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特許7521689浸水検出装置、浸水検出システム及び浸水検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】浸水検出装置、浸水検出システム及び浸水検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/24 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01M3/24 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023506672
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011420
(87)【国際公開番号】W WO2022195856
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 慎也
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0333474(US,A1)
【文献】特開平11-132896(JP,A)
【文献】特開平04-348274(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087355(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0298635(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102997059(CN,A)
【文献】特開2003-322582(JP,A)
【文献】特開2018-109649(JP,A)
【文献】特開2010-261746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、
前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、
を備え
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記周波数強度分布は、周波数成分毎の強度分布であり、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波が発生している周波数を選択し、選択された周波数に対応する前記定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
浸水検出装置。
【請求項2】
前記伝搬特性検出手段は、互いに異なる複数個の周波数に対して定在波が発生している場合に、定在波が発生している複数個の周波数の各々に対して前記伝搬速度を検出し、算出された前記伝搬速度による統計値を算出する
請求項1に記載の浸水検出装置。
【請求項3】
前記浸水検出手段による検出の結果に応じて通知が出力されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浸水検出装置。
【請求項4】
管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、
前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、
を備え
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記周波数強度分布は、周波数成分毎の強度分布であり、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波が発生している周波数を選択し、選択された周波数に対応する前記定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
浸水検出システム。
【請求項5】
前記伝搬特性検出手段は、互いに異なる複数個の周波数に対して定在波が発生している場合に、定在波が発生している複数個の周波数の各々に対して前記伝搬速度を検出し、算出された前記伝搬速度による統計値を算出する
請求項4に記載の浸水検出システム。
【請求項6】
光信号受信手段が、管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信し、
伝搬特性検出手段が、前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出し、
浸水検出手段が、前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出し、
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記周波数強度分布は、周波数成分毎の強度分布であり、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波が発生している周波数を選択し、選択された周波数に対応する前記定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
浸水検出方法。
【請求項7】
前記伝搬特性検出手段は、互いに異なる複数個の周波数に対して定在波が発生している場合に、定在波が発生している複数個の周波数の各々に対して前記伝搬速度を検出し、算出された前記伝搬速度による統計値を算出する
請求項6に記載の浸水検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浸水検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、配管の劣化(例えば減肉又は腐食)を検出する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術においては、配管の外面部に複数個の超音波光プローブが取り付けられる。これらの超音波光プローブを用いて、配管の肉厚が測定される。肉厚が測定されることにより、減肉又は腐食などが検出される(特許文献1の段落[0012]~段落[0016]、段落[0032]~段落[0042]、段落[0212]等参照)。
【0003】
なお、関連技術として、特許文献2に記載の技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-109649号公報
【文献】特開2010-261746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浸水し得る管路(例えば地中に敷設された管路)について、管路内の浸水を検出する技術が望まれている。ここで、特許文献1に記載の技術は、配管の肉厚に基づき配管の劣化(例えば減肉又は腐食)を検出するものであり、配管内の浸水を検出するものではない。このため、特許文献1に記載の技術を用いることにより、管路内の浸水を検出することができず、浸水による配管の腐食等を未然に防ぐことができないという問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、管路内の浸水を検出することができる浸水検出装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る浸水検出装置の一形態は、管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、光信号に含まれるセンシング情報を用いて、管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、伝搬特性に基づき、管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、を備えるものである。
【0008】
本開示に係る浸水検出システムの一形態は、管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、光信号に含まれるセンシング情報を用いて、管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、伝搬特性に基づき、管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、を備えるものである。
【0009】
本開示に係る浸水検出方法の一形態は、光信号受信手段が、管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信し、伝搬特性検出手段が、光信号に含まれるセンシング情報を用いて、管路内における振動の伝搬特性を検出し、浸水検出手段が、伝搬特性に基づき、管路内の浸水を検出するものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、管路内の浸水を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、管路に沿って光ファイバが設けられた状態の例を示す説明図である。
図2図2は、第1実施形態に係る浸水検出システムの要部を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る浸水検出装置の要部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、第1実施形態に係る浸水検出装置の要部の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、第1実施形態に係る浸水検出装置の要部の他のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、第1実施形態に係る浸水検出装置の動作を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、管路内に発生する定在波の例を示す説明図である。
図7B図7Bは、図7Aに示す定在波のうちの4次の定在波に対応する振動の強度分布の例を示す説明図である。
図8A図8Aは、第1地点における振動が第1時刻に検出される状態の例を示す説明図である。
図8B図8Bは、第2地点における振動であって、図8Aに示す振動に対応する振動が第2時刻に検出される状態の例を示す説明図である。
図9図9は、管路に沿って光ファイバが設けられた状態の他の例を示す説明図である。
図10図10は、第1実施形態に係る他の浸水検出装置の要部を示すブロック図である。
図11図11は、第1実施形態に係る他の浸水検出システムの要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、管路に沿って光ファイバが設けられた状態の例を示す説明図である。図2は、第1実施形態に係る浸水検出システムの要部を示すブロック図である。図1及び図2を参照して、第1実施形態に係る浸水検出システムについて説明する。
【0014】
図1に示す如く、管路PLに沿って光ファイバ1が設けられている。管路PLは、浸水し得る管路(例えば地中に敷設された管路)である。光ファイバ1は、例えば、通信用の既設の光ファイバである。図1に示す例において、光ファイバ1は、管路PLの内部に設けられており、かつ、管路PLの長手方向に沿うように直線状に設けられている。また、図1に示す例においては、管路PLが横向きに設けられており、かつ、管路PLの内部における下方に光ファイバ1が配置されている。
【0015】
ここで、光ファイバ1は、光ファイバセンシングに用いられることができる。具体的には、例えば、光ファイバ1は、分散型光ファイバセンシング(Distributed Fiber Optic Sensing,DFOS)による振動、音又は温度の検出に用いられることができる。以下、光ファイバ1を用いた光ファイバセンシングにより検出される情報を総称して「センシング情報」ということがある。換言すれば、光ファイバ1は、センシング情報を検出するものである。
【0016】
図2に示す如く、浸水検出システム100は、光ファイバ1、浸水検出装置2及び出力装置3を含む。浸水検出装置2は、光信号送信部11、光信号受信部12、伝搬特性検出部13、浸水検出部14及び出力制御部15を備える。光信号送信部11及び光信号受信部12により、光信号送受信部16の要部が構成されている。
【0017】
光信号送信部11は、光ファイバ1に光信号を出力する。当該出力された光信号は、光ファイバ1に入力されて、光ファイバ1の内部を伝搬する。このとき、光ファイバ1の内部にて後方散乱光が発生する。光信号受信部12は、当該発生した後方散乱光に対応する光信号を受信する。当該受信された光信号は、DFOS用のセンシング情報を含む。
【0018】
なお、光信号送受信部16は、光信号送信部11により出力された光信号と光信号受信部12により受信される光信号とを分離するためのデバイス(不図示)を含むものであっても良い。例えば、光信号送受信部16は、光信号送信部11と光ファイバ1と光信号受信部12との間に設けられた光サーキュレータ(不図示)を含むものであっても良い。
【0019】
伝搬特性検出部13は、光信号受信部12により受信された光信号に含まれるセンシング情報を用いて、管路PLの内部における振動の伝搬特性を検出する。浸水検出部14は、当該検出された伝搬特性に基づき、管路PLの浸水を検出する。具体的には、例えば、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水の発生の有無を検出する。または、例えば、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水の発生の有無を検出するとともに、管路PLにおける浸水が発生している区間を検出する。ここで、浸水検出部14による検出の対象となる「浸水」とは、管路PLのうちの少なくとも一部の区間において、浸水により少なくとも光ファイバ1が完全に水没する程度に水が溜まっている状態のことをいう。
【0020】
伝搬特性検出部13により検出される伝搬特性の具体例、伝搬特性検出部13による伝搬特性の検出方法の具体例、及び浸水検出部14による浸水の検出方法の具体例については、図7A図7B図8A及び図8Bを参照して後述する。
【0021】
出力制御部15は、浸水検出部14による検出の結果(以下単に「検出結果」ということがある。)に応じて通知を出力する制御を実行する。かかる通知の出力には、出力装置3が用いられる。出力装置3は、例えば、表示装置、音声出力装置及び通信装置のうちの少なくとも一つを含む。表示装置は、例えば、ディスプレイを用いたものである。音声出力装置は、例えば、スピーカを用いたものである。通信装置は、例えば、専用の送信機及び受信機を用いたものである。
【0022】
具体的には、例えば、出力制御部15は、通知用の画像を表示する制御を実行する。かかる画像の表示には、出力装置3のうちの表示装置が用いられる。または、例えば、出力制御部15は、通知用の音声を出力する制御を実行する。かかる音声の出力には、出力装置3のうちの音声出力装置が用いられる。または、例えば、出力制御部15は、通知用の信号を他のシステム(不図示)に送信する制御を実行する。かかる信号の送信には、出力装置3のうちの通信装置が用いられる。
【0023】
具体的には、例えば、管路PLにおける浸水の発生があることを検出結果が示しているとき、管路PLにおける浸水の発生があることを示す通知が出力される。また、管路PLにおける浸水が発生している区間を検出結果が示しているとき、かかる区間を示す通知が出力されるものであっても良い。また、かかる区間の大きさに応じて異なる通知が出力されるものであっても良い。
【0024】
このようにして、浸水検出システム100の要部が構成されている。
【0025】
以下、光信号送信部11を「光信号送信手段」ということがある。また、光信号受信部12を「光信号受信手段」ということがある。また、伝搬特性検出部13を「伝搬特性検出手段」ということがある。また、浸水検出部14を「浸水検出手段」ということがある。また、出力制御部15を「出力制御手段」ということがある。
【0026】
次に、図3図5を参照して、浸水検出装置2の要部のハードウェア構成について説明する。
【0027】
図3図5の各々に示す如く、浸水検出装置2は、コンピュータ21を用いたものである。
【0028】
図3に示す如く、コンピュータ21は、送信機31、受信機32、プロセッサ33及びメモリ34を備える。メモリ34には、コンピュータ21を光信号送信部11、光信号受信部12、伝搬特性検出部13、浸水検出部14及び出力制御部15として機能させるためのプログラム(送信機31を光信号送信部11として機能させるためのプログラム及び受信機32を光信号受信部12として機能させるためのプログラムを含む。)が記憶されている。プロセッサ33は、メモリ34に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これにより、光信号送信部11の機能F1、光信号受信部12の機能F2、伝搬特性検出部13の機能F3、浸水検出部14の機能F4及び出力制御部15の機能F5が実現される。
【0029】
または、図4に示す如く、コンピュータ21は、送信機31、受信機32及び処理回路35を備える。処理回路35は、コンピュータ21を光信号送信部11、光信号受信部12、伝搬特性検出部13、浸水検出部14及び出力制御部15として機能させるための処理(送信機31を光信号送信部11として機能させるための処理及び受信機32を光信号受信部12として機能させるための処理を含む。)を実行する。これにより、機能F1~F5が実現される。
【0030】
または、図5に示す如く、コンピュータ21は、送信機31、受信機32、プロセッサ33、メモリ34及び処理回路35を備える。この場合、機能F1~F5のうちの一部の機能がプロセッサ33及びメモリ34により実現されるとともに、機能F1~F5のうちの残余の機能が処理回路35により実現される。
【0031】
プロセッサ33は、1個以上のプロセッサにより構成されている。個々のプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はDSP(Digital Signal Processor)を用いたものである。
【0032】
メモリ34は、1個以上のメモリにより構成されている。個々のメモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、MO(Magneto Optical)ディスク又はミニディスクを用いたものである。
【0033】
処理回路35は、1個以上の処理回路により構成されている。個々の処理回路は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SoC(System on a Chip)又はシステムLSI(Large Scale Integration)を用いたものである。
【0034】
なお、プロセッサ33は、機能F1~F5の各々に対応する専用のプロセッサを含むものであっても良い。メモリ34は、機能F1~F5の各々に対応する専用のメモリを含むものであっても良い。処理回路35は、機能F1~F5の各々に対応する専用の処理回路を含むものであっても良い。
【0035】
次に、図6に示すフローチャートを参照して、浸水検出装置2の動作について、伝搬特性検出部13、浸水検出部14及び出力制御部15の動作を中心に説明する。
【0036】
まず、伝搬特性検出部13は、管路PLの内部における振動の伝搬特性を検出する(ステップST1)。ステップST1における伝搬特性の検出には、光信号受信部12により受信された光信号に含まれるセンシング情報が用いられる。
【0037】
次いで、浸水検出部14は、管路PLの浸水を検出する(ステップST2)。より具体的には、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水の発生の有無を検出する。または、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水の発生の有無を検出するとともに、管路PLにおける浸水が発生している区間を検出する。ステップST2における浸水の検出は、ステップST1にて検出された伝搬特性に基づくものである。
【0038】
次いで、出力制御部15は、ステップST2における検出の結果に応じて通知を出力する制御を実行する(ステップST3)。
【0039】
次に、図7A図7B図8A及び図8Bを参照して、伝搬特性検出部13により検出される伝搬特性の具体例、伝搬特性検出部13による伝搬特性の検出方法の具体例、及び浸水検出部14による浸水の検出方法の具体例について説明する。
【0040】
まず、図7A及び図7Bを参照して、第1の具体例について説明する。第1の具体例においては、管路PLにおける浸水の発生の有無が検出される。
【0041】
何らかの要因により、管路PLの内部にて音が発生したものとする。または、何らかの要因により、管路PLの外部にて発生した音が管路PLの内部に侵入したものとする。このような場合、管路PLの内部を音が伝搬する。通常、管路PLの内部を伝搬する音は、減衰し難い。このため、管路PLの内部を同一の音又は対応する音が双方向に伝搬する状態が生じ得る。具体的には、例えば、管路PLの少なくとも一方の端部について、当該端部がマンホール空間又はハンドホール空間と連通している。この場合、当該端部は、空間断面積が変化する開放端であるため、音の侵入口として機能し得るとともに、音の反射点として機能し得る。または、例えば、当該端部に壁又は蓋が設けられている。この場合、当該端部は、閉鎖端であるため、音の反射点として機能し得る。
【0042】
管路PLの内部を同一の音又は対応する音が双方向に伝搬することにより、定在波が発生する。管路PLの一端部のみが音の反射点となる場合、かかる定在波は、かかる音の周波数にかかわらず発生する。換言すれば、かかる定在波は、かかる音の波長と管路PLの長さLとの関係にかかわらず、かかる音に含まれる周波数成分毎に発生する。これに対して、管路PLの両端部が音の反射点となる場合、いわゆる「固有振動数」に対応する周波数成分について、かかる定在波が発生する。固有振動数は、管路PLの長さLに応じて定まるものであり、かつ、音が伝搬する媒質(例えば管路PL内の空気又は水)に応じて異なるものである。これは、音が伝搬する媒質に応じて、音波から見ると等価的に長さLが変化したように見えるためである。ここで、長さLよりも小さい波長に対応する周波数成分に対応する定在波は、複数個の腹及び複数個の節を有するものとなる。
【0043】
図7Aは、管路PLの内部における定在波の例を示している。図7Aに示す例においては、管路PLの両端部が音の反射点となり、固有振動数に対応する周波数成分について定在波が発生している。より具体的には、管路PL内を双方向に伝搬する音に、長さLに対する2倍の波長に対応する周波数成分、長さLと同等の波長に対応する周波数成分、及び長さLに対する2分の1の波長に対応する周波数成分が含まれている。このため、長さLに対する2倍の波長に対応する周波数成分に対応する定在波(すなわち1次の定在波)が発生している。これに加えて、長さLと同等の波長に対応する周波数成分に対応する定在波(すなわち2次の定在波)も発生している。さらに、長さLに対する2分の1の波長に対応する周波数成分に対応する定在波(すなわち4次の定在波)も発生している。2次の定在波及び4次の定在波の各々は、長さLよりも小さい波長に対応するものである。このため、2次の定在波及び4次の定在波の各々は、複数個の腹及び複数個の節を有している。図7Aは、4次の定在波について、管路PLの長手方向に対する個々の腹の位置、及び管路PLの長手方向に対する個々の節の位置を示している。なお、図7Aにおいて、各次の定在波は、横波として表現されている。
【0044】
なお、管路PLの各端部について、当該端部が開放端である場合は定在波の腹が発生し、当該端部が閉鎖端である場合は定在波の節が発生する。図7Aに示す例においては、管路PLの両端部に定在波の節が発生している。このような定在波が発生するのは、管路PLの両端部が閉鎖されている場合(例えば上記のように壁又は蓋などが設けられている場合)である。図7Aにおいて、管路PLの両端部を塞ぐ部材は図示を省略している。
【0045】
ここで、光ファイバ1により検出される物理量は、管路PLの内部を伝搬する音による空気又は水の振動(すなわち定在波による空気又は水の振動)を含む。センシング情報は、かかる振動の強度分布であって、距離に対する周波数成分毎の強度分布(以下「周波数強度分布」ということがある。)を示す情報を含む。「距離」とは、光ファイバ1における光信号受信部12からの距離である。図7Bは、図7Aに示す4次の定在波に対応する周波数成分について、距離に対する振動の強度分布の例を示している。図7Bに示す如く、個々の腹に対応する距離における振動の強度は、他の距離における振動の強度に比して大きい。また、個々の節に対応する距離における振動の強度は、他の距離における振動の強度に比して小さい。これは、いずれの周波数成分に対応する定在波においても共通の特徴である。換言すれば、特定の周波数fについて、管路PL内に定在波が発生している場合、かかる強度分布の特徴が現れる。
【0046】
伝搬特性検出部13は、かかる強度分布の特徴が現れている周波数fを選択する。伝搬特性検出部13は、かかる強度分布の特徴に基づき、当該選択された周波数fに対応する定在波における互いに隣接する腹の間隔m、又は当該選択された周波数fに対応する定在波における互いに隣接する節の間隔mを算出する。図7Bにおいては、図7Aに示す4次の定在波における互いに隣接する節の間隔mが図示されている。伝搬特性検出部13は、当該算出された間隔mを用いて、以下の式(1)により、上記選択された周波数fに対応する定在波の波長λを算出する。
【0047】
λ=m×2 (1)
【0048】
伝搬特性検出部13は、上記選択された周波数f及び当該算出された波長λを用いて、管路PLの内部における音速vを算出する。具体的には、例えば、伝搬特性検出部13は、以下の式(2)により音速vを算出する。すなわち、音速vは、管路PLの内部における振動の伝搬速度に対応している。換言すれば、伝搬特性検出部13により、管路PLの内部における振動の伝搬特性として、かかる振動の伝搬速度が検出される。
【0049】
v=f×λ (2)
【0050】
通常、音速は、媒質に応じて大きく異なり得る。例えば、空気中の音速は、水中の音速に対して約4倍の値である。一例として、環境温度が20度であるとき、空気中の音速が345メートル毎秒であるのに対して、水中の音速が1479メートル毎秒である。
【0051】
そこで、浸水検出部14は、伝搬特性検出部13により算出された音速vが空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを判定する。かかる音速vが空気中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水が発生していないと判定する。他方、かかる音速vが水中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水が発生していると判定する。このようにして、管路PLにおける浸水の発生の有無が検出される。
【0052】
なお、浸水検出部14による判定は、判定用のモデルを用いるものであっても良い。例えば、管路PLにおける想定される環境温度毎に、以下のようなモデルが予め用意されている。すなわち、音速vの値が入力されたとき、当該入力された値が空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを示す情報を出力するようなモデルが予め用意されている。かかるモデルは、例えば、機械学習により生成されたものである。浸水検出部14は、上記算出された音速vを、かかるモデルに入力する。これにより、上記算出された音速vが空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを示す情報が出力される。このようにして、上記算出された音速vが空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかが判定される。
【0053】
また、浸水検出部14による判定は、判定用の閾値を用いるものであっても良い。例えば、管路PLにおける想定される環境温度毎に、空気中の音速と水中の音速とを識別可能な閾値が予め設定されている。浸水検出部14は、上記算出された音速vを当該設定された閾値と比較することにより、上記算出された音速vが空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを判定する。このとき、浸水の発生を高精度に検出する観点から、かかる閾値は、水中の音速に近い値に設定されたものであっても良い。
【0054】
また、伝搬特性検出部13及び浸水検出部14は、互いに異なる複数個の周波数成分に対応する定在波を用いるものであっても良い。換言すれば、伝搬特性検出部13及び浸水検出部14は、これらの定在波に対応する複数個の周波数fを用いるものであっても良い。すなわち、伝搬特性検出部13は、当該複数個の周波数fの各々について、音速vを算出する。これにより、当該複数個の周波数fに対応する複数個の音速vが算出される。
【0055】
次いで、浸水検出部14は、上記算出された複数個の音速vによる統計値(より具体的には平均値)を算出する。浸水検出部14は、かかる統計値が空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを判定する。かかる統計値が空気中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水が発生していないと判定する。他方、かかる統計値が水中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、管路PLにおける浸水が発生していると判定する。
【0056】
または、浸水検出部14は、上記算出された複数個の音速vの各々について、空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを判定する。浸水検出部14は、当該複数個の音速vのうちの所定個(例えば1個)以上の音速vが水中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、浸水の発生があると判定する。そうでない場合、浸水検出部14は、浸水の発生がないと判定する。
【0057】
このように、複数個の周波数fを用いることにより、1個の周波数fのみを用いる場合に比して、浸水の発生の有無の検出精度の向上を図ることができる。
【0058】
なお、浸水により管路PL内に侵入する水の量によっては、管路PL内の下方が水で満たされており、かつ、管路PL内の上方が空気で満たされているような状態が生じ得る。この場合、管路PL内のうちの水で満たされた部分においては、水中の音速に応じた間隔mを有する定在波が発生する。また、管路PL内のうちの空気で満たされた部分においては、空中の音速に応じた間隔mを有する定在波が発生する。このため、かかる水で満たされた部分に光ファイバ1が配置されている場合、伝搬特性検出部13により水中の音速に対応する伝搬特性(伝搬速度)が検出されて、浸水検出部14により浸水の発生があると判定される。他方、かかる空気で満たされた部分に光ファイバ1が配置されている場合、伝搬特性検出部13により空気中の音速に対応する伝搬特性(伝搬速度)が検出されて、浸水検出部14により浸水の発生がないと判定される。したがって、浸水の発生を正確に検出する観点から、光ファイバ1は、管路PL内の下方に配置されるのが好適である。
【0059】
次に、図8A及び図8Bを参照して、第2の具体例について説明する。第2の具体例においては、管路PLにおける浸水の発生の有無が検出されるとともに、かかる浸水が発生している区間が検出される。
【0060】
光ファイバ1を用いた分散型光ファイバセンシングにより、光ファイバ1上の任意の地点における振動の強度の時間変化が検出される。ここで、上記のとおり、管路PLの内部を伝搬する音は、減衰し難い。このため、かかる音により発生する振動の強度の時間変化は、異なる2個の地点(すなわち異なる2個の距離)にて、かつ、異なる2個の時点にて検出され得る。換言すれば、かかる音により発生する振動は、異なる2個の地点(すなわち異なる2個の距離)にて、かつ、異なる2個の時点にて検出され得る。
【0061】
例えば、図8Aに示す如く、ある音により発生した振動が、所定の地点P1(すなわち所定の距離D1)にて、かつ、ある時点T1にて検出されたものとする。その後、かかる音が管路PLの内部を伝搬することにより、図8Bに示す如く、かかるに対応する振動が、他の所定の地点P2(すなわち他の所定の距離D2)にて、かつ、他の時点T2にて検出されたものとする。以下、地点P1を「第1地点」ということがある。また、地点P2を「第2地点」ということがある。
【0062】
このとき、第1地点P1及び第2地点P2の各々が所定の地点であるため、第1地点P1と第2地点P2間の間隔ΔPは、既知である。また、伝搬特性検出部13は、第1時点T1と第2時点T2との差に基づき、上記振動が第1地点P1から第2地点P2に伝搬する時間ΔTを検出する。伝搬特性検出部13は、以下の式(3)により、管路PLの内部における振動の伝搬速度Vを算出する。
【0063】
V=ΔP/ΔT (3)
【0064】
このように、伝搬特性検出部13は、管路PLの内部における振動の伝搬特性として、管路PLの内部における振動の伝搬速度を検出する。より具体的には、伝搬特性検出部13は、第1地点P1と第2地点P2間における振動の伝搬速度Vを検出する。伝搬速度Vは、管路PLの内部における音速に対応している。より具体的には、伝搬速度Vは、第1地点P1と第2地点P2間における音速に対応している。
【0065】
そこで、浸水検出部14は、伝搬特性検出部13により算出された伝搬速度Vに基づき、第1の具体例にて説明した方法と同様の方法により、配管PLにおける浸水の発生の有無を検出する。より具体的には、浸水検出部14は、配管PLのうちの第1地点P1と第2地点P2との間の区間における浸水の有無を検出する。すなわち、浸水検出部14は、上記算出された伝搬速度Vが空気中の音速に対応する値であるか水中の音速に対応する値であるかを判定する。かかる伝搬速度Vが空気中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、浸水が発生していないと判定する。他方、かかる伝搬速度Vが水中の音速に対応する値である場合、浸水検出部14は、浸水が発生していると判定する。
【0066】
ここで、管路PLにおいては、第1地点P1と第2地点P2の組合せ(P1,P2)について、互いに異なる複数個の組合せ(P1,P2)が設定され得る。具体的には、例えば、互いに非重畳に配置された複数個の区間に対応する複数個の組合せ(P1,P2)が設定され得る。伝搬特性検出部13は、当該複数個の組合せ(P1,P2)の各々について、伝搬速度Vを算出するものであっても良い。浸水検出部14は、当該複数個の組合せ(P1,P2)の各々について、浸水の発生の有無を検出するものであっても良い。これにより、当該複数個の区間の各々における浸水の発生の有無が検出される。この結果、配管PLにおける浸水が発生している区間が検出される。
【0067】
なお、上記のとおり、浸水により管路PL内に侵入する水の量によっては、管路PL内の下方が水で満たされており、かつ、管路PL内の上方が空気で満たされているような状態が生じ得る。この場合、管路PL内のうちの水で満たされた部分においては、水中の音速に対応する伝搬速度Vにて上記振動が伝搬する。また、管路PL内のうちの空気で満たされた部分においては、空気中の音速に対応する伝搬速度Vにて上記振動が伝搬する。このため、かかる水で満たされた部分に光ファイバ1が配置されている場合、伝搬特性検出部13により水中の音速に対応する伝搬特性(伝搬速度)が検出されて、浸水検出部14により浸水の発生があると判定される。他方、かかる空気で満たされた部分に光ファイバ1が配置されている場合、伝搬特性検出部13により空気中の音速に対応する伝搬特性(伝搬速度)が検出されて、浸水検出部14により浸水の発生がないと判定される。したがって、浸水の発生を正確に検出する観点から、光ファイバ1は、管路PL内の下方に配置されるのが好適である。
【0068】
次に、浸水検出システム100を用いることによる効果について説明する。
【0069】
上記のとおり、浸水検出システム100を用いることにより、管路PLの浸水を検出することができる。特に、光ファイバ1に既設の光ファイバ(例えば通信用の光ファイバ)を用いることにより、管路PLの内部に浸水を検出するための専用のデバイス(例えば専用の光ファイバ又は専用のセンサ)を設置するのを不要とすることができる。この結果、これらのデバイスを不要とした簡単なシステム構成による浸水の検出を実現することができる。
【0070】
次に、浸水検出システム100の変形例について説明する。
【0071】
管路PLにおける光ファイバ1の配置は、図1に示す例に限定されるものではない。光ファイバ1は、伝搬特性検出部13による伝搬特性の検出、及び浸水検出部14による浸水の検出が可能となるような状態にて、管路PLに沿って設けられたものであれば良い。例えば、光ファイバ1は、管路PLの長手方向に沿うように直線状に設けられるのに代えて、管路PLの内周面部に沿うように螺旋状に設けられるものであっても良い。また、例えば、光ファイバ1は、管路PLの内周面部から離れた位置に設けられるものであっても良い。ただし、上記のとおり、浸水の発生を正確に検出する観点から、光ファイバ1は、管路PL内の下方に配置されるのが好適である。
【0072】
次に、図9を参照して、浸水検出システム100の他の変形例について説明する。
【0073】
光ファイバ1は、1本の管路PLに沿って設けられるのに代えて、複数本の管路PLに沿って設けられるものであっても良い。例えば、図9に示す如く、光ファイバ1は、2本の管路PL_1,PL_2に沿って設けられるものであっても良い。
【0074】
この場合、伝搬特性検出部13は、複数本の管路PLの各々における振動の伝搬特性を検出する。複数本の管路PLの各々における伝搬特性の検出方法は、1本の管路PLにおける伝搬特性の検出方法と同様である。また、浸水検出部14は、当該検出された伝搬特性に基づき、複数本の管路PLの各々における浸水を検出する。複数本の管路PLの各々における浸水の検出方法は、1本の管路PLにおける浸水の検出方法と同様である。
【0075】
なお、複数本の管路PLは、音響的に互いに分離されているのが好適である。具体的には、例えば、図9に示す例において、管路PL_1,PL_2が互いに独立して設けられていることにより(すなわち管路PL_1,PL_2が互いに非連通であることにより)、管路PL_1,PL_2が音響的に互いに分離されている。または、例えば、管路PL_1,PL_2が互いに連通している場合、管路PL_1,PL_2の間に遮音材が設けられていることにより、管路PL_1,PL_2が音響的に互いに分離されている。
【0076】
例えば、図9に示す例において、上記第1の具体例を適用することを考える。この場合、検出されるべき音響特性は、管路PL_1の両端部(A,B)を反射点とする音響特性及び管路PL_2の両端部(C,D)を反射点とする音響特性である。しかしながら、仮に管路PL_1,PL_2が音響的に互いに分離されていない場合、管路PL_1の内部における音が管路PL_2の内部に伝搬し得る。同様に、管路PL_2の内部における音が管路PL_1の内部に伝搬し得る。この結果、(A,B)及び(C,D)の反射点の組合せに加えて、(A,C)、(B,D)、(B,C)及び(A,D)などの反射点の組合せについても定在波が発生し得るため、音波の伝搬が複雑になる懸念がある。換言すれば、検出されるべき定在波が、他の定在波により覆い隠されてしまう懸念がある。これに対して、管路PL_1,PL_2が音響的に互いに分離されていることにより、かかる懸念を解消することができる。
【0077】
次に、図10を参照して、浸水検出装置2の変形例について説明する。また、図11を参照して、浸水検出システム100の他の変形例について説明する。
【0078】
図10に示す如く、光信号受信部12、伝搬特性検出部13及び浸水検出部14により浸水検出装置2の要部が構成されているものであっても良い。この場合、光信号送信部11及び出力制御部15は、浸水検出装置2の外部に設けられるものであっても良い。また、この場合において、光ファイバ1が通信用であるとき、光信号送信部11は、光ファイバ1を用いる光通信装置(不図示)に設けられるものであっても良い。
【0079】
図11に示す如く、光信号受信部12、伝搬特性検出部13及び浸水検出部14により浸水検出システム100の要部が構成されているものであっても良い。この場合、光ファイバ1は、浸水検出システム100の外部に設けられるものであっても良い。また、光信号送信部11及び出力制御部15は、浸水検出システム100の外部に設けられるものであっても良い。また、出力装置3は、浸水検出システム100の外部に設けられるものであっても良い。また、この場合において、光ファイバ1が通信用であるとき、光信号送信部11は、光ファイバ1を用いる光通信装置(不図示)に設けられるものであっても良い。
【0080】
これらの場合であっても、上記のような効果を奏することができる。すなわち、光信号受信部12は、管路PLに沿って設けられた光ファイバ1からセンシング情報を含む光信号を受信する。伝搬特性検出部13は、光信号に含まれるセンシング情報を用いて、管路PL内における振動の伝搬特性を検出する。浸水検出部14は、伝搬特性に基づき、管路PL内の浸水を検出する。これにより、管路PL内の浸水を検出することができる。特に、光ファイバ1に既設の光ファイバを用いることにより、浸水を検出ための専用のデバイスを管路PL内に設置するのを不要とすることができる。
【0081】
なお、浸水検出システム100は、光信号受信部12、伝搬特性検出部13及び浸水検出部14に加えて、光信号送信部11及び出力制御部15のうちの少なくとも一方を含むものであっても良い(不図示)。浸水検出システム100の各部は、独立した装置により構成されているものであっても良い。これらの装置は、地理的に又はネットワーク的に分散されたものであっても良い。例えば、これらの装置は、エッジコンピュータ及びクラウドコンピュータを含むものであっても良い。
【0082】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0083】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0084】
[付記]
[付記1]
管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、
前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、
を備える浸水検出装置。
[付記2]
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記1に記載の浸水検出装置。
[付記3]
前記センシング情報は、前記管路内の第1地点における前記振動の強度の時間変化及び前記管路内の第2地点における前記振動の強度の時間変化を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記センシング情報を用いて、前記振動が前記第1地点から前記第2地点に伝搬する時間を検出することにより、前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記1に記載の浸水検出装置。
[付記4]
前記浸水検出手段は、前記管路のうちの前記第1地点と前記第2地点との間の区間における前記浸水を検出することを特徴とする付記3に記載の浸水検出装置。
[付記5]
前記浸水検出手段による検出の結果に応じて通知が出力されることを特徴とする付記1から付記4のうちのいずれか一つに記載の浸水検出装置。
[付記6]
管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、
前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、
を備える浸水検出システム。
[付記7]
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記6に記載の浸水検出システム。
[付記8]
前記センシング情報は、前記管路内の第1地点における前記振動の強度の時間変化及び前記管路内の第2地点における前記振動の強度の時間変化を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記センシング情報を用いて、前記振動が前記第1地点から前記第2地点に伝搬する時間を検出することにより、前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記6に記載の浸水検出システム。
[付記9]
前記浸水検出手段は、前記管路のうちの前記第1地点と前記第2地点との間の区間における前記浸水を検出することを特徴とする付記8に記載の浸水検出システム。
[付記10]
前記浸水検出手段による検出の結果に応じて通知が出力されることを特徴とする付記6から付記9のうちのいずれか一つに記載の浸水検出システム。
[付記11]
光信号受信手段が、管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信し、
伝搬特性検出手段が、前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出し、
浸水検出手段が、前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出する
浸水検出方法。
[付記12]
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記11に記載の浸水検出方法。
[付記13]
前記センシング情報は、前記管路内の第1地点における前記振動の強度の時間変化及び前記管路内の第2地点における前記振動の強度の時間変化を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記センシング情報を用いて、前記振動が前記第1地点から前記第2地点に伝搬する時間を検出することにより、前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記11に記載の浸水検出方法。
[付記14]
前記浸水検出手段は、前記管路のうちの前記第1地点と前記第2地点との間の区間における前記浸水を検出することを特徴とする付記13に記載の浸水検出方法。
[付記15]
前記浸水検出手段による検出の結果に応じて通知が出力されることを特徴とする付記11から付記14のうちのいずれか一つに記載の浸水検出方法。
[付記16]
コンピュータを、
管路に沿って設けられた光ファイバからセンシング情報を含む光信号を受信する光信号受信手段と、
前記光信号に含まれる前記センシング情報を用いて、前記管路内における振動の伝搬特性を検出する伝搬特性検出手段と、
前記伝搬特性に基づき、前記管路内の浸水を検出する浸水検出手段と、
として機能させるためのプログラムが記録された記録媒体。
[付記17]
前記センシング情報は、前記振動に対応する周波数強度分布を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記周波数強度分布に基づき、前記振動に対応する定在波の節及び腹のうちの少なくとも一方を検出することにより前記定在波の波長を検出して、前記定在波の周波数及び前記波長に基づき前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記16に記載の記録媒体。
[付記18]
前記センシング情報は、前記管路内の第1地点における前記振動の強度の時間変化及び前記管路内の第2地点における前記振動の強度の時間変化を含み、
前記伝搬特性は、前記振動の伝搬速度を含み、
前記伝搬特性検出手段は、前記センシング情報を用いて、前記振動が前記第1地点から前記第2地点に伝搬する時間を検出することにより、前記伝搬速度を検出する
ことを特徴とする付記16に記載の記録媒体。
[付記19]
前記浸水検出手段は、前記管路のうちの前記第1地点と前記第2地点との間の区間における前記浸水を検出することを特徴とする付記18に記載の記録媒体。
[付記20]
前記プログラムは、前記コンピュータを、前記浸水検出手段による検出の結果に応じて通知を出力する制御を実行する出力制御手段として機能させることを特徴とする付記16から付記19のうちのいずれか一つに記載の記録媒体。
【符号の説明】
【0085】
1 光ファイバ
2 浸水検出装置
3 出力装置
11 光信号送信部
12 光信号受信部
13 伝搬特性検出部
14 浸水検出部
15 出力制御部
16 光信号送受信部
21 コンピュータ
31 送信機
32 受信機
33 プロセッサ
34 メモリ
35 処理回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11