IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美和ロック株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ビー・アンド・プラスの特許一覧

特許7521740建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置
<>
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図1
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図2
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図3
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図4
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図5
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図6
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図7
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図8
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図9
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図10
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図11
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図12
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図13
  • 特許-建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/28 20060101AFI20240717BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20240717BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240717BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20240717BHJP
   H04B 5/48 20240101ALI20240717BHJP
【FI】
E06B7/28 B
E05B47/00 K
E05B47/00 T
H02J50/10
H02J50/80
H04B5/48
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020137253
(22)【出願日】2020-08-17
(65)【公開番号】P2022033403
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592212537
【氏名又は名称】株式会社ビー・アンド・プラス
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】藤川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】進藤 崇之
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-238182(JP,A)
【文献】特開平04-060075(JP,A)
【文献】実開平05-087175(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/28
E05B 47/00
H02J 50/10
H02J 50/80
H04B 5/00 - 5/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右勝手を決めるドアの蝶番の位置を基準にして、右開きドアの自由端部側にロック手段(52)があり、一方、左開きドアの自由端部側にロック手段(52)があり、これを前提としてドア枠に設けられる給電ユニットと、前記左右勝手に対応して前記右開きドア又は前記左開きドアに設けられ、前記給電ユニットから伝送媒体を介して電源供給及び判定信号を受け取る受電ユニットと、前記給電ユニット側に設けられる第1制御部と、前記受電ユニット側に設けられ、正逆双方に駆動する直流アクチュエータの駆動力によって駆動体を正方向又は逆方向に選択的に作動させる第2制御部とを備えた建具の給電装置であり
前記第1制御部は、前記電源の電力が正方向又は逆方向いずれの方向に流れるかを判別する判別部を有し、前記第2制御部は、前記判別部の判定信号に基づき前記直流アクチュエータに対する電流の向きを制御して前記駆動体を作動させる、建具の給電装置。
【請求項2】
固定部材としてのドア枠に給電ユニットを設け、このドア枠に対向すると共に、可動部材としての引戸に受電ユニットを設け、
前記戸枠が左側にある場合に閉戸状態になる前記引戸の閉戸側にロック手段(52)があり、これに対して、前記戸枠が右側にある場合に前記引戸の閉戸側にロック手段(52)があり、これを前提として前記給電ユニットから伝送媒体を介して電源供給及び判定信号を受け取る前記受電ユニットと、前記給電ユニット側に設けられる第1制御部と、前記受電ユニット側に設けられ、正逆双方に駆動する直流アクチュエータの駆動力によって駆動体を正方向又は逆方向に選択的に作動させる第2制御部とを備えた建具の給電装置であり
前記第1制御部は、前記電源の電力が正方向又は逆方向いずれの方向に流れるかを判別する判別部を有し、前記第2制御部は、前記判別部の判定信号に基づき前記直流アクチュエータに対する電流の向きを制御して前記駆動体を作動させる、建具の給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触通電方式(通称、リモートシステム)により電気錠、可動ロック手段などの負荷に駆動電力を供給する建具の給電装置及び建具の電気錠への給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触通電により可動体に電力を供給する電力供給システムは、日常生活に普及している。例えばスマートフォンや電話機の子機等は、机や床面に置いてある充電スタンドの受け部に載置すると、充電スタンドの給電ユニットから、スマートフォンや電話機の子機の受電ユニットに、電磁誘導により、前記給電ユニットから前記受電ユニットに非接触方式で電力を供給(通電)することができる。
【0003】
特許文献1は、固定側の床面から、この床面上を走行する可動体としてのロボットに対して非接触通電により電力を供給するものである。特許文献1の実施形態は、電力供給領域に配置された固定体(床面)から、電力被供給領域に配置された可動体(ロボット)を介して、所定の負荷(例えばロボットに内蔵された電動モータ)に対して電力を供給するための電力供給システムである。
【0004】
この特許文献1の電力供給システムは、交流電源と、固定体(床面)に配置され前記交流電源を受け取ることができる複数の第1の送電電極及び第2の送電電極と、これらの第1・第2の送電電極に対向することができる可動体(ロボット)の一組の受電電極と、前記一組の受電電極に接続する複数の切り替えスイッチ(図6図7図8図9図10図11図12図18等)を有する判別切り替部40(図3図13図18等の各実施形態)とを備え、前記固定体(床面)を走行する前記可動体(ロボット)は、前記複数の受電電極に対して対向配置されるプラス(+)とマイナス(-)の各電極が前記第1の送電電極と前記第2の送電電極のいずれであるのかを判別し、この判別結果に基づいて、前記負荷に対する前記複数の受電電極の接続の切替えを行う判別切り替手段を備えることを特徴とする(請求項2に記載の発明を参照)。符号や図は特許文献1のもの。
【0005】
この特許文献1の電力供給システムは、ランダムな方向に走行する可動体(ロボット)が判別切り替手段を介して複数の第1の送電電極及び第2の送電電極のいずれかからでも電力を受け取ることができるという利点があるものの、その制御部は、ロボットの動力となる電流方向を判別し、かつ、この判別結果に基づいて、例えば直流モータの回転方向を決めるものではない。付言すると、直流モータの回転方向と電流方向とは関係がないので、例えばロック手段を備える建具のドアが右開きか、それとも左開きかを全く考える必要性がない。したがって、前記直流モータを動力源とする前記ロック手段のダルマの回転方向及びデッドボルトの移動方向を考える必要性がある建具の電気錠システムには不向きである。
【0006】
これに対して、特許文献2は、非接触通電により電気錠に駆動電力を供給する建具の電気錠システムに関するものである。
【0007】
すなわち、この特許文献2は、停電時や扉が開かれているときでも電力の供給が可能であり、且つ、非接触給電装置を構成する給電ユニット及び受電ユニットが小型化及び低コスト化が可能な建具の電気錠システムを提供することを目的とし、その課題を解決するための手段は、「固定構造体側に設けられる給電ユニットと可動建材側に設けられる受電ユニットで構成され、電磁誘導により給電ユニットから受電ユニットに電力を供給する非接触給電装置と、可動建材側に設けられる電気錠と、可動建材側に設けられ、前記受電ユニットから出力される電力によって充電され、前記電気錠に駆動電力を供給する蓄電素子を備えているものの(太陽電池パネルから電気を充電することができる充電回路及び二次電池)、特許文献1の電力供給システムと同様に、動力伝達手段(回転体としてのダルマ)及び水平移動するデッドボルトを含むロック手段の取付け位置との関係で、直流アクチュエータとしての直流モータの回転方向と電気の流れを関連付けるためにドア側に電気錠制御装置から供給される電気の流れる方向を判別することや直流モータをいずれの方向に回転させるかは、何ら記載されていない。
【0008】
なお、特許文献2の請求項1には、「受電ユニットの充電制御回路と給電ユニットの前記高周波インバータ回路の間にフォトカプラが接続され、充電制御回路は、蓄電素子に充電するときだけ、給電ユニットから前記受電ユニットに対して、電気錠を駆動するには不十分であるが、前記蓄電素子を充電するには十分な電力が供給され、高周波インバータ回路に発振動作を行わせない期間中に継続して、前記フォトカプラを介して所定の信号を前記高周波インバータ回路に入力すること」が記載されている。
【0009】
さらに、本発明に直接関連する特許文献について言及する。特許文献3~特許文献4は、それぞれ2線式電気錠制御システムに関する建具の電気錠システムである。前記特許文献3は、第1実施形態を示す第1図及び第2図を明細書本文と共に読むと、前記電気錠システムは、コントロールユニット(本発明の固定側の操作盤に相当)1と、これに接続する操作端末ユニット2と、これに接続する電気錠制御ユニット(本発明の可動側の電気錠制御装置に相当)3と、この電気錠制御ユニットの制御信号に制御される電気錠(本発明の駆動体に相当)とを備え、前記コントロールユニット1乃至前記電気錠制御ユニットの接続は、駆動電源をユニットコントロールユニット1から操作端末ユニット2を介して電気錠制御供給3に供給することができる2芯給電ケーブルを用いられている。
【0010】
しかして、前記2芯給電ケーブルは、第4図に示す第2実施形態を含めて理解すると、商業用交流電源をコントロールユニット1から電気錠制御ユニットへ供給することができ、その際、該2芯給電ケーブルに給電された交流信号(駆動体用の制御信号)のゼロクロス点に判別信号(電気錠制御ユニット側等の各種センサの検出信号)を重畳させることができる。
【0011】
しかしながら、この特許文献3の電気錠システムは、前記コントロールユニット1乃至前記電気錠制御ユニットの接続は、全て有線なので、給電方式(配線作業の困難性、設備費の高額化など)に問題点がある。
【0012】
特許文献4の電気錠の制御、監視方式も、例えば第3図を参照にすると、電流観測器3、制御回路27、電源切替え装置24を有するコントローラ(本発明の固定側の操作盤に相当)3と電磁アクチュエータ14、電気錠及び扉の開閉状態を監視する状態観測器15を有する電気錠ユニット(本発明の制御部及び駆動体に相当)2は、2芯ケーブル22、複数のコネクタ7及び扉枠と扉の取付け基端部(蝶番がある側)にそれぞれ対向状態に配設した一対の通電金具8を介して接続するものの、特許文献3と同様に給電方式に問題点がある。
【0013】
特許文献5は、明細書本文の段落0002で前記特許文献3及び特許文献4の問題点(電気錠の制御中に、その状態情報が中断するという点)を解消するために、制御盤(本発明の操作盤に相当する)に内装したコントロールユニット1と通電金具に相当する錠操作用端末ユニット2とを「信号線4(2芯ケーブル)」で接続し、前記コントロールユニット1には、複数のスイッチの命令信号を送信する発信器F1、F2と、錠操作用端末ユニット2からの状態信号を受け取る周波数検出手段K1をそれぞれ設け、一方、前記錠操作用端末ユニット2には、電気錠3の状態信号を取得しかつ前記コントロールユニット1にモニタ信号を送信する発信器F3、F4、F5を設ける一方、前記電気錠3に前記信号線4(2芯ケーブル)を介して送られてきた交流信号(駆動部を駆動するための電気)を供給する給電手段(駆動電源受信部及び整流部D)、及び複数のリレー及び接続端子T1、T2を有する制御回路31をそれぞれ設けたものである。
【0014】
しかしながら、特許文献5は、電気錠の制御中に、その状態情報が中断しないという利点があるものの、その給電方式は、特許文献3及び特許文献4と同様に全て有線なので、配線作業の容易性の観点から、もっと改善すべき問題点がある。
【0015】
特許文献6は、高周波形リモート駆動装置が記載されている。この高周波形リモート駆動装置は、インターネットを介して私人のあるHP(電子出版物)にアクセスする「リモートシステム」と称されている。
【0016】
このリモートシステムは、固定側の出力部(ベース部)と、可動側の伝送部(リモート部)で構成されており、前記出力部(ベース部)と前記伝送部(リモート部)は、例えば数センチ程度離ており(空間を介して)配設され、前記出力部(ベース部)には2芯ケーブルを介して外部制御機器並びに交流電源が接続し、一方、前記可動側の伝送部(リモート部)には、2芯ケーブルを介して出力機器と入力機器が接続され、前記空間に非接触方式(無線式)で、例えば磁気結合、光結合等の伝送媒体により、電源供給並びに制御信号を、出力部(ベース部)から伝送部(リモート部)に送信し、一方、伝送部(リモート部)から出力部(ベース部)に入力機器等の検出信号を送信可能である旨が開示されている。
【0017】
この特許文献6が公開される前に、出願人は、非接触型通電装置(給電ユニットと受電ユニット)を「電気錠システムの通電構造」に適用すれば、特許文献3乃至特許文献5の建具の電気錠システムが抱えている問題点を一挙に解決することができることを知見し、日本国特許庁に、特許出願(特願平9-43420)をし、既に特許権を得ている(特許文献7)。
【0018】
この出願人の提案した特許文献7の特許請求の範囲の請求項1及び明細書本文には、下記の技術が公知技術であることが記載されている。
【0019】
すなわち、「 電気錠の施解錠及び扉の開閉についての状態モニタを常時行いつつ、入力器によるデータ入力の有無を判別し、前記入力器によるデータ入力の有無に応じて前記電気錠を解錠する指令又は施錠する指令を出力する制御回路と、該制御回路から入力される指令に応じて前記電気錠を解錠又は施錠するための制御信号を出力する出力回路とを有する電気錠制御器と、前記制御信号による電力の供給を受けて施解錠を行うアクチュエータ及び接点の開閉により施解錠の状態に応じた施解錠モニタ信号を発生する施解錠モニタスイッチを有する電気錠を備えた電気錠システムの通電構造」が公知であること。
【0020】
また「扉枠に取り付けられる扉枠側ユニットと前記扉に取り付けられる扉側ユニットとに分離され、前記扉枠側ユニットは、前記電気錠制御器の前記出力回路に結線された発振回路と、該発振回路に接続された1次コイルとからなり、前記制御回路の指令により前記出力回路から送られてくる制御信号を前記発振回路が交流に変換して前記1次コイルから発振出力する制御信号送信手段と、前記電気錠制御器の前記制御回路に結線され、前記扉側ユニットから送信される前記施解錠モニタ信号を検知する施解錠検知スイッチからなる施解錠モニタ信号検知手段を具備し、前記扉側ユニットは、前記制御信号送信手段の前記1次コイルとともに第1結合手段を構成するように前記1次コイルと近接して対向配置された2次コイルと、該2次コイルの一端にアノードが接続されたダイオード及び前記2次コイルの他端と前記ダイオードのカソードとの間に接続されたコンデンサによる変換回路とからなり、前記1次コイルから送信される前記制御信号を電磁結合により前記2次コイルで受信し、この受信した制御信号を前記変換回路で直流化して前記アクチュエータ及び前記施解錠モニタスイッチに供給する制御信号受信手段と、前記施解錠検知スイッチとともに第2結合手段を構成するように前記ダイオードのカソードと前記2次コイルの他端との間に接続された線路に前記施解錠モニタスイッチを介して結線された電磁石からなり、前記施解錠モニタスイッチが閉状態のときに前記2次コイルとの間にループ回路を形成して前記1次コイルから前記2次コイルに誘導された制御信号により前記電磁石が磁化され、該電磁石と前記施解錠検知スイッチとの電磁結合により前記施解錠モニタ信号を送信する施解錠モニタ信号送信手段とを具備すること。」
さらに、「 前記扉枠側ユニットと前記扉側ユニットとの間は、前記1次コイルと前記2次コイルで構成される前記第1結合手段の電磁結合により非接触接続されるとともに、前記電磁石と前記施解錠検知スイッチで構成される前記第2結合手段の電磁結合により非接触接続されること。」
加えて、請求項1記載の電気錠システムの通電構造に於いて、「前記施解錠モニタ信号送信手段がフォトダイオードで構成され、前記施解錠モニタ検知手段がフォトトランジスタで構成されており、 前記フォトダイオードと前記フォトトランジスタとの間の光結合により前記施解錠モニタ信号の送受を行うこと。」
今回、出願人は、特許文献1乃至特許文献7を踏まえた上で、「新規な発明の課題」と「新規な解決手段」を貴庁に提案するものである。なお、符号と用語は、各特許文献のものをそれぞれ援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特開2010-148287号公報
【文献】特許第6195214号公報
【文献】特開平2-174147号公報
【文献】特開平3-253680号公報
【文献】特開平6-180080号公報
【文献】特開平8-47061号公報
【文献】特許第3927272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の主たる課題は、特許文献2、特許文献6及び特許文献7(非接触通電により駆動電力を供給する電力供給システム)の利点(ドア枠から有線で電気錠に電気を供給しなくても良いという利点)を生かしながら、動力伝達手段及びデッドボルトを含むロック手段の取付け位置との関係で、例えば直流モータの回転方向と電気の流れを関連付けるために、ドア枠側の電気の流れる方向を容易に判別することができることである(新規な発明の課題)。また付随的な課題として、本発明は、前記主たる課題を前提としながら、電源供給が途切れた場合であっても、可動側制御装置に対して電気を供給することができること、2芯給電ケーブルから電源供給を受けていない場合であっても、別ルートから電気の供給を受けることができることである。さらに、実施形態によっては、ドアの開閉状態等を判別し、本発明の実施化を確実なものとすることができること、非接触型通電装置をドアの取り付け基端部側又は自由端部側のいずれにでも、ユニットとして簡単に取り付けることができること等である。
【0023】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の建具の給電装置は、左右勝手を決めるドアの蝶番の位置を基準にして、右開きドアの自由端部側にロック手段(52)があり、一方、左開きドアの自由端部側にロック手段(52)があり、これを前提としてドア枠に設けられる給電ユニットと、前記左右勝手に対応して前記右開きドア又は前記左開きドアに設けられ、前記給電ユニットから伝送媒体を介して電源供給及び判定信号を受け取る受電ユニットと、前記給電ユニット側に設けられる第1制御部と、前記受電ユニット側に設けられ、正逆双方に駆動する直流アクチュエータの駆動力によって駆動体を正方向又は逆方向に選択的に作動させる第2制御部とを備えた建具の給電装置であり、前記第1制御部は、前記電源の電力が正方向又は逆方向いずれの方向に流れるかを判別する判別部を有し、前記第2制御部は、前記判別部の判定信号に基づき前記直流アクチュエータに対する電流の向きを制御して前記駆動体を作動させることを特徴とする(請求項1に記載の発明)。
【0025】
また本発明の建具の給電装置は、固定部材としてのドア枠に給電ユニットを設け、このドア枠に対向すると共に、可動部材としての引戸に受電ユニットを設け、前記戸枠が左側にある場合に閉戸状態になる前記引戸の閉戸側にロック手段があり、これに対して、前記戸枠が右側にある場合に前記引戸の閉戸側にロック手段があり、これを前提として前記給電ユニットから伝送媒体を介して電源供給及び判定信号を受け取る前記受電ユニットと、前記給電ユニット側に設けられる第1制御部と、前記受電ユニット側に設けられ、正逆双方に駆動する直流アクチュエータの駆動力によって駆動体を正方向又は逆方向に選択的に作動させる第2制御部とを備えた建具の給電装置であり、前記第1制御部は、前記電源の電力が正方向又は逆方向いずれの方向に流れるかを判別する判別部を有し、前記第2制御部は、前記判別部の判定信号に基づき前記直流アクチュエータに対する電流の向きを制御して前記駆動体を作動させることを特徴とする(請求項2に記載の発明)。
【発明の効果】
【0026】
(a)請求項1に記載の発明は、開き戸を対象にし、特許文献2、特許文献6、特許文献7(非接触通電により駆動電力を供給する電力供給システム)の利点(ドア枠から有線で電気錠に電気を供給しなくても良いという利点)を生かしながら、動力伝達手段及びデッドボルトを含むロック手段の取付け位置との関係で、例えば直流アクチュエータとしての直流モータの回転方向と電気の流れを関連付けるために、ドア枠側又はドア側の電気の流れる方向を容易に判別することができる。
(b)請求項2に記載の発明は、引戸を対象にし、請求項1に記載の発明の利点を有する建具の給電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1乃至図11本発明の第1実施形態を示す各説明図。図12乃至図14は本発明の第2実施形態を示す各説明図。
図1】本発明を特許的に簡単に示した説明図(主に本発明の特定要件に関係する構成要素を示している)。
図2】電気的用語を入れたブロック図を含む概略説明図(本発明の特定要件に関係しない構成要素も示している)。
図3】ドア枠側の構成要素と、ドア側の構成要素を詳細に示した概略説明図。
図4】要部(一方のドア枠に設けた電源回路及び第1制御部の判別部)を概念的に示す説明図。なお、回路図の下方に、便宜上、IN1、IN2、OUT1、OUT2を一覧表とする。
図5図4の要部を回路図的に示した概略説明図。
図6】電気錠の直流モータの電気の流れを示す説明図。
図7】電気錠のロック手段の一例を示す概略説明図(右勝手)。
図8】左開きのドアにロック手段を取り付けた概略説明図(右勝手)。
図9】右開きのドアにロック手段を取り付けた概略説明図(左勝手)。
図10】(a)給電ユニットの正面視からの斜視図、(b)給電ユニットの背面視からの斜視図。
図11】(a)受電ユニットの正面視からの斜視図、(b)受電ユニットの背面視からの斜視図。
図12】要部(ドア開閉状態判別部)を加味した第2実施形態の図1と同様の説明図。
図13】第2実施形態を「右勝手」の建具に適用した説明図。
図14】第2実施形態を「左勝手」の建具に適用した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1乃至図11は、本発明の第1実施形態の建具の給電装置X及び建具の電気錠への給電装置Yを示す各説明図である。まず、図1は発明を特許的に簡単に示した説明図(主に本発明の特定要件に関係する構成要素を示している)。
【0029】
次に、図2は電気的用語を入れたブロック図を含む概略説明図(本発明の特定要件に関係しない構成要素も示している)である。なお、以下、本発明の建具の給電装置Xに関しては、該建具の給電装置Xを含む電気錠への給電装置Yに適用した場合を例にして説明する。
【0030】
まず、図1に於いて、Xは建具の給電装置、Yは非接触型の通電構造を有する電気錠への給電装置である。
【0031】
1は商業用の交流電源(100乃至300V)である。2は交流電源と接続し、例えば建物の壁面や敷地に配設された操作盤2である。またLは2芯給電ケーブル(第1信号線)で、この2芯給電ケーブルLは前記操作盤2と建物の開口部に設けられた少なくとも一方のドア又はドア枠10のいずれかに設けられた給電ユニット11に接続している。実施形態では、2芯給電ケーブルLは、前記給電ユニット11又は前記一方のドア枠10或いはその付近に設けられた図示しない2芯変換アダプタに接続している(なお、2芯変換アダプタ4については図12を参照)。
【0032】
またL1は図示しない2芯変換アダプタと前記給電ユニット11に設けられた一方の入出力部12を結ぶ第2信号線(例えば色で識別された7本の電線)である。また13は給電ユニット11に設けられた給電側の制御装置(ここでは「第1制御部」という)で、この第1制御部13は、本発明の新規事項である「判別部14」を有する。この第1制御部13は、後述するように前記判別部14から極性情報を取得すると、その制御回路の複数個(例えば2個)のリレーのいずれか一方を「+極」又は「-極」のいずれかに所定時間(数秒~数十秒)保持することができると共に、現在保持している極性情報を、前記2芯給電ケーブル(第1信号線)を介して前記操作盤2に送信することができる。
【0033】
一方、32は磁気、光等の伝送媒体21を介して磁気結合や光結合をする他方の入出力部である。またL2は他方の入出力部32と電気錠用の制御装置40(ここでは符号42を第2制御部」とする)とを結ぶ第3信号線(例えば色で識別された7本の電線)である。L3は前記第2制御部42と電気錠50とを結ぶ第4信号線(例えば色で識別された7本の電線)である。
【0034】
22は建物の開口部に設けられた開閉体の一例としてのドアで、このドア22の取付け基端部(図面の右側)22aは、上下一対の蝶番24を介して他方のドア枠(図面右側)23に水平方向に回転自在に枢着されている。図面左側のドア枠10と図面右側のドア枠23は、縦枠、横枠等から成るサッシ型のものなので、簡単に図示している。
【0035】
なお、特許請求の範囲の請求項1では、「少なくとも一方のドア又はドア枠のいずれかに設けられる給電ユニットと、他方のドアに設けられ、前記給電ユニットから伝送媒体を介して電源供給及び判定信号を受け取る受電ユニットと」と記載しているが、第1実施形態では、図面左側の固定部材としてのドア枠10に給電ユニット11を設け、このドア枠10に対向する可動部材としてのドア22に受電ユニット31を設けたので(例えば図2参照)、説明の便宜上、可動部材としての前記ドア22を「一方のドア」と表現し、固定部材としての前記ドア枠10を「他方のドア枠」と表現している。したがって、図示しない可動部材としての一方のドアに給電ユニットを設けた場合には、受電ユニット31を備える前記ドア22を「他方のドア」と読み替えるものとする。
【0036】
そこで、図面で示す実施形態としての一方のドア22の取付け基端部22aに対する反対側(図面の左側)は、該ドア22の自由端部22bであり、この自由端部22bには駆動体の一例としての電気錠50が内設又は面付けされている。
【0037】
普通一般に、電気錠50と電気錠用の制御装置40は、「電気錠ユニット」と称されているが、ここでは理解を容易にするために電気錠用の制御装置40を電気錠50と別個に図示している。符号44は電流方向制御部である。
【0038】
電気錠50は、周知の如く、駆動部を構成するソレノイド、電動モータ等の直流アクチュエータ51、動力伝達手段、この直流アクチュエータ51の駆動力により作動するデッドボルト52a等を錠箱内に備えている。前記デッドボルト52aと一方のドア枠10の適宜箇所に設けた受け金具52bは、「ロック手段52」を構成している。なお、図1に於いて、前記蝶番24はドア22の右側にあるので、ここでは「右勝手」を示している。
【0039】
次に、図2を参照にして、各構成部材を詳しく説明する。便宜上、図面の左下に交流電源1と操作盤2を示してある。操作盤は比較的大きな筐体に、例えば極性選択或いは確定ボタンを含む複数の操作ボタンを有する操作部2a、少なくとも現在進行形の極性情報を表示する複数個のランプを有する表示部2b、少なくとも極性確定後に直流アクチュエータの移動方向又は回転方向を決定した駆動信号を、非接触型通電金具を介して受電側の制御装置40に対して送信制御することができる外部の制御部2c等を備え、前記外部の制御部2cは、さらに、少なくともアクチュエータの作動方向を指令する駆動信号を送信する入出力部2dを備えている。
【0040】
さらに付言すると、操作盤2は、従来技術の特許文献では、コントローラ、監視装置、電気錠制御器などの用語が用いられているが、例えばドア(扉)枠、室内外、ドア(扉)の近傍の壁面Wや敷地などに設けられ、前述した操作部2a、表示部2b、制御部2c、入出力部(出力回路と入力回路)2d等を有している。
【0041】
前記制御部2cは、特許文献7の如く、伝送媒体21を介して電磁係合又は光結合する給電ユニット11及び受電ユニット31の非接触型通電構造(給電ユニット11と受電ユニット31の接続部分に配線を引き回さない構成)により、ドア22側から送られてくるモニタ信号の有無により、電気錠50の施解錠及びドア(扉)の開閉についての状態モニタを常時行いつつ、操作部2aや表示部2bによるデータ入力の有無を判断している。
実施形態では、給電ユニット11に直接又は間接的に設けられた第1制御部13は判別部14を有しているので、電源回路15から取得した極性情報を操作盤2の表示部2bに表示することができる。
【0042】
すなわち、本発明の望ましい実施形態では、給電側の制御装置の第1制御部13は、後述の極性情報伝達手段T1、T2及び判別部14を介して、「+極」又は「-極」の極性情報を取得した時、その極性情報を、2芯給電ケーブルLを介して遠隔操作が可能な操作盤2に送信し、この操作盤の外部の制御部2cは、該極性情報をソレノイド、電動モータ等の直流アクチュエータ51に対する電力の流れる方向の駆動信号として取り扱い(処理し)、前記操作盤2の表示部2bに表示し、操作盤2を操作する権限を有する者は、この表示部の表示に基づいて該操作盤2の操作部2aの極性選択ボタンを操作することができる。
【0043】
また制御部(制御回路)2cでは、電気錠50を解錠するための操作部2aによるデータ入力が有ると判断したときに、電気錠50を解錠する指令(解錠指令)を入出力部2dの出力回路に出力している。これに対し、電気錠50を解錠するための操作部2aによるデータ入力が無いと判断したときには、電気錠50の施錠を保持する指令(施錠指令)を前記出力回路に出力している。
【0044】
また制御部(制御回路)2cは、操作部2aによるデータ及びモニタ信号に基づいて所望の表示を行うための指令を表示部2bの表示出力回路に出力している。さらに、制御部2cは、内部に図示しないタイマー回路を備え、このタイマー回路は、非接触型通電構造を介して送られてくるモニタ信号により時間管理されるもので、施解錠モニタスイッチの接点が開いてドア枠側に「解錠」を示すときにセットされる。そして、開扉後に「閉扉」を示すモニタ信号が入力されるとリセットされる。また入出力部2dの出力回路は、制御部2cから施錠指令が入力されたときに、電気錠50を施錠するための制御信号(施錠制御信号)を、2芯給電ケーブル(第1信号線)を介して非接触型通電構造の給電ユニット11側に出力している。
【0045】
これに対し、制御部2cの制御回路から解錠指令が入力されたときには、非接触型通電構造に対する施錠制御信号の出力を断っている。
【0046】
さらに、表示部2bは、操作盤2の表示出力回路から入力される表示制御信号に基づいて、前述した判別部14が判別した極性に関する判定情報の表示、操作部2aによる暗証番号の照合表示、操作盤2を操作する権限を有する者によって選択又は確定された極性情報(駆動信号となる情報)の表示、電気錠50及びドア22側の各種の状態表示(施錠、解錠、閉扉)等を行っている。なお、表示部2bは、LEDランプ,液晶の表示画面などの表示手段で構成されている。
【0047】
次に、2芯給電ケーブルLについて簡単に説明する。2芯給電ケーブルLの機能に関しては、特許文献3、特許文献4、特許文献5等の各種の文献により、周知事項なので、ここでは簡単に説明する。2芯給電ケーブルLは、例えば信号を重畳することができる複数の制御部13、42の電源を確保するため、電気錠50用の駆動電源(制御信号)として用いるため、操作盤2が前述した極性情報、電気錠50及びドア22側の各種の状態表示(施錠、解錠、閉扉など)等を取得するために用いられている。また2芯給電ケーブルLは、前述した操作盤2を操作する権限を有する者によって選択又は確定された極性情報(駆動信号となる情報)を受電側の制御装置(例えば電気錠用の制御装置)40に送信するためにも使用される。
【0048】
なお、好ましい実施形態では、2芯給電ケーブルLは、少なくとも操作盤2と2芯変換アダプタの間に配線されている。
【0049】
給電ユニット11は、例えば一方のドア枠10の適宜箇所(好ましくはドア枠10を構成する縦枠の内部)に直接又は間接的に固定的に設けられている。好ましい実施形態では、給電ユニット11は、後述する磁気結合又は光結合可能な材質で形成された透過板或いはシート部を有する縦長筒状体に備え、この縦長筒状体内に、電源回路15、送信部16、受信部・表示部等のその他の部17で構成された一方の入出力部12と、前記電源回路15、送信部16及びその他の部17に接続し、かつ、情報を処理する第1制御部13が適宜に設けられている。
【0050】
さらに、ノイズフィルター回路と、このノイズフィルター回路に接続する高周波インバータ回路と、この高周波インバータ回路に接続し、電気エネルギーを放出することができる送信部(送電コイル)16を有している。
【0051】
実施形態では、判別部14が一方のドア枠10側、好ましくは給電ユニット11の内部又は外部に設けられている。また給電ユニット11は、ドア22の自由端部22bに対向する側のドア枠10に配設されているが、ドア22の蝶番24で支持されている取付け基端部22a側のドア枠23に配設しても良く、親子ドアや潜り戸における、親ドアや子ドアの自由端部側や上端部側、下端部側等に配設しても良い。また、引き戸における戸枠や、内障子、外障子のいずれか一方の障子の框部等に配設しても良い。
【0052】
なお、図2では、便宜上、極力判りやすくするために、給電装置Xに関係がある構成要素を特に図示している。であるから、一方の入出力部12は、周知の受信部(受信回路)、CPUの記憶部、時間管理するタイマー回路等の事項は、そのまま援用し、ここでは割愛してある(図3参照)。
【0053】
なお、図3は特許文献6の図1の実施形態と同様なものを示しているが、該特許文献6の図4の実施形態(データを双方向に伝達するもの)と同様なものであっても良い。付言すると、好ましくは出力部(1次側)及び伝送部(2次側)のいずれにも、送信部と受信部の両方をそれぞれ設けても良い。また図3の判別部の配設箇所は、必ずしも、特定の箇所に限定されず、給電ユニット11又は操作盤2のいずれに配設しても良い旨を示唆している。
【0054】
さて、一方のドア枠10には、電源回路15と判別部14が設けられているが、ここでは図4を参照にして説明する。電源回路15は、例えば第1・第2の発光ダイオードd1、d2がそれぞれ交互に発光(ON)すると、それに対応して通電状態となる第1・第2のフォトトランジスタT1、T2が一対設けられている。
【0055】
操作盤2から流れる電流は、漫画的な図5で示すように、今仮に符号Aのルートである順方向(+から-)に電気が流れると、第1の発光ダイオードd1が{ON}の状態となり、該第1の発光ダイオードd1は「パット」と光を放出する(図面上方)。
【0056】
これに対して、Bルートである逆方向(-から+)に電気が流れると、第2の発光ダイオードd2が{ON}の状態となり、該第2の発光ダイオードd2は「パット」と光を放出する(図面下方)。前記光の放出に対応して第1・第2のフォトトランジスタT1、T2がそれぞれ通電状態となる。なお、図5は、交流電源1を上下に2個描いているが、この交流電源1は「2個」あるのではなく、1個の交流電源1を、漫画的に便宜上示したものである。
【0057】
このように、一つの交流電源により、第1発光素子d1が{ON}の状態になると、これに対向する第1入力手段(第1のフォトトランジスタ)T1が通電状態となる。一方、第2発光素子d2が{ON}の状態になると、これに対向する第2入力手段(第2のフォトトランジスタ)T2が通電状態となる。
【0058】
したがって、実施形態の第1制御部13の判別部14は、例えば図5で示すように、好ましくは第1入力手(第1のフォトトランジスタ)T1に直列に接続する正極検出部からの〈プラス側〉の極性情報(交流電源のプラス側の波形情報)と、第2入力手段(第2のフォトトランジスタ)T2に直列に接続する負極検出部からの〈マイナス側〉の極性情報(交流電源のマイナス側の波形情報)を判別する。そして、判別部14の判定情報は、第1制御部13のタイマー回路で時間管理された状態(換言すると切り替えスイッチの自動管理方式)で2芯給電ケーブルLを介して操作盤2に送られ、前述した如く表示部2bに表示される。
【0059】
なお、前記正極検出部、負極検出部の各端子は制御回路基板に適宜に実装されている。また、ここでは、前記正極検出部及び負極検出部をまとめて「極性検出部」という。
図2の図面右側の電気錠用の制御装置40は、入出力部41、第2制御部42、例えば直流モータ51の回転方向の情報を表示する表示部43、電流方向制御部44等を有し、前記第2制御部42の記憶部には、AND、ORなどの基本的な論理回路42aや積分回路等が格納されている。
【0060】
しかして、前記第2制御部42は、一方のドア枠10側の判別部14の判定信号に基づき、例えば電気錠50を構成する直流モータ51に対する電流の向きを制御し、これにより該直流モータ51を「正転」又は「反転」させることにより、例えば図7で示すロック手段52のデッドボルト52aを作動させて電気錠50を施解錠させる。したがって、第2制御部42には、電流方向制御部44が接続している。
【0061】
図6で示すように、直流モータ51は一方の端子51aと他方の端子51bを有し、各端子51a、51bは、順方向(正転)用の線路L4と逆方向(反転)用の線路L5を介して第2制御部42の電流方向制御部44に接続している。
【0062】
直流モータ51の駆動力で作動する電気錠のロック手段52のデッドボルト52aは、周知技術なので、ここでは詳細な図面や説明を割愛するが、錠箱55内の受座56に支持され、歯車群57を介して左右方向に自在に回転するダルマ58と、このダルマの係合腕58aと選択的に係合する逆ハの字状態又はハの字状の第1係合面と第2係合面を後端部に有するデッドボルト52aを有している。
【0063】
しかして、前記デッドボルト52aは、直流モータ51の回転方向に対応して、ドア22を閉じた場合には施錠位置に案内手段を介して他方のドア枠23に設けた受金具52bに係入可能である。
【0064】
ロック手段52のデッドボルト52aは、直流モータ51の駆動力で作動することから、電気錠が扉面に取り付けられる所謂面付錠の場合には、例えば順方向(正転)用の線路L4を介して直流モータ51が「正転方向」に回転した場合であって、ドア枠23の受け金具52bに係入するときには、当然、デッドボルト52aはダルマ58の係合腕58aの回転方向に対応して一方向に移動して施錠状態となるが、逆方向(反転)の線路L5を介して直流モータ51が「逆転方向」に回転した場合には、前記デッドボルト52aは逆に反対方向に移動して解錠状態となる。これを踏まえて、電気錠のロック手段52は、左開きドア22(図8、右勝手)か、それとも右開きドア22(図9、左勝手)に取付けられる。なお、右勝手、左勝手は、ここでは蝶番24の位置(吊元位置)を基準にしている。また電気錠のロック手段52は、右開きドア及び左開きドアに兼用できるものが望ましいが、必ずしも同一構成である必要はなく、右開きドア用のロック手段と左開きドア用のロック手段を、二セット用意しておいても良い。
【0065】
したがって、本発明の建具の給電装置Xは、少なとも一方のドア又はドア枠のいずれかに設けられる給電ユニットと、他方のドアに設けられ、前記給電ユニットから伝送媒体を介して電源供給及び判定信号を受け取る受電ユニットと、前記給電ユニット側に設けられる第1制御部と、前記受電ユニット側に設けられ、正逆双方に駆動する直流アクチュエータの駆動力によって駆動体を正方向又は逆方向に選択的に作動させる第2制御部とを備えた建具の給電装置であって、前記第1制御部は、前記電源の電力が正方向又は逆方向いずれの方向に流れるかを判別する判別部を有し、前記第2制御部は、前記判別部の判定信号に基づき、前記直流アクチュエータに対する電流の向きを制御して前記駆動体を作動させる。
【0066】
また本発明の建具の電気錠への給電装置Yは、請求項1の建具の給電装置の構成をそのまま含み、前記駆動体は前記第2制御部の制御信号により施解錠される電気錠である。
しかして、前記電気錠用の制御装置40は、判別部14の判定信号に基づき、アクチュエータの一例としての直流モータ51に対する電流の向きを制御し、これにより該直流モータ51を「正転」又は「反転」させることにより前記ロック手段52のデッドボルト52aを作動させて前記電気錠を施解錠させるものである。
【0067】
そして、上記構成に於いて、望ましくは、給電側の制御装置は、判別部14から、「+極」又は「-極」の極性情報を取得した時、その極性情報を、2芯給電ケーブルLを介して遠隔操作が可能な操作盤2に送信し、この操作盤の外部の制御部2cは、該極性情報をドア22に設けた直流アクチュエータ51に対する電力の流れる方向の駆動信号として処理し、かつ遠隔操作が可能な操作盤2の表示部2bに表示し、この表示部の表示に基づいて該操作盤2の操作部2aに設けられた極性選択ボタンを操作することができる。
【0068】
さらに、好ましくは、非通電型ユニットを簡単かつ確実に取り付けるために、給電ユニット11は図10の(a)及び(b)で示す第1ボックス11aを有する。また、前記受電ユニット31は図11の(a)及び(b)で示すように、前記第1ボックス11aに対応する第2ボックス31aを有する。これらの第1ボックス11a及び第2ボックス31aは、それぞれ上下端部に取付け突片(舌片)を有する縦長状収納ボックス部と、少なくとも該縦長状収納ボックス部の縦長状開口部を閉じる光が透過可能な樹脂製、ガラス製等の透過材質で形成された縦長状対向カバーとから成るもので、第1・第2ボックス11a、31aは前記取付け突片(舌片)及び複数個の固着具を介してドア枠10の垂直部並びに該垂直部に対向するドア22の自由端部22bにそれぞれ固定される。したがって、縦長状収納ボックス部は前記透過材質で形成された縦長状対向カバーを有するので、該縦長状収納ボックス部内にはゴミ等が入り込まないので、給電ユニットや受電ユニットにはゴミ等が付着しない。
【0069】
なお、この第1実施形態では、一方のドア枠10に設けた第1制御部13に判別部14を接続したが、ドア22側の電気錠用の制御装置40の第2制御部42に判別部14を接続しても良い。
【実施例
【0070】
この欄では、図12乃至図14を参照にして本発明の第2実施形態(電気錠への給電装置Y1)を説明する。なお、この実施形態を説明するにあたって、第1実施形態と同一の部分については、同一又は同様の符号を付し、重複する説明を省略する。また作用も同一なので、重複する説明を省略する。
【0071】
この第2実施形態の電気錠への給電装置Y1は、要部としてドア開閉状態判別部60を加味したものである。この第2実施形態は、第1実施形態の主要部をそのまま含み、他の構成要件(ドア開閉状態判別部60と、単数又は複数のドア開閉状態を検知するスイッチ61)を加味したものである。なお、非接触型通電装置(給電ユニット11と受電ユニット31)の配設箇所は、前述したように、蝶番24が存在するドア22の取付け基端部22a側又はドア22の自由端部22b側のいずれでも良いが、この第2実施形態では、図13及び図14で示すように、ドア22の取付け基端部22a側に非接触型通電装置(給電ユニット11と受電ユニット31)を配設している。
【0072】
このドア開閉状態判別部60は、給電ユニット11側から受電信号を受け取ったか否かを判別するものである。そこで、ドア22を開き、該ドアの自由端部22bがドア22の受電ユニット31の他方の入出力部32の出力部から離れると(光が入らない角度まで回転すると)、前記非接触型通電構造の成るスイッチ部は「OFF」となることから、この場合には「ドア22が開いたもの」と推定することができる。一方、「ドア22が閉じたもの」と推定する場合は、前記と逆の態様(給電ユニット11と受電ユニット31が対向した場合)である。
【0073】
したがって、例えば電気錠用の制御装置40の第2制御部42に接続するドア開閉状態判別部60は、交流電源1からの電力が非接触型通電構造(給電ユニット11と受電ユニット31が対向したか否か)、換言すると、ドア22の開閉状態を判別する。
【0074】
そして、電気錠用の制御装置40の第2制御部42及びドア枠側の第1制御部13の両方又はそれらの一方は、ドア開閉状態判別部60からの「ドア閉信号」を取得した後、前記判別部14の判定結果信号に基づき、直流モータ51に対する電流の向きを制御し、これにより該直流モータ51を「正転」又は「反転」させることによりデッドボルト52aを直線的に作動させるものである。もちろん、直流モータ51が起動するときは、電気錠用の制御装置40は外部から施錠信号又は解除信号を取得することが前提条件となる。
【0075】
<付記>
まず、その他の実施形態1…請求項1の建具の給電装置に於いて、ドア又は受電ユニット又は給電側制御装置のいずれかに内部電源36が設けられ、この内部電源36は充電池であり、2芯給電ケーブルLからの電源供給が途切れた場合であっても、受電側の制御装置40に対して電気を供給することができる。
【0076】
次に、その他の実施形態2…請求項2の建具の電気錠への給電装置に於いて、給電ユニット11は、2芯変換アダプタ4を介して給電ユニット11に接続し、この給電ユニット11は、さらに、前記2芯給電ケーブルLから電源供給を受けていない場合であっても、別ルートの電源から電気の供給を受けるACアダプタを有する。
【0077】
さらに、実施形態の給電ユニット11及び受電ユニット31をそれぞれ構成する第1ボックス11a及び第2ボックス31aは、それぞれ上下端部に取付け突片(舌片)を有する縦長状収納ボックス部と、少なくとも該縦長状収納ボックス部の縦長状開口部を閉じる光が透過可能な樹脂製、ガラス製等の透過材質で形成された縦長状対向カバーとから成るもので、第1・第2ボックス11a、31aは前記取付け突片(舌片)及び複数個の固着具を介してドア枠10の垂直部並びに該垂直部に対向するドア22の自由端部22bにそれぞれ固定される(新規事項)。加えて、水平開き式ドアのみならず、引戸やシャッター、窓等の開閉体に適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、建具の電気錠への給電装置の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
X…建具の給電装置、
Y、Y1…電気錠への給電装置、
1…交流電源、
2…操作盤、
L…2芯給電ケーブル、
4…変換アダプタ、
10…一方のドア枠、
11…給電ユニット、
12…一方の入出力部、
13…第1制御部、
14…判別部、
15…電源回路、
16…送信部、
17…受信部等のその他の部、
21…伝送媒体、
22…ドア、
23…他方のドア枠、
24…蝶番、
31…受電ユニット、
32…他方の入出力部、
33…受信部、
34…整流部、
35…発信部等のその他の部、
36…内部電源、
40…電気錠用の制御装置、
41…電気錠用の制御装置の入出力部、
42…第2制御部、
44…電流方向制御部、
50…電気錠、
51…アクチュエータ(例えば直流モータ、ソレノイド)、
52…ロック手段、
52a…デッドボルト、
52b…受け金具、
60…ドア開閉状態判別部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14