(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】水性プライマー組成物、包装材用積層体及び包装材用積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240717BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240717BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240717BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240717BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240717BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240717BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240717BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240717BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240717BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D5/02
C09D7/61
C09D133/00
C09D167/00
C09D175/04
B65D65/40 D
B05D7/00 F
B32B27/10
(21)【出願番号】P 2023221876
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優大
(72)【発明者】
【氏名】小倉 知也
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-96690(JP,A)
【文献】特開2023-18605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材、プライマー層及び
樹脂微粒子を含む活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の、前記プライマー層を形成するための水性プライマー組成物であって、
バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含む、水性プライマー組成物。
【請求項2】
表面張力が、24~38mN/mである、請求項1に記載の水性プライマー組成物。
【請求項3】
プライマー層の表面自由エネルギーが、24~40dyne/cmである、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項4】
水系溶剤が、親水性有機溶剤を含む、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項5】
水性プライマー組成物の粘度が、50~2500mPa・sである、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項6】
バインダー樹脂が、水性アクリル樹脂(A)、水性ウレタン樹脂(B)、及び水性ポリエステル樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項7】
体質顔料が、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項8】
体質顔料の平均粒子径が、1~10μmである、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項9】
親水性有機溶剤の沸点が、70~90℃である、請求項4に記載の水性プライマー組成物。
【請求項10】
フレキソ又はグラビア印刷用である、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項11】
紙基材
、水性プライマー組成物から形成されたプライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体であって、
前記水性プライマー組成物が、バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含み、
前記活性エネルギー線硬化層が、樹脂微粒子を含む、包装材用積層体。
【請求項12】
更に、オフセット印刷層を有する、請求項11に記載の包装材用積層体。
【請求項13】
活性エネルギー線硬化層の60度鏡面光沢度が40以下である、請求項11に記載の包装材用積層体。
【請求項14】
紙基材、プライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の製造方法であって、
紙基材上に、バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含む水性プライマー組成物をフレキソ又はグラビア印刷して前記プライマー層を形成する工程、及び、前記プライマー層上に
樹脂微粒子を含む活性エネルギー線硬化性組成物を印刷した後、活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化層を形成する工程を含む、包装材用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性プライマー組成物、包装材用積層体及び包装材用積層体の製造方法に関する。
【0002】
より具体的には、紙基材、プライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の、前記プライマー層を形成するための水性プライマー組成物、前記包装材用積層体及び前記包装材用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、紙基材(紙器ともいう)を用いたパッケージの分野では、印刷物への耐久性や美粧性を付与する目的で、各種基材に対しカラーインキを印刷後、トップコーティングニスを塗工する研究が盛んに行われている。紙器パッケージに関しては、印刷後、店頭へ陳列された際、美粧上、光沢性を求められる場合と艶消し(マット性)とを要求される場合がある。特に、近年、艶消し効果を施す印刷物の需要は増加している。また、紙器パッケージ分野においては、特に、高級な化粧品などの包装にも用いられるため、印刷物の外観(美粧性)品質は高級感の演出による顧客の購買意欲に影響を及ぼすことから、その品質を担保することが極めて重要である。なお、トップコーティングニス以外にも、オーバープリント(OP)ニスなどの表記もあるが、トップコーティングニスと同義で用いられる。
【0004】
また、トップコーティングニスとしての機能としては、印刷物の光沢性や艶消し(マット)性などの外観だけでなく、印刷絵柄部分を保護するための耐久性も同時に求められることから、皮膜強度に優れた活性エネルギー線硬化型のコーティング塗液が広く活用されている。
【0005】
そして、艶消し効果を有するトップコーティングニスとしては、塗液中に種々の微粒子が添加されている場合が多く、乾燥あるいは硬化した塗膜表面に存在している微粒子により、凹凸が形成、その界面で光が拡散反射することでマット感を付与している。一方、基材が紙基材の場合、トップコーティングニス中の溶剤や低分子成分、樹脂成分などが基材に染み込んだり、印刷時の転移やレベリング不良により、微粒子が多く存在する箇所と、あまり存在しない箇所がパターンのように形成されたりすることで光沢値のムラが発生、印刷外観ムラ(モットリング)が問題となる。
【0006】
上記問題にして、従来からトップコーティングニスの紙基材への染み込み抑制を目的とし、トップコーティング層の下にプライマー層が設けられることが多いが、特に、作業環境負荷の軽減及び、近年の各国の化学物質管理規制強化や地球環境保護の観点から、有機溶剤を使用した油性タイプではなく、水性タイプのプライマー(水性プライマー)への要求が依然として高い。なお、プライマー以外にも、アンカーニス、目止めニスなどの表記もあるがいずれもプライマーと同義で用いられる。
【0007】
特許文献1には、紙基材上に印刷した水性印刷インキ層上に、ガラス転移温度が5℃のスチレン-ブタジエンゴムエマルションを含有する水性アンカーニスを塗工したのち、活性エネルギー線硬化型のオーバープリントニスを塗工する積層体が提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、繊維質基材上にベタ着色層、アクリルポリオールとイソシアネートからなる2液硬化型ウレタン樹脂によるプライマー層を順次積層したのち、表面保護層を積層する方法が提案されている。しかしながら、特許文献1及び2は、インキ層上での水性プライマーの転移性やレベリング性、及び水性プライマー層への活性エネルギー線硬化組成物の転移やレベリング性、艶消し性(マット感)に課題が残るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-45962号公報
【文献】特開2005-89932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、紙基材及びインキ層への転移性、レベリング性に優れる水性プライマー組成物であって、活性エネルギー線硬化組成物を当該水性プライマー層上に塗工した際の耐モットリング性(光沢ムラ)に優れる水性プライマー組成物、並びに、美粧外観(艶消し性)に優れる包装材用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、紙基材、プライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の、前記プライマー層を形成するための水性プライマー組成物であって、
バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含む、水性プライマー組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、表面張力が、24~38mN/mである、前記水性プライマー組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、プライマー層の表面自由エネルギーが、24~40dyne/cmである、前記水性プライマー組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、水系溶剤が、親水性有機溶剤を含む、前記水性プライマー組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、水性プライマー組成物の粘度が、50~2500mPa・sである、前記水性プライマー組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、バインダー樹脂が、水性アクリル樹脂(A)、水性ウレタン樹脂(B)、及び水性ポリエステル樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、前記水性プライマー組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、体質顔料が、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、前記水性プライマー組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、体質顔料の平均粒子径が、1~10μmである、前記水性プライマー組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、親水性有機溶剤の沸点が、70~90℃である、前記水性プライマー組成物に関する。
【0020】
また、本発明は、フレキソ又はグラビア印刷用である、前記水性プライマー組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、紙基材、前記水性プライマー組成物から形成されたプライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体であって、
前記活性エネルギー線硬化層が、樹脂微粒子を含む、包装材用積層体に関する。
【0022】
また、本発明は、更に、オフセット印刷層を有する、前記包装材用積層体に関する。
【0023】
また、本発明は、活性エネルギー線硬化層の60度鏡面光沢度が40以下である、前記包装材用積層体に関する。
【0024】
また、本発明は、紙基材、プライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の製造方法であって、
紙基材上に、バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含む水性プライマー組成物をフレキソ又はグラビア印刷して前記プライマー層を形成する工程、及び、前記プライマー層上に活性エネルギー線硬化性組成物を印刷した後、活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化層を形成する工程を含む、包装材用積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、紙基材及びインキ層への転移性、レベリング性に優れる水性プライマー組成物であって、活性エネルギー線硬化組成物を当該水性プライマー層上に塗工した際の耐モットリング性(光沢ムラ)に優れる水性プライマー組成物、並びに、美粧外観(艶消し性)と耐擦過性に優れる包装材用積層体を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0027】
本明細書において「水性プライマー組成物」は、単に「プライマー組成物」と表記する場合があるが同義である。「包装材用積層体」は、単に「積層体」と表記する場合があるが同義である。
また、明細書においてプライマー組成物のような液体の表面張力の単位として「mN/m」を用い、プライマー層のような固体の表面張力、すなわち表面自由エネルギーの単位として「dyne/cm」を用いる。単位は異なるが値は同等であり、例えばプライマー層の表面エネルギーと活性エネルギー線硬化組成物の表面張力を比較する際は、数値をそのまま比較することができる。
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0029】
<水性プライマー組成物>
本発明は、紙基材、プライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の、前記プライマー層を形成するための水性プライマー組成物であって、前記水性プライマー組成物が、バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含む、水性プライマー組成物に関する。
当該水性プライマー組成物は、紙基材及び/又は紙基材上に任意に形成されたインキ層上に用いることが好ましく、活性エネルギー線硬化層のプライマー層としての使用形態であることが好ましい。
水性プライマー組成物が体質顔料を含むことで、活性エネルギー線硬化層を形成する活性エネルギー線硬化性組成物の紙基材への染み込みが抑制され、活性エネルギー線硬化層の着肉・レベリングが安定するため、光沢ムラ(モットリング)が発生しにくく、均一で高級感のある外観(マット感)が得られる。水性プライマー組成物の表面張力が、24~38mN/mであると、上記効果をより得やすいため好ましい。ただし、上記作用機能は考察によるものであり、本願発明を特段限定するものではない。
【0030】
(水性プライマー組成物の表面張力)
本発明において、水性プライマー組成物の表面張力は24~38mN/mが好ましく、26~36mN/mがより好ましく、27~33mN/mが更に好ましい。24mN/m以上であると、プライマー層の表面自由エネルギーの低下を防ぎ、当該プライマー層上での活性エネルギー線硬化組成物の転移、着肉、レベリング性が向上する。38mN/m以下であると、紙基材及びインキ層に対する濡れ性を向上させ、ハジキを抑制することができる。
【0031】
水性プライマー組成物の表面張力を上記範囲にする手段としては、体質顔料の種類及び添加量を調整する方法が挙げられ、例えば、体質顔料は、後述する好ましい形態で使用するのがよい。また、親水性有機溶剤を添加すると、表面張力は低下する傾向にあり、親水性有機溶剤は、後述する好ましい形態で使用するのがよい。また、表面調整剤等の添加剤等でも調整することが可能であり、表面調整剤を添加すると表面張力は低下する傾向にある。これらの手段から適宜選択して所定の範囲に調整することができる。
【0032】
水性プライマー組成物の表面張力を添加剤のみで調整した場合、当該組成物を印刷乾燥して形成されたプライマー層に添加剤が残留し、プライマー層の表面自由エネルギーが低くなるため、プライマー層上に活性エネルギー線硬化組成物を印刷する際、レベリング不良となりやすい。そこで、水性プライマー組成物中に親水性有機溶剤を併用することで、水性プライマー組成物の表面張力を下げる効果がある一方、乾燥後には揮発してプライマー層中に残留することがなく、プライマー層の表面自由エネルギーを低下させることがない。従って、紙基材及びインキ層上への水性プライマー組成物のレベリングと、プライマー層上への活性エネルギー線硬化組成物のレベリングを両立しやすいため、より好ましい。上記作用機能は考察によるものであり、本願発明を特段限定するものではない。
【0033】
(表面張力の測定方法)
表面張力は、例えば高精度表面張力計DY-700(協和界面化学株式会社製)を用いて測定できる。本発明においては、測定時の液温は25℃とした。
【0034】
<プライマー層>
本発明のプライマー層は、水性プライマー組成物により形成される。プライマー層の表面エネルギーは24~40dyne/cmであることが好ましく、26~38dyne/cmがより好ましく、30~38dyne/cmが更に好ましい。上記範囲であると、プライマー層の表面エネルギーが、活性エネルギー線硬化組成物の表面張力よりも低くなり、活性エネルギー線硬化組成物のプライマー層上の濡れ拡がりが良化する。24dyne/cm以上であると、活性エネルギー線硬化組成物の水性プライマー層への転移、着肉、レベリング性が良好となる。40dyne/cm以下であると、連動してプライマー組成物の表面張力が小さくなるため、基材およびインキ層上でのハジキが抑制されることで良好なマット感が得られる。
【0035】
プライマー層の表面自由エネルギーを上記範囲にする手段としては、体質顔料の種類及び添加量を調整する方法が挙げられ、後述する好ましい形態で使用するのがよい。また、体質顔料の添加量が多くなると、表面自由エネルギーは上昇する傾向にあり、体質顔料の粒子径が小さくなると、表面自由エネルギーは上昇する傾向にある。また、バインダー樹脂の種類を選択する方法、表面調整剤等の添加剤等でも調整する方法等が挙げられ、これらの手段から適宜選択して所定の範囲に調整することができる。
【0036】
プライマー層の表面自由エネルギーを上記範囲にするためには、バインダー樹脂として、水性アクリル樹脂(A)、水性ウレタン樹脂(B)、及び水性ポリエステル樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、中でも水性アクリル樹脂(A)が好適であり、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上の樹脂を併用してもよい。
上記のバインダー樹脂を用いることで、プライマー層の表面自由エネルギーと活性エネルギー線硬化組成物の表面張力とのバランスがとりやすくなり、プライマー層への活性エネルギー線硬化組成物の転移、着肉、レベリング性が良好になる。
水性プライマー組成物中のバインダー樹脂の質量比率は10~50質量%であることが好ましく、より好ましくは20~40質量%である。
プライマー層中のバインダー樹脂の質量比率は60~95質量%であることが好ましく、より好ましくは70~85質量%である。
【0037】
(表面自由エネルギーの測定方法)
ここで、上記の表面自由エネルギーとは、「表面の単位面積が持つ自由エネルギー」として定義され、プライマー層表面が層内部(バルク)に比べて過剰に持つエネルギーのことである。固体の表面自由エネルギーが大きいほど、気体や微粒子は吸着されやすく、液体は濡れやすく、他の固体と付着しやすくなる。
表面自由エネルギーは接触角計などを用い、水とヘキサデカンの接触角をKaelble-Uy法にて解析することによって測定することができる。
本発明において、上記プライマー層の表面自由エネルギーは、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM-701を用いて、下記の方法で算出した値である。まず、プライマー層表面に水(純水)を1μL滴下し、30秒後の接触角を測定し、その後同様に、水の代わりにn-ヘキサデカンを用いて接触角を測定した。得られた水及びn-ヘキサデカンの接触角を用いて、Kaelble-Uyの方法によって表面自由エネルギーを算出した。
【0038】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができるが、プライマー層の基材密着性や皮膜強度等の観点から、水性アクリル樹脂(A)、水性ウレタン樹脂(B)、及び水性ポリエステル樹脂(C)からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、中でも水性アクリル樹脂(A)が好適である。また、本発明の効果を損なわない範囲で2種以上の樹脂を併用してもよい。
【0039】
水性プライマー組成物中のバインダー樹脂の質量比率は10~50質量%である。より好ましくは20~40質量%である。上記範囲にあることで、艶消し性及び耐擦過性が良好となる。
【0040】
(水性アクリル樹脂(A))
水性アクリル樹脂(A)とは、水性アクリルエマルション(A1)及び水溶性アクリル樹脂(A2)の総称である(ただし、ウレタン結合を有するものを除く)。
水性アクリル樹脂(A)は、(メタ)アクリレート単位を含む樹脂であり、アルキル(メタ)アクリルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドなどのアクリルモノマーの重合体または共重合体や、上記アクリルモノマーとスチレン、無水マレイン酸などのモノマーとの共重合体が挙げられる。なお、アクリルモノマーは、水酸基、カルボキシル基、グリシジル基などの官能基を有していてもよい。アクリルモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどが好適に挙げられ、例えば、アクリル酸エステルとしてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシロピルアクリレート、グリシジルアクリレートなどが例示され、メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレートなどが好適に例示される。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有モノマー、又はそれらの無水物やハーフエステルも用いることができる。
上記中でも、アクリルモノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸を含むことが好ましい。
また、スチレン-アクリル樹脂を構成するスチレンモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレンなどが例示される。中でも、スチレンモノマーは、α-メチルスチレンを含むことが好ましい。
【0041】
バインダー樹脂中の水性アクリル樹脂(A)の質量比率は60~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることが特に好ましいい。上記範囲にあることで、密着性、耐擦傷性が良好となる。
【0042】
(水性アクリルエマルション(A1))
水性アクリルエマルション(A1)は、スチレン-アクリル樹脂、および、アクリル樹脂(ただし、スチレン-アクリル樹脂である場合を除く)から選ばれる少なくとも一種を含む。中でも、スチレン-アクリル樹脂を含むことが好ましい。アクリル樹脂を構成するアクリルモノマーは、上記と同様のものを好適に使用できる。
なおエマルションとは、樹脂そのものは水に不溶もしくは難溶であるが、当該樹脂が小さい粒子状に分散され、安定化された形態をいう。また、水溶性アクリル樹脂を高分子乳化剤として用いて、上記モノマーを共重合させて得られる共重合体エマルションも好適に使用できる。
【0043】
水性アクリルエマルション(A1)の平均粒子径は、10~500nmであることが好ましく、20~300nmであることがなお好ましく、30~250nmであることが更に好ましい。平均粒子径は、例えば、動的光散乱法によるD50の値として測定できる。
また、水性アクリルエマルション(A1)の重量平均分子量は2000~2000000であることが好ましく、5000~1500000であることがなお好ましく、10000~100000であることが更に好ましい。上記範囲にあることで、塗膜の凝集力が向上し、耐擦過性が向上するためである。
上記スチレン-アクリル樹脂としては、例えば、BASF社製、ジョンクリルPDX-7734(Tg40℃、固形分41.4質量%)、ジョンクリルPDX-7538(Tg75℃、固形分45.5質量%)等を使用することができる。また、アクリル樹脂としては、BASF社製、ジョンクリル60J、70J、HPD-196等を使用することができる。
【0044】
(水溶性アクリル樹脂(A2))
水溶性アクリル樹脂(A2)は、スチレン-アクリル樹脂、および、アクリル樹脂(ただし、スチレン-アクリル樹脂である場合を除く)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、カルボキシル基などの親水性基を有する。また、当該親水性基を、塩基性化合物により可溶化する水溶性樹脂であることが好ましい。当該塩基性化合物として例えば、アミン化合物、アルカリ金属等を好適に挙げられる。
具体的には、上記アミン化合物としては、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等を挙げることができる。上記アルカリ金属としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0045】
水溶性アクリル樹脂(A2)の酸価は150~300mgKOH/gであることが好ましく、180~260mgKOH/gであることがなお好ましい。上記範囲にあることで、体質顔料の分散安定性が向上、転移時のレベリングが良化し、耐モットリング性が良好となる。
水溶性アクリル樹脂(A2)の重量平均分子量は1500~60000であることが好ましく、4000~30000であることがなお好ましい。上記範囲にあることで、体質顔料の分散安定性が向上、転移時のレベリングが良化し、耐モットリング性が良好となる。
水溶性アクリル樹脂(A2)としては、例えば、岐阜セラツク社製、アクリスTYS-85、TYS-3000、LH52、BASF社製、BASF社製、ジョンクリル60J、70J、HPD-196、HPD-96J等を使用することができる。
【0046】
水性アクリル樹脂(A)中の水性アクリルエマルション(A1)と水溶性アクリル樹脂(A2)との質量比率(A1/A2)は95/5~50/50であることが好ましく90/10~60/40であることが好ましい。上記範囲にあることで、密着性、耐擦過性が良好となる。
【0047】
(水性ウレタン樹脂(B))
水性ウレタン樹脂(B)とは、ウレタン結合を含む水性樹脂であれば制限なく、水性ウレタンエマルション(B1)及び水溶性ウレタン樹脂(B2)の総称である。また、水性ウレタン樹脂(B)は、更にウレア結合を含む実施形態もまた好ましい。
【0048】
本発明において、水性ウレタン樹脂(B)はアクリル樹脂部とウレタン樹脂部を共に含むウレタンアクリル樹脂を含む。また、ウレア結合を有する実施形態も好ましい。
【0049】
水性ウレタン樹脂(B)としては、ポリオール、ポリヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成されたウレタン樹脂である形態や、水性ウレタン樹脂の一実施形態であるウレタンウレア樹脂は、ポリオール、ポリヒドロキシ酸およびポリイソシアネートにより合成された末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとポリアミンにより鎖延長されたウレタン樹脂である形態が好ましい。
水溶性ウレタン樹脂(B2)の製造においては、ポリオールとポリイソシアネートを反応させる際、樹脂内にカルボキシル基、スルホン基等の酸性基を導入し、塩基性化合物により中和することにより、水溶化することが好ましい。耐水性の観点から当該酸性基としてはカルボキシル基が好ましい。
【0050】
(ポリオール)
上記ポリオールとしては、以下に限定されないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ダイマージオール、水素添加ダイマージオールなどが好適に挙げられる。これらのポリオールは、単独で用いても、2種以上併用してもよい。水性ウレタン樹脂はポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールより選ばれる少なくとも一種のポリオールからなる構成単位を含有することが好ましい。当該ポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールがより好ましい。ポリオールの数平均分子量は500~5000であることが好ましい。
【0051】
(ポリエーテルポリオール)
上記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびこれらの共重合物を好適に挙げることができる。水性ウレタン樹脂はポリエーテルポリオールからなる構成単位を含むことが好ましい。一実施形態において水性ウレタン樹脂(B)はポリエチレングリコール由来の構成単位を含有することが好ましく、水性ウレタン樹脂総質量中にポリエチレングリコール由来の構成単位を0.1~25質量%含有することが好ましく、2~15質量%含有することがなお好ましく、2~10質量%含有することが更に好ましい。
【0052】
(ポリエステルポリオール)
上記ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸と分岐ジオールを含むジオールの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構成単位を有する形態が好ましい。当該二塩基酸としては、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸などが好適に使用でき、分岐ジオールとしてはアルキレングリコールの炭素上に有する水素の少なくとも一つが置換基を有する形態のものをいう。具体的には、プロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールより選ばれる少なくとも一種を、ジオール総質量中に50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがより好ましい。なおポリエステルポリオールの実施形態はこれらに限定されない。
【0053】
(ポリカーボネートポリオール)
上記ポリカーボネートポリオールとしては、製造方法やポリカーボネートポリオールを構成するジオール種により限定されるものではないが、アルキレングリコールからなるジオールとカーボネート化合物とのエステル交換反応による重縮合物が好適に挙げられる。なお、ポリカーボネートポリオールは脂環族および/または脂肪族のポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0054】
上記ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブチンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどが好適であり、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。3-メチル-1,5-ペンタンジオールその他の分岐構造を有するジオール構造を有するポリカーボネートポリオールであることが好ましい。
当該カーボネート化合物は、特に限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはアルキレンカーボネートが挙げられる。カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0055】
(ポリイソシアネート)
上記ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが好適に挙げられる。なおこれらは3量体となってイソシアヌレート環構造となっていても良い。
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加された4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。中でも好ましくはトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体から選ばれる少なくとも一種である。これらのポリイソシアネートは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0056】
(ポリヒドロキシ酸)
上記ポリヒドロキシ酸は、以下に限定されないが、カルボキシルを含有するポリオールを利用することができる。例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸などが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。ポリヒドロキシ酸は水性ウレタン樹脂の製造工程の中で用いられ、得られたウレタン樹脂中にそのカルボキシル基が導入され、酸価を有する。未反応のカルボキシル基は中和されて水性化される。
【0057】
(ポリアミン)
上記ポリアミンとして利用可能な化合物としては、各種公知のアミン類であり、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’- ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等などが好適に挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
(反応停止剤)
上記ポリアミンと併用して反応停止剤を使用することもできる。かかる反応停止剤としては、例えば、ジ-n-ジブチルアミンなどのジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、N-ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン類、さらにグリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸類が挙げられる。
【0059】
(中和剤)
水性ウレタン樹脂(B)の水性化のために、樹脂中のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することが好ましい。
【0060】
(塩基性化合物)
塩基性化合物としては、アンモニア;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-アミノ-2-エチル-1-プロパノール等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いられるが、乾燥後の皮膜の耐水性を向上させるためには、水溶性であり、かつ熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、特にアンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。
また、上記水性ウレタン樹脂(B)の酸価は5~100mgKOH/gであることが好ましく、10~60mgKOH/gであることがなお好ましい。これら酸価は上記塩基性化合物で中和されて水性化される。
【0061】
水性ウレタン樹脂(B)がウレタンアクリル樹脂の場合、アクリル樹脂部とウレタン樹脂部は交互共重合体であってもよいし、主鎖がウレタン樹脂部、側鎖がアクリル樹脂部もしくは主鎖がアクリル樹脂部、側鎖がウレタン樹脂部である、いわゆるグラフト重合体であってもよい。
水性ウレタンエマルジョン樹脂(B1)においては、コア部にアクリル樹脂部、シェル部にウレタン樹脂部のコア/シェル型であっても、海部にアクリル樹脂部、島部にウレタン樹脂部の海島構造を持つものであってもよい。
【0062】
水性ウレタンエマルション(B1)の平均粒子径は20nm~400nmの範囲になることが好ましく、30nm~200nmの範囲が更に好ましい。
【0063】
水性ウレタンエマルション(B1)の具体例としては、タケラックW-5030、W-5661、W-6010、W-6020、W-6061、W-6355、W-605、WPB-341(30)、WS-4022(三井化学株式会社社製)、WEM-200U、WEM-3000、WEM-505C(大成ファインケミカル株式会社製)、アクアブリッド46777、3756、UX-100、UX-110、AST531、AST49(ダイセルミライズ株式会社製)等が挙げられる。
【0064】
水性ウレタン樹脂(B2)は、公知の方法により適宜製造される。例えば、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤を用いるアセトン法、溶剤を全く使用しない無溶剤合成法等が挙げられる。例えば特開2013-234214公報に記載の手法を適宜使用可能である。
【0065】
(水性ポリエステル樹脂(C))
水性ポリエステル樹脂(C)は、多塩基酸及び/又はその無水物と多価アルコールとの重縮合反応(エステル化反応)により合成されたポリエステル樹脂の形態が好ましい。この反応は常圧下、減圧下のいずれで行ってもよく、また、分子量の調整は多塩基酸及び/又はその無水物と多価アルコールとの仕込み比率(過剰率:酸基に対する水酸基の当量比)によって行うことができる。水溶性化の方法としては、上記多塩基酸及び/又はその無水物と多価アルコールの反応の際、アクリル酸、メタクリル酸との共重合によるカルボキシル基の導入、スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2、7-ジカルボン酸-5〔4-スルホフェノキシ〕イソフタル酸等の金属塩やこれらのエステル形成性誘導体によるスルホン酸基導入などにより水溶性化することが例示できる。金属塩としては、Li、Na、K、Mg、Ca、Cu、Fe等の塩が挙げられる。特に好ましいものは、5-ナトリウムスルホイソフタル酸及びジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタル酸である。
【0066】
(多塩基酸及び/又はその無水物)
水性ポリエステル樹脂(C)の合成に使用できる多塩基酸及び/又はその無水物としては、二塩基酸及び/又はその無水物が好ましく用いられ、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸等の芳香族二塩基酸及びその無水物類、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族二塩基酸及び、その無水物類、(無水)コハク酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ハイミック酸等の脂肪族二塩基酸及びその無水物類が挙げられ、得られる塗膜の表面張力及び表面自由エネルギー、柔軟性及び密着性を勘案してこれらの中から適宜選択して使用することができる。
【0067】
(多価アルコール)
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、オクタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等が挙げられ、得られる塗膜の表面張力及び表面自由エネルギー、柔軟性及び密着性を勘案してこれらの中から適宜選択して使用することができる。
【0068】
上記、水性ポリエステル樹脂(C)は、溶剤に溶解した溶液の形で本発明の水性プライマー組成物の調製に供されることが好ましい。この溶剤としては、ポリエステル樹脂を希釈可能なもので、水及び/又は、親水性有機溶剤であるものが好ましく使用できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ、ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ、ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ、ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル等が挙げられる。
【0069】
水性ポリエステル樹脂(C)の酸価は、80KOHmg/g以下が好ましく、より好ましくは60KOHmg/g以下、さらに好ましくは40KOHmg/g以下である。上記範囲であることで、ポリエステルの加水分解が抑制され、分子量を高く維持できることで塗膜の凝集力が向上するため、耐擦過性が良好となる。酸価は、使用するポリエステルポリオールとテトラカルボン酸二無水物の種類に応じて種々に変えることができるので、当業者ならば容易にポリエステルポリオールとテトラカルボン酸二無水物の種類を選定し、上記好適な範囲にすることができる。
【0070】
上記水性ポリエステル樹脂(C)の重量平均分子量の範囲は、約3000~40000が好ましく、より好ましくは10000~30000である。重量平均分子量が3000以上で塗膜の耐擦過性が良好となり、重量平均分子量が40000以下で流動性が良好となり印刷適性が向上する。
【0071】
水性ポリエステル樹脂(C)の具体例としては、プラスコートZ-446、Z-561、Z-565、Z-880、Z-3310、RZ-105、RZ-570、Z-730、Z-760(互応化学株式会社製)、アロンメルトPES-2155A30、2255A30、2500A30、2655A30、2405A30、2353A25(東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
上記バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-20~100℃であることが好ましい。耐擦過性、耐折り曲げ性が向上するためである。より好ましくは-10~90℃、更に好ましくは0~80℃である。ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、JIS K0129に基づいて測定した値をいう。示差走査熱量測定(DSC)による測定値を採用でき、測定機は株式会社リガク製 DSC8231を使用することができる。
【0073】
<体質顔料>
本発明の水性プライマー組成物は、体質顔料を含む。体質顔料を含むことで、フレキソ及びグラビア印刷に適する粘度範囲へのレオロジー調整が可能となり、且つ、当該水性プライマー組成物の表面張力、当該水性プライマー組成物から形成されたプライマー層の表面自由エネルギーの調整が可能となる。
本発明に用いる体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、雲母、マイカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、中でも粘度等のレオロジーコントロールの観点から、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム及びタルクからなる群より少なくとも一種が好ましく、シリカが特に好ましい。シリカは表面にシラノール基が存在するため、表面自由エネルギーが高く、プライマー層自体の表面自由エネルギーが高くなるためである。体質顔料は一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0074】
体質顔料としてシリカを用いる場合、シリカ表面のシラノール基を有機ケイ素化合物で修飾、疎水化させたシリカ(疎水性シリカ)を用いてもよい。疎水性シリカの疎水化度を示すDBA値は5~200が好ましく、20~175がより好ましい。この範囲にあることで、分散樹脂との相互作用が促進され、レオロジー調整が容易であり、また、表面張力を下げる調整が容易である。なお、DBA値は数値が低い程、シラノール基が有機ケイ素化合物で修飾されたことを示しており、疎水化度が高いことを意味する。
【0075】
上記体質顔料の水性プライマー組成物中の含有量は1~15質量%の範囲が好ましく、より好ましくは2~12質量%、更に好ましくは3~10質量%である。1質量%以上で、光沢値の低下(マット感の付与)が可能になるとともに、プライマー層の表面自由エネルギーが高くなる。また、体質顔料が表面に露出することで、その凹凸により活性エネルギー線硬化組成物の着肉及びレベリングが良好となる。15質量%以下で流動性及び表面の平滑性が向上し、耐擦過性が良好となる。また、上記範囲であると、紙基材及び/又はインキ層上での水性プライマー組成物の転移、着肉、レベリングと、プライマー層上での活性エネルギー硬化組成物の転移、着肉、レベリングとが両立できるため、積層体としての基材密着性及び層間密着性が向上し、耐擦過性が良好になる。
【0076】
上記体質顔料の平均粒子径は、1~10μmの範囲が好ましく、より好ましくは2~8μm、更により好ましくは2~5μmである。平均粒子径が1μm以上で水性プライマー上での活性エネルギー線硬化組成物のレベリング性が向上し、10μm以下で耐擦過性が良好且つ、良好なマット感が得られる。また、流動特性の調整や表面凹凸の大きさをコントロールする目的で異なる平均粒子径の体質顔料を併用しても良い。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折法による体積平均粒子径をいい、例えばマイクロトラック・ベル社製T330EXIIなどを使用して測定をすることができる。
【0077】
体質顔料としてシリカを用いる場合、平均粒子径は、1~10μmの範囲が好ましく、より好ましくは2~8μm、更により好ましくは2~5μmである。
【0078】
上記体質顔料のBET法による比表面積m2/gは、50~500m2/gとすることが好ましく、100~400m2/gとすることがより好ましく、100~350m2/gとすることが更に好ましい。50m2/g以上でマット感が良好となり、500m2/g以下でプライマー組成物の流動性が維持できるためレベリングが良好になる。
【0079】
体質顔料としてシリカを用いる場合、BET法による比表面積m2/gは、50~500m2/gとすることが好ましく、100~400m2/gとすることがより好ましく、100~350m2/gとすることが更に好ましい。
【0080】
シリカの具体例としては、ミズカシルP-705、P-707、P-709、P-78A、P-78D、P-78F、P-73、P-50(水澤化学工業株式会社社製)、ニップシールE-74P、E75、E-743、E-150J、E-1030、E―200、E-170、E-220、E-200A、E-1009、E-220A、E-1011、N-300A、K-500、HD-2、L-250、G-300(東ソー・シリカ株式会社製)、サイリシア250、250N、256、256N、310P、320、350、370、380、420、430、440、450、436、446、456、530、550、C-1504、C-1510、サイロホービック100、200、702、704、4004、507、505、603(富士シリシア化学株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
<水系溶剤>
本発明は水系溶剤を含む。水系溶剤としては、水及び/又は親水性有機溶剤が好ましい。水系溶剤は、水性プライマー組成物の総質量に対して、30~85質量%含まれることが好ましく、40~80質量%含まれることが好ましく、50~75質量%含まれることが特に好ましい。
【0082】
<親水性有機溶剤>
本発明は、親水性有機溶剤を含むことが好ましい。親水性有機溶剤は、水に可溶であれば特に制限されず、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。親水性有機溶剤とは、エーテル基や、水酸基などの親水性基を有するものをいう。
親水性有機溶剤の沸点は、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃である。沸点が60℃以上の親水性有機溶剤を含むことで、表面張力が低下するため、紙基材及びインキ層での水性プライマー組成物のレベリングが向上し、沸点が100℃以下では、乾燥工程により塗膜中の残留親水性有機溶剤がほとんど存在しないため、プライマー層自体の表面自由エネルギーを下げることがないことから、活性エネルギー線硬化組成物の着肉及びレベリングが向上することで、良好なマット感が得られる。
【0083】
親水性有機溶剤としては、アルコール系有機溶剤、またはエーテル系有機溶剤を用いることが好ましい。アルコール系有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、ジアセトンアルコール、アリルアルコール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられ、中でもエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、2―ブタノールを用いることが好ましい。エーテル系有機溶剤としては、n-プロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられ、中でもn-プロピルエーテルを用いることが好ましい。
【0084】
親水性有機溶剤は、水性プライマー組成物の総質量に対して、1~15質量%含まれることが好ましく、2~10質量%含まれることがなお好ましい。表面張力が低下するため、紙基材及び/又はインキ層での水性プライマー組成物のレベリングが向上するためである。また、親水性有機溶剤は十分な乾燥後では塗膜中に残留溶剤がほとんど存在しないため、プライマー層の表面自由エネルギー自体を下げることがなく、活性エネルギー線硬化組成物の着肉及びレベリングが向上し、良好なマット感が得られる。
【0085】
(硬化剤)
本発明においては、必要に応じて、ポリイソシアネート型硬化剤を本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0086】
(添加剤)
本発明においては、必要に応じて、表面調整剤、レベリング剤、濡れ浸透剤、増粘剤、皮張り防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、防腐剤、防カビ剤、粘度調整剤、pH調整剤等の添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0087】
(表面調整剤)
また、本発明の水性プライマー組成物の表面張力を好ましい範囲とするためには、本発明の目的を阻害しない範囲で、表面調整剤を配合することができる。表面調整剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類および脂肪酸塩類等のアニオン性表面調整剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、アセチレングリコール類、エチレンオキサイド付加型のアセチレングリコール類等のノニオン性表面調整剤、アルキルアミン塩類および第4級アンモニウム塩類等のカチオン性表面調整剤、シリコン系表面調整剤ならびにフッ素系表面調整剤などが挙げられる。中でもアセチレングリコール類、エチレンオキサイド付加型のアセチレングリコール類のノニオン性表面調整剤が好ましい。なお、表面調整剤のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、水性プライマー組成物が所望の表面張力を有するのであれば特に限定されないが、2~15が好ましく、3~10がさらに好ましく、4~9がより好ましい。表面調整剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
また、本発明の水性プライマーに含まれる表面調整剤の含有量は、その使用目的により適宜選択されるが、一般的には、水性プライマー組成物全質量に対して、0.01~10質量%であることが好ましく、0.5~8質量%であることが更に好ましい。上記の範囲内で必要に応じて表面調整剤の添加量を調節することにより、水性プライマー組成物の表面張力を調整することができる。
【0089】
(レベリング剤)
上記水性プライマー層には、表面特性(表面自由エネルギーなど)の調整や、塗工性の改善を目的にレベリング剤の配合が可能であり、例えばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、例えば表面特性の調整や塗工性に応じて適宜決定される。
【0090】
(プライマー組成物の粘度)
本発明において、水性プライマー組成物の粘度は50~2500mPa・sが好ましく、100~1500mPa・sがより好ましい。50Pa・s以上で紙基材への水性プライマー組成物の転移性が良好になり、2500Pa・s以下で着肉後のレベリング性が良好となる。また、ここでいう粘度とは、JISK5600-2に記載された方法での測定値で、例えば、コーン径35mm、コーン角度1°であるコーンを用いた、コーンプレート型粘度計を用いて、25℃環境下、せん断速度100毎秒で測定できる。
【0091】
本発明において、水性プライマーの粘度を好ましい範囲とするためには、体質顔料の水性プライマー中の含有量は1~15質量%の範囲とすることが好ましく、2~10質量%とすることがより好ましく、3~8質量%とすることが更に好ましい。親水性有機溶剤の水性プライマー中の含有量は、1~15質量%含まれることが好ましく、2~10質量%含まれることがなお好ましい。水性プライマー中のバインダー樹脂の比率は10~50質量%であり、より好ましくは20~40質量%である。
【0092】
(増粘剤)
上記水性プライマー組成物の粘度を好ましい範囲とするために、本発明の効果を奏する範囲内で、増粘剤を含有することができる。プライマー組成物が増粘剤を含有することで、塗布方法に応じた粘度に容易に調整することができる。このような増粘剤として、ウレタン系増粘剤及びポリエチレンオキシド系増粘剤が挙げられる。ウレタン系増粘剤の具体例として、アデカ社製アデカノールUH-756VF、UH-752、UH-472、楠本化成社製ディスパロンAQ-580、AQ-600、AQ-607、BYK社製BYK-420などが挙げられる。ポリエチレンオキシド系増粘剤の具体例として、住友精化社製PEO-1、PEO-2、PEO-3、ユニオンカーバイド社製ポリオックスN-80、N-750などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
増粘剤の含有量は、水性プライマー組成物全質量中に、0.1~10.0質量%であるのが好ましく、0.3~8.0質量%であるのがより好ましく、0.5~5.0質量%であるのが特に好ましい。増粘剤の含有量が0.1質量%以上であると、プライマー組成物の粘度が低くなりすぎず、系中の体質顔料が沈降しにくくなり、保存安定性が向上する。また、増粘剤の含有量が10.0質量%以下であると、プライマー組成物の粘度が高くなりすぎず、塗布むらやレベリング不良による厚みむらが生じにくくなる。なお、水溶性増粘剤を使用する場合、増粘剤の含有量は増粘剤中の固形分換算含有量をいう。
【0094】
<水性プライマーの製造>
本発明の水性プライマーの製造方法としては、バインダー樹脂、体質顔料、水系溶剤、更に必要に応じて、料、硬化剤及び添加剤等を必要量混合し、攪拌機等で良く撹拌する方法、又は、サンドミル等を用いて分散する方法が挙げられる。
【0095】
<活性エネルギー線硬化層>
本発明の活性エネルギー線硬化層は、前記プライマー層上に活性エネルギー線硬化組成物を印刷したのち、活性エネルギー線を照射することで形成される。活性エネルギー線硬化層の60度鏡面光沢度は、40以下が好ましく艶消し性に優れる。より好ましくは18以下、更に好ましくは11以下である。光沢値の測定は、BYK社製マイクロトリグロスを使用し、入射角60°にて測定する。
【0096】
<活性エネルギー線硬化性組成物>
本発明の活性エネルギー線組成物としては、活性エネルギー線により硬化する化合物を含んでいればよく特に制限はないが、耐摩擦性、艶消し性の観点から、樹脂微粒子を含むことが好ましい。また、活性エネルギー線硬化性組成物の好ましい組成としては、多官能ウレタンアクリレート、一官能エチレン性不飽和モノマー、二官能エチレン性不飽和モノマー、樹脂微粒子、及び光重合開始剤を含むものが例示できる。
【0097】
<活性エネルギー線硬化性組成物の製造>
活性エネルギー線硬化組成物の製造方法としては、多官能ウレタンアクリレート、一官能エチレン性不飽和モノマー、二官能エチレン性不飽和モノマー、樹脂微粒子、及び光重合開始剤を羽根つき撹拌機(ディスパー)などで30分~3時間程度攪拌することにより製造することができる。なお、混合しにくく、粘度等が不均一になりやすい場合はローラーミル、ボールミル、ぺブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いても良い。
【0098】
<樹脂微粒子>
本発明において、樹脂微粒子は耐摩擦性、艶消し性の機能を担う。当該樹脂微粒子としては、平均粒子径が、1~10μmであることが好ましく、1.5~8μmであることがなお好ましく、2~6μmであることが更に好ましく、2~3μmであることが特に好ましい。ここでいう平均粒子径とは、レーザー回折法による体積平均粒子径をいい、例えばマイクロトラック・ベル社製T330EXIIなどを使用して測定をすることができる。樹脂微粒子は、活性エネルギー線硬化性組成物総質量中に5~40質量%含むことが好ましく、10~35質量%含むことがなお好ましく、20~30質量%含むことが更に好ましい。
【0099】
樹脂微粒子の好適な具体的例としては、例えば、ウレタン樹脂微粒子、シリコーン樹脂微粒子、メラミン樹脂微粒子、メラミン-ベンゾグアナミン樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂微粒子)、アクリル-スチレン共重合体樹脂微粒子、ポリカーボネート樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ベンゾグアナミン樹脂微粒子等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上併用して使用しても良い。中でも、ウレタン樹脂微粒子がより好ましい。上記樹脂微粒子は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0100】
ウレタン樹脂微粒子の具体例としては、例えば、アートパールC-1000透明、アートパールC-600透明、アートパールC-400透明、アートパールC-800、アートパールMM-120T、アートパールJB-800T、アートパールJB-600T、アートパールP-800T、アートパールP-400T(根上工業株式会社製)などの架橋ウレタンビーズ等が挙げられる。
【0101】
シリコーン樹脂微粒子の具体例としては、KMP-594、KMP-597、KMP-598、KMP-600、KMP-601、KMP-602(信越化学工業株式会社製)、トレフィルE-506S、EP-9215(東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0102】
メラミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターSS、エポスターS、エポスターFS、エポスターS6、エポスターS12(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
メラミン-ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターM30(株式会社日本触媒製)が挙げられる。
【0103】
アクリル樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMA1002、エポスターMA1004、エポスターMA1006、エポスターMA1010(株式会社日本触媒製)、タフチックFH-S005、タフチックFH-S008、タフチックFH-S010、タフチックFH-S015、タフチックFH-S020(東洋紡株式会社製)、ケミスノーM
X-80H3wT、MX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-1000、MX-1500H、MX-2000、MX-3000(綜研化学株式会社製)等が挙げられる。
【0104】
アクリル-スチレン共重合体樹脂微粒子の具体例としてはエポスターMA2003(株式会社日本触媒社製)、FS-102、FS-201、FS-301、MG-451、MG-351、(日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製)等が挙げられる。
【0105】
ポリカーボネート樹脂微粒子の具体例としては、特開2014-125495号公報記載の微粒子、特開2011-26471号公報記載の製造法によって得られる微粒子、特開2001-213970号公報記載の方法によって得られる微粒子等が挙げられる。
【0106】
ポリエチレン樹脂微粒子の具体例としてはミペロンXM-220、XM221U(三井化学株式会社製)、フロービーズLE-1080(住友精化株式会社製)等が挙げられる。
【0107】
ポリスチレン系微粒子の具体例としては、ケミスノーSX-130H、SX-350H、SX-500H(綜研化学株式会社製)等が挙げられる。
【0108】
ベンゾグアナミン樹脂微粒子の具体例としては、エポスターMS、エポスターM05、エポスターL15(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0109】
<紙基材>
本発明において用いられる紙基材は、特に限定されるものではなく、通常の紙や段ボールなどが好ましく、膜厚としては特に指定はないが、0.2mm~1.0mmのものが好適に使用でき、印刷表面がコロナ処理されていても良い。また紙基材は意匠性を付与させる目的で、表面がアルミなどの金属で蒸着処理されていても良く、更にコロナ処理などの表面処理が施されていても良い。例えば、コートボールやマリーコート紙などが好適に挙げられる。
【0110】
<印刷インキ組成物>
上記印刷インキ組成物は例えば、公知のオフセットインキ組成物、紫外線硬化型オフセットインキ、グラビアインキ組成物、フレキソインキ組成物、紫外線硬化型フレキソインキ組成物、その他インキ組成物が挙げられ、いずれの印刷インキ組成物でも良い。中でも、オフセットインキ組成物、及び紫外線硬化型オフセットインキは、色域が広く、且つ印刷濃度を高くすることが容易なため、色再現性、意匠性の高い印刷インキ層を形成することができるため好適である。印刷インキ組成物は、有機溶剤系、無溶剤系であっても水性であっても良い。
【0111】
<印刷インキ層の印刷>
印刷インキ組成物の印刷方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられ、オフセット印刷法が好ましい。インキ層の厚みとしては、0.1~15μmが好ましく、0.5~12μmであることがより好ましい。また上記印刷インキ組成物を組み合わせてインキ層を形成してもよく、印刷後に乾燥あるいは紫外線硬化して印刷層を形成することができる。
【0112】
<水性プライマー層の印刷>
本発明において、基材上に、印刷によって、本発明の水性プライマーを用いたプライマー層を形成することが好ましい。基材に水性プライマーを印刷するための印刷方法としては公知の方法を用いることができ、フレキソ印刷、グラビア印刷が好ましい。
【0113】
<積層体の製造>
本発明の積層体の製造方法は、紙基材に水性プライマー組成物をフレキソまたはグラビア印刷によりプライマー層を形成し、更にプライマー層上に活性エネルギー線硬化組成物を印刷したのち、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化層を形成する方法が例示できる。また、紙基材に印刷インキ組成物からなる印刷層を公知の印刷方法で形成したのち、水性プライマー組成物をフレキソまたはグラビア印刷によりプライマー層を形成し、更にプライマー層上に活性エネルギー線硬化組成物を印刷したのち、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化層を形成する方法が例示できる。
【0114】
なお、活性エネルギー線硬化性組成物の印刷・塗工方法は特に限定されるものではなく、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、フローコート、グラビア印刷、フレキソ印刷、ロール、スピン、ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷等のようなウェットコーティング法が挙げられ、中でも、グラビア印刷、フレキソ印刷が好ましい。
【0115】
活性エネルギー線としては、例えば遠紫外線、紫外線、近紫外線などの紫外線が挙げられる。一方、電子線やプロトン線を使用することも可能であり、この場合は光重合開始剤を用いなくても硬化し得るが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による効果が好ましい。
【0116】
紫外線照射により硬化させる方法としては、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いて、積算光量として30~5000mJ/cm2、好ましくは100~1000mJ/cm2照射すればよい。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【実施例】
【0117】
以下、実施例として本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。本発明において、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は、「質量%」をそれぞれ表す。
【0118】
(表面張力)
表面張力は、Wilhelmy法による表面張力をいい、例えば高精度表面張力計DY-700(協和界面化学株式会社製)により測定した。なお、測定時の液温は25℃とした。
【0119】
(表面自由エネルギー)
表面自由エネルギーは、協和界面科学株式会社製の全自動接触角計DM-701を用いて測定した。プライマー層表面に水(純水)を1μL滴下し、30秒後の接触角を測定し、更に、プライマー層表面にn-ヘキサデカンを1μL滴下し、30秒後測定し、得られた水の接触角、及びn-ヘキサデカンの接触角を用いて、Kaelble-Uyの方法によって算出した値である。
【0120】
(平均粒子径)
平均粒子径は、レーザー回折法による体積平均粒子径をいい、マイクロトラック・ベル社製T330EXIIを使用して測定した。
【0121】
(粘度)
粘度は、JISK5600-2に記載された方法での測定値で、コーン径35mm、コーン角度1°であるコーンを用いた、コーンプレート型粘度計を用いて、25℃環境下、せん断速度100毎秒で測定した。
【0122】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、JISK0129に記載の方法に従って求めた。具体的には、DSC(示差走査熱量測定装置)により求めた。なお、測定機は株式会社リガク製 DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~150℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度を終了温度との中点をガラス転移温度とした。
【0123】
(製造例1:活性エネルギー線硬化組成物U1の作製)
ウレタンアクリレート(ビームセット550B、荒川化学工業社製)を12部、4-HBA(アクリル酸4-ヒドロキシブチル、大阪有機社製)を47部、ART-PEARL MM120T(ウレタン系微粒子、平均粒子径2μm、ガラス転移温度(Tg)22℃、根上工業社製)を25部、光重合開始剤であるOmnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、IGM社製)を4部、添加剤としてシリコーン系消泡剤を12部混合し、羽根つき撹拌機で90分攪拌して活性エネルギー線硬化組成物U1を得た。
【0124】
(製造例2:活性エネルギー線硬化組成物U2の作製)
ウレタンアクリレート(ビームセット550B、荒川化学工業社製)を10部、4-HBA(アクリル酸4-ヒドロキシブチル、大阪有機社製)を39部、ART-PEARL MM120T(ウレタン系微粒子、平均粒子径2μm、ガラス転移温度(Tg)22℃、根上工業社製)を35部、光重合開始剤であるOmnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、IGM社製)を4部、添加剤としてシリコーン系消泡剤を12部混合し、羽根つき撹拌機で90分攪拌して活性エネルギー線硬化組成物U2を得た。
【0125】
(製造例3:活性エネルギー線硬化組成物U3の作製)
ウレタンアクリレート(ビームセット550B、荒川化学工業社製)を21部、4-HBA(アクリル酸4-ヒドロキシブチル、大阪有機社製)を57部、ART-PEARL MM120T(ウレタン系微粒子、平均粒子径2μm、ガラス転移温度(Tg)22℃、根上工業社製)を6部、光重合開始剤であるOmnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、IGM社製)を4部、添加剤としてシリコーン系消泡剤を12部混合し、羽根つき撹拌機で90分攪拌して活性エネルギー線硬化組成物U3を得た。
【0126】
(実施例1:水性プライマー組成物S1の作製)
水性アクリルエマルション(A1)(スチレン-アクリルエマルション1、Tg25℃、固形分40%)を80部、シリカ-1(平均粒子径3μm、吸油量260ml/100g)を5部、エタノールを5部、水を8部、添加剤として分散剤(BYK193)を2部、表面調整剤(テゴフォーメックス810;シリコーン系)を2部混合し、羽根つき撹拌機で20分撹拌して水性プライマー組成物S1を得た。
【0127】
(実施例2~20、比較例1~2:水性プライマー組成物S2~S20、T1~T2の作製)
表1、表2に記載した原料および配合を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、水性プライマーS2~S20、T1~T2を得た。表中、単位の標記のない数値は、部を表し、空欄は配合していないことを表す。なお、表中の略称は以下を表し、バインダー樹脂の溶媒は水である。
水溶性アクリル樹脂(A2):Tg19℃、固形分25%
水性ウレタン樹脂(B1):Tg25℃、固形分30%
ポリエステル樹脂(C):Tg20℃、固形分25%
スチレン-ブタジエン樹脂:Tg26℃、固形分43%
シリカ-2:平均粒子径0.5μm
シリカ-3:平均粒子径6μm、吸油量250ml/100g
シリカ-4:平均粒子径12μm、吸油量240ml/100g
シリカ-5:平均粒子径3.9μm、吸油量230ml/100g、DBA値50
炭酸カルシウム:平均粒子径3μm、吸油量20ml/100g
沈降性硫酸バリウム:平均粒子径3μm
クレイ:平均粒子径3μm、吸油量51ml/100g
メタノール:沸点64.7℃
イソプロピルアルコール:沸点82.3℃
2-ブタノール:沸点100℃
【0128】
【0129】
【0130】
(実施例21:積層体T1の作製)
まず、紙基材であるオーロラコート(塗工紙ハイグロスタイプ、紙厚81μm、日本製紙社製)上に、紙基材の印刷方向ヘッド側半分にUV硬化型オフセットインキである「FDカルトンX墨M(東洋インキ社製、3官能以上の多官能(メタ)アクリルモノマーを含む)」を、墨濃度が1.75(測定器:X-Rite eXact(エックスライト社製)、条件:イルミナントD50、標準観測者2°、濃度ステータスE、フィルタなし)となるよう印刷し、UVランプで硬化させた。これにより、インキ層のない紙基材のみの部分と、インキ層のある部分の印刷物が作製できる。
なお、上記印刷の印刷速度は8000枚/時、UVランプの種類は空冷メタルハライドランプ2灯と高圧水銀ランプ1灯、UVランプの強度は上記3灯全て160W/cmとした(積算光量450mJ/cm2)。
そして、次に、上記で得られたFDカルトンX墨Mの印刷物上に、枚葉印刷機「リスロン26(株式会社小森コーポレーション製)」のフレキソコーティングユニットを用いて上記実施例1の水性プライマーS1を塗工し、遠赤外線及び熱風乾燥機によって乾燥させた。上記コーティングユニットのアニロックスロールとしては、彫刻パターンがトリヘリカル、線数が80line/inch、セル容積が15ml/m2のものを用いた。
そして、次に、上記で得られた印刷物上に、製造例1で得られた活性エネルギー線硬化組成物U1を、水性プライマー組成物と同様に、枚葉印刷機「リスロン26(株式会社小森コーポレーション製)」のフレキソコーティングユニットを用いて塗工、UVランプで硬化させ、積層体T1を得た。なお、上記コーティングユニットのアニロックスロールとしては、彫刻パターンがトリヘリカル、線数が90line/inch、セル容積が25ml/m2のものを用いた。また、フレキソコーティングの際は、印刷速度が8000枚/時で、S1の液温が25℃となるように温度を制御した。なお、UVランプの種類、灯数、強度は上述のFDカルトンX墨Mの硬化条件と同じである。
【0131】
(実施例22~42、比較例3~4:積層体L2~L22、M1~2の作製)
実施例21と同様の方法により、表3、表4で示した構成条件で、実施例2~20で得られた水性プライマーS2~S20、及び製造例2、3で得られた活性エネルギー線硬化組成物U2、U3を用いて、積層体L2~L22、M1~2を得た。
【0132】
【0133】
【0134】
(評価)
上記実施例及び比較例にて得られた水性プライマー組成物及び活性エネルギー線硬化組成物を順次有する包装材用積層体を用いて以下の評価を行い、評価結果は表3及び表4に示した。
【0135】
<耐モットリング性>
実施例及び比較例で得られた積層体について、FDカルトンX墨Mのインキ層上の水性プライマー/活性エネルギー線硬化層、及びFDカルトンX墨Mのインキ層が印刷されていない紙基材上に直接積層された水性プライマー/活性エネルギー線硬化層上の光沢値を、それぞれ50箇所ランダムに測定し、光沢値の相対標準偏差(光沢値の平均値に対するバラつきの割合)を評価した。相対標準偏差が大きいほど、光沢ムラが高く、印刷外観としては劣る(モットリング)。光沢値はBYK社製マイクロトリグロスを使用し、入射角60°にて測定した。評価基準は次の通りである。
5(優):2%未満
4(良):2%以上3%未満
3(可):3%以上5%未満
2(不可):5%以上10%未満
1(劣):10%以上
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0136】
<艶消し性>
実施例及び比較例で得られた積層体について、FDカルトンX墨Mのインキ層が印刷されていない、紙基材上に直接積層された水性プライマー/活性エネルギー線硬化層上の光沢値を測定した。光沢値の測定は、BYK社製マイクロトリグロスを使用し、入射角60°にて測定した。評価基準は次の通りである。
5(優):11以下
4(良):光沢値11より大きく18以下
3(可):光沢値18より大きく40以下
2(不可):光沢値40より大きく以上50以下
1(劣): 光沢値50より大きい
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0137】
<耐擦過性>
実施例および比較例で得られた積層体について、FDカルトンX墨Mのインキ層上の、水性プライマー/活性エネルギー線硬化層の硬化層同士が接触するようにサウザランド・ラブテスタ(東洋精機製作所社製)にセットし、2ポンドの荷重をかけて所定回数往復した後、硬化層が剥がれて下地が見えるかどうか、目視確認を行うことで耐摩擦性を評価した。評価基準は次の通りである。
5(優):10000往復後でも硬化層が剥がれず、下地が見えなかった。
4(良):10000往復後では硬化層が剥がれて下地が見えたが、9000往復後では
下地が見えなかった。
3(可):9000往復後では硬化層が剥がれて下地が見えたが、8000往復後では
下地が見えなかった。
2(不可):8000往復後では硬化層が剥がれて下地が見えたが、7000往復後では
下地が見えなかった。
1(劣):7000往復後でも硬化層が剥がれて下地がみえた。
なお、実用上使用可能な評価は3、4および5である。
【0138】
本発明により、プライマー層上に活性エネルギー線硬化組成物を塗工した際の耐モットリング性(光沢ムラ)に優れる水性プライマー組成物、及び、美粧外観(艶消し性)と耐擦過性に優れる包装材用積層体を提供することが可能となった。
【0139】
体質顔料を含まない比較例1及び2は、耐モットリング性及び艶消し性が劣る結果となった。
【要約】
【課題】本発明は、紙基材及びインキ層への転移性、レベリング性に優れる水性プライマー組成物であって、活性エネルギー線硬化組成物を当該水性プライマー層上に塗工した際の耐モットリング性(光沢ムラ)に優れる水性プライマー組成物、並びに、美粧外観(艶消し性)に優れる包装材用積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、紙基材、プライマー層及び活性エネルギー線硬化層を順次有する包装材用積層体の、前記プライマー層を形成するための水性プライマー組成物であって、
バインダー樹脂、体質顔料及び水系溶剤を含む、水性プライマー組成物に関する。
【選択図】なし