(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/224 20060101AFI20240717BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240717BHJP
H01C 1/034 20060101ALI20240717BHJP
H01F 27/23 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01G4/224 100
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01C1/034
H01F27/23
(21)【出願番号】P 2023508811
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022007004
(87)【国際公開番号】W WO2022202039
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021054078
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】星野 悠太
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197509(JP,A)
【文献】特開平04-266006(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140903(WO,A1)
【文献】特開平09-162016(JP,A)
【文献】特開平06-244008(JP,A)
【文献】特開2005-005412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/224
H01G 4/30
H01C 1/034
H01F 27/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック素体と、該セラミック素体の表面の一部に設けられた外部電極と、前記セラミック素体の前記表面の少なくとも一部を覆うガラス層とを備え、
前記ガラス層はケイ素原子、チタン原子およびジルコニウム原子を含み、前記ガラス層は、チタン分散比率が90%以上であり、ジルコニウム分散比率が60%以上である、電子部品。
【請求項2】
前記チタン分散比率が95%以上であり、ジルコニウム分散比率が75%以上である、請求項1に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関し、より詳細には、セラミック素体と、該セラミック素体の表面の一部を覆うガラス層とを備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック素体を含む電子部品では、セラミック素体の両側に、回路基板等に実装するための外部電極を備え得る。例えば特許文献1では、セラミック素体(サーミスタチップ)の両端部に端子電極を設け、端子電極の表面に電解めっきにより金属めっき層を形成している。電解めっきのときに、セラミック素体の側面にめっき膜が形成されることを防止するために、セラミック素体の側面を、ガラス層などの高抵抗層で覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、セラミック素体の側面にガラス層を形成した後に電解めっきを行うため、ガラス層はめっき液に接触する。
しかしながら、ガラスはめっき液に対する耐性が低いことがあり、めっき工程中にガラス層がセラミック素体から剥離するおそれがある。ガラス層が剥離すると、セラミック素体の側面にめっき膜が形成され得るため、ガラス層の剥離を抑制することが求められる。
そこで本発明は、めっき液に対して耐性のあるガラス層を備えた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの要旨によれば、セラミック素体と、該セラミック素体の表面の一部に設けられた外部電極と、前記セラミック素体の前記表面の少なくとも一部を覆うガラス層とを備え、前記ガラス層はケイ素原子、チタン原子およびジルコニウム原子を含み、前記ガラス層は、チタン分散比率が90%以上であり、ジルコニウム分散比率が60%以上である、電子部品が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、めっき液に対して耐性のあるガラス層を形成しているので、電解めっき時のガラス層の剥離を抑制できる電子部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】は、本発明の実施形態における例示的な電子部品の概略模式断面図である。
【
図2】本発明の実施形態において、ガラス層の断面図のTEM像および該TEM像からEDX分析によりTiおよびZrの分布を調べた結果を示す。
【
図3】本発明の実施形態において、ガラス層の断面図のTEM像および該TEM像からEDX分析によりTiおよびZrの分布を調べた結果を示す。
【
図4】本発明の実施例におけるセラミック素体の概略模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の電子部品は、セラミック素体と、該セラミック素体の表面に設けられた外部電極と、前記セラミック素体の前記表面の少なくとも一部を覆うガラス層とを備え、前記ガラス層はケイ素原子、チタン原子およびジルコニウム原子を含み、前記ガラス層は、チタン分散比率が90%以上であり、ジルコニウム分散比率が60%以上である。
【0009】
発明者らは、鋭意検討した結果、ガラス層の特性を示す指標として、新たに「チタン分散比率」と「ジルコニウム分散比率」という概念を規定し、それらがガラス層の耐めっき液性と相関性を有することを新たに見出して本発明を完成するに至った。
以下に、本発明に係る電子部品について説明する。
【0010】
電子部品は、セラミック素体と、該セラミック素体の表面に設けられた外部電極およびガラス層を備えるものであれば、セラミック素体の形状、寸法および材料、ならびに外部電極の数、配置および形状等は特に限定されない。セラミック素体は内部電極を埋設していても、いなくてもよく、存在する場合には内部電極は外部電極に適切な態様で電気的に接続される。
【0011】
本実施形態に利用可能な電子部品は、例えば表面実装型、特にチップ部品であり得、より詳細には、積層セラミックコンデンサ等のコンデンサ(キャパシタ)、巻線インダクタ、フィルムインダクタ、積層インダクタ等のインダクタ(コイル)、チップ抵抗器等の抵抗器、トランジスタ、LC複合部品などであり得る。
【0012】
例示的には、本実施形態の電子部品10は、
図1に示すような積層セラミックコンデンサであり得、セラミック材料からなるセラミック部3およびセラミック部3を介して互いに対向する内部電極5a、5bを含むセラミック素体1と、セラミック素体1の表面に設けられ、かつ内部電極5a、5bとそれぞれ電気的に接続された外部電極9a、9bとを備える。より詳細には、内部電極5a、5bは、セラミック素体1に埋設され、セラミック素体1の対向する端面から交互に露出するように積層され、それぞれ外部電極9a、9bと電気的に接続されている。しかしながら、本実施形態の電子部品10は、
図1に例示するものに限定されず、上述したような種々の電子部品であり得る。
【0013】
本実施形態の電子部品10において、
図1に示すように、セラミック素体1の表面に接触するガラス層6を含む。ガラス層6は、セラミック素体1の表面の少なくとも一部を覆っている。ガラス層6は、外部電極9a、9bが設けられていないセラミック素体1の表面のうち、少なくとも一部を覆っていることが好ましく、全てを覆っていることがより好ましい。さらに、
図1に示すように、ガラス層6の一部を、外部電極9a、9bで覆われているセラミック素体1の表面にも設けてもよい。
ガラス層6は絶縁性であるので、内部電極5a、5bを避けた位置に形成する。内部電極が存在しない電子部品(例えば、巻き線インダクタ)であれば、セラミック素体1の全面にガラス層6を形成してもよい。
【0014】
なお、TiおよびZrを含む本発明のガラス層の変形例として、金属を含むことにより導電性を付与したガラス層を用いてもよい。導電性のガラス層であれば、内部電極5a、5b上に設けることもできる。
導電性のガラス層の比抵抗は内部電極との導通確保のため、比抵抗は1.0×10-2Ω・cm未満であることが望ましい。
【0015】
ガラス層6を上記のように構成することにより、めっき層を形成するときに、外部電極9a、9bで覆われていないセラミック素体1の表面を保護することができる。
【0016】
ガラス層6は、チタン原子とジルコニウム原子とを含む。それらの含有量および分散状態は、「チタン分散比率」および「ジルコニウム分散比率」として把握することができる。
「チタン分散比率」は、ガラス層の断面において、チタン(Ti)元素が存在すると判断された領域の面積率に相当する。同様に、「ジルコニウム分散比率」は、ガラス層の断面において、ジルコニウム(Zr)元素が存在すると判断された領域の面積率に相当する。
例えば、断面の観察範囲全体(観察範囲の面積の100%)にチタン元素が存在すると判断されると、チタン分散比率は100%になる。
また、例えば、断面の観察範囲の面積の80%にジルコニウム元素が存在すると判断されると、ジルコニウム分散比率は80%になる。
【0017】
ガラス層6におけるチタン分散比率およびジルコニア分散比率が高いと、ガラス層6の耐めっき液性が向上できるメカニズムは定かではないが、以下のように推測される。
まず、ガラス層6がめっき液に接触すると、ガラス層6の表面が溶解して厚さが減少する。めっき液のpHがアルカリ性である場合は、ガラス層の網目構造を破壊してしまうことが考えられる。他にも、めっき液に含まれる成分と、ガラス層6を構成する金属酸化物の安定度定数が影響していると考えられ、安定度定数が高いと、ガラス層6を構成する金属酸化物の溶解が起き得る。ガラス層6が徐々に溶解することにより、ガラス層6とセラミック素体1との間の結合が脆弱になり、それらの間の剥離が進行する。
【0018】
本実施の形態では、ゾル-ゲル法を用いてガラス層6を形成しているため、ガラス層6の中ではSiO2、TiO2、ZrO2などの酸化物が単独で存在しているだけでなく、Si-O-TiやSi-O-Zrなどのネットワークを形成していると推測される。TiO2およびZrO2は化学的安定性が高いことに加え、さらにSi-O-Ti、Si-O-Zrとして強固に結合しているため、ガラス層6内にTi,Zrが多く含まれている(つまり、チタン分散比率およびジルコニア分散比率が高い)ことにより、ガラス層6の溶解が抑制されて、耐めっき液性が向上する。その他、Si4+イオンよりイオン半径が大きく酸素イオンとの結合強度も大きいTi4+、Zr4+が、網目構造の空間に入り込んでいることも考えられる。
【0019】
本発明では、ガラス層におけるチタン分散比率が90%以上であり、ジルコニウム分散比率が60%以上であることにより、耐めっき性に優れたガラス層を得ることができる。
チタン分散比率は、好ましくは95%以上であり、より好ましくは99%であり、さらに好ましくは99.9%であり、上限は100%である。
ジルコニウム分散比率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは78%であり、さらに好ましくは99.9%であり、上限は100%である。
【0020】
なお、チタン分散比率が90%以上、かつジルコニウム分散比率が60%以上のように、チタン分散比率とジルコニウム分散比率の両方が高いレベルにあると、ガラス層6の耐めっき液特性は大幅に改善し得る。しかしながら、チタンとジルコニウムはいずれも同様の作用によって耐めっき液性を向上していることから、チタン分散比率が90%以上、またはジルコニウム分散比率が60%以上のいずれか一方のみを満足するガラス層6であっても、従来のガラス層に比べると耐めっき液性を向上することができる。
【0021】
「チタン分散比率」と「ジルコニウム分散比率」は、EDX像の強度データを用いて、以下の手順1)~7)で求める。
まず「チタン分散比率」を例にとって説明する。
【0022】
1)TEM-EDXにより、ガラス層6の断面を倍率約20万倍で観察し、同じ観察領域について、TEM像とTiのEDXマッピング像を取得する。このとき、ガラス層6とセラミック素体1との界面が、画面上で水平になるように取得することが好ましい(
図2参照)。それらの界面は多少傾斜していてもよく(
図3参照)、例えば、傾斜角(画面上の水平方向と界面とのなす角度)が20°以内であればよい。傾斜角が20°を超える場合は、20°以内となるように画像処理によりは修正するか、ガラス層6の別の部分の画像に変更する。
【0023】
2)TEM-EDX装置(FE-TEM/EDX(JEOL JEM-F200(日本電子株式会社製)/分析システム Noran system 7(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)))を用いて、TiのEDX像から、強度データをCVSファイルとして取り出す。CVSファイルに含まれる数値データは、マトリクス状の数値データとする。一例としては、256行×256列のマトリクス状の数値データが挙げられる。これらの数値データの各々は、TEM像およびEDX像を縦方向に256分割×横方向に256分割した小区画の各々における強度に相当する。マトリクス状の数値データは、例えば表計算ソフトウェアの形式で出力すると、以降の手順の処理が容易である。
【0024】
3)CVSファイルの数値データを規格化する。CVSファイルに含まれる数値データのうち最大値(Vmax)を決定し、当該最大値を用いた係数(100/Vmax)を決定する。
【0025】
4)決定した係数を、CVSファイルの全数値データにかけ算する。これにより、数値データの最大値が100となるように、全数値データを規格化できる。
【0026】
5)TEM像を頼りにガラス層6の範囲を決定する。
図2では、ガラス層6とセラミック素体1との界面を通る水平方向の線(下側の破線)と、ガラス層6とサンプル切断用の保護膜との界面を通る水平方向の線(上側の破線)を引き、それら2本の破線で挟まれた領域を「測定対象領域」とする。「測定対象領域」は、必ず矩形(長方形または正方形)となる。
なお、
図3のように、それらの界面が水平方向から傾斜している場合は、下側の破線は、ガラス層6とセラミック素体1との界面のうち最も高い位置を通るように水平に引き、上側の破線は、ガラス層6と保護膜との界面のうち最も低い位置を通るように水平に引く。このように破線を引くことにより、2本の破線で挟まれた「測定対象領域」には、ガラス層6のみが含まれるようになる。
【0027】
6)TEM像の横にTiのEDX像を並べて、上下の破線をEDX像まで延長する(
図2)。破線と各EDX像の左右の縁部とが交差した位置(ガラス層6の4隅の位置)を、それぞれのCVSファイル内のマトリクスデータ上で特定する。例えば、右下の隅部の位置は、マトリクス状の数値データのうち最右欄にあり、かつ下から上に向かって数値の変化を見たときに、数値が有意な値(例えば、数値が10以上)になる位置と見なすことができる。マトリクス状の数値データ上で特定された「4隅」で囲まれた範囲の数値データが、EDX像において2本の破線で挟まれた「測定対象領域」に含まれる強度データに相当する。なお、マトリクス状の数値データ上において、4隅の位置を全て特定する代わりに、対角線上にある2つの隅部の位置を特定して、その2つの隅部を有する矩形範囲で囲まれた数値データが、EDX像で特定した「測定対象領域」に含まれる強度データに相当する。
【0028】
また、
図3のようにガラス層6の界面が傾斜している場合には、破線と各EDX像の左右の縁部とが交差する4つの位置のうち、ガラス層6と他の層(セラミック素体1または保護膜)との界面に隣接する2つの隅部に着目する。
図3では、ガラス層6と保護膜との界面近傍にある左上の隅部と、ガラス層6とセラミック素体1との界面近傍にある右下の隅部の2つであり、それら2つの隅部は矩形の「測定対象領域」の対角線上にある。この2つの隅部の位置を、上述したような手法でCVSファイル内のマトリクス状の数値データ上で特定する。その2つの隅部を有する矩形範囲で囲まれた数値データが、EDX像で特定した「測定対象領域」に含まれる強度データに相当する。
【0029】
なお、ガラス層6とセラミック素体1との界面、またはガラス層6と保護膜との界面に空隙が生じることがある。空隙が4隅のいずれかの位置にある場合には、空隙に面しているガラス層6の表面を「界面」として扱って2つの隅部を決定する。これにより、「測定対象領域」を明確に定義することができる。
【0030】
7)マトリクス状の数値データ上において「測定対象領域」に対応するとして特定された矩形範囲内にある数値データの総数(「Ntitotal」とする)と、該矩形範囲内にあり20以上の数値データの個数(「Nti20」とする)とを数える。
【0031】
8)NtitotalとNti20を下式(1)に代入して、「チタン分散比率」を求める
チタン分散比率(%)=Nti20/Ntitotal×100・・・(1)
【0032】
ジルコニウム分散比率も、ガラス層6の断面のTEM像とZrのEDXマッピング像を取得し、同様の手順により、マトリクス状の数値データ上において「測定対象領域」に対応するとして特定された矩形範囲内にある数値データの総数(「Nzrtotal」とする)と、該矩形範囲内にあり20以上の数値データの個数(「Nzr20」とする)とを数え、下式(2)に代入して「ジルコニウム分散比率」を求める
ジルコニウム分散比率(%)=Nzr20/Nzrtotal×100・・・(2)
【0033】
チタン分散比率が100%ということは、Nti20=Ntitotalということである。つまり、TiのEDX像上に規定した「測定対象領域」の全てにチタンが観察されたことを意味する。そのような場合、チタンは「測定対象領域」に均一分散していると見なすこともできる。このように、チタン分散比率が高い場合には、「測定対象領域」内においてチタンが比較的均一に分散していると推測することができる。
同様に、ジルコニウム分散比率が高い場合には、「測定対象領域」内においてジルコニウムが比較的均一に分散していると推測することができる。
【0034】
また、チタン分散比率およびジルコニウム分散比率を向上するためには、ガラス層6の空隙率が低いことが望ましい。空隙が存在するとその部分にはチタンおよびジルコニウムを存在させることができない。そのため、「測定対象領域」内に空隙が存在すると、Nti20の値およびNzr20の値が小さくなり、チタン分散比率およびジルコニウム分散比率が低くなる。そのため、ガラス層6は緻密であることが好ましい。
【0035】
ガラス層6は、厚さが0.01μm以上2μm以下であることが好ましい。このような薄いガラス層6は、例えばゾル-ゲル法を用いることで形成することができる。
【0036】
外部電極9は、下地電極層と、下地電極層上に配置されためっき層とを含み得る。下地電極層は、焼き付け層、樹脂層および薄膜層の少なくとも1つを含み得る。下地電極層の厚さは、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0037】
焼き付け層は、ガラスと金属とを含む。焼き付け層を構成する金属材料としては、Ni、Cu、Ag、PdおよびAuからなる群より選ばれる1種の金属、または、この金属を含む合金で構成されており、たとえばAgとPdとの合金などを用いることができる。ガラスは、SiおよびZnを含む。焼き付け層は、積層された複数の層で構成されていてもよい。焼き付け層としては、セラミック素体に導電性ペーストが塗布されて焼き付けられた層、または、内部電極5a、5bと同時に焼成された層であってもよい。
【0038】
樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む。樹脂層が設けられる場合は、焼付け層が設けられずに、樹脂層がセラミック素体上に直接設けられてもよい。樹脂層は、積層された複数の層で構成されていてもよい。樹脂層の最大厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0039】
薄膜層は、スパッタ法または蒸着法などの薄膜形成法により形成される。薄膜層は、金属粒子が堆積した1μm以下の層である。
【0040】
めっき層を構成する材料としては、Ni、Cu、Ag、Pd、Auからなる群より選ばれる1種の金属、または、この金属を含む合金で構成されており、たとえばAgとPdとの合金などを用いることができる。
【0041】
めっき層は、積層された複数の層で構成されていてもよい。この場合、めっき層としては、Niめっき層の上にSnめっき層が形成された2層構造であることが好ましい。Niめっき層は、下地電極層が電子部品を実装する際の半田によって浸食されることを防止する機能を有する。Snめっき層は、電子部品を実装する際の半田との濡れ性を向上させ、電子部品の実装を容易にする機能を有する。
【0042】
Niめっき層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。Snめっき層の平均厚さは、0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0043】
[製造方法]
本実施形態の電子部品10は、例えば以下の方法により製造可能である。
【0044】
1)セラミック素体1の準備
まず、セラミック素体1を準備する。セラミック素体1は、任意の適切な方法により作製され得る。
【0045】
例えば、セラミック素体1(より詳細にはセラミック部3)を構成するセラミック材料は、特に限定されず、電子部品に用いられるセラミック材料であれば特に限定されない。
図1に例示的に示した電子部品10は積層コンデンサであるので、セラミック材料は、誘電体材料であり、例えば、BaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3、CaZrO
3、(BaSr)TiO
3、Ba(ZrTi)O
3および(BiZn)Nb
2O
7等が挙げられる。存在する場合、内部電極5a、5bを構成する材料は、導電性であれば特に限定されず、例えば、Ag、Cu、Pt、Ni、Al、Pd、Au等が挙げられる。内部電極5a、5bを構成する材料は、Ag、Cu、及びNiが好ましい。
【0046】
なお、本実施形態に用いられるセラミック材料は、上記した材料に限定されず、電子部品の種類、構成等に応じて適宜選択され得る。例えば、電子部品が、フェライトコイル部品である場合には、セラミック材料は、Fe、Ni、Zn、Mn、Cu等を含むフェライト材料であってもよい。この場合、セラミック素体は、内部電極の代わりに、コイルを備えていればよい。かかるコイルは、最終的に外部電極に電気的に接続される限り、例えばセラミック素体に予め埋設されていても、外部電極を形成する前または後にセラミック素体の周囲に巻き付けられてもよい。
【0047】
2)ガラス層6の形成
次に、セラミック素体1の表面のうち、内部電極5a、5bを除いた領域にガラス層6を形成する。
【0048】
本実施形態では、ガラス層6は、溶液を用いた薄膜作製法にて形成し得る。薄膜作製法としては、ゾル-ゲル法、MOD(金属有機化合物分解法)法、CSD(chemical solution deposition)法などが利用できる。なお、これらの方法は同義に扱われることが多い。本明細書で使用する「ゾル-ゲル法」の用語は、特に説明がない限り、狭義の「ゾル-ゲル法」、MODおよびCSDを包含するものとして使用する。
【0049】
ゾル-ゲル法を用いてTiO2、ZrO2の前駆体から、ビルドアップでガラス層6を形成することで、細孔が少なく、緻密なガラス層6を形成することができる。また、ゾル-ゲル反応を緩やかに進行させることにより、ガラス層6内部に空隙が生じることを抑制しうる。ゾル-ゲル反応を緩やかに進行させる方法としては、原料組成物に使用する溶媒として、沸点の高いものを使用すること、加熱処理時の温度上昇率を低くすることなどが上げられる。
【0050】
ゾル-ゲル法を用いてガラス層6を形成する場合、ガラス層6を形成するための原料組成物を準備する。原料組成物は、ガラスの原料(ガラスの前駆体)、および有機高分子が溶媒中に溶解または分散した液状物(ペースト)であってもよい。
【0051】
[ガラスの前駆体]
ガラスの前駆体はガラス原料であり、ガラスのマトリクス(ガラス領域13)を生じ得る出発原料であればよい。ガラスの前駆体としては、ガラスの主骨格となるSiO2の前駆体に加え、TiO2、ZrO2の前駆体を必須で含み、さらにその他は適宜混合できる。ガラスの前駆体としては、金属アルコキシド、アセチルアセトナート錯体、酢酸塩等が挙げられる。また、それらの原料は、長鎖アルキル基やエポキシ基等の官能基で修飾されていてもよい。以下に、ガラスの前駆体として使用し得る化合物について説明する。
【0052】
(金属アルコキシド)
金属アルコキシドを合成可能な元素としては、Li, Be, B, C, Na, Mg, Al, Si, P, K, Ca, Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, Ge, As, Rb, Sr, Y, Zr, Nb, Mo, Cd, In, Sn, Sb, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Pm, Sm, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Hg, Tl, Pb, Bi, Th, Pa, U, Puが挙げられる。これらの元素のアルコキシドは、ガラスの前駆体として利用し得る。
【0053】
ガラスの前駆体として利用できる具体的な金属アルコキシドを以下に例示する。
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カルシウムジエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムエトキシド、リチウムtert-ブトキシド、リチウムメトキシド、ホウ素アルコキシド、カリウム t-ブトキシド、オルトケイ酸テトラエチル、アリルトリメトキシシラン、イソブチル(トリメトキシ)シラン、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラメチル、 [3-(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリエトキシビニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシメチルシラン、ブチルトリクロロシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメトキシ(メチル)オクチルシラン(Dimethoxy(methyl)octylsilane)、ジメトキシジメチルシラン、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、ヘキサデシルトリメトキシシラン、トリス(1,2-ベンゼンジオラート-O,O′)ケイ酸二カリウム(Dipotassium tris(1,2-benzenediolato-O,O′)silicate)、オルトケイ酸テトラブチル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウム 溶液、クロロトリイソプロポキシチタン(IV)、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV) 2-エチルヘキシルオキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)ブトキシド、チタン(IV)tert-ブトキシド、チタン(IV)プロポキシド、チタン(IV)メトキシド、ジルコニウム(IV)ビス(ジエチルシトレート)ジプロポキシド(Zirconium(IV) bis(diethyl citrato)dipropoxide)、ジルコニウム(IV)ジブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)(Zirconium(IV) dibutoxide(bis-2,4-pentanedionate))、ジルコニウム(IV)2-エチルヘキサノエート(Zirconium(IV) 2-ethylhexanoate)、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール錯体、ジルコニウム(IV)エトキシド、ジルコニウム(IV)ブトキシド、ジルコニウム(IV)tert-ブトキシド、ジルコニウム(IV)プロポキシド、アルミニウムtert-ブトキシド(Aluminum tert-butoxide)、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド、アルミニウムフェノキシド等の金属アルコキシド。
【0054】
(アセチルアセトナート錯体)
ガラスの前駆体として利用できる具体的なアセチルアセトナート錯体を以下に例示する。
リチウムアセチルアセトナート、チタン(IV)オキシアセチルアセトナート、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトナート)、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトナート(Zirconium(IV) trifluoroacetylacetonate)、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート、アセチルアセトン酸アルミニウム、アルミニウム(III)アセチルアセトナート、カルシウム(II)アセチルアセトナート、亜鉛(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトナートの金属錯体。
【0055】
(酢酸塩)
ガラスの前駆体として利用できる具体的な酢酸塩を以下に例示する。
酢酸ジルコニウム、酢酸水酸化ジルコニウム(IV)、塩基性酢酸アルミニウム等の酢酸塩。
【0056】
(ガラス用添加物)
ガラス層6に含まれるガラスは、以下に例示するような添加物(これを「ガラス用添加物」と称する)を含んでもよい。添加物は、粉末、微粒子またはナノ粒子の形態で混合し得る。
【0057】
ソーダ灰(炭酸ナトリウム Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、過炭酸ナトリウム(2Na2CO3・3H2O2)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、亜硫酸ナトリウム(NaNO2)等のオキソ酸の塩;フッ化ナトリウム(NaF)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)等のハロゲン化合物;過酸化ナトリウム(Na2O2)、水酸化ナトリウム(NaOH)等の酸化物;水酸化物や水素化ナトリウム(NaH)、硫化ナトリウム(Na2S)、硫化水素ナトリウム(NaHS)、珪酸ナトリウム(Na2SiO3)、リン酸三ナトリウム(Na3PO4)、ほう酸ナトリウム(Na3BO3)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、シアン化ナトリウム(NaCN)、シアン酸ナトリウム(NaOCN)、テトラクロロ金酸ナトリウム(Na[AuCl4])等の無機塩;酢酸ナトリウム(CH3COONa)、クエン酸ナトリウム等の有機酸塩。
【0058】
過酸化カルシウム(CaO2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、フッ化カルシウム(CaF2)、塩化カルシウム(CaCl2・2H2O)、臭化カルシウム(CaBr2・2H2O)、ヨウ化カルシウム(CaI2・3H2O)、水素化カルシウム(CaH2)、炭化カルシウム(CaC2)、リン化カルシウム(Ca3P2)等の無機塩;炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2・4H2O)、硫酸カルシウム(CaSO4・2H2O)、亜硫酸カルシウム(CaSO3)、ケイ酸カルシウム(CaSiO3またはCa2SiO4)、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)、ピロリン酸カルシウム(Ca2O7P2)、次亜塩素酸カルシウム(Ca[ClO]2)、塩素酸カルシウム(Ca(ClO3)2)、過塩素酸カルシウム(Ca(ClO4)2)、臭素酸カルシウム(Ca(BrO3)2)、ヨウ素酸カルシウム(Ca(IO3)2、H2O)、亜ヒ酸カルシウム(Ca3(AsO4)2)、クロム酸カルシウム(CaCrO4)、タングステン酸カルシウム(CaWO4)、モリブデン酸カルシウム(CaMoO4)、炭酸カルシウムマグネシウム(CaMg(CO3)2)、ハイドロキシアパタイト(Ca5(PO4)3(OH)またはCa10(PO4)6(OH)2)等のオキソ酸塩;酢酸カルシウム(Ca(CH3COO)2)、グルコン酸カルシウム(C12H22CaO14)、クエン酸カルシウム(Ca3(C6H5O7)2)、リンゴ酸カルシウム(Ca(C2H4O(COO)2)、乳酸カルシウム(C6H10CaO6)、安息香酸カルシウム(C14H10CaO4)、ステアリン酸カルシウム(Ca(C17H35COO)2)、アスパラギン酸カルシウム(Ca(C4H6NO4)2)等の有機塩。
【0059】
炭酸リチウム(Li2CO3)、塩化リチウム(LiCl)、チタン酸リチウム(Li2TiO3)、窒化リチウム(Li3N)、過酸化リチウム(Li2O2)、クエン酸リチウム(Li3C6H5O7)、フッ化リチウム(LiF)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、酢酸リチウム(C2H3LiO2)、ヨウ化リチウム(LiI)、次亜塩素酸リチウム(ClLiO)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、臭化リチウム(LiBr)、硝酸リチウム(LiNO3)、水酸化リチウム(LiOH)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、水素化トリエチルホウ素リチウム(Li(C2H5)3BH)、水素化リチウム(LiH)、リチウムアミド(LiNH2)、リチウムイミド(Li2NH)、リチウムジイソプロピルアミド(C6H14LiN or LiN(C3H7)2)、リチウムテトラメチルピペリジド(C9H18LiN)、硫化リチウム(Li2S)、硫酸リチウム(Li2SO4)、リチウムチオフェノラート(C6H5LiS)、リチウムフェノキシド(C6H5LiO)。
【0060】
三ヨウ化ホウ素(BI3)、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、テトラフルオロほう酸(HBF4)、トリエチルボラン((CH3CH2)3B)、硼砂(Na2B4O5(OH)4・8H2O)、ほう酸(B(OH)3)。
【0061】
ヒ化カリウム (K3As)、臭化カリウム (KBr)、炭化カリウム (K2C2)、塩化カリウム (KCl)、フッ化カリウム (KF)、水素化カリウム (KH)、ヨウ化カリウム (KI)、三ヨウ化カリウム (KI3)、アジ化カリウム (KN3)、窒化カリウム (K3N)、超酸化カリウム (KO2)、オゾン化カリウム (KO3)、過酸化カリウム (K2O2)、リン化カリウム (K3P)、硫化カリウム (K2S)、セレン化カリウム (K2Se)、テルル化カリウム (K2Te)、テトラフルオロアルミン酸カリウム(KAlF4)、テトラフルオロホウ酸カリウム (KBF4)、テトラヒドロホウ酸カリウム (KBH4)、カリウムメタニド (KCH3)、シアン化カリウム (KCN)、ギ酸カリウム (KHCOO)、フッ化水素カリウム (KHF2)、テトラヨード水銀(II)酸カリウム (K2[HgI4])、硫化水素カリウム (KHS)、オクタクロロ二モリブデン(II)酸カリウム (K4[Mo2Cl8])、カリウムアミド (KNH2)、水酸化カリウム (KOH)、ヘキサフルオロリン酸カリウム (KPF6)、炭酸カリウム (K2CO3)、テトラクロリド白金(II)酸カリウム (K2[PtCl4])、ヘキサクロリド白金(IV)酸カリウム (K2[PtCl6])、ノナヒドリドレニウム(VII)酸カリウム (K2[ReH9])、硫酸カリウム (K2SO4)、酢酸カリウム (CH3COOK)、シアン化金(I)カリウム (K[Au(CN)2])、ヘキサニトロコバルト(III)酸カリウム (K3[Co(NO2)6])、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム (K3[Fe(CN)6])、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム (K4[Fe(CN)6])、カリウムメトキシド (KOCH3)、カリウムエトキシド (KOCH2CH3)、カリウム tert-ブトキシド (KOC(CH3)3)、シアン酸カリウム (KOCN)、雷酸カリウム (KONC)、チオシアン酸カリウム (KSCN)、硫酸カリウムアルミニウム (AlK(SO4)2)、アルミン酸カリウム (KAlO2)、ヒ酸カリウム (K3AsO4)、臭素酸カリウム (KBrO3)、次亜塩素酸カリウム (KClO)、亜塩素酸カリウム (KClO2)、塩素酸カリウム (KClO3)、過塩素酸カリウム (KClO4)、炭酸カリウム (K2CO3)、クロム酸カリウム (K2CrO4)、二クロム酸カリウム (K2Cr2O7)、テトラキス(ペルオキソ)クロム(V)酸カリウム (K3Cr(O2)4)、銅(III)酸カリウム (KCuO2)、鉄酸カリウム(K2FeO4)、ヨウ素酸カリウム (KIO3)、過ヨウ素酸カリウム(KIO4)、過マンガン酸カリウム (KMnO4)、マンガン酸カリウム (K2MnO4)、次亜マンガン酸カリウム(K3MnO4)、モリブデン酸カリウム (K2MoO4)、亜硝酸カリウム (KNO2)、硝酸カリウム (KNO3)、リン酸三カリウム (K3PO4)、過レニウム酸カリウム (KReO4)、セレン酸カリウム (K2SeO4)、ケイ酸カリウム (K2SiO3)、亜硫酸カリウム (K2SO3)、硫酸カリウム (K2SO4)、チオ硫酸カリウム (K2S2O3)、二亜硫酸カリウム (K2S2O5)、ジチオン酸カリウム (K2S2O6)、二硫酸カリウム (K2S2O7)、ペルオキソ二硫酸カリウム (K2S2O8)、ヒ酸二水素カリウム (KH2AsO4)、ヒ酸水素二カリウム (K2HAsO4)、炭酸水素カリウム (KHCO3)、リン酸二水素カリウム (KH2PO4)、リン酸水素二カリウム (K2HPO4)、セレン酸水素カリウム (KHSeO4)、亜硫酸水素カリウム (KHSO3)、硫酸水素カリウム (KHSO4)、ペルオキソ硫酸水素カリウム (KHSO5)。
【0062】
亜硫酸バリウム(BaSO3)、塩化バリウム(BaCl2)、塩素酸バリウム(Ba(ClO3)2)、過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)、過酸化バリウム(BaO2)、クロム酸バリウム(BaCrO4)、酢酸バリウム(C4H6O4Ba)、シアン化バリウム(Ba(CN)2)、臭化バリウム(BaBr2)、シュウ酸バリウム(BaC2O4)、硝酸バリウム(BaN2O6)、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、水素化バリウム(H2Ba)、炭酸バリウム(BaCO3)、ヨウ化バリウム(BaI2)、硫化バリウム(BaS)、硫酸バリウム(BaSO4)。
【0063】
酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カルシウム(CaO)、酸化リチウム(Li2O)、酸化ホウ素(B2O3)、酸化カリウム (K2O)、酸化バリウム(BaO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコン(ZrO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)等の金属酸化物。
【0064】
[有機高分子]
有機高分子は、原料組成物の粘度を増加してペースト状にするために使用される。有機高分子としては、アクリル系(アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのエステルの単独重合体または共重合体、具体的にはアクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体等)、ポリビニルアセタール系(具体的にはポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等)、セルロース系(具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース、アセチルニトロセルロース等)、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンカーボネート系、ポリビニルピロリドン等の単独重合体または共重合体が挙げられ、これらの中から選ばれる少なくとも1種を含有する。
【0065】
[溶媒]
溶媒は、アルコール系(具体的には、2-エチルヘキサノール(185℃)、ベンジルアルコール(205℃)、1,3-ブタンジオール(207℃)、1,4-ブタンジオール(228℃)等)、ケトン系(具体的には、シクロヘキサノン(156℃)、ダイアセトンアルコール(166℃)、ジイソブチルケトン(168℃)等)、グリコールエーテル系(具体的には、ブチルカルビトールアセテート(247℃)、エチルカルビトール(202℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(144℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、2-メトキシエタノール(124℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121℃)等)が好ましい。これらの溶媒は沸点が高いため、ゾル-ゲル反応が緩やかに進み、ガラス層6内部に空隙が生まれにくく、チタン分散比率およびジルコニウム分散比率を向上できると考えられる。
【0066】
[その他の成分(反応物質、添加剤)]
原料組成物は、ガラス原料(および任意でガラス用添加物)、および溶媒に加えて、任意の適切な反応物質および添加剤等を含み得る。金属アルコキシドを反応させて式-O-M-O-(Mは金属原子)で表される構造を主骨格として有する化合物を得るための反応物質として、例えば水や、金属アルコキシドのアルコキシ基を水酸基に置換し得るヒドロキシ基含有化合物等が挙げられる。添加剤としては、例えば、かかる反応を促進する触媒や、粘度調整剤、pH調整剤、安定化剤等が挙げられる。
【0067】
次に、かかる原料組成物を、セラミック素体1の所定の領域に塗布し、適宜乾燥させて、原料組成物に由来する塗膜を形成する。塗布方法は、特に限定されず、浸漬、スプレー、スクリーン印刷、はけ塗り、インクジェット印刷等を用いることができる。乾燥は、原料組成物中の溶媒の大部分、好ましくは実質的に全部が除去されるように実施される。より詳細には、乾燥は、原料組成物を塗布したセラミック素体を、例えば25~200℃にて5~60分間、加熱することにより実施され得る。
【0068】
次に、塗膜付きのセラミック素体を、加熱処理に付して、塗膜に由来するガラス層6を得る。加熱処理の温度および時間は、例えば300℃以上1100℃以下、例えば10~60分間であり得る。加熱処理の温度は、特に好ましくは400℃以上1000℃以下である。
【0069】
この加熱処理の間(該当する場合には乾燥処理および加熱処理の間)に、原料組成物がゲル化して、ゾル-ゲル焼成膜としてガラス層6が形成される。
このようにゾル-ゲル法で形成されたガラス層6は、細孔が少ない緻密なガラス層6になる。
【0070】
3)外部電極9およびめっき相の形成
得られたガラス層付きのセラミック素体に、外部電極を形成する。
ガラス層付きのセラミック素体の表面に下地電極層が形成される。具体的には、外部電極9の下地電極層が、各種の薄膜形成法、各種の印刷法またはディップ法などにより形成される。たとえば、ディップ法により下地電極層を形成する場合、セラミック素体の両端面に導電性ペーストを塗布した後、導電性ペーストを焼き付ける。導電性ペーストは、有機溶剤と金属粒子とガラスとを含む。焼付け温度は、例えば840℃である。
【0071】
次に、めっき処理により下地電極層を覆うようにめっき層が形成される。めっき層が形成されることにより、外部電極9が構成される。
電解めっきは、下地電極層を備えるセラミック素体をめっき液(めっき浴)に浸漬して、所定の条件でめっき処理することにより実施され得る。使用するめっき液およびめっき処理の条件は、めっきする金属の種類、めっき膜の厚さ等に応じて適宜選択し得る。
【0072】
これにより、本実施形態の電子部品10が製造され得る。
【0073】
以上、本発明の1つの実施形態について説明したが、本発明は当該実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【実施例1】
【0074】
以下の実施例および比較例においては、電子部品が巻線インダクタである場合を想定して、巻線インダクタ用のセラミック素体を使用したが、これらの結果は、他の電子部品にも同様に当て嵌まる。
【0075】
(実施例1)
1)セラミック素体1’の準備
まず、巻線インダクタ用のセラミック素体1’を準備した。このセラミック素体1’は、フェライト材料から成り、
図4に模式的に示すような形状を有していた。このセラミック素体1’の各寸法は次の通りであった:L=0.70mm、W=0.30mm、T=0.50mm、E=0.30mm、F=0.32mm、G=0.29mm。
【0076】
2)ガラス層の形成
表1に示す原料(成分)を所定質量にて混合して原料組成物(ペースト)を調製した。なお、ペーストは、ガラスの前駆体として、Siアルコキシド(TEOS:オルトケイ酸テトラエチル)、Tiアルコキシド(TiBu:チタンブトキシド)、Zrアルコキシド(ZrPr:ジルコニアプロポキシド)を含む。0.01N-HCl(0.01規定塩酸水溶液)は、触媒である酸と加水分解用の水として機能し、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)は、粘度調整剤および安定化剤として機能する。
次に、上記セラミック素体1’の下側のLW面(
図4参照)およびその外周に、原料組成物を塗布し、空気雰囲気(常圧)下、150℃にて30分間乾燥させて、原料組成物に由来する塗膜を形成した。
【0077】
【0078】
その後、塗膜付きのセラミック素体1’を、空気雰囲気(常圧)下、815℃にて30分間加熱処理を行い、塗膜に由来するガラス層を形成して、測定用の試料とした。
【0079】
(実施例2~5、比較例1~2)
使用する溶媒を表2に示す溶媒としたこと以外は、実施例1と同様にして、セラミック素体の表面にガラス層を形成した(実施例2~5、比較例1~2)。各試料のチタン分散比率およびジルコニウム分散比率の結果を表2に示す。なお、実施例1についても表2に記載した。
【0080】
実施例1~5、比較例1~2に従って得られた試料について、耐めっき液性のテストを行った。その結果を表2に記載した。
【0081】
耐めっき液性は、以下の要領で行った。
1.同じ条件で作製したガラス層のサンプルを、各々の実施例および比較例で最低N=10準備した。
2.SEM-EDXにより倍率約1000倍でガラス層表面のEDX像と原子比率をサンプル数N=5で取得した。
3.ガラス成分(Si、Ti、ZrおよびAl)の原子%を全て足し合わせる。これをセラミック素体の主成分(Fe)で割り、N=5で取得したあと平均値を出して、これを初期のガラス量とした。
4.SEM-EDXを測定していない残りのサンプルをCuめっき液に60℃24時間浸漬し、水洗、乾燥した。
5.4のサンプルを使い2~3を行い、この数値を浸漬後のガラス量とした。
6.3、5で得られたガラス量からめっき液浸漬による減少率を算出した。
【0082】
【0083】
表2の結果を考察する。
実施例1~5は、使用した溶媒の沸点が高かったので、ガラス中のTiおよびZrの分散比率が高く、そのためガラス層の減少率が少なかった。一方、比較例1はガラスにTiおよびZrを混合しなかったので、ガラス層の減少率が多かった。比較例2は、使用した溶媒の沸点が低かったので、ガラス中のTiおよびZrの分散比率が低く、そのためガラス層の減少率が多かった。
【0084】
本願は、2021年3月26日付けで日本国にて出願された特願2021-054078に基づく優先権を主張し、その記載内容の全てが、参照することにより本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0085】
1 セラミック素体
3 セラミック部
5a、5b 内部電極
6 ガラス層
9、9a、9b 外部電極
10 電子部品