(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】センサユニット
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
(21)【出願番号】P 2023054782
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2022186688の分割
【原出願日】2017-06-05
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 徹
(72)【発明者】
【氏名】亀田 貴理
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 公洋
(72)【発明者】
【氏名】村松 崇
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 博
(72)【発明者】
【氏名】丸本 雄基
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-232620(JP,A)
【文献】特開2011-033531(JP,A)
【文献】特開平02-156120(JP,A)
【文献】特開平11-118647(JP,A)
【文献】特開平08-075585(JP,A)
【文献】特開2016-080528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 - 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の異常を検知するためのセンサユニットであって、
前記機械の流路に流れる流体に関する少なくとも2種類以上の物理量を取得するための取得部を備え、
前記2種類以上の物理量は、
前記流体の温度と、
前記温度以外の他の物理量とを含み、
前記取得部は、前記温度を測定するための第1センサと前記他の物理量を測定するための第2センサとを含み、
前記センサユニットは、前記機械の流路に対して抜き差し可能に構成されており、
前記センサユニットは、さらに、
柱状の本体部と、
2つ以上の物理量に基づいて、前記機械の状態を表わす予め定められた3種類以上の表示態様で点灯することが可能なインジケータと、
前記物理量を表示するための表示部と、
ユーザの操作を受け付けるための操作部とを備え、
前記柱状の本体部は、前記センサユニットを前記機械の流路に対して抜き差しする場合に前記機械の流路側に位置する第1端部と、前記第1端部と対向する位置に設けられる第2端部とを有し、
前記
第2端部には前記操作部および前記表示部が配置された配置面が構成さ
れ、
前記配置
面に、前記インジケータが設けられ、
前記他の物理量は、前記流体から受ける圧力であり、
前記取得部は、前記第1センサの温度検知における、気温の影響を測定するための第3センサをさらに含み、
前記第2センサは、前記第1端部に配置され、
前記第1センサは、前記柱状の本体部の内部に配置され、前記柱状の本体部の筐体に伝導される流体の温度または前記第2センサから伝導される流体の温度を測定し、
前記第3センサは、前記柱状の本体部の内側であって、かつ、前記センサユニットが前記機械の流路に差し込まれたときに前記流体と接触しない箇所に配置され、
前記取得部は、前記第3センサの測定値で前記第1センサの測定値を補正することによって前記温度を取得する、センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機械の異常を検知するためのセンサユニットに関し、特に、機械の内部に流れる流体に関する物理量から機械の異常を検知するためのセンサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
成形機、プレス機、切削機などの工作機械には、水や油などの流体が内部で循環している。このような流体に関して複数の物理量を1つのセンサユニットで検知するための技術が開発されている。当該技術に関し、特開2011-033531号公報は、内部の流体の温度と、内部の流体にかかる圧力との2つの物理量を検知することが可能な温度センサ一体型圧力センサ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械に異常が発生している場合、発生した異常の種類によっては、工作機械に流れる流体の物理量(たとえば、温度など)が変化する。そのため、工作機械内の流体の物理量は、工作機械に異常が発生している否かを判断するための1つの指標になり得る。すなわち、センサユニットは、工作機械内の流体の物理量を監視することで、工作機械の異常を検知することができる。
【0005】
しかしながら、異常の発生後にそのことが報知されたとしても、そのときには工作機械は緊急停止してしまっている。また、ユーザは、計画外の保全を行う必要もある。一方で、工作機械に異常が発生しそうなことが報知されれば、ユーザは、異常の発生前に様々な措置を取ることができる。したがって、工作機械の異常を報知できるだけでなく、工作機械の異常の予兆を報知することが可能なセンサユニットが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある局面に従うと、機械の異常を検知するためのセンサユニットは、上記機械の流路に流れる流体に関する少なくとも2種類以上の物理量を取得するための取得部を備える。上記2種類以上の物理量は、上記流体の温度と、上記温度以外の他の物理量とを含む。上記センサユニットは、さらに、上記機械の状態を表わす予め定められた3種類以上の表示態様で点灯することが可能なインジケータを備える。上記予め定められた3種類以上の表示態様は、上記機械の正常を示す第1表示態様と、上記機械の異常の予兆を示す第2表示態様と、上記機械の異常を示す第3表示態様とを含む。上記インジケータは、上記温度と当該温度について予め設定された第1正常範囲との比較結果、および、上記他の物理量と当該他の物理量について予め設定された第2正常範囲との比較結果に基づいて、上記第1~第3表示態様のいずれかで点灯する。
【0007】
好ましくは、上記インジケータは、上記温度が上記第1正常範囲に含まれ、かつ、上記他の物理量が上記第2正常範囲に含まれない場合、または、上記温度が上記第1正常範囲に含まれず、かつ上記他の物理量が上記第2正常範囲に含まれる場合、上記第2表示態様で点灯する。
【0008】
好ましくは、上記インジケータは、上記温度が上記第1正常範囲に含まれず、かつ、上
記他の物理量が上記第2正常範囲に含まれない場合、上記第3表示態様で点灯する。
【0009】
好ましくは、上記インジケータは、上記温度が上記第1正常範囲に含まれ、かつ、上記他の物理量が上記第2正常範囲に含まれる場合、上記第1表示態様で点灯する。
【0010】
好ましくは、上記第1正常範囲は、第1上限値および第1下限値の少なくとも一方で規定される。上記第2正常範囲は、第2上限値および第2下限値の少なくとも一方で規定される。
【0011】
好ましくは、上記センサユニットは、上記インジケータの表示態様に関する設定を受け付けることが可能な操作部をさらに備える。上記操作部は、上記インジケータが上記第1表示態様で点灯するために上記温度および上記第1正常範囲の比較結果と上記他の物理量および上記第2正常範囲の比較結果とが満たすべき第1条件と、上記インジケータが上記第2表示態様で点灯するために上記温度および上記第1正常範囲の比較結果と上記他の物理量および上記第2正常範囲の比較結果とが満たすべき第2条件と、上記インジケータが上記第3表示態様で点灯するために上記温度および上記第1正常範囲の比較結果と上記他の物理量および上記第2正常範囲の比較結果とが満たすべき第3条件と、を受け付けるように構成されている。
【0012】
好ましくは、上記他の物理量は、上記流体の流速と、上記流体から受ける圧力との少なくとも一方を含む。
【発明の効果】
【0013】
ある局面において、工作機械の異常を報知できるだけでなく、工作機械の異常の予兆を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態に従うセンサユニットの表示態様を模式的に示す図である。
【
図2】第1の実施の形態に従うセンサユニットの内部構成の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態に従うインジケータについての表示設定のフローを示す図である。
【
図4】第1の実施の形態に従うインジケータの表示設定時における画面遷移の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施の形態に従うインジケータの表示フローの一例を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態に従うセンサユニットの使用態様の一例を示す図である。
【
図7】流量センサユニットの外観を説明するための図である。
【
図8】第1の実施の形態に従うセンサユニットにおけるプローブの内部を模式的に示す図である。
【
図9】流量センサユニットの測定温度との関係を模式的に示す図である。
【
図10】圧力センサユニットの内部構成を説明するための図である。
【
図11】流体と外気温との温度差に応じた、温度センサの測定温度の変化を示すグラフである。
【
図12】第2の実施の形態に従うセンサユニットの表示態様を模式的に示す図である。
【
図13】第3の実施の形態に従うセンサユニットにおけるノーマルモードにおける判定条件を示す図である。
【
図14】第3の実施の形態に従うセンサユニットにおけるウィンドウモードにおける表示条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
[A.センサユニット100の表示態様]
図1を参照して、本実施の形態に従うセンサユニット100の表示態様について説明する。
図1は、センサユニット100の表示態様を模式的に示す図である。
【0017】
センサユニット100は、監視対象の機器の異常を検知するためのセンサである。監視対象の機器の一例として、成形機、プレス機、切削機などの工作機械が挙げられる。このような工作機械の内部では、冷却水や油などの流体(以下、「内部流体」ともいう。)が循環している。センサユニット100は、内部流体の流路に相当する配管に抜き差し可能に構成されている。
【0018】
工作機械に異常が発生している場合には、内部流体の物理量が正常時と比べて変化する。そのため、内部流体の物理量は、工作機械の状態を判断するための指標になり得る。本実施の形態に従うセンサユニット100は、工作機械の状態の判断指標として、内部流体に関する少なくとも2種類以上の物理量を取得する。一例として、センサユニット100は、内部流体の温度と、温度以外の他の物理量との少なくとも2種類を取得する。当該他の物理量は、たとえば、内部流体の流量と、内部流体から受ける圧力(たとえば、油圧)との少なくとも1つを含む。
【0019】
なお、本明細書では、流量を表わすために「流速」を用いる場合がある。「流速」は、流路の断面積を乗じることで「流量」に変換し得る値であり、両者は相関性を有する。
【0020】
以下では、工作機械の状態の判断指標として、内部流体の温度と、内部流体の流量/圧力とを採用している前提で説明を行うが、取得対象の物理量の種類は、内部流体の温度を少なくとも含む2種類以上の物理量であれば任意である。たとえば、工作機械の状態の判断指標として、内部流体の温度と、内部流体の流量と、内部流体から受ける圧力との3種類の物理量が取得されてもよい。
【0021】
センサユニット100は、取得した複数種類の物理量を用いて、工作機械の現状態を特定し、現状態に応じた表示態様で点灯する。典型的には、本実施の形態に従うセンサユニット100は、取得した物理量を表示するための表示部40と、工作機械の状態を表わすインジケータ41とを含む。
【0022】
インジケータ41は、工作機械の状態に合わせて予め定められた3種類以上の表示態様で点灯することができる。当該予め定められた3種類以上の表示態様は、工作機械の正常を示す正常表示パターン(第1表示態様)と、工作機械の異常の予兆を示す危険表示パターン(第2表示態様)と、工作機械に異常が発生していることを示す異常表示パターン(第3表示態様)とを含む。これらの表示パターンの違いは、たとえば、色の違いで表されてもよいし、点滅パターンの違いで表されてもよいし、発光強度の違いで表されてもよい。
図1の例では、正常表示パターンが緑色で示され、危険表示パターンが黄色で示され、異常表示パターンが赤色で示されている。
【0023】
インジケータ41は、内部流体の温度と正常範囲ΔR1(第1正常範囲)との比較結果、および、内部流体の流量/圧力と正常範囲ΔR2(第2正常範囲)との比較結果に基づいて、正常表示パターン、危険表示パターン、および異常表示パターンのいずれかで点灯する。正常範囲ΔR1は、内部流体の温度に対して予め設定されており、
図1の例では上
限値Th1で規定されている。正常範囲ΔR2は、内部流体の流量/圧力に対して予め設定されており、
図1の例では上限値Th2で規定されている。上限値Th1,Th2は、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。なお、正常範囲ΔR1,ΔR2は、上限値および下限値の少なくとも1つで規定されればよい。
【0024】
より具体的な表示処理として、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれ、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれる場合、正常表示パターンで点灯する。たとえば、
図1(A)に示されるように、内部流体の温度が「T1」で、内部流体の流量/圧力が「C1」であるとする。温度「T1」は、正常範囲ΔR1の上限値Th1よりも小さく、流量/圧力「C1」は、正常範囲ΔR2の上限値Th2よりも小さい。この場合、温度「T1」が正常範囲ΔR1に含まれ、かつ、流量/圧力「C1」が正常範囲ΔR2に含まれるので、センサユニット100は、工作機械が正常状態であると判断し、正常表示パターンでインジケータ41を点灯させる。
【0025】
また、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれ、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれない場合、危険表示パターンで点灯する。あるいは、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれず、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれる場合、危険表示パターンで点灯する。たとえば、
図1(B)に示されるように、内部流体の温度が「T2」で、内部流体の流量/圧力が「C2」であるとする。温度「T2」は、正常範囲ΔR1の上限値Th1を超えており、流量/圧力「C1」は、正常範囲ΔR2の上限値Th2よりも小さい。この場合、温度「T2」が正常範囲ΔR1に含まれておらず、かつ、流量/圧力「C2」が正常範囲ΔR2に含まれているので、センサユニット100は、工作機械が危険状態であると判断し、危険表示パターンでインジケータ41を点灯させる。
【0026】
また、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれず、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれない場合、異常表示パターンで点灯する。たとえば、
図1(C)に示されるように、内部流体の温度が「T3」で、内部流体の流量/圧力が「C3」であるとする。この場合、温度「T3」は、正常範囲ΔR1の上限値Th1を超えており、流量/圧力「C3」は、正常範囲ΔR2の上限値Th2を超えている。この場合、温度「T3」が正常範囲ΔR1に含まれておらず、かつ、流量/圧力「C3」が正常範囲ΔR2に含まれていないので、センサユニット100は、工作機械が異常状態であると判断し、異常表示パターンでインジケータ41を点灯させる。
【0027】
以上のように、センサユニット100は、複数種類の物理量から総合的にセンサユニット100の状態を判断することで、工作機械の正常および異常だけでなく、工作機械の異常の予兆を検知することができる。インジケータ41は、工作機械が正常状態である場合には正常表示パターンで点灯し、工作機械が危険状態である場合には危険表示パターンで点灯し、工作機械が異常状態である場合には異常表示パターンで点灯する。このように、工作機械の現状態がインジケータ41によって報知されることで、ユーザは、工作機械の状態を把握することできる。特に、ユーザは、インジケータ41の危険表示パターンを確認することで、工作機械に異常が発生しそうなことを把握でき、異常の発生前に様々な措置を取ることができる。
【0028】
[B.センサユニット100の内部構成]
図2を参照して、センサユニット100の内部構成について説明する。
図2は、センサユニット100の内部構成の一例を示す図である。
【0029】
センサユニット100は、取得部10と、電源回路22と、記憶部23と、加温部25と、操作部30と、表示部40と、インジケータ41とを含む。
【0030】
取得部10は、内部流体に関する複数種類の物理量を取得するための複合センサである。一例として、取得部10は、圧力素子2と、プローブ4と、AD(Analog to Digital
)変換部16と、制御回路17とを含む。なお、取得部10の構成は、これらに限定されず、工作機械の内部流体に関する複数種類の物理量を取得できる構成であれば任意である。
【0031】
センサユニット100は、工作機械の内部流体が流れる流路に対して抜き差し可能に構成されている。圧力素子2は、センサユニット100と工作機械との接続時において、内部流体に露出するように配置される。圧力素子2は、内部流体から受ける圧力に応じた電気信号をAD変換部16に出力する。AD変換部16は、当該電気信号を増幅し、増幅後の電気信号をデジタル値に変換する。当該デジタル値は、制御回路17に出力される。制御回路17は、当該デジタル値に基づいて、内部流体から受ける圧力値を算出する。
【0032】
プローブ4は、工作機械の内部流体に露出するように配置される。プローブ4の内部には、抵抗体R1,R2が設けられている。抵抗体R1,R2は、それぞれ、内部流体の温度に応じた電気信号をAD変換部16に出力する。AD変換部16は、各電気信号を増幅し、増幅後の各電気信号をデジタル値に変換する。当該デジタル値の各々は、制御回路17に出力される。制御回路17は、各デジタル値に基づいて、内部流体の温度を算出する。当該温度の算出方法の詳細については後述する。
【0033】
制御回路17は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1
つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成される。
【0034】
電源回路22は、センサユニット100の各部に電力を供給する。加温部25は、電源回路22からの電力の供給を受けて、抵抗体R1に電流を供給し、抵抗体R1を自己発熱させ周囲よりも高い温度となるように制御する。制御回路17は、抵抗体R1の測定温度から抵抗体R2の測定温度を差分し、当該差分結果に基づいて内部流体の流速を算出する。当該流速の算出方法の詳細については後述する。
【0035】
記憶部23は、センサユニット100を制御するための各種設定および各種パラメータを格納する。操作部30は、たとえば、センサユニット100に関する設定など各種設定を受け付ける。表示部40は、内部流体について検知された各種物理量の値を表示する。一例として、表示部40は、内部流体の温度、内部流体から受けた圧力、内部流体の流速の少なくとも1つを表示する。インジケータ41は、上述したように、工作機械の状態に合わせて少なくとも3種類以上の表示態様で点灯することができる。一例として、工作機械の状態に合わせて、正常表示パターン、危険表示パターン、および異常表示パターンのいずれかで表示する。
【0036】
図2には、センサユニット100を流量センサユニットおよび圧力センサユニットのいずれにも使用できる場合の内部構成を総括的に示しているが、使用用途に応じて、内部構成を簡素化することもできる。なお、流量センサユニットおよび圧力センサユニットとしてそれぞれ使用する場合の構成および処理の詳細については後述する。たとえば、センサユニット100を流量センサユニットとして使用する場合には、
図2に示す圧力素子2を省略してもよい。また、たとえば、センサユニット100を圧力センサユニットとして使用する場合には、
図2に示す加温部25を省略してもよい。このように、センサユニット100が検出すべき物理量の種類に応じて、内部構成は適宜変更され得る。
【0037】
[C.設定処理]
上述したように、インジケータ41は、工作機械の状態に合わせて、正常表示パターン、危険表示パターン、および異常表示パターンのいずれかで点灯する。ユーザは、インジケータ41が各表示パターンで点灯するための条件をセンサユニット100に対して設定することができる。当該設定は、たとえば、センサユニット100の操作部30に対して行われる。
【0038】
以下では、
図3および
図4を参照して、インジケータ41についての表示設定処理について説明する。
図3は、インジケータ41についての表示設定のフローを示す図である。
図4は、インジケータ41の表示設定時における画面遷移の一例を示す図である。
【0039】
図3の処理は、センサユニット100の制御回路17がプログラムを実行することにより実現される。他の局面において、処理の一部または全部が、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0040】
ステップS10において、制御回路17は、インジケータ41の表示態様に関する設定開始操作を受け付けたか否かを判断する。一例として、制御回路17は、センサユニット100に設けられているMENUボタンの長押し操作を検知したときに、当該設定開始操作を受け付けたと判断する。制御回路17は、当該設定開始操作を受け付けたと判断した場合(ステップS10においてYES)、制御をステップS20に切り替える。そうでない場合には(ステップS10においてNO)、制御回路17は、ステップS10の処理を再び実行する。
【0041】
ステップS20において、制御回路17は、異常表示パターンについての設定であることをユーザに提示する。
図4の例では、文字列「D5P.R」が表示部40に表示されている。文字列「D5P.R」の「R」は、赤色(Red)を示す。ユーザは、当該文字列を
確認することで、異常表示パターンについての設定であることを認識することができる。
【0042】
ステップS22において、制御回路17は、異常表示パターンで点灯するための条件(以下、「異常報知条件」ともいう。)を受け付けたか否かを判断する。一例として、複数の条件が予め規定されており、ユーザは、当該複数の条件を順次切り替えることで、目的の条件を選択できる。一例として、当該切り換え操作は、たとえば、センサユニット100のボタン31によって受け付けられる。
【0043】
設定可能な条件の候補は、たとえば、文字列で表される。設定可能な条件の候補は、たとえば、条件「F.1n2」、条件「1u2」、および条件「1n2」を含む。記号「F.」は、否定を意味する。記号「1」は、内部流体について計測された第1物理量を示す。記号「2」は、内部流体について計測された第2物理量を示す。記号「n」は、論理積を意味する。記号「u」は、論理和を意味する。すなわち、条件「F.1n2」は、第1物理量および第2物理量が共に正常範囲に属さない場合に満たされることを表わす。条件「1u2」は、第1物理量が正常範囲に属す場合、または、第2物理量が正常範囲に属す場合に満たされることを表わす。条件「1n2」は、第1物理量が正常範囲に属し、かつ、第2物理量が正常範囲に属す場合に満たされる条件を表わす。
【0044】
図4の例では、条件「F.1n2」が異常報知条件として選択されている。この状態で確定操作が行われると、制御回路17は、条件「F.1n2」を異常報知条件として受け付ける。制御回路17は、異常報知条件を受け付けたと判断した場合(ステップS22においてYES)、制御をステップS30に切り替える。そうでない場合には(ステップS22においてNO)、制御回路17は、ステップS22の処理を再び実行する。
【0045】
ステップS30において、制御回路17は、危険表示パターンについての設定であることをユーザに提示する。
図4の例では、条件「D5P.Y」が表示部40に表示されている。条件「D5P.Y」の「Y」は、黄色(Yellow)を示す。ユーザは、当該文字列を確認することで、危険表示パターンについての設定であることを認識することができる。
【0046】
ステップS32において、制御回路17は、危険表示パターンで点灯するための条件(以下、「危険報知条件」ともいう。)を受け付けたか否かを判断する。上述と同様に、ユーザは、予め定められた複数の条件を順次切り替えることで、目的の条件を選択できる。
図4の例では、条件「1u2」が危険報知条件として選択されている。この状態で確定操作が行われると、制御回路17は、条件「1u2」を危険報知条件として受け付ける。制御回路17は、危険報知条件を受け付けたと判断した場合(ステップS32においてYES)、制御をステップS40に切り替える。そうでない場合には(ステップS32においてNO)、制御回路17は、ステップS32の処理を再び実行する。
【0047】
ステップS40において、制御回路17は、正常表示パターンについての設定であることをユーザに提示する。
図4の例では、条件「D5P.G」が表示部40に表示されている。条件「D5P.G」の「G」は、緑色(Green)を示す。ユーザは、当該文字列を確
認することで、正常表示パターンについての設定であることを認識することができる。
【0048】
ステップS42において、制御回路17は、正常表示パターンで点灯するための条件(以下、「正常報知条件」ともいう。)を受け付けたか否かを判断する。上述と同様に、ユーザは、予め定められた複数の条件を順次切り替えることで、目的の条件を選択できる。
図4の例では、条件「1n2」が正常報知条件として選択されている。この状態で確定操作が行われると、制御回路17は、条件「1n2」を正常報知条件として受け付ける。制御回路17は、正常報知条件を受け付けたと判断した場合(ステップS42においてYES)、制御をステップS50に切り替える。そうでない場合には(ステップS42においてNO)、制御回路17は、ステップS42の処理を再び実行する。
【0049】
ステップS50において、制御回路17は、設定の保存操作を受け付けたか否かを判断する。たとえば、制御回路17は、予め定められたボタン(たとえば、OKボタン)が押下されたことに基づいて、設定の保存が許可されたと判断する。一方で、制御回路17は、予め定められたボタン(たとえば、キャンセルボタン)が押下されたことに基づいて、設定の保存がキャンセルされたものと判断する。制御回路17は、設定の保存操作を受け付けたと判断した場合(ステップS50においてYES)、制御をステップS52に切り替える。そうでない場合には(ステップS50においてNO)、制御回路17は、
図3に示される処理を終了する。
【0050】
ステップS52において、制御回路17は、各表示パターンについて設定された条件を対応する表示パターンに対応付けて設定情報として記憶する。当該設定情報は、たとえば、センサユニット100の記憶部23(
図2参照)に記憶される。
【0051】
以上のようにして、センサユニット100は、インジケータ41が正常表示態様で点灯するために、内部流体の第1物理量(たとえば、温度)および正常範囲ΔR1の比較結果と、内部流体の第2物理量(たとえば、流量/圧力)および正常範囲ΔR2の比較結果とが満たすべき正常報知条件(第1条件)を受け付ける。また、インジケータ41が危険表示態様で点灯するために、内部流体の第1物理量および正常範囲ΔR1の比較結果と、内部流体の第2物理量および正常範囲ΔR2の比較結果とが満たすべき危険報知条件(第2条件)を受け付ける。さらに、インジケータ41が異常表示態様で点灯するために、内部流体の第1物理量および正常範囲ΔR1の比較結果と、内部流体の第2物理量および正常
範囲ΔR2の比較結果とが満たすべき異常報知条件(第2条件)を受け付ける。これにより、ユーザは、用途に合わせて様々な条件で工作機械の状態を監視することができる。
【0052】
典型的な設定例においては、危険報知条件は正常報知条件よりも満たされにくく設定され、異常報知条件は危険報知条件よりも満たされにくく設定される。このような設定においては、異常報知条件が満たされる前に、危険報知条件が必ず満たされるので、センサユニット100は、危険表示パターンでの点灯を経てから、異常表示パターンで点灯する。その結果、インジケータ41が危険表示パターンで点灯している場合、ユーザは、工作機械の異常の発生に備えて様々な措置を取ることができる。
【0053】
好ましくは、危険報知条件が正常報知条件よりも満たされやすく設定された場合、または、異常報知条件が危険報知条件よりも満たされやすく設定された場合には、設定エラーが表示されてもよい。
【0054】
なお、各表示パターンについての設定方法は、
図3および
図4の例に限定されない。たとえば、センサユニット100は、パソコンやサーバーなどの情報処理端末と通信可能に構成されており、当該情報処理端末上で設定処理が行われてもよい。この場合、各表示パターンについての条件を設定するための設定画面が情報処理端末上に表示され、ユーザは、各表示パターンで点灯するために満たすべき条件を当該設定画面上で設定することができる。ユーザが当該設定画面に対して設定保存操作を行うと、情報処理端末は、センサユニット100に設定内容を送信する。
【0055】
[D.表示フロー]
センサユニット100は、
図3および
図4で設定された正常報知条件、危険報知条件、および異常報知条件に基づいて、工作機械の状態を監視し、当該状態を表わす表示態様でインジケータ41を点灯させる。以下では、
図5を参照して、インジケータ41の表示フローについて説明する。
図5は、インジケータ41の表示フローの一例を示す図である。
【0056】
ステップS110において、制御回路17は、工作機械の内部流体の温度を計測する。内部流体の温度の計測方法の詳細については後述する。
【0057】
ステップS112において、制御回路17は、工作機械の内部流体の流量/圧力を計測する。内部流体の流量/圧力の計測方法の詳細については後述する。
【0058】
ステップS120において、制御回路17は、ステップS110で取得した温度と、ステップS112で取得した流量/圧力が上述の正常報知条件を満たしたか否かを判断する。制御回路17は、正常報知条件が満たされたと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御回路17は、制御をステップS130に切り替える。
【0059】
ステップS122において、制御回路17は、インジケータ41を正常表示パターンで点灯させる。一例として、制御回路17は、インジケータ41を緑色で点灯させる。
【0060】
ステップS130において、制御回路17は、ステップS110で取得した温度と、ステップS112で取得した流量/圧力が上述の危険報知条件を満たしたか否かを判断する。制御回路17は、危険報知条件が満たされたと判断した場合(ステップS130においてYES)、制御をステップS132に切り替える。そうでない場合には(ステップS130においてNO)、制御回路17は、制御をステップS140に切り替える。
【0061】
ステップS132において、制御回路17は、インジケータ41を危険表示パターンで
点灯させる。一例として、制御回路17は、インジケータ41を黄色で点灯させる。
【0062】
ステップS140において、制御回路17は、ステップS110で取得した温度と、ステップS112で取得した流量/圧力が上述の異常報知条件を満たしたか否かを判断する。制御回路17は、異常報知条件が満たされたと判断した場合(ステップS140においてYES)、制御をステップS142に切り替える。そうでない場合には(ステップS140においてNO)、制御回路17は、制御をステップS110に戻す。
【0063】
ステップS142において、制御回路17は、インジケータ41を異常表示パターンで点灯させる。一例として、制御回路17は、インジケータ41を赤色で点灯させる。
【0064】
図5の処理が繰り返されることで、インジケータ41の表示パターンは、工作機械の状態の変化に合わせてリアルタイムに変化する。これにより、インジケータ41は、工作機械の状態をユーザに常に報知することができる。
【0065】
[E.センサユニット100の使用態様]
図6を参照して、センサユニット100の使用態様について説明する。
図6は、センサユニット100の使用態様の一例を示す図である。
【0066】
センサユニット100は、内部流体の温度および流量を検知することができる流量センサユニット100Aにもなり得るし、内部流体の温度および圧力を検知することができる圧力センサユニット100Bにもなり得る。
【0067】
センサユニット100の本体部5には、接続ユニット8A,8Bが接続され得る。接続ユニット8Aが本体部5に接続されることで、センサユニット100は、流量センサユニット100Aとなる。接続ユニット8Bが本体部5に接続されることで、センサユニット100は、圧力センサユニット100Bとなる。このように、ユーザは、使用用途に合わせて、センサユニット100を流量センサユニット100Aとして使用することもできるし、センサユニット100を圧力センサユニット100Bとして使用することもできる。
【0068】
以下では、流量センサユニット100Aおよび圧力センサユニット100Bについて順に説明する。
【0069】
[F.流量センサユニット100A]
(F1.流量センサユニット100Aの構成)
図7および
図8を参照して、流量センサユニット100Aの構成について説明する。
図7は、流量センサユニット100Aの外観を説明するための図である。流量センサユニット100Aは、熱式流量計の一実施例であり、たとえば、FA(Factory Automation)で用いられる工作機械の流体の流量を計測および監視するために用いられる。
【0070】
図7を参照して、流量センサユニット100Aは、工作機械の流路Lに相当する配管に抜き差し可能に構成されたプローブ4と、本体部5とを含む。プローブ4は、内部が中空の柱状の鋼管3を備えて、本体部5に対して脱着自在に装着され得る。本体部5は、ユーザの操作を受け付けるための操作部30と、検知結果または計測結果を含む情報を表示するための表示部40とを備える。操作部30は、ボタン31を含む。
【0071】
プローブ4は、その長手方向に延びる仮想の軸が、配管内の流体21が流れる方向に延びる仮想の軸(矢印Dの軸)に対して直交するように、配管に差し込まれる。なお、差し込み態様は直交に限定されず、交差する態様であってもよい。
【0072】
図8は、プローブ4の内部を模式的に示す図である。プローブ4は、鋼管3の内周面32の異なる位置に配置された、たとえば白金材料からなる抵抗体R1および抵抗体R2を備える。抵抗体R1は、発熱と測温の両方を行うように構成され、抵抗体R2は、測温のみを行うように構成される。ここでは、抵抗体R2は、測温に関して、抵抗体R1の自己発熱の影響を受けないような位置に配置されている。プローブ4が配管に差し込まれた状態では、鋼管3の外周面33は流体21に曝されて、内周面32および外周面33を介して抵抗体(抵抗体R1と抵抗体R2)と流体21の間で熱が伝達する。
【0073】
実施の形態では、抵抗体R1および抵抗体R2には、温度特性が良好で経時変化が少ない白金材料を用いるが、材料はこれに限定されない。また、流体21の種類は、たとえば水、油、不凍液などを含み得るが、これらの種類に限定されない。
【0074】
(F2.測定方法)
流量センサユニット100Aは、抵抗体R1に、電流を供給して自己発熱させ周囲よりも高い温度となるように制御する。抵抗体R1の測定温度は、抵抗体R1から流体21への熱伝達により流体21の流速に応じて変化する。すなわち、流体21の流速が速いほど、抵抗体R1から流体21への熱移動が活発になり、抵抗体R1の温度が低くなる。つまり、抵抗体R1の測定温度は、流体21の温度と流体21の流速との影響を受ける。これに対して、抵抗体R2の測定温度は流体21の温度を示す。すなわち、抵抗体R2の測定温度は、流体21の温度の影響のみを受ける。流量センサユニット100Aは、抵抗体R1の測定温度から抵抗体R2の測定温度を差分することで、流体21の温度の影響を除去する。この差分結果は、流体21の流速に相関する。流量センサユニット100Aは、この差分結果から流体21の流速を測定する。
【0075】
以下では、
図9を参照して、流量センサユニット100Aによる流速の測定方法について説明する。
図9は、抵抗体R1の供給電流と流量センサユニット100Aの測定温度との関係を模式的に示す図である。
【0076】
図9を参照して、抵抗体R1には、加温部25(
図2参照)からの加温信号が示すパルス周期STの電流が電源回路22から供給される。加温部25は、抵抗体R1への通電を周期的にオンオフする。抵抗体R1による測定温度T1は、パルス周期STに同期して周期的に変動するが、通電の自己発熱により予め定められた温度で安定する。これに対して、抵抗体R2の測定温度T2は、流体21の温度を示す。測定時は、抵抗体R1および抵抗体R2にそれぞれ定電流(
図9では、たとえば1mA)が供給されて、流量センサユニット100Aは、そのとき検知される両者の出力信号の差である抵抗差により、温度差(測定温度の差分)dTを導出する。したがって、温度差dTは、流体21の温度によっては変化せず、流体21の流速によってのみ変化する。
【0077】
なお、実施の形態では抵抗体R1および抵抗体R2の出力信号が示す抵抗差から温度差を導出しているが、温度差を示す値であれば、抵抗差に限定されず、電圧降下の差、または起電力の差であってもよい。
【0078】
各パルス周期における、通電オン(ハイ)レベルおよび通電オフ(ロー)レベルは100mAおよび1mAをそれぞれ示す。オンの電流値(100mA)は、抵抗体R1を自己発熱させ得る値であり、オフの電流値(1mA)は温度測定のための値である。
【0079】
図9では、抵抗体R1への通電をオンにした時点から温度差dTの出力値が飽和する前の時点において、温度差dTを導出する。たとえば、
図9のパルス周期STは、略160msecであるとすれば、通電オンの期間が終了後から予め定められた時間、たとえば80msec経過したときから140msecまでの時間(略60msec間)において温
度差dTを導出する。なお、パルス周期STおよび当該予め定められた時間は、これら値に限定されず、装置の特性に依存し、たとえば実験等により取得され得る。
【0080】
[G.圧力センサユニット100B]
(G1.圧力センサユニット100Bの内部構成)
次に、
図10および
図11を参照して、圧力センサユニット100Bとしてのセンサユニット100について説明する。
【0081】
図10は、圧力センサユニット100Bの内部構成を説明するための図である。流量センサユニット100Aは、たとえば、FAで用いられる工作機械の流体から受ける圧力を計測および監視するために用いられる。
【0082】
図10に示されるように、圧力センサユニット100Bは、本体部5と、接続ユニット8Bとで構成されている。圧力センサユニット100Bの内部には、圧力センサ60と、温度センサ70,80とが設けられている。
【0083】
圧力センサ60は、流体21から受ける圧力を検知する。圧力センサ60の圧力検知の方法は、計測対象の流体21の特性に応じて適宜選択されてよい。たとえば、流体21が水、油等の流体である場合、ピエゾ式の圧力センサが圧力センサ60に採用される。圧力センサ60は、圧力素子2の検知面が、本体部5の底面から流体21に対して露出するように配置される。
【0084】
温度センサ70は、本体部5の筐体または圧力センサ60から伝導する流体21の温度を検知するための温度センサである。一方、温度センサ80は、温度センサ70の温度検知における、気温の影響を測るために設けられるセンサである。温度センサ70および温度センサ80は、本体部5内の異なる位置に設けられる。より具体的には、温度センサ70は、本体部5の内部であって、圧力センサ60の圧力素子2の検知面の反対面上に配置されることが望ましい。これにより、温度センサ70は、流体21に直接接している圧力素子2から伝導する温度を検知することができる。つまり、温度センサ70は、実際の流体21の温度により近い温度を検知することができる。
【0085】
以下では、本体部5の外気温をTa、流体21の温度をTL、温度センサ70の検知温度をT1、温度センサ80の検知温度をT2とする。また、外気温が温度センサ80に伝導する際の伝導率をθa-b、検知温度が温度センサ70に伝導する際の伝導率をθL-cとする。
【0086】
温度センサ80は、温度センサ70よりも流体21から離れた位置に設けられる。温度センサ80は、流体21の温度が極力伝播しない位置に設けられることが望ましい。たとえば、温度センサ80は、本体部5の内側における流体21と接触していない部分に設けられる。また、温度センサ80は、本体部5から露出されるように設けられていてもよいし、温度センサ80自体が本体部5の外側に設けられていてもよい。
【0087】
(G2.測定方法)
圧力センサユニット100Bは、圧力センサ60を用いて流体21から受ける圧力を測定するだけでなく、温度センサ70,80を用いて流体21の温度を測定する。以下では、
図11を参照して、圧力センサユニット100Bによる温度の測定方法について説明する。
【0088】
上述の
図10に示される各温度の変数を用いると、温度センサ80の測定温度T
2と、外気温T
aとの関係は、下記式(1)のようにモデル化できる。一方、温度センサ70は
、本体部5または圧力センサ60から伝導する流体21の温度を測定する際に、本体部5の内部の気温の影響を受ける。本体部5の内部の気温は、外気温に応じて変化するため、温度センサ70は外気温の影響を受けている。温度センサ70の測定温度T
1と、流体21の温度T
Lと、外気温T
aとの関係は、下記式(2)のようにモデル化できる。
【0089】
T2=Ta×θa-b+ε・・・(1)
T1=TL×θL-c+f(TL-Ta)+ε・・・(2)
「θa-b」および「θL-c」は、熱伝導率であり、温度センサ70と接触している本体部5または圧力センサ60の材質から予め定められた定数である。「f(TL-Ta)」は、流体21と外気温との温度差「TL-Ta」を入力変数とする関数である。関数「f(TL-Ta)」は、センサユニット100の構造および材質等により決められ、圧力センサユニット100Bに予め記憶されている。また、「ε」は式ごとに適宜設定される、誤差修正のための数値である。
【0090】
図11は、流体21と外気温との温度差に応じた、温度センサ70の測定温度の変化を示すグラフである。図中の実線は、流体21と外気温との温度差に応じた上記式(2)の値の推移を示している。図中の点線は、流体21と外気温との温度差がない場合(すなわち、T
L-T
a=0)のT
1の値を延長した線である。
【0091】
図示のように、流体21の温度と外気温との差が生じた場合(すなわち、TL-Ta>0)、温度センサ70が温度測定の際に気温の影響を受けるため、上記式(2)から算出される値は低下する。この低下の度合いは、流体21の温度と外気温との差が大きくなるほど大きくなる。
【0092】
圧力センサユニット100Bは、温度T1および温度T2を示す数値を取得し、温度T1を温度T2で補正する。当該補正量と温度T2との関係は、実験などで予め決められている。圧力センサユニット100Bは、補正後の温度T1を流体21の温度として出力する。
【0093】
[H.利点]
以上のようにして、本実施の形態に従うセンサユニット100は、工作機械に流れる流体に関して複数種類の物理量を取得し、当該複数種類の物理量を総合的に判断し、工作機械の状態を判断する。センサユニット100のインジケータ41は、工作機械の状態に合わせて、正常表示パターン、危険表示パターン、および異常表示パターンのいずれかで点灯する。
【0094】
センサユニット100は、複数種類の物理量から総合的にセンサユニット100の状態を判断することで、工作機械の正常状態および異常状態を検知するだけでなく、工作機械の異常の予兆を示す危険状態を検知することができる。インジケータ41は、工作機械が正常状態である場合には正常表示パターンで点灯し、工作機械が危険状態である場合には危険表示パターンで点灯し、工作機械が異常状態である場合には異常表示パターンで点灯する。ユーザは、インジケータ41の危険表示パターンを確認することで、工作機械に異常が発生しそうなことを把握でき、異常の発生前に様々な措置を取ることができる。
【0095】
<第2の実施の形態>
[A.概要]
第1の実施の形態においては、工作機械の状態を判断する基準となる正常範囲ΔR1,ΔR2(
図1参照)が上限値のみで規定されていた。これに対して、第2の実施の形態においては、正常範囲ΔR1,ΔR2が下限値および上限値で規定される。正常範囲ΔR1,ΔR2が下限値および上限値で規定されることで、センサユニット100は、工作機械
の状態をより正確に判断することができる。
【0096】
第2の実施の形態に従うセンサユニット100の装置構成などその他の点については第1の実施の形態に従うセンサユニット100と同じであるので、以下では、それらの説明については繰り返さない。
【0097】
なお、正常範囲ΔR1は、上限値(第1上限値)および下限値(第1上限値)の少なくとも一方で規定されればよい。たとえば、「第1の実施の形態」で説明したように、正常範囲ΔR1は、下限値のみで規定されてもよい。同様に、正常範囲ΔR2は、上限値(第2上限値)および下限値(第2上限値)の少なくとも一方で規定されればよい。たとえば、正常範囲ΔR2は、下限値のみで規定されてもよい。
【0098】
[B.センサユニット100の表示態様]
図12を参照して、第2の実施の形態に従うセンサユニット100の表示態様について説明する。
図12は、第2の実施の形態に従うセンサユニット100の表示態様を模式的に示す図である。
【0099】
インジケータ41は、内部流体の温度と正常範囲ΔR1(第1正常範囲)との比較結果、および、内部流体の流量/圧力と正常範囲ΔR2(第2正常範囲)との比較結果に基づいて、正常表示パターン、危険表示パターン、および異常表示パターンのいずれかで点灯する。本実施の形態においては、正常範囲ΔR1は、下限値Th1Aと上限値Th1Bとで規定されている。正常範囲ΔR2は、下限値Th2Aと上限値Th2Bとで規定されている。下限値Th1A,Th2Aおよび上限値Th1B,Th2Bは、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意に設定されてもよい。
【0100】
より具体的な表示処理として、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれ、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれる場合、正常表示パターンで点灯する。たとえば、
図12(A)に示されるように、内部流体の温度が「T5」で、内部流体の流量/圧力が「C5」であるとする。温度「T5」は、正常範囲ΔR1の下限値Th1Aよりも大きく、正常範囲ΔR1の上限値Th1Bよりも小さい。また、流量/圧力「C5」は、正常範囲ΔR2の下限値Th2Aよりも大きく、正常範囲ΔR2の上限値Th2Bよりも小さい。この場合、温度「T5」が正常範囲ΔR1に含まれ、かつ、流量/圧力「C5」が正常範囲ΔR2に含まれるので、センサユニット100は、工作機械が正常状態であると判断し、正常表示パターンでインジケータ41を点灯させる。
【0101】
また、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれ、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれない場合、危険表示パターンで点灯する。あるいは、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれず、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれる場合、危険表示パターンで点灯する。たとえば、
図12(B)に示されるように、内部流体の温度が「T6」で、内部流体の流量/圧力が「C6」であるとする。温度「T6」は、正常範囲ΔR1の下限値Th1Aを下回っている。また、流量/圧力「C6」は、正常範囲ΔR2の下限値Th2Aよりも大きく、正常範囲ΔR2の上限値Th2Bよりも小さい。この場合、温度「T6」が正常範囲ΔR1に含まれておらず、かつ、流量/圧力「C6」が正常範囲ΔR2に含まれているので、センサユニット100は、工作機械が危険状態であると判断し、危険表示パターンでインジケータ41を点灯させる。
【0102】
また、インジケータ41は、内部流体の温度が正常範囲ΔR1に含まれず、かつ、内部流体の流量/圧力が正常範囲ΔR2に含まれない場合、異常表示パターンで点灯する。たとえば、
図12(C)に示されるように、内部流体の温度が「T7」で、内部流体の流量
/圧力が「C7」であるとする。この場合、温度「T7」は、正常範囲ΔR1の上限値Th1Bを超えており、流量/圧力「C7」は、正常範囲ΔR2の上限値Th2Bを超えている。この場合、温度「T7」が正常範囲ΔR1に含まれておらず、かつ、流量/圧力「C7」が正常範囲ΔR2に含まれていないので、センサユニット100は、工作機械が異常状態であると判断し、異常表示パターンでインジケータ41を点灯させる。
【0103】
なお、上述では、インジケータ41が正常表示パターン、危険表示パターン、および異常表示パターンのいずれかで点灯する例について説明を行ったが、インジケータ41は、4種類以上の表示パターンを有していてもよい。
図12の例では、正常範囲ΔR1が下限値Th1Aおよび上限値Th1Bで規定されており、正常範囲ΔR2が下限値Th2Aおよび上限値Th2Bで規定されているので、センサユニット100は、温度および流量/圧力に基づいて、工作機械の状態を9つの状態(=3×3)に分けることができる。センサユニット100は、これらの各状態に対応する表示パターンでインジケータ41を点灯させるように構成されてもよい。
【0104】
[C.利点]
以上のようにして、本実施の形態においては、正常範囲ΔR1,ΔR2が下限値および上限値で規定される。これにより、センサユニット100は、工作機械の状態をより正確に判断することができる。その結果、センサユニット100は、工作機械の危険状態をより正確に検知することができる。これにより、ユーザは、工作機械の異常の発生に備えて様々な措置を取ることができる。
【0105】
<第3の実施の形態>
[A.概要]
第1の実施の形態に従うセンサユニット100は、表示パターンの判定モードとして1つの判定モードしか有していなかった。これに対して、第3の実施の形態に従うセンサユニット100は、複数の判定モードを有する。
【0106】
第3の実施の形態に従うセンサユニット100の装置構成などその他の点については第1の実施の形態に従うセンサユニット100と同じであるので、以下では、それらの説明については繰り返さない。
【0107】
[B.判定モード]
図13および
図14を参照して、センサユニット100の判定モードについて説明する。本実施の形態に従うセンサユニット100は、インジケータ41における表示パターンの判定モードとして、ノーマルモードと、ウィンドウモードとを有する。センサユニット100は、ノーマルモードおよびウィンドウモードのいずれかに判定モードを設定できるように構成されている。
【0108】
図13は、ノーマルモードにおける判定条件を示す図である。
図14は、ウィンドウモードにおける表示条件を示す図である。
【0109】
図13および
図14に示される「ch1」は、内部流体について計測された第1物理量(たとえば、温度)を示す。
図13および
図14に示される「ch2」は、内部流体について計測された第2物理量(たとえば、流量/圧力)を示す。
【0110】
ノーマルモードにおける判定条件は、たとえば、上述の「第1の実施の形態」と同じである。すなわち、表示パターンを決定する基準となる正常範囲ΔR1が上限値Th1で規定され、正常範囲ΔR2が上限値Th2で規定される。
【0111】
ウィンドウモードにおける判定条件は、たとえば、上述の「第2の実施の形態」と同じである。すなわち、表示パターンを決定する基準となる正常範囲ΔR1が下限値Th1Aと上限値Th1Bとで規定され、正常範囲ΔR2が下限値Th2Aと上限値Th2Bとで規定される。
【0112】
[C.利点]
以上のようにして、本実施の形態に従うセンサユニット100は、複数の判定モードを有する。これにより、ユーザは、工作機械の使用態様に合わせて表示パターンの判定条件を変えることができる。
【0113】
<第4の実施の形態>
第1~第3の実施の形態に従うセンサユニット100は、工作機械の内部流体から計測された2種類の物理量(すなわち、温度および流量/圧力)から工作機械の状態を判断していた。これに対して、第4の実施の形態に従うセンサユニット100は、工作機械の内部流体から計測された3種類以上の物理量から工作機械の状態を判断する。
【0114】
第4の実施の形態に従うセンサユニット100の装置構成などその他の点については第1の実施の形態に従うセンサユニット100と同じであるので、以下では、それらの説明については繰り返さない。
【0115】
本実施の形態に従うセンサユニット100は、たとえば、内部流体の温度と、内部流体から受ける圧力と、内部流体の流量とに基づいて、工作機械の状態を判断する。各物理量には、予め正常範囲が設定されている。
【0116】
一例として、センサユニット100は、内部流体の温度が正常範囲に含まれている場合に満たされる条件と、内部流体の圧力が正常範囲に含まれている場合に満たされる条件と、内部流体の流量が正常範囲に含まれている場合に満たされる条件との3つの条件に基づいて、工作機械の状態を判断する。より具体的には、センサユニット100は、これらの3つの条件が全て満たされた場合に、工作機械が正常状態であると判断する。センサユニット100は、これらの3つの条件の1つまたは2つの条件が満たされない場合に、工作機械が危険状態であると判断する。センサユニット100は、これらの3つの条件の全てが満たされない場合に、工作機械が異常状態であると判断する。
【0117】
センサユニット100は、工作機械が正常状態であると判断した場合、正常表示パターンでインジケータ41を点灯させる。センサユニット100は、工作機械が危険状態であると判断した場合、危険表示パターンでインジケータ41を点灯させる。センサユニット100は、工作機械が異常状態であると判断した場合、異常表示パターンでインジケータ41を点灯させる。このように、より多種類の物理量で工作機械の状態が判断されることで、センサユニット100は、工作機械の状態をより正確に判断することができる。
【0118】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
2 圧力素子、3 鋼管、4 プローブ、5 本体部、8A,8B 接続ユニット、10 取得部、16 変換部、17 制御回路、21 流体、22 電源回路、23 記憶部、25 加温部、30 操作部、31 ボタン、32 内周面、33 外周面、40 表示部、41 インジケータ、60 圧力センサ、70,80 温度センサ、100 セ
ンサユニット、100A 流量センサユニット、100B 圧力センサユニット。