(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法及び荷運送作業車
(51)【国際特許分類】
B65G 69/26 20060101AFI20240717BHJP
A01D 33/10 20060101ALI20240717BHJP
B65G 41/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65G69/26
A01D33/10
B65G41/00 A
(21)【出願番号】P 2020105682
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2020091801
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000217240
【氏名又は名称】田中工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081824
【氏名又は名称】戸島 省四郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 博
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
(72)【発明者】
【氏名】池田 伸広
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-056057(JP,A)
【文献】特開2009-027967(JP,A)
【文献】実開昭52-005935(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/00-69/34
A01D 13/00-33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走できて車体の一部に重量ある荷を摺動可能に載置する荷台を設けた荷運送作業車であり、しかも前記荷台は前記車体の後部又は前部に配置するとともに、前記荷台の車体中央側の台端に設けた前後方向と直交する左右方向の水平な枢軸を介して
前記車体に取付けて前記荷台を同枢軸まわりに前後に傾動可能とし、前記荷台を同枢軸まわりに回動させて前記荷台を水平から所定のプラスマイナスの角度範囲+θ
4~-θ
3(θ
4,θ
3>0)で前後に傾動でき且つ
所定角度を保持できる油圧・空気圧又は電力を動力源とする荷台傾動の駆動手段を設け、更に前記荷台上に載置された荷が前記荷台を超えて車体中央側に移動することを防止するストッパー部材を荷台又は車体に設けた構成とした荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法であって、
車体静止時において、実測によって荷台上に載置された重量ある荷が荷台との静止摩擦力に抗して滑り始める荷台の水平からのマイナスの荷台傾斜角-θ
0(θ
0>0)を計測し、その荷台傾斜角-θ
0から所要角度θ
m(θ
m>0)だけ水平に近いマイナスの傾斜角-θ
1(θ
1=θ
0-θ
m>0)を荷が荷台上に確実に静止できる安定静止角-θ
1として設定し、
前記荷台上の重量ある荷を荷卸しする地面・畑・路面・床面あるいは棚面の移載場所まで前記荷運送作業車を移動して荷運送作業車を停車させ、その後下記イ,ロ,ハ,ニの行程により重量ある荷をその重量の1/10以下程の機械力又は人力による荷台面に沿っての引降力で安全且つ荷衝撃も少なく荷卸しができることを特徴とする、荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法。
イ:前記荷台の駆動手段を作動させ、荷台の水平からのマイナスの傾斜角-θを前記の安定静止角-θ
1と同じ角度又はそれより少し水平に近い角度-θ
6まで傾けてこの角度を保持し、
ロ:その後、その保持した前記傾斜角-θで傾けた前記荷台上で静止している荷に対し、荷台に沿って前記引降力を弱い力から力を漸次強くするように増加させながら加えていき、
ハ:前記の引降力と荷の自重の滑り方向の分力との合計力が荷台の静止摩擦力より少し大きくなればゆっくりと荷は滑り始め、この滑り始めた時の引降力を維持すると荷はゆっくり荷台の上面に沿って滑って荷の滑り先側の荷の下端は地面・畑・路面等に接地し、
ニ:その後、荷運送作業車の荷台が前記滑り先側の荷の下端の接地位置から遠ざかる方向に移動させることで荷台上に残った荷の他の下端は荷台上面を滑りながら荷は前記接地した下端まわりに回転して、荷台が大きく移動すると荷の他の下端は荷台から離れ、他の下端も接地して荷は地面等上に荷卸すこととなる
【請求項2】
前記所要角度θ
mの値として、6.0°≧θ
m≧2.0°の範囲の値として、前記-θ
1が-θ
1=-θ
0+θ
mで計算される角度とした、請求項1記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法。
【請求項3】
荷を接地する地面・路面・床面又は棚面が硬質の場合において、荷を卸す位置に荷台底面より広い肉厚のクッション材を敷いてから前記イ,ロ,ハ,ニの行程を行うことで、荷の接地における衝撃を少なくできる、請求項1又は2記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法。
【請求項4】
前記荷運送作業車が、農作物の集穫作業又は回収作業の装置を設けた荷運送作業車又は農作物・その他物品を搬送する荷運送作業車である、請求項1~3いずれか記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法。
【請求項5】
前記請求項1~4記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法のための荷運送作業車であって、
自走できて車体の一部に重量ある荷を摺動可能に載置する荷台を設けた荷運送作業車であり、しかも前記荷台は前記車体の後部又は前部に配置するとともに、前記荷台の車体中央側の台端に設けた前後方向と直交する左右方向の水平な枢軸を介して
前記車体に取付けて前記荷台を同枢軸まわりに前後に傾動可能とし、前記荷台を同枢軸まわりに回動させて前記荷台を水平から所定のプラスマイナスの角度範囲+θ
4~-θ
3(θ
4,θ
3>0)で前後に傾動でき且つ
所定角度を保持できる油圧・空気圧又は電力を動力源とする荷台傾動の駆動手段を設け、更に前記荷台上に載置された荷が前記荷台を超えて車体中央側に移動することを防止するストッパー部材を荷台又は車体に設けた構成とし、
しかも車体静止時において、荷台上に載置された重量ある荷が荷台との静止摩擦力に抗して滑り始める荷台の水平からのマイナスの荷台傾斜角を-θ
0(θ
0>0)とした場合に、その荷台傾斜角-θ
0から所要角度θ
m(θ
m>0)だけ水平に近いマイナスの傾斜角-θ
1(θ
1=θ
0-θ
m>0)を荷が荷台上に確実に静止できる安定静止角-θ
1として設定し、
更に、荷台の水平からのマイナスの傾斜角-θ(θ>0)が前記安定静止角-θ
1よりマイナス方向に大きくならないように制動できる前記荷台の傾動ストッパー機構又は前記駆動手段の動力源を制御して荷台のマイナスの傾斜角-θがθ≧θ
1とならないように制動する荷台傾角制動回路を備え、前記傾動ストッパー機構又は荷台傾角制動回路は手操作で制動有効/制動無効の設定を切換操作可能な構成とし、
前記傾動ストッパー機構又は荷台傾角制動回路を手操作で作動有効に設定すると、荷台傾斜角-θを前記安定静止角-θ
1と同じか又はこれより水平側の傾斜角とし、機械力又は人力によって前記引降力を低い値から漸次高くなるように加えることによって静止摩擦力と拮抗する状態として荷を荷台に沿ってゆっくりと滑らせ、荷の滑り先側の下端を路面又は畑上面又は床面に衝撃少なく接地させ、その後車体を移動させることで荷の他の下端を荷台上面を滑らせて荷台を先に接地した下端まわりに回転させて荷の他の下端も接地させて、重量ある荷の荷卸しを小さい引降力で安全且つ確実に可能とし、次に荷の重量が大きくない場合は前記傾動ストッパー機構又は荷台傾角制動回路を手操作で制動無効に設定して、駆動手段で荷台を水平から-θ
0のマイナス角度より更にマイナスの角度になるようにマイナス傾斜角-θ
3の方向に漸次マイナス方向に大きく傾動することで、荷を荷台上で滑らせて荷の一端を接地させ、その後車体をその接地点より遠ざかるように移動させることで荷の他端も接地させて大きくない重量の荷の場合は人力を使用せずに迅速に荷卸しすることができる、荷運送作業車。
【請求項6】
前記所要角度θ
mの値として、6.0°≧θ
m≧2.0°の範囲の値として、前記-θ
1が-θ
1=-θ
0+θ
mで計算される角度とした、請求項5記載の荷運送作業車。
【請求項7】
前記引降力を機械力で加える機械として、荷方向に進退する電動シリンダーのシリンダーロッドの先端にスプリングを取付け、スプリング先端を荷加圧部とした構造のプレッシャー装置を採用した、請求項5又は6記載の荷運送作業車。
【請求項8】
荷に対して低い値から漸次高くなる前記引降力を加える機械として、荷の方向に進退する押付パットの終端をばね定数が大きいスプリングを介して油圧シリンダーのシリンダーロッドで加圧するプッシャー装置を用いた、請求項5又は6記載の荷運送作業車。
【請求項9】
前記傾動ストッパー機構として、荷台の下方に伸縮自在なジャッキの先端を荷台ストッパーとするジャッキ装置を設け、ジャッキの先端をジャッキ装置の回転操作によって上下動可能として、その先端高さで荷台の傾角を制動し、前記荷台ストッパーを最下位にすることで制動無効とするものとした、請求項5又は6記載の荷運送作業車。
【請求項10】
前記荷台傾角制動回路はコンピュータを用いた回路であって、重量物を収容した荷カゴ又は荷袋の荷の種類毎にその安定静止角-θ
1を入力して記憶でき、又この安定静止角-θ
1で荷台をこれ以上マイナス側に傾動させることを制動する制動有効と、この制動を無効にするかの選択の設定を入力できるか又はその結果の選択情報を記憶でき、更に荷台にはその荷台の水平からの傾角のプラスマイナスの角度を計測して前記荷台傾角制動回路に出力する傾斜角センサーを設け、
同傾斜角センサーからの傾斜角-θが記憶された荷に対する前記安定静止角-θ
1と比較して計測傾斜角-θがその荷台の荷毎に記憶した安定静止角-θ
1と同じ又はこの-θ
1から少し水平に近い角度値になって且つ前記制動の有効/無効の選択が有効の入力であれば、駆動手段に荷台のこれ以上のマイナス方向の傾動を停止し、この傾斜角-θ
1で荷台を停止させて、荷台上の荷卸し操作を可能にするように作動させ、制動無効の設定であれば荷台を更にマイナス方向に傾け続けるようにするものである、請求項5~8いずれか記載の荷運送作業車。
【請求項11】
前記荷台傾角制動回路は、前記制動有効/制動無効の選択の設定が荷の種類と荷の最大重量から制動有効/制動無効かの設定を決定して記憶するようにした、請求項5~10いずれか記載の荷運送作業車。
【請求項12】
前記荷台が前記車体の後部に配置され、前記荷台上の荷が農作物又は物品を多数収容した上方を開口した荷カゴ又は荷袋であって、荷台に載置された荷カゴ又は荷袋の上方の開口に向けて農作物又は物品を投入する投入装置を車体に備えた、請求項5~11いずれか記載の荷運送作業車。
【請求項13】
前記投入装置は前記車体の前部に設けられ、畑に植えられた農作植物から農作物を集穫する集穫機又は畑上に収穫されて仮置かれた農作物を畑上から回収する回収機であり、更に前記集穫機又は回収機で集穫又は回収された農作物を受け取って前記荷台上の前記荷カゴ又は荷袋の上方の開口から投入できる水平コンベヤを備え、しかも同水平コンベヤは前記開口から離れた外側位置の枢軸まわりに手動操作で起伏自在又は反転自在にでき、農作物を投入する場合は水平コンベヤを水平状態に保持して農作物投入コンベヤとして使用し、空の荷カゴ又は空の荷袋を荷台に載置する場合及び農作物を収容して重量物となった荷カゴ又は荷袋を荷台から外側に荷卸しする場合は水平コンベヤを起立又は反転させて荷カゴ又は荷袋を荷台への載置可能とし及び荷台からの荷卸しを可能にする農作業用の、請求項12記載の荷運送作業車。
【請求項14】
荷として荷台に上方を開口した荷袋を載置する場合、荷袋の上方開口縁に設けた左右一対の吊りベルトを車体の上方に掛止する掛止部材を設け、前記吊りベルト長さを調整して同掛止部材に掛止して荷袋の荷崩れを生起しないように走行でき又は荷卸しできることを可能にした、請求項5~13いずれか記載の荷運送作業車。
【請求項15】
前記荷台は前後方向の延びた棒材を左右方向に所定間隔で離して複数本設けた構造であり、又前記荷の底面は左右方向に延びた角筒材を前後方向に複数本配置させた構造体で、前記荷台の複数の前後に延びた前記棒材上に前記荷の左右方向に延びた複数の角筒材がクロスするように載置して、前記荷の角筒材が荷台の棒材上に接衝して前後方向に滑れる構造として大きい重量に耐えて高い摩擦係数を有する構造とした、請求項5~14いずれか記載の荷運送作業車。
【請求項16】
前記荷台の底面より広い厚手の荷受クッションを前記車体に備え、前記荷台上の荷を卸す位置に荷受クッションを敷くことで、前記荷を上面が硬質である路面・格納棚面又は床面にも衝撃を少なく卸すことができるようにした、請求項5~15いずれか記載の荷運送作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業で重量ある収穫・回収した農作物・農作業資材を運搬して、その荷を荷卸しする技術又は農業に関係しない荷役用・物流用の100kg~300kg程の重量物の荷を大きな人力作業を必要なく、安全且つ確実に荷卸しする荷運送作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、70kg~100kg~300kg程の大きな重量となる荷を荷台に載置して運送し、その荷台上の重量物の荷を地面・床面・畑上等に卸す機構としては、荷を車体に設けたリフト装置又はクレーン装置で荷台から持ち上げ、更に水平に荷を移動した後所定の場所で荷を降して、荷を卸す機構・方法が一般的である。そのために、荷運送作業車にはそのための油圧シリンダーを使用して上下・前後に荷を移動させるリフト装置又はクレーン装置を設置せねばならない。しかし、荷運送専用の作業車であれば、上記装置を設けることはなされている。
【0003】
しかし、農作業車の如く農作業の為に他の装置が装置されている場合、そのようなリフト装置・クレーン装置を設けることが困難であったり、荷運送作業車が大型化し、実用的でないものとなっていた。
同様に、荷役作業車・物流装置の小型の荷運送作業車でも大掛りのリフト装置・クレーン装置を装置することが困難であったり、装置しても複雑な操作を伴って荷卸し作業が手間・時間のかかるものであった。
【0004】
又、荷台と荷を直下に降す構造の場合、荷台の下方空間を使用するため、荷台の下方の空間に作業車の他の装置・構造部材を配置できないという欠点がある。
又、特許文献1に他の従来装置例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来の上記の問題点を解消し、荷運送作業車の荷台に置かれた70kg~350kgの重量の荷を簡単な構造で且つ小さな人力で安全且つ確実に荷卸せることができる荷卸し方法と、簡単な構造と操作でこの荷卸しが行えるようにした荷運送作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 自走できて車体の一部に重量ある荷を摺動可能に載置する荷台を設けた荷運送作業車であり、しかも前記荷台は前記車体の後部又は前部に配置するとともに、前記荷台の車体中央側の台端に設けた前後方向と直交する左右方向の水平な枢軸を介して前記車体に取付けて前記荷台を同枢軸まわりに前後に傾動可能とし、前記荷台を同枢軸まわりに回動させて前記荷台を水平から所定のプラスマイナスの角度範囲+θ4~-θ3(θ4,θ3>0)で前後に傾動でき且つ所定角度を保持できる油圧・空気圧又は電力を動力源とする荷台傾動の駆動手段を設け、更に前記荷台上に載置された荷が前記荷台を超えて車体中央側に移動することを防止するストッパー部材を荷台又は車体に設けた構成とした荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法であって、
車体静止時において、実測によって荷台上に載置された重量ある荷が荷台との静止摩擦力に抗して滑り始める荷台の水平からのマイナスの荷台傾斜角-θ0(θ0>0)を計測し、その荷台傾斜角-θ0から所要角度θm(θm>0)だけ水平に近いマイナスの傾斜角-θ1(θ1=θ0-θm>0)を荷が荷台上に確実に静止できる安定静止角-θ1として設定し、
前記荷台上の重量ある荷を荷卸しする地面・畑・路面・床面あるいは棚面の移載場所まで前記荷運送作業車を移動して荷運送作業車を停車させ、その後下記イ,ロ,ハ,ニの行程により重量ある荷をその重量の1/10以下程の機械力又は人力による荷台面に沿っての引降力で安全且つ荷衝撃も少なく荷卸しができることを特徴とする、荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法
イ:前記荷台の駆動手段を作動させ、荷台の水平からのマイナスの傾斜角-θを前記の安定静止角-θ1と同じ角度又はそれより少し水平に近い角度-θ6まで傾けてこの角度を保持し、
ロ:その後、その保持した前記傾斜角-θで傾けた前記荷台上で静止している荷に対し、荷台に沿って前記引降力を弱い力から力を漸次強くするように増加させながら加えていき、
ハ:前記の引降力と荷の自重の滑り方向の分力との合計力が荷台の静止摩擦力より少し大きくなればゆっくりと荷は滑り始め、この滑り始めた時の引降力を維持すると荷はゆっくり荷台の上面に沿って滑って荷の滑り先側の荷の下端は地面・畑・路面等に接地し、
ニ:その後、荷運送作業車の荷台が前記滑り先側の荷の下端の接地位置から遠ざかる方向に移動させることで荷台上に残った荷の他の下端は荷台上面を滑りながら荷は前記接地した下端まわりに回転して、荷台が大きく移動すると荷の他の下端は荷台から離れ、他の下端も接地して荷は地面等上に荷卸すこととなる
2) 前記所要角度θmの値として、6.0°≧θm≧2.0°の範囲の値として、前記-θ1が-θ1=-θ0+θmで計算される角度とした、前記1)記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法
3) 荷を接地する地面・路面・床面又は棚面が硬質の場合において、荷を卸す位置に荷台底面より広い肉厚のクッション材を敷いてから前記イ,ロ,ハ,ニの行程を行うことで、荷の接地における衝撃を少なくできる、前記1)又は2)記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法
4) 前記荷運送作業車が、農作物の集穫作業又は回収作業の装置を設けた荷運送作業車又は農作物・その他物品を搬送する荷運送作業車である、前記1)~3)いずれか記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法
5) 前記1)~4)記載の荷運送作業車における重量ある荷の荷卸し方法のための荷運送作業車であって、
自走できて車体の一部に重量ある荷を摺動可能に載置する荷台を設けた荷運送作業車であり、しかも前記荷台は前記車体の後部又は前部に配置するとともに、前記荷台の車体中央側の台端に設けた前後方向と直交する左右方向の水平な枢軸を介して前記車体に取付けて前記荷台を同枢軸まわりに前後に傾動可能とし、前記荷台を同枢軸まわりに回動させて前記荷台を水平から所定のプラスマイナスの角度範囲+θ4~-θ3(θ4,θ3>0)で前後に傾動でき且つ所定角度を保持できる油圧・空気圧又は電力を動力源とする荷台傾動の駆動手段を設け、更に前記荷台上に載置された荷が前記荷台を超えて車体中央側に移動することを防止するストッパー部材を荷台又は車体に設けた構成とし、
しかも車体静止時において、荷台上に載置された重量ある荷が荷台との静止摩擦力に抗して滑り始める荷台の水平からのマイナスの荷台傾斜角を-θ0(θ0>0)とした場合に、その荷台傾斜角-θ0から所要角度θm(θm>0)だけ水平に近いマイナスの傾斜角-θ1(θ1=θ0-θm>0)を荷が荷台上に確実に静止できる安定静止角-θ1として設定し、
更に、荷台の水平からのマイナスの傾斜角-θ(θ>0)が前記安定静止角-θ1よりマイナス方向に大きくならないように制動できる前記荷台の傾動ストッパー機構又は前記駆動手段の動力源を制御して荷台のマイナスの傾斜角-θがθ≧θ1とならないように制動する荷台傾角制動回路を備え、前記傾動ストッパー機構又は荷台傾角制動回路は手操作で制動有効/制動無効の設定を切換操作可能な構成とし、
前記傾動ストッパー機構又は荷台傾角制動回路を手操作で作動有効に設定すると、荷台傾斜角-θを前記安定静止角-θ1と同じか又はこれより水平側の傾斜角とし、機械力又は人力によって前記引降力を低い値から漸次高くなるように加えることによって静止摩擦力と拮抗する状態として荷を荷台に沿ってゆっくりと滑らせ、荷の滑り先側の下端を路面又は畑上面又は床面に衝撃少なく接地させ、その後車体を移動させることで荷の他の下端を荷台上面を滑らせて荷台を先に接地した下端まわりに回転させて荷の他の下端も接地させて、重量ある荷の荷卸しを小さい引降力で安全且つ確実に可能とし、次に荷の重量が大きくない場合は前記傾動ストッパー機構又は荷台傾角制動回路を手操作で制動無効に設定して、駆動手段で荷台を水平から-θ0のマイナス角度より更にマイナスの角度になるようにマイナス傾斜角-θ3の方向に漸次マイナス方向に大きく傾動することで、荷を荷台上で滑らせて荷の一端を接地させ、その後車体をその接地点より遠ざかるように移動させることで荷の他端も接地させて大きくない重量の荷の場合は人力を使用せずに迅速に荷卸しすることができる、荷運送作業車
6) 前記所要角度θmの値として、6.0°≧θm≧2.0°の範囲の値として、前記-θ1が-θ1=-θ0+θmで計算される角度とした、前記5)記載の荷運送作業車
7) 前記引降力を機械力で加える機械として、荷方向に進退する電動シリンダーのシリンダーロッドの先端にスプリングを取付け、スプリング先端を荷加圧部とした構造のプレッシャー装置を採用した、前記5)又は6)記載の荷運送作業車
8) 荷に対して低い値から漸次高くなる前記引降力を加える機械として、荷の方向に進退する押付パットの終端をばね定数が大きいスプリングを介して油圧シリンダーのシリンダーロッドで加圧するプッシャー装置を用いた、前記5)又は6)記載の荷運送作業車
9) 前記傾動ストッパー機構として、荷台の下方に伸縮自在なジャッキの先端を荷台ストッパーとするジャッキ装置を設け、ジャッキの先端をジャッキ装置の回転操作によって上下動可能として、その先端高さで荷台の傾角を制動し、前記荷台ストッパーを最下位にすることで制動無効とするものとした、前記5)又は6)記載の荷運送作業車
10) 前記荷台傾角制動回路はコンピュータを用いた回路であって、重量物を収容した荷カゴ又は荷袋の荷の種類毎にその安定静止角-θ1を入力して記憶でき、又この安定静止角-θ1で荷台をこれ以上マイナス側に傾動させることを制動する制動有効と、この制動を無効にするかの選択の設定を入力できるか又はその結果の選択情報を記憶でき、更に荷台にはその荷台の水平からの傾角のプラスマイナスの角度を計測して前記荷台傾角制動回路に出力する傾斜角センサーを設け、
同傾斜角センサーからの傾斜角-θが記憶された荷に対する前記安定静止角-θ1と比較して計測傾斜角-θがその荷台の荷毎に記憶した安定静止角-θ1と同じ又はこの-θ1から少し水平に近い角度値になって且つ前記制動の有効/無効の選択が有効の入力であれば、駆動手段に荷台のこれ以上のマイナス方向の傾動を停止し、この傾斜角-θ1で荷台を停止させて、荷台上の荷卸し操作を可能にするように作動させ、制動無効の設定であれば荷台を更にマイナス方向に傾け続けるようにするものである、前記5)~8)いずれか記載の荷運送作業車
11) 前記荷台傾角制動回路は、前記制動有効/制動無効の選択の設定が荷の種類と荷の最大重量から制動有効/制動無効かの設定を決定して記憶するようにした、前記5)~10)いずれか記載の荷運送作業車
12) 前記荷台が前記車体の後部に配置され、前記荷台上の荷が農作物又は物品を多数収容した上方を開口した荷カゴ又は荷袋であって、荷台に載置された荷カゴ又は荷袋の上方の開口に向けて農作物又は物品を投入する投入装置を車体に備えた、前記5)~11)いずれか記載の荷運送作業車
13) 前記投入装置は前記車体の前部に設けられ、畑に植えられた農作植物から農作物を集穫する集穫機又は畑上に収穫されて仮置かれた農作物を畑上から回収する回収機であり、更に前記集穫機又は回収機で集穫又は回収された農作物を受け取って前記荷台上の前記荷カゴ又は荷袋の上方の開口から投入できる水平コンベヤを備え、しかも同水平コンベヤは前記開口から離れた外側位置の枢軸まわりに手動操作で起伏自在又は反転自在にでき、農作物を投入する場合は水平コンベヤを水平状態に保持して農作物投入コンベヤとして使用し、空の荷カゴ又は空の荷袋を荷台に載置する場合及び農作物を収容して重量物となった荷カゴ又は荷袋を荷台から外側に荷卸しする場合は水平コンベヤを起立又は反転させて荷カゴ又は荷袋を荷台への載置可能とし及び荷台からの荷卸しを可能にする農作業用の、前記12)記載の荷運送作業車
14) 荷として荷台に上方を開口した荷袋を載置する場合、荷袋の上方開口縁に設けた左右一対の吊りベルトを車体の上方に掛止する掛止部材を設け、前記吊りベルト長さを調整して同掛止部材に掛止して荷袋の荷崩れを生起しないように走行でき又は荷卸しできることを可能にした、前記5)~13)いずれか記載の荷運送作業車
15) 前記荷台は前後方向の延びた棒材を左右方向に所定間隔で離して複数本設けた構造であり、又前記荷の底面は左右方向に延びた角筒材を前後方向に複数本配置させた構造体で、前記荷台の複数の前後に延びた前記棒材上に前記荷の左右方向に延びた複数の角筒材がクロスするように載置して、前記荷の角筒材が荷台の棒材上に接衝して前後方向に滑れる構造として大きい重量に耐えて高い摩擦係数を有する構造とした、前記5)~14)いずれか記載の荷運送作業車
16) 前記荷台の底面より広い厚手の荷受クッションを前記車体に備え、前記荷台上の荷を卸す位置に荷受クッションを敷くことで、前記荷を上面が硬質である路面・格納棚面又は床面にも衝撃を少なく卸すことができるようにした、前記5)~15)いずれか記載の荷運送作業車
にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、荷台は駆動手段によって所要の傾角のプラス+θ4からマイナス-θ3までの間荷台は傾動可能となっている。
【0009】
70~300kg程の重量ある荷を荷台に載置して走行する場合は、荷台の自由端側の台端を外側に高くする傾斜状態(プラスの傾動角)で走行することで、走行時の慣性力又は車体の揺動により荷が荷台から滑り、又は倒れて荷が荷台から落下するのを荷台のプラスの傾動角及びストッパー部材が働いて、これを防いでいる。
【0010】
次に、荷運送作業車の荷台上の重量物の荷を降す場合は、所定の卸し位置の場所で停車する。そして、駆動手段を作動して、荷台をプラスの傾斜角+θから徐々に水平の方向へ、更に水平から設定したマイナスの安定静止角-θ1と同じ角度又はこれから少し水平に近い傾斜角にする。
荷台の傾動角を滑り角の-θ0よりθm(θm>0)だけ大きいマイナス-θ1以上とすれば、荷台の荷は滑り出さないので安定静止できる。この安定静止のマイナス-θ1の角度又はこれから水平に近い角度で駆動手段の荷台傾斜角を固定する。
【0011】
尚、この安定静止角以上に固定するには傾動ストッパー機構又は駆動手段の荷台傾角制動回路によって-θ1以上にマイナスの傾斜角にならないように確保する。これらの機構・回路によって駆動手段の誤動作でも滑り出し角度からプラスのθmだけ水平側にあることで安定静止を確保している。
【0012】
次に、この安定静止角-θ1より少しマイナス側となっても荷台上の荷は滑り角-θ0よりθmだけ大きい傾角であるので、荷台上を滑らないので安全である。よって、停車している時に軽い荷との接触又は車体の動揺で荷が突然滑り始めることはない。
【0013】
この安定静止角にした後、作業者2名の者が荷を荷台に滑らせる方向に低い力から大きな力に増加させるように引降力を加えれば、又はプッシャー装置によって機械的に加えれば、荷の滑る方向の力は荷の重量Wにsinθを乗じた分力に上記引降力が加わった合計力が荷台の静止摩擦力W・μ・cosθより大きくなった時点で滑り出す。引降力は低い値又は0から増やしていくので合計力は初期的には静止摩擦力より低い値で滑らず、そのうち上記引降力の合計力が静止摩擦力より大きくなれば、荷は荷台上をゆっくりと滑り出す。この時の引降力を維持することで荷は荷台上をゆっくりと滑って、荷の下端が荷台下方の畑面・路面・床面等まで滑って接地する。この荷の滑りはゆっくりとなされるので安全であり、確実に滑り出しまで行える。人力に代えて加圧力が低い値から漸次高くなるプッシャー装置等の機械装置でも人力同様な操作は可能となる。
【0014】
又、荷台の傾角を-θ1(-θ0+θm)かそれより少し水平に近い角度で荷台傾角を停止させる装置としては、ジャッキ装置で上記傾角度で荷台の下降を強制停止させることでもできる。このジャッキ装置では、ジャッキ装置の伸縮の調整によってその停止させる-θ1の角度を設定できる。又は、荷台の駆動手段の制御回路で-θ1程で停止させることもできる。
【0015】
このように、荷台の傾角を滑り角度-θ0に近く、これより小さい角度θm(θm>0)だけ水平に近い角度(-θ1又はその少し水平側の角度)で荷台を停止させることで、引降力は荷重量300kgでも作業者2人分の15kgf前後の引降力で安定静止からゆっくりの滑りでもって荷を安全に卸すことができる。しかも、荷の滑り速度もゆっくりに制御できるので安全である。荷台の傾角を滑り角-θ0で停止させることは、車体の微小な傾き又は小さな引降力又は車体の動揺等で荷が突然滑り出す可能性があり、予想できず危険である。-θ0±1°でも安全性不確実であり、θmとして2°以上にすると初期的に安定性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は荷カゴを使用した実施例1の荷運送作業車の平面図である。
【
図2】
図2は荷カゴを使用した実施例1の荷運送作業車の側面図である。
【
図3】
図3(a),(b),(c)は実施例1の荷の荷卸し方法の行程図である。
【
図4】
図4(d),(e),(f)は実施例1の荷の荷卸し方法の行程図である。
【
図5】
図5は(g),(h),(i)は実施例1の荷の荷卸し方法の行程図である。
【
図6】
図6は実施例1,2共通の駆動手段と油圧制御部と荷台傾角計測センサーと電気制御部を示す説明図である。
【
図7】
図7は実施例1,2共通の機械力で引降力を生起するプッシャー装置の構造説明図である。
【
図8】
図8は実施例1,2とは別のジャッキ装置を用いた荷台の傾動のストッパー機構の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は本発明の荷台の配置例を示す説明図である。
【
図10】
図10は荷袋を用いた実施例2の荷運送作業車の側面図である。
【
図11】
図11は実施例2の荷袋の吊りベルトの掛止部材との掛止状態を示す正面図である。
【
図12】
図12は実施例2の荷袋の吊りベルトの掛止部材との掛止状態を示す側面図である。
【
図15】
図15は実施例1,2で使用する荷台の斜視図である。
【
図17】
図17はマイコンのソフトの判断と作業手順を示すフロー図である。
【
図18】
図18は実施例1,2の水平コンベヤの構造を示す説明図である。
【
図19】
図19は荷に対して引降力を発生させるプッシャー装置の構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の重量ある荷の重さは60kg~350kg程の想定であり、作業者2人以上でも持ち上げることが困難な重さのものを想定している。
【0018】
本発明の用途は、実施例の農作業用のもの以外に一般の荷役作業車・土木作業車・物流運送車でも可能であるが、滑って接地する際にかなりの荷の衝撃を生じるので、畑上に荷卸しする以外の用途では肉厚のクッションを路面・床面等に敷いて行うのがよい。
【0019】
本発明の滑り出す角度-θ0からの水平への上げる角度θmとしては、2°~6°程が実用的である。低い角度2°以下のプラス角度では揺動等の外力で荷が滑る可能性がまだあり、又6°以上であると引降力が大きくなり、作業者4名以上必要となったり実用的でなく、θmは2°~4°が実用的に好ましい角度である。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を機体前部玉ねぎの回収装置を前方に設け、これに起伏自在な水平コンベヤと組み合せを中央部に設け、玉ねぎを300kg重量程収容した荷カゴを荷として載置する例及び荷カゴに代えて荷台上に荷袋を載置し、水平コンベヤの自由端から荷カゴ又は荷袋の上方開口に向けて玉ねぎを投下して300kg程となる荷カゴの荷又は200kg程となる荷袋の荷を作業者2名程で荷卸しする農作業用の実施例1,2で説明する。
【0021】
図1~8,15~17に示す実施例1は、鋼製の30kgの重さの荷カゴに玉ねぎ回収機Tと水平コンベヤHCから回収されてくる玉ねぎを荷カゴ10に多数個収容した荷300kg程の例である。
図1~8,10~17に示す実施例2は、荷カゴ10に代えて強靱なワイヤ強化の樹脂製の荷袋11に多数個の玉ねぎNOを収容して、200kg程となる荷袋を載置し、これを荷卸す例である。
【0022】
(実施例の用語と符号の説明)
実施例1,2に関する明細書・図面における用語とその符号について説明する。共通の構成については同じ用語と符号を使用している。
G1,G2は本発明の実施例1,実施例2の荷運送作業車、Bは実施例1,2の荷運送作業車の車体、Cは実施例1,2の荷運送作業車のクローラ、NDは実施例1,2共通の鋼製の荷台、ND1は荷台の枢軸、ND2は荷台NDの荷台フレーム、ND21は荷台NDを構成する前後丸部材、ND22は荷台NDを構成する左右部材、Pは荷台NDを+θ4~-θ3のプラスマイナス傾動させる駆動手段である油圧シリンダー、P1はシリンダーロッド、P2はシリンダーロッドのロッド先端と荷台NDとの連結部、P3は油圧制御部であるスプール、P4は同スプールの方向を制御するソレノイドa,b、P5は油圧シリンダーPの伸縮停止を制御する電気制御部、P51はコンピュータを用いたマイコンのcpu、P52はデータ及びソフトを記憶するメモリ部、P53はマイコンの入力装置、P54はディスプレイ装置、P55は周辺機器とマイコンとの入出力の為のインターフェース、P6は油圧シリンダーPの伸縮停止を操作する操作入力ボタンである。Dは運転席、Tは投入装置である玉ねぎ回収機、HCは水平コンベヤ、HC1は同水平コンベヤのコンベヤベルト、HC2は水平コンベヤの起伏自在とする枢軸、HC3は水平コンベヤHCのフレーム、HC4は同フレームに取付けた操作ハンドル、HC5は水平コンベヤHCの駆動モータ、NOは回収される玉ねぎ、KSは荷台NDの傾角計測センサー、Sは荷台の傾角を-θ1よりマイナスの方向に傾くことを防ぐストッパー機構のジャッキ装置、1は荷、10は30kgの鋼製荷カゴ、101は荷カゴ10の底部、102は同底部の横部材、11は荷袋、111は荷袋の上方開口部に設けた吊りベルトである。
【0023】
本実施例1,2ともに、荷台NDの上に荷カゴ10又は荷袋11をその開口を上にして置き、畑上に乾燥の為に仮置した玉ねぎを荷運送作業車G1,G2の前部に装置された玉ねぎ回収機Tで持ち上げ、その上部で排出して水平状態にした水平コンベヤHCで更に水平に送り、荷台ND上の荷1である荷カゴ10又は荷袋11へその上方開口から投入して、荷カゴ10又は荷袋11内に多数個の玉ねぎを収容していく。
【0024】
荷カゴ10に玉ねぎを多数個収容して荷1として300kg程になると、畑の上に荷カゴ10を置くように荷1を荷卸しする。荷袋11を使用する場合は荷袋11の上方の吊りベルト111を車体に立設した掛止部材Fに掛けて、荷袋の荷崩れと不安定にならないように保持している。荷袋11を使用する場合は、荷1(荷袋11と玉ねぎ)の重さが200kg程で荷卸しする。
【0025】
荷カゴ10に入れた300kg程の荷1を荷卸しする場合、300kgの荷カゴ10の荷1での実測の滑り出し角は-22.5°であった。-θ°=-22.5°とし、これにθm=2.5°として安定静止角-θ1=-20°をマイコンを使った電気制御部P5に入力して記憶する。又、同電気制御部P5には荷台傾角計測センサーKSから荷台NDの傾角が入力される。
【0026】
実施例1では、荷運送作業車G1が荷卸しで停車すると、電気制御回路P4で駆動手段の油圧シリンダーPを制御して、荷台NDのプラスの傾角から水平及びマイナス-θ1になるようにマイナス方向に荷台を動かす。
【0027】
実施例1では、コンピュータを使用したマイコン内部ソフトによって荷台NDの傾角計測センサーKSからの荷台の傾角θが安定静止角-θ
1と比較され、入力の傾角が-θ
1より大きければ傾角をマイナス方向に傾動を続け、もし-θ
1と同じとなってしかも「制動有効」の設定が入力されて記憶されていれば油圧シリンダーの作動を停止して停止角度を維持できるようにする(
図6,17参照)。「制動無効」の場合は、更にマイナス方向に傾動し、荷を荷台からその傾斜で滑らせるようにする。後は、制動有効と同じ操作とする。
【0028】
荷台NDの傾角が-θ1となって維持された後、2名作業者又はプッシャー装置等の機械力で荷を荷台に沿って下方に滑る方向に押付力(引降力)を低い力から漸次大きくして15kgf前後の引降力を加えれば、荷1はその静止摩擦力に抗して滑り始める。この時の引降力を維持すると荷1はゆっくり滑って、荷1の後側下端は畑に接地して停止する。
【0029】
その後、荷運送作業車G1,G2を前方に少しずつ移動させると、荷1(荷カゴ10,荷袋11)の前方の荷下端は荷台ND上を滑っていって、その前方の荷下端が荷台より離れると接地している後方の荷下端まわりに回転し、前側荷下端を畑上に接地され、荷卸しが完了する。
【0030】
このように、荷カゴ10を使用した荷300kg程の荷が作業者2名の15kgf前後の引降力で荷卸しができる。
しかも、荷1はゆっくり滑るので安全で確実に荷卸しが可能となる。
【0031】
ここで、「制動無効」の設定があれば-θ1の角度になっても荷台NDを更にマイナスの方向に傾動させる。-θ0よりマイナスの方向に傾動されると滑り方向の分力が増大し、静止摩擦力がより大きくなると荷は荷台上を滑り始め、前記の通り荷は荷台上を滑って荷の後側下の一端が接地する。その後、車体を前進させれば荷の下の他端も接地して荷卸しとなる。この制動無効は荷の重さが軽量の場合又は荷が破損し難い場合に選択され、人力作業も必要もなく、迅速な荷卸しが可能となる。
【0032】
図19のプッシャー装置は実施例1の機械力による引降す例の他の装置例である。
図19は荷台を-θ
1の角度にして、機械力で荷に引降力を与えるプッシャー装置2の他の構造例である。荷1に対して押付パット20をそのパット軸22に巻付けたばね定数が小さいスプリング21によって荷に押し当てている。そして、そのパット軸22の軸端にばね定数が大きい強いスプリング23を介して油圧シリンダー24のシリンダーロッド25が加圧している。このプッシャー装置2では、押付パット20はスプリング21による荷の側面への軽い付勢力で常時当接させている。油圧シリンダー24のシリンダーロッド25が荷1の方向に移動するとその移動分だけスプリング23が圧縮され、パット軸22を介して押付パット20は荷1を押付ける。その押付力はスプリング23の圧縮した分だけ漸次大きくなるバネ力が荷1に対して押付力(引降力)として荷重する。このプッシャー装置2では荷の引降力として0~60kgfが容易に可能である。実施例では滑らせる下降力として15~16kgfを発生させる。作業者は油圧シリンダー24のシリンダーロッド25が荷方向に移動するように油圧シリンダー24の必要な側にソレノイドに作動電流を与えれば、機械力によって0~20kgf程の引降力を発生させて荷を滑らせるようにできる。引降力が漸次増大させるようにすれば、シリンダーロッドの伸張とともに滑り点に自動的になるので確実に滑らせることができる。
図19中、ガイド筒26はパット軸の軸端とスプリング23とシリンダーロッド25のロッド先端部を封入して、シリンダーロッド25のロッド先端部の位置と力をスプリング23とパット軸22に伝達するようにする。
【0033】
実施例1では荷台NDを傾動させる駆動手段(油圧シリンダー)Pを作動させ、安定静止角-θ1で荷台のマイナス方向の傾動を停止して維持させるだけで、この停止の角度で滑らせるには、残りはθmの角度差分の引降力としてプッシャー装置2の機械的によって又は2名の作業者として楽に引出せる引降力15kgf前後であり、安全・確実に可能にするようにした。畑上に荷卸した荷1は、別の専用の重量物運送車によってまとめて回収され、工場等に移送される。この安定静止角-θ1からゆっくりと下降力を高めることで滑らせるようにするので、安全で確実に荷を滑らせることができる。
【0034】
実施例2は、荷カゴ10を使用する代わりに荷袋11を使用するものであり、荷運送作業車G2の移動中は荷袋11の上方開口にある吊りベルト111を車体の掛止部材Fに掛けて荷袋11が滑りにくくして荷崩れを防止して玉ねぎを収容していく。この荷袋11の荷1が200kg収容可能にしているので、200kg程になるとその場所の畑上に荷卸しする。
【0035】
荷袋11の場合も荷カゴ10と同様に滑り出し角-θ
0を実測し、θ
mとして2.5°程をとって、安定静止角(-θ
0+θ
m)で荷台を停止して、吊りベルト111を掛止部材Fから外して引降力を加えて滑り始める角度にして、その引降力を保持して荷袋端を接地する。その後、荷運送作業車を前方に少し移動させることが荷袋11の荷1も同様に安全で、低い引降力をもって荷卸しできる。この実施例2も実施例1と同様の効果を有する。この場合も
図19のプッシャー装置を利用できる。
【0036】
本発明の駆動手段、同駆動手段として実施例の安定静止角に停止させる回路、ストッパー装置、荷台傾角引降力の発生装置例は一例であり、これに限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、農業用の荷運送作業車の他に広く荷役用・物流用の荷運送作業車の荷卸し方法及び荷運送作業車としても利用できる。
【符号の説明】
【0038】
G1,G2 実施例1,2の荷運送作業車
ND 荷台
ND1 枢軸
ND2 荷台フレーム
ND21 前後丸部材
ND22 左右部材
ND3 ストッパー部材
B 車体
C クローラ
P 駆動手段(油圧シリンダー)
P1 シリンダーロッド
P2 連結部
P3 スプール
P4 電気制御回路(ソレノイドa,b)
P5 電気制御部
P51 cpu
P52 メモリ部
P53 入力装置
P54 ディスプレイ装置
P55 インターフェース
P6 操作入力ボタン
PP 引降用プッシャー装置
PP1 プッシャー杆
PP2 スプリング
PP3 電動シリンダー
F 掛止部材
D 運転席
T 投入装置である玉ねぎ回収機
HC 水平コンベヤ
HC1 コンベヤベルト
HC2 回転枢軸
HC3 フレーム
HC4 起伏操作ハンドル
HC5 駆動モータ
NO 玉ねぎ
KS 荷台傾角計測センサー
S ストッパー機構(ジャッキ装置)
S1 ジャッキ昇降用回転ハンドル
1 荷
10 鋼製荷カゴ
101 底部
102 横部材
11 荷袋
111 吊りベルト
2 プッシャー装置
20 押付パット
21 スプリング
22 パット軸
23 スプリング
24 油圧シリンダー
25 シリンダーロッド
26 ガイド筒