(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】シリーズハイブリッド車両の制御方法及びシリーズハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20240717BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240717BHJP
B60L 50/10 20190101ALI20240717BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240717BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/46 ZHV
B60L50/10
B60W10/06 900
B60W10/26 900
(21)【出願番号】P 2023500472
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006471
(87)【国際公開番号】W WO2022176173
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 一真
(72)【発明者】
【氏名】小林 梓
(72)【発明者】
【氏名】秋山 秀勝
(72)【発明者】
【氏名】宮内 啓史
(72)【発明者】
【氏名】小野川 遼
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/001669(WO,A1)
【文献】特開2008-94238(JP,A)
【文献】特開2016-117312(JP,A)
【文献】特開平10-14296(JP,A)
【文献】特開2011-10535(JP,A)
【文献】特開2006-315488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60W 10/06
B60K 6/46
B60W 10/26
B60L 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御を行うコントローラを有し、過給機付きのエンジンの動力により駆動されて発電する発電用モータの電力を利用して走行用モータで駆動輪を駆動するシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、
前記エンジンのトルクであって前記発電用モータの駆動エンジントルクを超える分のトルクが、少なくとも前記シリーズハイブリッド車両が備えるシリーズハイブリッドシステムの電力受け入れの余裕を示すシステム入力可能電力に応じた前記発電用モータの駆動エンジントルクを上回り、且つ前記エンジンが過給されている場合は、前記制御として前記エンジンのフューエルカットを行うこと、
を含むシリーズハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
制御を行うコントローラを有し、過給機付きのエンジンの動力により駆動されて発電する発電用モータの電力を利用して走行用モータで駆動輪を駆動するシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、
前記エンジンの動力を前記発電用モータの電力に換算して得られる値と、前記発電用モータが受け取り可能な前記エンジンの動力を前記発電用モータの電力に換算して得られる値との差分の大きさが、少なくとも前記シリーズハイブリッド車両が備えるシリーズハイブリッドシステムの電力受け入れの余裕を示すシステム入力可能電力を上回り、且つ前記エンジンが過給されている場合は、前記制御として前記エンジンのフューエルカットを行うこと、
を含むシリーズハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載のシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、
前記差分の大きさが少なくとも前記システム入力可能電力を下回ること、及び前記エンジンが過給されていないことのうち少なくともいずれかが成立すると、前記制御として前記フューエルカットの解除を行うこと、
をさらに含むシリーズハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載のシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、
車両駆動力要求がある場合は、前記制御として前記フューエルカットの解除を行うこと、
をさらに含むシリーズハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、
前記走行用モータの電力源として前記発電用モータの電力を必要とする場合は、前記制御として前記フューエルカットの解除を行う、
シリーズハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
請求項2に記載のシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、
前記コントローラは、前記差分の大きさを前記エンジンのイナーシャトルクの大きさ及び前記エンジンのフリクショントルクの大きさの和により算出する、
ことをさらに含むシリーズハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
過給機付きのエンジンの動力により駆動されて発電する発電用モータの電力を利用して走行用モータで駆動輪を駆動するシリーズハイブリッド車両の制御装置であって、
前記エンジンの動力を前記発電用モータの電力に換算して得られる値と、前記発電用モータが受け取り可能な前記エンジンの動力を前記発電用モータの電力に換算して得られる値との差分の大きさが、少なくとも前記シリーズハイブリッド車両が備えるシリーズハイブリッドシステムの電力受け入れの余裕を示すシステム入力可能電力を上回り、且つ前記エンジンが過給されている場合は、前記エンジンのフューエルカットを行う制御部、
を備えるシリーズハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズハイブリッド車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2015-182725Aには、ターボチャージャを備える内燃機関及び電動機の少なくとも一方を駆動源とするハイブリッド車両が開示されている。JP5949906Bには、ターボチャージャ等の過給機を備える過給装置が設けられた内燃機関とモータとを原動機として搭載し、過給圧可変機構により内燃機関の過給圧を調整するハイブリッド車両が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
過給機付きのエンジンでは、エンジントルク(過給圧)の応答遅れによって実エンジントルクの低下が遅れ、実エンジントルクが指示エンジントルクより大きい状態になることがある。このため、過給機付きのエンジンを備えるシリーズハイブリッド車両では、発電用モータの発電電力を減らす必要があるにも関わらず、応答遅れによってエンジントルクの低下が遅れることがある。発電電力を減らす必要は例えば、アクセルペダルからの足離しに伴い走行用モータの駆動消費電力が減少することに応じて生じることがある。
【0004】
エンジントルクの低下が遅れると、エンジンの動力によって駆動される発電用モータの発電電力の減少も遅れる。このためこの場合は、発電用モータの発電電力がシリーズハイブリッドシステムのシステム入力可能電力の範囲内に収まらない状況が生じ得る。
【0005】
しかしながら、発電用モータはシステム入力可能電力を超える範囲での発電を行うことはできない。このためこの場合は、システム入力可能電力の範囲内での発電で電力に変換できない分のエンジントルクにより、エンジン回転の噴け上がりが発生する虞がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、過給機付きのエンジンを備えるシリーズハイブリッド車両でエンジン回転の噴け上がりを抑制することを目的とする。
【0007】
本発明のある態様のシリーズハイブリッド車両の制御方法は、過給機付きのエンジンの動力により駆動されて発電する発電用モータの電力を利用して走行用モータで駆動輪を駆動するシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、エンジンのトルクであって発電用モータの駆動エンジントルクを超える分のトルクが、少なくともシリーズハイブリッド車両が備えるシリーズハイブリッドシステムの電力受け入れの余裕を示すシステム入力可能電力に応じた発電用モータの駆動エンジントルクを上回り、且つエンジンが過給されている場合は、エンジンのフューエルカットを行うことを含む。
【0008】
本発明の別の態様のシリーズハイブリッド車両の制御方法は、過給機付きのエンジンの動力により駆動されて発電する発電用モータの電力を利用して走行用モータで駆動輪を駆動するシリーズハイブリッド車両の制御方法であって、内燃機関の動力を発電用モータの電力に換算して得られる値と、発電用モータが受け取り可能なエンジンの動力を発電用モータの電力に換算して得られる値との差分の大きさが、少なくともシリーズハイブリッド車両が備えるシリーズハイブリッドシステムの電力受け入れの余裕を示すシステム入力可能電力を上回り、且つエンジンが過給されている場合は、エンジンのフューエルカットを行うことを含む。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、上記別の態様のシリーズハイブリッド車両の制御方法に対応するシリーズハイブリッド車両の制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、車両の要部を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、統合コントローラの処理を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、システム入力可能電力の説明図である。
【
図5】
図5は、統合コントローラが行う処理の要部の機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、F/C実行時の制御の一例をフローチャートで示す図である。
【
図7】
図7は、F/C実行時のはみ出し電力の判定の変形例を示す図である。
【
図8】
図8は、F/C解除時の制御の一例をフローチャートで示す図である。
【
図9】
図9は、F/C解除時のはみ出し電力の判定の変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、タイミングチャートの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、内燃機関のはみ出しトルクの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、車両1の要部を示す概略構成図である。車両1は、内燃機関2と、発電用モータ3と、走行用モータ4と、バッテリ5と、駆動輪6と、ターボチャージャ7と、インタークーラ8と、スロットルバルブ9とを備える。
【0013】
内燃機関2は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンのいずれでもかまわない。内燃機関2は過給機付きのエンジンであり、過給機としてターボチャージャ7が設けられる。ターボチャージャ7はコンプレッサ71とタービン72とを備える。コンプレッサ71は内燃機関2の吸気通路41に設けられ、タービン72は内燃機関2の排気通路42に設けられる。ターボチャージャ7では、タービン72が排気によって回転することでシャフトを介してコンプレッサ71が回転し、吸気を圧縮する。
【0014】
コンプレッサ71が圧縮した吸気は、インタークーラ8、スロットルバルブ9、吸気通路41のインテークマニホールド41aをこの順に通過して内燃機関2に供給される。インタークーラ8は過給された吸気を冷却し、スロットルバルブ9は吸気の量を調節する。インテークマニホールド41aは内燃機関2の各気筒に吸気を分配する。
【0015】
発電用モータ3は、内燃機関2の動力によって駆動されることで発電する。走行用モータ4は、バッテリ5の電力により駆動されて、駆動輪6を駆動する。走行用モータ4は、減速時等に駆動輪6の回転に伴って連れ回されることにより減速エネルギを電力として回生する、いわゆる回生機能も有する。バッテリ5には、発電用モータ3で発電された電力と、走行用モータ4で回生された電力とが充電される。
【0016】
車両1は、第1動力伝達経路21と第2動力伝達経路22とを有する。第1動力伝達経路21は、走行用モータ4と駆動輪6との間で動力を伝達する。第2動力伝達経路22は、内燃機関2と発電用モータ3との間で動力を伝達する。第1動力伝達経路21と第2動力伝達経路22とは、互いに独立した動力伝達経路、つまり第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22の一方から他方に動力が伝達されない動力伝達経路になっている。
【0017】
第1動力伝達経路21は、走行用モータ4の回転軸4aに設けられた第1減速ギヤ11と、第1減速ギヤ11と噛み合う第2減速ギヤ12と、第2減速ギヤ12と同軸上に設けられてデファレンシャルギヤ14と噛み合う第3減速ギヤ13と、デファレンシャルケース15に設けられたデファレンシャルギヤ14とを有して構成される。
【0018】
第2動力伝達経路22は、内燃機関2の出力軸2aに設けられた第4減速ギヤ16と、第4減速ギヤ16と噛み合う第5減速ギヤ17と、発電用モータ3の回転軸3aに設けられ、第5減速ギヤ17と噛み合う第6減速ギヤ18とを有して構成される。
【0019】
第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22それぞれは、動力伝達を遮断する要素を備えていない。すなわち、第1動力伝達経路21及び第2動力伝達経路22それぞれは常に動力が伝達される状態になっている。
【0020】
車両1はコントローラ30をさらに備える。コントローラ30は、内燃機関2の制御を行うエンジンコントローラ31、発電用モータ3の制御を行う発電用モータコントローラ32、走行用モータ4の制御を行う走行用モータコントローラ33、バッテリ5の制御を行うバッテリコントローラ34、車両1の制御を統合する統合コントローラ35を含む。
【0021】
エンジンコントローラ31は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。他のコントローラについても同様である。エンジンコントローラ31、発電用モータコントローラ32、走行用モータコントローラ33及びバッテリコントローラ34は、統合コントローラ35を介してCAN規格のバスにより互いに通信可能に接続される。
【0022】
コントローラ30には、内燃機関2の回転速度NICEを検出するための回転速度センサ81、アクセルペダルの踏み込み量を指標するアクセル開度APOを検出するためのアクセル開度センサ82、内燃機関2の水温THWを検出するための水温センサ83、内燃機関2の油温TOILを検出するための油温センサ84、車速VSPを検出するための車速センサ85、吸気圧Pを検出するための圧力センサ86、エアコン装置や電動パワーステアリング装置等の電力消費を行う補機の電流I及び印加電圧Vを検出するための電流及び電圧センサ87を含む各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。これらの信号は、直接或いはエンジンコントローラ31等の他のコントローラを介して統合コントローラ35に入力される。圧力センサ86は内燃機関2の過給圧を検出可能な位置の吸気通路41に設けられ、本実施形態ではインテークマニホールド41aに設けられる。電流及び電圧センサ87は複数のセンサにより構成されてよく、補機毎に設けられた複数のセンサを含んでよい。コントローラ30には発電用モータ3、走行用モータ4、バッテリ5からも回転速度、トルク、バッテリ5の充電状態を指標するパラメータであるSOC(state of charge)等の信号が入力される。
【0023】
車両1は、内燃機関2の動力により駆動されて発電する発電用モータ3の電力を利用して走行用モータ4で駆動輪6を駆動するシリーズハイブリッド車両を構成する。コントローラ30は、内燃機関2、発電用モータ3、走行用モータ4、バッテリ5のほか、補機とともにシリーズハイブリッドシステムを構成する。
【0024】
前述の通り、内燃機関2は過給機付きのエンジンとなっている。このような内燃機関2ではトルクTQICE(過給圧)の応答遅れに伴い、内燃機関2の実トルクTQICE_Aが指示トルクTQICE_Tより大きい状態となる場合がある。このため、内燃機関2を備える車両1では、発電電力を減らす必要があるにも関わらず、応答遅れによってトルクTQICEの低下が遅れることがある。発電電力を減らす必要は例えば、アクセルペダルからの足離しに伴い走行用モータ4の駆動消費電力が減少することに応じて生じることがある。
【0025】
トルクTQICEの低下が遅れると、内燃機関2の動力によって駆動される発電用モータ3の発電電力の減少も遅れる。このためこの場合は、発電用モータ3の発電電力がシリーズハイブリッドシステムのシステム入力可能電力EP_SYSの範囲内に収まらない状況が生じ得る。
【0026】
しかしながら、発電用モータ3はシステム入力可能電力EP_SYSを超える範囲での発電を行うことはできない。このためこの場合は、システム入力可能電力EP_SYSの範囲内での発電で電力に変換できない分のトルクTQICEにより、エンジン回転の噴け上がりが発生することが懸念される。
【0027】
特にアクセルペダルからの足離しが行われる場面では、走行用モータ4の駆動消費電力が通常通りに減少する一方で、発電用モータ3の発電電力が減少し難くなる。このため、システム入力可能電力EP_SYSが小さくなり、噴け上がりが発生し易い。
【0028】
また本実施形態では、コンプレッサ71の下流側から上流側に圧縮された吸気を戻すリサーキュレーションバルブ等の過給圧を速やかに低下させる機構が設けられていない。このため、このような機構を用いて過給圧を下げることができず、指示トルクTQICE_Tの低下に対してトルクTQICEの応答遅れが大きくなり易い。
【0029】
このような事情に鑑み、本実施形態では統合コントローラ35が以下で説明するように構成される。
【0030】
図2は統合コントローラ35の処理を示す機能ブロック図である。統合コントローラ35は、駆動目標演算部351と目標電力演算部352とENGモード判断部353と目標ENG動作点演算部354とを備える。
【0031】
駆動目標演算部351は走行用モータ4の目標トルクTQMG_Tを演算する。目標トルクTQMG_Tは走行用モータ4の実回転速度NMG_Aと目標駆動力とに基づき演算される。目標トルクTQMG_Tは、次のように演算される。
【0032】
すなわち、まず車速VSPとアクセル開度APOとに基づき目標駆動力が演算される。目標駆動力は車速VSPとアクセル開度APOとに応じて予め設定される。演算された目標駆動力は、第1動力伝達経路21に設定されたギヤ比と駆動輪6のタイヤ径とを用いて走行用モータ4の回転軸4aのトルクに換算され、これにより換算されたトルクが目標トルクTQMG_Tとして演算される。さらに、実回転速度NMG_Aは絶対値での走行用モータ4の最大トルクを算出するために用いられ、絶対値での走行用モータ4の最大トルクは目標トルクTQMG_Tの上下限とされる。目標駆動力は走行用モータ4の回生時には負の値つまり目標回生動力となる。演算された目標トルクTQMG_Tは走行用モータ4に入力される。
【0033】
駆動目標演算部351はさらに車両要求電力EPV_Tを演算する。車両要求電力EPV_Tは走行用モータ4の目標駆動力に応じた車両1の要求電力であり、走行用モータ4の目標駆動力に基づき演算される。演算された車両要求電力EPV_Tは目標電力演算部352と目標ENG動作点演算部354とに入力される。
【0034】
目標電力演算部352は、車両要求電力EPV_Tに基づき発電用モータ3による発電又は放電のための目標電力EPGEN_Tを演算する。発電では内燃機関2による発電用モータ3の駆動が行われる。正の車両要求電力EPV_Tが入力された場合、上限充電電力を上限として目標発電電力が演算される。上限放電電力は絶対値で負の車両要求電力EPV_Tを制限するのに用いられる。目標電力演算部352には、上限充電電力と上限放電電力とがSOCとともにバッテリコントローラ34から入力される。SOCは後述するシステム入力可能電力EP_SYSの演算に用いられる。
【0035】
目標電力演算部352にはさらに、吸気圧P、内燃機関2の油温TOIL及び実回転速度NICE_Aがエンジンコントローラ31から入力される。吸気圧Pは、後述する噴け上がり事前検知部352aでの処理に用いられる。油温TOIL及び実回転速度NICE_Aは、次に説明するはみ出し電力EP_OVERの演算に用いられる。
【0036】
図3ははみ出し電力EP_OVERの説明図である。内燃機関2の動力に応じた発生可能電力(以下、単に発生可能電力とも称す)とは、内燃機関2の動力を発電用モータ3の電力に換算して得られる値であり、システム入力可能電力EP_SYSの範囲内に収まらない分の発生可能電力は、発電用モータ3で発電できない。発生可能電力は、発電用モータ3の受け取り可能動力に応じた電力と、はみ出し電力EP_OVERとにより構成される。
【0037】
発電用モータ3の受け取り可能動力に応じた電力とは、発電用モータ3が受け取り可能な内燃機関2の動力を発電用モータ3の電力に換算して得られる値であり、発電用モータ3が最大限受け取り可能な内燃機関2の動力を換算して得られる。当該電力は発電用モータ3の発電電力と損失電力とにより構成される。はみ出し電力EP_OVERは、発電用モータ3の受け取り可能動力に応じた電力を超えた分の発生可能電力とされる。従って、はみ出し電力EP_OVERは発生可能電力と発電用モータ3の受け取り可能動力に応じた電力との差分の大きさにより構成される。
【0038】
発生可能電力は例えば、内燃機関2のトルクTQICEの応答遅れによって実トルクTQICE_Aが指示トルクTQICE_Tより大きい状態になると、発電用モータ3の受け取り可能動力に応じた電力を超える。このようなはみ出し電力EP_OVERは、内燃機関2のフリクショントルク及び内燃機関2の回転速度NICEの変化を打ち消すためのイナーシャトルクに打ち勝つ電力を意味する。このため、はみ出し電力EP_OVERはこれらのトルクの大きさの和により算出できる。フリクショントルクは油温TOIL及び実回転速度NICE_Aに応じて予め設定されており、油温TOIL及び実回転速度NICE_Aに基づき演算される。油温TOILの代わりに水温THWが用いられてもよい。イナーシャトルクはイナーシャトルク=角加速度×慣性モーメントの関係式により演算される。角加速度は演算周期毎に得られる回転速度NICEの現在値及び前回値の差分を演算周期で除算することにより求めることができる。慣性モーメントには第2動力伝達経路22を構成する動力伝達系の慣性モーメントが用いられる。
【0039】
図2に戻り、目標電力演算部352にはさらに発電用モータ3から実トルクTQ
GEN_A及び実回転速度N
GEN_Aが入力される。実トルクTQ
GEN_A及び実回転速度N
GEN_Aは発電用モータ3の発電電力の演算に用いられる。演算された発電用モータ3の発電電力は、次に説明するようにシステム入力可能電力EP_SYSの演算に用いられる。
【0040】
図4はシステム入力可能電力EP_SYSの説明図である。システム入力可能電力EP_SYSは、シリーズハイブリッドシステムの電力受け入れの余裕を示す値であり、バッテリ5の入力可能電力、補機消費電力及び駆動消費電力それぞれの大きさの和から発電用モータ3の発電電力の大きさを減算して求められる。バッテリ5の入力可能電力はSOCに基づき演算される。補機消費電力は電流及び電圧センサ87からの信号に基づき演算される。駆動消費電力には車両要求電力EP
V_Tが用いられる。
【0041】
図2に示す目標電力演算部352からはENGモード判断部353と目標ENG動作点演算部354とに目標電力EP
GEN_Tが入力される。ENGモード判断部353は目標電力EP
GEN_Tに基づき内燃機関2の運転モードを判断する。運転モードは車両駆動力要求に応じて発電を行う発電モードである駆動力要求発電モードを含む。運転モードが駆動力要求発電モードと判断された場合、モードフラグの信号が車両駆動力要求フラグの信号として目標ENG動作点演算部354に入力される。
【0042】
目標ENG動作点演算部354は目標電力EPGEN_Tに応じた内燃機関2の目標動作点を演算する。目標動作点は目標電力EPGEN_Tに応じて予め設定できる。正の目標電力EPGEN_Tつまり目標発電電力が入力された場合、目標発電電力に応じた内燃機関2の目標回転速度NICE_T及び指示トルクTQICE_Tが目標動作点として演算される。演算された目標回転速度NICE_Tは発電用モータ3に入力され、発電用モータ3の制御に用いられる。目標回転速度NICE_Tは発電用モータ3の目標回転速度NGEN_Tにギヤ比換算されてよい。発電用モータ3には発電用モータ3の上下限トルクの指令値も入力される。当該指令値は車両要求電力EPV_Tに応じて予め設定される。演算された指示トルクTQICE_Tはエンジンコントローラ31に入力され、内燃機関2の制御に用いられる。エンジンコントローラ31にはF/C(フューエルカット)フラグの信号も入力される。F/Cフラグは次のように設定される。
【0043】
図5は統合コントローラ35が行う処理の要部の機能ブロック図である。目標電力演算部352は、噴け上がり事前検知部352aとF/C不要判断部352bとを有する。目標ENG動作点演算部354は、F/Cフラグ設定部354aと経過時間判断部354bと設定クリア指示部354cとを有する。噴け上がり事前検知部352aには、吸気圧Pを含む図示の各種信号が入力される。これらの信号はF/C不要判断部352bにも入力される。吸気圧P以外の図示の各種信号は、はみ出し電力EP_OVERの演算、システム入力可能電力EP_SYSの演算、車両要求電力EP
V_Tの制限に用いられる。
【0044】
噴け上がり事前検知部352aはエンジン回転の噴け上がりを事前に検知する。事前検知条件は、はみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより大きく且つ内燃機関2が過給されていることである。吸気圧Pが所定値P1以上の場合、内燃機関2が過給されていると判断される。所定値P1は大気圧以上の値に予め設定できる。事前検知条件が成立した場合、事前検知フラグのオン信号がF/Cフラグ設定部354aに入力される。
【0045】
F/C不要判断部352bはフューエルカットが不要か否かを判断する。F/C不要条件ははみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより小さく且つ内燃機関2が過給されていないことである。吸気圧Pが所定値P2以下の場合、内燃機関2が過給されていないと判断される。所定値P2は大気圧未満の値に予め設定できる。F/C不要条件が成立した場合、F/C不要信号が設定クリア指示部354cに入力される。
【0046】
F/Cフラグ設定部354aは事前検知フラグのオン信号が入力された場合にF/Cフラグをオンに設定する。F/Cフラグのオン信号はエンジンコントローラ31に入力され、これにより内燃機関2のフューエルカットが行われる。F/Cフラグのオン信号は経過時間判断部354bにも入力される。
【0047】
経過時間判断部354bはF/Cフラグのオン信号に基づき、フューエルカットが開始されてから所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間はフューエルカットのタイムアウト時間であり、実験等により予め設定される。フューエルカットが開始されてから所定時間が経過した場合、経過完了信号が設定クリア指示部354cに入力される。
【0048】
設定クリア指示部354cはF/C不要信号、車両駆動力要求フラグのオン信号又は経過完了信号が入力された場合に、F/Cフラグの設定クリア信号をF/Cフラグ設定部354aに入力する。車両駆動力要求フラグのオン信号は前述のENGモード判断部353から設定クリア指示部354cに入力される。
【0049】
F/Cフラグ設定部354aは設定クリア信号が入力された場合にF/Cフラグの設定をクリアする。これにより、F/Cフラグがオフになる。エンジンコントローラ31はF/Cフラグのオン信号が入力されなくなると、内燃機関2のフューエルカットを解除する。経過時間判断部354bはF/Cフラグのオン信号が入力されなくなると時間計測を停止するとともに、計測した時間をクリアする。
【0050】
図6はF/C実行時にコントローラ30が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。ステップS1の処理は統合コントローラ35により行うことができ、ステップS2の処理はエンジンコントローラ31により行うことができる。
【0051】
ステップS1で、コントローラ30ははみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより大きく、且つ内燃機関2が過給されているか否かを判定する。つまり、前述した事前検知条件が成立したか否かが判定される。ステップS1で否定判定であれば処理はステップS1に戻り、ステップS1で肯定判定であれば処理はステップS2に進む。
【0052】
ステップS2で、コントローラ30は内燃機関2のフューエルカットを実行する。これにより、トルクTQICEの応答遅れに起因して発生するエンジン回転の噴け上がりに対し、トルクTQICE及び回転速度NICEが事前に且つ速やかに低下する。結果、エンジン回転の噴け上がりが抑制される。また、内燃機関2は駆動輪6に動力を伝達しないので、このようにフューエルカットを行っても車両1の挙動には影響しない。ステップS2の後には処理は一旦終了する。
【0053】
ステップS1では、はみ出し電力EP_OVERが次のように判定されてもよい。
【0054】
図7はF/C実行時のはみ出し電力EP_OVERの判定の変形例を示す図である。
図7に示すように、判定閾値D1はシステム入力可能電力EP_SYSと所定値αの和とされる。所定値αはエンジン回転の噴け上がりを事前に検知するタイミングを適切なタイミングに適合させるための値であり、実験等により予め設定される。このような判定によれば、フューエルカットによりエンジン回転の噴け上がりをより適切に抑制できる。この場合、はみ出し電力EP_OVERが増加するとともにシステム入力可能電力EP_SYSが減少することにより、はみ出し電力EP_OVERが判定閾値D1より大きくなる。
【0055】
図8はF/C解除時にコントローラ30が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。ステップS11からステップS13の処理は統合コントローラ35で行うことができ、ステップS14の処理はエンジンコントローラ31で行うことができる。
【0056】
ステップS11で、コントローラ30ははみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより小さく、且つ内燃機関2が過給されていないか否かを判定する。つまり、前述したF/C不要条件が成立したか否かが判定される。
【0057】
ステップS11で肯定判定であれば、処理はステップS14に進み、コントローラ30はフューエルカットを解除する。これにより、トルクTQICEの応答遅れに起因するエンジン回転の噴け上がりが発生しない状況になったことを受けて、フューエルカットが解除される。ステップS14の後には処理は一旦終了する。
【0058】
ステップS11で否定判定の場合、処理はステップS12に進み、コントローラ30は車両駆動力要求があるか否かを判定する。車両駆動力要求があるか否かは、車両駆動力要求フラグ信号に基づき判定できる。ステップS12で肯定判定であれば処理はステップS14に進み、フューエルカットが解除される。これにより、走行用モータ4の駆動再開に応じて内燃機関2の発電運転が再開される。
【0059】
ステップS12で否定判定の場合、処理はステップS13に進み、コントローラ30はフューエルカットを開始してから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は内燃機関2の実トルクTQICE_Aの指示トルクTQICE_Tに対する応答遅れに基づき定められる。実トルクTQICE_Aが指示トルクTQICE_Tに十分追従するであろう時間が経過していれば、はみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより小さい蓋然性が高いためである。ステップS13で否定判定であれば処理はステップS11に戻る。
【0060】
ステップS13で肯定判定であれば処理はステップS14に進み、フューエルカットが解除される。これにより、フューエルカットが必要以上に継続されることが防止される。
【0061】
ステップS11では、はみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより小さいこと、及び内燃機関2が過給されていないことのうち少なくともいずれか成立したか否かが判定されてもよい。
【0062】
前者の条件が成立する場合は、シリーズハイブリッドシステムには電力受け入れの余裕がある。このためこの場合は、電力受け入れの余裕の観点から、内燃機関2の発電運転を早期に再開することが可能になる。
【0063】
後者の条件が成立する場合は、内燃機関2のトルクTQICEがある程度低下しており、はみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより小さい蓋然性が高い。また、内燃機関2が過給されていなければ、内燃機関2の実トルクTQICE_Aが指示トルクTQICE_Tに対して許容範囲内の応答遅れしか生じさせないので、はみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSより小さい蓋然性が高い。このためこの場合は、トルクTQICEが大きく低下する前に内燃機関2の発電運転を再開することで、トルクTQICEの応答性の確保が可能になる。
【0064】
ステップS12では、走行用モータ4の電力源として発電用モータ3の電力が必要か否かの判定がさらに行われてもよい。この場合、発電用モータ3の電力が必要な場合にステップS14に進むことで発電再開の必要性に応じて内燃機関2の発電運転を再開できる。
【0065】
ステップS11では、はみ出し電力EP_OVERが次のように判定されてもよい。
【0066】
図9はF/C解除時のはみ出し電力EP_OVERの判定の変形例を示す図である。解除閾値D2はシステム入力可能電力EP_SYS及び所定値βの差分の大きさとされる。所定値βはフューエルカットを解除するタイミングを適切なタイミングに適合させるための値であり、実験等により予め設定される。このような判定によれば、不要になったフューエルカットをより適切に解除できる。この場合、はみ出し電力EP_OVERが減少するとともにシステム入力可能電力EP_SYSが増加することにより、はみ出し電力EP_OVERが解除閾値D2未満になる。
【0067】
コントローラ30は、
図6、
図8に示すフローチャートの処理を行うようにプログラムされることで制御部を有した構成とされる。制御部としてのコントローラ30は、
図2、
図5に示す機能ブロック図を満たすようにプログラムされる。
【0068】
図10はコントローラ30が行う制御に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
図10ではF/C実行時、F/C解除時ともに、はみ出し電力EP_OVERの判定に
図7、
図9を用いて説明した変形例を適用した場合を示す。2種類の破線で示す内燃機関2の実回転速度N
ICE_A及び目標回転速度N
ICE_Tは比較例の場合を示す。比較例はフューエルカットを行わない場合を示す。
【0069】
タイミングT1では高速走行時に内燃機関2が最大出力等の高出力で運転されている状態で、アクセルペダルからの足離しが行われる。結果、アクセル開度APOが低下し始めるとともに、走行用モータ4のトルクTQMGが低下し始める。アクセル開度APOはタイミングT1の直後にゼロになる。トルクTQMGはアクセルペダルからの足離しに伴い徐々に低下される。トルクTQMGが低下すると、これに応じてシステム入力可能電力EP_SYSが小さくなる。その一方で、吸気圧Pは、アクセルペダルからの足離しに応じて直ちに低下し始めず、これに起因して内燃機関2の実トルクTQICE_Aの指示トルクTQICE_Tに対する応答遅れが生じる。
【0070】
タイミングT2では吸気圧Pが所定値P1より高くなっている。つまり、内燃機関2が過給されている。タイミングT2ではさらに、システム入力可能電力EP_SYSの低下に起因してはみ出し電力EP_OVERが判定閾値D1より大きくなる。結果、事前検知フラグがONになる。
【0071】
タイミングT3では、事前検知フラグがONになったことに応じてF/CフラグがONになる。このため、フューエルカットが開始され、回転速度NICEが低下し始める。タイミングT3からは、回転速度NICEの低下に応じて発電用モータ3の発電電力が減少し、これに応じてシステム入力可能電力EP_SYSが増加する。
【0072】
タイミングT4では、吸気圧Pが所定値P2より低くなっている。つまり、内燃機関2が過給されていない。タイミングT4ではさらに、システム入力可能電力EP_SYSの増加に起因してはみ出し電力EP_OVERが解除閾値D2より小さくなる。結果、F/C不要条件が成立するとともに事前検知フラグがOFFになる。
【0073】
タイミングT5では、F/C不要条件の成立に応じてF/CフラグがOFFになる。このため、内燃機関2の発電運転が再開され、回転速度NICEが上昇し始める。システム入力可能電力EP_SYSは回転速度NICEの上昇に応じて減少する。
【0074】
比較例の場合、タイミングT3でフューエルカットが行われない。このためこの場合は、発電用モータ3の発電により電力に変換できない分の内燃機関2のトルクTQICEにより、エンジン回転の噴け上がりが発生する。
【0075】
本実施形態の場合、タイミングT3でフューエルカットを行うことにより、内燃機関2のトルクTQICEが速やかに減少する。結果、回転速度NICEも速やかに低下し、エンジン回転の噴け上がりが抑制される。
【0076】
次に本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0077】
車両1の制御方法は、はみ出し電力EP_OVERが少なくともシステム入力可能電力EP_SYSを上回り、且つ内燃機関2が過給されている場合は、内燃機関2のフューエルカットを行うことを含む。
【0078】
このような方法によれば、内燃機関2のトルクTQICEの応答遅れに起因するエンジン回転の噴け上がりを事前に検知して内燃機関2のフューエルカットを行うことで、上昇しようとする回転速度NICEを速やかに低下させることができる。このためこのような方法によれば、ターボチャージャ7が設けられた内燃機関2でエンジン回転の噴け上がりを抑制することができる。
【0079】
またこのような方法によれば、過給圧を速やかに低下させる機構を設ける必要がないので、シリーズハイブリッドシステムが複雑になることを回避できる。さらにこのような方法によれば過給圧を制限しないので、高速走行時に内燃機関2が高出力で運転されている際に発電用モータ3の発電電力が制限されることにより、車両駆動力が不足する事態も回避できる。
【0080】
車両1の制御方法は、はみ出し電力EP_OVERがシステム入力可能電力EP_SYSを下回ること、及び内燃機関2が過給されていないことのうち少なくともいずれかが成立すると、フューエルカットを解除することをさらに含む。
【0081】
前者の条件によれば、電力受け入れの余裕の観点から、内燃機関2の発電運転を早期に再開することが可能になる。後者の条件によれば、内燃機関2のトルクTQICEの応答性を確保する観点から、発電運転を早期に再開することが可能になる。両条件によれば、電力受け入れの余裕及びトルクTQICEの応答性確保を両立させるかたちで発電運転を早期に再開することが可能になる。
【0082】
車両1の制御方法は、車両駆動力要求がある場合はフューエルカットを解除することをさらに含む。このような方法によれば、走行用モータ4の駆動再開に応じて内燃機関2の発電運転を再開させることができるので、バッテリ5のSOCの低下を抑制できる。
【0083】
この場合、フューエルカットは走行用モータ4の電力源として発電用モータ3の電力を必要とする場合に解除されてもよい。これにより、走行用モータ4の駆動を再開するにあたり、発電再開の必要性に応じて内燃機関2の発電運転を再開させることができる。
【0084】
車両1の制御方法は、はみ出し電力EP_OVERを内燃機関2のイナーシャトルクの大きさ及び内燃機関2のフリクショントルクの大きさの和により算出することをさらに含む。このような方法によれば、はみ出し電力EP_OVERを適切に算出できるので、エンジン回転の噴け上がりを適切に抑制できる。
【0085】
車両1の制御方法は、内燃機関2のトルクTQICEを用いて表現すると次のように換言できる。
【0086】
図11は内燃機関2のはみ出しトルクの説明図である。発電用モータ3の駆動エンジントルクは発電用モータ3の駆動に費やされる分のトルクTQ
ICEであり、発電用モータ3の発電エンジントルク及び損失トルクにより構成される。発電用モータ3の発電エンジントルクは発電に費やされる分のトルクTQ
ICEであり、損失トルクは駆動エンジントルクのうち発電に費やされずに損失となるトルクである。内燃機関2のトルクTQ
ICEは駆動エンジントルク及びはみ出しトルクにより構成される。従って、はみ出しトルクは発電用モータ3の駆動エンジントルクを超える分のトルクTQ
ICEとなる。その一方で、システム入力可能電力EP_SYSに応じた発電用モータ3の駆動エンジントルクは、発電用モータ3の発電により電力に変換可能なトルクTQ
ICEを示すことになる。
【0087】
従って、車両1の制御方法は、はみ出しトルクが少なくともシステム入力可能電力EP_SYSに応じた発電用モータ3の駆動エンジントルクを上回り、且つ内燃機関2が過給されている場合は、内燃機関2のフューエルカットを行うことを含む方法と換言でき、この場合もエンジン回転の噴け上がりを抑制することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0089】
例えば、内燃機関2にはターボチャージャ7以外の過給機が設けられてもよい。また、車両1の制御方法は例えば、単一のコントローラにより実現されてもよい。