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特許7521702多孔質液晶ポリマーシート、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート、及び、電子回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】多孔質液晶ポリマーシート、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート、及び、電子回路基板
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240717BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
B32B15/08 J
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023527896
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2022023126
(87)【国際公開番号】W WO2022260082
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2021096551
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】六車 有貴
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6434195(JP,B2)
【文献】特開2018-109090(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103467984(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマーからなる第1成分と、重量割合が前記第1成分を除いて最大である第2成分と、を含む樹脂シートからなり、かつ、前記樹脂シートに空孔が設けられた、多孔質液晶ポリマーシートであって、
前記第2成分を含む領域を第1領域、前記第2成分の含有割合が前記第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、前記第1領域の圧縮強度は、前記第2領域の圧縮強度よりも高く、
前記第2成分の平均粒径は、前記空孔の平均空孔径よりも小さく、
前記第2成分は、前記空孔と接しないように前記空孔から独立して前記空孔の外部に存在しているものを含む、ことを特徴とする多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項2】
前記第2成分は、無機フィラーからなる、請求項1に記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項3】
前記無機フィラーの線膨張係数は、23℃以上、300℃以下の温度範囲において負である、請求項2に記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項4】
前記液晶ポリマーの融点よりも50℃低い温度を基準温度としたとき、前記第2成分の融点は、前記基準温度よりも高い、請求項1~3のいずれかに記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項5】
前記樹脂シートにおける前記第2成分の重量割合は、10重量%以上、70重量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項6】
前記樹脂シートにおける前記第2成分の重量割合は、20重量%以上、50重量%以下である、請求項5に記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項7】
前記液晶ポリマーの融点は、275℃以上、330℃以下である、請求項1~3のいずれかに記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項8】
前記液晶ポリマーは、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合体を含む、請求項1~3のいずれかに記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項9】
前記液晶ポリマーにおいて、前記6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に対する前記p-ヒドロキシ安息香酸のモル比率は、0.20以上、5以下である、請求項8に記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項10】
前記液晶ポリマーは、モノマー全量を100モル%としたとき、前記p-ヒドロキシ安息香酸と前記6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とを、各々、10モル%以上含む、請求項8に記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項11】
厚みが10μm以上、200μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項12】
請求項1~3のいずれかに記載の多孔質液晶ポリマーシートと、
前記多孔質液晶ポリマーシートの少なくとも一方主面に設けられた金属層と、を備える、ことを特徴とする金属層付き多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項13】
前記金属層は、銅箔からなる、請求項12に記載の金属層付き多孔質液晶ポリマーシート。
【請求項14】
請求項12に記載の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを備える、ことを特徴とする電子回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質液晶ポリマーシート、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート、及び、電子回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質液晶ポリマーシートとして、特許文献1には、(a)ポリテトラフルオロエチレン、及び(b)液晶ポリマーを含んでなる多孔質複合シートであって、そのシートはポリテトラフルオロエチレン微粒子と液晶ポリマー微粒子からなり、そのシートは、液晶ポリマーが中に含められたポリテトラフルオロエチレンの連続的多孔質マトリックスを有し、そのシートは2~85体積%の液晶ポリマー濃度を有する、多孔質複合シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3618760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の多孔質複合シートは、ポリテトラフルオロエチレンを含んでいるために圧縮強度が低い。そのため、特許文献1に記載の多孔質複合シートのような、圧縮強度が低い多孔質液晶ポリマーシートを用いて、例えば、様々な電子機器に用いられる電子回路基板を製造しようとすると、金属層を多孔質液晶ポリマーシートに圧着したり、多孔質液晶ポリマーシートを貫通するビアホールを形成したりすることが困難になる、といった加工性の問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、圧縮強度が高い多孔質液晶ポリマーシートを提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記多孔質液晶ポリマーシートを有する金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを提供することを目的とするものである。更に、本発明は、上記金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを有する電子回路基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートは、液晶ポリマーからなる第1成分と、重量割合が上記第1成分を除いて最大である第2成分と、を含む樹脂シートからなり、かつ、上記樹脂シートに空孔が設けられた、多孔質液晶ポリマーシートであって、上記第2成分を含む領域を第1領域、上記第2成分の含有割合が上記第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、上記第1領域の圧縮強度は、上記第2領域の圧縮強度よりも高く、上記第2成分の平均粒径は、上記空孔の平均空孔径よりも小さい、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートは、本発明の多孔質液晶ポリマーシートと、上記多孔質液晶ポリマーシートの少なくとも一方主面に設けられた金属層と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の電子回路基板は、本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮強度が高い多孔質液晶ポリマーシートを提供できる。また、本発明によれば、上記多孔質液晶ポリマーシートを有する金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを提供できる。更に、本発明によれば、上記金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを有する電子回路基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の多孔質液晶ポリマーシートの一例を示す断面模式図である。
図2図2は、多孔質液晶ポリマーシートについて、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径以上である態様を示す断面模式図である。
図3図3は、本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの一例を示す断面模式図である。
図4図4は、本発明の電子回路基板の一例を示す断面模式図である。
図5図5は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの作製工程を示す断面模式図である。
図6図6は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの作製工程を示す断面模式図である。
図7図7は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの作製工程を示す断面模式図である。
図8図8は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、ビアホールの形成工程を示す断面模式図である。
図9図9は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、ビアホールの形成工程を示す断面模式図である。
図10図10は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、導電性ペーストの充填工程を示す断面模式図である。
図11図11は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、導電性ペーストの充填工程を示す断面模式図である。
図12図12は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、層間接続導体の形成工程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の多孔質液晶ポリマーシートと、本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートと、本発明の電子回路基板とについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0012】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートは、液晶ポリマーからなる第1成分と、重量割合が第1成分を除いて最大である第2成分と、を含む樹脂シートからなり、かつ、樹脂シートに空孔が設けられた、多孔質液晶ポリマーシートである。
【0013】
本明細書中、「シート」は「フィルム」と同義であり、厚みによって両者を区別しない。
【0014】
図1は、本発明の多孔質液晶ポリマーシートの一例を示す断面模式図である。
【0015】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1は、厚み方向に対向する第1主面1a及び第2主面1bを有している。
【0016】
多孔質液晶ポリマーシート1は、液晶ポリマーからなる第1成分1eと、重量割合が第1成分1eを除いて最大である第2成分1fと、を含む樹脂シート1sからなる。多孔質液晶ポリマーシート1では、樹脂シート1sに空孔1hが設けられている。より具体的には、多孔質液晶ポリマーシート1では、樹脂シート1sの内部に空孔1hが設けられている。
【0017】
多孔質液晶ポリマーシートにおける第2成分は、以下のようにして定められる。
【0018】
まず、多孔質液晶ポリマーシートについて、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR法)、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(熱分解GC-MS法)、示差走査熱量測定法(DSC法)等により、液晶ポリマー以外の有機系成分の有無を評価する。また、多孔質液晶ポリマーシートについて、熱重量示差熱測定法(TG-DTA法)、蛍光X線分析法(XRF法)等により、無機系成分の有無を評価する。そして、これらの評価結果から、対象の多孔質液晶ポリマーシートが、以下のパターン1~3のどれに該当するのかを判定する。
パターン1:液晶ポリマー以外の成分が有機系成分のみである場合
パターン2:液晶ポリマー以外の成分が無機系成分のみである場合
パターン3:液晶ポリマー以外の成分が有機系成分及び無機系成分の両方である場合
【0019】
次に、上述した方法で判定されたパターン別に、液晶ポリマー以外の各成分の重量割合を以下のようにして測定する。
【0020】
<パターン1>
多孔質液晶ポリマーシートについて、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法により、各有機系成分の同定を行うとともに、これらの重量割合を求める。各有機系成分の同定を行う際には、上述したパターン判定を行った際の評価結果も踏まえて総合的に判断する。なお、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法により各有機系成分の重量割合を求めにくい場合は、X線CT装置を用いて各有機系成分の体積割合を求め、そこから各有機系成分の重量割合を推定することもできる。
【0021】
<パターン2>
多孔質液晶ポリマーシートから、熱重量示差熱測定法により液晶ポリマーを熱分解及び揮発させて、無機系成分のみを抽出する。そして、抽出された無機系成分について、X線回折法(XRD法)、蛍光X線分析法、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES法)等により、各無機系成分の同定を行う。その後、蛍光X線分析法、誘導結合プラズマ発光分光分析法等による測定結果から、各無機系成分の重量割合を求める。
【0022】
<パターン3>
<パターン1>及び<パターン2>に記載の方法を組み合わせることにより、各有機系成分及び各無機系成分の重量割合を求める。
【0023】
以上のようにして得られた重量割合を有する各成分のうち、重量割合が第1成分(液晶ポリマー)を除いて最大である成分を第2成分と定める。
【0024】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分を含む領域を第1領域、第2成分の含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い。
【0025】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第2成分1fを含む領域を第1領域、第2成分1fの含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い。例えば、多孔質液晶ポリマーシート1において、第1成分1e及び第2成分1fからなる領域を第1領域、第1成分1eからなる領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い。このように、第2成分1fの含有割合がより大きい第1領域では、第2成分1fの含有割合がより小さい第2領域よりも圧縮強度が高いため、第2成分1fは、多孔質液晶ポリマーシート1の圧縮強度の向上に寄与する、と言える。
【0026】
多孔質液晶ポリマーシートの第1領域及び第2領域の圧縮強度は、以下のようにして定められる。まず、多孔質液晶ポリマーシートの第1領域から10mm角の試料を複数切り出し、これらの試料を厚みが1mm程度になるまで積層する。次に、圧縮試験装置を用いて、得られた積層体を1mm/分の速度で圧縮しつつ、各時点でのひずみ率に対応する圧縮応力を取得する。そして、ひずみ率が10%となる時点での圧縮応力を、多孔質液晶ポリマーシートの第1領域の圧縮強度と定める。なお、ひずみ率については、圧縮試験開始直前での積層体の厚みをL1、圧縮試験中のある時点での積層体の厚みをL2として、ひずみ率(%)=[(L1-L2)/L1]×100、という式に基づいて算出する。多孔質液晶ポリマーシートの第2領域の圧縮強度も、多孔質液晶ポリマーシートの第2領域から試料を切り出すこと以外、多孔質液晶ポリマーシートの第1領域の圧縮強度と同様にして定められる。
【0027】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分の平均粒径は、空孔の平均空孔径よりも小さい。
【0028】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第2成分1fの平均粒径は、空孔1hの平均空孔径よりも小さい。
【0029】
多孔質液晶ポリマーシートでは、上述したように、第2成分が多孔質液晶ポリマーシートの圧縮強度の向上に寄与するものの、第2成分が単に存在するだけでは、第2成分による圧縮強度の向上効果が充分に発揮されない。
【0030】
これに対して、多孔質液晶ポリマーシート1では、第2成分1fの平均粒径が空孔1hの平均空孔径よりも小さいことにより、図1に示すように、第2成分1fが、空孔1hと接しないように存在しやすくなる。よって、圧縮強度が低いと考えられる、第1成分1eと第2成分1fと空孔1hとの3者の境界が生じにくくなるため、第2成分1fによる圧縮強度の向上効果が充分に発揮される。
【0031】
図2は、多孔質液晶ポリマーシートについて、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径以上である態様を示す断面模式図である。
【0032】
図2に示す多孔質液晶ポリマーシート101のように、第2成分1fの平均粒径が空孔1hの平均空孔径以上であると、ここでは、第2成分1fの平均粒径が空孔1hの平均空孔径よりも大きいと、第2成分1fは、空孔1hと接するように存在しやすくなる。場合によっては、第2成分1fは、第1成分1eを貫通して空孔1h間にまたがるように存在しやすくなる。よって、多孔質液晶ポリマーシート101では、圧縮強度が低いと考えられる、第1成分1eと第2成分1fと空孔1hとの3者の境界が生じやすくなるため、第2成分1fによる圧縮強度の向上効果が充分に発揮されない。
【0033】
第2成分の平均粒径は、第2成分の個数基準の累積粒径分布において累積確率が50%となる粒径、いわゆるメジアン径D50で定められる。
【0034】
第2成分の平均粒径は、より具体的には、以下のようにして定められる。まず、X線CT装置を用いて、多孔質液晶ポリマーシートの第2成分の3次元構造を識別することにより、各々の第2成分について最大径を測定し、得られた最大径を各々の第2成分の粒径とする。そして、各々の第2成分の粒径から個数基準の累積粒径分布を求め、そのメジアン径D50を第2成分の平均粒径と定める。
【0035】
空孔の平均空孔径は、空孔の個数基準の累積空孔径分布において累積確率が50%となる空孔径、いわゆるメジアン径D50で定められる。
【0036】
空孔の平均空孔径も、より具体的には、第2成分の平均粒径と同様にして定められる。
【0037】
以上のように、多孔質液晶ポリマーシート1では、第2成分1fが存在しつつ、第2成分1fの平均粒径が空孔1hの平均空孔径よりも小さいことにより、圧縮強度が高まる。このように圧縮強度が高い多孔質液晶ポリマーシート1は、例えば、電子回路基板を製造する場合において、金属層を圧着したり、ビアホールを形成したりする際の加工性に優れる。
【0038】
更に、多孔質液晶ポリマーシート1では、誘電率が小さい液晶ポリマーからなる第1成分1eに加えて、更なる誘電率の低減に寄与する空孔1hが存在するため、多孔質液晶ポリマーシート1を用いて製造された電子回路基板では、高周波領域における誘電特性が向上しやすくなる。また、液晶ポリマーからなる第1成分1eは吸湿性が低いため、多孔質液晶ポリマーシート1を用いて製造された電子回路基板では、吸湿による誘電特性の変化が生じにくくなる。
【0039】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分は、無機フィラーからなることが好ましい。
【0040】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第2成分1fは、無機フィラーからなることが好ましい。
【0041】
第2成分1fが無機フィラーからなると、多孔質液晶ポリマーシート1の圧縮強度が高まりやすくなる。
【0042】
更に、第2成分1fが無機フィラーからなると、多孔質液晶ポリマーシート1の線膨張係数が小さくなりやすい。よって、多孔質液晶ポリマーシート1を用いて製造された、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート及び電子回路基板において、多孔質液晶ポリマーシート1の線膨張係数を、金属層、例えば、銅箔の線膨張係数に近づけることができる。より具体的には、多孔質液晶ポリマーシート1の面内方向における線膨張係数を、金属層、例えば、銅箔の面内方向における線膨張係数に近づけることができる。そのため、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート及び電子回路基板において、反り及び寸法変化が生じにくくなる。
【0043】
無機フィラーとしては、例えば、非晶性シリカ、リン酸タングステン酸ジルコニウム、結晶性シリカ、ガラス、タルク、マイカ、ウォラスナイト、アタパルジャイト、シラスバルーン、モンモリロナイト、活性白土、ゼオライト、セピオライト、ゾノトライト、銅、金、銀、鉛、鉄、タングステン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、合金(Fe-Ni系、Fe-Si系、Fe-Si-Al系、Fe-Si-Cr系、Fe-Co系、Fe-Si-B-Cr系等)、フェライト、酸化亜鉛、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0044】
無機フィラーには、種々の表面処理が施されていてもよい。
【0045】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分が無機フィラーからなる場合、無機フィラーの線膨張係数は、23℃以上、300℃以下の温度範囲において負であることが好ましい。
【0046】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第2成分1fが無機フィラーからなる場合、無機フィラーの線膨張係数は、23℃以上、300℃以下の温度範囲において負であることが好ましい。無機フィラーの線膨張係数は、厚み方向及び面内方向を含む全方向で、23℃以上、300℃以下の温度範囲において負であることがより好ましい。
【0047】
第2成分1fが無機フィラーからなる場合で、無機フィラーの線膨張係数が上記温度範囲において負であると、多孔質液晶ポリマーシート1の線膨張係数が更に小さくなりやすい。
【0048】
第2成分1fは、有機系高分子からなってもよい。
【0049】
第2成分1fが有機系高分子からなると、第1成分1eと第2成分1fとの親和性が高まりやすくなるため、多孔質液晶ポリマーシート1の柔軟性及び伸度が確保されやすくなる。
【0050】
有機系高分子としては、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンコポリマー(COC)等が挙げられる。
【0051】
ここで、第2成分1fが有機系高分子からなり、その有機系高分子が液晶ポリマーである場合、第2成分1fとしての液晶ポリマーの融点は、第1成分1eとしての液晶ポリマーの融点よりも高いことが好ましい。
【0052】
なお、有機系高分子には、一般に、特許文献1に記載のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂も含まれる。しかしながら、本発明の多孔質液晶ポリマーシートでは、第2成分がフッ素系樹脂からなる場合、第2成分を含む領域を第1領域、第2成分の含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高くならない。つまり、フッ素系樹脂は、多孔質液晶ポリマーシートの圧縮強度の向上に寄与しない。そのため、本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、フッ素系樹脂は、第2成分から除外される。
【0053】
以上のように、多孔質液晶ポリマーシート1の圧縮強度を高めたり、線膨張係数を小さくしたりする観点では、第2成分1fは、無機フィラーからなることが好ましい。また、第1成分1eと第2成分1fとの親和性を高める観点では、第2成分1fは、有機系高分子からなることが好ましい。
【0054】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、液晶ポリマーの融点よりも50℃低い温度を基準温度としたとき、第2成分の融点は、基準温度よりも高いことが好ましい。ここで言う「液晶ポリマーの融点」は、第1成分としての液晶ポリマーの融点を意味する。
【0055】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第1成分1eとしての液晶ポリマーの融点よりも50℃低い温度を基準温度としたとき、第2成分1fの融点は、基準温度よりも高いことが好ましい。
【0056】
第2成分1fの融点が上記基準温度以下であると、多孔質液晶ポリマーシート1(樹脂シート1s)の製膜時に、第2成分1fが、耐熱性の不足により、劣化したり、分解したりすることがある。
【0057】
第2成分1fが無機フィラーからなる場合、第1成分1eとしての液晶ポリマーの融点よりも50℃低い温度を基準温度としたとき、無機フィラーの融点は、基準温度よりも高いことが好ましい。
【0058】
多孔質液晶ポリマーシートから、第1成分としての液晶ポリマーの融点と、第2成分の融点とは、以下のようにして定められる。まず、例えば、日立ハイテクサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC7000X」等の示差走査熱量計を用いて、多孔質液晶ポリマーシートを昇温させて完全に溶融させる。この昇温過程では、昇温速度を、例えば、20℃/分とする。次に、得られた溶融物を降温させた後、再び昇温させる。この際、降温過程では、例えば、20℃/分の降温速度で175℃まで降温させ、昇温過程では、例えば、20℃/分の昇温速度で昇温させる。そして、この昇温過程で観測される各々の吸熱ピークに対応する温度から、第1成分としての液晶ポリマーの融点と、第2成分の融点とを定める。なお、上述した方法で液晶ポリマー由来の吸熱ピークを特定しにくい場合は、上述した方法に加えて、偏光顕微鏡のクロスニコル条件下でのテクスチャー観察を行うことにより、液晶ポリマーの融点を定める。また、液晶ポリマーについて、上述した方法で吸熱ピークが観測されにくい場合は、偏光顕微鏡のクロスニコル条件下でのテクスチャー観察により、液晶ポリマーの融点を定める。
【0059】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、樹脂シートにおける第2成分の重量割合は、好ましくは10重量%以上、70重量%以下である。また、本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、樹脂シートにおける第2成分の重量割合は、より好ましくは20重量%以上、50重量%以下である。
【0060】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、樹脂シート1sにおける第2成分1fの重量割合は、好ましくは10重量%以上、70重量%以下、より好ましくは20重量%以上、50重量%以下である。
【0061】
樹脂シート1sにおける第2成分1fの重量割合が10重量%よりも小さいと、第2成分1fによる圧縮強度の向上効果がわずかしか得られないことがある。
【0062】
樹脂シート1sにおける第2成分1fの重量割合が70重量%よりも大きいと、液晶ポリマーからなる第1成分1eの重量割合が相対的に小さくなるため、第1成分1eによる吸湿性の低減効果がわずかしか得られないことがある。
【0063】
第2成分1fが無機フィラーからなる場合、樹脂シート1sにおける無機フィラーの重量割合は、好ましくは10重量%以上、70重量%以下、より好ましくは20重量%以上、50重量%以下である。
【0064】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、液晶ポリマーの融点は、275℃以上、330℃以下であることが好ましい。ここで言う「液晶ポリマーの融点」は、第1成分としての液晶ポリマーの融点を意味する。
【0065】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第1成分1eとしての液晶ポリマーの融点は、275℃以上、330℃以下であることが好ましい。
【0066】
第1成分1eとしての液晶ポリマーの融点が275℃よりも低いと、例えば、多孔質液晶ポリマーシート1を用いて製造された電子回路基板をリフローはんだ付けにより電子機器に組み込む際に、液晶ポリマーが、耐熱性の不足により、劣化したり、分解したりすることがある。
【0067】
第1成分1eとしての液晶ポリマーの融点が330℃よりも高いと、例えば、多孔質液晶ポリマーシート1(樹脂シート1s)の製膜時により高い加工温度が必要となるため、液晶ポリマーの劣化が促進されることがある。
【0068】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、液晶ポリマーは、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合体を含むことが好ましい。ここで言う「液晶ポリマー」は、第1成分としての液晶ポリマーを意味する。
【0069】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第1成分1eとしての液晶ポリマーは、p-ヒドロキシ安息香酸(HBA)と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)との共重合体を含むことが好ましい。
【0070】
p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合体は、一般的に、II型の全芳香族ポリエステルと呼ばれる(1.5型の全芳香族ポリエステルとも呼ばれる)。II型の全芳香族ポリエステルは、III型の一部芳香族ポリエステルよりも加水分解を起こしにくいため、多孔質液晶ポリマーシート1を用いて製造された電子回路基板の構成材料として好ましい。また、II型の全芳香族ポリエステルは、ナフタレン環由来により誘電正接が小さいため、電子回路基板において、多孔質液晶ポリマーシート1での電気エネルギー損失の低減に寄与する。
【0071】
多孔質液晶ポリマーシート1において、第1成分1eとしての液晶ポリマーは、II型の全芳香族ポリエステルに加えて、I型の全芳香族ポリエステルを更に含んでいてもよいし、III型の一部芳香族ポリエステルを更に含んでいてもよいし、I型の全芳香族ポリエステル及びIII型の一部芳香族ポリエステルを更に含んでいてもよい。
【0072】
液晶ポリマーを構成する各々のモノマーの種類(構造)は、反応熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法(反応熱分解GC-MS法)により分析可能である。
【0073】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートでは、液晶ポリマーにおいて、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に対するp-ヒドロキシ安息香酸のモル比率は、好ましくは0.20以上、5以下である。ここで言う「液晶ポリマー」は、第1成分としての液晶ポリマーを意味する。
【0074】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1では、第1成分1eとしての液晶ポリマーにおいて、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に対するp-ヒドロキシ安息香酸のモル比率は、好ましくは0.20以上、5以下である。
【0075】
第1成分1eとしての液晶ポリマーにおいて、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に対するp-ヒドロキシ安息香酸のモル比率が0.20よりも低いか、5よりも高いと、液晶ポリマーの融点が上述した好ましい範囲よりも高くなることがある。
【0076】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、液晶ポリマーは、モノマー全量を100モル%としたとき、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とを、各々、10モル%以上含むことが好ましい。ここで言う「液晶ポリマー」は、第1成分としての液晶ポリマーを意味する。
【0077】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1において、第1成分1eとしての液晶ポリマーは、モノマー全量を100モル%としたとき、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とを、各々、10モル%以上含むことが好ましい。
【0078】
第1成分1eとしての液晶ポリマーにおけるp-ヒドロキシ安息香酸及び6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の各々のモノマーの含有割合が10モル%よりも小さいと、液晶ポリマーとしての液晶性が発現すること、液晶ポリマーの融点が上述した好ましい範囲となること、及び、液晶ポリマーの誘電正接が小さくなることが、ともに実現されにくくなることがある。
【0079】
液晶ポリマーを構成する各々のモノマーの比率及び含有割合は、反応熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法により分析可能である。
【0080】
本発明の多孔質液晶ポリマーシートは、厚みが好ましくは10μm以上、200μm以下である。
【0081】
図1に示す多孔質液晶ポリマーシート1は、厚みが好ましくは10μm以上、200μm以下である。
【0082】
多孔質液晶ポリマーシート1の厚みが10μmよりも小さいと、第1主面1a及び第2主面1bの少なくとも一方主面において、空孔1hの空孔率が高まりやすくなるため、平滑性が低下しやすくなる。この場合、多孔質液晶ポリマーシート1に対して、平滑性が低い主面に金属層を圧着した後、金属層を配線等のパターン形状になるようにエッチングすると、その主面に存在する空孔1hに起因してパターン欠損が生じやすくなる。
【0083】
多孔質液晶ポリマーシート1の厚みが200μmよりも大きいと、多孔質液晶ポリマーシート1を用いて、層間接続導体を有する電子回路基板を製造する場合に、層間接続導体が形成されるビアホールを、多孔質液晶ポリマーシート1を貫通するように形成することが困難になることがある。
【0084】
多孔質液晶ポリマーシートの厚みは、以下のようにして定められる。まず、多孔質液晶ポリマーシートから100mm角の試料を切り出す。そして、試料と中心を共有する25mm角の領域における、等間隔に位置する9箇所での厚みを測定し、これらの平均値を多孔質液晶ポリマーシートの厚みと定める。なお、多孔質液晶ポリマーシートから100mm角の試料を切り出せない場合は、多孔質液晶ポリマーシート自体を上記試料とすること以外、上述した方法と同様にして、多孔質液晶ポリマーシートの厚みを定める。この際、多孔質液晶ポリマーシートで上記25mm角の領域を取れない場合は、多孔質液晶ポリマーシートにおいて、等間隔に位置する9箇所での厚みを測定し、これらの平均値を多孔質液晶ポリマーシートの厚みと定める。
【0085】
多孔質液晶ポリマーシート1、より具体的には、樹脂シート1sは、空孔1hの配置構造として、独立気泡構造を有することが好ましい。
【0086】
多孔質液晶ポリマーシートが独立気泡構造を有するとは、多孔質液晶ポリマーシートが、空孔(気泡)の壁面すべてが樹脂で囲まれた構造を有することを指す。多孔質液晶ポリマーシートの厚み方向に沿う断面と、多孔質液晶ポリマーシートの厚み方向に直交する面内方向に沿う断面とを観察したときに、空孔の壁面同士が連結していない状態であれば、多孔質液晶ポリマーシートが独立気泡構造を有していると判断する。
【0087】
多孔質液晶ポリマーシート1が独立気泡構造を有する場合、連続気泡構造を有する場合よりも、空孔1h中の空気が外部へ抜ける経路が少なくなりやすく、圧縮強度が確保されやすいため、金属層を多孔質液晶ポリマーシート1に圧着する際に、多孔質液晶ポリマーシート1が潰れにくくなる。
【0088】
多孔質液晶ポリマーシート1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0089】
まず、液晶ポリマーからなる第1成分1eと、第2成分1fと、発泡剤とを所定の比率で混合することにより、樹脂材料を調製する。この際、第2成分1fの重量割合が第1成分1eを除いて最大となるようにする。
【0090】
次に、樹脂材料を用いて、押出成形法により、空孔1hが設けられた樹脂シート1sを作製する。押出成形法としては、例えば、Tダイ成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。
【0091】
以上により、空孔1hが設けられた樹脂シート1sからなる多孔質液晶ポリマーシート1が製造される。多孔質液晶ポリマーシート1では、第2成分1fの平均粒径が、空孔1hの平均空孔径よりも小さい。このように第2成分1fの平均粒径を空孔1hの平均空孔径よりも小さくする方法としては、例えば、樹脂材料を調製する際に、第2成分1fとして平均粒径が小さいものを用いたり、発泡剤として平均粒径が大きいものを用いたりする方法が挙げられる。
【0092】
本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートは、本発明の多孔質液晶ポリマーシートと、多孔質液晶ポリマーシートの少なくとも一方主面に設けられた金属層と、を備える。
【0093】
図3は、本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの一例を示す断面模式図である。
【0094】
図3に示す金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10は、多孔質液晶ポリマーシート1と、金属層2と、を積層方向に有している。
【0095】
積層方向は、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを構成する多孔質液晶ポリマーシートの厚み方向に沿う方向に該当する。
【0096】
金属層2は、多孔質液晶ポリマーシート1の少なくとも一方主面、ここでは、第1主面1aに設けられている。より具体的には、金属層2は、多孔質液晶ポリマーシート1の第1主面1a側に隣接している。
【0097】
金属層2は、配線等にパターン化されたパターン形状であってもよいし、一面に広がった面状であってもよい。
【0098】
金属層2の構成材料としては、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0099】
本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートにおいて、金属層は、銅箔からなることが好ましい。
【0100】
図3に示す金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10において、金属層2は、銅箔からなることが好ましい。この場合、銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0101】
金属層2の厚みは、好ましくは1μm以上、35μm以下、より好ましくは6μm以上、18μm以下である。
【0102】
金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10は、金属層2に加えて、多孔質液晶ポリマーシート1の第2主面1bに設けられた別の金属層を更に有していてもよい。
【0103】
金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10は、例えば、金属層2を多孔質液晶ポリマーシート1の第1主面1aに圧着することにより製造される。金属層2は、多孔質液晶ポリマーシート1の第1主面1aに圧着された後、パターン形状になるようにエッチングされてもよい。
【0104】
金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10は、予めパターン化された金属層2を多孔質液晶ポリマーシート1の第1主面1aに圧着することにより製造されてもよい。
【0105】
本発明の電子回路基板は、本発明の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを備える。
【0106】
図4は、本発明の電子回路基板の一例を示す断面模式図である。
【0107】
図4に示す電子回路基板50は、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aと、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bと、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cと、を積層方向に順に有している。つまり、電子回路基板50では、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aと、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bと、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cとが、積層方向に順に積層されている。
【0108】
金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aは、多孔質液晶ポリマーシート1Aと、金属層2Aと、を有している。
【0109】
多孔質液晶ポリマーシート1Aは、厚み方向に対向する第1主面1Aa及び第2主面1Abを有している。
【0110】
多孔質液晶ポリマーシート1Aは、液晶ポリマーからなる第1成分1Aeと、重量割合が第1成分1Aeを除いて最大である第2成分1Afと、を含む樹脂シート1Asからなる。多孔質液晶ポリマーシート1Aでは、樹脂シート1Asに空孔1Ahが設けられている。
【0111】
多孔質液晶ポリマーシート1Aにおいて、第2成分1Afを含む領域を第1領域、第2成分1Afの含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い。
【0112】
金属層2Aは、多孔質液晶ポリマーシート1Aの第1主面1Aaに設けられている。また、金属層2Aは、後述する多孔質液晶ポリマーシート1Bの第2主面1Bb側に隣接している。
【0113】
金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bは、多孔質液晶ポリマーシート1Bと、金属層2Bと、金属層2B’と、金属層2B’’と、を有している。
【0114】
多孔質液晶ポリマーシート1Bは、厚み方向に対向する第1主面1Ba及び第2主面1Bbを有している。
【0115】
多孔質液晶ポリマーシート1Bは、液晶ポリマーからなる第1成分1Beと、重量割合が第1成分1Beを除いて最大である第2成分1Bfと、を含む樹脂シート1Bsからなる。多孔質液晶ポリマーシート1Bでは、樹脂シート1Bsに空孔1Bhが設けられている。
【0116】
多孔質液晶ポリマーシート1Bにおいて、第2成分1Bfを含む領域を第1領域、第2成分1Bfの含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い。
【0117】
金属層2B、金属層2B’、及び、金属層2B’’は、多孔質液晶ポリマーシート1Bの第1主面1Baに設けられている。また、金属層2B、金属層2B’、及び、金属層2B’’は、後述する多孔質液晶ポリマーシート1Cの第2主面1Cb側に隣接している。
【0118】
金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cは、多孔質液晶ポリマーシート1Cと、金属層2Cと、を有している。
【0119】
多孔質液晶ポリマーシート1Cは、厚み方向に対向する第1主面1Ca及び第2主面1Cbを有している。
【0120】
多孔質液晶ポリマーシート1Cは、液晶ポリマーからなる第1成分1Ceと、重量割合が第1成分1Ceを除いて最大である第2成分1Cfと、を含む樹脂シート1Csからなる。多孔質液晶ポリマーシート1Cでは、樹脂シート1Csに空孔1Chが設けられている。
【0121】
多孔質液晶ポリマーシート1Cにおいて、第2成分1Cfを含む領域を第1領域、第2成分1Cfの含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い。
【0122】
金属層2Cは、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第1主面1Caに設けられている。
【0123】
金属層2Bは、図4に示すように、多孔質液晶ポリマーシート1Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面にまたがって設けられていることが好ましい。これにより、金属層2Bと多孔質液晶ポリマーシート1Bとの界面、及び、金属層2Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面が、多孔質液晶ポリマーシート1Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面から積層方向にずれるため、金属層2Bと多孔質液晶ポリマーシート1Bとの界面での剥離、及び、金属層2Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面での剥離が抑制される。
【0124】
金属層2B’及び金属層2B’’も、金属層2Bと同様に、多孔質液晶ポリマーシート1Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面にまたがって設けられていることが好ましい。
【0125】
なお、図4では、多孔質液晶ポリマーシート1Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面が示されているが、実際にはこの界面が明瞭に現れていなくてもよい。多孔質液晶ポリマーシート1Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面が明瞭に現れていない場合、図4に示すような積層方向に沿う断面において、金属層2Bの断面の積層方向における中心を通り、かつ、積層方向に直交する方向に沿う面を、多孔質液晶ポリマーシート1Bと多孔質液晶ポリマーシート1Cとの界面とみなす。
【0126】
多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cにおいて、多孔質液晶ポリマーシート1と同様に、第2成分の平均粒径は、空孔の平均空孔径よりも小さい。よって、多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cは、多孔質液晶ポリマーシート1と同様に、圧縮強度が高い。このように圧縮強度が高い多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cは、電子回路基板50を製造する場合において、金属層を圧着したり、ビアホールを形成したりする際の加工性に優れる。
【0127】
更に、電子回路基板50は、多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cを有しているため、電子回路基板50の高周波領域における誘電特性が向上しやすくなる。また、電子回路基板50において、吸湿による誘電特性の変化が生じにくくなる。
【0128】
多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cのうち、すべての多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さいことが好ましいが、一部の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さくてもよい。
【0129】
多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cの好ましい特徴は、上述した多孔質液晶ポリマーシート1の好ましい特徴と同様である。
【0130】
多孔質液晶ポリマーシート1A、多孔質液晶ポリマーシート1B、及び、多孔質液晶ポリマーシート1Cの厚みは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、図4に示すように一部で異なっていてもよい。
【0131】
金属層2A、金属層2B、金属層2B’、金属層2B’’、及び、金属層2Cの構成材料としては、金属層2の構成材料と同様に、例えば、銅、銀、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、金、これらの金属の少なくとも1種を含有する合金等が挙げられる。
【0132】
金属層2A、金属層2B、金属層2B’、金属層2B’’、及び、金属層2Cは、金属層2と同様に、銅箔からなることが好ましい。この場合、銅箔の表面には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。
【0133】
金属層2A、金属層2B、金属層2B’、金属層2B’’、及び、金属層2Cの構成材料は、互いに同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0134】
金属層2A、金属層2B、金属層2B’、金属層2B’’、及び、金属層2Cの厚みは、図4に示すように互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよいし、一部で異なっていてもよい。
【0135】
電子回路基板50は、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを積層方向に3つ有しているが、1つのみ有していてもよいし、2つ有していてもよいし、4つ以上有していてもよい。
【0136】
つまり、電子回路基板50は、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さい多孔質液晶ポリマーシートを少なくとも1つ有していればよい。電子回路基板50は、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さい多孔質液晶ポリマーシートを少なくとも1つ有する限り、第2成分を含まない多孔質液晶ポリマーシートを有していてもよいし、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径以上である多孔質液晶ポリマーシートを有していてもよいし、多孔質ではない液晶ポリマーシートを有していてもよい。
【0137】
電子回路基板50は、図4に示すように、多孔質液晶ポリマーシートを積層方向に貫通するが金属層を積層方向に貫通せずに、金属層に接続されるように設けられた層間接続導体を更に備えることが好ましい。図4に示す例では、電子回路基板50は、層間接続導体20Aと、層間接続導体20Bと、層間接続導体20Cと、層間接続導体20Dと、を更に有している。
【0138】
層間接続導体20Aは、多孔質液晶ポリマーシート1Bを積層方向に貫通するが金属層2B’を積層方向に貫通せずに、金属層2B’に接続されるように設けられている。より具体的には、層間接続導体20Aは、多孔質液晶ポリマーシート1Bを積層方向に貫通しつつ、多孔質液晶ポリマーシート1Bの第1主面1Ba側で金属層2B’に接続されている。また、層間接続導体20Aは、多孔質液晶ポリマーシート1Bの第2主面1Bb側で金属層2Aに接続されている。つまり、金属層2Aと金属層2B’とは、層間接続導体20Aを介して電気的に接続されている。
【0139】
層間接続導体20Bは、層間接続導体20Aと離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Bを積層方向に貫通するが金属層2B’’を積層方向に貫通せずに、金属層2B’’に接続されるように設けられている。より具体的には、層間接続導体20Bは、層間接続導体20Aと離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Bを積層方向に貫通しつつ、多孔質液晶ポリマーシート1Bの第1主面1Ba側で金属層2B’’に接続されている。また、層間接続導体20Bは、層間接続導体20Aと離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Bの第2主面1Bb側で金属層2Aに接続されている。つまり、金属層2Aと金属層2B’’とは、層間接続導体20Bを介して電気的に接続されている。
【0140】
層間接続導体20Cは、多孔質液晶ポリマーシート1Cを積層方向に貫通するが金属層2Cを積層方向に貫通せずに、金属層2Cに接続されるように設けられている。より具体的には、層間接続導体20Cは、多孔質液晶ポリマーシート1Cを積層方向に貫通しつつ、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第1主面1Ca側で金属層2Cに接続されている。また、層間接続導体20Cは、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第2主面1Cb側で金属層2B’に接続されている。つまり、金属層2B’と金属層2Cとは、層間接続導体20Cを介して電気的に接続されている。
【0141】
層間接続導体20Dは、層間接続導体20Cと離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Cを積層方向に貫通するが金属層2Cを積層方向に貫通せずに、金属層2Cに接続されるように設けられている。より具体的には、層間接続導体20Dは、層間接続導体20Cと離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Cを積層方向に貫通しつつ、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第1主面1Ca側で金属層2Cに接続されている。また、層間接続導体20Dは、層間接続導体20Cと離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第2主面1Cb側で金属層2B’’に接続されている。つまり、金属層2B’’と金属層2Cとは、層間接続導体20Dを介して電気的に接続されている。
【0142】
このように、電子回路基板50では、金属層2Aと金属層2Cとが、層間接続導体20A、金属層2B’、及び、層間接続導体20Cを介して電気的に接続されている。また、電子回路基板50では、金属層2Aと金属層2Cとが、層間接続導体20B、金属層2B’’、及び、層間接続導体20Dを介しても電気的に接続されている。
【0143】
層間接続導体20Aは、例えば、多孔質液晶ポリマーシート1Bを厚み方向に貫通するが金属層2B’を厚み方向に貫通せずに金属層2B’に達するように設けられたビアホールに対して、内壁にめっき処理を行ったり、導電性ペーストを充填した後に熱処理を行ったりすることにより形成される。
【0144】
層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dも、形成位置が異なること以外、層間接続導体20Aと同様にして形成される。
【0145】
層間接続導体20A、層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dがめっき処理で形成される場合、各々の層間接続導体を構成する金属としては、例えば、銅、錫、銀等が挙げられ、中でも銅が好ましい。
【0146】
層間接続導体20A、層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dが導電性ペーストの熱処理で形成される場合、各々の層間接続導体に含まれる金属としては、例えば、銅、錫、銀等が挙げられる。中でも、各々の層間接続導体は、銅を含むことが好ましく、銅及び錫を含むことがより好ましい。例えば、層間接続導体20Aが銅及び錫を含み、金属層2B’が銅箔からなる場合、層間接続導体20Aは金属層2B’と低温で合金化反応を起こすため、両者が導通しやすくなる。層間接続導体と金属層との他の組み合わせについても、同様である。
【0147】
層間接続導体20A、層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dが導電性ペーストの熱処理で形成される場合、各々の層間接続導体に含まれる樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂若しくはその変性樹脂、及び、アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、セルロース系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0148】
電子回路基板50は、信号を伝送する信号線として金属層2Bを有していてもよい。この場合、電子回路基板50は、伝送線路を構成する。
【0149】
電子回路基板50は、信号を伝送する信号線として金属層2Bを有し、かつ、グランド電極として金属層2A及び金属層2Cを有していてもよい。この場合、電子回路基板50は、ストリップライン型の伝送線路を構成する。
【0150】
電子回路基板50が上述した伝送線路を構成する場合、金属層2Bは、高周波信号を伝送する信号線であってもよい。
【0151】
電子回路基板50が伝送線路を構成する場合、誘電率が小さい多孔質液晶ポリマーシート1B及び多孔質液晶ポリマーシート1Cが、金属層2B、すなわち、信号線に接しているため、電子回路基板50の伝送特性が向上しやすくなる。
【0152】
電子回路基板50は、例えば、以下の方法で製造される。
【0153】
<金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの作製工程>
図5図6、及び、図7は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートの作製工程を示す断面模式図である。
【0154】
図5に示すように、多孔質液晶ポリマーシート1Aの第1主面1Aaに金属層2Aが設けられた、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aを作製する。この際、例えば、金属層2Aを、多孔質液晶ポリマーシート1Aの第1主面1Aaに圧着する。
【0155】
図6に示すように、多孔質液晶ポリマーシート1Bの第1主面1Baに金属層2B、金属層2B’、及び、金属層2B’’が設けられた、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bを作製する。この際、例えば、金属層を多孔質液晶ポリマーシート1Bの第1主面1Baに圧着した後で、金属層をエッチングすることにより、金属層2B、金属層2B’、及び、金属層2B’’にパターン化する。あるいは、金属層2B、金属層2B’、及び、金属層2B’’を予め準備しておき、各々の金属層を多孔質液晶ポリマーシート1Bの第1主面1Baに圧着する。
【0156】
図7に示すように、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第1主面1Caに金属層2Cが設けられた、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cを作製する。この際、例えば、金属層2Cを、多孔質液晶ポリマーシート1Cの第1主面1Caに圧着する。
【0157】
<ビアホールの形成工程>
図8及び図9は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、ビアホールの形成工程を示す断面模式図である。
【0158】
図8に示すように、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bに対して、多孔質液晶ポリマーシート1Bを厚み方向に貫通するが金属層2B’を厚み方向に貫通せずに金属層2B’に達するように、ビアホール21Aを形成する。これにより、金属層2B’の一部は、ビアホール21Aから露出する。
【0159】
また、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bに対して、ビアホール21Aを形成しようとする位置と離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Bを厚み方向に貫通するが金属層2B’’を厚み方向に貫通せずに金属層2B’’に達するように、ビアホール21Bを形成する。これにより、金属層2B’’の一部は、ビアホール21Bから露出する。
【0160】
以上により、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bに対して、ビアホール21A及びビアホール21Bを形成する。この際、ビアホール21A及びビアホール21Bを、同じタイミングで形成してもよいし、異なるタイミングで形成してもよい。
【0161】
図9に示すように、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cに対して、多孔質液晶ポリマーシート1Cを厚み方向に貫通するが金属層2Cを厚み方向に貫通せずに金属層2Cに達するように、ビアホール21Cを形成する。これにより、金属層2Cの一部は、ビアホール21Cから露出する。
【0162】
また、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cに対して、ビアホール21Cを形成しようとする位置と離隔した位置において、多孔質液晶ポリマーシート1Cを厚み方向に貫通するが金属層2Cを厚み方向に貫通せずに金属層2Cに達するように、ビアホール21Dを形成する。これにより、金属層2Cの一部は、ビアホール21Dから露出する。
【0163】
以上により、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cに対して、ビアホール21C及びビアホール21Dを形成する。この際、ビアホール21C及びビアホール21Dを、同じタイミングで形成してもよいし、異なるタイミングで形成してもよい。
【0164】
ビアホール21A、ビアホール21B、ビアホール21C、及び、ビアホール21Dを形成する際、金属層付き多孔質液晶ポリマーシートに対して、多孔質液晶ポリマーシート側からレーザ光を照射することが好ましい。
【0165】
<導電性ペーストの充填工程>
図10及び図11は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、導電性ペーストの充填工程を示す断面模式図である。
【0166】
図10に示すように、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bに対して、導電性ペースト22Aを、ビアホール21Aに充填する。また、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bに対して、導電性ペースト22Bを、ビアホール21Bに充填する。この際、導電性ペースト22A及び導電性ペースト22Bを、同じタイミングで充填してもよいし、異なるタイミングで充填してもよい。
【0167】
図11に示すように、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cに対して、導電性ペースト22Cを、ビアホール21Cに充填する。また、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cに対して、導電性ペースト22Dを、ビアホール21Dに充填する。この際、導電性ペースト22C及び導電性ペースト22Dを、同じタイミングで充填してもよいし、異なるタイミングで充填してもよい。
【0168】
導電性ペースト22A、導電性ペースト22B、導電性ペースト22C、及び、導電性ペースト22Dを充填する方法としては、例えば、スクリーン印刷法、真空充填法等が挙げられる。
【0169】
導電性ペースト22A、導電性ペースト22B、導電性ペースト22C、及び、導電性ペースト22Dは、各々、例えば、金属及び樹脂を含んでいる。
【0170】
導電性ペースト22A、導電性ペースト22B、導電性ペースト22C、及び、導電性ペースト22Dの各々の導電性ペーストに含まれる金属としては、例えば、銅、錫、銀等が挙げられる。中でも、各々の導電性ペーストは、銅を含むことが好ましく、銅及び錫を含むことがより好ましい。
【0171】
導電性ペースト22A、導電性ペースト22B、導電性ペースト22C、及び、導電性ペースト22Dの各々の導電性ペーストに含まれる樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂若しくはその変性樹脂、及び、アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱硬化性樹脂、又は、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び、セルロース系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0172】
導電性ペースト22A、導電性ペースト22B、導電性ペースト22C、及び、導電性ペースト22Dの各々の導電性ペーストは、ビヒクル、溶剤、チキソ剤、活性剤等を更に含んでいてもよい。
【0173】
ビヒクルとしては、例えば、ロジン及びそれを変性した変性ロジン等の誘導体からなるロジン系樹脂、ロジン及びそれを変性した変性ロジン等の誘導体からなる合成樹脂、又は、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。
【0174】
ロジン及びそれを変性した変性ロジン等の誘導体からなるロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、その他の各種ロジン誘導体等が挙げられる。
【0175】
ロジン及びそれを変性した変性ロジン等の誘導体からなる合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂等が挙げられる。
【0176】
溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、芳香族系、炭化水素類等が挙げられる。これらの具体例としては、ベンジルアルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ブチル、アジピン酸ジエチル、ドデカン、テトラデセン、α-ターピネオール、テルピネオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチルヘキサンジオール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルアジペート、へキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2-ターピニルオキシエタノール、2-ジヒドロターピニルオキシエタノール、これらの混合物等が挙げられる。中でも、テルピネオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、又は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0177】
チキソ剤としては、例えば、硬化ヒマシ油、カルナバワックス、アミド類、ヒドロキシ脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール類、蜜蝋、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミド等が挙げられる。また、これらのチキソ剤には、必要に応じて、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸、酸化防止剤、界面活性剤、アミン類等が添加されていてもよい。
【0178】
活性剤としては、例えば、アミンのハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物、有機酸、有機アミン、多価アルコール等が挙げられる。
【0179】
アミンのハロゲン化水素酸塩としては、例えば、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、ジフェニルグアニジン塩酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、エチルアミン塩酸塩、エチルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン臭化水素酸塩、ジエチルアニリン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、モノエタノールアミン臭化水素酸塩等が挙げられる。
【0180】
有機ハロゲン化合物としては、例えば、塩化パラフィン、テトラブロモエタン、ジブロモプロパノール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0181】
有機酸としては、例えば、マロン酸、フマル酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フェニルコハク酸、マレイン酸、サルチル酸、アントラニル酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ステアリン酸、アビエチン酸、安息香酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ドデカン酸等が挙げられる。
【0182】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、アニリン、ジエチルアニリン等が挙げられる。
【0183】
多価アルコールとしては、例えば、エリスリトール、ピロガロール、リビトール等が挙げられる。
【0184】
<層間接続導体の形成工程>
図12は、本発明の電子回路基板の製造方法の一例について、層間接続導体の形成工程を示す断面模式図である。
【0185】
図12に示すように、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aと、導電性ペースト22A及び導電性ペースト22Bが充填された金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bと、導電性ペースト22C及び導電性ペースト22Dが充填された金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cとを、積層方向に順に積層する。この際、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aの金属層2A側の表面(上面)と、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bの多孔質液晶ポリマーシート1B側の表面(下面)とが接触し、かつ、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bの金属層2B側(金属層2B’側、金属層2B’’側)の表面(上面)と、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cの多孔質液晶ポリマーシート1C側の表面(下面)とが接触するように、積層する。なお、図12では、説明の便宜上、各々の金属層付き多孔質液晶ポリマーシートを、互いに離隔して示している。
【0186】
そして、得られた積層体に対して、加熱しつつ積層方向に圧力を加えることにより、加熱プレスを行う。これにより、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Aと金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bとが圧着され、金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Bと金属層付き多孔質液晶ポリマーシート10Cとが圧着される。また、導電性ペースト22A、導電性ペースト22B、導電性ペースト22C、及び、導電性ペースト22Dは、加熱プレス時に固化することにより、各々、層間接続導体20A、層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dとなる。このようにして、ビアホール21A、ビアホール21B、ビアホール21C、及び、ビアホール21Dに、各々、層間接続導体20A、層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dを形成する。
【0187】
層間接続導体20A、層間接続導体20B、層間接続導体20C、及び、層間接続導体20Dを形成する際、導電性ペーストをビアホールに充填するのではなく、銅、錫、銀等の金属を用いて、ビアホールの内壁にめっき処理を行ってもよい。
【0188】
以上により、図4に示す電子回路基板50が製造される。
【実施例
【0189】
以下、本発明の多孔質液晶ポリマーシートをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0190】
[実施例1]
まず、第1成分として、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合体であって、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのモル比率が80:20であり、かつ、融点が325℃である液晶ポリマーAを準備した。また、第2成分として、平均粒径が3μm、融点が500℃超、23℃以上、300℃以下の温度範囲における全方向での線膨張係数が正である非晶性シリカAを準備した。次に、液晶ポリマーAを70重量部、非晶性シリカAを30重量部、永和化成工業社製の発泡剤「ビニホールAC#6-K6」(主成分:アゾジカルボンアミド)を0.4重量部混合することにより、樹脂材料を調製した。そして、得られた樹脂材料を用いて、Tダイ成形法により、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。実施例1の多孔質液晶ポリマーシートの厚みを上述した方法で測定したところ、50μmであった。
【0191】
[実施例2]
第2成分として、平均粒径が6μm、融点が500℃超、23℃以上、300℃以下の温度範囲における全方向での線膨張係数が正である非晶性シリカBを用いたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、実施例2の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0192】
[実施例3]
第2成分として、平均粒径が1.3μm、融点が500℃超、23℃以上、300℃以下の温度範囲における全方向での線膨張係数が負であるリン酸タングステン酸ジルコニウムを用いたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、実施例3の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0193】
[実施例4]
第1成分として、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合体であって、p-ヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とのモル比率が73:27であり、かつ、融点が280℃である液晶ポリマーBを用い、更に、発泡剤の配合量を0.2重量部としたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、実施例4の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0194】
[実施例5]
第1成分として液晶ポリマーBを用い、第2成分として実施例3に記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムを用い、更に、発泡剤の配合量を0.2重量部としたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、実施例5の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0195】
[実施例6]
第2成分として、平均粒径が5μm、融点が370℃、23℃以上、300℃以下の温度範囲における全方向での線膨張係数が正である液晶ポリマーを用いたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、実施例6の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0196】
[比較例1]
第2成分として、平均粒径が3.5μm、融点が327℃、23℃以上、300℃以下の温度範囲における全方向での線膨張係数が正であるポリテトラフルオロエチレンを用いたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、比較例1の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0197】
[比較例2]
第1成分の配合量を100重量部とし、更に、第2成分を配合しなかったこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、比較例2の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0198】
[比較例3]
第1成分として液晶ポリマーBを用い、第2成分として比較例1に記載のポリテトラフルオロエチレンを用い、更に、発泡剤の配合量を0.2重量部としたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、比較例3の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0199】
[比較例4]
第1成分として液晶ポリマーBを用いて、その配合量を100重量部とし、第2成分を配合せず、更に、発泡剤の配合量を0.2重量部としたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、比較例4の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0200】
[比較例5]
第1成分として液晶ポリマーBを用い、第2成分として非晶性シリカBを用い、更に、発泡剤の配合量を0.2重量部としたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、比較例5の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0201】
[比較例6]
第1成分として液晶ポリマーBを用い、第2成分として実施例6に記載の液晶ポリマーを用い、更に、発泡剤の配合量を0.2重量部としたこと以外、実施例1の多孔質液晶ポリマーシートと同様にして、比較例6の多孔質液晶ポリマーシートを製造した。
【0202】
[評価]
実施例1~6、及び、比較例1~6の多孔質液晶ポリマーシートについて、以下の測定を行った。結果を、表1に示す。
【0203】
<平均空孔径>
まず、X線CT装置を用いて、多孔質液晶ポリマーシートの空孔の3次元構造を識別することにより、各々の空孔について最大径を測定し、得られた最大径を各々の空孔の空孔径とした。そして、各々の空孔の空孔径から個数基準の累積空孔径分布を求め、そのメジアン径D50を空孔の平均空孔径とした。
【0204】
<空孔率>
まず、多孔質液晶ポリマーシートから100mm角の試料を切り出し、試料の面積s、厚みt、重量mを測定した。また、多孔質液晶ポリマーシートの樹脂成分の比重σを、JIS Z 8807-2012に準拠して測定した。そして、多孔質液晶ポリマーシートの空孔率を、空孔率(体積%)=[1-(m/(s×t×σ))]×100、という式に基づいて算出した。
【0205】
<圧縮強度>
まず、多孔質液晶ポリマーシートから10mm角の試料を複数切り出し、これらの試料を厚みが1mm程度になるまで積層した。次に、圧縮試験装置を用いて、得られた積層体を1mm/分の速度で圧縮しつつ、各時点でのひずみ率に対応する圧縮応力を取得した。そして、ひずみ率が10%となる時点での圧縮応力を、多孔質液晶ポリマーシートの圧縮強度とした。なお、ひずみ率については、圧縮試験開始直前での積層体の厚みをL1、圧縮試験中のある時点での積層体の厚みをL2として、ひずみ率(%)=[(L1-L2)/L1]×100、という式に基づいて算出した。多孔質液晶ポリマーシートの圧縮強度の判定基準については、以下の通りとした。
◎(優):圧縮強度が100MPa以上であった。
○(良):圧縮強度が50MPa以上、100MPa未満であった。
×(不良):圧縮強度が50MPa未満であった。
【0206】
<線膨張係数>
まず、多孔質液晶ポリマーシートから20mm×4mmの試料を切り出し、セイコーインスツル社製の熱機械分析装置のプローブにチャック間距離10mmの状態で設置した。次に、試料に対して、5gの荷重を印加しつつ、40℃/分の昇温速度で170℃まで昇温させた後、10℃/分の降温速度で30℃まで降温させた。そして、降温過程において、100℃から50℃までの温度範囲でのチャック間距離の変化量を測定することにより、多孔質液晶ポリマーシートの線膨張係数を求めた。本評価では、多孔質液晶ポリマーシートの試料に対して、上述した方法により、条長方向(流れ方向(MD)とも呼ばれる)及び幅方向(垂直方向(TD)とも呼ばれる)における線膨張係数を求め、これらの平均値を多孔質液晶ポリマーシートの線膨張係数とした。多孔質液晶ポリマーシートの線膨張係数の判定基準については、以下の通りとした。
◎(優):線膨張係数が20ppm/K未満であった。
○(良):線膨張係数が20ppm/K以上、25ppm/K未満であった。
×(不良):線膨張係数が25ppm/K以上であった。
【0207】
【表1】
【0208】
表1に示すように、第2成分を含みつつ、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さい実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートは、圧縮強度が高かった。
【0209】
より具体的には、第2成分を含む実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートは、第2成分を含まない比較例2及び比較例4の多孔質液晶ポリマーシートよりも、圧縮強度が高かった。
【0210】
ここで、実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第2成分を含む領域を第1領域、第2成分の含有割合が第1領域よりも小さい領域を第2領域としたとき、第1領域と第2領域との圧縮強度の関係は、第2成分を含む実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートと、第2成分を含まない比較例2及び比較例4の多孔質液晶ポリマーシートとの圧縮強度の関係と同様である、と考えられる。つまり、実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートにおいて、第1領域の圧縮強度は、第2領域の圧縮強度よりも高い、と言える。このように、実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートに含まれる第2成分は、圧縮強度の向上に寄与する、と言える。
【0211】
また、第2成分がポリテトラフルオロエチレンではない実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートは、第2成分がポリテトラフルオロエチレンである比較例1及び比較例3の多孔質液晶ポリマーシートよりも、圧縮強度が高かった。つまり、ポリテトラフルオロエチレンは、多孔質液晶ポリマーシートの圧縮強度の向上に寄与しない、と言える。これは、第2成分がポリテトラフルオロエチレン以外のフッ素系樹脂である場合も同様である、と考えられる。
【0212】
更に、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さい実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートは、第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも大きい比較例5及び比較例6の多孔質液晶ポリマーシートよりも、圧縮強度が高かった。
【0213】
以上のことから、圧縮強度が高い多孔質液晶ポリマーシートを実現するためには、実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートのように、圧縮強度の向上に寄与する第2成分を含みつつ、その第2成分の平均粒径が空孔の平均空孔径よりも小さいことが重要であることが分かった。
【0214】
また、実施例1~6の多孔質液晶ポリマーシートのうち、第2成分が無機フィラーからなる実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び、実施例5の多孔質液晶ポリマーシートの線膨張係数がより小さく、無機フィラーの全方向での線膨張係数が23℃以上、300℃以下の温度範囲において負である実施例3及び実施例5の多孔質液晶ポリマーシートの線膨張係数が更に小さかった。
【符号の説明】
【0215】
1、1A、1B、1C、101 多孔質液晶ポリマーシート
1a、1Aa、1Ba、1Ca 多孔質液晶ポリマーシートの第1主面
1b、1Ab、1Bb、1Cb 多孔質液晶ポリマーシートの第2主面
1e、1Ae、1Be、1Ce 第1成分
1f、1Af、1Bf、1Cf 第2成分
1h、1Ah、1Bh、1Ch 空孔
1s、1As、1Bs、1Cs 樹脂シート
2、2A、2B、2B’、2B’’、2C 金属層
10、10A、10B、10C 金属層付き多孔質液晶ポリマーシート
20A、20B、20C、20D 層間接続導体
21A、21B、21C、21D ビアホール
22A、22B、22C、22D 導電性ペースト
50 電子回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12