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特許7521737目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/08 20060101AFI20240717BHJP
   E04G 21/00 20060101ALI20240717BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240717BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E04G21/08
E04G21/00
G06T7/00 300F
G01B11/00 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020067758
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021161846
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(73)【特許権者】
【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
(73)【特許権者】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩史
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-023402(JP,A)
【文献】特開2013-053492(JP,A)
【文献】特開2014-152591(JP,A)
【文献】特開2002-071313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/08
E04G 21/00
G06T 7/00
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリートに挿入される締固め用のバイブレータを吊持する吊持部材において締固めを実施した箇所を把握するために設けられた、光の三原色のうちの少なくとも一つの色を呈する目印を、画像処理により識別する目印識別処理システムであって、
締固め作業中の前記フレッシュコンクリートの上面またはその型枠よりも上方に設置され、前記フレッシュコンクリートの上面と前記目印を含む周辺または前記型枠と前記目印を含む周辺を撮像して、撮像した映像を出力する撮像手段と、
前記撮像手段により出力された前記映像から、光の三原色のうちの所定の色を抽出した画像を生成し、生成した前記画像中の前記所定の色の位置に基づいて、前記フレッシュコンクリートの上面または前記型枠の天端の高さに対する前記目印の位置を識別する画像処理手段とを備え
前記目印は、前記バイブレータの上端を基点とした前記吊持部材の延在長さを表すものとして、前記吊持部材の延在方向に沿って異なる色で交互に前記吊持部材の外周面に設けられており、
識別した前記目印の位置から前記バイブレータの上端までの前記吊持部材の延在長さを取得することを特徴とする目印識別処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の目印識別処理システムと、識別した前記目印の位置に基づいて、前記フレッシュコンクリートの上面または前記型枠に対する前記吊持部材の相対的な位置を継時的に取得する位置取得手段とを備えることを特徴とするコンクリート締固めトレーサビリティシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、屋外のコンクリート締固め作業に用いられるバイブレータのホースの目印を識別するための目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート打設工事におけるコンクリートの締固め作業に、フレキシブル型のバイブレータが用いられている(例えば、特許文献1、2を参照)。一般に、この形式のバイブレータは、棒状の振動体からなり、可撓性のホースに接続して用いられる。このバイブレータは、コンクリート内に挿入された振動体の正確な位置を把握することが困難であるため、どの深さをどの程度締固めたのかを管理することは難しい。そこで、ホースの外面に所定間隔で黄色のビニールテープなどを巻付けて目印とし、締固め作業中に、コンクリートから露出しているホースの目印を識別することで、間接的に振動体の位置を把握していた。このホースの目印を識別する従来の方法としては、目視による方法や、カメラで撮影した画像をコンピュータの画像処理によって識別する方法(例えば、特許文献3を参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-121499号公報
【文献】特開2004-137744号公報
【文献】特願2019-034797号(現時点で未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、黒地のホースに黄色の目印をした場合、人の目では識別できても、日向になると白飛びをして、コンピュータでは画像処理しにくいという問題があった。このため、コンピュータの画像処理で対応しやすい目印が求められていた。
【0005】
コンクリートの締固め作業は、日向、日陰などの条件が場所、時間帯により変わる。そこで、本発明者は、赤、緑、青、黄緑、紫、黄色の6色のビニールテープをホースに付け、日向・日陰の条件下でコンピュータの画像処理による識別特性について実験した。この結果、黄緑、紫、黄色が識別しにくく、3原色であるRGB(赤、緑、青)が識別しやすいことがわかった。黄色は作業員の安全チョッキに使われることが多いため、誤認識の原因となる。したがって、3原色を用いてホースをカラーリングすれば、日向、日陰の条件に関わらず、より確実に締固め位置の深さを認識することができると考えられる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、締固めを実施した箇所をより確実に把握することができる目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る目印識別処理システムは、フレッシュコンクリートに挿入される締固め用のバイブレータを吊持する吊持部材において締固めを実施した箇所を把握するために設けられた、光の三原色のうちの少なくとも一つの色を呈する目印を、画像処理により識別する目印識別処理システムであって、締固め作業中のフレッシュコンクリートの上面またはその型枠よりも上方に設置され、フレッシュコンクリートの上面と目印を含む周辺または型枠と目印を含む周辺を撮像して、撮像した映像を出力する撮像手段と、撮像手段により出力された映像から、光の三原色のうちの所定の色を抽出した画像を生成し、生成した画像中の所定の色の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する目印の位置を識別する画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の目印識別処理システムは、上述した発明において、目印は、吊持部材の延在方向に沿って異なる色で交互に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るコンクリート締固めトレーサビリティシステムは、上述した目印識別処理システムと、識別した目印の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する吊持部材の相対的な位置を継時的に取得する位置取得手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る目印識別処理システムによれば、フレッシュコンクリートに挿入される締固め用のバイブレータを吊持する吊持部材において締固めを実施した箇所を把握するために設けられた、光の三原色のうちの少なくとも一つの色を呈する目印を、画像処理により識別する目印識別処理システムであって、締固め作業中のフレッシュコンクリートの上面またはその型枠よりも上方に設置され、フレッシュコンクリートの上面と目印を含む周辺または型枠と目印を含む周辺を撮像して、撮像した映像を出力する撮像手段と、撮像手段により出力された映像から、光の三原色のうちの所定の色を抽出した画像を生成し、生成した画像中の所定の色の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する目印の位置を識別する画像処理手段とを備えるので、日向、日陰の条件に関わらず、目印の位置を確実に識別することができる。識別した目印の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する吊持部材の相対的な位置を取得すれば、締固めを実施した箇所をより確実に把握することができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る他の目印識別処理システムによれば、目印は、吊持部材の延在方向に沿って異なる色で交互に設けられているので、吊持部材の相対的な位置の取得がより容易になるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係るコンクリート締固めトレーサビリティシステムによれば、上述した目印識別処理システムと、識別した目印の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する吊持部材の相対的な位置を継時的に取得する位置取得手段とを備えるので、平面的にどの位置でどの深さまでどのくらいの時間について、バイブレータを作用させ締固めを実施したかといった履歴情報を把握することができる。このため、締固めを実施した箇所を確実に把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係る目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステムの実施の形態を示す概略構成図である。
図2図2は、ホースの一例を示す図である。
図3図3は、画像処理状況(元画像)を示す図である。
図4図4は、画像処理状況(画像処理3色)を示す図である。
図5図5は、画像処理状況(画像処理6色)を示す図である。
図6図6は、バイブレータの平面位置、深さの推定方法の一例を示す斜視図である。
図7図7は、ホースに施されるマーキングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態は、型枠10へのコンクリート打設作業時に、コンクリートCにバイブレータ12を挿入し、バイブレータ12の振動によって周囲のコンクリートCの締固めを行う締固め作業に適用される。型枠10内には鉄筋Sが配筋されている。また、型枠10内の下側部分には、先行層14のコンクリートが既に打設されている。コンクリートCは、先行層14の上面から型枠10の天端16付近までの範囲に打設され、この範囲の高さHが締固め作業を行う高さになる。
【0016】
バイブレータ12は、長尺棒状の振動体であり、長尺方向の一端には可撓性の長尺状のゴム製ホース18(吊持部材)が繋がれている。作業員Mは、型枠10に隣接する仮設足場20からこのホース18を把持して、バイブレータ12をコンクリートC中の所定高さに吊持し、この箇所の締固めを行うようになっている。締固め作業中のホース18は、コンクリートCの上面から出て型枠10の天端16まで延びている。
【0017】
図2に示すように、ホース18の外周面には、マーキング22(目印)がその延在方向に沿って設けられている。このマーキング22は、図示しないバイブレータ12上端を基点としたホース18の延在長さ(長さ情報)を示している。したがって、ホース18に対する各マーキング22の相対的な位置は既知である。マーキング22は、光の三原色(赤R、緑G、青B)のビニールテープで構成され、これら各色のテープが黒地のホース18の長さ方向に沿って間隔をあけて交互に巻付けられている。こうすることで、後述の画像処理手段25による画像処理が容易となり、後述の位置取得手段26によるホース18の相対的な位置の取得がより容易になる。マーキング22を読み取ることで、読み取り位置からバイブレータ12上端までのホース18の延在長さを把握することができる。なお、本発明の目印(マーキング22)はこれに限るものではなく、光の三原色(赤、緑、青)のうちの少なくとも一つの色を呈するものであればいかなるものでもよい。
【0018】
図1に示すように、本実施の形態に係るコンクリート締固めトレーサビリティシステム100は、締固め作業中の型枠10を含むコンクリートCの映像を上方から取得するカメラ24(撮像手段)と、映像の画像処理を行う画像処理手段25と、ホース18の位置を取得する位置取得手段26と、ホース18の位置をもとにバイブレータ12の位置を推定する位置推定手段28と、締固めを実施した箇所に関する履歴情報を取得する履歴情報取得手段30と、データ格納手段32と、表示手段34とを備える。上記のカメラ24と、画像処理手段25を含む構成が、本実施の形態の目印識別処理システム50に相当する。
【0019】
データ格納手段32は、カメラ24からの映像や各手段からの処理データを格納するためのものである。表示手段34は、データ格納手段32に格納された映像や処理データを表示可能なモニタによって構成される。
【0020】
カメラ24は、型枠10の天端16よりも上方であってコンクリートC上面の略中心の真上に設置される。このカメラ24は、締固め作業中の型枠10の天端16を含む周辺の映像を上方から撮像して、経時的に連続した映像をデータ格納手段32に出力する。これによって、締固め作業中の型枠10の天端16とホース18を含んだ映像が取得される。
【0021】
カメラ24としては、通常のカメラを用いてもよいが、例えば、一度に上下左右全方位360度のパノラマ画像を撮像して、全天球映像を取得する全天球カメラを用いることが好ましい。全天球カメラを用いることで、型枠10の天端16が存在する範囲、コンクリートCの上面の範囲が広大である場合や、バイブレータ12を複数箇所に配備して多点同時に締固める場合であっても、ホース18を含む映像を確実に取得可能である。また、カメラ24として通常のカメラを用いる場合は、複数のカメラで様々な角度から撮影して死角を無くすことが好ましい。なお、本発明はこれに限るものではなく、締固め作業中の型枠10の天端16とホース18を継時的に撮像可能なものであればいかなるものでもよく、例えば180度程度の画角をもつ広角カメラを下向きにして使用してもよい。
【0022】
画像処理手段25は、カメラ24により出力された映像から、光の三原色(赤R、緑G、青B)を抽出した画像を生成し、生成した画像中の三原色の位置を認識し、認識した三原色の位置に基づいて、型枠10の天端16に対するマーキング22の位置を識別するものである。この方法には、周知の画像解析処理方法を適用して行うことができる。例えば、データ格納手段32に格納された映像から所定の時間間隔で画像を選択し、あらかじめ設定した型枠10の天端16の特徴量と、三原色の位置から、マーキング22の位置を識別する。
【0023】
位置取得手段26は、画像処理手段25の処理結果に基づいて、型枠10の天端16に対するホース18の相対的な位置を継時的に取得するものである。ホース18に対するマーキング22の相対的な位置(既知)と、画像処理手段25で識別したマーキング22の位置から、型枠10の天端16に対するホース18の相対的な位置を継時的に取得することができる。
【0024】
本実施の形態では、型枠10の天端16よりも上方に設置したカメラ24を利用するため、コンクリートC内部の撮影はできないが、この位置取得手段26によって、型枠10の天端16とホース18の位置の相対的な位置関係を概略的に把握することが可能である。上述したように、ホース18の外周面には、バイブレータ12上端を基点としたホース18の延在長さを表すマーキング22が施されている。そこで、本実施の形態の画像処理手段25は、ホース18の位置を表す特徴量として、このマーキング22を利用する。
【0025】
そして例えば、型枠10の天端16とホース18の相対的な位置関係を表すデータとして、型枠10に対するホース18の平面配置形状、延在方向からコンクリートCの上面に対するホース18の平面位置を取得し、さらに、所定の高さ(例えば、型枠10の天端16の高さ)に対応するマーキング22の値を取得する。この場合、例えば、ホース18が型枠10の天端16に交差する位置のマーキング22の値を継時的に取得してもよい。取得したデータは、時間情報と紐付けられてデータ格納手段32に格納される。
【0026】
位置推定手段28は、位置取得手段26により取得された型枠10の天端16とホース18の相対的な位置関係に基づいて、ホース18に吊持されたバイブレータ12の位置を継時的に推定するものである。具体的には、データ格納手段32から型枠10の天端16の高さのマーキング22の値を抽出する。抽出したマーキング22の値は、型枠10の天端16を基点としたバイブレータ12上端までの高さ(深さ)H1に相当する。この高さH1に、既知のバイブレータ12の長さLを加算することで、バイブレータ12の高さ方向の存在範囲を推定する。
【0027】
また、データ格納手段32からコンクリートCの上面に対するホース18の平面位置を抽出し、抽出したホース18の平面位置がバイブレータ12の位置に一致すると仮定して、バイブレータ12の平面位置を推定する。以上の処理によって、バイブレータ12の三次元的な位置を比較的精度よく推定することができる。推定したバイブレータ12の位置は、時間情報と紐付けられてデータ格納手段32に格納される。
【0028】
履歴情報取得手段30は、位置推定手段28により推定されたバイブレータ12の位置に基づいて、バイブレータ12による締固めを実施した箇所に関する履歴情報を取得するものである。具体的には、データ格納手段32からバイブレータ12の位置を、これに紐付けられた時間情報とともに抽出する。そして、抽出した結果に基づいて、バイブレータ12が平面的にどの位置でどの深さまでどのくらいの時間存在して、その位置の締固めを行ったか、といった履歴情報を取得する。取得した履歴情報を参照することで、バイブレータ12で締固めをした箇所を確実に把握することができる。
【0029】
上記構成の動作および作用について説明する。
図1に示すように、屋外でのコンクリートCの打設時に、作業員Mがホース18を垂らしてバイブレータ12をコンクリートC中に挿入して締固めを行う。締固めが不十分な箇所が生じないように、作業員Mはホース18を動かして、バイブレータ12をコンクリートC中の各所に移動させる。この作業の様子は、上方に設置されたカメラ24により撮像され、その映像はデータ格納手段32に記録される。画像処理手段25は、この映像から所定の画像を選択し、この画像からホース18のマーキング22の位置を識別する。例えば、映像から図3に示すような画像を選択した場合、画像処理手段25は図4に示すような画像を生成し、生成した画像中の三原色の位置を認識し、認識した三原色の位置に基づいて、型枠10の天端16に対するマーキング22の位置を識別する。マーキング22は光の三原色で構成されているので、その位置は、日向、日陰の条件に関わらず、画像処理手段25によって確実に識別することができる。なお、参考として、図3の画像から赤、緑、青、黄緑、紫、黄色の6色を画像処理で抽出した画像を図5に示す。図5のように、日向・日陰の条件下で6色を抽出した場合は、図4に比べてマーキング22を識別しにくいことがわかる。
【0030】
位置取得手段26は、この識別結果から型枠10の天端16とホース18の相対的な位置関係を取得する。位置推定手段28は、この位置関係からバイブレータ12の位置を推定する。履歴情報取得手段30は、推定したバイブレータ12の位置からバイブレータ12による締固めを実施した箇所に関する履歴情報を取得する。ユーザは、取得した履歴情報によって、締固めを実施した箇所の履歴を過去に遡って容易かつ確実に把握することができる。
【0031】
この結果、締固めが不十分な箇所が判明した場合には、当該箇所にバイブレータ12を配置して再度締固めを実施すればよい。このようにすれば、締固めが不十分な箇所をなくすことができるので、その後の硬化時にジャンカ等の不具合が発生するおそれがなくなり、所期のコンクリート品質を確保することが可能となる。
【0032】
なお、上記の実施の形態において、カメラ24が型枠10を含む周辺を撮像し、位置取得手段26が型枠10の天端16とホース18の相対的な位置関係を取得する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば、カメラ24がコンクリートCの上面を含む周辺を撮像し、位置取得手段26がコンクリートCの上面とホース18の相対的な位置関係を取得してもよい。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
また、上記の実施の形態において、バイブレータ12の平面位置、深さを推定する場合に、基準となる平面(以下、基準面という。)を設定してもよい。
【0034】
例えば、図6に示すように、型枠10の上側部分などに、複数のARマーカー11を設ける。ARマーカーは、正方形の黒枠で囲われた中に所定の画像パターンを表示した水平板からなる。このARマーカー11とARマーカー11を含む周辺の映像を、カメラ24や作業員Mのヘルメットなどに装着したウェアラブルカメラ27で取得し、映像からARマーカー11の位置情報を取得する。この位置情報に基づいて、取得した映像において、バイブレータ12の平面位置、深さを推定するための仮想的な基準面Fを設定する。基準面Fはホース18と交差する高さであれば、任意の高さの水平面で構わない。設定された基準面Fと映像より特定されたホース18とが交わる点Pをバイブレータ12の平面的な差し込み位置として推定する。設定された基準面Fと映像より特定されたホース18とが交わる点Pより上方に位置するホース18に設けられたマーキング22によって、基準面Fより下のホース18の長さを相対的に求めることができる。この長さを、基準面Fからのバイブレータ12の差し込み深さとして推定する。このようにすれば、バイブレータ12の平面位置、深さをより精度よく推定することができる。
【0035】
また、上記の実施の形態において、ホース18の外周面に施されるマーキング22を、2色の組み合わせで構成してもよい。組み合わせの2色のうち、1色は光の三原色(赤、緑、青)から選択する。光の三原色から2色を選択しても構わない。
【0036】
例えば、図7に示すように、2色の組み合わせは、大きいサイズ21と小さいサイズ23の組み合わせとする。大きいサイズ21はホース18の全周に所定区間だけ設ける。小さいサイズ23は、横幅をホース18の円周長の1/6程度とし、ホース18の円周上に等間隔に3か所設置する。大きいサイズ21の上に小さいサイズ23が重なって配置された態様となる。図の例では、マーキング22Aのうち大きいサイズ21Aが黄色、小さいサイズ23Aが青色、マーキング22Bのうち大きいサイズ21Bが赤色、小さいサイズ23Bが緑色の場合である。このような2色の組み合わせの異なるマーキング22A、22Bを、ホース18の延在方向に連続的に設ける。このようにしても、マーキング22の読み取り位置からバイブレータ12までのホース18の延在長さを把握することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明に係る目印識別処理システムによれば、フレッシュコンクリートに挿入される締固め用のバイブレータを吊持する吊持部材において締固めを実施した箇所を把握するために設けられた、光の三原色のうちの少なくとも一つの色を呈する目印を、画像処理により識別する目印識別処理システムであって、締固め作業中のフレッシュコンクリートの上面またはその型枠よりも上方に設置され、フレッシュコンクリートの上面と目印を含む周辺または型枠と目印を含む周辺を撮像して、撮像した映像を出力する撮像手段と、撮像手段により出力された映像から、光の三原色のうちの所定の色を抽出した画像を生成し、生成した画像中の所定の色の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する目印の位置を識別する画像処理手段とを備えるので、日向、日陰の条件に関わらず、目印の位置を確実に識別することができる。識別した目印の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する吊持部材の相対的な位置を取得すれば、締固めを実施した箇所をより確実に把握することができる。
【0038】
また、本発明に係る他の目印識別処理システムによれば、目印は、吊持部材の延在方向に沿って異なる色で交互に設けられているので、吊持部材の相対的な位置の取得がより容易になる。
【0039】
また、本発明に係るコンクリート締固めトレーサビリティシステムによれば、上述した目印識別処理システムと、識別した目印の位置に基づいて、フレッシュコンクリートの上面または型枠に対する吊持部材の相対的な位置を継時的に取得する位置取得手段とを備えるので、平面的にどの位置でどの深さまでどのくらいの時間について、バイブレータを作用させ締固めを実施したかといった履歴情報を把握することができる。このため、締固めを実施した箇所を確実に把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係る目印識別処理システムおよびコンクリート締固めトレーサビリティシステムは、打設直後のフレッシュコンクリートにバイブレータを挿入してコンクリートを締固める作業に有用であり、特に、締固めを実施した箇所をより確実に把握するのに適している。
【符号の説明】
【0041】
10 型枠
12 バイブレータ
14 先行層
16 天端
18 ホース(吊持部材)
20 仮設足場
22 マーキング(目印)
24 カメラ(撮像手段)
25 画像処理手段
26 位置取得手段
28 位置推定手段
30 履歴情報取得手段
32 データ格納手段
34 表示手段
50 目印識別処理システム
100 コンクリート締固めトレーサビリティシステム
C コンクリート
M 作業員
S 鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7