(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】運転制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/023 20120101AFI20240717BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60W50/023
B60W50/04
(21)【出願番号】P 2023069320
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2019236016の分割
【原出願日】2019-12-26
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁真
(72)【発明者】
【氏名】大橋 祐太
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/154859(WO,A1)
【文献】特表2016-525038(JP,A)
【文献】国際公開第2014/083649(WO,A1)
【文献】特開2019-156091(JP,A)
【文献】特開2019-189029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御するための制御指令を生成して出力する第1運転支援装置と、
車両を制御するための制御指令を生成して出力する前記第1運転支援装置とは別の第2運転支援装置と、
前記第2運転支援装置の予備用装置であり、車両を制御するための制御指令を生成して出力する第3運転支援装置と、
前記第1運転支援装置および前記第2運転支援装置からそれぞれ取得した制御指令を調停し、調停結果に基づいて制御指令を出力する運動マネージャと、
アクチュエータを制御するアクチュエータ制御装置と、を備え、
前記アクチュエータ制御装置は、
前記運動マネージャが正常である場合、前記運動マネージャが出力した制御指令に基づいて前記アクチュエータを制御し、
前記運動マネージャが正常でない場合、前記第3運転支援装置が出力した制御指令に基づいて前記アクチュエータを制御する、
運転制御システム。
【請求項2】
車両を制御するための制御指令を生成して出力する第1運転支援装置と、
車両を制御するための制御指令を生成して出力する前記第1運転支援装置とは別の第2運転支援装置と、
前記第2運転支援装置の予備用装置であり、車両を制御するための制御指令を生成して出力する第3運転支援装置と、
前記第1運転支援装置および前記第2運転支援装置からそれぞれ取得した制御指令を調停し、調停結果に基づいて制御指令を出力する運動マネージャと、を備え、
前記第2運転支援装置が正常でない場合、前記運動マネージャは、前記第1運転支援装置および前記第3運転支援装置からそれぞれ取得した制御指令を調停し、調停結果に基づいて制御指令を出力する、
運転制御システム。
【請求項3】
車両を制御するための制御指令を生成して出力する第1運転支援装置と、
車両を制御するための制御指令を生成して出力する前記第1運転支援装置とは別の第2運転支援装置と、
前記第2運転支援装置の予備用装置であり、車両を制御するための制御指令を生成して出力する第3運転支援装置と、
前記第1運転支援装置および前記第2運転支援装置からそれぞれ取得した制御指令を調停し、調停結果に基づいて制御指令を出力する運動マネージャと、
アクチュエータを制御するアクチュエータ制御装置と、
前記アクチュエータ制御装置の予備用装置であり、予備用アクチュエータを制御する予備アクチュエータ制御装置と、を備え、
前記アクチュエータ制御装置は、
前記アクチュエータが正常である場合、前記運動マネージャが出力した制御指令に基づいて前記アクチュエータを制御し、
前記アクチュエータが正常でない場合、前記第3運転支援装置が出力した制御指令に基づいて前記予備用アクチュエータを制御する、
運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転支援を行う運転支援装置を含む運転制御システムが各種提案されている。運転支援とは、例えば、走行経路等を定めた運転計画に基づく自動運転や安全性向上のための衝突回避等である。
【0003】
運転支援装置を複数搭載した車両においては、複数の運転支援装置からの制御指令のうちいずれを実際に車両の各アクチュエータの制御に用いるか等を決定する調停処理を行う、運動マネージャと呼ばれる装置が搭載される。
【0004】
これに関連して、特許文献1は、同じ制御対象を異なるアクチュエータの駆動によって制御する場合には、いずれのアクチュエータを駆動するか、もしくは、どのように制御量を分配するかなどを調停する運動マネージャを開示している。
【0005】
また、運転制御システムにおいては、とくに車両をユーザの意思によらず継続的に制御する自動運転では、高い堅牢性が求められる。
【0006】
これに関連して、特許文献2は、車両の目標経路を達成するための車両の目標状態を求める運動制御機能を冗長化して堅牢化することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-96619号公報
【文献】特開2019-156091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
運動マネージャを含む運転制御システムにおいて、運動マネージャに異常が発生した場合、運転支援装置の機能が発揮できず車両の適切な制御ができなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、運動マネージャを含む堅牢性の高い運転制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、車両を制御するための制御指令を運転計画に基づかず生成して出力する第1運転支援装置と、車両を制御するための制御指令を運転計画に基づいて生成して出力する第2運転支援装置と、第2運転支援装置の予備用装置であり、車両を制御するための制御指令を運転計画に基づいて生成して出力する第3運転支援装置と、第1運転支援装置および第2運転支援装置からそれぞれ取得した制御指令のうち、互いに競合する制御指令を調停し、調停結果に基づいて制御指令を出力し、また、互いに競合しない制御指令に基づいて制御指令を出力する運動マネージャと、アクチュエータを制御するアクチュエータ制御装置とを備え、アクチュエータ制御装置は、運動マネージャが正常である場合、運動マネージャが出力した制御指令に基づいて、アクチュエータを制御し、運動マネージャが正常でない場合、第3運転支援装置が出力した制御指令に基づいて、アクチュエータを制御する、運転制御システムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運動マネージャを経由せずにアクチュエータを制御する予備の運転支援装置を設けることにより、運動マネージャに異常が発生しても、運転支援機能を維持できる堅牢性の高い運転制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運転制御システムの機能ブロックと情報の流れを示す図
【
図2】本発明の一実施形態に係る正常時の処理に用いる情報の流れを示す図
【
図3】本発明の一実施形態に係る運動マネージャの異常発生時の処理に用いる情報の流れを示す図
【
図4】本発明の一実施形態に係る運転支援装置の異常発生時の処理に用いる情報の流れを示す図
【
図5】本発明の一実施形態に係るアクチュエータの異常発生時の処理に用いる情報の流れを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る運転制御システムにおいては、自動運転機能を有する運転支援装置を冗長化する。運動マネージャまたは運転支援装置に異常が発生した場合、予備の運転支援装置が、運動マネージャを経由せずに、アクチュエータを制御する。また、アクチュエータの制御装置を適宜冗長化することにより、アクチュエータに異常が発生した場合、予備のアクチュエータを動作させる。
【0014】
<構成>
図1に、本実施形態に係る運転制御システム100の機能ブロックを示す。運動制御システムは、一例として、第1運転支援装置11、第2運転支援装置12、第3運転支援装置13、運動マネージャ21、加速度制御装置22、パーキングブレーキ制御装置31、ステアリング制御装置32、34、シフト制御装置33、パワートレーン制御装置35を備える。各機能ブロック間でやり取り可能な情報の流れを矢印で示す。
【0015】
第1運転支援装置11は、例えば、車両が備える各種センサから取得する車両の周囲の状態を表す情報に基づいて、他の車両や歩行者や障害物との衝突を回避するため、車両を減速あるいは停止させる衝突回避機能のような、先進安全と呼ばれる機能を有する。本実施形態では、一例として、第1運転支援装置11は、制御指令として車両の加速度の要求値を生成して出力する。なお、第1運転支援装置11の機能は、衝突回避に限定されず、例えば、前車と一定の車間距離を維持しながら走行する前車追従機能等であってもよい。
【0016】
第2運転支援装置12は、例えば、各種センサ等から取得する車両や車両の周囲の状態を表す情報や、地図データ等から走行経路等を表す運転計画を作成し、運転計画に基づいて、車両の加減速やステアリングを制御する自動運転機能を有する。本実施形態では、一例として、第2運転支援装置12は、制御指令として車両の加速度、舵角、シフトレンジの要求値を生成して出力する。なお、第2運転支援装置12は、運転計画の少なくとも一部をナビゲーションシステム等から取得してもよい。なお、第2運転支援装置12は、運転計画を処理に用いない点で第1運転支援装置11と異なる。
【0017】
第3運転支援装置13は、第2運転支援装置12と同等の機能を有する。第2運転支援装置12がメイン系の装置であり、第3運転支援装置13は、第2運転支援装置12の予備用に設けられたサブ系の装置である。
【0018】
運動マネージャ21は、第1運転支援装置11が出力した制御指令と第2運転支援装置12が出力した制御指令とを調停する。調停とは、第1運転支援装置11が出力した制御指令および第2運転支援装置12が出力した制御指令が競合する種別の制御指令である場合、いずれの制御指令を実際に車両の制御に用いるかを、規則に基づいて決定する処理である。本実施形態では、運動マネージャ21は、制御指令として第1運転支援装置11が先進安全機能のために出力した加速度の要求値と第2運転支援装置12が自動運転のために出力した加速度の要求値とが競合するため、例えば、先進安全機能を優先させて、第1運転支援装置11が出力した加速度の要求値を車両の制御に用いることを決定する。
【0019】
運動マネージャ21は、本実施形態では、サービスブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置と一体的に設けられる。運動マネージャ21は、調停によって車両の制御に用いることを決定した加速度を実現するために、サービスブレーキに発生させる制動力と、パワートレーンに発生させる駆動力とを導出する。例えば、運動マネージャ21は、加速度が正の駆動力を発生させることを表している場合は、パワートレーンに駆動力を発生させ、加速度が制動力(負の駆動力)を発生させることを表している場合は、パワートレーンに可能な範囲で負の駆動力を発生させ、不足する制動力をサービスブレーキに発生させる。
【0020】
運動マネージャ21は、サービスブレーキに発生させる制動力を制御指令として、一体化されているブレーキ制御装置に通知し、パワートレーンに発生させる駆動力を制御指令として出力する。このブレーキ制御装置は制動力を表す制御指令に従ってサービスブレーキに制動力を発生させる制御を行う。
【0021】
また、運動マネージャ21は、第1運転支援装置11が出力した制御指令および第2運転支援装置12が出力した制御指令が競合しない種別の制御指令である場合、それぞれの制御指令を出力する。本実施形態では、運動マネージャ21は、制御指令として第2運転支援装置12が自動運転のために出力した舵角およびシフトレンジの要求値は、第1運転支援装置11の制御指令である加速度と競合しないため、第2運転支援装置12が出力した舵角およびシフトレンジの要求値を車両の制御に用いることを決定し、これらの要求値を、制御指令として出力する。
【0022】
運動マネージャ21は、例えば、第2運転支援装置12が出力した制御指令のうち加速度の要求値等や車両の速度等に基づいて、パーキングブレーキの動作または解除(オン/オフ)を表す制御指令を生成して出力する。
【0023】
加速度制御装置22は、第3運転支援装置13が出力した制御指令のうち加速度の要求値を取得し、上述の運動マネージャ21と同様に、サービスブレーキに発生させる制動力と、パワートレーンに発生させる駆動力とを導出する。加速度制御装置22は、本実施形態では、サービスブレーキ装置を制御するブレーキ制御装置と一体的に設けられる。このブレーキ制御装置は、運動マネージャ21が設けられているブレーキ制御装置がメイン系の装置であるのに対して、予備用のサブ系の装置である。サブ系のブレーキ制御装置はメイン系のブレーキ制御装置に比べて機能が限定されていてもよい。例えばメイン系のブレーキ制御装置は、VSC(Vehicle Stability Control)、ABS(Antilock Braking System)、TRC(Traction Control System)の各機能を備え、サブ系のブレーキ制御装置は、ABSの機能を備えるが、VSC、TRCの機能は備えなくてもよい。
【0024】
加速度制御装置22は、サービスブレーキに発生させる制動力を制御指令として、一体化されているブレーキ制御装置に通知し、パワートレーンに発生させる駆動力を制御指令として出力する。このブレーキ制御装置は制動力を表す制御指令に従ってサービスブレーキに制動力を発生させる制御を行う。
【0025】
パーキングブレーキ制御装置31は、運動マネージャ21から取得する、オン/オフを表す制御指令に従ってパーキングブレーキの制御を行う。
【0026】
ステアリング制御装置32は、運動マネージャ21から取得する、舵角を表す制御指令に従ってステアリング装置(電動パワーステアリング装置)を制御する。ステアリング制御装置34は、第3運転支援装置13から取得する、舵角を表す制御指令に従って、ステアリング装置を制御する。ステアリング制御装置およびステアリング装置は、同等の機能を有する2系統が設けられており、ステアリング制御装置32とステアリング制御装置32によって制御されるステアリング装置がメイン系の装置であり、ステアリング制御装置34とステアリング制御装置34によって制御されるステアリング装置が予備用のサブ系の装置である。
【0027】
シフト制御装置33は、運動マネージャ21または第3運転支援装置13から取得する、シフトレンジを表す制御指令に基づいて、シフトポジションの制御を行う。
【0028】
パワートレーン制御装置35は、運動マネージャ21または加速度制御装置22から取得する駆動力を表す制御指令に基づいて、エンジンおよび変速機、または、電動機等を含むパワートレーンに駆動力(負の駆動力である制動力をエンジンブレーキまたは回生制動等によって発生させることを含む)を発生させる制御を行う。
【0029】
各機能ブロックは、典型的にはECU(Electric Control Unit)と呼ばれる、プロセッサとメモリとを備えたコンピューターに実装される。また、各機能ブロックや、車両が備える各種センサや図示しない他のECU等は、典型的には、互いにバスで接続されており、図示する以外にも互いに情報をやり取りして、それぞれの処理を行うために必要な情報を適宜取得することができる。なお、
図1には、アクチュエータであるブレーキ、ステアリング装置、パワートレーン、パーキングブレーキ、サービスブレーキ等をそれぞれ制御する制御装置を図示したが、これらのアクチュエータ自体の図示は省略した。また、第1運転支援装置11はなくてもよく、この場合、運動マネージャ21は調停を行わない。
【0030】
<処理>
以下に、本実施形態に係る処理を説明する。
【0031】
(正常時):各機能ブロックが正常動作している場合の処理を説明する。
図2は、
図1に示した、情報の流れのうち、この場合に利用される情報の流れを太線で示したものである。なお、以降の各場合において、処理に用いられない情報は、各装置が適宜出力を抑制してよく、あるいは、適宜取得を抑制してよい。
【0032】
運動マネージャ21が、第1運転支援装置11が出力した加速度を表す制御指令と、第2運転支援装置12が出力した加速度、舵角、シフトレンジを表す制御指令とを取得し、これに基づいて、メイン系のブレーキ制御装置にサービスブレーキを用いて制動力を発生させる制御を行うとともに、パーキングブレーキのオン/オフ、駆動力、舵角、シフトレンジを表す制御指令を出力する。
【0033】
パーキングブレーキ制御装置31、ステアリング制御装置32、シフト制御装置33、パワートレーン制御装置35は、それぞれ、運動マネージャ21が出力したパーキングブレーキのオン/オフ、舵角、シフトレンジ、駆動力を表す制御指令に基づいて制御を行う。
【0034】
(運動マネージャ異常時):運動マネージャ21になんらかの異常や故障が発生し、正常に動作していない場合の処理を説明する。
図3は、
図1に示した、情報の流れのうち、この場合に利用される情報の流れを太線で示し、正常動作していない機能ブロックおよび停止しうる情報の流れを点線で示したものである。
【0035】
加速度制御装置22が、第3運転支援装置13が出力した加速度を表す制御指令を取得し、これに基づいて、サブ系のブレーキ制御装置にサービスブレーキを用いて制動力を発生させる制御を行うとともに、駆動力を表す制御指令を出力する。
【0036】
ステアリング制御装置34、シフト制御装置33は、それぞれ、第3運転支援装置13が出力した舵角、シフトレンジを表す制御指令に基づいて制御を行う。また、パワートレーン制御装置35は、加速度制御装置22が出力した駆動力を表す制御指令に基づいて制御を行う。
【0037】
なお、運動マネージャ21が正常動作していないことは、運動マネージャ21が備える自己診断装置によって検出可能である。各機能ブロックは、運動マネージャ21から、正常動作していないことを表す通知を取得したり、運動マネージャ21からの通信途絶を検出したりすることによって、運動マネージャ21が正常動作していないことを検知し、処理内容の切り替えを行うことができる。
【0038】
このように、本実施形態では、運動マネージャ21が正常動作していない場合であっても、第3運転支援装置13からの制御指令による車両の制御が行われ、自動運転機能を継続実行することができる。
【0039】
(運転支援装置異常時):第2運転支援装置12になんらかの異常や故障が発生し、正常に動作していない場合の処理を説明する。
図4は、
図1に示した、情報の流れのうち、この場合に利用される情報の流れを太線で示し、正常動作していない機能ブロックおよび停止しうる情報の流れを点線で示したものである。
【0040】
運動マネージャ21が、第1運転支援装置11が出力した加速度を表す制御指令と、第3運転支援装置13が出力した加速度を表す制御指令とを取得し、これに基づいて、メイン系のブレーキ制御装置にサービスブレーキを用いて制動力を発生させる制御を行うとともに、パーキングブレーキのオン/オフ、駆動力を表す制御指令を出力する。
【0041】
ステアリング制御装置34、シフト制御装置33は、それぞれ、第3運転支援装置13が出力した舵角、シフトレンジを表す制御指令に基づいて制御を行う。また、パーキングブレーキ制御装置31、パワートレーン制御装置35は、それぞれ、運動マネージャ21が出力したパーキングブレーキのオン/オフ、駆動力を表す制御指令に基づいて制御を行う。
【0042】
なお、第2運転支援装置12が正常動作していないことは、第2運転支援装置12が備える自己診断装置によって検出可能である。各機能ブロックは、第2運転支援装置12から、正常動作していないことを表す通知を、直接または運動マネージャ21等を経由して取得したり、第2運転支援装置12からの通信途絶を検出したりすることによって、第2運転支援装置12が正常動作していないことを検知し、処理内容の切り替えを行うことができる。
【0043】
このように、本実施形態では、第2運転支援装置12が正常動作していない場合であっても、第3運転支援装置13からの制御指令による車両の制御が行われ、自動運転機能を継続実行することができる。また、運動マネージャ21による調停機能を利用することで、第1運転支援装置11からの制御指令による車両の制御も継続することができる。
【0044】
(アクチュエータ異常時):ステアリング制御装置32、または、ステアリング制御装置32によって制御されるアクチュエータであるステアリング装置になんらかの異常や故障が発生し、正常に動作していない場合の処理を説明する。
図5は、
図1に示した、情報の流れのうち、この場合に利用される情報の流れを太線で示し、正常動作していない機能ブロックを点線で示したものである。
【0045】
運動マネージャ21が、第1運転支援装置11が出力した加速度を表す制御指令と、第2運転支援装置12が出力した加速度、舵角、シフトレンジを表す制御指令とを取得し、これに基づいて、メイン系のブレーキ制御装置にサービスブレーキを用いて制動力を発生させる制御を行うとともに、パーキングブレーキのオン/オフ、駆動力、シフトレンジを表す制御指令を出力する。
【0046】
ステアリング制御装置34は、第3運転支援装置13が出力した舵角を表す制御指令に基づいて制御を行う。また、パーキングブレーキ制御装置31、シフト制御装置33、パワートレーン制御装置35は、それぞれ、運動マネージャ21が出力したパーキングブレーキのオン/オフ、シフトレンジ、駆動力を表す制御指令に基づいて制御を行う。
【0047】
なお、ステアリング制御装置32、または、ステアリング制御装置32によって制御されるステアリング装置が正常動作していないことは、ステアリング制御装置32が備える自己診断装置によって検出可能である。各機能ブロックは、ステアリング制御装置32から、直接または運動マネージャ21等を経由して、正常動作していないことを表す通知を取得したり、ステアリング制御装置32からの通信途絶を検出したりすることによって、ステアリング制御装置32、または、ステアリング制御装置32によって制御されるステアリング装置が正常動作していないことを検知し、処理内容の切り替えを行うことができる。
【0048】
このように、本実施形態では、ステアリング制御装置32、または、ステアリング制御装置32によって制御されるステアリング装置が正常動作していない場合であっても、第3運転支援装置13からの制御指令によって、ステアリング制御装置34による舵角の制御が行われ、自動運転機能を継続実行することができる。また、運動マネージャ21による調停機能を利用することで、第1運転支援装置11からの制御指令による車両の加速度の制御も継続することができる。なお、他のアクチュエータやその制御装置も、ステアリング制御装置およびステアリング装置と同様に2系統の冗長構成にすれば、同様の処理を行うことが可能である。
【0049】
<効果>
本実施形態に係る運転制御システムにおいては、自動運転機能を有する運転支援装置を2つ設けることにより冗長化した。また、アクチュエータとその制御装置を、一例としてブレーキ機能およびステアリング機能に関して2つ設けることにより冗長化した。これらにより、上述のように、運動マネージャ、運転支援装置、アクチュエータとその制御装置のいずれかが正常に動作しない場合でも、冗長構成を利用して、運転支援機能(加速度、舵角、シフトレンジの制御)を継続的に実行することができる。これにより、運転制御システムは、運動マネージャ等に異常が発生しても、車両の適切な制御を維持できる高い堅牢性を持つことができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は適宜変形して実施できる。また、本発明は、運転制御システムだけでなく、運転制御システムを構成するプロセッサとメモリとを備えたコンピューターが実行する運転制御方法、運転制御プログラム、運転制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、運転制御システムを備えた車両等として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両等に搭載される運転制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0052】
11 第1運転支援装置
12 第2運転支援装置
13 第3運転支援装置
21 運動マネージャ
22 加速度制御装置
31 パーキングブレーキ制御装置
32 ステアリング制御装置
33 シフト制御装置
34 ステアリング制御装置
35 パワートレーン制御装置
100 運転制御システム