IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

<>
  • 特許-ガス分析装置 図1
  • 特許-ガス分析装置 図2
  • 特許-ガス分析装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01N1/22 P
G01N1/22 L
G01N1/22 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023503369
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2021039007
(87)【国際公開番号】W WO2022185604
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021034137
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千田 温子
(72)【発明者】
【氏名】板橋 亨久
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-337458(JP,A)
【文献】特開2016-156689(JP,A)
【文献】特開平06-050950(JP,A)
【文献】特開2003-075307(JP,A)
【文献】特開2007-108120(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0338501(US,A1)
【文献】特開昭59-183367(JP,A)
【文献】特開2000-206013(JP,A)
【文献】特開2012-011267(JP,A)
【文献】特開平03-242530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00 - 1/08 、
B01D 1/00 - 8/00 、24/00 -24/02 、
24/06 、24/16 、24/26 -24/28 、
24/32 、24/36 -25/12 、25/172、
25/19 、25/22 -27/06 、
27/08 -27/10 、29/00 -29/01 、
29/07 、29/085、29/11 -29/13 、
29/17 -29/21 、29/25 -29/33 、
29/37 -29/39 、29/44 -29/50 、
29/60 -29/66 、29/72 -29/74 、
29/88 -33/00 、33/04 -33/048、
33/06 、33/09 、33/13 -33/17 、
33/21 、33/25 -33/29 、
33/327-33/333、33/44 、33/58 、
33/70 、33/80 -35/00 、
35/02 -35/05 、35/10 -35/147、
35/16 -35/30 、36/00 -37/02 、
37/04 、53/26 -53/28 、
G01N 1/00 - 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象ガスが流れる分析対象ガス流路と、
前記分析対象ガス流路に設けられた、前記分析対象ガスを冷却する冷却部と、
前記冷却部において発生した液体が排出されるドレン流路と、
前記ドレン流路に接続された密閉容器と、
前記密閉容器内を、前記ドレン流路に接続されたドレン導入空間とガス導入空間に区切る部材であって、気相の水を該ドレン導入空間から該ガス導入空間に選択的に透過させる選択透過部と、
前記ガス導入空間にガスを導入するガス源と、
前記ガス導入空間内のガスを排出するガス排出口と
を備えるガス分析装置。
【請求項2】
前記密閉容器外に配置された第1端部及び第2端部を有するチューブをさらに備え、
前記選択透過部が前記チューブの前記第1端部と前記第2端部の間に設けられており、
前記ガス源が前記チューブの前記第1端部に接続されている、
請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記ガス源が乾燥ガスを貯留するガスボンベである、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記ガス源が大気を前記ガス導入空間に送給するポンプである、請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項5】
さらに、前記分析対象ガス流路の下流側に設けられた該分析対象ガスを分析する分析部を備え、
前記冷却部が前記分析対象ガス流路の前記分析部よりも上流側に設けられている、
請求項1に記載のガス分析装置。
【請求項6】
ガス分析装置において分析対象ガスを冷却することにより発生した液体を処理するドレン処理方法であって、
前記液体を密閉容器に回収する回収工程と、
前記密閉容器内の前記液体から硝酸及び硫酸を分離することなく水を分離する水分離工程と、
前記水を密閉容器外に排出する水排出工程と
を有する、ドレン処理方法。
【請求項7】
前記水分離工程において、気相の水を選択的に透過させる材料から成る選択透過部によって前記液体から水を分離する、請求項6に記載のドレン処理方法。
【請求項8】
前記水分離工程において、前記選択透過部を有するチューブにガスを導入する、請求項7に記載のドレン処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレンポットを有するガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所やごみ焼却場等の施設では、燃焼により生じた高温の排ガスが排出される。この排ガスに含まれる特定の成分の量が法令で定められた基準値を超えていないことを確認するために、これらの施設ではガス分析装置が用いられている。
【0003】
上述した施設で生じる排ガスには一般に水蒸気が含まれており、このような排ガスをそのまま分析計に導入すると正確な測定ができない。そのため、排ガスのサンプリング地点と分析計を結ぶガス流路の途中には、分析対象ガスを冷却する冷却器が設けられる。このように排ガスを冷却すると、冷却器内で水蒸気が液化し、分析対象ガスから水蒸気が除去される。液化した水(ドレン水)は、ドレン流路(排水管)を通してドレンポットに導入される(例えば特許文献1)。
【0004】
オーバーフロー式のドレンポットは、常時大気開放されている排水口が側面に設けられた貯水容器であり、冷却器から延びるドレン流路の先端が貯水容器内の排水口よりも下側に配置されている。オーバーフロー式のドレンポットでは常時、ドレン流路の先端よりも上側まで水を貯留しておくことにより、外部の気体がドレンポット、ドレン流路及び冷却器を通してガス流路に流入することが防止される。冷却器から水が流入することでドレンポット内の水量が増加してゆくと、排水口からドレンポットの外に水が自然に排出される。
【0005】
密閉式のドレンポットは、開閉弁を有する排水口が設けられた貯水容器であり、冷却器から延びるドレン流路の先端が貯水容器内に挿入されている。排水口の位置は貯水容器の側面でも底面でもよく、ドレン流路の先端の高さは排水口の高さに依らない。密閉式のドレンポットでは、通常は開閉弁が閉鎖されることにより貯水容器が密閉され、それによって外部の気体がガス流路に流入することが防止される。冷却器から水が流入することでドレンポット内の水量が増加してゆくことから、施設の管理者は定期的に、ガス分析装置の動作を停止させたうえで開閉弁を解放し、水を排水口からドレンポットの外に排出する操作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-195327号公報
【文献】特開2017-213477号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「SWTシリーズ」, [online], AGCエンジニアリング株式会社, [2020年6月12日検索], インターネット<URL:https://www.agec.co.jp/product/sunsep/swt.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
冷却器で生じる水は、排ガスに含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物が溶解することで硝酸や硫酸となる。このような水は適切な処理を行わなければ廃棄することができないが、従来のドレンポットでは、冷却器で生じる、硝酸や硫酸を含む水がそのまま排出されてしまう。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、分析対象ガスから発生しドレンポットに回収される水の処理を容易に行うことができるガス分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係るガス分析装置は、
分析対象ガスが流れる分析対象ガス流路と、
前記分析対象ガス流路に設けられた、前記分析対象ガスを冷却する冷却部と、
前記冷却部において発生した液体が排出されるドレン流路と、
前記ドレン流路に接続された密閉容器と、
前記密閉容器内を、前記ドレン流路に接続されたドレン導入空間とガス導入空間に区切る部材であって、気相の水を該ドレン導入空間から該ガス導入空間に選択透過部と、
前記ガス導入空間にガスを導入するガス源と、
前記ガス導入空間内のガスを排出するガス排出口と
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、気相の水を選択的に透過させる選択透過部により、密閉容器(密閉式のドレンポット)内を、ドレン流路に接続されたドレン導入空間と、ガス源によってガスが導入されるガス導入空間に区切る。ガス源によってガス(分析対象ガスとは異なる)をガス導入空間内に導入すると、冷却部で発生しドレン流路から密閉容器のドレン導入空間内に導入された硝酸や硫酸を含む水から、水のみが選択透過部を透過し、ガス導入空間内に入る。ガス導入空間内に入った水は、ガスに取り込まれて、ガス排出口から外部に放出される。その際、ガスには硝酸や硫酸は含まれていないため、当該ガスは何ら処理を行うことなく環境中に放出しても問題とはならない。
【0012】
以上のように、密閉容器内から水が排出され、密閉容器のドレン導入空間内には硝酸や硫酸が濃縮されて貯留される。なお、ドレン導入空間内の硝酸や硫酸は定期的(例えば施設がメンテナンスで停止する際)に回収する必要があるが、従来のようにそれら硝酸や硫酸が水に含まれたままの状態で回収する場合よりも回収の頻度を小さくすることができるため、手間を軽減することができる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、分析対象ガスから発生し密閉容器(密閉式のドレンポット)に回収される水の処理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るガス分析装置の一実施形態を示す概略構成図。
図2】本発明に係るガス分析装置の一変形例を示す概略構成図。
図3】本発明に係るガス分析装置の別の変形例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図3を用いて、本発明に係るガス分析装置の実施形態を説明する。
【0016】
(1) 本実施形態のガス分析装置の構成
本実施形態のガス分析装置10は、火力発電所、ごみ焼却場、工場等の排ガス発生施設90のガス排出部に取り付けられたガス採取プローブ91で採取され、パイプライン92を通じて導入された排ガスに含まれる所定の物質(例えば窒素酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素)の濃度を測定するために用いられる。
【0017】
ガス分析装置10は、ガス取込口11とガス分析部12を備えており、これらは分析対象ガス流路13で接続されている。ガス分析部12には、例えば非分散型赤外(NDIR: Non-Dispersive Infrared)分光計が用いられる。また、分析対象ガス流路13には分析対象ガス用ポンプ15が接続されている。
【0018】
分析装置の校正後に水蒸気を含んだ分析対象ガスを分析装置に導入すると、校正時と測定時で分析装置内の水蒸気の量が異なり測定結果の信頼性が低下する。そのためガス分析装置10は、ガス取込口11からガス分析部12に至る分析対象ガス流路13の途中に冷却部(冷却器)14を備える。分析対象ガスは、冷却部14によって所定の温度まで冷却してからガス分析部12に導入する。本実施形態では冷却部14を1つ備えた構成としたが、複数の冷却部を配置して段階的に分析対象ガスを冷却するようにしてもよい。
【0019】
冷却部14内では、分析対象ガス流路13にドレン流路141が接続されている。ドレン流路141は鉛直下方に向かって伸びている。冷却部14における分析対象ガスの冷却によって生じた水等の液体(ドレン)は、ドレン流路141を通じて後述する密閉容器20に排出される。
【0020】
また、ガス分析装置10は、分析対象ガス流路13の冷却部14よりもガス取込口11寄りにドレンセパレータ16を有する。ドレンセパレータ16は、冷却部14の前段で分析対象ガス流路13内に生じたドレンを排ガスから分離して回収するものである。ドレンセパレータ16にも、鉛直下方に伸びて密閉容器20に達するドレン流路161が設けられている。
【0021】
密閉容器20は密閉式のドレンポットであって、冷却部14及びドレンセパレータ16からドレン流路141、161を通じて導入されるドレンを貯留するものである。密閉容器20の上面には蓋201が設けられており、ガス分析装置10の使用中には蓋201によって密閉容器20内は密閉される。ガス分析装置10のメンテナンスの際には蓋201を取り外し、後述のように密閉容器20内に残留する液体の除去や密閉容器20内の清掃を行うことができる。
【0022】
密閉容器20内にはチューブ21が収容されている。チューブ21は、両端が密閉容器20の外まで伸びている。チューブ21のうち密閉容器20内に配置された一部は選択透過部211となっている。選択透過部211は、気相の水を選択的に透過させるチューブであり、例えば特許文献2や非特許文献1に記載のものが用いられる。これらの文献に記載のチューブは、陽イオン交換基を有するフッ素系陽イオン交換樹脂から成り、チューブの内部と外部の間で水蒸気分圧の低い方に向かって水のみを選択的に透過させることができる(硝酸や硫酸は透過させない)という特性を有する。チューブ21のうち選択透過部211よりも両端側の部分は、選択透過部211の材料とは異なるゴムやプラスチック等から成る。
【0023】
チューブ21の一端(第1端部23)には、ポンプ22(分析対象ガス用ポンプ15とは異なる)の排気口が接続されている。ポンプ22の吸気口側には吸気管24の一端が接続されており、該吸気管24の他端は大気に開放されたガス導入口25となっている。ポンプ22は、分析対象ガスとは別のガスである大気をチューブ21の一端から該チューブ21中の選択透過部211に導入するガス源である。このようにガス源からガスが導入される選択透過部211の内部がガス導入空間210に該当し、チューブ21以外の密閉容器20内の空間がドレン導入空間200に該当する。
【0024】
チューブ21の他端(第2端部)は大気に開放されたガス排出口26となっている。
【0025】
(2) 本実施形態のガス分析装置の動作
本実施形態のガス分析装置10の動作を説明する。排ガス発生施設90が稼働している状態で、制御部(図示せず)による制御の下、ガス取込口11を開放し、分析対象ガス用ポンプ15を動作させる。これにより、ガス採取プローブ91で採取された分析対象ガスがパイプライン92を通じてガス取込口11から取り込まれ、分析対象ガス流路13を通してガス分析部12に導入され、分析が行われる。
【0026】
このように分析が行われている間、分析対象ガス流路13の途中に設けられた冷却部14により分析対象ガスが冷却されることにより、ドレンが発生する。ドレンはドレン流路141を通じて密閉容器20内のドレン導入空間200に排出される。また、ドレンセパレータ16で分析対象ガスから分離されたドレンも、ドレン流路161を通じてドレン導入空間200に排出される。ドレンには、排ガスに含まれる水蒸気が液化した水と共に、排ガスに含まれる窒素酸化物や硫黄酸化物が溶解した硝酸や硫酸の成分が含まれる。
【0027】
分析が行われている間、ポンプ(ガス源)22を稼働させることにより、ガス導入口25からチューブ21に大気を継続的に供給する。密閉容器20内に排出されたドレンの貯留量が増加してゆくと、密閉容器20内に配置された選択透過部211とドレンが接触する。そうすると、チューブ21の一部である選択透過部211の内側、すなわちガス導入空間210が、選択透過部211の外側、すなわちドレン導入空間200よりも水蒸気分圧が低くなるため、ドレンに含まれる水は、選択透過部211の外側から内側に向かって、すなわちドレン導入空間200からガス導入空間210に向かって選択的に(硝酸や硫酸の成分は透過することなく)透過する。
【0028】
このようにガス導入空間210に透過した水は、チューブ21内を通過する大気に取り込まれ、ガス排出口26から排出される。ガス排出口26から排出される気体は、ガス導入口25から取り込んだ大気とドレンから選択的に回収した水しか含まないため、何ら処理を行うことなく環境中に放出することができる。
【0029】
このようにポンプ22からチューブ21への大気の供給を継続的に行うことにより、密閉容器20内から水が排出されてゆく。密閉容器20内には硝酸や硫酸等、水以外の液体が残留するが、このように水が排出されることにより、残留する液体の量を抑えることができる。これにより、水が含まれたままの状態でドレンを回収する場合よりも、密閉容器20内の液体の回収頻度を小さくすることができるため、手間を軽減することができる。回収頻度は密閉容器20の容量にも依るが、例えば排ガス発生施設90の定期検査の1周期分以上の容量を確保すれば、メンテナンス時以外には密閉容器20内のドレンの量に注意する必要が無くなるため、管理を格段に簡素化することができる。
【0030】
(3) 変形例
本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態ではガス源としてポンプ22を用いたが、その代わりに、図2に示したガス分析装置30のようにガスボンベ32を用いてもよい。ガスボンベ32から供給するガスとして、例えば乾燥空気を用いることができる。あるいは、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを用いてもよいし、不活性ガス以外のガスを用いてもよい。ガスボンベ32から乾燥空気等の乾燥気体をチューブ21に導入することにより、チューブ21内の水の分圧を低くすることができ、それによって密閉容器20内からチューブ21内への水蒸気の排出を促進することができる。
【0031】
また、ポンプ22の代わりに、コンプレッサとフィルタレギュレータを組み合わせたものを用いてもよい。フィルタレギュレータは、コンプレッサから供給される大気中に含まれる粉塵等を除去するフィルタとして機能すると共に、チューブ21に供給する大気の圧力を調整する機能を有する。
【0032】
あるいは、ポンプ22を用いる代わりに、分析計12から排出されるガスをガス導入口25から導入するようにしてもよい。
【0033】
上記実施形態では分析対象ガス流路13中に、冷却部14の他にドレンセパレータ16を設けたが、図2に示したガス分析装置30のようにドレンセパレータ16を省略してもよい。なお、図2ではガスボンベ32を設け、ドレンセパレータ16を省略した例を示したが、ガスボンベ32ではなくポンプ22を設けてドレンセパレータ16を省略してもよいし、ガスボンベ32及びドレンセパレータ16を設けてもよい。
【0034】
また、図3に示したガス分析装置40のように、気相の水を選択的に透過させる材料から成る膜(選択透過部)42によって密閉容器20内を2つの空間に仕切り、一方の空間であるドレン導入空間202にドレン流路141(ドレンセパレータ16を設ける場合にはさらにドレン流路161)を接続し、他方の空間であるガス導入空間203にガス源(図3ではポンプ22)からのガス流路41を接続するようにしてもよい。ガス導入空間203にはさらに、ガス排出口26に至るガス排出路410が接続される。なお、この例においても、ポンプ22の代わりにガスボンベ32やコンプレッサとフィルタレギュレータを組み合わせたものを設けてもよいし、分析計12から排出されるガスをガス導入空間203に導入するようにしてもよい。また、この例においてもドレンセパレータ16を省略してもよい。
【0035】
この構成によれば、ドレン流路141(及び161)から供給されるドレンがドレン導入空間202に貯留されている状態で、ガス源(ポンプ22)からガス流路41を通してガスをガス導入空間203に供給することにより、ドレン中の水のみが選択的に膜42を透過してガス導入空間203内に入る。ガス導入空間203内に入った水は、ガスに取り込まれて、ガス排出路410を経てガス排出口26から外部に放出される。
【0036】
[態様]
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0037】
(第1項)
第1項に係るガス分析装置は、
分析対象ガスが流れる分析対象ガス流路と、
前記分析対象ガス流路に設けられた、前記分析対象ガスを冷却する冷却部と、
前記冷却部において発生した液体が排出されるドレン流路と、
前記ドレン流路に接続された密閉容器と、
前記密閉容器内を、前記ドレン流路に接続されたドレン導入空間とガス導入空間に区切る部材であって、気相の水を該ドレン導入空間から該ガス導入空間に選択的に透過させる選択透過部と、
前記ガス導入空間にガスを導入するガス源と、
前記ガス導入空間内のガスを排出するガス排出口と
を備える。
【0038】
第1項に係るガス分析装置によれば、気相の水を選択的に透過させる選択透過部により、密閉容器(密閉式のドレンポット)内を、ドレン流路に接続されたドレン導入空間と、ガス源によってガスが導入されるガス導入空間に区切る。ガス源によってガス(分析対象ガスとは異なる)をガス導入空間内に導入すると、冷却部で発生しドレン流路から密閉容器のドレン導入空間内に導入された硝酸や硫酸を含む水から、水のみが選択透過部を透過し、ガス導入空間内に入る。ガス導入空間内に入った水は、ガスに取り込まれて、ガス排出口から外部に放出される。その際、ガスには硝酸や硫酸は含まれていないため、当該ガスは何ら処理を行うことなく環境中に放出しても問題とはならない。このように密閉容器内から水が排出され、密閉容器のドレン導入空間内には硝酸や硫酸が濃縮されて貯留される。なお、ドレン導入空間内の硝酸や硫酸は定期的(例えば施設がメンテナンスで停止する際)に回収する必要があるが、従来のようにそれら硝酸や硫酸が水に含まれたままの状態で回収する場合よりも回収の頻度を小さくすることができるため、手間を軽減することができる。以上のように、本発明によれば、分析対象ガスから発生し密閉容器(密閉式のドレンポット)に回収される水の処理を容易に行うことができる。
【0039】
(第2項)
第2項に係るガス分析装置は、第1項に係るガス分析装置において、
前記密閉容器外に配置された第1端部及び第2端部を有するチューブをさらに備え、
前記選択透過部が前記チューブの前記第1端部と前記第2端部の間に設けられており、
前記ガス源が前記チューブの前記第1端部に接続されている。
【0040】
第2項に係るガス分析装置によれば、例えば特許文献2や非特許文献1に記載の陽イオン交換基を有するフッ素系陽イオン交換樹脂から成るチューブのように、市販のチューブを用いて選択透過部を容易に構成することができる。
【0041】
(第3項)
第3項に係るガス分析装置は、第1項又は第2項に係るガス分析装置において、前記ガス源が大気を前記ガス導入空間に送給するポンプである。
【0042】
第3項に係るガス分析装置によれば、前記ガスとして大気を用いるため、ガスボンベを用いる場合のようにガスの残量等を管理する必要がなく、管理が容易になる。
【0043】
(第4項)
第4項に係るガス分析装置は、第1項又は第2項に係るガス分析装置において、前記ガス源が乾燥ガスを貯留するガスボンベである。
【0044】
第4項に係るガス分析装置によれば、前記ガスとして乾燥ガス(例えば大気よりも水蒸気の含有率を少なくした空気や窒素ガス等)を用いることにより、チューブ内の水の分圧が低くなり、密閉容器内からチューブ内への水蒸気の排出を促進することができる。
【0045】
(第5項)
第5項に係るガス分析装置は、第1項~第4項のいずれか1項に係るガス分析装置において、
さらに、前記分析対象ガス流路の下流側に設けられた該分析対象ガスを分析する分析部を備え、
前記冷却部が前記分析対象ガス流路の前記分析部よりも上流側に設けられている。
【0046】
第5項に係るガス分析装置によれば、冷却部を分析部よりも上流側に設けることにより、分析部を熱から保護することができる。
【0047】
(第6項)
第6項に係るドレン処理方法は、ガス分析装置において分析対象ガスを冷却することにより発生した液体を処理する方法であって、
前記液体を密閉容器に回収する回収工程と、
前記密閉容器内の前記液体から硝酸及び硫酸を分離することなく水を分離する水分離工程と、
前記水を密閉容器外に排出する水排出工程と
を有する。
【0048】
(第7項)
第7項に係るドレン処理方法は、第6項に係るドレン処理方法の前記水分離工程において、気相の水を選択的に透過させる材料から成る選択透過部によって前記液体から水を分離する。
【0049】
(第8項)
第8項に係るドレン処理方法は、第7項に係るドレン処理方法の前記水分離工程において、前記水蒸気選択透過部を有するチューブにガスを導入する。
【0050】
第6項~第8項に係るドレン処理方法によれば、分析対象ガスから発生し密閉容器に回収される水の処理を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
10、30、40…ガス分析装置
11…ガス取込口
12…ガス分析部
13…分析対象ガス流路
14…冷却部
141、161…ドレン流路
15…分析対象ガス用ポンプ
16…ドレンセパレータ
20…密閉容器
200…ドレン導入空間
201…蓋
202…貯留空間
203…ガス導入空間
21…チューブ
210…ガス導入空間
211…選択透過部
22…ポンプ
23…第1端部
24…吸気管
25…ガス導入口
26…ガス排出口(第2端部)
32…ガスボンベ
41…ガス流路
410…ガス排出路
42…膜(選択透過部)
90…排ガス発生施設
91…ガス採取プローブ
92…パイプライン
図1
図2
図3