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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両制御方法及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240717BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20240717BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W40/076
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023526830
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2021022404
(87)【国際公開番号】W WO2022259552
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 信弥
(72)【発明者】
【氏名】武井 大輔
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/186617(WO,A1)
【文献】特表2020-506837(JP,A)
【文献】特開2018-154304(JP,A)
【文献】特開2014-139063(JP,A)
【文献】特開2008-33807(JP,A)
【文献】特開2020-40524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項6】
自車両が車線変更のための走行軌跡を走行するように前記自車両の操舵輪の目標舵角を演算する舵角演算部と、
前記自車両が、前記自車両の車線変更先となる隣接車線に進入する前に、前記自車両が走行している自車線の幅方向における路面の勾配を示す自車線勾配に加えて、前記隣接車線の幅方向における路面の勾配を示す隣接車線勾配を用いて、前記目標舵角を補正する舵角補正部と、
前記操舵輪の舵角が、補正された前記目標舵角に追従するように操舵制御を行う操舵制御部と、を備える車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御方法および車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィードフォワード制御項と、フィードバック制御項と、積分制御項とを加算して、自車両が目標走行ラインに沿って走行するための目標舵角を演算し、自車両の舵角が目標舵角に追従するようにステアリング機構に操舵トルクを付与する操舵支援制御を行う技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の技術は、自車両の走行路面の横方向の傾斜度合を表すカント指標値の単位時間当たりの変化量に基づいて、自車両の走行路面が、横方向に傾斜のない非カント路面から横方向に傾斜のあるカント路面に切り替わったか否かを判定し、切り替わったと判定された場合、積分制御項の制御ゲインを、通常値よりも高い値に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-040524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、自車両が実際に走行している路面のカント指標値に基づき、自車両の走行路面がカント路面に切り替わったと判定がされてから、走行路面の横方向の勾配の変化に対応する操舵支援制御が実行される。そのため、特許文献1の技術では、自車線から、自車線とは幅方向の勾配が異なる隣接車線への車線変更が行われる場面で、自車線から隣接車線への幅方向の勾配の変化に対応する操舵支援制御が遅れ、車線間における勾配の変化に基づく、自車両の目標走行軌跡に対する横偏差が発生するという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、自車線と車線変更先の隣接車線とで幅方向の勾配が異なっていても、車線変更中に車線間における勾配の変化に基づいて発生する、自車両の目標走行軌跡に対する横偏差を抑制できる車両制御方法及び車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自車両が車線変更のための目標走行軌跡を走行するように自車両の操舵輪の目標舵角を演算し、自車両が走行している自車線の幅方向における路面の勾配を示す自車線勾配と、自車両の車線変更先となる隣接車線の幅方向における路面の勾配を示す隣接車線勾配とに基づいて、目標舵角を補正し、操舵輪の舵角が、補正された目標舵角に追従するように操舵制御を行うことによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自車線と車線変更先の隣接車線とで幅方向の勾配が異なっていても、車線変更中に車線間における勾配の変化に基づいて発生する、自車両の目標走行軌跡に対する横偏差を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る車両の車両制御装置の一の実施形態を示すブロック図である。
図2】幅方向の路面の勾配が異なる車線間の車線変更を行う場面を示す図である。
図3】本実施形態に係る車両制御の手順を示すフローチャート図である。
図4図3に示すステップ6のサブルーチンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両(以下、自車両ともいう)の車両制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両制御装置1は、本発明に係る車両制御方法を実施する一の実施形態である。図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置1は、センサ11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、ナビゲーション装置15と、提示装置16と、入力装置17と、駆動制御装置18と、制御装置19と、を備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、例えばCANその他の車載LANによって接続されている。なお、本実施形態では、車両制御装置1は、少なくとも制御装置19を備えていれば、他の構成は上記構成に限定されない。例えば、地図データベース13は、車両制御装置1に格納されていることに限らず、車両制御装置1の外部のデータベースであってもよい。
【0011】
センサ11は、自車両の周囲の環境を検出する。例えば、センサ11は、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の左右の側方を撮像する側方カメラ等のカメラを含む。本実施形態では、センサ11は、カメラによって撮像された画像から、画像認識により、車線境界線等を認識する。車線境界線は、白線、黄線、破線及び二重線等を含む。また、センサ11は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー等のレーダーを含む。センサ11は、自車両の周囲環境に関する検出結果を周囲環境情報として所定の周期で制御装置19に出力する。
【0012】
さらに、センサ11は、自車両の走行状態を検出する。例えば、センサ11は、自車両の車速を検出する車速センサを含む。センサ11は、ステアリングの舵角を検出する操舵角センサを含む。本実施形態では、操舵角センサは、ステアリングホイールの中立位置を基準として、自車両の進行方向に対して右方向に操舵する時の操舵角を正の値、自車両の進行方向に対して左方向に操舵する時の操舵角を負の値として出力する。中立位置とは、操舵角がゼロとなる基準位置であり、自車両が直進走行する際のステアリングホイールの位置である。なお、操舵角センサの出力は、これらに限らず、自車両の進行方向に対して右方向に操舵する時の操舵角を負の値、自車両の進行方向に対して左方向に操舵する時の操舵角を正の値として出力することとしてもよい。
【0013】
また、センサ11は、対象物との距離を取得する距離センサを含む。距離センサは、レーザーセンサやデプスカメラ等を含む。センサ11は、自車両の重心軸周りのヨーレートを取得するヨーレートセンサを含む。ヨーレートセンサは、自車両の旋回時に発生するヨーレートを取得する。センサ11は、車両の横方向の加速度を検出する横加速度センサを含む。本実施形態では、センサ11は、側方カメラ等によって撮像される車外の画像から車線境界線を認識し、自車両と車線境界線との間の距離である対象距離を測定する。センサ11は、自車両の走行状態に関する検出結果を走行情報として所定の周期で制御装置19に出力する。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。
【0014】
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどを備える。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得する。また、自車位置検出装置12は、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12は、検出した対象車両の位置情報を、所定の周期で制御装置19に出力する。
【0015】
地図データベース13は、道路情報を含む地図情報を格納するデータベースである。地図データベース13は、制御装置19からアクセス可能とされたメモリに記憶されている。道路情報には、交差点や分岐点等の地図上の各地点がノードとして、ノードとノードとの間の道路区間が道路リンクとして保存されている。道路情報は、道路リンクごとの道路リンク情報を含む。道路リンクは、1又は複数の車線によって構成され、車線ごとに通行方向が定められている。道路リンク情報は、道路リンクの道路種別、幅員、車線数、カーブ路及びそのカーブの大きさ(例えば曲率又は曲率半径)等の情報を含む。また、道路リンク情報は、勾配情報を含む。勾配情報には、少なくとも車線の幅方向における路面の勾配に関する情報を含み、具体的には、車線の幅方向における路面の勾配の大きさと勾配の向きを示す情報である。勾配の大きさは、例えば、車線の幅方向における車線の左端と右端との高低差を、車線の幅の長さで除算して得られた値である。勾配の大きさは、%で表される。勾配の向きは、例えば、車線の幅方向において車線の左端より車線の右端が高い位置にある場合には、左向きの勾配、車線の幅方向において車線の右端より車線の左端が高い位置にある場合には、右向きの勾配を示す。勾配情報は、例えば、車線の幅方向における平均勾配を用いることとしてもよい。道路リンクの車線数が2以上である場合には、当該道路リンクに含まれる勾配情報には、車線ごとに、車線の幅方向における路面の勾配に関する情報が含まれる。車線の幅方向における路面の勾配には、例えば、カーブに設置されたカント等を含む。
【0016】
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーの操作により動作する。このような車載機器としては、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14は、ドライバーにより操作された場合に、その操作情報を制御装置19に出力する。
【0017】
ナビゲーション装置15は、自車位置検出装置12から自車両の現在の位置情報を取得し、ナビゲーション用の地図情報に自車両の位置を重ね合わせてディスプレイなどに表示する。また、ナビゲーション装置15は、目的地が設定された場合に、その目的地までのルートを設定し、設定したルートをドライバーに案内するナビゲーション機能を備える。このナビゲーション機能は、ディスプレイの地図上にルートを表示し、音声等によってルートをドライバーに知らせる。
【0018】
提示装置16は、例えば、ナビゲーション装置15が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ等の各種ディスプレイを含む。また、提示装置16は、オーディオ装置のスピーカー、振動体が埋設された座席シート装置など、ディスプレイ以外の装置を含む。提示装置16は、制御装置19の制御に従って、各種の提示情報をドライバーに報知する。
【0019】
入力装置17は、例えば、ドライバーの手動操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置17を操作することで、提示装置16により提示された提示情報に対する設定情報を入力することができる。入力装置17は、制御装置19が備える自律速度制御機能や自律操舵制御機能のON/OFF等をドライバーが設定する際に使用するスイッチを備える。例えば、自律操舵制御機能のためのスイッチには、車線変更制御機能を実行するための車線変更スイッチが含まれる。車線変更スイッチは、制御装置19が車線変更の開始をドライバーに確認した場合にドライバーが車線変更の開始を指示する(承諾する)ためのボタンスイッチである。なお、ドライバーが車線変更の開始を承諾した後に、ドライバーは、車線変更スイッチを所定時間よりも長く操作することで、制御装置19による車線変更の提案の承諾を取り消すことができる。
【0020】
なお、方向指示器の方向指示レバーやその他の車載機器14のスイッチを入力装置17として用いることとしてもよい。例えば、制御装置19からドライバーに自動で車線変更を行うか否かを提案された場合に、ドライバーが方向指示レバーを操作すると、自車両は方向指示レバーが操作された方向に向かって車線変更を行う。入力装置17は、入力された設定情報を制御装置19に出力する。なお、本実施形態において、自車両が車線変更する方向は特に限定されず、自車両は、進行方向に対して右側に位置する隣接車線、又は進行方向に対して左側に位置する隣接車線に車線変更できるものとする。
【0021】
駆動制御装置18は、制御装置19から出力される目標速度及び目標舵角に基づいて、自車両の走行を制御する。駆動制御装置18が実行する制御内容は、自律速度制御及び自律操舵制御を含む。また、自律操舵制御は、レーンキープ制御、車線変更制御、及び追越制御を含む。例えば、駆動制御装置18は、自律速度制御により自車両が目標速度で定速走行する場合には、自車両が目標速度となるように、加速および減速、並びに走行速度を維持するために、駆動機構の動作およびブレーキの動作を制御する。また、駆動制御装置18は、自律速度制御により自車両が先行車両に追従走行する場合にも、同様に駆動機構及びブレーキの動作を制御する。なお、駆動機構の動作制御は、エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含む。また、ハイブリッド自動車にあっては、内燃機関と走行用モータとのトルク配分を含む。
【0022】
また、駆動制御装置18は、自律操舵制御により、上述した駆動機構とブレーキの動作制御に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵輪の舵角が目標舵角に追従するように自車両の操舵制御を実行する。例えば、駆動制御装置18は、自律操舵制御によりレーンキープ制御を実行する場合に、自車両が自車線に沿った目標走行軌跡を走行するように操舵制御を実行し、自車両の幅員方向における走行位置(横位置)を制御する。自車両の横位置は、車線の幅方向(自車両の幅員方向)における自車両の位置である。本実施形態では、自車両の横位置は、車線境界線に対する自車両の横位置及び目標走行軌跡に対する自車両の横位置を含む。自車両の横位置は、自車両のいずれの位置でもよいが、例えば、車線の幅方向における自車両の重心の位置である。また、駆動制御装置18は、自律操舵制御により、車線変更を実行する場合に、車線変更のための目標走行軌跡を自車両が走行するように操舵制御を実行し、自車両の横位置を制御する。また、駆動制御装置18による車両制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
【0023】
制御装置19は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROMと、このROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM等を備える。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU、DSP、ASIC、FPGAなどを用いることができる。制御装置19は、自律速度制御機能及び自律操舵制御機能により、自車両の走行を制御する。自律操舵制御機能は、例えば、レーンキープ機能、車線変更機能、追い越し機能を含む。制御装置19は、上記各機能を実現する又は各処理を実行するためのソフトウェアと、ハードウェアとの協働により各機能を実行する。制御装置19は、自車両が走行する目標走行軌跡を生成し、自車両が目標走行軌跡に沿って走行するように目標速度及び目標舵角を演算し、演算された目標速度及び目標舵角を駆動制御装置18に出力する。本実施形態では、制御装置19は、自車両の自律走行又は運転支援を実行する。
【0024】
本実施形態では、制御装置19は、自律操舵制御機能により、目標舵角を補正する舵角補正制御を実行する。制御装置19は、機能ブロックとして、勾配情報取得部100と、判定部101と、走行軌跡生成部102と、舵角演算部103と、舵角補正部104と、操舵制御部105とを含んで構成される。まず、制御装置19は、自車両が走行している自車線の幅方向における路面の勾配を示す自車線勾配と、自車線に隣接する隣接車線の幅方向における路面の勾配を示す隣接車線勾配とを取得する。次に、制御装置19は、車線変更開始条件を満たすか否かの判定を行い、車線変更開始条件を満たすと判定される場合には、車線変更のための目標走行軌跡を生成し、自車両が目標走行軌跡を走行するように目標舵角を演算する。制御装置19は、自車線勾配と隣接車線勾配とに基づいて、目標舵角を補正する。そして、制御装置19は、操舵輪の舵角を、補正された目標舵角に追従するように操舵制御を行う。なお、本実施形態では、制御装置19が有する機能を6つのブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明するが、制御装置19の機能は必ずしも6つのブロックに分ける必要はなく、5以下の機能ブロック、あるいは、7つ以上の機能ブロックで分けてもよい。
【0025】
勾配情報取得部100は、自車線勾配及び隣接車線勾配の勾配情報を取得する。勾配情報取得部100は、地図データベース13を参照して、自車両の現在位置から進行方向に沿って所定距離(例えば、2km)以内の自車線勾配及び隣接車線勾配を取得する。例えば、勾配情報取得部100は、走行中に、所定の周期で、自車線勾配及び隣接車線勾配を取得する。また、勾配情報取得部100は、車線変更の開始前には自車両が走行している車線を自車線として見なして自車線勾配を取得する。勾配情報取得部100は、車線変更を開始した時から車線変更を終了する時までの間は、車線変更を開始した時に自車両が走行している車線を自車線と見なして自車線勾配を取得し、車線変更先の車線を隣接車線と見なして隣接車線勾配を取得する。例えば、車線変更を開始した時から車線変更を終了する時までの間における場面の例としては、車線変更中に車線変更先の隣接車線側における自車両の車両端が車線境界線を超えて、自車両の一部が隣接車線上に位置し、自車両のその他の部分が自車線上に位置するという場面が挙げられる。このような場面で、勾配情報取得部100は、車線変更を開始した時に自車両が走行している車線を自車線と見なして自車線勾配を取得し、車線変更先の車線を隣接車線と見なして隣接車線勾配を取得する。そして、勾配情報取得部100は、車線変更が終了した場合には、車線変更先の隣接車線、すなわち、車線変更前に隣接車線として見なしていた車線を自車線と見なして自車線勾配を取得する。
【0026】
判定部101は、車線変更開始条件を満たすか否かを判定する。例えば、判定部101は、センサ11によって取得された自車両の周囲環境情報及び自車位置検出装置12によって取得された自車両の位置情報に基づいて、車線変更開始条件を満たすか否かを判定する。具体的には、判定部101は、センサ11によって、車線変更先の隣接車線上の障害物を検出した検出結果に基づいて、隣接車線上に車線変更可能なスペースがある場合には、車線変更開始条件を満たすと判定する。また、判定部101は、自車位置検出装置12によって検出された自車両の位置情報に基づいて、自車両の位置が、ルート上に設定された車線変更開始位置に到達した場合には、車線変更開始条件を満たすと判定する。また、判定部101は、入力装置17を介してドライバーから車線変更開始の指示入力を取得した場合には、車線変更開始条件を満たすと判定してもよい。また、判定部101は、ドライバーが方向指示レバーを操作したことで、操作情報を取得した場合に、車線変更開始条件を満たすと判定してもよい。
【0027】
また、判定部101は、自車両が車線変更を開始したか否かを判定する。判定部101は、自車両が車線変更のための横方向の移動を開始した場合、すなわち、車線変更のための目標走行軌跡に沿って自車両の横位置が移動を開始した場合、自車両の車線変更を開始したと判定する。例えば、判定部101は、所定の判定開始タイミングから所定時間以内に自車両の横位置が所定距離以上移動した場合に、自車両が車線変更を開始したと判定する。所定の判定開始タイミングは、例えば、車線変更開始条件を満たすと判定された時、又は車線変更のための目標速度及び目標舵角が駆動制御装置18に出力された時である。
【0028】
また、判定部101は、自車両の車両端が自車線と隣接車線との間の車線境界線に到達したか否かを判定する。例えば、判定部101は、センサ11の側方カメラ等によって車線境界線の位置を認識し、車線変更先の隣接車線側における自車両の側面が車線境界線に到達した場合に、自車両の車両端が車線境界線に到達したと判定する。
【0029】
また、判定部101は、自車両の車線変更が終了したか否かを判定する。判定部101は、自車両の横位置が、車線変更先の隣接車線における幅方向の中心線に到達した場合に、自車両の隣接車線への車線変更が終了したと判定する。また、判定部101は、車線変更先の隣接車線側とは反対側の自車両の側面が、自車線と隣接車線との間の車線境界線に到達した場合に、隣接車線への車線変更が終了したと判定してもよい。
【0030】
走行軌跡生成部102は、自車両の位置情報と、地図情報と、自車両の周囲環境情報と、自車両の走行情報とに基づいて、自車両が走行するための目標走行軌跡を生成する。走行軌跡生成部102は、例えば、駆動制御装置18がレーンキープ制御を実行する場合には、自車両が自車線の中心線上を走行するための目標走行軌跡を生成する。また、走行軌跡生成部102は、駆動制御装置18が車線変更制御を実行する場合には、車線変更するための目標走行軌跡を生成する。具体的には、走行軌跡生成部102は、判定部101によって、車線変更開始条件を満たすと判定された場合には、自車両の現在位置から隣接車線の中心線上まで自車両が走行するための目標走行軌跡を生成する。また、走行軌跡生成部102は、判定部101によって、車線変更が終了したと判定された場合には、車線変更先の隣接車線、すなわち、車線変更前に隣接車線として見なしていた車線を自車線として見なして、自車線の中心線上を走行するための目標走行軌跡を生成する。
【0031】
舵角演算部103は、自車両が目標走行軌跡に沿って走行するように自車両の操舵輪の目標舵角を演算する。例えば、舵角演算部103は、目標走行軌跡と自車両の現在位置(自車両の横位置)とに基づいて、目標舵角を演算する。
【0032】
舵角補正部104は、舵角演算部103によって演算された目標舵角を補正する。舵角補正部104は、レーンキープ機能により、自車両が自車線に沿って走行している間、自車線勾配に応じて舵角補正量を演算して、演算された舵角補正量に基づいて、目標舵角を補正する。例えば、車線の幅方向における路面の勾配が大きくなるほど、傾斜路面上の車両には、重力の路面水平方向の成分がより大きく作用し、自車両の目標走行軌跡に対する横位置により大きい横偏差が発生すると考えられる。横偏差は、自車両の横位置と目標走行軌跡との間のズレ量である。舵角補正量は、車線の幅方向における路面の勾配によって生じる横偏差を低減するための補正量である。また、車線の幅方向における路面の勾配によって生じる横偏差は、勾配の向きに応じて、目標走行軌跡に対して左右いずれの方向に生じるかが決まる。例えば、車線の幅方向における勾配の向きが左向きである場合には、自車両の横位置には、目標走行軌跡に対して左方向に横偏差が生じる。また、車線の幅方向における勾配の向きが右向きである場合には、自車両の横位置には、目標走行軌跡に対して右方向に横偏差が生じる。
【0033】
例えば、車線の幅方向における路面の勾配に応じた舵角補正量が予めマップに設定されている。マップは、車線の幅方向における路面の勾配の大きさ及び向きと、舵角補正量との関係を示す。当該マップでは、車線の幅方向における路面の勾配の大きさによって、舵角補正量の大きさ(絶対値)が設定され、車線の幅方向における路面の勾配の向きによって、舵角補正量が正の値か負の値かが設定されている。車線の幅方向における路面の勾配の向きが、左向きである場合には、舵角補正量は正の値として設定され、車線の幅方向における路面の勾配の向きが、右向きである場合には、舵角補正量は負の値として設定される。また、当該マップでは、車線の幅方向における路面の勾配の大きさがゼロである場合には、舵角補正量はゼロに設定される。舵角補正部104は、当該マップを参照して、自車線勾配(自車線の勾配の大きさ及び向き)に応じて、舵角補正量を演算する。そして、舵角補正部104は、演算された舵角補正量を目標舵角に加算することで目標舵角を補正する。なお、勾配の向きと舵角補正量の正負との関係は一例であって、勾配の向きと舵角補正量の正負との関係を限定するものではない。例えば、本実施形態とは反対に、勾配の向きが左向きの場合、舵角補正量は負の値として設定され、また勾配の向きが右向きの場合、舵角補正量は正の値として設定されてもよい。
【0034】
また、舵角補正部104は、自車両が車線変更を開始した後、自車両の車両端が車線境界線に到達するまで、自車線勾配と隣接車線勾配とに基づいて、目標舵角を補正する。まず、舵角補正部104は、自車両が車線変更を開始した時から、所定の周期で、自車線と隣接車線との間の車線境界線と、自車両との間の対象距離を算出する。具体的には、舵角補正部104は、自車両が車線変更のための横方向の移動を開始する時から、所定の周期で、センサ11の側方カメラによって撮像された車外画像から対象距離を算出する。対象距離は、例えば、車線境界線と、車線変更先の隣接車線側における自車両の側面との距離である。対象距離は、車線境界線と自車両の重心との間の距離であってもよい。
【0035】
次に、舵角補正部104は、算出された対象距離に応じて、自車線勾配に対する重みづけ及び隣接車線勾配に対する重みづけをそれぞれ決定する。例えば、舵角補正部104は、自車線勾配に対する重みづけをα(0<α<1)として、隣接車線勾配に対する重みづけを1-αとして決定する。αの値は、対象距離に応じて決定される値であり、対象距離が短いほど小さい値に設定される。すなわち、舵角補正部104は、自車両が車線境界線に近いほど、自車線勾配に対する重みづけを小さく設定し、隣接車線勾配に対する重みづけを大きく設定する。本実施形態では、舵角補正部104は、対象距離が算出されるたびに、対象距離に応じて、自車線勾配及び隣接車線勾配のそれぞれに対する重みづけを設定するため、自車線勾配に対する重みづけは、自車両の車線境界線への接近によって対象距離が短くなるほど、小さく設定され、隣接車線勾配に対する重みづけは、大きく設定される。舵角補正部104は、取得された自車線勾配(X)と隣接車線勾配(X)とにそれぞれ重みづけして重みづけ勾配(X)を算出する。すなわち、重みづけ勾配(X)は、下記式(1)で示されるように求められる。
【数1】
【0036】
そして、舵角補正部104は、重みづけ勾配に基づいて、舵角補正量を演算する。重みづけ勾配に基づく舵角補正量は、前述の舵角補正量の演算方法と同様の方法で演算される。このとき、重みづけ勾配の向きは、対象距離に応じて設定される。自車両が車線境界線から所定の距離以上離れている場合には、自車線勾配に対応した操舵制御を優先して、重みづけ勾配の向きは、自車線勾配の向きに設定される。また、自車両が車線境界線に所定の距離未満まで近づいている場合には、隣接車線勾配に対応する操作制御を優先して、重みづけ勾配の向きは、隣接車線勾配の向きに設定される。例えば、舵角補正部104は、対象距離に応じて決定されるαの値が0.5未満である場合には、重みづけ勾配の向きを隣接車線勾配と同じ向きに設定し、αの値が0.5以上である場合には、重みづけ勾配の向きを自車線勾配と同じ向きに設定する。
【0037】
例えば、自車線勾配の向きが右向きで、隣接車線勾配の向きが左向きである場合には、舵角補正部104は、対象距離が短くなることによってαの値が0.5未満になるまでは、重みづけ勾配の向きを自車線勾配の向き(右向き)に設定し、舵角補正量を負の値として設定する。そして、舵角補正部104は、αの値が0.5未満になった場合には、重みづけ勾配の向きを隣接車線勾配の向き(左向き)に設定し、舵角補正量を正の値として設定する。舵角補正部104は、重みづけ勾配に基づく舵角補正量が演算されると、演算された舵角補正量を目標舵角に加算することで目標舵角を補正する。本実施形態では、自車両が自車線を走行している間に、すなわち、自車両が隣接車線に進入する前に、自車線勾配に加えて、隣接車線勾配を用いて、目標舵角を演算して操舵制御を行う。特に、自車両が隣接車線に近づくにつれて、舵角補正量を、重みづけ処理によって、隣接車線勾配によって生じる横偏差を低減させるための舵角補正量に近づけていくことができる。これにより、自車線と隣接車線とで幅方向における路面の勾配が異なっていても、隣接車線勾配に対応する操舵制御を行うことができる。
【0038】
なお、本実施形態では、車線の幅方向における路面の勾配に対して重みづけをすることに限らず、車線の幅方向における路面の勾配に基づいて、舵角補正量を演算した後、舵角補正量に対して重みづけをすることとしてもよい。舵角補正部104は、まず、自車線勾配に基づく舵角補正量と、隣接車線勾配に基づく舵角補正量とを演算する。次に、舵角補正部104は、自車線勾配に基づく舵角補正量と隣接車線勾配に基づく舵角補正量に対して、対象距離に応じてそれぞれ重みづけする重みづけ処理を実行する。そして、舵角補正部104は、重みづけされた自車線勾配に基づく舵角補正量と隣接車線勾配に基づく舵角補正量とを目標舵角に加算することで目標舵角を補正する。
【0039】
また、舵角補正部104は、判定部101によって、自車両の車両端が車線境界線に到達したと判定された場合には、隣接車線勾配に基づいて、目標舵角を補正する。隣接車線勾配に基づく舵角補正量は、前述の舵角補正量の演算方法と同様の方法で演算される。舵角補正部104は、演算された舵角補正量を目標舵角に加算することで目標舵角を補正する。また、目標舵角の補正方法は、上述の方法に限定されない。例えば、自車両の車両端が車線境界線に到達したと判定されてから自車両の車線変更が終了したと判定されるまで、舵角補正部104は、自車線勾配と隣接車線勾配とに基づいて、目標舵角を補正してもよい。すなわち、上述の方法のように、目標舵角を補正するために使用する勾配情報を、自車両の位置に応じて変更しなくてもよい。
【0040】
また、舵角補正部104は、判定部101によって、自車両の車線変更が終了したと判定された場合、車線変更前に隣接車線として見なされていた車線、すなわち、車線変更後に自車両が走行している車線を自車線と見なして自車線勾配を取得し、取得された自車線勾配に基づいて、目標舵角を補正する。本実施形態では、車線変更が終了したと判定されると、車線変更前には隣接車線として見なされていた車線が自車線と見なされる。そのため、これに合わせて、舵角補正部104は、隣接車線勾配として取得していた勾配情報を自車線勾配として取得し、自車線勾配に基づいて、舵角補正量を演算する。そして、舵角補正部104は、演算された舵角補正量を目標舵角に加算して目標舵角を補正する。また、舵角補正部104は、自車両の車線変更が終了したと判定された場合に限らず、車線変更前には隣接車線と見なされていた車線が自車線として見なされた場合に、自車線勾配を用いることとしてもよい。
【0041】
操舵制御部105は、自車両の操舵輪の舵角が、舵角演算部103によって演算された目標舵角に追従するように操舵制御を行う。また、舵角補正部104によって目標舵角が補正された場合には、操舵制御部105は、自車両の操舵輪の舵角が、補正された目標舵角に追従するように操舵制御を行う。具体的には、操舵制御部105は、自車両の操舵輪の舵角を目標舵角に追従させる操舵制御指示を駆動制御装置18に出力する。
【0042】
また、本実施形態では、操舵制御部105は、舵角補正部104によって補正された目標舵角に基づく走行制御をフィードフォワード制御として実行し、地図データベース13から取得される車線の幅方向における路面の勾配と、実際の車線の幅方向における路面の勾配との違いによって生じる自車両の目標走行軌跡に対する横偏差に対してフィードバック制御を実行することとしてもよい。本実施形態におけるフィードフォワード制御では、地図データベース13から取得された勾配情報に基づいて舵角補正量を演算し、演算された舵角補正量を用いて目標舵角を補正する。このため、地図データベース13から取得された勾配情報と実際の車線の幅方向における路面の勾配情報に違いがある場合には、フィードフォワード制御後に、当該違いに起因した自車両の目標走行軌跡に対する横偏差が残存する場合がある。操舵制御部105は、フィードバック制御によって当該横偏差を補正する。
【0043】
図2は、勾配の異なる車線間の車線変更を行う場面を示す図である。図2を用いて、本実施形態における車両制御方法の適用例を説明する。図2は、車両Vが自車線L1から隣接車線L2に車線変更を行う場面を示している。図2では、図面の奥行方向が車両Vの進行方向で、車両Vは、自車線L1上の車両位置P1から進行方向に対して左向きに車線変更を開始する。車線変更が開始されると、車両Vの横位置は、自車線勾配に対して上り方向に移動し、車両位置P2で、車両Vの車両端が車線境界線Bに到達する。さらに、車両Vの横位置は、隣接車線勾配に対して下り方向に移動し、車両位置P3まで移動する。車両Vが、車両位置P3まで移動すると、車線変更が終了する。図2で示されるような車線変更の場面において、車両Vの車両端(例えば、隣接車線側の車輪)が自車線から隣接車線に移る時に、車両Vが走行している車線の幅方向における路面の勾配が変化する。
【0044】
本実施形態に係る車両制御方法では、車両Vが自車線L1を走行している時点で、車線変更先である隣接車線L2の勾配情報を用いて目標舵角を補正する。すなわち、本実施形態に係る車両制御方法によれば、車線の勾配が変化する前に、変化前の自車線勾配と変化後の隣接車線勾配とを用いて目標舵角を補正するため、車線変更中に車線の幅方向における路面の勾配が変化したとしても、変化後の隣接車線L2の隣接車線勾配に対応した操舵制御を行うことができる。これにより、本実施形態では、自車線の幅方向における路面の勾配に対応した操舵制御を行う場合よりも、車線間における勾配の変化に基づいて発生する、自車両の目標走行軌跡に対する横偏差を抑制できる。したがって、本実施形態に係る車両制御装置は、自車両の操舵制御を安定的に実行でき、自車両の乗り心地を向上させる。
【0045】
次に、図3のフローチャートを用いて、本実施形態に係る車両制御を行う手順を説明する。図3は、本実施形態に係る車両制御の手順を示すフローチャート図である。本実施形態では、自車両が走行を開始すると、制御装置19は、ステップS1からフローを開始する。例えば、自車両が走行するための目標走行軌跡及び目標走行軌跡に沿って走行するように目標舵角が設定され、自車両が当該目標走行軌跡に沿って走行を開始した場面が想定される。ステップS1では、制御装置19は、走行中に、自車両が走行している自車線の自車線勾配及び自車線に隣接する隣接車線の隣接車線勾配に関する勾配情報を取得する。例えば、制御装置19は、地図データベース13に記憶されている地図情報を用いて、各勾配情報を取得する。ステップS2では、制御装置19は、車線変更開始条件を満たすか否かを判定する。例えば、制御装置19は、センサ11によって、車線変更先の隣接車線上の障害物を検出した検出結果に基づいて、隣接車線上に車線変更可能なスペースがあるか否かに基づいて、車線変更開始条件を満たすか否かを判定する。
【0046】
車線変更開始条件を満たすと制御装置19により判定された場合には、制御装置19は、ステップS3に進む。車線変更開始条件を満たすと制御装置19により判定されない場合には、制御装置19は、ステップS14に進む。本実施形態では、自車両が車線変更しない場合には、制御装置19は、隣接車線勾配を使用せずに、自車線勾配を使用して目標舵角を補正する。ステップS3では、制御装置19は、車線変更のための目標走行軌跡を生成する。ステップS4では、制御装置19は、ステップS3で生成された目標走行軌跡を自車両が走行するように目標舵角を含む目標制御量を演算する。目標舵角を含む目標制御量が演算されると、制御装置19は、目標舵角を含む目標制御量を駆動制御装置18に出力する。
【0047】
ステップS5では、制御装置19は、自車両が車線変更を開始するか否かを判定する。例えば、制御装置19は、自車両が車線変更のための横方向の移動を開始したか否か、すなわち、車線変更のための目標走行軌跡に沿って自車両の横位置が移動を開始したか否かによって、自車両の車線変更を開始したか否かを判定する。自車両が車線変更を開始すると制御装置19により判定された場合には、ステップS6に進む。車線変更を開始すると制御装置19により判定されない場合には、ステップS14に進む。ステップS6では、制御装置19は、舵角補正制御を行い、目標舵角を補正する。舵角補正制御の具体的な手順については、図4を用いて後述する。ステップS7では、制御装置19は、自車両の操舵制御を行う。具体的には、制御装置19は、自車両の操舵輪の舵角が、ステップS6で補正された目標舵角に追従するように操舵制御指示を駆動制御装置18に出力する。駆動制御装置18は、操舵制御指示に基づいて、ステアリングアクチュエータの動作を制御する。
【0048】
ステップS8では、制御装置19は、自車両の車両端が車線境界線に到達したか否かを判定する。自車両の車両端が車線境界線に到達したと制御装置19により判定された場合には、ステップS9に進む。自車両の車両端が車線境界線に到達したと制御装置19により判定されない場合には、ステップS6に戻り、制御装置19は、ステップS8で肯定的な判定がされるまでステップS6~ステップS8の処理を繰り返す。ステップS9では、制御装置19は、隣接車線勾配に基づいて、目標舵角を補正する。ステップS10では、制御装置19は、自車両の操舵輪の舵角が、ステップS9で補正された目標舵角に追従するように操舵制御を行う。
【0049】
ステップS11では、制御装置19は、車線変更を終了したか否かを判定する。例えば、制御装置19は、自車両の横位置が、車線変更先の隣接車線における幅方向の中心線に到達したか否かに基づいて、自車両の隣接車線への車線変更が終了したか否かを判定する。車線変更を終了したと制御装置19により判定された場合には、ステップS12に進む。車線変更を終了したと制御装置19により判定されない場合には、ステップS9に戻り、制御装置19は、ステップS11で肯定的な判定がされるまで、ステップS9~ステップS11の処理を繰り返す。ステップS12では、制御装置19は、車線変更が終了すると判定したため、車線変更前には隣接車線として見なしていた車線を自車線と見なしたうえで、自車線に沿った目標走行軌跡を生成する。以降のステップS12~ステップS15では、制御装置19は、車線変更前に隣接車線として見なしていた車線を自車線として見なす。ステップS13では、制御装置19は、ステップS12で生成された目標走行軌跡に沿って走行するように目標舵角を演算する。ステップS14では、制御装置19は、自車線勾配に基づいて、ステップS13で演算された目標舵角を補正する。ステップS15では、制御装置19は、自車両の操舵輪の舵角が、ステップS14で補正された目標舵角に追従するように操舵制御を行う。
【0050】
次に、図4のフローチャートを用いて、本実施形態における舵角補正制御のサブルーチンについて説明する。図4は、図3に示すステップS6での舵角補正制御のサブルーチンを示す図である。図3のステップS5で自車両が車線変更を開始すると制御装置19により判定された場合、制御装置19は、まず、ステップS61に進む。ステップS61では、制御装置19は、自車線と隣接車線との間の車線境界線と、自車両との間の対象距離を算出する。ステップS62では、制御装置19は、ステップS61で算出された対象距離に応じて、図3のステップS1で取得した自車線勾配と隣接車線勾配に対する重みづけをそれぞれ決定する。例えば、制御装置19は、対象距離が短い、すなわち、車線境界線に近いほど、自車線勾配に対する重みづけを小さく設定し、隣接車線勾配に対する重みづけを大きく設定する。ステップS63では、制御装置19は、図3のステップS4で演算された目標舵角を補正するための舵角補正量を演算する。例えば、制御装置19は、自車線勾配と隣接車線勾配に対して重みづけして重みづけ勾配を演算し、重みづけ勾配に基づく舵角補正量を演算する。ステップS64では、制御装置19は、ステップS63で演算された舵角補正量を目標舵角に加算することで目標舵角を補正する。ステップS64で、目標舵角が補正されると、図4に示すサブルーチンを抜け、図3のステップS7に進む。
【0051】
以上のように、本実施形態では、制御装置19により、自車両が車線変更のための目標走行軌跡を走行するように自車両の操舵輪の目標舵角を演算し、自車両が走行している自車線の幅方向における路面の勾配を示す自車線勾配と、自車両の車線変更先となる隣接車線の幅方向における路面の勾配を示す隣接車線勾配とに基づいて、目標舵角を補正し、操舵輪の舵角が、補正された目標舵角に追従するように操舵制御を行う。これにより、自車線と車線変更先の隣接車線とで幅方向の勾配が異なっていても、車線変更中に車線間の勾配差に基づいて発生する、自車両の目標走行軌跡に対する横偏差を抑制できる。
【0052】
また、本実施形態では、制御装置19により、所定の周期で、自車線と隣接車線との間の車線境界線と、自車両との間の対象距離を算出し、算出された対象距離に応じて、自車線勾配及び隣接車線勾配に対する重みづけをそれぞれ決定し、重みづけされた自車線勾配及び隣接車線勾配に基づいて、目標舵角を補正する。これにより、隣接車線までの距離に応じて自車線の勾配と隣接車線の勾配の重みづけが変化するため、車線間で幅方向の勾配が変化しても、変化時に発生する自車両の目標走行軌跡に対する横偏差を抑制できる。
【0053】
また、本実施形態では、制御装置19により、地図情報を用いて、自車線勾配及び隣接車線勾配の情報を取得する。これにより、自車両が実際に走行している車線の勾配のみならず、隣接車線の勾配を隣接車線走行前に予め取得できる。
【0054】
また、本実施形態では、制御装置19により、自車両が車線変更のための横方向の移動を開始する時から、所定の周期で、対象距離を算出する。これにより、自車両が車線変更のための横方向への移動を開始するときから、隣接車線の勾配を考慮した舵角制御ができるため、自車両が走行している車線の勾配が変化しても、変化時に発生する自車両の目標走行軌跡に対する横偏差を抑制できる。
【0055】
また、本実施形態では、制御装置19により、自車両の車線変更が終了したか否かを判定し、自車両の車線変更が終了したと判定された場合、車線変更前には隣接車線として見なしていた車線に沿った目標走行軌跡を自車両が走行するように目標舵角を演算し、車線変更前には隣接車線として見なしていた車線の幅方向における路面の勾配に基づいて、目標舵角を補正する。これにより、車線変更後は、自車両が走行している車線の勾配に応じた舵角制御ができる。
【0056】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0057】
例えば、本実施形態では、車線変更中には、自車線勾配と隣接車線勾配とを用いた目標舵角の補正を説明したが、これに限らず、車線変更中であっても、自車線に幅方向における路面の勾配がない、すなわち、ゼロである場合には、自車線勾配を用いず、隣接車線勾配を用いて目標舵角を補正することとしてもよい。この場合、制御装置19は、自車両と車線境界線との間の対象距離に応じて、対象距離が短くなるほど隣接車線勾配に対する重みづけを大きい値に決定し、重みづけされた隣接車線勾配に基づいて、舵角補正量を演算する。また、本実施形態では、車線変更中であっても、隣接車線に幅方向における路面の勾配がない、すなわち、ゼロである場合には、隣接車線勾配を用いず、自車線勾配を用いて目標舵角を補正することとしてもよい。この場合、制御装置19は、自車両と車線境界線との間の対象距離に応じて、対象距離が短くなるほど自車線勾配に対する重みづけを小さい値に決定し、重みづけされた自車線勾配に基づいて、舵角補正量を演算する。
【符号の説明】
【0058】
1…車両制御装置
11…センサ
12…自車位置検出装置
13…地図データベース
18…駆動制御装置
19…制御装置
100…勾配情報取得部
101…判定部
102…走行軌跡生成部
103…舵角演算部
104…舵角補正部
105…操舵制御部
図1
図2
図3
図4