(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】タンク
(51)【国際特許分類】
B65D 90/22 20060101AFI20240717BHJP
E04H 7/18 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65D90/22 A
E04H7/18 301Z
(21)【出願番号】P 2019163813
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000147729
【氏名又は名称】株式会社石井鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰之
(72)【発明者】
【氏名】湯山 芳夫
(72)【発明者】
【氏名】堅田 茂昌
(72)【発明者】
【氏名】田山 昇
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05201435(US,A)
【文献】特開平09-041400(JP,A)
【文献】特開2003-185099(JP,A)
【文献】実開昭61-044290(JP,U)
【文献】特開昭59-015129(JP,A)
【文献】特開2012-092895(JP,A)
【文献】特開2012-046183(JP,A)
【文献】特開2013-043688(JP,A)
【文献】特開2019-018897(JP,A)
【文献】特開2010-189897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/22
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵液に直接に接する金属製の内槽と、該内槽の外側に設けたコンクリート製の側壁と、前記内槽と前記側壁を支持する底版と、該底版の内部又は上面に配設され、前記内槽と前記側壁との隙間の下部と通気可能に配置されている開口部を有する第1通風管と、該第1通風管に通気可能に接続して除湿と送風を行う除湿送風装置と、前記側壁外または前記側壁内あるいはその両方にあって前記隙間の上部と前記除湿送風装置とを接続する第2通風管と、前記除湿送風装置に戻ってきた空気の湿度を測る湿度計とを具備し、該湿度計で計測した湿度が設定値を上回る場合は前記除湿送風装置で湿度が一定値以下となるように調整し、乾燥空気を前記除湿
送風装置から前記第1通風管と前記第2通風管を通って循環させることにより前記隙間の除湿を行うタンク。
【請求項2】
送られた前記乾燥空気が前記隙間の上部から下部へと流れる、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
送られた前記乾燥空気が前記隙間の下部から上部へと流れる、請求項1に記載のタンク。
【請求項4】
前記隙間の上部に直接に連通した前記第2通風管の開口部は、斜め下方向に向いており、前記隙間に前記
乾燥空気を噴出する、請求項2に記載のタンク。
【請求項5】
前記隙間の下部に直接に連通した前記第1通風管の開口部は、斜め上方向に向いており、前記隙間に前記
乾燥空気を噴出する、請求項3に記載のタンク。
【請求項6】
前記底版と前記内槽の底板との間に通気性部材層を有しており、前記第1通風管は、前記除湿送風装置から前記底版の中央部まで延びて、その端部にある前記開口部が前記通気性部材層に向けて通気可能になっている第1管と、前記底版の外周部から前記内槽の中心方向に向けて配置し、その端部にある前記開口部が前記隙間へと通気可能に接続する複数の第2管とからなる、請求項1ないし3のいずれかに記載のタンク。
【請求項7】
前記第1通風管は、前記除湿送風装置から延びる管と、前記隙間の下部にあって、該管と通気可能に接続する前記隙間の下部形状に合う形状で前記内槽の側板の外周面に沿って配設し、先端部が閉止されている弧状管とを備え、複数の噴出孔が該弧状管に設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載のタンク。
【請求項8】
前記隙間に前記内槽の外側と前記側壁の内側に当接する通気性の緩衝材層がある、請求項1ないし7のいずれかに記載のタンク。
【請求項9】
前記隙間の下部に連通し、開閉弁を備え、前記貯蔵液の漏洩検知管を兼ねる排水管を更に有する、請求項1ないし8のいずれかに記載のタンク。
【請求項10】
前記第1通風管は、前記排水管を兼ねる、請求項9に記載のタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重油などの液体を貯蔵するコンクリート壁を備えたタンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の内槽と該内槽を囲繞するコンクリート製側壁と、内槽と側壁を支持するコンクリート製底版とで構成されるタンクにおいては、コンクリート製側壁と金属製内槽側板との隙間やコンクリート底版と金属製内槽底板との隙間に水や高湿度の空気が滞留した場合、金属製内槽の側板外面や底板裏面が腐食する原因となる。
【0003】
すなわち、底版の上に金属製内槽を設置した後に、コンクリート製側壁を構築するタンクの場合には、打設したコンクリート側壁と金属製内槽の側板との狭い隙間やコンクリート製底版と金属製内槽底板との隙間に、打設したコンクリートの水分や雨天時の雨水が残留するが、その水を十分に排水することが難しい。そのため、隙間に残留した水が直接に金属製内槽の外面に接している場合だけでなく、高湿度になった隙間の空気が接する金属製内槽の外面では結露が繰り返される恐れもあり、金属製内槽外面の腐食が心配されるという問題があった。
【0004】
ところで、鋼製タンク底板裏面や鋼製煙突の内筒等の腐食を防止する方法として、乾燥空気を流通し、タンク底板裏面や鋼製煙突の内筒内面側の乾燥状態を維持して湿気を除去し、腐食を防止する従来技術が開示されている。
【0005】
従来技術として、特許文献1の「タンク基礎の除湿方法及び装置」の発明がある。この発明には、タンク底板外周縁下に設けた複数の空気取入口を利用して、乾燥空気を押し込み、底板裏面と防食層間を除湿するタンク基礎の除湿方法及び装置が開示されている。
【0006】
特許文献2の「鋼製タンク底板下面の防食方法」の発明がある。この発明には、タンク底板の外周部と保護材周辺に打設された周辺コンクリートとを第二の防水シール材で一体的に覆い、タンク底板の適当箇所に穴を穿設し、穴より乾燥空気を注入して保護材を乾燥させ、その後穴を密閉する鋼製タンク底板下面の防食方法が開示されている。
【0007】
特許文献3の「鋼製煙突」の発明がある。この発明には、外面に保温材を巻装し内面が煙道を構成する内筒の内側に隙間を設けて内板を張設し、内筒の下方に、隙間に乾燥空気を流入させる配管および送風機を配置する鋼製煙突が開示されている。
【0008】
特許文献4の「ポストテンションPC鋼材の防食方法」の発明がある。この発明には、コンクリート中に埋め込まれたシース管内にPC鋼材を配設してプレストレッシングするポストテンション方式のプレストレストコンクリート部材において、シース管とPC鋼材の周囲に間隙を設け、この間隙内に乾燥空気あるいは窒素ガスなどの防食性気体を充満するポストテンションPC鋼材の防食方法が開示されている。
【0009】
特許文献5の「現場組立式タンク底基礎部」の発明がある。この発明には、砂、土壌又はコンクリートなどの支承材に直接接するタンク底板を支える基礎中に地盤と平行して、又該基礎の周囲を最低側板にかけて、何れも非透気性の障壁を設け、該障壁とタンク底板との間の基礎に脱湿空気を充満するようにした現場組立式タンク底基礎部が開示されている。
【0010】
特許文献6の「二重殻タンクの製造方法及び二重殻タンク」の発明がある。この発明には、内槽への試験用液体の貯留開始以降の期間で、内槽と外槽との隙間に予め存在する空気よりも乾燥した乾燥空気を供給する工程と、乾燥空気が供給された隙間にブランケットを設置する工程とを有する二重殻タンクの製造方法及び二重殻タンクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-41400号公報
【文献】特公昭61-52075号公報
【文献】特開平9-250733号公報
【文献】特開2003-56121号公報
【文献】特開昭56-139310号公報
【文献】特開2012-92895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
金属製内槽と該内槽を囲繞するコンクリート製側壁と、内槽と側壁を支持するコンクリート製底版とで構成されるタンクにおいて、金属製内槽の設置時やコンクリート製側壁の構築時に、コンクリート製底版と金属製内槽の底板との隙間やコンクリート製側壁と金属製内槽側板との隙間には、雨水が浸入するだけでなく、打設したコンクリートの水分も残留することがあるが、タンク底部への排水管の設置だけでは、完全に排水することはできない。また、供用時には残留水分により隙間の空気の湿気は保持されるため、金属製内槽の外面で結露を繰り返す恐れがあり、金属製内槽の腐食防止の観点から問題となる。
【0013】
特許文献1から特許文献6に記載されている従来技術は、乾燥空気を流通させて湿気を除去し、構築物の腐食や保冷材の吸湿等を防止する技術であり、コンクリート製の側壁と鋼製の側板との隙間に乾燥空気等の気体を流通させ、側板の腐食を防止するタンクに関するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、貯蔵液に直接に接する金属製の内槽と、該内槽の外側に設けたコンクリート製の側壁と、前記内槽と前記側壁を支持する底版と、該底版の内部又は上面に配設され、前記内槽と前記側壁との隙間の下部と通気可能に配置されている開口部を有する第1通風管と、該第1通風管に通気可能に接続して除湿と送風を行う除湿送風装置とを具備し、前記除湿送風装置から送られた気体により前記隙間の除湿を行うタンクを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記側壁外または前記側壁内あるいはその両方にあって前記隙間の上部と前記除湿送風装置とを接続する第2通風管を更に有する、前記のタンクを提供する。
【0016】
本発明はさらに、送られた前記気体が前記隙間の上部から下部へと流れる、前記のタンクを提供する。
【0017】
本発明はさらに、送られた前記気体が前記隙間の下部から上部へと流れる、前記のタンクを提供する。
【0018】
本発明はさらに、前記隙間の上部に直接に連通した前記第2通風管の開口部は、斜め下方向に向いており、前記隙間に前記気体を噴出する、前記のタンクを提供する。
【0019】
本発明はさらに、前記隙間の下部に直接に連通した前記第1通風管の開口部は、斜め上方向に向いており、前記隙間に前記気体を噴出する、前記のタンクを提供する。
【0020】
本発明はさらに、前記底版と前記内槽の底板との間に通気性部材層を有しており、前記第1通風管は、前記除湿送風装置から前記底版の中央部まで延びて、その端部にある前記開口部が前記通気性部材層に向けて通気可能になっている第1管と、前記底版の外周部から前記内槽の中心方向に向けて配置し、その端部にある前記開口部が前記隙間へと通気可能に接続する複数の第2管とからなる、前記のタンクを提供する。
【0021】
本発明は、更に、前記第1通風管が、前記除湿送風装置から延びる管と、前記隙間の下部にあって、該管と通気可能に接続する前記隙間の下部形状に合う形状で前記内槽の側板の外周面に沿って配設し、先端部が閉止されている弧状管とを備え、複数の噴出孔が該弧状管に設けられている、前記のタンクを提供する。
【0022】
本発明はさらに、前記隙間に前記内槽の外側と前記側壁の内側に当接する通気性の緩衝材層がある、前記のタンクを提供する。
【0023】
本発明はさらに、前記隙間の湿度を検知する湿度計を更に有する前記のタンクを提供する。
【0024】
本発明はさらに、前記隙間の下部に連通し、開閉弁を備え、前記貯蔵液の漏洩検知管を兼ねる排水管を更に有する、前記のタンクを提供する。
【0025】
本発明はさらに、前記第1通風管は、前記排水管を兼ねる、前記のタンクを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のタンクは、コンクリート製の側壁と鋼製の側板の隙間に、乾燥空気等の除湿効果を有する気体を送気して鋼製の側板の腐食を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク1の第1態様の側面図と断面図である。
【
図2】本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク1の第2態様の側面図と断面図である。
【
図3】本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク1の第3態様の側面図と断面図である。
【
図4】
図1のA部の拡大図で、第1通風管14の一例を示す断面図である。
【
図5】
図2のB部の拡大図で、第1通風管14の別の一例を示す断面図である。
【
図6】
図3のC部の拡大図で、第1通風管14の別の一例を示す断面図である。
【
図7】
図1のD部の拡大図で、第2通風管10を示す断面図である。
【
図8】
図2のE部の拡大図で、第2通風管10の別の一例を示す断面図である。
【
図9】
図3のF部の拡大図で、側壁3上部の一例を示す断面図である。
【
図10】地上式二重殻平底円筒形タンク1の底部の断面の第1態様を示す断面図である。
【
図11】地上式二重殻平底円筒形タンク1の底部の断面の第2態様を示す断面図である。
【
図12】地上式二重殻平底円筒形タンク1の上部の断面の第1態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る地上式二重殻平底円筒形タンク(以下、タンクと称する)の実施形態例について
図1から
図12を参照しながら説明する。なお、本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の構成要素の省略または付加、構成要素の形状等の実施形態の変更を加えることが出来るのはもちろんである。また、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。
【0029】
図1、
図2、
図3は、本発明に係るタンク1の第1、第2、第3態様の側面図と断面図で、24は地盤、3は側壁、4は内槽、25は貯蔵液を示す。このタンク1は、金属製の内槽4と該内槽4を囲繞して配設されるコンクリート製の側壁3とを備えた構造を有する。
内槽4は、地盤24上に打設したコンクリート製の底版2上に設置され、金属製の底板5と、底板5上に立設した筒体状の金属製の側板6とからなる構造であり、内槽4の側板6頂部には、金属製の固定屋根26が設置されている。また、内槽4の側板6の高さ方向上部に、雨水浸入防止用の覆い部9を備え、雨水から側壁3が保護されている。
図1、
図2、
図3の実施例において、側壁3は、コンクリート製の底版2上に構築した内槽4の側板6を囲繞するコンクリート製の円筒状の構造体である。ここでは、底版2は鉄筋コンクリート(以下、RC)、側壁3はプレストレストコンクリート(以下、PC)で構築した事例を示す。
【0030】
図1、
図3のタンク1は、側板6外面と側壁3内面との間に隙間Gを設ける事例である。
【0031】
本発明は、コンクリート製の側壁3施工時に隙間Gに浸入して滞留した雨水や隙間Gの空気中に含まれる湿気を除去し、隙間Gの湿度を一定値以下にするために、隙間Gに乾燥空気等の気体を送り込むタンク1に関するものである。以下、隙間Gに送り込む気体として乾燥空気Dを使用する事例について説明する。図面において、乾燥空気Dの流れを矢印で示す。なお、気体は、乾燥空気に限らず、窒素ガス等、除湿効果を有する種々の気体を使用することが可能である。
【0032】
タンク1は、貯蔵液25に直接に接する金属製の内槽4と、内槽4の外側に設けたコンクリート製の側壁3と、内槽4と側壁3を支持する底版2と、底版2の内部又は上面に配設され、内槽4と側壁3との隙間Gの下部と通気可能に配置されている開口部15を有する第1通風管14と、第1通風管14に通気可能に接続して除湿と送風を行う除湿送風装置12とを具備し、除湿送風装置12から送られた乾燥空気Dにより隙間Gの除湿を行うタンク1である。
【0033】
除湿送風装置12等は、外部電源(図示しない)に接続され、連続駆動する。外部電源にソーラーパネル(太陽電池)を使用し、昼だけ間歇的に駆動させることも可能である。
【0034】
第1送風管14は、底版2の上面に設けた溝(図示しない)に嵌め込んで敷設することもできる。
【0035】
隙間Gに送気する乾燥空気Dは、除湿送風装置12で一定値以下の湿度に調整したものとする。隙間Gに滞留していた空気が隙間Gの下側から送気された冷たい乾燥空気Dによって上方に押し出され、隙間Gの下側から乾燥空気Dが充満し、側板6外表面下部に滞留した雨水や結露水を乾燥空気Dで除去することができる。送気する乾燥空気Dは、加温装置(図示しない)にて加温した後、側板6と側壁3の隙間Gに送気するようにしても良い。
【0036】
タンク1は、隙間Gの湿度を検知する湿度計13を更に有し、タンク外から隙間Gに流れる乾燥空気Dの湿度を管理する。また、津波漂流物衝突耐性を有するタンク1の場合は、津波発生時に第1通風管14等の配管を介して隙間G内や底板5の裏面に水が浸入しないように、第1通風管14に接続された除湿送風装置12、湿度計13等の装置をコンクリート製の津波防護壁27等で囲い、津波から防護する構造としても良い。
【0037】
なお、津波防護壁27を設ける代わりに、除湿送風装置12、湿度計13等の装置を想定される津波高さよりも上部に設置する対策を講じても良い。
【0038】
タンク1は、側壁3外または側壁3内あるいはその両方にあって隙間Gの上部と除湿送風装置12とを接続する第2通風管10を更に有する。
【0039】
第2通風管10は、側壁3に埋設するか、側壁3上面に配設する構造とする。第2通風管10の開口部11は、隙間Gの上部と通気可能に接続されている。
【0040】
図3のように、側壁3上部に雨水浸入のコーキング29がされていない場合は、第2通風管10をなくし、隙間Gの下部から上部に乾燥空気Dを一方向に送気した際に、側壁3上部から覆い部9下部の空間に排気することにより、覆い部9下部の腐食を防止することもできる。また、雨水浸入のコーキング29がされている場合は、第2通風管10を設けずに、コーキング29に貫通部29aを設けることで、大気中に排気する構造とすることができる。なお、コーキング29の貫通部29a及び覆い部9の両方に第2通風管10を配設する構造とすることも可能である。
【0041】
第1通風管14及び第2通風管10には、弁(図示しない)を設け、隙間Gへの送気量、排気量を調整し、隙間Gに充填する乾燥空気Dが不足、過剰にならないように調整する。除湿送風装置12稼働時に弁を開放し、隙間Gに多量に乾燥空気Dを送気し、隙間Gに充填された乾燥空気Dが一定量(一定圧)に達したら、弁を閉止するように調整する。
【0042】
また、第2通風管10の立上り管20を側壁3の外周部に立設することができ、側壁3外周部にアングル等のサポート18を介して設置することもできる。なお、この立上り管20は、側壁3に埋設しても良い。第2通風管10の管接続部10aと上部立上り管口20aを接続し、立上り管20の下部立上り管口20bと除湿送風装置12を接続する。なお、立上り管20は、計測器13を介して除湿送風装置12と接続しても良い。
【0043】
第2通風管14或いは立上り管20等の排気ラインに空気吸引機(図示しない)を設ける構造としても良い。除湿送風装置12と空気吸引機とを組み合わせることにより、除湿送風装置12のみを使用する場合と比較して、小さい送風量で隙間Gに乾燥空気Dを充満させることができる。
【0044】
図1は、送られた空気Dが隙間Gの下部から上部へと流れるタンク1の事例を示している。
【0045】
図1の除湿送風装置12から送風された乾燥空気Dが循環する流れについて説明する。乾燥空気Dは、第1送風管14を経て、タンク底板5裏面及び隙間Gに向かって流れる。底板5裏面に向かって流れた乾燥空気Dは、底板5裏面を万遍なく流れ、底板5外周縁部を経て、側壁3と側板6との隙間Gに向かって流れる。隙間G内を下部から上部に向かって流れた乾燥空気Dは、第2送風管10から排気される。第2通風管10から排気された空気Mは、立上り管20内を上部から下部に向かって流れる。湿度計13で循環されて戻ってきた空気Mの湿度を計測する。空気Mの湿度が設定値を上回っている場合は、除湿送風装置12で湿度が一定値以下となるように調整される。乾燥空気Dは、除湿送風装置12から第1送風管14を介して、再び底板5裏面及び側壁3と側板6との隙間Gを流れ、循環する。
【0046】
図2は、送られた空気Dが隙間Gの上部から下部へと流れるタンク1の事例を示している。除湿送風装置12の送風方向を
図1とは逆方向にし、乾燥空気Dを立上り管20内の下部から上部に向けて送風した後、側壁3上部の第2通風管10を経て、隙間Gの上部から下部に向かって乾燥空気Dを送気する。乾燥空気Dは、底版2の外周部から内槽4の中心方向に向けて複数配置した第1通風管14の開口部15から排気される。湿度計13で循環されて戻ってきた空気Mの湿度を計測する。空気Mの湿度が設定値を上回っている場合は、除湿送風装置12で湿度が一定値以下となるように調整する。乾燥空気Dは、除湿送風装置12から立上り管20を介して、再び側壁3と側板6との隙間Gを流れ、循環する。
【0047】
タンク1は、隙間Gの下部に連通し、開閉弁(図示しない)を備え、貯蔵液25の漏洩検知管を兼ねる排水管(図示しない)を有している。
【0048】
なお、第1通風管14を前記の漏洩検知管を兼ねる排水管として使用しても良い。この場合、底版2は外周部に向けて排水されるように、底版2の外方側に向けて低くなるように雨水勾配を設ける。
【0049】
第1通風管14を漏洩検知管や排水管として兼用することにより、別途漏洩検知管や排水管を設ける場合と比べて、施工費やメンテナンスの費用を削減することができる。また、上部から下部に乾燥空気Dを流す際に、タンク施工時又はタンク供用時にコンクリートと鋼板の隙間Gに浸入する雨水、結露水や漏洩した貯蔵物25を空気Mと一緒にタンク外に効率的に排出することができる。なお、切替スイッチを設けて第1通風管14と排水管、漏洩検知管を切り替えるように構成しても良い。
【0050】
図2のタンク1は、側板6外面と側壁3内面との間の隙間Gに通気性の緩衝材層8を設ける事例である。緩衝材層8は、難燃性を有し、内槽4の側板6外周面と側壁3内周面に当接して介装する。緩衝材層8は、難燃ウレタン、難燃ゴム等の材料で形成することができる。緩衝材層8の厚さは数ミリから数10ミリ程度である。緩衝材層8は、連続気泡タイプ等の通気性とし、空気Dを通す素材で形成する
【0051】
本実施態様によれば、タンク1は、側壁3の側面の上端部が内槽4の側板6の上端部より低い高さに位置している。緩衝材層8を設ける場合、緩衝材層8は、側板6外面と側壁3内面との隙間G内に必要な高さ分設けることとする。
【0052】
側壁3としてプレキャストコンクリートを使用する場合は、
図1、
図3のように、側壁3と側板6との隙間Gに緩衝材層8を設けない構造とすることができる。なお、側壁3のコンクリートを現地で打設する場合は、水張り試験による水圧やコンクリート打設圧等による変位を側壁3と側板6の隙間Gに設けた緩衝材層8で吸収し、コンクリート凝固後に緩衝材層8を取り除いて、側壁3と側板6との間に隙間Gを形成しても良い。
【0053】
図4は、
図1のA部の拡大図で、第1通風管14の一例を示す断面図である。タンク1は、底版2と内槽4の底板5との間に通気性部材層16、17を有している。第1通風管14は、除湿送風装置12から底版2の中央部まで延びて、その端部にある開口部15が通気性部材層16、17に向けて通気可能になっている第1管14aと、底版2の外周部から内槽4の中心方向に向けて配置し、その端部にある開口部15が隙間Gへと通気可能に接続する複数の第2管14bとから構成される。
【0054】
第1通風管14の第1管14aから供給された乾燥空気Dは、タンク底板5裏面中心部に向けて送気され、底板5裏面側に通気性部材層16、17を介して万遍なく拡散される。また、第1通風管14の第2管14bから供給された乾燥空気Dは、側壁3と側板6の隙間Gを下部から上部に向かって流れる。第1通風管14を第1管14a及び第2管14bで構成することにより、底板5裏面側と側板6表面側の両方に乾燥空気Dを供給し、湿気、水分を除去し、底板5及び側板6の腐食を防止することが可能である。なお、第1通風管14は、底版2の中央部まで延びる第1管14aのみで構成することが可能である。また、底版2の外周部から内槽4の中心方向に向けて配置する第2管14bのみで構成することも可能である。通気性部材層16、17は、砂基礎、透水性アスファルト、砕石等で形成する。
【0055】
図5は、
図2のB部の拡大図で、第1通風管14の別の一例を示す断面図である。第1通風管14は、底版2外周部から内槽4の中心方向に向けて複数配置され、各々の第1通風管14の開口部15が隙間Gの下部へと通気可能に接続されている。
【0056】
第2通風管10の開口部11から供給された乾燥空気Dは、側壁3と側板6の隙間Gを上部から下部に向かって流れ、側板6表面側の湿気、水分を乾燥空気Dで除去し、側板の腐食を防止することが可能である。また、第1通風管14の開口部15を底板5の外周縁下部よりも下方に位置させることにより、隙間Gの上部から下部に向かって乾燥空気Dを送風し、雨水と共にタンク外に排出する際に、排水効率を向上することができる。さらに、底板5の外周縁下方に排水溝23を設け、排水溝23近傍に開口部15を設けることにより、排水効率が更に向上する。この工法によれば、
図5のように、通気性部材層16、17を設けることなく、底版2上に底板5を直接敷設するタンクにも適用することが可能である。
【0057】
図6は、
図3のC部の拡大図で、側壁3上部の一例を示す断面図である。除湿送風装置12から第1通風管14を介して隙間Gの下部から上部に乾燥空気Dを一方向に送風する。第1通風管14の開口部15から乾燥空気Dが斜め上方向に送風されるように、開口部15の先端部を斜めに切断加工等する。
【0058】
図7は、
図1のD部の拡大図で、第2通風管10の一例を示す説明図である。第2通風管10は、側壁3の上面に敷設する。第2通風管10の開口部11は、側壁3の内周の上端と側板6の側面の外周の上端に対向する箇所に設けたシール部材29の貫通部29aに配置する。また、第2通風管10を側壁3を覆う覆い部9を貫通するように配置しても良い。なお、シール部材29がないタンク1の場合は、隙間Gの下部から上部に空気Dを一方向から送風した後、隙間Gの上部からそのまま大気に排気することができる。また、シール部材29がある場合でも、貫通部29aから大気中に排気する構造とすることができる。第2通風管10の管接続部10aは、側壁3上面に配管サポート28で接続した接続配管19を介して立上り管20の立上り管入口20aと接続しても良い。乾燥空気Dは、側壁3と側板6との隙間Gを下部から上部に向かって流れた後、側壁3上部の第2通風管10の管接続部10aを経て、立上り管20内を上部から下部に流れた後、タンク下部の除湿送風装置12で除湿される。
【0059】
図8は、
図2のE部の拡大図で、第2通風管10の別の一例を示す説明図である。第2通風管10は、側壁3上部に埋設した配管で形成し、開口部11が隙間Gの上部と通気可能に接続した構造とする。第2通風管10の管接続部10aは、側壁3の外周部に設置する立上り管20上部の上部立上り管口20aと連結する。乾燥空気Dは、立上り管20内を下部から上部に流れ、第2通風管10を経て、側壁3と側板6との隙間Gを上部から下部に向かって流れた後、タンク下部の第1通風管14からタンク外へ排気される。
【0060】
図9は、
図3のF部の拡大図で、側壁3上部の一例を示す説明図である。乾燥空気Dは、側壁3と側板6との隙間Gの下部から上部に一方向に送気され、覆い部9下部の空間を経て大気中に排気される。
【0061】
図10は、タンク1の底部の断面の第1態様を示す断面図である。第1通風管14の第1管14aは、底版2に埋設した状態で、タンク中心方向に向けて設ける。第1管14aの開口部15を底板5の裏面の中心部に対向するように埋設する。第1通風管14の第2管14bは、底版2の外周部から内槽4の中心方向に向けて複数配置し、その端部にある開口部15が隙間Gへと通気可能に接続するように底版2の表層部に設けた溝(図示しない)の上面に敷設する。なお、第1通風管14の第2管14bは、底版2に埋設しても良い。
【0062】
除湿送風装置12は、タンク規模や送風量に応じて、単数又は複数設けるようにする。例えば、小型のタンクであれば、単数の除湿送風装置12に複数の第1通風管14を接続し、送風するようにしても良い。なお、大型タンクで多くの送風量が必要な場合は、複数の除湿送風装置12を設置し、各々の除湿送風装置12に第1通風管14を接続しても良い。
【0063】
図11は、タンク1の底部の断面の第2態様を示す断面図で、乾燥空気Dを隙間Gの下部から上部に送風する事例を示す。第1通風管14は、除湿送風装置12から延びる管14cと、隙間Gの下部にあって、管14cと通気可能に接続する隙間Gの下部形状に合う形状で内槽4の側板6の外周面に沿って配設し、先端部が閉止されている弧状管21とを備え、複数の噴出孔22が弧状管21に設けられている。
【0064】
弧状管21は、側板5の外周面に沿って複数に分割した配管とし、複数の噴出孔22から側板6外面に万遍なく乾燥空気Dを送気する構造とする。弧状管21の噴出孔22の取付間隔は、隙間Gに万遍なく乾燥空気Dが送気されるように調整する。複数の噴出孔22の代わりにスリット(図示しない)から隙間Gの下部から上部に向かって乾燥空気Dを送風する構造としても良い。噴出孔22上部に斜材を設置し、空気Dが斜め上方に流れるようにしても良い。なお、第2通風管10に弧状管21を設け、空気Dを隙間Gの上部から下部に送風する構造とすることもできる。
【0065】
図12は、地上式平底円筒形タンク1の上部の断面の第1態様を示す断面図である。隙間Gの上部に直接に連通した第2通風管10の開口部11は、斜め下方向に向いており、隙間Gに乾燥空気Dを噴出し、送られた乾燥空気Dが隙間Gの上部から下部へと流れる。
【0066】
なお、送られた乾燥空気Dが隙間Gの下部から上部へと流れる場合は、第1通風管14の開口部15が斜め上方向に向いており、円筒形状の隙間Gの円周方向に沿って乾燥空気Dを噴出するように構成する。
【0067】
図12の構造を採用することにより、乾燥空気Dは、側板6の外周に沿って旋回し、側板6の外周面に万遍なく供給される。
【0068】
次に、タンク1の湿度、送風管理方法の事例について説明する。地上式円筒形タンク1は、隙間Gの湿度を検知する湿度計13を更に有する。湿度計13の湿度が一定値を超えている場合に、管理者に計器上の表示やブザー等の音声によって通報するシステムを備えても良い。
【0069】
また、湿度計13で計測した空気Mの湿度データが制御装置(図示しない)に送信されるように構成し、送信された湿度データに基づいて、除湿送風装置12の運転を制御するように構成しても良い。湿度計13で計測した湿度が一定値を上回っている場合のみ除湿送風装置12を駆動する間歇運転とすることにより、常時乾燥空気Dを送風する連続運転と比べて節電することができる。
【0070】
なお、これまで乾燥空気Dを隙間Gの上部から下部、或いは隙間Gの下部から上部の1方向に送風する事例を説明したが、乾燥空気Dを隙間Gの上部から下部及び下部から上部の2方向に送風するように構成しても良い。例えば、第2送風管10から隙間Gに向けて上部から下部に送風するとともに、第1送風管14の底版2の中心部まで延びる第1管14aから底板5裏面に向けて下部から上部に送風するようにする。 2箇所から送風された乾燥空気Dを底板5外周縁部で集め、第1送風管14の底版2外周部の第2管14bからタンク外へ排気するようにしても良い。
【0071】
なお、除湿送風装置12を除湿機と別体の送風機で構成しても良い。
【0072】
本発明のタンク1は、下記の効果を少なくとも1以上有している。側壁3と側板6との隙間Gに乾燥空気D等の除湿効果を有する気体を流通させ、側板6の腐食を防止することができる。気体を循環させることにより、一方向に送気して排気する場合と比較して、送風時に必要なエネルギー等を節約することができる。第1通風管14を雨水排水管や漏洩検知管として兼用することにより、排水効率が向上し、施工費やメンテナンス費用を削減することができる。側板6外周部の側壁3を解体することなく、タンク外から隙間Gの湿度を管理でき、早期の側板6の腐食発見に繋げることができる。タンク施工時及び供用時において側板6表面及び底板5裏面の腐食を防止することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 タンク
2 (コンクリート製の)底版
3 (コンクリート製の)側壁
4 (金属製の)内槽
5 底板
6 側板
7 トップアングル
8 緩衝材層
9 覆い部
10 第2通風管
10a 管接続部
11 開口部
12 除湿送風装置
13 湿度計
14 第1通風管
14a 第1管
14b 第2管
14c 管
15 開口部
16 通気性部材層
17 通気性部材層
18 サポート
19 接続配管
20 立上り管
20a 上部立上り管口
20b 下部立上り管口
21 弧状管
22 噴出孔
23 排水溝
24 地盤
25 貯蔵液
26 固定屋根
27 津波防護壁
28 配管サポート
29 シール部材
29a 貫通部
G 側壁3と側板6との隙間
D 乾燥空気
M (吸湿した)空気