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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】熱拡散デバイス及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20240717BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F28D15/04 A
F28D15/02 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023576738
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 JP2023000095
(87)【国際公開番号】W WO2023145397
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2022009468
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】沼本 竜宏
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/100364(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/068224(WO,A1)
【文献】特開2021-32539(JP,A)
【文献】特開2018-96669(JP,A)
【文献】国際公開第2021/172479(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/229961(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0168359(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02-15/04
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に対向する第1内壁面及び第2内壁面を有する筐体と、
前記筐体の内部空間に封入される作動媒体と、
前記筐体の前記内部空間に配置されるウィックと、を備え、
前記ウィックは、前記第1内壁面に接する支持体と、前記支持体に接する有孔体と、を含み、
前記有孔体には、前記厚さ方向に貫通し、毛細管力を有する貫通孔が設けられ
前記貫通孔の周縁には、前記第1内壁面に近接する方向に凸部が設けられている、熱拡散デバイス。
【請求項2】
前記凸部は、前記第1内壁面側の第1端部及び前記第2内壁面側の第2端部を有し、
前記厚さ方向から見て、前記第1端部の内壁が囲う領域の断面積が、前記第2端部の内壁が囲う領域の断面積よりも小さい、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項3】
前記厚さ方向から見て、前記第1端部の内壁は、前記第2端部の内壁よりも内側に位置する、請求項2に記載の熱拡散デバイス。
【請求項4】
前記凸部は、前記第1内壁面側の第1端部及び前記第2内壁面側の第2端部を有し、
前記厚さ方向から見て、前記第1端部の内壁が囲う領域の断面積が、前記第2端部の内壁が囲う領域の断面積よりも大きい、請求項1に記載の熱拡散デバイス。
【請求項5】
前記厚さ方向から見て、前記第1端部の内壁は、前記第2端部の内壁よりも外側に位置する、請求項4に記載の熱拡散デバイス。
【請求項6】
前記支持体の厚さが前記有孔体の厚さと同じであるか、又は、前記有孔体の厚さより小さい、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱拡散デバイス。
【請求項7】
前記有孔体は、前記支持体と同じ材料から構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の熱拡散デバイス。
【請求項8】
前記有孔体は、前記支持体と異なる材料から構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の熱拡散デバイス。
【請求項9】
前記支持体は、複数の柱状部材を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の熱拡散デバイス。
【請求項10】
前記支持体は、複数のレール状部材を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の熱拡散デバイス。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱拡散デバイスを備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱拡散デバイス及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、素子の高集積化及び高性能化による発熱量が増加している。また、製品の小型化が進むことで、発熱密度が増加するため、放熱対策が重要となっている。この状況はスマートフォン及びタブレットなどのモバイル端末の分野において特に顕著である。熱対策部材としては、グラファイトシートなどが用いられることが多いが、その熱輸送量は充分ではないため、様々な熱対策部材の使用が検討されている。中でも、非常に効果的に熱を拡散させることが可能である熱拡散デバイスとして、面状のヒートパイプであるベーパーチャンバーの使用の検討が進んでいる。
【0003】
ベーパーチャンバーは、筐体の内部に、作動媒体(作動流体ともいう)と、毛細管力によって作動媒体を輸送するウィックとが封入された構造を有する。作動媒体は、電子部品などの発熱素子からの熱を吸収する蒸発部において発熱素子からの熱を吸収してベーパーチャンバー内で蒸発した後、ベーパーチャンバー内を移動し、冷却されて液相に戻る。液相に戻った作動媒体は、ウィックの毛細管力によって再び発熱素子側の蒸発部に移動し、発熱素子を冷却する。これを繰り返すことにより、ベーパーチャンバーは外部動力を有することなく自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱及び凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。
【0004】
特許文献1には、ベーパーチャンバーの一例であるサーマルグラウンドプレーン(thermal ground plane)が開示されている。特許文献1に記載のサーマルグラウンドプレーンは、第1の面状基材(planar substrate member)と、上記第1の面状基材に配置される複数のマイクロピラーと、少なくとも一部の上記マイクロピラーに接着されるメッシュと、上記第1の面状基材、上記マイクロピラー及び上記メッシュのうちの少なくとも1つに配置される蒸気コア(vapor core)と、上記第1の面状基材に配置される第2の面状基材と、を備え、上記メッシュは上記マイクロピラーを上記蒸気コアから分離し、上記第1の面状基材及び上記第2の面状基材は上記マイクロピラー、上記メッシュ及び上記蒸気コアを取り囲んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第10,527,358号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているようなベーパーチャンバーでは、マイクロピラーなどの支柱とメッシュなどの有孔体とによりウィックが構成されている。ベーパーチャンバーの有孔体としては、エッチング加工などによって、金属板に孔部を形成した有孔体などが用いられる。このような有孔体では、作動媒体の液流路側の部分において、有孔体の表面と、孔部の周縁で囲まれる面と、が互いに面一となっている。そして、作動媒体の液流路側の部分において、孔部の周縁で囲まれる面が作動媒体と接することにより毛細管力が生じる。しかしながら、例えば、ベーパーチャンバー製造時の注液工程において作動媒体の注液量が少ないというプロセス上の問題などによって、作動媒体の液量が少ない場合には、有孔体における作動媒体の液流路側の部分において、孔部の周縁で囲まれる面が作動媒体と接しないことがあるため、ウィックにおいて、毛細管力が生じにくいおそれがある。その場合、ベーパーチャンバーにおいて、作動媒体の移動が起こりにくいため、ベーパーチャンバーの均熱性能及び熱輸送性能が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、作動媒体の液量が少ない場合でも、均熱性能及び熱輸送性能の低下を抑制することが可能な熱拡散デバイスを提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記熱拡散デバイスを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱拡散デバイスは、厚さ方向に対向する第1内壁面及び第2内壁面を有する筐体と、上記筐体の内部空間に封入される作動媒体と、上記筐体の上記内部空間に配置されるウィックと、を備え、上記ウィックは、上記第1内壁面に接する支持体と、上記支持体に接する有孔体と、を含み、上記有孔体は上記厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、上記貫通孔の周縁には、上記第1内壁面に近接する方向に凸部が設けられている。
【0009】
本発明の電子機器は、本発明の熱拡散デバイスを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作動媒体の液量が少ない場合でも、均熱性能及び熱輸送性能の低下を抑制することが可能な熱拡散デバイスを提供することができる。さらに、本発明によれば、上記熱拡散デバイスを備える電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の熱拡散デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す熱拡散デバイスのII-II線に沿った断面図の一例である。
図3図3Aは、図2に示す熱拡散デバイスを構成するウィック及び作動媒体の一例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図3Bは、図3Aに示すウィックの凸部の形状を模式的に示す斜視図である。図3Cは、図3Aに示すウィックの凸部の形状の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4Aは、図3Aに示すウィックを支持体側から見た平面図の一例である。図4Bは、図3Aに示すウィックを支持体側から見た平面図の別の一例である。
図5図5Aは、凸部の第1変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図5Bは、図5Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
図6図6Aは、凸部の第2変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図6Bは、図6Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
図7-1】図7-1Aは、凸部の第3変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図7-1Bは、図7-1Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
図7-2】図7-2Aは、図7-1Aに示す凸部の別の一例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図7-2Bは、図7-2Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
図7-3】図7-3Aは、図7-1Aに示す凸部の別の一例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図7-3Bは、図7-3Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
図8図8は、凸部の第4変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
図9図9は、凸部の第5変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
図10図10は、ウィックの第1変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
図11図11は、図10に示すウィックにおける、凸部の第1変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
図12図12は、図10に示すウィックにおける、凸部の第2変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
図13図13は、ウィックの第2変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
図14図14は、ウィックの第3変形例を模式的に示す平面図である。
図15図15は、熱拡散デバイスの第1変形例を模式的に示す断面図である。
図16図16は、熱拡散デバイスの第2変形例を模式的に示す断面図である。
図17図17は、図3Aに示すウィックの第1変形例を有孔体側から見た平面図である。
図18図18は、図17に示すウィックのA-A線に沿った断面図である。
図19図19は、図11に示すウィックにおける、凸部の定義を説明するための図である。
図20図20は、図18に示すウィックにおける、凸部の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の熱拡散デバイスについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0013】
以下では、本発明の熱拡散デバイスの一実施形態として、ベーパーチャンバーを例にとって説明する。本発明の熱拡散デバイスは、ヒートパイプ等の熱拡散デバイスにも適用可能である。
【0014】
以下に示す図面は模式的なものであり、その寸法や縦横比の縮尺などは実際の製品とは異なる場合がある。
【0015】
図1は、本発明の熱拡散デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示す熱拡散デバイスのII-II線に沿った断面図の一例である。
【0016】
図1及び図2に示すベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)1は、気密状態に密閉された中空の筐体10を備える。筐体10は、厚さ方向Zに対向する第1内壁面11a及び第2内壁面12aを有する。ベーパーチャンバー1は、さらに、筐体10の内部空間に封入される作動媒体20と、筐体10の内部空間に配置されるウィック30と、を備える。
【0017】
筐体10には、封入した作動媒体20を蒸発させる蒸発部が設定される。図1に示すように、筐体10の外壁面には、発熱素子である熱源(heat source)HSが配置される。熱源HSとしては、電子機器の電子部品、例えば中央処理装置(CPU)等が挙げられる。筐体10の内部空間のうち、熱源HSの近傍であって熱源HSによって加熱される部分が、蒸発部に相当する。
【0018】
ベーパーチャンバー1は、全体として面状であることが好ましい。すなわち、筐体10は、全体として面状であることが好ましい。ここで、「面状」とは、板状及びシート状を包含し、幅方向Xの寸法(以下、幅という)及び長さ方向Yの寸法(以下、長さという)が厚さ方向Zの寸法(以下、厚さ又は高さという)に対して相当に大きい形状、例えば幅及び長さが、厚さの10倍以上、好ましくは100倍以上である形状を意味する。
【0019】
ベーパーチャンバー1の大きさ、すなわち、筐体10の大きさは、特に限定されない。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、用途に応じて適宜設定することができる。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、各々、例えば、5mm以上500mm以下、20mm以上300mm以下又は50mm以上200mm以下である。ベーパーチャンバー1の幅及び長さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
筐体10は、外縁部が接合された対向する第1シート11及び第2シート12から構成されることが好ましい。
【0021】
筐体10が第1シート11及び第2シート12から構成される場合、第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、ベーパーチャンバーとして用いるのに適した特性、例えば熱伝導性、強度、柔軟性、可撓性等を有するものであれば、特に限定されない。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、好ましくは金属であり、例えば銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、又はそれらを主成分とする合金等であり、特に好ましくは銅である。第1シート11及び第2シート12を構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよいが、好ましくは同じである。
【0022】
筐体10が第1シート11及び第2シート12から構成される場合、第1シート11及び第2シート12は、これらの外縁部において互いに接合される。かかる接合の方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー溶接、抵抗溶接、拡散接合、ロウ接、TIG溶接(タングステン-不活性ガス溶接)、超音波接合又は樹脂封止を用いることができ、好ましくはレーザー溶接、抵抗溶接又はロウ接を用いることができる。
【0023】
第1シート11及び第2シート12の厚さは、特に限定されないが、各々、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは30μm以上100μm以下、さらに好ましくは40μm以上60μm以下である。第1シート11及び第2シート12の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。また、第1シート11及び第2シート12の各シートの厚さは、全体にわたって同じであってもよく、一部が薄くてもよい。
【0024】
第1シート11及び第2シート12の形状は、特に限定されない。例えば、第1シート11及び第2シート12は、各々、外縁部が外縁部以外の部分よりも厚い形状であってもよい。
【0025】
ベーパーチャンバー1全体の厚さは、特に限定されないが、好ましくは50μm以上500μm以下である。
【0026】
厚さ方向Zから見た筐体10の平面形状は特に限定されず、例えば、三角形又は矩形などの多角形、円形、楕円形、これらを組み合わせた形状などが挙げられる。また、筐体10の平面形状は、L字型、C字型(コの字型)、階段型などであってもよい。また、筐体10は貫通口を有してもよい。筐体10の平面形状は、ベーパーチャンバーの用途、ベーパーチャンバーの組み入れ箇所の形状、近傍に存在する他の部品に応じた形状であってもよい。
【0027】
作動媒体20は、筐体10内の環境下において気-液の相変化を生じ得るものであれば特に限定されず、例えば、水、アルコール類、代替フロンなどを用いることができる。例えば、作動媒体20は水性化合物であり、好ましくは水である。
【0028】
ウィック30は、毛細管力により作動媒体20を移動させることができる毛細管構造を有する。
【0029】
ウィック30の大きさ及び形状は、特に限定されないが、例えば、筐体10の内部空間において連続してウィック30が配置されていることが好ましい。厚さ方向Zから見て、筐体10の内部空間の全体にウィック30が配置されていてもよく、厚さ方向Zから見て、筐体10の内部空間の一部にウィック30が配置されていてもよい。
【0030】
図3Aは、図2に示す熱拡散デバイスを構成するウィック及び作動媒体の一例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0031】
図2及び図3Aに示すように、ウィック30は、第1内壁面11aに接する支持体31と、支持体31に接する有孔体32と、を含む。
【0032】
ウィック30では、有孔体32は、支持体31と同じ材料から構成される。有孔体32が支持体31と同じ材料から構成される場合において、支持体31及び有孔体32を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、又はそれらの混合物、積層物などが挙げられる。支持体31及び有孔体32を構成する材料は金属が好ましい。
【0033】
ウィック30において、支持体31及び有孔体32が一体的に構成されていてもよい。本明細書において、「支持体31及び有孔体32が一体的に構成される」とは、支持体31と有孔体32との間に界面が存在しないことを意味し、具体的には、支持体31と有孔体32との間に境界が判別できないことを意味する。
【0034】
支持体31及び有孔体32が一体的に構成されるウィック30は、例えば、エッチング技術、多層塗りによる印刷技術、その他の多層技術などにより作製することができる。
【0035】
ウィック30において、有孔体32が支持体31と同じ材料から構成されている場合、支持体31及び有孔体32が一体的に構成されていなくてもよい。例えば、支持体31としての銅ピラーと、有孔体32としての銅メッシュとが、拡散接合又はスポット溶接などで固定されたウィック30においては、支持体31と有孔体32との間を全面にわたって接合することが困難であるため、支持体31と有孔体32との間の一部には隙間が生じる。このようなウィック30では、支持体31と有孔体32との間に境界が判別できるため、支持体31と有孔体32とは一体的に構成されていないが、有孔体32は、支持体31と同じ材料から構成されるといえる。
【0036】
図4Aは、図3Aに示すウィックを支持体側から見た平面図の一例である。図4Bは、図3Aに示すウィックを支持体側から見た平面図の別の一例である。
【0037】
ウィック30では、支持体31は、例えば、複数の柱状部材を含む。柱状部材の間に液相の作動媒体20を保持することにより、ベーパーチャンバー1の熱輸送性能を向上させることができる。ここで、「柱状」とは、底面の長辺の長さの比が、底面の短辺の長さに対して5倍未満である形状を意味する。
【0038】
柱状部材の形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状、角柱形状、円錐台形状、角錐台形状などの形状が挙げられる。図4Aに示す例では、支持体31の高さ方向に垂直な断面形状は四角形状であり、図4Bに示す例では、支持体31の高さ方向に垂直な断面形状は円形状である。
【0039】
柱状部材は、周囲よりも相対的に高さが高ければよい。したがって、柱状部材は、第1内壁面11aから突出した部分に加え、第1内壁面11aに形成された凹みにより相対的に高さが高くなっている部分も含む。
【0040】
支持体31の形状は特に限定されないが、図2及び図3Aに示すように、支持体31は、有孔体32から第1内壁面11aに向かって幅が狭くなるテーパー形状を有することが好ましい。これにより、支持体31の間への有孔体32の落ち込みを抑制しつつ、筐体10側では支持体31の間の流路を広くすることができる。その結果、透過率が上昇し、最大熱輸送量が大きくなる。
【0041】
支持体31の配置は、特に限定されないが、好ましくは所定の領域において均等に、より好ましくは全体にわたって均等に、例えば支持体31の中心間距離(ピッチ)が一定となるように配置される。
【0042】
支持体31の中心間距離(図4A又は図4B中、P31で示す長さ)は、例えば、60μm以上800μm以下である。支持体31の幅(図4A又は図4B中、W31で示す長さ)は、例えば、20μm以上500μm以下である。支持体31の高さ(図3A中、T31で示す長さ)は、例えば、10μm以上100μm以下である。
【0043】
有孔体32は、厚さ方向Zに貫通する貫通孔33を有する。貫通孔33内において、作動媒体20は、毛細管現象により移動することができる。貫通孔33は厚さ方向Zから見て、支持体31が存在しない部分に設けられていることが好ましい。貫通孔33の形状は、特に限定されないが、厚さ方向Zに垂直な面での断面が円形又は楕円形であることが好ましい。
【0044】
有孔体32の貫通孔33の配置は、特に限定されないが、好ましくは所定の領域において均等に、より好ましくは全体にわたって均等に、例えば有孔体32の貫通孔33の中心間距離(ピッチ)が一定となるように配置される。
【0045】
有孔体32の貫通孔33の中心間距離(図4A又は図4B中、P33で示す長さ)は、例えば、3μm以上150μm以下である。貫通孔33の第1内壁面11a側の端面における径(図4A又は図4B中、φ33で示す長さ)は、例えば、100μm以下である。有孔体32の厚さ(図3A中、T32で示す長さ)は、例えば、5μm以上50μm以下である。なお、有孔体32の厚さは、後述する凸部34が設けられていない部分での有孔体32の厚さを意味する。
【0046】
貫通孔33の周縁には、第1内壁面11aに近接する方向に凸部34が設けられている。
【0047】
図3Bは、図3Aに示すウィックの凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
【0048】
凸部34は、第1内壁面11a側の第1端部35及び第2内壁面12a側の第2端部36を有する。
【0049】
図3Bに示す例では、凸部34の形状は、円筒形状である。このように、凸部34の形状は、例えば、第1端部35が平坦な筒形状である。その場合、凸部34の形状は、角筒形状であってもよく、円錐台、角錐台などの内部が空洞となった形状であってもよい。
【0050】
図3Aにおいて、作動媒体20は、凸部34の内壁によって囲まれる面と接することによって、毛細管力により貫通孔33内に吸い上げられている。このため、ウィック30を厚さ方向Zから見て貫通孔33が存在しない部分では、作動媒体20の液面は、有孔体32よりも第1内壁面11a側に位置しているにも関わらず、貫通孔33内には作動媒体20が吸い上げられている。このようにして、ベーパーチャンバー1では、作動媒体20の液量が少ない場合においても、貫通孔33内に作動媒体20を吸い上げることができる。それゆえ、作動媒体20の液量が少ない場合であっても、ウィック30において、毛細管力が生じにくくなることを防ぐことができる。以上のことから、ベーパーチャンバー1は、作動媒体20の液量が少ない場合でも、均熱性能及び熱輸送性能の低下を抑制することが可能である。
【0051】
ベーパーチャンバー1では、作動媒体20の液量が少ない場合でも、均熱性能及び熱輸送性能の低下を抑制することが可能であるため、例えば、製造工程における作動媒体20の注液量の設計値の変更、製造工程における作動媒体20の注液量のばらつき及び使用時における作動媒体20の液量の変動等が均熱性能又は熱輸送性能に与える影響が少ない。つまり、ベーパーチャンバー1は作動媒体20の液量に対するロバスト性に優れているといえる。
【0052】
凸部34は、貫通孔33の周縁全体に設けられていることが好ましい。凸部34は、毛細管力により、作動媒体20を吸い上げることができる形状である限りは、貫通孔33の周縁の一部にのみ設けられていてもよい。
【0053】
凸部34は、有孔体32におけるすべての貫通孔33の周縁に設けられていてもよく、有孔体32における一部の貫通孔33の周縁にのみ設けられていてもよい。凸部34が、有孔体32における一部の貫通孔33の周縁にのみ設けられている場合、少なくとも熱源HSの直上に位置する貫通孔33の周縁には凸部34が設けられていることが好ましい。熱源HSの直上に位置する貫通孔33に凸部34が設けられている場合、作動媒体20の液量が少ない場合でも、蒸発部において作動媒体20の蒸発が起こりにくくなることを抑制できる。熱源HSの直上に位置する貫通孔33の周縁にのみ、凸部34が設けられていてもよい。
【0054】
貫通孔33及び凸部34は、例えば、有孔体32を構成する金属等に対して、プレス加工による打ち抜きを行うことによって作製することができる。プレス加工による打ち抜きにおいて、打ち抜きの深さ等を適宜調整することによって、凸部の形成及び凸部の形状等を調節することができる。なお、打ち抜きの深さとは、例えば、パンチによって打ち抜きを行う際に、打ち抜き方向に、どの程度までパンチを押し込むかを意味する。
【0055】
凸部34の寸法は特に限定されない。例えば、凸部34の高さが、貫通孔33の径よりも大きくてもよく、凸部34の高さが、貫通孔33の径よりも小さくてもよく、凸部34の高さが、貫通孔33の径と同じであってもよい。なお、図3A及び図3Bの凸部34において、凸部34の高さは、第1端部35及び第2端部36の間の厚さ方向Zにおける距離を意味する。
【0056】
図3Cは、図3Aに示すウィックの凸部の形状の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【0057】
図3Cに示す凸部34では、第1端部35は、平坦ではなく、凹凸を有している。なお、第1端部35が、凹凸を有している場合、凸部34の高さは、第1端部35及び第2端部36の間の厚さ方向Zにおける距離のうち最大となる距離を意味する。
【0058】
図5Aは、凸部の第1変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図5Bは、図5Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
【0059】
図5A及び図5Bに示す凸部34aは、第1内壁面11a側の第1端部35a及び第2内壁面12a側の第2端部36aを有する。凸部34aは、厚さ方向Zから見て、第1端部35aの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36aの内壁が囲う領域の断面積よりも小さい。厚さ方向Zから見て、第1端部35aの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36aの内壁が囲う領域の断面積よりも小さいと、第1端部35aの内壁に囲まれる領域において生じる毛細管力を向上することができる。それゆえ、ウィック30の毛細管力を向上することができるため、ベーパーチャンバー1の最大熱輸送量を向上することができる。
【0060】
凸部34aにおいて、厚さ方向Zから見て、第1端部35aの内壁は、第2端部36aの内壁よりも内側に位置していてもよい。
【0061】
凸部34aは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1内壁面11aに近接する方向に向かって、凸部34aの外壁間の距離が狭くなるテーパー形状を有する。
【0062】
凸部34aは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1内壁面11a側(図5Aでは下側)に凸な形状である。いいかえれば、凸部34aは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1端部35a及び第2端部36aを結ぶ線分に対して第1内壁面11a側(図5Aでは下側)にカーブする形状である。
【0063】
図6Aは、凸部の第2変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図6Bは、図6Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
【0064】
図6A及び図6Bに示す凸部34bは、第1内壁面11a側の第1端部35b及び第2内壁面12a側の第2端部36bを有する。凸部34bは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1内壁面11aに近接する方向に向かって、凸部34bの外壁間の距離が狭くなるテーパー形状を有する。凸部34bは、厚さ方向Zに沿う断面において、第2内壁面12a側(図6Aでは上側)に凸な形状である。いいかえれば、凸部34bは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1端部35b及び第2端部36bを結ぶ線分に対して第2内壁面12a側(図6Aでは上側)にカーブする形状である。
【0065】
図7-1Aは、凸部の第3変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図7-1Bは、図7-1Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
【0066】
図7-1A及び図7-1Bに示す凸部34cは、第1内壁面11a側の第1端部35c及び第2内壁面12a側の第2端部36cを有する。凸部34cは、厚さ方向Zから見て、第1端部35cの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36cの内壁が囲う領域の断面積よりも小さい。凸部34cは、第1端部35cにおいて、凸部34cの開口を狭める蓋部37を備えている。凸部34cでは、厚さ方向Zから見たとき、第1端部35cにおいて蓋部37が存在しない凸部34bと比べて、第1端部35cの内壁が囲う領域の断面積が狭くなっている。
【0067】
凸部34cの開口を狭める蓋部37は、例えば、第1端部35cにプレス加工を行うことで形成されていてもよい。凸部34cの開口を狭める蓋部37の大きさや形状は、特に限定されず、凸部34cの第1端部35c側での開口を狭めていればよい。凸部34cの開口を狭める蓋部37は、平坦面であることが好ましい。凸部34cの開口を狭める蓋部37は、厚さ方向Zに対して垂直な平坦面であることが好ましい。凸部34cの開口を狭める蓋部37は、一部又は全体が曲面状であってもよい。凸部34cの開口を狭める蓋部37は、表面が凹凸形状を有していてもよい。凸部34cの開口を狭める蓋部37の厚さは、凸部34cの厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0068】
図7-1A及び図7-1Bでは、蓋部37は、第1端部35cの全体に設けられている。図7-1A及び図7-1Bでは、第1端部35cでの貫通孔33の周縁の中心と第2端部36cでの貫通孔33の周縁の中心とが一致している。
【0069】
図7-2Aは、図7-1Aに示す凸部の別の一例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図7-2Bは、図7-2Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
【0070】
図7-2A及び図7-2Bでは、第1端部35cの一部にのみ蓋部37が設けられている。図7-2Aでは、凸部34cの左側にのみ蓋部37が設けられ、凸部34cの右側には蓋部37が設けられていない。図8-2A及び図8-2Bでは、第1端部35cでの貫通孔33の周縁の中心と第2端部36cでの貫通孔33の周縁の中心とが一致していない。
【0071】
図7-3Aは、図7-1Aに示す凸部の別の一例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。図7-3Bは、図7-3Aに示す凸部の形状を模式的に示す斜視図である。
【0072】
図7-3A及び図7-3Bに示す凸部34cでは、第1端部35cの一部にのみ蓋部37が設けられている。図7-3Aでは、凸部34cの右側にのみ蓋部37が設けられ、凸部34cの左側には蓋部37が設けられていない。図7-3Bでは、断面が略円形状の蓋部が、第1端部35cの一部に設けられている。図7-1A、図7-1B、図7-2A及び図7-2Bでは、蓋部37は、厚さ方向Zに対して垂直な平坦面であるが、図7-3A及び図7-3Bでは、蓋部37は、第1内壁面11a側(図7-3Aの下側)に向かって延びるように設けられている。図7-3A及び図7-3Bにおいて、蓋部37は平坦面であるが、蓋部37は曲面であってもよい。
【0073】
図8は、凸部の第4変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0074】
図8に示す凸部34dは、第1内壁面11a側の第1端部35d及び第2内壁面12a側の第2端部36dを有する。凸部34dは、厚さ方向Zから見て、第1端部35dの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36dの内壁が囲う領域の断面積よりも大きい。厚さ方向Zから見て、第1端部35dの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36dの内壁が囲う領域の断面積よりも大きいと、貫通孔33内への作動媒体20の吸い上げ量を増加することができる。貫通孔33内への作動媒体20の吸い上げ量が多いと、ベーパーチャンバー1内の作動媒体20が減少していく場合に、貫通孔33内に作動媒体20が全く吸い上げられなくなるまでの作動媒体20の変動の許容値が大きくなる。そのため、ベーパーチャンバー1における作動媒体20の液量に対するロバスト性が向上する。
【0075】
凸部34dにおいて、厚さ方向Zから見て、第1端部35dの内壁は、第2端部36dの内壁よりも外側に位置していてもよい。
【0076】
図9は、凸部の第5変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0077】
図9に示す凸部34eは、第1内壁面11a側の第1端部35e及び第2内壁面12a側の第2端部36eを有する。凸部34eは、厚さ方向Zから見て、第1端部35eの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36eの内壁が囲う領域の断面積よりも大きい。凸部34eは、第1端部35eにおいて、凸部34eの開口を狭める蓋部37を備えている。凸部34eでは、厚さ方向Zから見たとき、第1端部35eにおいて蓋部37が存在しない凸部34dと比べて、第1端部35eの内壁が囲う領域の断面積が狭くなっている。
【0078】
凸部34eの開口を狭める蓋部37は、例えば、第1端部35eにプレス加工を行うことで形成されていてもよい。凸部34eの開口を狭める蓋部37の大きさや形状は、特に限定されず、凸部34eの第1端部35e側での開口を狭めていればよい。凸部34eの開口を狭める蓋部37は、平坦面であることが好ましい。凸部34eの開口を狭める蓋部37は、厚さ方向Zに対して垂直な平坦面であることが好ましい。凸部34eの開口を狭める蓋部37は、一部又は全体が曲面状であってもよい。凸部34eの開口を狭める蓋部37は、表面が凹凸形状を有していてもよい。凸部34eの開口を狭める蓋部37の厚さは、凸部34eの厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
図10は、ウィックの第1変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0080】
図10に示すウィック30Aでは、例えば、プレス加工などによって金属箔の一部を曲げて凹ませることにより、凹んだ部分に支持体31が形成されている。支持体31の凹んだ部分に蒸気空間が形成されるため、熱伝導率が向上する。図10に示す例に限らず、金属箔にプレス加工を行う場合、プレス加工の具合によっては、金属箔の一部を曲げた際に凹んだ部分に貫通孔が形成されても良い。
【0081】
プレス加工などを行う前の金属箔の厚さは一定であることが好ましい。ただし、曲げられた部分では金属箔が薄くなることもある。以上より、ウィック30Aでは、支持体31の厚さが有孔体32の厚さと同じであるか、又は、有孔体32の厚さより小さいことが好ましい。
【0082】
ウィック30Aは、支持体31を形成するプレス加工と、貫通孔33及び凸部34を形成するプレス加工と、が一括で行われることにより形成されていることが好ましい。
【0083】
ウィック30Aにおいて、凸部34の厚さは、支持体31の厚さと同じであってもよい。ウィック30Aにおいて、凸部34の厚さは、有孔体32の厚さと同じであってもよい。図10に示すように、ウィック30Aにおいて、支持体31の厚さ、有孔体32の厚さ及び凸部34の厚さが一定であってもよい。
【0084】
ウィック30Aにおいて、凸部34の厚さは、支持体31の厚さと異なっていてもよい。ウィック30Aにおいて、凸部34の厚さは、有孔体32の厚さと異なっていてもよい。
【0085】
図11は、図10に示すウィックにおける、凸部の第1変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0086】
図11に示す凸部34bは、図6A及び図6Bに示す凸部34bと同じ形状を有する。凸部34bは、第1内壁面11a側の第1端部35b及び第2内壁面12a側の第2端部36bを有する。凸部34bは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1内壁面11aに近接する方向に向かって、凸部34bの外壁間の距離が狭くなるテーパー形状を有する。凸部34bは、厚さ方向Zに沿う断面において、第2内壁面12a側(図11では上側)に凸な形状である。いいかえれば、凸部34bは、厚さ方向Zに沿う断面において、第1端部35b及び第2端部36bを結ぶ線分に対して第2内壁面12a側(図11では上側)にカーブする形状である。
【0087】
凸部34bの厚さは、支持体31の厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。凸部34bの厚さは、有孔体32の厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0088】
図12は、図10に示すウィックにおける、凸部の第2変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0089】
図12に示す凸部34cは、図7-1A及び図7-1Bに示す凸部34cと同じ形状を有する。凸部34cは、第1内壁面11a側の第1端部35c及び第2内壁面12a側の第2端部36cを有する。凸部34cは、厚さ方向Zから見て、第1端部35cの内壁が囲う領域の断面積が、第2端部36cの内壁が囲う領域の断面積よりも小さい。凸部34cは、第1端部35cにおいて、凸部34cの開口を狭める蓋部37を備えている。
【0090】
凸部34cの厚さは、支持体31の厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。凸部34cの厚さは、有孔体32の厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。凸部34cの開口を狭める蓋部37の厚さは、支持体31の厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。凸部34cの開口を狭める蓋部37の厚さは、有孔体32の厚さと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0091】
図10に示す凸部34は、図5A及び図5Bに示す凸部34a、図8に示す凸部34d、又は図9に示す凸部34eと同じ形状であってもよい。
【0092】
図13は、ウィックの第2変形例を模式的に示す、一部を拡大した断面図である。
【0093】
図13に示すウィック30Bでは、有孔体32は、支持体31と異なる材料から構成される。支持体31を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、又はそれらの混合物、積層物などが挙げられる。有孔体32を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、又はそれらの混合物、積層物などが挙げられる。有孔体32を構成する材料は金属が好ましい。
【0094】
図13に示す凸部34は、図5A及び図5Bに示す凸部34a、図6A及び図6Bに示す凸部34b、図7-1A及び図7-1Bに示す凸部34c、図7-2A及び図7-2Bに示す凸部34c、図7-3A及び図7-3Bに示す凸部34c、図8に示す凸部34d、又は図9に示す凸部34eと同じ形状であってもよい。
【0095】
図14は、ウィックの第3変形例を模式的に示す平面図である。なお、図14は、支持体側から見たウィックの平面図である。
【0096】
図14に示すウィック30Cでは、支持体31は、複数のレール状部材を含む。レール状部材の間に液相の作動媒体20を保持することにより、ベーパーチャンバー1の熱輸送性能を向上させることができる。ここで、「レール状」とは、底面の長辺の長さの比が、底面の短辺の長さに対して5倍以上である形状を意味する。
【0097】
レール状部材の延伸方向に垂直な断面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形などの多角形、半円形、半楕円形、これらを組み合わせた形状などが挙げられる。
【0098】
レール状部材は、周囲よりも相対的に高さが高ければよい。したがって、レール状部材は、第1内壁面11aから突出した部分に加え、第1内壁面11aに形成された溝により相対的に高さが高くなっている部分も含む。
【0099】
また、ウィック30Cは、図14に開示される形状に限定されず、内部空間の全体に配置されず部分的に配置して利用されてもよい。例えば、内部空間に外周に沿ってレール状の支持体31を構成し、その上に外周に沿った形状の有孔体32を配置してもよい。
【0100】
図2に示すように、筐体10の内部空間には、第2内壁面12aに接する支柱40が配置されていてもよい。筐体10の内部空間に支柱40を配置することによって筐体10及びウィック30を支持することが可能である。
【0101】
支柱40を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、金属、セラミックス、又はそれらの混合物、積層物などが挙げられる。また、支柱40は、筐体10と一体であってもよく、例えば、筐体10の第2内壁面12aをエッチング加工すること等により形成されていてもよい。
【0102】
支柱40の形状は、筐体10及びウィック30を支持できる形状であれば特に限定されないが、支柱40の高さ方向に垂直な断面の形状としては、例えば、矩形などの多角形、円形、楕円形などが挙げられる。
【0103】
支柱40の高さは、一のベーパーチャンバーにおいて、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
図2に示す断面において、支柱40の幅は、筐体10の変形を抑制できる強度を与えるものであれば特に限定されないが、支柱40の端部の高さ方向に垂直な断面の円相当径は、例えば100μm以上2000μm以下であり、好ましくは300μm以上1000μm以下である。支柱40の円相当径を大きくすることにより、筐体10の変形をより抑制することができる。一方、支柱40の円相当径を小さくすることにより、作動媒体20の蒸気が移動するための空間をより広く確保することができる。
【0105】
支柱40の配置は、特に限定されないが、好ましくは所定の領域において均等に、より好ましくは全体にわたって均等に、例えば支柱40間の距離が一定となるように配置される。支柱40を均等に配置することにより、ベーパーチャンバー1の全体にわたって均一な強度を確保することができる。
【0106】
図15は、熱拡散デバイスの第1変形例を模式的に示す断面図である。
【0107】
図15に示すベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)1Aでは、支持体31は、筐体10の第1シート11と一体的に構成されている。ベーパーチャンバー1Aにおいて、第1シート11及び支持体31は、例えば、エッチング技術、多層塗りによる印刷技術、その他の多層技術などにより作製することができる。図15に示すように、有孔体32は、支持体31と異なる材料から構成されることが好ましい。ベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)1Aにおいて、有孔体32は、支持体31及び筐体10の第1シート11と同じ材料から構成されてもよく、有孔体32は、支持体31及び筐体10の第1シート11と一体的に構成されていてもよい。
【0108】
図16は、熱拡散デバイスの第2変形例を模式的に示す断面図である。
【0109】
図16に示すベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)1Bでは、例えば、プレス加工などによって筐体10の第1内壁面11aの一部を曲げて凹ませることにより、凹んだ部分に支持体31が形成されている。
【0110】
図17は、図3Aに示すウィックの第1変形例を有孔体側から見た平面図である。図18は、図17に示すウィックのA-A線に沿った断面図である。
【0111】
図18に示すウィック30Dでは、厚さ方向Zに沿う断面において、凸部34同士の間は曲面となっており、平坦な部分が存在しない。なお、図18は、貫通孔33を通る断面図であるが、厚さ方向Zに沿う断面のうち貫通孔33を通らない断面において、凸部34同士の間には平坦な部分が存在してもよく、平坦な部分が存在しなくてもよい。また、ウィック30Dにおいて、有孔体32は全体が曲面となっていて、平坦な部分が存在しなくてもよい。
【0112】
図19は、図11に示すウィックにおける、凸部の定義を説明するための図である。図19は、直線L1及び直線L2を追加した以外は、図11と同じ図である。
【0113】
本明細書では、凸部は、厚さ方向Zに沿う断面において、以下のように設定される直線L1及び直線L2の間の部分と定義される。なお、凸部が複数ある場合、直線L1及び直線L2はそれぞれの凸部ごとに設定される。図19に示すように、厚さ方向Zに沿う断面において、貫通孔の両側(図19の右側及び左側の両方)に凸部が存在する場合には、それぞれの凸部について直線L1及び直線L2を設定する。以下に記載する凸部の定義では、厚さ方向Zに垂直な面(XY面)を基準面という。以下、図19に示すウィック30Aを例に挙げて、直線L1及び直線L2について説明する。
【0114】
まず、貫通孔33の第1内壁面11a側の周縁に存在する凸部34bの第1端部35bのうち、最も第1内壁面11a側に存在する点(図19の点P1)を通り、基準面に対して平行な直線をL1とする。
【0115】
次に、ウィック30Aの第1内壁面11a側の表面のうち、最も第2内壁面12a側に存在する点(図19の点P2)を通り、基準面に対して平行な直線をL2とする。
【0116】
厚さ方向Zに沿う断面において、ウィック30Aの直線L2上の部分が第2端部36bとなる。ウィック30Aの直線L2上の部分が複数存在する場合、貫通孔33の第2内壁面12a側の周縁からの距離が最も小さい点を含む部分が第2端部36bとなる。このように設定される第2端部36bから、第1端部35bまでが凸部34bである。
【0117】
図20は、図18に示すウィックにおける、凸部の定義を説明するための図である。図20は、直線L1及び直線L2を追加した以外は、図18と同じ図である。
【0118】
図20に示すウィック30Dにおいても、ウィック30Aと同様に直線L1及び直線L2を設定する。ウィック30Dでは、凸部34同士の間は曲面となっており、平坦な部分が存在しないが、直線L2上の部分が、第2端部36となる。
【0119】
本発明の熱拡散デバイスは、上記実施形態に限定されるものではなく、熱拡散デバイスの構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0120】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体は、1個の蒸発部を有してもよく、複数の蒸発部を有してもよい。すなわち、筐体の外壁面には、1個の熱源が配置されてもよく、複数の熱源が配置されてもよい。蒸発部及び熱源の数は特に限定されない。
【0121】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体が第1シート及び第2シートから構成される場合、第1シートと第2シートとは、端部が一致するように重なっていてもよいし、端部がずれて重なっていてもよい。
【0122】
本発明の熱拡散デバイスにおいて、筐体が第1シート及び第2シートから構成される場合、第1シートを構成する材料と、第2シートを構成する材料とは異なっていてもよい。例えば、強度の高い材料を第1シートに用いることにより、筐体にかかる応力を分散させることができる。また、両者の材料を異なるものとすることにより、一方のシートで一の機能を得、他方のシートで他の機能を得ることができる。上記の機能としては、特に限定されないが、例えば、熱伝導機能、電磁波シールド機能等が挙げられる。
【0123】
本発明の熱拡散デバイスは、放熱を目的として電子機器に搭載され得る。したがって、本発明の熱拡散デバイスを備える電子機器も本発明の1つである。本発明の電子機器としては、例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン、ゲーム機器、ウェアラブルデバイス等が挙げられる。本発明の熱拡散デバイスは上記のとおり、外部動力を必要とせず自立的に作動し、作動媒体の蒸発潜熱及び凝縮潜熱を利用して、二次元的に高速で熱を拡散することができる。そのため、本発明の熱拡散デバイスを備える電子機器により、電子機器内部の限られたスペースにおいて、放熱を効果的に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の熱拡散デバイスは、携帯情報端末等の分野において、広範な用途に使用できる。例えば、CPU等の熱源の温度を下げ、電子機器の使用時間を延ばすために使用することができ、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等に使用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1、1A、1B ベーパーチャンバー(熱拡散デバイス)
10 筐体
11 第1シート
11a 第1内壁面
12 第2シート
12a 第2内壁面
20 作動媒体
30、30A、30B、30C、30D ウィック
31 支持体
32 有孔体
33 貫通孔
34、34a、34b、34c、34d、34e 凸部
35、35a、35b、35c、35d、35e 第1端部
36、36a、36b、36c、36d、36e 第2端部
37 蓋部
40 支柱
HS 熱源
31 支持体の中心間距離
33 貫通孔の中心間距離
31 支持体の高さ
32 有孔体の厚さ
31 支持体の幅
X 幅方向
Y 長さ方向
Z 厚さ方向
φ33 貫通孔の第1内壁面側の端面における径

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20