このことから、密度の小さい気体燃料を燃料噴射弁から噴射する場合、必要な燃料噴射量を確保するためにニードルのリフト量を大きくしなければならないため、燃料噴射弁からの気体燃料の噴射方向を効果的に調整することが難しくなる。その結果、燃料噴射弁から噴射された気体燃料が、内燃機における吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たりやすくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する燃料噴射装置は、内燃機関における吸気ポート間に対応する位置にある燃料噴射弁を備える。燃料噴射弁は、そのボディの内部にニードルが位置しており、ニードルを弁座に押し付けることによって閉弁する一方、ニードルを弁座から離れる方向に移動させることによって開弁し、その開弁に伴って内燃機関の燃焼室内に気体燃料を噴射する。燃料噴射弁は、吸気ポートよりも内燃機関のピストン寄りに位置している。燃料噴射弁の弁座から内燃機関の燃焼室までの間には、上記気体燃料を流すための単独の燃料噴射通路が存在している。燃料噴射通路における気体燃料の流通断面は、燃料噴射通路の延びる方向の定められた長さに亘って、内燃機関の点火プラグ寄りの片側よりも内燃機関のピストン寄りの片側の方が大きくされている。
【0009】
上記構成によれば、燃料噴射弁から噴射される気体燃料は、燃料噴射弁の弁座から内燃機関の燃焼室までの間に位置する燃料噴射通路を通過し、その後に燃焼室内に噴射される。従って、燃焼室内に噴射される気体燃料の広がり方は、燃料噴射通路における気体燃料の流通断面の形状から影響を受ける。その流通断面の形状は、内燃機関の点火プラグ寄りの片側よりも内燃機関のピストン寄りの片側の方が大きくされている。このため、燃料噴射弁から燃焼室内に噴射された気体燃料が、燃焼室内で点火プラグ寄りに広がることは抑制される。その結果、気体燃料が燃焼室内で吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たることを抑制できる。
【0010】
上記燃料噴射装置において、燃料噴射通路の流通断面は、次のような形状とすることが考えられる。すなわち、上記流通断面のうち、点火プラグ寄りの片側の流通断面は、ピストン寄りの片側の前記流通断面から点火プラグに向かう方向に突出する形状とされる。更に、点火プラグ寄りの片側の流通断面は、吸気ポートの並び方向において燃料噴射通路の中央を中心とする対称形状となるようにされる。
【0011】
上記構成によれば、燃料噴射通路の流通断面のうちの点火プラグ寄りの片側の流通断面が上述したように形成されているため、燃料噴射弁から燃焼室内に噴射された気体燃料が吸気バルブに向けて広がることを抑制できる。
【0012】
上記燃料噴射装置において、燃料噴射弁のボディには、気体燃料を噴射するための単独の噴孔が、弁座から燃焼室に向けて延びるように形成されているものとすることが考えられる。そして、この噴孔の内壁によって燃料噴射通路が形成される。
【0013】
上記構成によれば、気体燃料が燃焼室内で吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たることを抑制する構造は、燃料噴射弁のボディにおける噴孔によって実現される。詳しくは、噴孔の内壁によって上記燃料噴射通路が形成される。従って、上記燃料噴射通路を有する燃料噴射弁を用いるだけで、気体燃料が燃焼室内で吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たることを抑制でき、内燃機関における燃料噴射弁以外の箇所を変更する必要がない。
【0014】
上記燃料噴射装置において、内燃機関における燃料噴射弁と燃焼室との間の部材には、燃料噴射弁から噴射された気体燃料を通過させる単独の貫通孔が形成されるものとすることが考えられる。この貫通孔の内壁によって燃料噴射通路が形成される。
【0015】
上記構成によれば、気体燃料が燃焼室内で吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たることを抑制する構造は、内燃機関における燃料噴射弁と燃焼室との間の部材にある貫通孔によって実現される。詳しくは、貫通孔の内壁によって上記燃料噴射通路が形成される。従って、内燃機関における燃料噴射弁と燃焼室との間の部材に、貫通孔の内壁によって燃料噴射通路を形成するだけで、気体燃料が燃焼室内で吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たることを抑制できる。言い換えれば、気体燃料が燃焼室内で吸気バルブ及び排気バルブといった部材に当たることを抑制するために、特有の構造を燃料噴射弁に持たせる必要がない。このため、燃料噴射弁を燃料噴射量増量に適した設計にするなど、燃料噴射弁の設計の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の内燃機関における燃焼室及びその周辺の構造を示す略図である。
図2】上記燃焼室及びその周辺を図1の下方から見た状態を示す略図である。
図3】上記燃焼室及びその周辺を図1の矢印A方向から見た状態を示す略図である。
図4図1に示す内燃機関の燃料噴射弁の内部構造を示す断面図である。
図5図1に示す内燃機関の燃料噴射弁の内部構造を示す断面図である。
図6図4及び図5に示す燃料噴射弁における噴孔の気体燃料の流通断面を示す断面図である。
図7】第2実施形態の内燃機関における燃料噴射弁及び周辺を拡大して示す断面図である。
図8図7に示す内燃機関の燃料噴射弁における噴孔の気体燃料の流通断面を示す断面図である。
図9】燃料噴射通路における気体燃料の流通断面の他の例を示す断面図である。
図10】燃料噴射通路における気体燃料の流通断面の他の例を示す断面図である。
図11】燃料噴射通路における気体燃料の流通断面の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、燃料噴射装置の第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。
図1に示すように、内燃機関は、シリンダブロック11、シリンダヘッド12、及びピストン13を備えている。シリンダヘッド12には、吸気ポート14及び排気ポート15が形成されている。吸気ポート14及び排気ポート15は、シリンダブロック11、シリンダヘッド12、及びピストン13によって区画された燃焼室16に繋がっている。ピストン13は、内燃機関の駆動に伴ってシリンダブロック11内で往復動する。こうしたピストン13の往復動に伴い、内燃機関の吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び排気行程が繰り返される。
【0018】
シリンダヘッド12には、吸気バルブ17、排気バルブ18、点火プラグ19、及び燃料噴射弁20が配置されている。吸気バルブ17は、内燃機関の駆動に伴って開閉動作することにより、吸気ポート14を燃焼室16に対し接続したり遮断したりする。吸気バルブ17は、内燃機関の吸気行程で開弁し、吸気行程以外の行程では閉弁する。排気バルブ18は、内燃機関の駆動に伴って開閉動作することにより、燃焼室16に対し排気ポート15を接続したり遮断したりする。排気バルブ18は、内燃機関の排気行程で開弁し、排気行程以外の行程では閉弁する。
【0019】
内燃機関の吸気行程で吸気バルブ17が開弁すると、吸気ポート14から燃焼室16に空気が吸入される。燃焼室16内には燃料噴射弁20から気体燃料が噴射される。そして、内燃機関の圧縮行程で燃焼室16内の空気及び気体燃料が圧縮される。このように圧縮された気体燃料に対し点火プラグ19による点火が行われることにより、気体燃料が燃焼して内燃機関が膨張行程に移行する。その後、内燃機関の排気行程で排気バルブ18が開弁し、燃焼室16から排気ポート15に上記燃焼後の排気が排出される。
【0020】
<内燃機関における燃焼室16及びその周辺の詳細な構造>
図2及び図3はそれぞれ、燃焼室16及びその周辺を図1の下方及び図1の矢印A方向から見た状態を示している。図2及び図3から分かるように、吸気ポート14及び吸気バルブ17は、一つの燃焼室16につき二つずつ設けられており、燃焼室16における図1及び図2の左半分に並列となるように配置されている。排気ポート15及び排気バルブ18は、一つの燃焼室16につき二つずつ設けられており、燃焼室16における図1及び図2の右半分に並列となるように配置されている。
【0021】
図2に示すように、点火プラグ19は、燃焼室16の中央に対応する位置であって、且つ、吸気バルブ17と排気バルブ18との間に位置している。図1図3に示すように、燃料噴射弁20は、シリンダヘッド12に対し燃焼室16に向けて挿入されることにより、吸気ポート14間に対応する位置であって、且つ、吸気ポート14よりもピストン13寄りに位置している。内燃機関の燃料噴射装置は、上記燃料噴射弁20を備えている。
【0022】
<燃料噴射弁20の構造>
図4及び図5に示すように、燃料噴射弁20のボディ21の内部には、ニードル22及び弁座23が位置している。ボディ21の内部には上記気体燃料が供給される。ボディ21には、弁座23から内燃機関の燃焼室16(図1)に向けて延びる単独の噴孔24が形成されている。噴孔24は燃焼室16と繋がっている。この噴孔24の内壁により、単独の燃料噴射通路25が形成されている。燃料噴射通路25は、上記気体燃料を流すためのものであって、燃料噴射弁20の弁座23から内燃機関の燃焼室16までの間に位置している。
【0023】
燃料噴射弁20のニードル22は、ばねの弾性力と電磁ソレノイドの電磁力とにより、ボディ21の内部でニードル22の長手方向に移動することが可能となっている。このように移動するニードル22は弁座23に対し近づいたり離れたりする。ニードル22の弁座23寄りの端部には弁体26が形成されている。
【0024】
燃料噴射弁20は、ニードル22を弁座23に近づけて図4に示すように弁体26を弁座23に押し付けることによって閉弁する。また、燃料噴射弁20は、図5に示すように弁体26が弁座23から離れる方向にニードル22を移動させることによって開弁し、その開弁に伴って燃焼室16内に上記気体燃料を噴射する。このときの気体燃料は、燃料噴射弁20における噴孔24の内部、すなわち燃料噴射通路25から燃焼室16内に噴射される。
【0025】
<燃料噴射通路25における気体燃料の流通断面の形状>
図6は、燃料噴射通路25における気体燃料の流通断面を示している。図6から分かるように、燃料噴射通路25の上記流通断面は、内燃機関の点火プラグ19寄りの片側よりも、内燃機関のピストン13寄りの片側の方が大きくされている。言い換えれば、上記流通断面は、図1の上寄りの片側よりも、図1の下寄りの片側の方が大きくされている。
【0026】
燃料噴射通路25の上記流通断面のうち、点火プラグ19寄りの片側の流通断面は、ピストン13寄りの片側の流通断面から点火プラグ19に向かう方向に突出する形状となっている。更に、燃料噴射通路25の上記流通断面のうち、点火プラグ19寄りの片側の流通断面は、吸気ポート14の並び方向、すなわち図6の左右方向において、燃料噴射通路25の中央を中心とする対称形状となっている。
【0027】
燃料噴射通路25の上記流通断面は、燃料噴射通路25の延びる方向の定められた長さに亘って、上記形状となっている。
次に、本実施形態の燃料噴射装置の作用効果について説明する。
【0028】
(1-1)燃料噴射弁20から気体燃料を燃焼室16内に噴射する場合、その気体燃料と燃焼室16内の空気とが均質となるように混合することが、気体燃料の燃焼後に生じるNOxを低減するためには好ましい。しかし、燃焼室16内で気体燃料と空気とが均質となるように混合されるよう、例えば燃料噴射弁20から気体燃料が広く噴射されるようにすると、噴射された気体燃料が吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たるおそれがある。
【0029】
上記燃料噴射装置では、燃料噴射弁20から噴射される気体燃料は、燃料噴射弁20の弁座23から内燃機関の燃焼室16までの間に位置する燃料噴射通路25を通過し、その後に燃焼室16内に噴射される。従って、燃焼室16内に噴射される気体燃料の広がり方は、燃料噴射通路25における気体燃料の流通断面の形状から影響を受ける。その流通断面の形状は、内燃機関の点火プラグ19寄りの片側よりも内燃機関のピストン13寄りの片側の方が大きくされている。このため、燃料噴射弁20から燃焼室16内に噴射された気体燃料が、燃焼室16内で点火プラグ19寄りに広がることは抑制される。その結果、気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たることを抑制できる。
【0030】
燃料噴射弁20から燃焼室16内に噴射された気体燃料が開弁終期の吸気バルブ17に当たったとすると、その気体燃料が吸気バルブ17に当たった後に吸気ポート14に入り込むおそれがある。この場合、次に吸気バルブ17が開弁するとき、吸気ポート14から燃焼室16に吸入される空気に混じって気体燃料も燃焼室16に吸入され、その気体燃料が排気バルブ18等の高温となる箇所に接触して異常燃焼を起こすおそれがある。また、燃料噴射弁20から燃焼室16内に噴射された気体燃料が直接的に排気バルブ18に当たった場合にも、その気体燃料が高温となる排気バルブ18によって着火して異常燃焼を起こすおそれがある。しかし、これらのように異常燃焼が生じることは、燃料噴射弁20から噴射された気体燃料が、上述したように吸気バルブ17及び排気バルブ18に当たることが抑制されることによって回避される。
【0031】
(1-2)燃料噴射通路25の上記流通断面のうち、点火プラグ19寄りの片側の流通断面は、ピストン13寄りの片側の流通断面から点火プラグ19に向かう方向に突出する形状となっている。更に、点火プラグ19寄りの片側の上記流通断面は、吸気ポート14の並び方向において、燃料噴射通路25の中央を中心とする対称形状となっている。これにより、燃料噴射弁20から燃焼室16内に噴射された気体燃料は、図3に破線で示すように広がる。その結果、上記気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17に向けて広がることは抑制される。
【0032】
(1-3)気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たることを抑制する構造は、燃料噴射弁20のボディ21における噴孔24によって実現される。詳しくは、噴孔24の内壁によって上記燃料噴射通路25が形成される。従って、上記燃料噴射通路25を有する燃料噴射弁20を用いるだけで、気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たることを抑制でき、内燃機関における燃料噴射弁20以外の箇所を変更する必要がない。
【0033】
[第2実施形態]
次に、燃料噴射装置の第2実施形態について、図7及び図8を参照して説明する。
この実施形態では、第1実施形態のように燃料噴射通路25を燃料噴射弁20に形成する代わりに、図7に示すように内燃機関のシリンダヘッド12に燃料噴射通路25を形成している。詳しくは、シリンダヘッド12には、燃料噴射弁20を挿入するための挿入部31が形成されている。シリンダヘッド12における上記挿入部31と燃焼室16とを隔てる隔壁32には貫通孔33が形成されている。貫通孔33は燃料噴射弁20の噴孔24と燃焼室16とを繋いでいる。この実施形態の燃料噴射通路25は、上記貫通孔33の内壁によって形成されている。図8に示すように、この実施形態の燃料噴射弁20における噴孔24の気体燃料の流通断面は円形とされている。
【0034】
この実施形態によれば、第1実施形態の(1-1)及び(1-2)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(2-1)気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たることを抑制する構造は、シリンダヘッド12における燃料噴射弁20の噴孔24と燃焼室16との間の隔壁32にある貫通孔33によって実現される。詳しくは、貫通孔33の内壁によって燃料噴射通路25が形成される。従って、シリンダヘッド12の隔壁32に、貫通孔33の内壁によって燃料噴射通路25を形成するだけで、気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たることを抑制できる。この場合、気体燃料が燃焼室16内で吸気バルブ17及び排気バルブ18といった部材に当たることを抑制するために、特有の構造を燃料噴射弁20に持たせる必要がない。このため、燃料噴射弁20を燃料噴射量増量に適した設計にするなど、燃料噴射弁20の設計の自由度を高めることができる。
【0035】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0036】
・第1実施形態及び第2実施形態において、燃料噴射通路25における気体燃料の流通断面を適宜変更してもよい。例えば、図9図11のような形状に上記流通断面を変更することが考えられる。
【符号の説明】
【0037】
11…シリンダブロック
12…シリンダヘッド
13…ピストン
14…吸気ポート
15…排気ポート
16…燃焼室
17…吸気バルブ
18…排気バルブ
19…点火プラグ
20…燃料噴射弁
21…ボディ
22…ニードル
23…弁座
24…噴孔
25…燃料噴射通路
26…弁体
31…挿入部
32…隔壁
33…貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11