(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電源回路及び光海底ケーブル
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20240717BHJP
H04B 3/44 20060101ALI20240717BHJP
H04B 10/29 20130101ALI20240717BHJP
【FI】
H02M3/00 H
H04B3/44
H04B10/29
(21)【出願番号】P 2022576598
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2022000319
(87)【国際公開番号】W WO2022158311
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2021008076
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】新井 成浩
【審査官】武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-171361(JP,A)
【文献】特開2000-278935(JP,A)
【文献】特開2020-78197(JP,A)
【文献】特開2019-160755(JP,A)
【文献】特開平7-154310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H04B 3/44
H04B 10/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電圧を入力し、フィードバック制御用の制御信号に基づき調整した電圧を、所定の電流を流すことによって動作する負荷に出力するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータから出力される電圧に応じて参照電圧を生成する分圧抵抗と、
前記負荷に流れる電流に応じた電流検出電圧を生成する電流検出抵抗と、
前記参照電圧及び前記電流検出電圧を比較し、比較結果を表す前記制御信号を前記DC/DCコンバータへ出力するフィードバック回路と
を含む電流制御回路、及び
各前記DC/DCコンバータに前記所定の電圧を入力する端子において並列に接続された1つ以上のツェナーダイオード
を含む回路要素を複数個備え、
複数個の前記回路要素のそれぞれが互いに直列に接続され、
互いに直列に接続された複数個の前記回路要素に外部電源からシステム電流が供給される
電源回路。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータは、前記所定の電圧の入力中に前記所定の電圧を常に昇圧した電圧を出力する
請求項1に記載の電源回路。
【請求項3】
前記フィードバック回路は、前記参照電圧と前記電流検出電圧を比較し、比較結果を表す前記制御信号を前記DC/DCコンバータへ出力するコンパレータである
請求項1又は2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記フィードバック回路は、前記参照電圧と前記電流検出電圧を比較し、比較結果を表す前記制御信号を前記DC/DCコンバータへ出力するオペアンプである
請求項1又は2に記載の電源回路。
【請求項5】
前記DC/DCコンバータから出力される電圧を安定化するための、ショットキーダイオード、コイル、及びコンデンサを含み、
前記ショットキーダイオードは、前記DC/DCコンバータの電圧を出力する正極端子及び負極端子に接続され、
前記コイルは、前記正極端子と前記負荷の正側端との間に接続され、
前記コンデンサは、前記正側端と前記負極端子との間に接続された
請求項1乃至4の何れか1項に記載の電源回路。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の電源回路と、
光ファイバーと、
入力側の前記光ファイバーを伝搬してきた光信号を増幅して出力側の前記光ファイバーへ出力する、互いに直列に接続された複数の光増幅器と、
前記光増幅器に含まれる前記負荷であるレーザーモジュール
を備えた光海底ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本の電源ラインに互いに直列に接続された複数の負荷のそれぞれに所定の電流を供給する電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
海底ケーブルシステムは、陸地に設置される端局装置と、海底に設置される海底装置と、全長が数千キロメートルに及ぶこともあるケーブルとを含む。海底ケーブルシステムでは、電源ケーブルを通じて定電流(以下、「システム電流」と称す)を供給する給電方式を採用している。このような海底ケーブルシステムを構成する海底装置として、光ファイバーを伝送されることによって減衰した光信号を増幅して元の光信号レベルに回復させる海底中継器がある。
【0003】
世界的な情報通信量の増大に伴い、海底ケーブルシステムの大容量化が著しい。このようなデータ通信を実現するために、海底中継器にはより高い光出力が求められている。更に、海底ケーブルシステムの大容量化に伴い、海底中継器の所要数量も大幅に増加する傾向にある。しかしながら、陸上局から給電可能な電力には限界があるため、電源効率が高い海底中継器が必要とされている。
【0004】
電源ケーブルに互いに直列に接続された複数の海底中継器に電流を供給する技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の光海底中継器の電源回路では、給電線の途中に直列に挿入された各ツェナーダイオードの両端に現れる直流定電圧を電源として、各ツェナーダイオードに並列に接続された、光海底中継器の各中継器回路が動作する。通常、光海底中継器は、レーザーモジュールを内蔵し、レーザーモジュール駆動回路によってレーザーモジュールに所定の電流を流すことによって光出力を得る。
【0005】
本発明で参照する光海底中継器用の電源回路について説明する。
【0006】
本発明で参照する電源回路の構成について説明する。
図3は、本発明で参照する電源回路の構成の一例を示す回路図である。電源回路109には、外部電源300からシステム電流が供給される。電源回路109は、電流制御回路159と、1つ以上のツェナーダイオード160とを含む。1つ以上のツェナーダイオード160のそれぞれは、互いに直列に接続される。尚、
図3では、1つのツェナーダイオード160が例示されているが、ツェナーダイオード160は、実際には、2つ以上のツェナーダイオードを含んでもよい。電流制御回路159は、DC/DCコンバータ119と、分圧抵抗120と、電流検出抵抗130と、レーザーモジュール駆動回路149とを含む。DC/DCコンバータ119は、所定の電圧V
inを入力し、所定の電圧V
outを、直列に接続された、レーザーモジュール209、レーザーモジュール駆動回路149、及び電流検出抵抗130に出力する。分圧抵抗120は、DC/DCコンバータ119から出力される電圧V
outに応じて参照電圧V
refを生成する。電流検出抵抗130は、レーザーモジュール209に流れる電流Iに応じた電流検出電圧V
monを生成する。レーザーモジュール駆動回路149は、参照電圧V
refと電流検出電圧V
monが一致するように、レーザーモジュール209に流れる電流Iを調節する。レーザーモジュール駆動回路149は、IC(Integrated Circuit)及びトランジスタを含む。ツェナーダイオード160は、システム電流が入力される端子間に接続される。
【0007】
電源回路109の動作の一例について説明する。尚、以下の説明では、説明を簡単にするために、電源回路109の電流制御回路159における変換損失を無視することとする。又、陸上の給電装置(外部電源300)から海底ケーブルには、最大1A(アンペア)のシステム電流しか流せないこととする。又、レーザーモジュール209において、1.2Aの電流が消費されることとする。又、レーザーモジュール209は、動作電圧が2V(ボルト)のレーザーダイオードを2個含むこととする。又、レーザーモジュール駆動回路149のトランジスタにおける電圧降下は2Vであることとする。又、電流検出抵抗130における電圧降下は1Vであることとする。つまり、DC/DCコンバータ119の出力側における消費電力は、(2V×2+2V+1V)×1.2A=8.4W(ワット)である。この場合、DC/DCコンバータ119の入力側に必要な電圧は、8.4W/1A=8.4Vである。しかしながら、光海底中継器で利用可能な高信頼度ツェナーダイオードのツェナー電圧の種類は限定されている。例えば、ツェナーダイオードのツェナー電圧が7Vであれば、ツェナーダイオード160として、直列に接続された2個のツェナーダイオードが使用される(合計のツェナー電圧が14V)。このとき、DC/DCコンバータ119の入力側における消費電力は14V×1A=14WでありDC/DCコンバータ119の入力側対出力側における電力効率は、8.4W/14W=60%となる。
【0008】
高い電源効率で電流を供給する技術の一例が特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の電源装置は、DC/DCコンバータ(Direct Current to Direct Current Converter)と、検出抵抗と、指示電圧生成部と、コンパレータと、電源部と、位相補償部とを備える。コンパレータは、検出電圧が指示電圧より大きい場合、ハイレベルのフィードバック電圧を生成し、検出電圧が指示電圧より小さい場合、ローレベルのフィードバック電圧を生成する。DC/DCコンバータは、フィードバック電圧が内部のリファレンス電圧より大きい場合、発光ダイオードの駆動電流を低下させ、フィードバック電圧がリファレンス電圧より小さい場合、駆動電流を上昇させる。上記構成の結果、特許文献2に記載の電源装置では、高い電源効率で発光ダイオードの調光を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭63-005630号公報
【文献】特開2019-103289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明で参照する電源回路109のレーザーモジュール駆動回路149には、レーザーモジュール209が直列に接続されるので、レーザーモジュール209と同じ大きさの電流(例えば、前述した1.2A)が流れる。その結果、レーザーモジュール駆動回路149に含まれるトランジスタにおける電圧降下(例えば、前述した2V)が発生する。そのため、電源回路109には、レーザーモジュール駆動回路149で発生する電圧降下に起因して電源効率が低いという問題があった。
【0011】
電源回路109における課題について、より詳細に説明する。もしも、レーザーモジュール駆動回路149における電圧降下(例えば、前述した2V)が無ければ、DC/DCコンバータ119の出力側における消費電力は、(2V×2+1V)×1.2A=6Wである。この場合、DC/DCコンバータ119の入力側に必要な電圧は、6W/1A=6Vである。例えば、ツェナーダイオードのツェナー電圧が7Vであれば、ツェナーダイオード160として、1個のツェナーダイオードが使用される。このとき、DC/DCコンバータ119の入力側における消費電力は7V×1A=7Wであり、DC/DCコンバータ119の入力側対出力側における電力効率は、6W/7W=86%となる。即ち、本例と比較すると、電源回路109に関する上述の例では、レーザーモジュール駆動回路149における電圧降下(例えば、前述した2V)に起因して、電力効率が86%から60%に低下し、外部電源300の供給電圧が7Vから14Vに上昇している。このように、レーザーモジュール駆動回路149における電圧降下は、電源回路109における電力効率を大幅に低下させる原因になり得る。
【0012】
特許文献2に記載の電源装置は、定電圧を入力する。しかしながら、1本の電源ラインにシステム電流(定電流)が供給される場合に、互いに直列に接続された複数の電源装置のそれぞれに定電圧を供給することが考慮されていない。そのため、特許文献2に記載の電源装置では、そのままでは、1本の電源ラインに定電流が供給される場合に、互いに直列に接続された複数の電源装置のそれぞれは定電圧の供給を受けられない。従って、特許文献2に記載の電源装置には、1本の電源ラインに定電流が供給される場合に、複数の負荷のそれぞれに対して、所定の電流を供給することが困難であるという問題があった。尚、複数の電源装置が電流制御する各発光ダイオードに流す電流を1本の電源ラインに供給される定電流に一致させるという方法を採用することも一般的には困難である。その理由は、例えば、各発光ダイオードが必要とする電流が同一でない(出力の異なる発光ダイオードが混在する)ことが一般的であり、更に発光ダイオード毎の入出力特性の経年変化が発生するからである。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、1本の電源ラインに定電流が供給される場合に、複数の負荷のそれぞれに高い電源効率で所定の電流を供給することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様において、電源回路は、所定の電圧を入力し、フィードバック制御用の制御信号に基づき調整した電圧を、所定の電流を流すことによって動作する負荷に出力するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータから出力される電圧に応じて参照電圧を生成する分圧抵抗と、負荷に流れる電流に応じた電流検出電圧を生成する電流検出抵抗と、参照電圧及び電流検出電圧を比較し、比較結果を表す制御信号をDC/DCコンバータへ出力するフィードバック回路とを含む電流制御回路、及び各DC/DCコンバータに所定の電圧を入力する端子において並列に接続された1つ以上のツェナーダイオードを含む回路要素を複数個含み、複数個の回路要素のそれぞれが互いに直列に接続され、互いに直列に接続された複数個の回路要素に外部電源からシステム電流が供給される。
【0015】
本発明の一態様において、光海底ケーブルは、所定の電圧を入力し、フィードバック制御用の制御信号に基づき調整した電圧を、所定の電流を流すことによって動作する負荷に出力するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータから出力される電圧に応じて参照電圧を生成する分圧抵抗と、負荷に流れる電流に応じた電流検出電圧を生成する電流検出抵抗と、参照電圧及び電流検出電圧を比較し、比較結果を表す制御信号をDC/DCコンバータへ出力するフィードバック回路とを含む電流制御回路、及び各DC/DCコンバータに所定の電圧を入力する端子において並列に接続された1つ以上のツェナーダイオードを含む回路要素を複数個含み、複数個の回路要素のそれぞれが互いに直列に接続され、互いに直列に接続された複数個の回路要素に外部電源からシステム電流が供給される電源回路と、光ファイバーと、入力側の光ファイバーを伝搬してきた光信号を増幅して出力側の光ファイバーへ出力する、互いに直列に接続された複数の光増幅器と、光増幅器に含まれる負荷であるレーザーモジュールとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1本の電源ラインに定電流が供給される場合に、複数の負荷のそれぞれに高い電源効率で所定の電流を供給することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態における電源回路の構成の一例を示す回路図である。
【
図2】本発明の第2実施形態における電源回路の構成の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明で参照する電源回路の構成の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、すべての図面において、同等の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の各実施形態の基本である第1実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態における構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態における電源回路100の構成の一例を示す回路図である。
【0021】
本実施形態における電源回路100は、複数個の回路要素170を含む。複数個の回路要素170のそれぞれは、互いに直列に接続される。互いに直列に接続された複数個の回路要素170には、外部電源300からシステム電流が供給される。
【0022】
それぞれの回路要素170は、電流制御回路150と、1つ以上のツェナーダイオード160とを含む。
【0023】
1つ以上のツェナーダイオード160のそれぞれは、互いに直列に接続される。尚、
図1では、1つのツェナーダイオード160が例示されているが、ツェナーダイオード160は、実際には、2つ以上のツェナーダイオードを含んでもよい。
【0024】
電流制御回路150は、DC/DCコンバータ110と、分圧抵抗120と、電流検出抵抗130と、フィードバック回路140とを含む。
【0025】
DC/DCコンバータ110は、所定の電圧Vinを入力し、フィードバック制御用の制御信号Sfbに基づき調整した電圧Voutを負荷200に出力する。ここで、負荷200は、所定の電圧の範囲(電流の変化する割合の範囲に比べて相対的に狭い電圧の変化する割合の範囲)内で電流を流すことによって動作する負荷(以下、「電流駆動負荷」と称す)であることとする。電流駆動負荷は、例えば、レーザーダイオード、発光ダイオードである。
【0026】
分圧抵抗120は、DC/DCコンバータ110から出力される電圧Voutに応じて参照電圧Vrefを生成する。
【0027】
電流検出抵抗130は、負荷200に流れる電流に応じた電流検出電圧Vmonを生成する。
【0028】
フィードバック回路140は、参照電圧Vref及び電流検出電圧Vmonを比較し、比較結果を表す制御信号SfbをDC/DCコンバータ110へ出力する。フィードバック回路140は、例えば、コンパレータ、又はオペアンプである。
【0029】
ツェナーダイオード160は、各DC/DCコンバータ110に所定の電圧Vinを入力する端子において並列に接続される。
【0030】
本実施形態における動作について説明する。
【0031】
1つ以上のツェナーダイオード160は、外部電源300から供給されたシステム電流に応じて、所定の電圧Vinを発生させる。
【0032】
DC/DCコンバータ110は、所定の電圧Vinを入力し、フィードバック制御用の制御信号Sfbに基づき調整した電圧Voutを負荷200に出力する。
【0033】
電流検出抵抗130(抵抗値はR1で表す)は、負荷200に流れる電流Iに応じた電流検出電圧Vmon=I×R1を生成する。
【0034】
分圧抵抗120(抵抗値はR2及びR3で表す)は、DC/DCコンバータ110から出力される電圧Voutに応じて参照電圧Vref=VoutR2/(R2+R3)を生成する。ここで、分圧抵抗120の抵抗値R2及びR3は、負荷200に流すべき電流Iについて、I×R1=VoutR2/(R2+R3)となるように予め決定されていることとする。
【0035】
フィードバック回路140は、参照電圧V
ref及び電流検出電圧V
monを比較し、参照電圧V
refと電流検出電圧V
monの比較結果に応じた制御信号S
fbをDC/DCコンバータ110(
図2の例ではFEEDBACK端子)へ出力する。ここで、制御信号S
fbは、DC/DCコンバータ110が出力する電圧V
outを増加又は減少させるための信号である。制御信号S
fbがデジタル信号の場合、DC/DCコンバータ110は、例えば、制御信号S
fbが“-1”の場合に電圧V
outを所定量(微小量)だけ増加させ、制御信号S
fbが“1”の場合に電圧V
outを所定量(微小量)だけ減少させる。制御信号S
fbがアナログ信号の場合、DC/DCコンバータ110は、例えば、制御信号S
fbが負値の場合に電圧V
outを負値の絶対値に応じた微小量だけ増加させ、制御信号S
fbが正値の場合に電圧V
outを正値の絶対値に応じた微小量だけ減少させる。
【0036】
DC/DCコンバータ110は、入力された制御信号Sfbに応じて、参照電圧Vrefと電流検出電圧Vmonが等しくなるように、調整した電圧Voutを負荷200に出力する。ここで、負荷200に流すべき電流Iは設計時に決まるので、電流検出電圧Vmonの負荷200の動作時に期待される値も設計時に決まる。又、DC/DCコンバータ110が出力する電圧Voutの負荷200の動作時に期待される値は、負荷200及び電流検出抵抗130に流すべき電流Iに応じて、設計時に決まる。又、参照電圧Vrefの負荷200の動作時に期待される値は、電圧Voutの負荷200の動作時に期待される値に応じて、設計時に決まる。そして、負荷200は電流駆動負荷なので、電流Iの変化の割合が、電圧Voutの変化の割合に比べて相対的に大きく変化する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の電源回路100では、各回路要素170には、外部電源300からシステム電流が供給される。そして、各回路要素170に含まれるツェナーダイオード160は、各回路要素170に含まれるDC/DCコンバータ110に所定の電圧Vinを供給する。DC/DCコンバータ110は、参照電圧Vrefと電流検出電圧Vmonが等しくなるように、調整した電圧Voutを負荷200に出力する。ここで、負荷200に流すべき電流Iについて、電流検出電圧Vmon=I×R1且つ参照電圧Vref=VoutR2/(R2+R3)である。各電流制御回路150における電力の損失は、抵抗値R1を負荷200の内部抵抗に比べて十分に小さくし、且つ抵抗値R2+R3を負荷200の内部抵抗に比べて十分に大きくすることにより、必要なだけ小さくできる。即ち、本発明で参照する電源回路109における、レーザーモジュール駆動回路149を必要とせず、レーザーモジュール駆動回路149における電圧降下が発生しない。従って、本実施形態の電源回路100には、1本の電源ラインに定電流が供給される場合に、複数の負荷のそれぞれに高い電源効率で所定の電流を供給することができるという効果がある。
【0038】
尚、本実施形態の電源回路100では、DC/DCコンバータ110は、所定の電圧Vinの入力中に所定の電圧Vinを常に昇圧した電圧Voutを出力してもよい。この場合には、本実施形態の電源回路100には、システム電流を供給する際に必要な電圧を抑制できるという効果がある。
【0039】
本実施形態における効果について、本発明で参照する電源回路109の説明における例と対比して(各数値例を援用)、より詳細に説明する。本実施形態の電源回路100には、フィードバック回路140による電圧降下が無いので、DC/DCコンバータ110の出力側における消費電力は、(2V×2+1V)×1.2A=6Wである。この場合、DC/DCコンバータ110の入力側に必要な電圧は、6W/1A=6Vである。例えば、ツェナーダイオードのツェナー電圧が7Vであれば、ツェナーダイオード160として、1個のツェナーダイオードが使用される。このとき、DC/DCコンバータ110の入力側における消費電力は7V×1A=7Wであり、DC/DCコンバータ110の入力側対出力側における電力効率は、6W/7W=86%となる。即ち、上述した電源回路109の説明における例と比較すると、フィードバック回路140における電圧降下(例えば、前述した2V)が無いことに起因して、電力効率が60%から86%に向上し、外部電源300の供給電圧が14Vから7Vに低下している。このように、本実施形態の電源回路100では、本発明で参照する電源回路109に比べて、電源回路100における電力効率を大幅に向上させ、外部電源300の供給電圧を大幅に低下させ得る。例えば、海底中継器は、伝送される光信号の減衰特性に合わせて、通常、60km(キロメートル)乃至80kmの間隔で設置される。海底ケーブルの総長が12000kmである場合、60km間隔ならば約200台の中継器が必要となる。この場合、上述した外部電源300(陸上の給電装置)の供給電圧は、200台×14V=2800Vから、200台×7V=1400Vに抑制できる。そのため、安価で安全性が高い海底ケーブルシステムの構築が可能になる。
【0040】
又、本実施形態の電源回路100は、DC/DCコンバータ110から出力される電圧V
outを安定化するための、ショットキーダイオード715(ショットキーバリアダイオード)、コイル725、及びコンデンサ735等を含んでもよい(後述する
図2参照)。ここで、例えば、ショットキーダイオード715は、DC/DCコンバータ110の電圧V
outを出力する正極端子OUT及び負極端子GNDに接続される。又、コイル725は、正極端子OUTと負荷200の正側端との間に接続される。又、コンデンサ735は、正側端と負極端子GNDとの間に接続される。この場合には、本実施形態の電源回路100には、DC/DCコンバータ110から出力される電圧V
outを安定化することができるという効果がある。
【0041】
又、本実施形態の電源回路100は、光海底ケーブル600に含まれてもよい(後述する
図2参照)。ここで、光海底ケーブル600は、例えば、光ファイバー400と、複数の光増幅器500と、各光増幅器500に含まれる、負荷200であるレーザーモジュール205と、複数の電源回路105とを含む。ここで、複数の光増幅器500のそれぞれは、互いに直列に接続される。そして、各光増幅器500は、入力側の光ファイバー400を伝搬してきた光信号を増幅して出力側の光ファイバー400へ出力する。
(第2実施形態)
本発明の第1実施形態を基本とする、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態における電源回路は、光海底ケーブルの光増幅器に含まれるレーザーモジュールを駆動する電源回路である。
【0042】
本実施形態における構成について説明する。
【0043】
図2は、本発明の第2実施形態における電源回路の構成の一例を示す回路図である。更に、
図2では、レーザーモジュールを含む光増幅器を含む光海底ケーブルを模式的に図示している。
【0044】
本実施形態の光海底ケーブル600は、光ファイバー400と、複数の光増幅器500と、各光増幅器500に含まれる、負荷であるレーザーモジュール205と、複数の電源回路105とを含む。
【0045】
複数の光増幅器500のそれぞれは、互いに直列に接続される。各光増幅器500は、入力側の光ファイバー400を伝搬してきた光信号を増幅して出力側の光ファイバー400へ出力する。
【0046】
レーザーモジュール205は、電流駆動負荷である。レーザーモジュール205は、実際には、2つ以上のレーザーモジュール(レーザーダイオード)を含んでもよい。その場合、レーザーモジュール205のそれぞれは、互いに直列接続される。尚、
図2では、1つのレーザーモジュール205が1つのレーザーダイオードである例を示している。
【0047】
電源回路105は、複数個の回路要素175を含む。
【0048】
複数個の回路要素175のそれぞれは、互いに直列に接続される。互いに直列に接続された複数個の回路要素175には、外部電源300からシステム電流が供給される。それぞれの回路要素175は、電流制御回路155と、1つ以上のツェナーダイオード160とを含む。
【0049】
1つ以上のツェナーダイオード160のそれぞれは、互いに直列に接続される。尚、
図2では、1つのツェナーダイオード160が例示されているが、ツェナーダイオード160は、実際には、2つ以上のツェナーダイオードを含んでもよい。
【0050】
電流制御回路155は、DC/DCコンバータ110と、ショットキーダイオード715(ショットキーバリアダイオード)と、コイル725と、コンデンサ735と、分圧抵抗120と、電流検出抵抗130と、フィードバック回路140とを含む。
【0051】
ツェナーダイオード160は、陸上に設置される給電装置(外部電源300)からシステム電流が供給される給電ラインに、アノードからカソードへの向きとシステム電流の向きとが反対になるように接続される。以降、アノードからカソードへの向きと外部から供給される電流の向きとが反対になるように接続されることを「逆接続」と、アノードからカソードへの向きと外部から供給される電流の向きとが一致するように接続されることを「順接続」と称することとする。
【0052】
DC/DCコンバータ110の入力側(入力端子(IN端子)及びグラウンド端子(GND端子))は、ツェナーダイオード160に並列接続される。
【0053】
DC/DCコンバータ110の出力側(出力端子(OUT端子)及びGND端子)は、ショットキーダイオード715、並びに、それぞれコイル725に直列接続された、コンデンサ735、分圧抵抗120、及び電流検出抵抗130に直列接続されたレーザーモジュール205に並列接続される。ここで、ショットキーダイオード715は逆接続され、レーザーモジュール205は順接続される。
【0054】
DC/DCコンバータ110は、給電装置からのシステム電流によってツェナーダイオード160の両端に発生する降伏電圧Vinを入力し、レーザーモジュール205の駆動に必要な電圧Voutを出力する。
【0055】
ショットキーダイオード715、コンデンサ735、及びコイル725は、DC/DCコンバータ110から出力される電圧Voutを安定化する。
【0056】
フィードバック回路140は、レーザーモジュール205のカソード側と電流検出抵抗130とを結ぶ点における電圧を電流検出電圧Vmonとして入力する。又、フィードバック回路140は、DC/DCコンバータ110から出力された電圧Voutを分圧抵抗120で分圧した電圧を参照電圧Vrefとして入力する。そして、フィードバック回路140は、参照電圧Vrefと電流検出電圧Vmonの差分に応じた信号をDC/DCコンバータ110のフィードバック端子(FEEDBACK端子)へ制御信号Sfbとして出力する。
【0057】
本実施形態における動作について説明する。
【0058】
陸上に設置される給電装置(外部電源300)は、海底機器(例えば、光増幅器500)に対して給電ライン(電源ケーブル)を通じて一定値の電流(システム電流)を供給する。海底機器(例えば、光増幅器500)に並列接続されたツェナーダイオード160のカソード側に正電圧、ツェナーダイオード160のアノード側に負電圧が印加される。ツェナーダイオード160のカソードとアノードの間に電圧が印加されると、システム電流が流れた場合のツェナー効果による降伏電圧によって、カソードとアノードの間の電圧が一定に保たれる。このツェナーダイオード160で生成した電圧を1次側の電圧Vin、DC/DCコンバータ110で出力する電圧を2次側の電圧Voutと称することとする。DC/DCコンバータ110は、2次側の電圧Voutとしてレーザーモジュール205の駆動に必要な電圧を出力する。海底機器が海底中継器である場合には、海底機器に含まれる電流制御回路155のDC/DCコンバータ110が、レーザーモジュール205に定電流を流すための電圧Voutを出力する。電流検出抵抗130は、レーザーモジュール205を流れる電流Iを電流検出電圧Vmonに変換する。フィードバック回路140は、電流検出電圧Vmonと参照電圧Vrefとの差分に応じた制御信号SfbをDC/DCコンバータ110のフィードバック端子(FEEDBACK端子)へ出力する。DC/DCコンバータ110は、電圧Voutが期待電圧になるようにフィードバック制御を行う。ここで、期待電圧は、レーザーモジュール205に所望の定電流を流した時のDC/DCコンバータ110の出力電圧である。DC/DCコンバータ110の出力電圧が期待電圧に一致した際に、電流検出電圧Vmonが参照電圧Vrefに一致するように、参照電圧Vrefが決定されていることとする。尚、レーザーモジュール205は、電流駆動負荷であるため電圧制御では光出力が不安定になり易いので、電流Iが制御される必要がある。又、レーザーモジュール205の特性の経年劣化に対応するためにも、電流Iが制御される必要がある。
【0059】
本実施形態における効果について説明する。
【0060】
第1の効果は、レーザーモジュール205の駆動に必要な電圧Voutを、電流検出抵抗130における電圧降下分を除いて、レーザーモジュール205の順方向における電圧降下分に抑制できることである。ここで、電流検出抵抗130は、レーザーモジュール205の順方向における電圧降下に対応する内部抵抗に比べて、十分に小さな抵抗値に設定できる。
【0061】
本効果が生じる理由は、DC/DCコンバータ110の出力電圧制御におけるフィードバックループ(OUT端子―レーザーモジュール205―電流検出抵抗130-フィードバック回路140―FEEDBACK端子)に、レーザーモジュール205の駆動回路の電流一定制御におけるフィードバックループを兼ねさせたからである。これにより、本発明で参照する電源回路109におけるレーザーモジュール駆動回路149を必要とせず、レーザーモジュール駆動回路149における電圧降下が発生しない。又、レーザーモジュール205の駆動に必要な電圧Voutを抑制でき、延いては電圧Vinを抑制できる。
【0062】
第2の効果は、海底中継器(光増幅器500)の消費電力を抑制できることである。
【0063】
本効果が生じる理由は、レーザーモジュール205の駆動に必要な電圧Voutを、電流検出抵抗130における電圧降下分を除いて、レーザーモジュール205の順方向における電圧降下分に抑制できるからである。即ち、本発明で参照する電源回路109における、レーザーモジュール209に直列に接続されたレーザーモジュール駆動回路149を必要とせず、レーザーモジュール駆動回路149における電圧降下が発生しない。又、電流検出抵抗130及び分圧抵抗120における損失を必要なだけ小さくできることは、第1実施形態で説明した通りである。これにより、レーザーモジュール205の駆動に必要な消費電力を抑制することができる。その結果、例えば、1本の光海底ケーブル600に、より多数の海底中継器を収容することができ、延いては光海底ケーブル600の大容量化を実現することができる。
【0064】
従って、本実施形態の電源回路105には、1本の電源ラインに定電流が供給される場合に、複数の負荷のそれぞれに高い電源効率で所定の電流を供給することができるという効果がある。本効果は、電源供給が困難な海底に設置される海底中継器に電源を供給する用途において顕著である。
【0065】
本実施形態における効果について、本発明で参照する電源回路109の説明における例と対比して(各数値例を援用)、より詳細に説明する。本実施形態の電源回路105には、フィードバック回路140による電圧降下が無いので、DC/DCコンバータ110の出力側における消費電力は、(2V×2+1V)×1.2A=6Wである。この場合、DC/DCコンバータ110の入力側に必要な電圧は、6W/1A=6Vである。例えば、ツェナーダイオードのツェナー電圧が7Vであれば、ツェナーダイオード160として、1個のツェナーダイオードが使用される。このとき、DC/DCコンバータ110の入力側における消費電力は7V×1A=7Wであり、DC/DCコンバータ110の入力側対出力側における電力効率は、6W/7W=86%となる。即ち、上述した電源回路109の説明における例と比較すると、フィードバック回路140における電圧降下(例えば、前述した2V)が無いことに起因して、電力効率が60%から86%に向上し、外部電源300の供給電圧が14Vから7Vに低下している。このように、本実施形態の電源回路105では、本発明で参照する電源回路109に比べて、電源回路105における電力効率を大幅に向上させ、外部電源300の供給電圧を大幅に低下させ得る。
【0066】
又、本実施形態の電源回路105では、ショットキーダイオード715、コンデンサ735、及びコイル725は、DC/DCコンバータ110から出力される電圧Voutを安定化する。従って、本実施形態の電源回路105には、レーザーモジュール205の駆動に必要な電圧Voutが安定化するという効果がある。
【0067】
以上、本発明を、上述した各実施形態およびその変形例によって例示的に説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態およびその変形例に記載した範囲に限定されない。当業者には、係る実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、係る変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、特許請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【0068】
この出願は、2021年1月21日に出願された日本出願特願2021-008076を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、海底、湖底、山岳、高所、地底、トンネル内等の電源供給が困難な場所に設置される電流駆動型の機器に電源を供給する用途において利用できる。
【符号の説明】
【0070】
100、105、109 電源回路
110、119 DC/DCコンバータ
120 分圧抵抗
130 電流検出抵抗
140 フィードバック回路
149 レーザーモジュール駆動回路
150、155、159 電流制御回路
160 ツェナーダイオード
170、175 回路要素
200 負荷
205、209 レーザーモジュール
300 外部電源
400 光ファイバー
500 光増幅器
600 光海底ケーブル
715 ショットキーダイオード
725 コイル
735 コンデンサ