(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/203 20060101AFI20240717BHJP
H03H 7/09 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01P1/203
H03H7/09 Z
(21)【出願番号】P 2023505262
(86)(22)【出願日】2022-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2022006799
(87)【国際公開番号】W WO2022190828
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021040872
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021073706
(32)【優先日】2021-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-133805(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
H03H 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力端子と、
第2の入出力端子と、
第3の入出力端子と、
第4の入出力端子と、
前記第1の入出力端子と前記第2の入出力端子との間に接続された第1段の共振回路と、
少なくとも1つの中間段の共振回路と、
前記第3の入出力端子と前記第4の入出力端子との間に接続された最終段の共振回路と、を備えた、フィルタであって、
前記第1段の共振回路および前記最終段の共振回路は、それぞれ、インダクタを含み、
前記中間段の共振回路は、相互に並列に接続されたインダクタとキャパシタとを含み、並列に接続された前記インダクタの一端と前記キャパシタの一端とが基準電位に接続されている、フィルタ。
【請求項2】
前記中間段の共振回路の前記インダクタの線路長は、前記第1段の共振回路と前記最終段の共振回路の少なくとも一方の前記インダクタの線路長より短い、
請求項1に記載された、フィルタ。
【請求項3】
前記第1段の共振回路と前記最終段の共振回路の少なくとも一方の前記インダクタの線路長が、λ/2であり、
前記中間段の共振回路の前記インダクタの線路長が、λ/4である、
請求項2に記載された、フィルタ。
【請求項4】
前記中間段の共振回路が、第2段の共振回路と、第3段の共振回路とを含む、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載された、フィルタ。
【請求項5】
前記中間段の共振回路が2つ以上であり、
2つ以上の前記中間段の共振回路の前記インダクタが、相互に接続されたうえで、基準電位に接続されている、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された、フィルタ。
【請求項6】
前記第1段の共振回路の前記インダクタと、前記最終段の共振回路の前記インダクタとが、キャパシタを介して、相互に接続されている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された、フィルタ。
【請求項7】
前記第1の入出力端子と前記第1段の共振回路との間、前記第2の入出力端子と前記第1段の共振回路との間、前記第3の入出力端子と前記最終段の共振回路との間、前記第4の入出力端子と前記最終段の共振回路との間の少なくとも1つに、インダクタが設けられた、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載された、フィルタ。
【請求項8】
前記第1の入出力端子と前記第1段の共振回路との間、前記第2の入出力端子と前記第1段の共振回路との間、前記第3の入出力端子と前記最終段の共振回路との間、前記第4の入出力端子と前記最終段の共振回路との間に、それぞれインダクタが設けられた、
請求項7に記載された、フィルタ。
【請求項9】
複数の誘電体層が積層され、外表面に前記第1の入出力端子と前記第2の入出力端子と前記第3の入出力端子と前記第4の入出力端子とが設けられた積層体と、
前記誘電体層に設けられた線路状導体パターンと、を備え、
前記第1段の共振回路、前記最終段の共振回路、前記中間段の共振回路は、それぞれ、前記インダクタの少なくとも一部分に、前記線路状導体パターンを含み、
前記第1段の共振回路と前記最終段の共振回路の少なくとも一方の前記線路状導体パターンと、
前記中間段の共振回路の前記線路状導体パターンが、
前記積層体の同一の誘電体層に設けられている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載された、フィルタ。
【請求項10】
前記積層体の同一の誘電体層に設けられている、
前記第1段の共振回路と前記最終段の共振回路の少なくとも一方の前記線路状導体パターンがU字形状の線路状導体パターンであり、
前記中間段の共振回路の前記線路状導体パターンがU字形状の線路状導体パターンであり、
前記U字形状の線路状導体パターンは、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分とを有し、前記円弧状の部分から前記開口側の部分に向う方向を、U字形状の長さ方向とし、
前記第1段の共振回路と前記最終段の共振回路の少なくとも一方の前記線路状導体パターンは、前記中間段の共振回路の前記線路状導体パターンよりも大きく、
前記第1段の共振回路と前記最終段の共振回路の少なくとも一方の前記線路状導体パターンと、前記中間段の共振回路の前記線路状導体パターンとは、前記U字形状の長さ方向を揃えて配置されている、
請求項9に記載された、フィルタ。
【請求項11】
前記中間段の共振回路が、第2段の共振回路と、第3段の共振回路とを含み、
前記第1段の共振回路、前記第2段の共振回路、前記第3段の共振回路、前記最終段の共振回路は、それぞれの前記線路状導体パターンが、前記積層体の同一の誘電体層に設けられ、
前記第1段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンと、前記第2段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンとは、前記第1段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンの内側に、前記第2段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンが、前記U字形状の長さ方向を揃えて配置され、
前記最終段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンと、前記第3段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンとは、前記最終段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンの内側に、前記第3段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンが、前記U字形状の長さ方向を揃えて配置されている、
請求項10に記載された、フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対の平衡入出力端子と、他の1対の平衡入出力端子とを備えるフィルタに関する。また、本発明は、1対の平衡入出力端子と、他の1対の平衡入出力端子と、複数の誘電体層を含む積層体とを備える、積層型のフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明にとって参考となるフィルタが、特許文献1(特開2007-208395号公報)に開示されている。特許文献1のフィルタは、不平衡入出力端子と、1対の平衡入出力端子との間に、複数のλ/2の共振器が設けられている。
【0003】
特許文献1のフィルタは、平衡入力及び不平衡出力のフィルタ、または、不平衡入力及び平衡出力のフィルタである。
【0004】
また、本発明にとって参考となる別のフィルタが、特許文献2(特許第4784017号公報)に開示されている。特許文献2のフィルタは、1つの積層体の内部に、2つのローパスフィルタが構成されている。
【0005】
特許文献2のフィルタは、信号が一方のローパスフィルタを通過するとき、他方のローパスフィルタをグランドとして使用することができるため、グランドを省略できるという特長を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-208395号公報
【文献】特許第4784017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のフィルタは、平衡入力及び不平衡出力のフィルタ、または、不平衡入力及び平衡出力のフィルタであるため、そのままでは、位相が180度異なる2つの信号からなる、デファレンシャルモードの信号を通すことができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1のフィルタは、複数のλ/2の共振器を含んでいるため、サイズが大きいという問題があった。すなわち、λ/2の共振器の線路長は、λ/4の共振器の線路長に比べて長いため、フィルタのサイズが大きくなるという問題があった。
【0009】
一方、特許文献2のフィルタは、1つの積層体の内部に2つのローパスフィルタが構成されているため、デファレンシャルモードの信号を通すことが可能である。しかしながら、特許文献2のフィルタは、デファレンシャルモードの信号だけではなく、位相が同じ2つの信号からなる、コモンモードの信号までもが通過してしまうという問題があった。一般的に、1対の平衡入出力端子と、他の1対の平衡入出力端子とを備えるフィルタにおいては、デファレンシャルモードの信号が通過し、コモンモードの信号の通過は抑制されることが期待される。しかし、特許文献2のフィルタは、単に1つの積層体の内部に2つのローパスフィルタを構成したものであるため、コモンモードの信号までもが通過してしまうという問題があった。
【0010】
そこで本発明は、デファレンシャルモードの信号が通過し、コモンモードの信号の通過が抑制された、フィルタを提供することを目的とする。また、本発明は、小型化が可能な、積層型のフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した従来の課題を解決するため、本発明の一実施態様にかかるフィルタは、第1の入出力端子と、第2の入出力端子と、第3の入出力端子と、第4の入出力端子と、第1の入出力端子と第2の入出力端子との間に接続された第1段の共振回路と、少なくとも1つの中間段の共振回路と、第3の入出力端子と第4の入出力端子との間に接続された最終段の共振回路と、を備えた、フィルタであって、第1段の共振回路および最終段の共振回路は、それぞれ、インダクタを含み、中間段の共振回路は、相互に並列に接続されたインダクタとキャパシタとを含み、並列に接続されたインダクタの一端とキャパシタの一端とが基準電位に接続されたものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施態様にかかるフィルタは、デファレンシャルモードの信号を通過させるが、コモンモードの信号の通過は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態のフィルタの等価回路図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のフィルタの斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態のフィルタの分解斜視図である。
【
図4】
図4(A)~(C)は、それぞれ、本発明の第1実施形態のフィルタの特性を示すグラフである。
【
図5】本発明の第1実施形態の変形例のフィルタの要部分解斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の変形例のフィルタの等価回路図である。
【
図7】本発明の第2実施形態のフィルタの等価回路図である。
【
図8】本発明の第2実施形態のフィルタの分解斜視図である。
【
図9】
図9(A)~(C)は、それぞれ、本発明の第2実施形態のフィルタの特性を示すグラフである。
【
図10】本発明の第2実施形態の変形例のフィルタの要部分解斜視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の変形例のフィルタの等価回路図である。
【
図12】
図12(A)、(B)は、それぞれ、本発明の第2実施形態のフィルタの特性と、本発明の第2実施形態の変形例のフィルタの特性とを、比較して示したグラフである。
【
図13】本発明の第3実施形態のフィルタの等価回路図である。
【
図14】本発明の第3実施形態のフィルタの分解斜視図である。
【
図15】比較のために用意したフィルタの等価回路図である。
【
図16】比較のために用意したフィルタの分解斜視図である。
【
図17】
図17(A)、(B)は、それぞれ、本発明の第3実施形態のフィルタの特性を示すグラフである。
【
図18】
図18(A)~(C)は、それぞれ、本発明の第3実施形態のフィルタの特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0015】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0016】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態のフィルタ100を示す。ただし、
図1は、フィルタ100の等価回路図である。
【0017】
フィルタ100は、第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2と、第3の入出力端子T3と、第4の入出力端子T4とを備える。第1の入出力端子T1は1対の平衡入出力端子の一方であり、第2の入出力端子T2は1対の平衡入出力端子の他方である。第3の入出力端子T3は他の1対の平衡入出力端子の一方であり、第4の入出力端子T4は1対の平衡入出力端子の他方である。フィルタ100は、第1の共振回路RC1と、第2の共振回路RC2と、第3の共振回路RC3と、第4の共振回路RC4と、キャパシタC23とを備える。第1の共振回路RC1は、第1段の共振回路である。第2の共振回路RC2と、第3の共振回路RC3とは、中間段の共振回路である。第4の共振回路RC4は、最終段の共振回路である。
【0018】
第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2との間に、第1の共振回路RC1が接続されている。第1の共振回路RC1は、インダクタL1を含む。本実施形態においては、インダクタL1の線路長はλ/2である。線路長がλ/2のインダクタL1を、λ/2の共振器と考えてもよい。ただし、インダクタL1の線路長は、λ/2には限られない。
【0019】
インダクタL1の一端が、キャパシタC1aを介して基準電位に接続されている。インダクタL1の他端が、キャパシタC1bを介して基準電位に接続されている。なお、本実施形態においては、グランドを基準電位としている。ただし、基準電位は、グランドには限られない。
【0020】
キャパシタC1aとキャパシタC1bとの間に、キャパシタC1cが接続されている。キャパシタC1cは、キャパシタC1aおよび/またはキャパシタC1bの容量を調整するために設けられている。キャパシタC1cは、省略することが可能である。
【0021】
第2の共振回路RC2は、相互に並列に接続されたインダクタL2とキャパシタC2とを含む。本実施形態においては、インダクタL2の線路長はλ/4である。線路長がλ/4のインダクタL2を、λ/4の共振器と考えてもよい。ただし、インダクタL2の線路長は、λ/4には限られない。
【0022】
インダクタL2の一端とキャパシタC2の一端とが、基準電位に接続されている。
【0023】
第3の共振回路RC3は、相互に並列に接続されたインダクタL3とキャパシタC3とを含む。本実施形態においては、インダクタL3の線路長はλ/4である。線路長がλ/4のインダクタL3を、λ/4の共振器と考えてもよい。ただし、インダクタL3の線路長は、λ/4には限られない。
【0024】
インダクタL3の一端とキャパシタC3の一端とが、基準電位に接続されている。
【0025】
インダクタL2の他端とキャパシタC2の他端とが、キャパシタC23の一端に接続されている。インダクタL3の他端とキャパシタC3の他端とが、キャパシタC23の他端に接続されている。このため、インダクタL2とキャパシタC2とは、キャパシタC23を介して、インダクタL3とキャパシタC3とに接続されている。
【0026】
第3の入出力端子T3と、第4の入出力端子T4との間に、第4の共振回路RC4が接続されている。第4の共振回路RC4は、インダクタL4を含む。本実施形態においては、インダクタL4の線路長はλ/2である。線路長がλ/2のインダクタL4を、λ/2の共振器と考えてもよい。ただし、インダクタL4の線路長は、λ/2には限られない。
【0027】
インダクタL4の一端が、キャパシタC4aを介して基準電位に接続されている。インダクタL4の他端が、キャパシタC4bを介して基準電位に接続されている。
【0028】
キャパシタC4aとキャパシタC4bとの間に、キャパシタC4cが接続されている。キャパシタC4cは、キャパシタC4aおよび/またはキャパシタC4bの容量を調整するために設けられている。キャパシタC4cは、省略することが可能である。
【0029】
フィルタ100における、主な、共振回路の結合関係について説明する。
【0030】
第1の共振回路RC1のインダクタL1と第2の共振回路RC2のインダクタL2とが、磁気的に結合している。この結果、第1の共振回路RC1と第2の共振回路RC2とが、電磁界結合している。
【0031】
第2の共振回路RC2のインダクタL2と第3の共振回路RC3のインダクタL3とが、磁気的に結合している。また、第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3とが、キャパシタC23の容量により容量的に結合している。この結果、第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3とが、電磁界結合している。
【0032】
第3の共振回路RC3のインダクタL3と第4の共振回路RC4のインダクタL4とが、磁気的に結合している。この結果、第3の共振回路RC3と第4の共振回路RC4とが、電磁界結合している。
【0033】
なお、以上は、フィルタ100における、主な共振回路の結合関係を説明したものであり、これら以外に、共振回路同士が結合している場合もある。
【0034】
フィルタ100は、複数の誘電体層1a~1hが積層された積層体1を備える積層型のフィルタである。
【0035】
図2は、フィルタ100の斜視図である。
図3は、フィルタ100の分解斜視図である。
【0036】
誘電体層1a~1hの誘電率は、空気の誘電率よりも大きければよい。誘電体層1a~1h(積層体1)の材質は任意であり、セラミックや樹脂など、種々の誘電体材料を使用することができる。
【0037】
積層体1は、誘電体層1a~1hが積層された高さ方向Hと、高さ方向Hに直交する幅方向Wと、高さ方向Hおよび幅方向Wの双方に直交する長さ方向Lを有する。積層体1は、直方体形状(立方体形状を含む)からなる。ただし、幅方向Wの寸法≦長さ方向Lの寸法とする。
【0038】
積層体1の幅方向Wに対向する、一方の側面に第1の入出力端子T1とグランド端子TGと第3の入出力端子T3とが設けられ、他方の側面に第2の入出力端子T2とグランド端子TGと第4の入出力端子T4とが設けられている。なお、第1の入出力端子T1、第2の入出力端子T2、第3の入出力端子T3、第4の入出力端子T4、2つのグランド端子TGは、それぞれ、両端部分が積層体1の高さ方向Hに対向する2つの面にそれぞれ延長され、折り返されている。
【0039】
図3を参照して、誘電体層1a~1hの構成について説明する。積層体1は、ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nを含む。
【0040】
誘電体層1aにおいて、幅方向Wに対向する、一方の側面に、第1の入出力端子T1とグランド端子TGと第3の入出力端子T3とが設けられ、他方の側面に、第2の入出力端子T2とグランド端子TGと第4の入出力端子T4とが設けられている。
【0041】
なお、誘電体層1b~1hにおいても、幅方向Wに対向する、一方の側面に第1の入出力端子T1、グランド端子TG、第3の入出力端子T3が設けられ、他方の側面に第2の入出力端子T2、グランド端子TG、第4の入出力端子T4が設けられているが、これらの端子についての説明と、図面への符号の付与とを省略する場合がある。
【0042】
誘電体層1aの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、グランド導体パターン2が設けられている。グランド導体パターン2が、2つのグランド端子TGに、それぞれ接続されている。
【0043】
ビア導体3a、3bは、誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0044】
誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4a、4b、4c、4d、4e、4fが設けられている。
【0045】
ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3hは、誘電体層1cの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0046】
誘電体層1cの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4g、4h、4iが設けられている。
【0047】
ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3hは、誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0048】
誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4j、4kが設けられている。
【0049】
キャパシタ導体パターン4jが、ビア導体3eによって、キャパシタ導体パターン4cに接続されている。
【0050】
キャパシタ導体パターン4kが、ビア導体3fによって、キャパシタ導体パターン4dに接続されている。
【0051】
誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5a、5b、5c、5dが設けられている。
【0052】
線路状導体パターン5aは、第1の入出力端子T1に接続されている。また、線路状導体パターン5aは、ビア導体3cによって、キャパシタ導体パターン4aに接続されている。キャパシタ導体パターン4aは、ビア導体3cと線路状導体パターン5aを経由して、第1の入出力端子T1に接続されている。
【0053】
線路状導体パターン5bは、第2の入出力端子T2に接続されている。また、線路状導体パターン5bは、ビア導体3dによって、キャパシタ導体パターン4bに接続されている。キャパシタ導体パターン4bは、ビア導体3dと線路状導体パターン5bを経由して、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0054】
線路状導体パターン5cは、第3の入出力端子T3に接続されている。また、線路状導体パターン5cは、ビア導体3gによって、キャパシタ導体パターン4eに接続されている。キャパシタ導体パターン4eは、ビア導体3gと線路状導体パターン5cを経由して、第3の入出力端子T3に接続されている。
【0055】
線路状導体パターン5dは、第4の入出力端子T4に接続されている。また、線路状導体パターン5dは、ビア導体3hによって、キャパシタ導体パターン4fに接続されている。キャパシタ導体パターン4fは、ビア導体3hと線路状導体パターン5dを経由して、第4の入出力端子T4に接続されている。
【0056】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1eの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0057】
誘電体層1eの高さ方向Hに対向する2つの面には、導体パターンは設けられていない。
【0058】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0059】
誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5eと、線路状導体パターン5fと、線路状導体パターン5gと、線路状導体パターン5hとが設けられている。線路状導体パターン5e~5hは、平面視してU字形状であり、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分を有する。線路状導体パターン5e~5hにおいて、円弧状の部分から開口側の部分に向かう方向を、U字形状の長さ方向とする。
【0060】
線路状導体パターン5eは、線路状導体パターン5fより大きい。線路状導体パターン5eと線路状導体パターン5fは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されている。線路状導体パターン5fは、線路状導体パターン5eの内側に配置されている。
【0061】
線路状導体パターン5hは、線路状導体パターン5gより大きい。線路状導体パターン5gと線路状導体パターン5hは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されている。線路状導体パターン5gは、線路状導体パターン5hの内側に配置されている。
【0062】
線路状導体パターン5fの開口側の部分と、線路状導体パターン5gの開口側の部分とが、対向して配置されている。線路状導体パターン5eの開口側の部分と、線路状導体パターン5hの開口側の部分とが、対向して配置されている。
【0063】
積層体1を高さ方向Hに見たとき、線路状導体パターン5eと、線路状導体パターン5fと、線路状導体パターン5gと、線路状導体パターン5hとが、この順番に、積層体1の長さ方向Lに沿って配置されている。
【0064】
線路状導体パターン5eは、ビア導体3kによって、線路状導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン5eは、ビア導体3lによって、線路状導体パターン5bに接続されている。
【0065】
線路状導体パターン5fは、ビア導体3iによって、キャパシタ導体パターン4jに接続されている。線路状導体パターン5fは、ビア導体3aによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0066】
線路状導体パターン5gは、ビア導体3jによって、キャパシタ導体パターン4kに接続されている。線路状導体パターン5gは、ビア導体3bによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0067】
線路状導体パターン5hは、ビア導体3mによって、線路状導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン5hは、ビア導体3nによって、線路状導体パターン5dに接続されている。
【0068】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1gの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0069】
誘電体層1gの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5iと、線路状導体パターン5jと、線路状導体パターン5kと、線路状導体パターン5lとが設けられている。線路状導体パターン5i~5lは、平面視してU字形状であり、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分を有する。
【0070】
線路状導体パターン5iは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5eの直上に、線路状導体パターン5eと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5jは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5fの直上に、線路状導体パターン5fと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5kは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5gの直上に、線路状導体パターン5gと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5lは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5hの直上に、線路状導体パターン5fと同じ形状および大きさで設けられている。
【0071】
すなわち、線路状導体パターン5i、5j、5k、5lは、同じ形状および大きさの線路状導体パターン5e、5f、5g、5hと、高さ方向Hに重ねて設けられている。このため、フィルタ100は、Q値が高い。なお、電気回路的には、線路状導体パターン5i、5j、5k、5lを省略してもよい。
【0072】
線路状導体パターン5iは、ビア導体3kによって、線路状導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン5iは、ビア導体3lによって、線路状導体パターン5bに接続されている。
【0073】
線路状導体パターン5jは、ビア導体3iによって、キャパシタ導体パターン4jに接続されている。線路状導体パターン5jは、ビア導体3aによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0074】
線路状導体パターン5kは、ビア導体3jによって、キャパシタ導体パターン4kに接続されている。線路状導体パターン5kは、ビア導体3bによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0075】
線路状導体パターン5lは、ビア導体3mによって、線路状導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン5lは、ビア導体3nによって、線路状導体パターン5dに接続されている。
【0076】
誘電体層1hは保護層である。なお、誘電体層1hの高さ方向Hに対向する2つの面の一方には、図示を省略しているが、第1の入出力端子T1、第2の入出力端子T2、第3の入出力端子T3、第4の入出力端子T4、グランド端子TGの配置を示す、方向性マークが設けられている。
【0077】
フィルタ100は、以上の構造からなる。
【0078】
第1の入出力端子T1、第2の入出力端子T2、第3の入出力端子T3、第4の入出力端子T4、グランド端子TG、グランド導体パターン2、ビア導体3a~3n、キャパシタ導体パターン4a~4k、線路状導体パターン5a~5lの材質は、それぞれ任意であり、種々の導電性材料を使用することができる。
【0079】
次に、積層型のフィルタ100の等価回路と、構造との関係について説明する。
【0080】
第1の共振回路RC1のインダクタL1は、第1の入出力端子T1を起点にして、線路状導体パターン5a、ビア導体3k、線路状導体パターン5e、5i、ビア導体3l、線路状導体パターン5bを経由し、第2の入出力端子T2を終点とする導電経路によって構成されている。
【0081】
キャパシタC1aは、キャパシタ導体パターン4aと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4aは、ビア導体3cと線路状導体パターン5aを経由して、第1の入出力端子T1に接続されている。
【0082】
キャパシタC1bは、キャパシタ導体パターン4bと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4bは、ビア導体3dと線路状導体パターン5bを経由して、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0083】
キャパシタC1cは、直列に接続された、キャパシタ導体パターン4aとキャパシタ導体パターン4gとの間の容量と、キャパシタ導体パターン4gとキャパシタ導体パターン4bとの間の容量とによって構成されている。
【0084】
第2の共振回路RC2のインダクタL2は、キャパシタ導体パターン4jを起点として、ビア導体3i、線路状導体パターン5f、5j、ビア導体3aを経由し、グランド導体パターン2を終点とする導電経路によって構成されている。
【0085】
第2の共振回路RC2のキャパシタC2は、キャパシタ導体パターン4cとグランド導体パターン2との間の容量とによって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4cは、ビア導体3eによって、キャパシタ導体パターン4jに接続されている。
【0086】
第3の共振回路RC3のインダクタL3は、キャパシタ導体パターン4kを起点として、ビア導体3j、線路状導体パターン5g、5k、ビア導体3bを経由し、グランド導体パターン2を終点とする導電経路によって構成されている。
【0087】
第3の共振回路RC3のキャパシタC3は、キャパシタ導体パターン4dとグランド導体パターン2との間の容量とによって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4dは、ビア導体3fによって、キャパシタ導体パターン4kに接続されている。
【0088】
キャパシタC23は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン4c、4jとキャパシタ導体パターン4hとの間の容量と、キャパシタ導体パターン4hとキャパシタ導体パターン4d、4kとの間の容量とによって構成されている。
【0089】
第4の共振回路RC4のインダクタL4は、第3の入出力端子T3を起点にして、線路状導体パターン5c、ビア導体3m、線路状導体パターン5h、5l、ビア導体3n、線路状導体パターン5dを経由し、第4の入出力端子T4を終点とする導電経路によって構成されている。
【0090】
キャパシタC4aは、キャパシタ導体パターン4eと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4eは、ビア導体3gと線路状導体パターン5cを経由して、第3の入出力端子T3に接続されている。
【0091】
キャパシタC4bは、キャパシタ導体パターン4fと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4fは、ビア導体3hと線路状導体パターン5dを経由して、第4の入出力端子T4に接続されている。
【0092】
キャパシタC4cは、直列に接続された、キャパシタ導体パターン4eとキャパシタ導体パターン4iとの間の容量と、キャパシタ導体パターン4iとキャパシタ導体パターン4fとの間の容量とによって構成されている。
【0093】
以上により、
図2、
図3に示すフィルタ100は、
図1に示す等価回路を備えている。
【0094】
図4(A)~(C)に、フィルタ100の特性を示す。
【0095】
図4(A)は、フィルタ100のSdd11特性、Sdd21特性、Sdd22特性を示している。Sdd21特性は通過特性である。Sdd11特性とSdd22特性は反射特性である。また、
図4(B)は、フィルタ100のより広い周波数範囲でのSdd21特性を示している。
【0096】
図4(A)、(B)から分かるように、フィルタ100は、バンドパスフィルタとして、良好な周波数特性を備えている。具体的には、通過帯域の外側の低周波側、および、通過帯域の外側の高周波側に、それぞれ急峻な減衰が得られている。
【0097】
図4(C)は、フィルタ100のCMRR特性を示している。より具体的には、フィルタ100のSdc21/Sdd21特性、Scd21/Sdd21特性、Scc21/Sdd21特性を示している。
【0098】
Sdc21/Sdd21特性、Scd21/Sdd21特性から分かるように、フィルタ100は、コモンモードの入力信号がデファレンシャルモードの信号として出力されたり、デファレンシャルモードの入力信号がコモンモードの信号として出力されたりすることが抑制されている。
【0099】
また、Scc21/Sdd21特性から分かるように、フィルタ100は、デファレンシャルモードの信号を良好に通過させる一方、コモンモードの信号の通過が良好に抑制されている。
【0100】
第1実施形態のフィルタ100は、次のような特長を備えている。
【0101】
フィルタ100は、上述したとおり、デファレンシャルモードの信号を良好に通過させる一方、コモンモードの信号の通過が良好に抑制されている。
【0102】
フィルタ100は、中間段の共振回路に含まれるインダクタの線路長がλ/4であるため、小型化が可能である。
【0103】
フィルタ100は、第1段の共振回路および/または最終段の共振回路に含まれる大きなU字形状の線路状導体パターンの内側に、中間段の共振回路に含まれる小さなU字形状の線路状導体パターンが、U字形状の長さ方向を揃えて配置されることによって、これらの線路状導体パターンが設けられた誘電体層の面を有効に活用している。したがって、フィルタ100は、平面方向(幅方向×長さ方向)において、小型化が可能である。
【0104】
[第1実施形態の変形例:フィルタ110]
図5、
図6に、本発明の第1実施形態の変形例のフィルタ110を示す。
図5は、フィルタ110の要部分解斜視図である。
図6は、フィルタ110の等価回路図である。
【0105】
フィルタ110は、フィルタ100の構成の一部に変更を加えた。具体的には、フィルタ100では、誘電体層1f、1gに設けられた、線路状導体パターン5f、5jと線路状導体パターン5g、5kとが相互に独立しており、線路状導体パターン5f、5jがビア導体3aによってグランド導体パターン2に接続され、線路状導体パターン5g、5kがビア導体3bによってグランド導体パターン2に接続されていた。フィルタ110では、線路状導体パターン15f、15jと、線路状導体パターン15g、15kとが相互に接続されており、これらはビア導体13cによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0106】
フィルタ110は、フィルタ100に比べて、第2の共振回路RC2に含まれるインダクタL2と、第3の共振回路RC3に含まれるインダクタL3との磁気的な結合が強い。
【0107】
このように、中間段の共振回路に含まれるインダクタ同士が相互に接続され、共通のビア導体でグランドに接続されていることにより、相互に接続されたインダクタンス同士の磁気的な結合が強くなる。そして、フィルタの周波数特性を調整することができる。
【0108】
[第2実施形態]
図7に、本発明の第2実施形態のフィルタ200を示す。ただし、
図7は、フィルタ200の等価回路図である。
【0109】
フィルタ200は、第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2と、第3の入出力端子T3と、第4の入出力端子T4とを備える。フィルタ200は、第1の共振回路RC1と、第2の共振回路RC2と、第3の共振回路RC3と、第4の共振回路RC4と、キャパシタC23とを備える。
【0110】
第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2との間に、第1の共振回路RC1が接続されている。第1の共振回路RC1は、インダクタL1を含む。本実施形態においては、インダクタL1の線路長はλ/2である。
【0111】
インダクタL1の一端が、キャパシタC1aを介して基準電位に接続されている。インダクタL1の他端が、キャパシタC1bを介して基準電位に接続されている。なお、フィルタ200では、上述した第1実施形態のフィルタ100が備えていたキャパシタC1cが省略されている。
【0112】
第2の共振回路RC2は、相互に並列に接続されたインダクタL2とキャパシタC2とを含む。本実施形態においては、インダクタL2の線路長はλ/4である。
【0113】
インダクタL2の一端とキャパシタC2の一端とが、基準電位に接続されている。
【0114】
第3の共振回路RC3は、相互に並列に接続されたインダクタL3とキャパシタC3とを含む。本実施形態においては、インダクタL3の線路長はλ/4である。
【0115】
インダクタL3の一端とキャパシタC3の一端とが、基準電位に接続されている。
【0116】
インダクタL2の他端とキャパシタC2の他端とが、キャパシタC23の一端に接続されている。インダクタL3の他端とキャパシタC3の他端とが、キャパシタC23の他端に接続されている。このため、インダクタL2とキャパシタC2とは、キャパシタC23を介して、インダクタL3とキャパシタC3とに接続されている。
【0117】
第3の入出力端子T3と、第4の入出力端子T4との間に、第4の共振回路RC4が接続されている。第4の共振回路RC4は、インダクタL4を含む。本実施形態においては、インダクタL4の線路長はλ/2である。
【0118】
インダクタL4の一端が、キャパシタC4aを介して基準電位に接続されている。インダクタL4の他端が、キャパシタC4bを介して基準電位に接続されている。なお、フィルタ200では、上述した第1実施形態のフィルタ100が備えていたキャパシタC4cが省略されている。
【0119】
フィルタ200における、主な、共振回路の結合関係について説明する。
【0120】
第1の共振回路RC1のインダクタL1と第2の共振回路RC2のインダクタL2とが、磁気的に結合している。この結果、第1の共振回路RC1と第2の共振回路RC2とが、電磁界結合している。
【0121】
第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3とが、キャパシタC23の容量により容量的に結合している。この結果、第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3とが、電磁界結合している。
【0122】
第3の共振回路RC3のインダクタL3と第4の共振回路RC4のインダクタL4とが、磁気的に結合している。この結果、第3の共振回路RC3と第4の共振回路RC4とが、電磁界結合している。
【0123】
第1の共振回路RC1のインダクタL1と第4の共振回路RC4のインダクタL4とが、磁気的に結合している。この結果、第1の共振回路RC1と第4の共振回路RC4とが、電磁界結合している。
【0124】
なお、以上は、フィルタ200における、主な共振回路の結合関係を説明したものであり、これら以外に、共振回路同士が結合している場合もある。
【0125】
フィルタ200は、複数の誘電体層1a~1iが積層された積層体1を備える積層型のフィルタである。
【0126】
【0127】
積層体1の幅方向Wに対向する、一方の側面に第1の入出力端子T1とグランド端子TGと第3の入出力端子T3とが設けられ、他方の側面に第2の入出力端子T2とグランド端子TGと第4の入出力端子T4とが設けられている。
【0128】
図8を参照して、誘電体層1a~1iの構成について説明する。積層体1は、ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3l、3m、3nを含む。
【0129】
誘電体層1aにおいて、幅方向Wに対向する、一方の側面に、第1の入出力端子T1とグランド端子TGと第3の入出力端子T3とが設けられ、他方の側面に、第2の入出力端子T2とグランド端子TGと第4の入出力端子T4とが設けられている。なお、誘電体層1b~1iにおいても、幅方向Wに対向する、一方の側面に第1の入出力端子T1、グランド端子TG、第3の入出力端子T3が設けられ、他方の側面に第2の入出力端子T2、グランド端子TG、第4の入出力端子T4が設けられている。
【0130】
誘電体層1aの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、グランド導体パターン2aが設けられている。グランド導体パターン2aが、2つのグランド端子TGに、それぞれ接続されている。
【0131】
ビア導体3a、3bは、誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0132】
誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4a、4b、4c、4d、4e、4fが設けられている。
【0133】
ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3hは、誘電体層1cの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0134】
誘電体層1cの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、グランド導体パターン2b、2cと、キャパシタ導体パターン4gとが設けられている。グランド導体パターン2bは、一方のグランド端子TGに接続されている。グランド導体パターン2cは、他方のグランド端子TGに接続されている。
【0135】
ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3hは、誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0136】
誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4h、4iが設けられている。
【0137】
キャパシタ導体パターン4hが、ビア導体3eによって、キャパシタ導体パターン4cに接続されている。
【0138】
キャパシタ導体パターン4iが、ビア導体3fによって、キャパシタ導体パターン4dに接続されている。
【0139】
誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5a、5b、5c、5dが設けられている。
【0140】
線路状導体パターン5aは、第1の入出力端子T1に接続されている。また、線路状導体パターン5aは、ビア導体3cによって、キャパシタ導体パターン4aに接続されている。キャパシタ導体パターン4aは、ビア導体3cと線路状導体パターン5aを経由して、第1の入出力端子T1に接続されている。
【0141】
線路状導体パターン5bは、第2の入出力端子T2に接続されている。また、線路状導体パターン5bは、ビア導体3dによって、キャパシタ導体パターン4bに接続されている。キャパシタ導体パターン4bは、ビア導体3dと線路状導体パターン5bを経由して、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0142】
線路状導体パターン5cは、第3の入出力端子T3に接続されている。また、線路状導体パターン5cは、ビア導体3gによって、キャパシタ導体パターン4eに接続されている。キャパシタ導体パターン4eは、ビア導体3gと線路状導体パターン5cを経由して、第3の入出力端子T3に接続されている。
【0143】
線路状導体パターン5dは、第4の入出力端子T4に接続されている。また、線路状導体パターン5dは、ビア導体3hによって、キャパシタ導体パターン4fに接続されている。キャパシタ導体パターン4fは、ビア導体3hと線路状導体パターン5dを経由して、第4の入出力端子T4に接続されている。
【0144】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1eの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0145】
誘電体層1eの高さ方向Hに対向する2つの面には、導体パターンは設けられていない。
【0146】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0147】
誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面には、導体パターンは設けられていない。
【0148】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1gの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0149】
誘電体層1gの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5eと、線路状導体パターン5fと、線路状導体パターン5gと、線路状導体パターン5hとが設けられている。線路状導体パターン5e~5hは、平面視してU字形状であり、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分を有する。線路状導体パターン5e~5hにおいて、円弧状の部分から開口側の部分に向かう方向を、U字形状の長さ方向とする。
【0150】
線路状導体パターン5eは、線路状導体パターン5fより大きい。線路状導体パターン5eと線路状導体パターン5fは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されている。線路状導体パターン5fは、線路状導体パターン5eの内側に配置されている。
【0151】
線路状導体パターン5hは、線路状導体パターン5gより大きい。線路状導体パターン5gと線路状導体パターン5hは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されている。線路状導体パターン5gは、線路状導体パターン5hの内側に配置されている。
【0152】
線路状導体パターン5eの円弧状の部分と、線路状導体パターン5hの円弧状の部分とが、対向して配置されている。
【0153】
積層体1を高さ方向Hに見たとき、線路状導体パターン5fと、線路状導体パターン5eと、線路状導体パターン5hと、線路状導体パターン5gとが、この順番に、積層体1の長さ方向Lに沿って配置されている。
【0154】
線路状導体パターン5eは、ビア導体3kによって、線路状導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン5eは、ビア導体3lによって、線路状導体パターン5bに接続されている。
【0155】
線路状導体パターン5fは、ビア導体3iによって、キャパシタ導体パターン4hに接続されている。線路状導体パターン5fは、ビア導体3aによって、グランド導体パターン2aに接続されている。
【0156】
線路状導体パターン5gは、ビア導体3jによって、キャパシタ導体パターン4iに接続されている。線路状導体パターン5gは、ビア導体3bによって、グランド導体パターン2aに接続されている。
【0157】
線路状導体パターン5hは、ビア導体3mによって、線路状導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン5hは、ビア導体3nによって、線路状導体パターン5dに接続されている。
【0158】
ビア導体3a、3b、3i、3j、3k、3l、3m、3nは、誘電体層1hの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0159】
誘電体層1hの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5iと、線路状導体パターン5jと、線路状導体パターン5kと、線路状導体パターン5lとが設けられている。線路状導体パターン5i~5lは、平面視してU字形状であり、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分を有する。
【0160】
線路状導体パターン5iは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5eの直上に、線路状導体パターン5eと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5jは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5fの直上に、線路状導体パターン5fと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5kは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5gの直上に、線路状導体パターン5gと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5lは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5hの直上に、線路状導体パターン5fと同じ形状および大きさで設けられている。
【0161】
すなわち、線路状導体パターン5i、5j、5k、5lは、同じ形状および大きさの線路状導体パターン5e、5f、5g、5hと、高さ方向Hに重ねて設けられている。
【0162】
線路状導体パターン5iは、ビア導体3kによって、線路状導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン5iは、ビア導体3lによって、線路状導体パターン5bに接続されている。
【0163】
線路状導体パターン5jは、ビア導体3iによって、キャパシタ導体パターン4hに接続されている。線路状導体パターン5jは、ビア導体3aによって、グランド導体パターン2aに接続されている。
【0164】
線路状導体パターン5kは、ビア導体3jによって、キャパシタ導体パターン4iに接続されている。線路状導体パターン5kは、ビア導体3bによって、グランド導体パターン2aに接続されている。
【0165】
線路状導体パターン5lは、ビア導体3mによって、線路状導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン5lは、ビア導体3nによって、線路状導体パターン5dに接続されている。
【0166】
誘電体層1iは保護層である。
【0167】
フィルタ200は、以上の構造からなる。
【0168】
次に、フィルタ200の等価回路と、構造との関係について説明する。
【0169】
第1の共振回路RC1のインダクタL1は、第1の入出力端子T1を起点にして、線路状導体パターン5a、ビア導体3k、線路状導体パターン5e、5i、ビア導体3l、線路状導体パターン5bを経由し、第2の入出力端子T2を終点とする導電経路によって構成されている。
【0170】
キャパシタC1aは、キャパシタ導体パターン4aと、グランド導体パターン2a、2bとの間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4aは、ビア導体3cと線路状導体パターン5aを経由して、第1の入出力端子T1に接続されている。
【0171】
キャパシタC1bは、キャパシタ導体パターン4bと、グランド導体パターン2a、2cとの間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4bは、ビア導体3dと線路状導体パターン5bを経由して、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0172】
第2の共振回路RC2のインダクタL2は、キャパシタ導体パターン4hを起点として、ビア導体3i、線路状導体パターン5f、5j、ビア導体3aを経由し、グランド導体パターン2aを終点とする導電経路によって構成されている。
【0173】
第2の共振回路RC2のキャパシタC2は、キャパシタ導体パターン4cとグランド導体パターン2aとの間の容量とによって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4cは、ビア導体3eによって、キャパシタ導体パターン4hに接続されている。
【0174】
第3の共振回路RC3のインダクタL3は、キャパシタ導体パターン4iを起点として、ビア導体3j、線路状導体パターン5g、5k、ビア導体3bを経由し、グランド導体パターン2aを終点とする導電経路によって構成されている。
【0175】
第3の共振回路RC3のキャパシタC3は、キャパシタ導体パターン4dとグランド導体パターン2aとの間の容量とによって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4dは、ビア導体3fによって、キャパシタ導体パターン4iに接続されている。
【0176】
キャパシタC23は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン4c、4hとキャパシタ導体パターン4gとの間の容量と、キャパシタ導体パターン4gとキャパシタ導体パターン4d、4iとの間の容量とによって構成されている。
【0177】
第4の共振回路RC4のインダクタL4は、第3の入出力端子T3を起点にして、線路状導体パターン5c、ビア導体3m、線路状導体パターン5h、5l、ビア導体3n、線路状導体パターン5dを経由し、第4の入出力端子T4を終点とする導電経路によって構成されている。
【0178】
キャパシタC4aは、キャパシタ導体パターン4eと、グランド導体パターン2a、2bとの間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4eは、ビア導体3gと線路状導体パターン5cを経由して、第3の入出力端子T3に接続されている。
【0179】
キャパシタC4bは、キャパシタ導体パターン4fと、グランド導体パターン2a、2cとの間の容量によって構成されている。なお、キャパシタ導体パターン4fは、ビア導体3hと線路状導体パターン5dを経由して、第4の入出力端子T4に接続されている。
【0180】
以上により、
図8に示すフィルタ200は、
図7に示す等価回路を備えている。
【0181】
図9(A)~(C)に、フィルタ200の特性を示す。
【0182】
図9(A)は、フィルタ200のSdd11特性、Sdd21特性、Sdd22特性を示している。また、
図9(B)は、フィルタ200のより広い周波数範囲でのSdd21特性を示している。
【0183】
図9(A)、(B)から分かるように、フィルタ200は、バンドパスフィルタとして、良好な周波数特性を備えている。具体的には、通過帯域の外側の低周波側、および、通過帯域の外側の高周波側に、それぞれ急峻な減衰が得られている。
【0184】
図9(C)は、フィルタ200のCMRR特性を示している。より具体的には、フィルタ200のSdc21/Sdd21特性、Scd21/Sdd21特性、Scc21/Sdd21特性を示している。
【0185】
Sdc21/Sdd21特性、Scd21/Sdd21特性から分かるように、フィルタ200は、コモンモードの入力信号がデファレンシャルモードの信号として出力されたり、デファレンシャルモードの入力信号がコモンモードの信号として出力されたりすることが抑制されている。
【0186】
また、Scc21/Sdd21特性から分かるように、フィルタ200は、デファレンシャルモードの信号を良好に通過させる一方、コモンモードの信号の通過が良好に抑制されている。
【0187】
第2実施形態のフィルタ200は、次のような特長を備えている。
【0188】
フィルタ200は、上述したとおり、デファレンシャルモードの信号を良好に通過させる一方、コモンモードの信号の通過が良好に抑制されている。
【0189】
フィルタ200は、中間段の共振回路に含まれるインダクタの線路長がλ/4であるため、小型化が可能である。
【0190】
フィルタ200は、第1段の共振回路および/または最終段の共振回路に含まれる大きなU字形状の線路状導体パターンの内側に、中間段の共振回路に含まれる小さなU字形状の線路状導体パターンが、U字形状の長さ方向を揃えて配置されることによって、これらの線路状導体パターンが設けられた誘電体層の面を有効に活用している。したがって、フィルタ200は、平面方向(幅方向×長さ方向)の寸法を小さくすることが可能である。
【0191】
フィルタ200は、第1の共振回路RC1のインダクタL1に含まれる線路状導体パターン5e、5iと、第4の共振回路RC4のインダクタL4に含まれる線路状導体パターン5h、5lが近接して設けられているため、第1の共振回路RC1のインダクタL1と第4の共振回路RC4のインダクタL4が磁気的に結合しており、第1の共振回路RC1と第4の共振回路RC4が電磁界結合している。
【0192】
[第2実施形態の変形例:フィルタ210]
図10、
図11に、本発明の第2実施形態の変形例のフィルタ210を示す。
図10は、フィルタ210の要部分解斜視図である。
図11は、フィルタ210の等価回路図である。
【0193】
フィルタ210は、フィルタ200に新たな構成を追加した。具体的には、フィルタ210は、誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン24jが設けられている。
【0194】
フィルタ210は、キャパシタ導体パターン24jが設けられたことにより、
図11に示すように、第1の共振回路RC1に含まれるインダクタL1と、第4の共振回路RC4に含まれるインダクタL4との間に、キャパシタC14が形成されている。すなわち、直列に接続された、線路状導体パターン5eとキャパシタ導体パターン24jとの間の容量と、キャパシタ導体パターン24jと線路状導体パターン5hとの間の容量とによって、キャパシタC14が構成される。
【0195】
この結果、第1の共振回路RC1と第4の共振回路RC4は、磁気的な結合に加えて、容量的にも結合している。
【0196】
図12(A)に、フィルタ200のSdd21特性を破線で示し、フィルタ210のSdd21特性を実線で示す。図から分かるように、フィルタ210は、キャパシタ導体パターン24jが設けられて、第1の共振回路RC1と第4の共振回路RC4を容量的に結合したことにより、通過帯域の外側の低周波側および高周波側の双方において、減衰がより急峻になっている。
【0197】
図12(B)に、フィルタ200のScc21/Sdd21特性を破線で示し、フィルタ210のScc21/Sdd21特性を実線で示す。図から分かるように、フィルタ210は、フィルタ200に比べて、コモンモードの信号の通過が更に良好に抑制されている。
【0198】
[第3実施形態]
図13に、本発明の第3実施形態のフィルタ300を示す。ただし、
図13は、フィルタ300の等価回路図である。
【0199】
フィルタ300は、第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2と、第3の入出力端子T3と、第4の入出力端子T4とを備える。フィルタ300は、第1の共振回路RC1と、第2の共振回路RC2と、第3の共振回路RC3と、第4の共振回路RC4と、インダクタL31と、インダクタL32と、インダクタL33と、インダクタL34と、キャパシタC23とを備える。
【0200】
第1の入出力端子T1と、第2の入出力端子T2との間に、インダクタL31と、第1の共振回路RC1と、インダクタL32が順に接続されている。第1の共振回路RC1は、インダクタL1を含む。本実施形態においては、インダクタL1の線路長はλ/2である。
【0201】
インダクタL31とインダクタL1の接続点が、キャパシタC1aを介して基準電位に接続されている。インダクタL1とインダクタL32の接続点が、キャパシタC1bを介して基準電位に接続されている。なお、フィルタ300では、上述した第1実施形態のフィルタ100が備えていたキャパシタC1cが省略されている。
【0202】
第2の共振回路RC2は、相互に並列に接続されたインダクタL2とキャパシタC2とを含む。本実施形態においては、インダクタL2の線路長はλ/4である。
【0203】
インダクタL2の一端とキャパシタC2の一端とが、基準電位に接続されている。
【0204】
第3の共振回路RC3は、相互に並列に接続されたインダクタL3とキャパシタC3とを含む。本実施形態においては、インダクタL3の線路長はλ/4である。
【0205】
インダクタL3の一端とキャパシタC3の一端とが、基準電位に接続されている。
【0206】
インダクタL2の他端とキャパシタC2の他端とが、キャパシタC23の一端に接続されている。インダクタL3の他端とキャパシタC3の他端とが、キャパシタC23の他端に接続されている。このため、インダクタL2とキャパシタC2とは、キャパシタC23を介して、インダクタL3とキャパシタC3とに接続されている。
【0207】
第3の入出力端子T3と、第4の入出力端子T4との間に、インダクタL33と、第4の共振回路RC4と、インダクタL34が順に接続されている。第4の共振回路RC4は、インダクタL4を含む。本実施形態においては、インダクタL4の線路長はλ/2である。
【0208】
インダクタL33とインダクタL4の接続点が、キャパシタC4aを介して基準電位に接続されている。インダクタL4とインダクタL34の接続点が、キャパシタC4bを介して基準電位に接続されている。なお、フィルタ300では、上述した第1実施形態のフィルタ100が備えていたキャパシタC4cが省略されている。
【0209】
フィルタ300における、主な、共振回路の結合関係について説明する。
【0210】
第1の共振回路RC1のインダクタL1と第2の共振回路RC2のインダクタL2とが、磁気的に結合している。この結果、第1の共振回路RC1と第2の共振回路RC2とが、電磁界結合している。
【0211】
第2の共振回路RC2のインダクタL2と第3の共振回路RC3のインダクタL3とが、磁気的に結合している。また、第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3とが、キャパシタC23の容量により容量的に結合している。この結果、第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3とが、電磁界結合している。
【0212】
第3の共振回路RC3のインダクタL3と第4の共振回路RC4のインダクタL4とが、磁気的に結合している。この結果、第3の共振回路RC3と第4の共振回路RC4とが、電磁界結合している。
【0213】
なお、以上は、フィルタ300における、主な共振回路の結合関係を説明したものであり、これら以外に、共振回路同士が結合している場合もある。
【0214】
フィルタ300は、複数の誘電体層1a~1gが積層された積層体1を備える積層型のフィルタである。
【0215】
【0216】
積層体1の幅方向Wに対向する、一方の側面に第1の入出力端子T1とグランド端子TGと第3の入出力端子T3とが設けられ、他方の側面に第2の入出力端子T2とグランド端子TGと第4の入出力端子T4とが設けられている。
【0217】
図14を参照して、誘電体層1a~1gの構成について説明する。積層体1は、ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3lを含む。
【0218】
誘電体層1aにおいて、幅方向Wに対向する、一方の側面に、第1の入出力端子T1とグランド端子TGと第3の入出力端子T3とが設けられ、他方の側面に、第2の入出力端子T2とグランド端子TGと第4の入出力端子T4とが設けられている。なお、誘電体層1b~1gにおいても、幅方向Wに対向する、一方の側面に第1の入出力端子T1、グランド端子TG、第3の入出力端子T3が設けられ、他方の側面に第2の入出力端子T2、グランド端子TG、第4の入出力端子T4が設けられている。
【0219】
誘電体層1aの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、グランド導体パターン2が設けられている。グランド導体パターン2が、2つのグランド端子TGに、それぞれ接続されている。
【0220】
ビア導体3a、3bは、誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0221】
誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4a、4b、4c、4d、4e、4fが設けられている。
【0222】
誘電体層1bの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5a、5b、5c、5dが設けられている。
【0223】
線路状導体パターン5aは、キャパシタ導体パターン4aに接続されている。線路状導体パターン5bは、キャパシタ導体パターン4bに接続されている。線路状導体パターン5cは、キャパシタ導体パターン4dに接続されている。線路状導体パターン5dは、キャパシタ導体パターン4eに接続されている。
【0224】
ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3lは、誘電体層1cの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0225】
誘電体層1cの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、キャパシタ導体パターン4gが設けられている。
【0226】
ビア導体3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j、3k、3lは、誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0227】
誘電体層1dの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5e、5f、5g、5hが設けられている。
【0228】
線路状導体パターン5eは、第1の入出力端子T1に接続されている。また、線路状導体パターン5eは、ビア導体3cによって、キャパシタ導体パターン4aと線路状導体パターン5aに接続されている。キャパシタ導体パターン4aは、ビア導体3cと線路状導体パターン5eを経由して、第1の入出力端子T1に接続されている。
【0229】
線路状導体パターン5fは、第2の入出力端子T2に接続されている。また、線路状導体パターン5fは、ビア導体3dによって、キャパシタ導体パターン4bと線路状導体パターン5bに接続されている。キャパシタ導体パターン4bは、ビア導体3dと線路状導体パターン5fを経由して、第2の入出力端子T2に接続されている。
【0230】
線路状導体パターン5gは、第3の入出力端子T3に接続されている。また、線路状導体パターン5gは、ビア導体3hによって、キャパシタ導体パターン4dと線路状導体パターン5cに接続されている。キャパシタ導体パターン4dは、ビア導体3hと線路状導体パターン5gを経由して、第3の入出力端子T3に接続されている。
【0231】
線路状導体パターン5hは、第4の入出力端子T4に接続されている。また、線路状導体パターン5hは、ビア導体3iによって、キャパシタ導体パターン4eと線路状導体パターン5dに接続されている。キャパシタ導体パターン4eは、ビア導体3iと線路状導体パターン5hを経由して、第4の入出力端子T4に接続されている。
【0232】
ビア導体3a、3b、3e、3f、3g、3j、3k、3lは、誘電体層1eの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0233】
誘電体層1eの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5iと、線路状導体パターン5jと、線路状導体パターン5kと、線路状導体パターン5lとが設けられている。線路状導体パターン5i~5lは、平面視してU字形状であり、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分を有する。線路状導体パターン5i~5jにおいて、円弧状の部分から開口側の部分に向かう方向を、U字形状の長さ方向とする。
【0234】
線路状導体パターン5iは、線路状導体パターン5jより大きい。線路状導体パターン5iと線路状導体パターン5jは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されている。線路状導体パターン5jは、線路状導体パターン5iの内側に配置されている。
【0235】
線路状導体パターン5lは、線路状導体パターン5kより大きい。線路状導体パターン5kと線路状導体パターン5lは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されている。線路状導体パターン5kは、線路状導体パターン5lの内側に配置されている。
【0236】
線路状導体パターン5jの開口側の部分と、線路状導体パターン5kの開口側の部分とが、対向して配置されている。線路状導体パターン5iの開口側の部分と、線路状導体パターン5lの開口側の部分とが、対向して配置されている。
【0237】
積層体1を高さ方向Hに見たとき、線路状導体パターン5iと、線路状導体パターン5jと、線路状導体パターン5kと、線路状導体パターン5lとが、この順番に、積層体1の長さ方向Lに沿って配置されている。
【0238】
線路状導体パターン5iは、ビア導体3eによって、線路状導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン5iは、ビア導体3fによって、線路状導体パターン5bに接続されている。
【0239】
線路状導体パターン5jは、ビア導体3gによって、キャパシタ導体パターン4cに接続されている。線路状導体パターン5jは、ビア導体3aによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0240】
線路状導体パターン5kは、ビア導体3lによって、キャパシタ導体パターン4fに接続されている。線路状導体パターン5kは、ビア導体3bによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0241】
線路状導体パターン5lは、ビア導体3jによって、線路状導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン5lは、ビア導体3kによって、線路状導体パターン5dに接続されている。
【0242】
ビア導体3a、3b、3e、3f、3g、3j、3k、3lは、誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面の間を貫通している。
【0243】
誘電体層1fの高さ方向Hに対向する2つの面の一方に、線路状導体パターン5mと、線路状導体パターン5nと、線路状導体パターン5oと、線路状導体パターン5pとが設けられている。線路状導体パターン5m~5pは、平面視してU字形状であり、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分を有する。
【0244】
線路状導体パターン5mは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5iの直上に、線路状導体パターン5iと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5nは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5jの直上に、線路状導体パターン5jと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5oは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5kの直上に、線路状導体パターン5kと同じ形状および大きさで設けられている。線路状導体パターン5pは、高さ方向Hにおいて、線路状導体パターン5lの直上に、線路状導体パターン5lと同じ形状および大きさで設けられている。
【0245】
すなわち、線路状導体パターン5m、5n、5o、5pは、同じ形状および大きさの線路状導体パターン5i、5j、5k、5lと、高さ方向Hに重ねて設けられている。このため、フィルタ300は、Q値が高い。なお、電気回路的には、線路状導体パターン5m、5n、5o、5pを省略してもよい。
【0246】
線路状導体パターン5mは、ビア導体3eによって、線路状導体パターン5aに接続されている。線路状導体パターン5mは、ビア導体3fによって、線路状導体パターン5bに接続されている。
【0247】
線路状導体パターン5nは、ビア導体3gによって、キャパシタ導体パターン4cに接続されている。線路状導体パターン5nは、ビア導体3aによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0248】
線路状導体パターン5oは、ビア導体3lによって、キャパシタ導体パターン4fに接続されている。線路状導体パターン5oは、ビア導体3bによって、グランド導体パターン2に接続されている。
【0249】
線路状導体パターン5pは、ビア導体3jによって、線路状導体パターン5cに接続されている。線路状導体パターン5pは、ビア導体3kによって、線路状導体パターン5dに接続されている。
【0250】
誘電体層1gは保護層である。
【0251】
フィルタ300は、以上の構造からなる。
【0252】
次に、フィルタ300の等価回路と、構造との関係について説明する。
【0253】
インダクタL31は、第1の入出力端子T1を起点として、線路状導体パターン5eと、ビア導体3cとが順に接続された導電路によって構成されている。
【0254】
第1の共振回路RC1のインダクタL1は、線路状導体パターン5aと、ビア導体3eと、線路状導体パターン5i、5mと、ビア導体3fと、線路状導体パターン5bとが順に接続された導電路によって構成されている。
【0255】
キャパシタC1aは、キャパシタ導体パターン4aと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。
【0256】
キャパシタC1bは、キャパシタ導体パターン4bと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。
【0257】
インダクタL32は、ビア導体3dと、線路状導体パターン5fとが順に接続された導電路によって構成され、第2の入出力端子T2を終点としている。
【0258】
第2の共振回路RC2のインダクタL2は、キャパシタ導体パターン4cを起点として、ビア導体3gと、線路状導体パターン5j、5nと、ビア導体3aとが順に接続された導電路によって構成され、グランド導体パターン2を終点としている。
【0259】
第2の共振回路RC2のキャパシタC2は、キャパシタ導体パターン4cとグランド導体パターン2との間の容量とによって構成されている。
【0260】
第3の共振回路RC3のインダクタL3は、キャパシタ導体パターン4fを起点として、ビア導体3lと、線路状導体パターン5k、5oと、ビア導体3bとが順に接続された導電路によって構成され、グランド導体パターン2を終点としている。
【0261】
第3の共振回路RC3のキャパシタC3は、キャパシタ導体パターン4fとグランド導体パターン2との間の容量とによって構成されている。
【0262】
キャパシタC23は、直列に接続された、キャパシタ導体パターン4cとキャパシタ導体パターン4gとの間の容量と、キャパシタ導体パターン4gとキャパシタ導体パターン4fとの間の容量とによって構成されている。
【0263】
インダクタL33は、第3の入出力端子T3を起点として、線路状導体パターン5gと、ビア導体3hとが順に接続された導電路によって構成されている。
【0264】
第4の共振回路RC4のインダクタL4は、線路状導体パターン5cと、ビア導体3jと、線路状導体パターン5l、5pと、ビア導体3kと、線路状導体パターン5dとが順に接続された導電路によって構成されている。
【0265】
キャパシタC4aは、キャパシタ導体パターン4dと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。
【0266】
キャパシタC4bは、キャパシタ導体パターン4eと、グランド導体パターン2との間の容量によって構成されている。
【0267】
インダクタL34は、ビア導体3iと、線路状導体パターン5hとが順に接続された導電路によって構成され、第4の入出力端子T4を終点としている。
【0268】
以上により、
図14に示すフィルタ300は、
図13に示す等価回路を備えている。
【0269】
フィルタ300と比較するために、フィルタ300Bを用意した。
図15、
図16に、フィルタ300Bを示す。
【0270】
図15に示すように、フィルタ300Bは、フィルタ300から、インダクタL31、L32、L33、L34が省略されている。
【0271】
図16に示すように、フィルタ300Bは、フィルタ300から、線路状導体パターン5e、5f、5g、5hが省略されている。また、フィルタ300Bは、フィルタ300から、ビア導体3c、3d、3h、3iが省略されている。
【0272】
図16に示すように、フィルタ300Bは、キャパシタ導体パターン4aと線路状導体パターン5aが第1の入出力端子T1に接続され、キャパシタ導体パターン4bと線路状導体パターン5bが第2の入出力端子T2に接続され、キャパシタ導体パターン4dと線路状導体パターン5cが第3の入出力端子T3に接続され、キャパシタ導体パターン4eと線路状導体パターン5dが第4の入出力端子T4に接続されている。
【0273】
図17(A)、(B)、
図18(A)~(C)に、フィルタ300の特性を示す。
【0274】
図17(A)に、フィルタ300のSdd11特性を実線で示す。また、比較のために、
図17(A)に、フィルタ300BのSdd11特性を破線で示す。
【0275】
図17(B)に、フィルタ300のSdd22特性を実線で示す。また、比較のために、
図17(B)に、フィルタ300BのSdd22特性を破線で示す。
【0276】
図18(A)に、フィルタ300のSdd11特性を実線で示す。また、比較のために、
図18(A)に、フィルタ300BのSdd11特性を破線で示す。
【0277】
図18(B)に、フィルタ300のSdd21特性を実線で示す。また、比較のために、
図18(B)に、フィルタ300BのSdd21特性を破線で示す。
【0278】
図18(C)に、フィルタ300のSdd22特性を実線で示す。また、比較のために、
図18(C)に、フィルタ300BのSdd22特性を破線で示す。
【0279】
図17(A)、(B)から分かるように、フィルタ300は、インダクタL31、L32、L33、L34を備えるため、フィルタ300Bに比べて、入出力部のインピーダンスが全体的に高い側に移動し、広い周波数範囲でインピーダンス整合が可能である。フィルタ300の入出力部のインピーダンスは、通過帯域部分において、50Ωに収束されている。
【0280】
図18(A)~(C)から分かるように、フィルタ300は、インダクタL31、L32、L33、L34を備えるため、フィルタ300Bに比べて、反射損失が改善されている。
【0281】
第3実施形態のフィルタ300は、インダクタL31、L32、L33、L34を備えるため、入出力部のインピーダンスが良好に調整されている。また、フィルタ300は、インダクタL31、L32、L33、L34を備えるため、反射損失が改善されている。
【0282】
フィルタ300は、デファレンシャルモードの信号を良好に通過させる一方、コモンモードの信号の通過が良好に抑制されている。また、フィルタ300は、中間段の共振回路に含まれるインダクタの線路長がλ/4であるため、小型化が可能である。
【0283】
以上、第1実施形態、第1実施形態の変形例、第2実施形態、第2実施形態の変形例、第3実施形態について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0284】
たとえば、上記実施形態では、フィルタが4つの共振回路を備えた4段のフィルタであったが、段数は4段には限られない。バランス入出力フィルタは、3段であってもよいし、5段以上であってもよい。
【0285】
また、上記実施形態では、第2の共振回路RC2と第3の共振回路RC3が、キャパシタC23によって容量的に結合されていたが、他の条件が許せば、キャパシタC23は省略してもよい。
【0286】
本発明の一実施態様にかかるフィルタは、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0287】
このフィルタにおいて、中間段の共振回路のインダクタの線路長は、第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方のインダクタの線路長より短いことも好ましい。この場合には、中間段の共振回路を小さくすることができ、フィルタを小型化することができる。
【0288】
第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方のインダクタの線路長が、λ/2であり、中間段の共振回路のインダクタの線路長が、λ/4であることも好ましい。この場合には、中間段の共振回路を小さくすることができ、フィルタを小型化することができる。
【0289】
中間段の共振回路が、第2段の共振回路と、第3段の共振回路とを含むことも好ましい。この場合には、4段以上のフィルタの小型化を図ることができる。
【0290】
中間段の共振回路が2つ以上であり、2つ以上の中間段の共振回路のインダクタが、相互に接続されたうえで、基準電位に接続されていることも好ましい。この場合には、当該中間段の共振回路同士の磁気的な結合を、強くすることができる。
【0291】
第1段の共振回路のインダクタと、最終段の共振回路のインダクタとが、キャパシタを介して、相互に接続されていることも好ましい。この場合には、第1段の共振回路と、最終段の共振回路とを、容量的に結合させることができる。
【0292】
第1の入出力端子と第1段の共振回路との間、第2の入出力端子と第1段の共振回路との間、第3の入出力端子と最終段の共振回路との間、第4の入出力端子と最終段の共振回路との間の少なくとも1つに、インダクタが設けられることも好ましい。また、第1の入出力端子と第1段の共振回路との間、第2の入出力端子と第1段の共振回路との間、第3の入出力端子と最終段の共振回路との間、第4の入出力端子と最終段の共振回路との間に、それぞれインダクタが設けられることも好ましい。これらの場合には、入出力部のインピーダンスを良好に調整することができる。また、反射損失を改善することができる。
【0293】
複数の誘電体層が積層され、外表面に第1の入出力端子と第2の入出力端子と第3の入出力端子と第4の入出力端子とが設けられた積層体と、誘電体層に設けられた線路状導体パターンと、を備え、第1段の共振回路、最終段の共振回路、中間段の共振回路は、それぞれ、インダクタの少なくとも一部分に、線路状導体パターンを含み、第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方の線路状導体パターンと、中間段の共振回路の線路状導体パターンが、積層体の同一の誘電体層に設けられていることも好ましい。この場合には、第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方のインダクタと、中間段の共振回路のインダクタとを、良好に磁気的に結合させることができる。
【0294】
積層体の同一の誘電体層に設けられている、第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方の線路状導体パターンがU字形状の線路状導体パターンであり、中間段の共振回路の線路状導体パターンがU字形状の線路状導体パターンであり、U字形状の線路状導体パターンは、円弧状の部分と、端部を含む開口側の部分とを有し、円弧状の部分から開口側の部分に向う方向を、U字形状の長さ方向とし、第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方の線路状導体パターンは、中間段の共振回路の線路状導体パターンよりも大きく、第1段の共振回路と最終段の共振回路の少なくとも一方の線路状導体パターンと、中間段の共振回路の線路状導体パターンとは、U字形状の長さ方向を揃えて配置されていることも好ましい。この場合には、これらの線路状導体パターンが形成された誘電体層の上側主面を有効に活用することができるため、フィルタの平面方向(幅方向×長さ方向)の寸法を小さくすることができる。
【0295】
中間段の共振回路が、第2段の共振回路と、第3段の共振回路とを含み、第1段の共振回路、第2段の共振回路、第3段の共振回路、最終段の共振回路は、それぞれの線路状導体パターンが、積層体の同一の誘電体層に設けられ、第1段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンと、第2段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンとは、第1段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンの内側に、第2段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンが、U字形状の長さ方向を揃えて配置され、最終段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンと、第3段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンとは、最終段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンの内側に、第3段の共振回路のU字形状の線路状導体パターンが、U字形状の長さ方向を揃えて配置されていることも好ましい。この場合には、4段以上のフィルタにおいて、線路状導体パターンが形成された誘電体層の上側主面を有効に活用することができ、フィルタの平面方向(幅方向×長さ方向)の寸法を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0296】
1・・・積層体
1a~1i・・・誘電体層
2、2a~2c・・・グランド導体パターン
3a~3n、13c・・・ビア導体
4a~4k、24j・・・キャパシタ導体パターン
5a~5p、15f、15g、15j、15k・・・線路状導体パターン