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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20240717BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20240717BHJP
【FI】
A63B53/04 A
A63B102:32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023042860
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2018173211の分割
【原出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2023063587
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(72)【発明者】
【氏名】元川 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 盛治
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019731(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163799(WO,A1)
【文献】特開2008-161597(JP,A)
【文献】特開平04-089071(JP,A)
【文献】特開2013-094178(JP,A)
【文献】特開平10-085373(JP,A)
【文献】JISK7171:2016 プラスチック-曲げ特性の求め方,2016年,[2023年1月29日検索], <https://kikakurui.com/k7/K7171-2016-01.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃フェース、クラウンおよびソールを備えており、
前記クラウン及び/又は前記ソールが、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化プラスチックで構成されたFRP部材を有しており、
前記FRP部材の平均曲げ弾性率が、33GPa以上であり、
前記平均曲げ弾性率は、前記FRP部材から切り出された第1の試験片の曲げ弾性率と、前記FRP部材から切り出された第2の試験片の曲げ弾性率との平均値であり、
前記第1の試験片は、平面視において前記FRP部材の図心と一致した図心を有し長辺がフェース-バック方向に延びる長方形であって、ヘッドの外側に向かって凸となるように曲がっており、
前記第2の試験片は、平面視において前記FRP部材の図心と一致した図心を有し長辺がトウ-ヒール方向に延びる長方形であって、ヘッドの外側に向かって凸となるように曲がっており、
前記曲げ弾性率の測定治具は、第1上面及び第2上面と、これらの間に位置する幅30mmの隙間と、前記第1上面の縁であり前記隙間に面している第1支持縁と、前記第2上面の縁であり前記隙間に面している第2支持縁とを有し、前記第1上面は前記隙間から遠ざかるほど鉛直方向下方に向かうように傾斜しており、前記第2上面は前記隙間から遠ざかるほど鉛直方向下方に向かうように傾斜しており、前記第1支持縁及び前記第2支持縁が鋭角の角の頂部であり、前記第1支持縁と前記第2支持縁とが互いに平行且つ同じ鉛直方向位置でいずれも水平であるように構成され、
前記曲げ弾性率は、上方から見て前記長辺が前記第1支持縁及び前記第2支持縁に垂直な方向となり図心が前記隙間の中心に位置し且つ上側に向かって凸となるように前記各試験片を前記測定治具に載置し、前記隙間の中心において圧子を上方から前記各試験片に当接させ当該圧子を鉛直方向下方に移動させて応力―ひずみ曲線を得ることで測定され、
前記各試験片が、前記圧子の接触領域の裏側において最も下方に位置する点である下面基準点を有し、前記圧子の移動により前記下面基準点が前記試験片に当接する前記第1支持縁及び前記第2支持縁と同じ鉛直方向位置まで下がったときの前記圧子の位置が基準位置とされ、前記圧子が前記基準位置から0.1mm下がったときの応力σがσ1(MPa)とされ、その位置でのひずみεがε1とされ、ひずみεがε1から0.2%増加したときの応力σがσ2(MPa)とされ、その位置でのひずみεがε2とされるとき、前記曲げ弾性率(GPa)が次の式により算出されるゴルフクラブヘッド。
曲げ弾性率=(σ2-σ1)/((ε2-ε1)×1000)
だだし、応力σ(MPa)は次の式により算出され、
σ = 3FL/2bh
この式において、Fは試験力(N)であり、Lは支点間距離(mm)であって30mmであり、bは試験片幅(mm)であり、hは試験片厚み(mm)であり、
ひずみεは次の式により算出され、
ε = 6sh/L
この式において、sは基準位置からの変形量(mm)であり、Lは支点間距離(mm)であって30mmであり、hは試験片厚み(mm)であり、ε1を計算するときの変形量sは0.1mmである。
【請求項2】
前記繊維が、炭素繊維を含み、
前記炭素繊維の引張弾性率が300GPa以上である請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記FRP部材の樹脂含有率が40重量%以下である請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記マトリクス樹脂のガラス転移点が、150℃以上である請求項1からのいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記マトリクス樹脂がエポキシ樹脂である請求項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
ヘッド重量が175g以上225g以下であり、
ヘッド体積が400cc以上であり、
左右慣性モーメントが450×10-6kg・m以上である請求項1からのいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記FRP部材の重量が20g以下である請求項1からのいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記FRP部材が前記クラウンに設けられており、
前記FRP部材の厚みが、0.8mm以下である請求項1からのいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記FRP部材が前記クラウンに設けられており、
重心深度が20mm以上である請求項1からのいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記FRP部材が前記ソールに設けられており、
前記FRP部材の厚みが、1.0mm以下である請求項1からのいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
クラウンに繊維強化プラスチック(FRP)が用いられたゴルフクラブヘッドが知られている。FRPの使用により、ヘッドの設計自由度が向上しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-250933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属のみで形成されたヘッドに比較して、FRPが用いられたヘッドでは、良好な打球音が得られない。多くのゴルファーにとって、打球音は、単なる好みの問題に留まらない。打球音は、ショットに対する評価に影響しうる。打球音は、ゴルファーの心理に影響しうる。打球音は、スイングに影響しうる。
【0005】
本開示は、FRP部材を有しており、打球音が高いヘッドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェース、クラウンおよびソールを備えている。前記クラウン及び/又は前記ソールが、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化プラスチックで構成されたFRP部材を有している。前記FRP部材の平均曲げ弾性率が、25GPa以上である。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面として、FRP部材を有しており、打球音が高いゴルフクラブが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドの平面図である。
図2図2は、図1のヘッドの分解斜視図である。
図3図3は、図1のヘッドのヘッド本体の平面図である。
図4図4は、図3のヘッド本体の斜視図である。
図5図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)は、FRP部材の積層構成の例である。
図6図6は、第2実施形態に係るゴルフクラブヘッドの底面図である。
図7図7は、図1と同じく、第1実施形態に係るゴルフクラブヘッドの平面図である。図7には、FRP部材の曲げ弾性率を測定するための、0度方向試験片及び90度方向試験片の切り出し線が示されている。
図8図8は、FRP部材の曲げ弾性率の測定工程を示す説明図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、実施例の積層構成を示す。
図10図10は、トウ-ヒール方向及びフェース-バック方向を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0010】
図1は、第1実施形態のヘッド100をクラウン側から見た平面図である。図2は、ヘッド100の分解斜視図である。図3はヘッド本体h1をクラウン側から見た平面図である。図4はヘッド本体h1の斜視図である。
【0011】
ヘッド100は、打撃フェース102、クラウン104、ソール106及びホーゼル108を有する。ホーゼル108は、ホーゼル孔108aを有する。ヘッド100は、ウッド型ゴルフクラブヘッドである。ヘッド100の内部は空洞である。すなわち、ヘッド100は、中空である。本実施形態では、ホーゼル孔108aの中心線が、シャフト軸線Z(後述)である。
【0012】
図2がよく示すように、ヘッド100は、ヘッド本体h1と、FRP部材f1とを有する。ヘッド本体h1は、打撃フェース102の全体を有する。ヘッド本体h1は、クラウン104の一部を有する。ヘッド本体h1は、ソール106の全体を有する。ヘッド本体h1は、ホーゼル108の全体を有する。
【0013】
ヘッド本体h1は、FRP部材f1以外の部分を構成している。ヘッド本体h1の材質は、金属である。ヘッド本体h1は、一体成形された1つの部材により形成されていてもよい。ヘッド本体h1は、2以上の部材が接合されることにより形成されていてもよい。
【0014】
クラウン104は、外面104aを有する。ヘッド本体h1は、クラウン外面104aの一部を有する。FRP部材f1は、クラウン外面104aの一部を有する。クラウン外面104aは、ヘッド本体h1とFRP部材f1とで構成されている。
【0015】
ヘッド本体h1は、開口110を有する。開口110は、輪郭112を有する。輪郭112は、ヘッド本体h1のエッジである。開口110は、ヘッド100の外部からヘッド100の内部まで貫通している。換言すれば、開口110は、ヘッド100の外部からヘッド100の中空部まで貫通している。
【0016】
開口110は、クラウン104に設けられている。開口110は、FRP部材f1の位置に対応した位置に設けられうる。例えば、FRP部材f1がソール106に設けられる場合、開口110はソール106に設けられうる。例えば、FRP部材f1がソールからクラウン104にかけて設けられる場合、開口110はソール106からクラウン104にかけて設けられうる。
【0017】
ヘッド本体h1は、クラウン104の表面を構成するクラウン外面104aと、段差116と、支持部118とを有する。段差116の形状は、FRP部材f1の輪郭形状に対応している。段差116は、FRP部材f1の周縁に沿っている。段差116の高さは、FRP部材f1の周縁厚みに対応している。クラウン外面104aにおいて、ヘッド本体h1とFRP部材f1との境界k1には、段差は無い。なお、塗装等の表面処理が施された最終製品としてのヘッド100では、境界k1は視認されない。
【0018】
支持部118は、FRP部材f1の内面に当接している。支持部118は、ヘッド100の内側から、FRP部材f1を支持している。支持部118において、ヘッド本体h1とFRP部材f1とが接合されている。この接合は、接着剤による接着である。
【0019】
FRP部材f1は、全体として板状である。FRP部材f1は、ヘッド100の外側に向かって凸となるように曲がっている。FRP部材f1の外面は、クラウン外面104aである。FRP部材f1の厚みは均一である。FRP部材f1の厚みは不均一であってもよい。
【0020】
開口110の輪郭112よりも内側の部分では、FRP部材f1は、ヘッド本体h1の支持部118により支持されていない。開口110の輪郭112よりも内側の部分では、クラウン104は、FRP部材f1のみによって形成されている。このFRP部材f1のみによって形成されている部分が、FRP単独部とも称される。FRP部材f1は、FRP単独部f11を有する。FRP部材f1の中央部は、FRP単独部f11である。FRP単独部f11の外面はクラウン外面104aであり、FRP単独部f11の内面はヘッド100の中空部に面している。FRP部材f1の周縁部は、支持部118に接着されている。好ましくは、平均曲げ弾性率を測定するための2つの試験片(後述)は、FRP単独部f11から切り出される。
【0021】
FRP部材f1は、繊維強化樹脂のみで形成されている。FRP部材f1の比重は、ヘッド本体h1の比重とは異なる。FRP部材f1の比重は、ヘッド本体h1の比重よりも小さい。FRP部材f1は、ヘッド100の重心位置の自由度を高める。FRP部材f1は、ヘッド100の低重心化に寄与している。FRP部材f1は、ヘッド100の重量配分の自由度を高める。FRP部材f1は、ヘッド100の慣性モーメントの増大に寄与している。なお本願において樹脂とは、樹脂組成物を含む概念である。
【0022】
FRP部材f1の構造及び製造方法は限定されない。好ましくは、FRP部材f1は、1又は2以上のプリプレグにより形成される。本実施形態では、FRP部材f1は、積層されたプリプレグで形成されている。プリプレグは限定されず、UDプリプレグ及び繊維が織られているプリプレグが例示される。繊維が織られているプリプレグは、織物プリプレグとも称される。UDプリプレグでは、繊維が1方向に配向している。UDとは、ユニディレクションの略である。本実施形態では、UDプリプレグが用いられている。FRP部材f1は、UDプリプレグでないプリプレグで形成された層を含んでいても良い。例えばFRP部材f1は、織物層を含んでいても良い。織物層とは、織物プリプレグで形成された層である。
【0023】
本実施形態のFRP部材f1は、積層された複数のUDプリプレグで形成されている。このFRP部材f1では、裁断されたプリプレグが積層されている。FRP部材f1は複数の層を有する。1枚のプリプレグが1つの層を構成している。
【0024】
本実施形態のFRP部材f1は、繊維角度が互いに相違する2つの層を含む。FRP部材f1は、繊維角度θが第1角度θ1である層と、繊維角度θが第2角度θ2である層とを含む。繊維角度が異なる2つの層を有することで、FRP部材f1の異方性が低下しうる。異なる曲げ方向における剛性を高めることで、打球音が改善しうる。
【0025】
図5(a)、図5(b)、図5(c)及び図5(d)は、FRP部材f1の積層構成の例を示している。後述の図9(a)及び図9(b)は、実施例の積層構成を示している。これらの図では、FRP部材f1を構成するプリプレグのそれぞれが、模式的にD字型の形状で示されている。実際には、各プリプレグは、FRP部材f1の輪郭形状に対応した形状に裁断されている。一枚のプリプレグが、1つの層を構成する。これらのプリプレグを積層し、金型で加熱成形することで、複数の層で構成されたFRP部材f1が得られる。
【0026】
図5(a)の実施形態では、FRP部材f1の層数Nは、4である。この4層は、内側から順に、第1層s1、第2層s2、第3層s3及び第4層s4である。第1層s1が最内層であり、第4層s4が最外層である。図5(b)の実施形態では、FRP部材f1の層数Nは5である。この5層は、内側から順に、第1層s1、第2層s2、第3層s3、第4層s4及び第5層s5である。第1層s1が最内層であり、第5層s5が最外層である。図5(c)の実施形態では、FRP部材f1の層数Nは、6である。この6層は、内側から順に、第1層s1、第2層s2、第3層s3、第4層s4、第5層s5及び第6層s6である。第1層s1が最内層であり、第6層s6が最外層である。図5(d)の実施形態では、FRP部材f1の層数Nは、8である。この8層は、内側から順に、第1層s1、第2層s2、第3層s3、第4層s4、第5層s5、第6層s6、第7層s7及び第8層s8である。第1層s1が最内層であり、第8層s8が最外層である。これらの実施形態では、全ての層がUDプリプレグで構成されたUD層である。
【0027】
FRP部材f1の層数は限定されない。異方性の抑制及び強度の観点から、FRP部材f1の層数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がより好ましい。重量の抑制及び生産性の観点から、FRP部材f1の層数は、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がより好ましい。
【0028】
FRP部材f1の積層構成は、積層対称性を有していてもよい。本願において積層対称性とは、あらゆるnにおいて、中立面から数えて外側のn層目と、中立面から数えて内側のn層目とで、スペックが実質的に同じであることを意味する。nは1以上の整数である。中立面に対して対称に積層することで、曲げに伴ってねじれが生ずるなどのカップリング効果が抑制されうる。また、中立面に対して対称に積層することで、中立面が厚さの中央に維持されやすい。よって、FRP部材f1の剛性(曲げ剛性)が向上しやすい。積層対称性は、FRP部材f1の厚みを抑制しながらその剛性を高めるのに寄与しうる。高い剛性を有するFRP部材f1は、打球音の改善に寄与しうる。
【0029】
FRP部材f1におけるUDプリプレグ層の層数がNとされる。Nが偶数である場合、上記中立面は、内側から[N/2]層目と、内側から[(N/2)+1]層目との境界を意味する。Nが奇数である場合、上記中立面は、内側から[(N/2)+1]層目の当該層そのものを意味する。
【0030】
積層対称性は、スペックごとに定義されうる。このスペックとして、繊維角度、層厚み、炭素繊維種類、繊維含有率及びプリプレグ種類が例示される。
【0031】
以下では、中立面及び積層対称性が具体的に説明される。
【0032】
図5(a)が示すように、例えば、FRP部材f1の層数Nが4である場合、中立面NPは、第2層s2と第3層s3との境界である。
【0033】
この図5(a)の実施形態が、次の(a1)及び(a2)を満たす場合、この実施形態は、繊維角度における積層対称性を有すると定義される。
(a1)第1層s1と第4層s4とで繊維角度が実質的に同一である。
(a2)第2層s2と第3層s3とで繊維角度が実質的に同一である。
【0034】
繊維角度における積層対称性は、打球音の改善に寄与しうる。
【0035】
なお、繊維角度において、「実質的に」とは、±10°(好ましくは±5°)の誤差を許容する趣旨である。通常、ヘッド100の外面は、自由曲面によって形成されており、平面ではない。このため、繊維角度には、ある程度の誤差が不可避的に生ずる。
【0036】
他のスペックにおける積層対称性も同様に定義される。例えば、層数Nが4である場合、次の(a3)及び(a4)を満たすFRP部材f1は、層厚みにおける積層対称性を有する。
(a3)第1層s1と第4層s4とで層厚みが実質的に同一である。
(a4)第2層s2と第3層s3とで層厚みが実質的に同一である。
【0037】
層厚みにおける積層対称性は、打球音の改善に寄与しうる。
【0038】
なお、層厚みにおいて、「実質的に」とは、±10%(好ましくは±5%)の誤差を許容する趣旨である。通常、FRP部材f1の成形工程において、マトリクス樹脂の一部が流動する。このため、層厚みには、ある程度の誤差が不可避的に生ずる。
【0039】
同様に、層数Nが4である場合、次の(a5)及び(a6)を満たすFRP部材f1は、プリプレグ種類における積層対称性を有する。
(a5)第1層s1と第4層s4とでプリプレグの種類が同一である。
(a6)第2層s2と第3層s3とでプリプレグの種類が同一である。
【0040】
プリプレグ種類における積層対称性は、打球音の改善に寄与しうる。
【0041】
プリプレグの種類は、プリプレグの品番によって判別されうる。
【0042】
図5(b)が示すように、例えば、FRP部材f1の層数Nが5である場合、中立面NPは、第3層s3そのものである。
【0043】
この図5(b)の実施形態が、次の(b1)及び(b2)を満たす場合、この実施形態は、繊維角度における積層対称性を有する。
(b1)第1層s1と第5層s5とで繊維角度が実質的に同一である。
(b2)第2層s2と第4層s4とで繊維角度が実質的に同一である。
【0044】
層数Nが5である場合、次の(b3)及び(b4)を満たすFRP部材f1は、層厚みにおける積層対称性を有する。
(b3)第1層s1と第5層s5とで層厚みが実質的に同一である。
(b4)第2層s2と第4層s4とで層厚みが実質的に同一である。
【0045】
層数Nが5である場合、次の(b5)及び(b6)を満たすFRP部材f1は、プリプレグ種類における積層対称性を有する。
(b5)第1層s1と第5層s5とでプリプレグの種類が同一である。
(b6)第2層s2と第4層s4とでプリプレグの種類が同一である。
【0046】
図5(c)及び図5(d)のように、Nが偶数である場合、図5(a)の実施形態と同様に、中立面NP及び積層対称性が定義される。図5(c)の実施形態(N=6)では、中立面NPは、第3層s3と第4層s4との境界である。図5(d)の実施形態(N=8)では、中立面NPは、第4層s4と第5層s5との境界である。
【0047】
本願では、繊維角度θが定義される。この繊維角度θは、フェースバック方向を0°としたときの角度である。角度θは、ヘッドの平面視において決定される。なお、フェース-バック方向とは、次のように定義される。図10を参照して、所定のライ角及びリアルロフト角で水平面HP上に載置された基準状態のヘッドにおいて、前記水平面HPに垂直で且つ前記ヘッドのシャフト軸線Zを含む垂直平面VPが決定される。この垂直平面VPと前記水平面HPとの交線NLの方向が、トウ-ヒール方向と定義される。このトウ-ヒール方向に垂直で且つ前記水平面HPに平行な方向が、フェース-バック方向と定義される。所定のライ角及びリアルロフト角は、例えば製品カタログ等に標記されている。
【0048】
異方性を抑制し、複数の方向で剛性および強度を高める観点から、FRP部材f1は、2種の角度θを含んでいても良い。すなわち、FRP部材f1は、繊維角度θが第1角度θ1である層と、繊維角度θが第2角度θ2である層とを含んでいてもよい。更に、FRP部材f1は、3種の角度θを含んでいても良い。すなわち、FRP部材f1は、繊維角度θが第1角度θ1である層と、繊維角度θが第2角度θ2である層と、繊維角度θが第3角度θ3である層とを含んでいても良い。更に、FRP部材f1は、4種以上の角度θを含んでいても良い。角度θの例として、0°、±30°、±45°、±60°、±75°、90°等が挙げられる。なお、繊維角度θは、±10°(好ましくは±5°)の許容範囲を有しうる。
【0049】
好ましい一例では、FRP部材f1は、繊維角度θが0°である層(0度層)を含む。打撃時において、ボールから受ける衝撃力は、フェース-バック方向に作用する。0度層は、この衝撃力に対するFRP部材f1の剛性及び強度を高めるのに有効である。0度層は、打球音の改善に寄与しうる。
【0050】
好ましい一例では、FRP部材f1は、繊維角度θが0°である層(0度層)と、繊維角度θが90°である層(90度層)とを含む。前述の通り、0度層は、衝撃力に対するFRP部材f1の剛性を効果的に高めうる。90度層は、0度層では補強されにくい方向の剛性を効果的に高めうる。
【0051】
好ましい一例では、FRP部材f1は、0度層及び90度層を含み、且つ、繊維角度における積層対称性を有する。例えば、図5(a)の実施形態において、第1層s1及び第4層s4が0度層とされ、第2層s2及び第3層s3が90度層とされうる。例えば、図5(b)の実施形態において、第1層s1及び第5層s5が0度層とされ、第2層s2及び第4層s4が90度層とされうる。例えば、図5(c)の実施形態において、第1層s1、第3層s3、第4層s4及び第6層s6が0度層とされ、第2層s2及び第5層s5が90度層とされうる。例えば、図5(d)の実施形態において、第1層s1、第3層s3、第6層s6及び第8層s8が0度層とされ、第2層s2、第4層s4、第5層s5及び第7層s7が90度層とされうる。これらの例では、最外層が0度層とされている。
【0052】
なお、図5(b)の実施形態は、第3層s3の繊維角度θに関わらず、繊維角度における積層対称性を有する。図5(b)の実施形態では、層数Nが奇数であり、中立面は第3層s3そのものである。層数Nが奇数である場合、中立面NPを構成する層の仕様は、積層対称性に影響しない。
【0053】
前述の通り、FRP部材f1はソールに設けられてもよい。図6に示す第2実施形態のヘッド200では、FRP部材f1がソールに設けられている。
【0054】
図6は、第2実施形態のヘッド200をソール側から見た底面図である。ヘッド200は、打撃フェース202、クラウン(図示されず)、ソール206及びホーゼル208を有する。ヘッド200は、ヘッド本体h1と、FRP部材f1とを有する。ヘッド本体h1は、打撃フェース202の全体を有する。ヘッド本体h1は、クラウンの全部を有する。ヘッド本体h1は、ソール206の一部を有する。ヘッド本体h1は、ホーゼル208の全体を有する。
【0055】
ヘッド本体h1は、FRP部材f1以外の部分を構成している。ヘッド本体h1の材質は、金属である。ヘッド本体h1は、開口210と、支持部218とを有する。開口210は、輪郭212を有する。輪郭212は、ヘッド本体h1のエッジである。開口210は、ヘッド200の外部からヘッド200の内部まで貫通している。開口210は、ソール206に設けられている。開口210は、FRP部材f1の位置に対応した位置に設けられている。支持部218は、開口210の周囲に位置する。支持部218は、ヘッド200の内側から、FRP部材f1を支持している。支持部218は、FRP部材f1の内面に当接している。支持部218において、ヘッド本体h1とFRP部材f1とが接合されている。この接合は、接着剤による接着である。FRP部材f1は、開口210を塞いでいる。ソール206の外面において、ヘッド本体h1とFRP部材f1との境界k1には、段差は無い。
【0056】
FRP部材f1の製造方法の一例は、以下の工程を含む。
(1)設計された積層構成の通りにプリプレグを重ねて圧着させて積層シートを得る工程。
(2)前記積層シートを所定の形状に打ち抜き、成形前部材を得る工程。
(3)前記成形前部材を金型で加熱及び加圧して、FRP部材を得る工程。
【0057】
打球音の観点から、FRP部材f1の樹脂含有率は、42重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がより好ましい。成形性の観点から、FRP部材f1の樹脂含有率は、15重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。複数種のプリプレグが用いられる場合、この樹脂含有率は、各プリプレグの値の加重平均により算出されうる。すなわち、この樹脂含有率は、FRP部材f1全体での樹脂含有率である。
【0058】
打球音の観点から、マトリクス樹脂のガラス転移点Tgは、120℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上がより好ましい。マトリクス樹脂のガラス転移点Tgが高すぎると、高い加熱能力を有する設備が必要となったり、成形時間が長くなったりして、製造性が低下する。また、Tgが高いマトリクス樹脂の入手は難しい場合がある。これらを考慮すると、マトリクス樹脂のガラス転移点Tgは、300℃以下が好ましく、280℃以下がより好ましい。複数種のプリプレグが用いられる場合、全てのプリプレグ種類のガラス転移点Tgが、上記好ましい値を満たすのが好ましい。
【0059】
マトリクス樹脂のガラス転移点は、次のように測定されうる。この測定では、測定対象となるマトリクス樹脂からなる試験片が準備される。この試験片は、長さが55mmとされ、幅が12.7mmとされ、厚さが2mmとされる。動的粘弾性測定装置を用い、ASTMD7028に従って、周波数:1Hz、昇温レート:5℃/分の条件で、曲げモードでの貯蔵弾性率E’が測定される。logE’を温度に対してプロットし、logE’の転移する前の平坦領域の接線と、logE’が転移する領域の変曲点における接線との交点の温度が、ガラス転移点とされうる。
【0060】
FRP部材f1の繊維(強化繊維)が、金属繊維を含んでいても良い。この金属繊維は、打球音の改善に寄与しうる。この場合、好ましくは、強化繊維は、炭素繊維と金属繊維とを含む。
【0061】
金属繊維として、アルミニウム繊維、マグネシウム繊維、チタン繊維、ニッケル繊維、ニッケルチタン合金繊維(Ni-Ti線)、銅繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、ベリリウム繊維、ステンレス鋼繊維、ボロン繊維などが例示される。これらの金属繊維の名称は、当該繊維の材料を示す。金属繊維は、当該金属以外の材料からなる芯材を含んでいても良い。例えば、ボロン繊維は、芯材であるタングステン線の表面にホウ素が蒸着されたものであってもよい。なお、アルミニウム繊維は、アルミニウム合金繊維を含む概念であり、他の金属繊維についても同様である。
【0062】
強化繊維として炭素繊維が用いられる場合、打球音を高音とする観点から、この炭素繊維の引張弾性率が大きいのが好ましい。炭素繊維の引張弾性率は、240GPa以上が好ましく、300GPa以上がより好ましく、330GPa以上がより好ましい。強度を考慮すると、PAN系炭素繊維が望ましい。炭素繊維の引張弾性率は、900GPa以下が好ましく、800GPa以下がより好ましい。炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定された値である。
【0063】
マトリクス樹脂の種類は限定されない。マトリクス樹脂として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル、エポキシ、ビニルエステル、ビスマレイミド、フェノール、シアネート、ポリイミドなどが例示される。熱可塑性樹脂として、ナイロン(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルテフタレート(PET)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)などが例示される。成形性及び汎用性の観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0064】
ヘッドの設計自由度を高める観点から、前述のFRP単独部f11の面積(開口110の面積)は大きいのが好ましい。FRP部材f1がクラウンに設けられる場合、クラウン104の面積に対するFRP単独部f11の比率Rfは、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。打球音の観点から、比率Rfは、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。比率Rfは、クラウン側から見た平面図において決定される。
【0065】
ヘッドの設計自由度を高める観点から、FRP部材f1の重量は、30g以下が好ましく、25g以下がより好ましく、20g以下がより好ましい。FRP部材f1の強度の観点から、FRP部材f1の重量は、5g以上が好ましく、10g以上がより好ましい。
【0066】
剛性を高める観点から、FRP部材f1の厚みは、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.6mm以上がより好ましい。重量を抑制する観点から、FRP部材f1の厚みは、1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましく、1.0mm以下がより好ましい。ヘッドの低重心化を考慮すると、FRP部材f1がクラウンに設けられる場合、FRP部材f1の厚みは0.8mm以下が特に好ましい。打球音とヘッドの低重心化とを考慮すると、FRP部材f1がソールに設けられる場合、FRP部材f1の厚みは1.0mm以下が好ましく、0.8mm以上が好ましい。
【0067】
重量を抑制する観点から、FRP部材f1の比重は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.7以下がより好ましい。繊維の含有率を高め剛性を高める観点から、FRP部材f1の比重は、1.2以上が好ましく、1.3以上がより好ましく、1.4以上がより好ましい。
【0068】
大型ヘッドでは、中空部の体積が大きく、且つ、ヘッド外殻の肉厚が薄い。このため、大型ヘッドの打球音は大きい。本開示の技術は、打球音が大きいヘッドで効果的である。ヘッド体積は、400cc以上が好ましく、420cc以上がより好ましく、440cc以上がより好ましい。ゴルフルールの観点から、ヘッド体積は、470cc以下が好ましく、460cc以下がより好ましい。ドライバー等の大型ヘッドのヘッド重量は、好ましくは、175g以上225g以下に設定される。
【0069】
FRP部材f1により、ヘッドの重量配分の自由度が高まり、慣性モーメントが高められうる。ヘッドの左右慣性モーメントは、450×10-6kg・m以上が好ましく、470×10-6kg・m以上がより好ましい。ヘッド体積の制約を考慮すると、ヘッドの左右慣性モーメントは、590×10-6kg・m以下が好ましい。
【0070】
上記基準状態のヘッドにおいて、ヘッド重心を通り且つ上記水平面HPに垂直な縦線が定まる。左右慣性モーメントは、この縦線回りの慣性モーメントである。左右慣性モーメントは、INERTIA DYNAMICS INC.社製のMOMENT OF INERTIA MEASURING INSTRUMENT MODEL NO.005-002を用いて測定されうる。
【0071】
FRP部材f1により、ヘッドの重量配分の自由度が高まり、重心深度が大きくされうる。ヘッドの重心深度は、20mm以上が好ましく、22mm以上がより好ましい。ヘッド体積の制約を考慮すると、ヘッドの重心深度は、40mm以下が好ましく、35mm以下がより好ましい。本願における重心深度は、シャフト軸線Zとヘッド重心との間の最短距離である。この距離は、フェース-バック方向に沿って測定される。
【0072】
[FRP部材の平均曲げ弾性率]
本願において、FRP部材f1の平均曲げ弾性率とは、0度方向の曲げ弾性率と90度方向の曲げ弾性率との平均値である。打球音の観点から、この平均曲げ弾性率は、25GPa以上であるのが好ましい。
【0073】
FRP部材f1の曲げ弾性率は、FRP部材f1から切り出された試験片を用いて測定される。図7は、ヘッド100の平面図であり、試験片の切り出し線を示す。2点鎖線は、0度方向の曲げ弾性率を測定するための試験片300の切り出し線を示している。破線は、90度方向の曲げ弾性率を測定するための試験片302の切り出し線を示している。試験片300の寸法は試験片302の寸法と同じである。試験片300の曲げ弾性率と、試験片302の曲げ弾性率との平均値が、FRP部材f1の平均曲げ弾性率である。
【0074】
ヘッド100の平面視(図7)において、試験片300は、長辺がXmmで短辺がYmmの長方形である。長辺がフェース-バック方向に平行である。XはYより大きい。ヘッド100の平面視において、試験片302は、長辺がXmmで短辺がYmmの長方形であり、長辺がトウ-ヒール方向に平行である。測定時におけるFRP部材f1の安定性の観点から、Xは、40mm以上が好ましく、50mm以上がより好ましく、55mm以上がより好ましい。特に、長さXが短い場合、試験片のズレを防止しうる構成を測定治具に追加することで、円滑な測定が可能となる。短辺の長さYは20mmに設定される。
【0075】
図7において符号Gfで示されるのは、FRP部材f1の図心である。この図心Gfは、ヘッド100の平面視(図7)における図心である。図7において符号G1で示されるのは、試験片300の図心である。この図心G1は、ヘッド100の平面視(図7)における図心である。図7において符号G2で示されるのは、試験片302の図心である。この図心G2は、ヘッド100の平面視(図7)における図心である。試験片300の切り出し位置は、試験片300の図心G1がFRP部材f1の図心Gfに一致するような位置である。試験片302の切り出し位置は、試験片302の図心G2がFRP部材f1の図心Gfに一致するような位置である。試験片300と試験片302とを用意するためには、少なくとも2つのヘッドが必要である。
【0076】
これらの切り出し線の位置及び寸法は、図7のようなヘッド100の平面図(平面視)において決定される。なお、FRP部材がソールに位置する場合、試験片の切り出し線の位置及び寸法は、図6のような底面図(平面視)において決定される。FRP部材がクラウンからソールにまで延在している場合、試験片の切り出し線の位置及び寸法は、ヘッドの平面図又は底面図のうち、FRP部材の面積がより大きい図において決定される。
【0077】
図8(a)、図8(b)及び図8(c)は、FRP部材f1の曲げ弾性率の測定工程を示す断面図である。図8(a)が示すように、この測定では、測定治具310に、試験片300又は試験片302が載置される。測定治具310は、第1支持縁E1と、第2支持縁E2と、第1上面312と、第2上面314と、隙間316とを有している。第1支持縁E1は水平であり、第2支持縁E2も水平である。第1支持縁E1と第2支持縁E2とは互いに平行である。第1支持縁E1と第2支持縁E2とで、高さ(鉛直方向位置)は同じである。隙間316は、第1上面312と第2上面314の間に位置する。隙間316は、第1支持縁E1と第2支持縁E2との間に位置する。第1支持縁E1は、第1上面312の縁であり、隙間316に面している。第2支持縁E2は、第2上面314の縁であり、隙間316に面している。第1上面312は、隙間316から遠ざかるほど鉛直方向下方に向かうように傾斜している。第2上面314は、隙間316から遠ざかるほど鉛直方向下方に向かうように傾斜している。第1支持縁E1及び第2支持縁E2は、鋭角の角の頂部である。図8(a)が示すように、隙間316の幅は30mmである。この幅は、第1支持縁E1及び第2支持縁E2に垂直で且つ水平な直線の方向(以下、隙間方向とも言う)に沿って測定される。試験片300,302は、図心G1,G2が隙間316の隙間方向中心に一致するように、載置される。
【0078】
なお、第1支持縁E1及び第2支持縁E2の断面形状には丸みがあり、この丸みの曲率半径は1.5mmである。
【0079】
試験片300,302は、上方から見て、その長辺が隙間方向に平行となる向きで、載置される。従って、上方から見て、試験片300,302の短辺は、第1支持縁E1及び第2支持縁E2に平行である。試験片300,302の図心G1,G2が隙間316の中央に一致するように、位置合わせがなされる。図8(a)が示すように、試験開始前では、試験片300,302は、第1支持縁E1及び第2支持縁E2に接触していない状態となりうる。
【0080】
この試験片300,302が、圧子320によって鉛直方向下方に押される。圧子320の位置は、隙間316の隙間方向中心に一致している。圧子320の先端は凸曲面である。隙間方向に平行な断面において、圧子320の先端部の形状は、4mmの曲率半径を有する凸曲線である。隙間方向に垂直な断面において、圧子320の先端の形状は、直線である。この直線は、圧子320の先端の頂点の集合であり、第1支持縁E1及び第2支持縁E2に平行である。圧子320の先端が、試験片300,302に当接する。
【0081】
圧子320を、5mm/分の速さで鉛直方向下方に移動させ、応力-ひずみ曲線を得る。
【0082】
圧子320の移動が進行すると、試験片300,302の下面基準点C1が徐々に下がる。なお、下面基準点C1とは、試験片の下面(内面)上の点であって、圧子接触領域の裏側において最も下方に位置する点である。圧子接触領域とは、試験片の上面のうち、圧子320と接触している領域である。圧子接触領域の裏側とは、試験片の下面において、圧子接触領域の鉛直方向下方に位置する領域である。
【0083】
圧子320の移動により、下面基準点C1は、第1支持縁E1及び第2支持縁E2と同じ高さまで下がる。このときの圧子320の位置を、基準位置とする。圧子320が基準位置から0.1mm下がったときの応力がσ1(MPa)とされ、その位置でのひずみがε1とされ、ひずみがε1から0.2%増加したときの応力がσ2(MPa)とされ、その位置でのひずみがε2とされるとき、曲げ弾性率(GPa)は、次の式により算出される。
曲げ弾性率=(σ2-σ1)/((ε2-ε1)×1000)
【0084】
なお、応力σ(MPa)は次の式により算出される。
σ = 3FL/2bh
ただし、Fは試験力(N)であり、Lは支点間距離(mm)であり、bは試験片幅(mm)であり、hは試験片厚み(mm)である。支点間距離Lは、30mmである。試験片幅bは、試験片の曲がりに沿って測定されるので、Ymm(20mm)よりも若干大きい。
【0085】
また、ひずみεは次の式により算出される。
ε = 6sh/L
ただし、sは基準位置からの変形量(mm)であり、Lは支点間距離(mm)であり、hは試験片厚み(mm)である。支点間距離Lは、30mmである。ε1を計算するときの変形量sは、0.1mmである。
【0086】
[モード減衰比]
ボールがヘッドに衝突すると、ヘッド表面が振動する。このヘッド表面の振動によって空気が振動し、この空気の振動が打球音を生じさせる。ヘッド表面の振動は、複数の固有モードを重ね合わせることによって表現されうる。それぞれの固有モードは、固有振動数及び振動の形を有している。振動の形は、固有モード形とも称される。ある一つのモードにおいて、表面振動を決定する要素は、固有モード形、振幅、固有振動数及びモード減衰比である。固有モード形及び固有振動数は、固有値解析(モーダル解析)によって決定されうる。モード減衰比は、打球音の持続時間との相関が高い。モード減衰比が小さくされることで、打球音の持続時間(発生時間)が長くなりうる。打球音の持続時間が長いと、打球音の反響が長いように聞こえ、良好な打球音として認識される。高く且つ持続時間が長い打球音が好ましい。モード減衰比は、実験モーダル解析によって求められうる。
【0087】
モード減衰比の算出では、先ず、周波数応答関数が測定される。この測定には、インパクトハンマー、加速度計、及び、FFTアナライザが用いられる。インパクトハンマーとして、PCB社製の086E80が用いられる。加速度計として、PCB社製の352B10が用いられる。FFTアナライザとして、小野測器社製のDS2100が用いられる。インパクトハンマー及び加速度計は、FFTアナライザに接続される。ヘッドのネック端面に糸を固定して、この糸でヘッドを吊す。加速度計は、フェースセンターに取り付けられる。フェースセンターは、平面視における打撃フェースの図心である。加振点をインパクトハンマーで叩き、周波数応答関数を得る。加振点は、FRP部材f1の図心Gfを含む、ヘッド表面の各所に設定される。具体的には、加振点は、任意の位置であるが、例えば、フェースセンターからトウおよびヒール側に20mm、上下に10mm位置、クラウンの中央、ソールの中央などである。周波数応答関数の算出には、FFTアナライザが用いられる。この付帯ソフトウェアとして、小野測器社製のDS0221が用いられる。
【0088】
次に、モード減衰比が算出される。モード減衰比は、周波数応答関数に基づいて算出される。モード減衰比の算出では、モード特性の同定法が用いられる。モード特性同定は、周波数応答関数の曲線に適合するようにモード特性を定めるので、カーブフィット(曲線適合)とも呼ばれている。カーブフィットの方法として、MDOF法(多自由度法:Multiple Degrees Of Freedom method)が用いられる。MDOF法の中でも直交多項式が用いられる。モード減衰比の算出には、モーダル解析ソフトウェアが用いられる。このモーダル解析ソフトウェアとして、バイブラントテクノロジー(Vibrant Technology)社製の商品名「ME’scopeVES」が用いられる。
【0089】
このモーダル解析で、各固有モード形におけるモード減衰比が特定される。固有振動数が3000Hz以上5000Hz以下である固有モード形のうち、FRP部材f1の図心Gfの振幅が最も大きい固有モード形が特定される。この特定された固有モード形における振動数が、特定モード周波数と称される。3000~5000Hzは、ゴルフクラブヘッドの打球音における最大ピークが発生しやすい周波数領域である。この特定モード周波数におけるモード減衰比が、特定モード減衰比とも称される。この特定モード減衰比が小さくされることで、打球音の持続時間が長くなりうる。
【0090】
[打球音の測定]
測定対象のヘッドが装着されたゴルフクラブをスイングロボットに装着し、ティーアップされたボールを、38m/sのヘッドスピードで打撃する。打点はフェースセンターとされる。ゴルフボールとして、住友ゴム工業社製の商品名「XXIO SUPER SOFT X」が用いられる。ティーのトウ側30cmの位置にマイクロフォンを設置し、打球音の時刻歴波形を収録する。FFTアナライザーでフーリエ変換を行い、打球音1次周波数を算出する。FFTアナライザーとして、小野測器社製のDS-2100が用いられる。
【0091】
打球音1次周波数とは、ピーク周波数のうち最低の周波数である。実測の場合、ノイズ等に起因する微小なピークが発生しやすい。この場合、ノイズ等に起因するピークを除去する観点から、打球音1次周波数は、所定の閾値以上の音圧を有するピークから選択される。この閾値は、最大ピークの音圧を基準として決定される。この閾値は、[最大ピークの音圧-20dB]とされうる。また、実測の場合、ボールから発生する音も観測される。ボールから発生する音は、通常、1500Hz近傍である。この観点から、1000Hz以上2000Hz以下のピークは、無視される。この打球音1次周波数は、人間が感じる音の高さとの相関が高い。
【実施例
【0092】
[実施例1]
鍛造により、ヘッド本体のフェース部を形成した。ロストワックス精密鋳造により、ヘッド本体のうちフェース部を除く部分を形成した。これら鍛造品と鋳造品とを溶接することで、前述したヘッド100のヘッド本体h1と同じ形態のヘッド本体を得た。ヘッド本体の材質は、チタン合金であった。
【0093】
ヘッド本体とは別に、FRP部材を作製した。積層されたプリプレグを金型にセットし、加圧及び加熱して、FRP部材を得た。FRP部材の厚みは、0.75mmであった。実施例1の積層構成が、図9(a)で示される。積層構成は、内側から順に、第1層s1から第8層s8までの8層であった。第1層s1は0度層とされ、第2層s2は90度層とされ、第3層s3は0度層とされ、第4層s4は90度層とされ、第5層s5は90度層とされ、第6層s6は0度層とされ、第7層s7は90度層とされ、第8層s8は0度層とされた。全ての層は、同じUDプリプレグで構成された。このFRP部材は、繊維角度における積層対称性を有する。このFRP部材は、層厚みにおける積層対称性を有する。このFRP部材は、炭素繊維種類における積層対称性を有する。このFRP部材は、繊維含有率における積層対称性を有する。このFRP部材は、プリプレグ種類における積層対称性を有する。
【0094】
UDプリプレグとして、東レ社製の高Tgエポキシプリプレグが用いられた。このプリプレグは、強化繊維として、炭素繊維を含んでいた。このプリプレグのマトリクス樹脂はエポキシ樹脂であった。このマトリクス樹脂のガラス転移点は、200℃であった。炭素繊維の引張弾性率は240GPaであった。プリプレグの樹脂含有率は42重量%であった。
【0095】
得られたFRP部材をヘッド本体のクラウン開口に接着剤で接着し、前述したヘッド100と同じ形態のヘッドを得た。ヘッド体積は460ccであり、ヘッドの左右慣性モーメントは470×10-6kg・mであり、ヘッド重量は196gであった。ヘッドの重心深度は28mmであった。得られたヘッドをシャフトのチップ端部に装着し、このシャフトのバット端部にグリップを装着して、ゴルフクラブを得た。実施例1の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0096】
[実施例2]
積層されたプリプレグを金型にセットし、加圧及び加熱して、FRP部材を成形した。FRP部材の厚みは、0.75mmであった。図9(b)は、実施例2のFRP部材の積層構成を示す。積層構成は、内側から順に、第1層s1から第6層s6までの6層であった。第1層s1は0度層とされ、第2層s2は90度層とされ、第3層s3は0度層とされ、第4層s4は0度層とされ、第5層s5は90度層とされ、第6層s6は0度層とされた。全ての層は、同じUDプリプレグで構成された。このFRP部材は、繊維角度における積層対称性を有する。このFRP部材は、層厚みにおける積層対称性を有する。このFRP部材は、炭素繊維種類における積層対称性を有する。このFRP部材は、繊維含有率における積層対称性を有する。このFRP部材は、プリプレグ種類における積層対称性を有する。
【0097】
UDプリプレグとして、三菱ケミカル社製のプリプレグが用いられた。このプリプレグは、強化繊維として、炭素繊維を含んでいた。このプリプレグのマトリクス樹脂はエポキシ樹脂であった。このマトリクス樹脂のガラス転移点は、120℃であった。炭素繊維の引張弾性率は400GPaであった。プリプレグの樹脂含有率は42重量%であった。
【0098】
得られたFRP部材を、実施例1と同じヘッド本体に、接着剤で接着して、ヘッドを得た。このヘッドに、実施例1と同じシャフト及びグリップを組み合わせて、ゴルフクラブを得た。実施例2の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0099】
[実施例3]
積層されたプリプレグを金型にセットし、加圧及び加熱して、FRP部材を成形した。FRP部材の厚みは、0.75mmであった。図9(b)は、実施例3のFRP部材の積層構成を示す。積層構成は、内側から順に、第1層s1から第6層s6までの6層であった。第1層s1は0度層とされ、第2層s2は90度層とされ、第3層s3は0度層とされ、第4層s4は0度層とされ、第5層s5は90度層とされ、第6層s6は0度層とされた。全ての層は、同じUDプリプレグで構成された。
【0100】
UDプリプレグとして、三菱ケミカル社製のプリプレグが用いられた。このプリプレグは、強化繊維として、炭素繊維に加えて金属繊維を含んでいた。金属繊維は、ニッケルチタン合金繊維であった。このプリプレグのマトリクス樹脂はエポキシ樹脂であった。このマトリクス樹脂のガラス転移点は、120℃であった。炭素繊維の引張弾性率は240GPaであった。プリプレグの樹脂含有率は42重量%であった。
【0101】
得られたFRP部材を、実施例1と同じヘッド本体に、接着剤で接着して、ヘッドを得た。このヘッドに、実施例1と同じシャフト及びグリップを組み合わせて、ゴルフクラブを得た。実施例3の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0102】
[実施例4]
積層されたプリプレグを金型にセットし、加圧及び加熱して、FRP部材を成形した。FRP部材の厚みは、0.75mmであった。図9(b)は、実施例4のFRP部材の積層構成を示す。積層構成は、内側から順に、第1層s1から第6層s6までの6層であった。第1層s1は0度層とされ、第2層s2は90度層とされ、第3層s3は0度層とされ、第4層s4は0度層とされ、第5層s5は90度層とされ、第6層s6は0度層とされた。全ての層は、同じUDプリプレグで構成された。
【0103】
UDプリプレグとして、三菱ケミカル社製のプリプレグが用いられた。このプリプレグは、強化繊維として、炭素繊維を含んでいた。このプリプレグのマトリクス樹脂はエポキシ樹脂であった。このマトリクス樹脂のガラス転移点は、120℃であった。炭素繊維の引張弾性率は240GPaであった。プリプレグの樹脂含有率は23重量%であった。
【0104】
得られたFRP部材を、実施例1と同じヘッド本体に、接着剤で接着して、ヘッドを得た。このヘッドに、実施例1と同じシャフト及びグリップを組み合わせて、ゴルフクラブを得た。実施例4の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0105】
[実施例5]
積層されたプリプレグを金型にセットし、加圧及び加熱して、FRP部材を成形した。FRP部材の厚みは、0.75mmであった。図9(b)は、実施例5のFRP部材の積層構成を示す。積層構成は、内側から順に、第1層s1から第6層s6までの6層であった。第1層s1は0度層とされ、第2層s2は90度層とされ、第3層s3は0度層とされ、第4層s4は0度層とされ、第5層s5は90度層とされ、第6層s6は0度層とされた。全ての層は、同じUDプリプレグで構成された。
【0106】
UDプリプレグとして、三菱ケミカル社製のプリプレグが用いられた。このプリプレグは、強化繊維として、炭素繊維に加えて金属繊維を含んでいた。金属繊維は、ニッケルチタン合金繊維であった。このプリプレグのマトリクス樹脂はエポキシ樹脂であった。このマトリクス樹脂のガラス転移点は、120℃であった。炭素繊維の引張弾性率は240GPaであった。プリプレグの樹脂含有率は30重量%であった。
【0107】
得られたFRP部材を、実施例1と同じヘッド本体に、接着剤で接着して、ヘッドを得た。このヘッドに、実施例1と同じシャフト及びグリップを組み合わせて、ゴルフクラブを得た。実施例5の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0108】
[比較例1]
積層されたプリプレグを金型にセットし、加圧及び加熱して、FRP部材を成形した。FRP部材の厚みは、0.75mmであった。積層構成は、内側から順に、第1層s1から第5層s5までの5層であった。第1層s1は0度層とされ、第2層s2は90度層とされ、第3層s3は0度層とされ、第4層s4は90度層とされ、第5層s5は0度層とされた。全ての層は、同じUDプリプレグで構成された。
【0109】
UDプリプレグとして、三菱ケミカル社製のプリプレグが用いられた。このプリプレグは、強化繊維として、炭素繊維を含んでいた。このプリプレグのマトリクス樹脂はエポキシ樹脂であった。炭素繊維の引張弾性率は240GPaであった。プリプレグの樹脂含有率は42重量%であった。
【0110】
得られたFRP部材を、実施例1と同じヘッド本体に、接着剤で接着して、ヘッドを得た。このヘッドに、実施例1と同じシャフト及びグリップを組み合わせて、ゴルフクラブを得た。比較例1の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0111】
[比較例2]
注型により、エポキシ樹脂の樹脂成形部材を得た。この樹脂成形部材の厚みは、0.75mmであった。この樹脂成形部材は、実施例1から6及び比較例1のFRP部材と同じ形状を有していた。
【0112】
得られた樹脂成形部材を、実施例1と同じヘッド本体に、接着剤で接着して、ヘッドを得た。このヘッドに、実施例1と同じシャフト及びグリップを組み合わせて、ゴルフクラブを得た。比較例2の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0113】
【表1】
【0114】
各評価の測定方法は、前述の通りである。官能評価は、ティーのトウ側100cmの位置に立つ人間が、スイングロボットによる前記打球音測定の音を聞くことにより実施された。この官能評価では、比較例1よりも高音に聞こえるか否かが判断された。表1では、比較例1よりも高音の聞こえたものが「Y」で示され、比較例1よりも高音に聞こえなかったものが「N」で示されている。
【0115】
なお、比較例2では、固有振動数が3000~5000Hzである固有モード形が存在しなかったため、3000~5000Hzに最も近い固有振動数が、特定モード周波数として表1に記載されている。
【0116】
実施例1のFRP部材は、マトリクス樹脂のガラス転移点が高い。このため、特定モード周波数が高く、打球音1次周波数も高かった。実施例2のFRP部材は、炭素繊維の引張弾性率が高い。このため、FRP部材の平均曲げ弾性率が特に大きく、特定モード周波数及び打球音1次周波数が高かった。実施例3のFRP部材は、FRP部材の平均曲げ弾性率が比較的大きく、特定モード周波数及び打球音1次周波数は比較的高かった。また、実施例3のFRP部材は、金属繊維(NiTi線)を含んでおり、特定モード減衰比が小さかった。実施例4のFRP部材は、樹脂含有率が低い。このため、特定モード周波数及び打球音1次周波数は高かった。実施例5のFRP部材は、金属繊維を含み、且つ、樹脂含有率が低い。このため、特定モード周波数及び打球音1次周波数は高かった。また、実施例5のFRP部材は、金属繊維(NiTi線)を含んでおり、特定モード減衰比が小さかった。
【0117】
表1に示されるように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。
【0118】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
打撃フェース、クラウンおよびソールを備えており、
前記クラウン及び/又は前記ソールが、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化プラスチックで構成されたFRP部材を有しており、
前記FRP部材の平均曲げ弾性率が、25GPa以上であるゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記繊維が、炭素繊維を含み、
前記炭素繊維の引張弾性率が300GPa以上である付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記繊維が、金属繊維を含む付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記FRP部材の樹脂含有率が40重量%以下である付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記マトリクス樹脂のガラス転移点が、150℃以上である付記1から4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
ヘッド重量が175g以上225g以下であり、
ヘッド体積が400cc以上であり、
左右慣性モーメントが450×10-6kg・m以上である付記1から5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記7]
前記FRP部材の重量が20g以下である付記1から6のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記8]
前記FRP部材が前記クラウンに設けられており、
前記FRP部材の厚みが、0.8mm以下である付記1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記9]
前記FRP部材が前記クラウンに設けられており、
重心深度が20mm以上である付記1から8のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記10]
前記FRP部材が前記ソールに設けられており、
前記FRP部材の厚みが、1.0mm以下である付記1から7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【符号の説明】
【0119】
100、200・・・ゴルフクラブヘッド
102、202・・・打撃フェース
104・・・クラウン
106、206・・・ソール
110、210・・・開口
112、212・・・開口の輪郭
118、218・・・支持部
300・・・0度方向の曲げ弾性率を測定するための試験片
302・・・90度方向の曲げ弾性率を測定するための試験片
k1・・・ヘッド本体とFRP部材との境界
f1・・・FRP部材
h1・・・ヘッド本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10