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特許7521741コアファイバーとシースファイバーを有する複合ヤーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】コアファイバーとシースファイバーを有する複合ヤーン
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/36 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
D02G3/36
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020561003
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019070395
(87)【国際公開番号】W WO2020021124
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】18186138.6
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ファティー コヌコウルー
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】セレフ アウズカラ
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ ゼイレク
(72)【発明者】
【氏名】エスレフ トゥンサー
(72)【発明者】
【氏名】セダット デミルビューケン
(72)【発明者】
【氏名】エルケン エヴラン
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-510885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184319(US,A1)
【文献】米国特許第04343334(US,A)
【文献】米国特許第04024895(US,A)
【文献】米国特許第03367095(US,A)
【文献】英国特許出願公告第00809321(GB,A)
【文献】特開2012-219405(JP,A)
【文献】特開平06-346332(JP,A)
【文献】特開2008-297646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 3/00-3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア(2)及びシース(3)有する複合ヤーン(1)であって、前記コアが複数のポリマーコアファイバー(21)を含み、前記シース(3)は短繊維を含んでおり、
前記コアファイバーは、非エラストマーファイバーを含み、
前記コアファイバー(21)の量は、前記ヤーン(1)の総重量の35重量%~90重量%の範囲であり、
前記コアファイバー(21)は、仮撚加工されていないファイバーであり、
前記コアはさらにエラストマー長繊維(22)を含み、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部はFDYヤーンであり、
前記FDYヤーンと前記エラストマー長繊維は、複数の点で接合され、一緒に結合され、互いに付着しており、
前記コア(2)と前記シース(3)は一体に紡糸され、前記コア(2)が前記シースで完全に覆われており、
前記複合ヤーンは、ENISO2062に従って測定して、5~160cN/texの引張強度を有することを特徴とする複合ヤーン。
【請求項2】
請求項1において、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部は、14デニール以下の線密度を有することを特徴とする複合ヤーン。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項において、
前記コアファイバー(21)は長繊維を含むことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項4】
請求項3において、
2~1160本の前記長繊維を含むことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、
前記コアファイバー(21)は、ポリエステルのポリマー及びコポリマー、ポリアミドのポリマー及びコポリマー、ポリアクリルポリマー、及びそれらの混合物から選択される前記コアファイバー(21)を含むことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記ヤーン(1)の撚り倍数は、1.2~5.5の範囲であり、
前記撚り倍数は、次の式から取得され、
撚り/インチ=撚り倍数×√イングリッシュコットンナンバー
前記撚り/インチの値は、次の式で計算される、
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
ことを特徴とする複合ヤーン。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項において、
弾性特性を有する長繊維の量が、前記ヤーンの総重量の1%~60%の範囲であることを特徴とする複合ヤーン。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、
前記コアファイバー(21)の少なくとも一部は、前記コアファイバーの束として、又はコアヤーン(20)として提供されることを特徴とする複合ヤーン。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の前記ヤーン(1)を含むことを特徴とする布(100)又は物品(101)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の前記ヤーン(1))の製法であって、
ポリマー材料で作られた複数のコアファイバー(21)のコア(2)を提供するステップと、
複数の短繊維(3a)を提供するステップと、
前記コアファイバー(21)と前記短繊維(3a)を一体に紡糸して、前記短繊維を含むシース(3)で前記コア(2)を完全に覆う紡糸ステップとを含み、
提供される前記コアファイバーは、非エラストマーファイバーを含み、前記コアはさらにエラストマー長繊維(22)を含み、
前記コアファイバー(21)の量は、前記ヤーン(1)の総重量の少なくとも35重量%~90重量%の範囲であり、前記コアファイバー(21)は、仮撚加工されていないファイバーであり、前記コアファイバー(21)の少なくとも一部はFDYヤーンであり、
前記FDYヤーンおよび前記エラストマー長繊維(22)は、それらを制限手段(51)に通して供給することによって、一体に押し付けられ、前記FDYヤーンと前記エラストマー長繊維は、複数の点で接合され、一緒に結合され、互いに付着しており、
前記コア(2)と前記シース(3)は一体に紡糸され、前記コア(2)が前記シースで完全に覆われており、
前記複合ヤーンは、ENISO2062に従って測定して、5~160cN/texの引張強度を有することを特徴とするヤーンの製法。
【請求項11】
請求項10において、
前記コアファイバー(21)及び前記エラストマー長繊維(22)は連続長繊維であり、張力をかけられた前記コアファイバー長繊維(21)の共押出しによって、前記紡糸ステップの前に一体に組み合わされることを特徴とするヤーンの製法。
【請求項12】
請求項10又は11において、
少なくとも前記コアファイバー(21)は、14デニール以下の線密度を有することを特徴とするヤーンの製法。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項において、
前記コア内の連続した前記コアファイバー(21)の数は、少なくとも12であることを特徴とするヤーンの製法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項において、
前記紡糸ステップでは、前記ヤーンは、1.2~5.5の範囲の撚り倍数を備えており、
前記撚り倍数は、次の式から取得され、
撚り/インチ=撚り倍数×√イングリッシュコットンナンバー
前記撚り/インチの値は、次の式で計算されることを特徴とするヤーンの製法。
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
【請求項15】
請求項10~14のいずれか1項において、
前記コア(2)と前記シース(3)は、リング精紡機によって結合され、
前記リング精紡機は、前記シース用の1つ又は複数の粗糸の供給源を備えていることを特徴とするヤーンの製法。
【請求項16】
請求項15において、
前記リング精紡機は、前記粗糸に張力を生じさせる第1のガイドと、前記第1のガイドに対して位置をずらして設けられた第2のガイドとを備えており、前記位置のずれを使用して前記コアを常に前記ヤーンの中心に保つことを特徴とするヤーンの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアファイバー及びこのコアファイバーを覆うシースファイバーを有する複合ヤーンに関する。より詳細には、本発明は、コアファイバーとシースファイバーを有し、コアファイバーがポリマー材料の繊維を含む複合ヤーンに関する。コアファイバーは、弾性長繊維を含んでいても良く、ポリマー材料からなっていても良い。本発明のヤーンは、特にデニム衣服を含む、カジュアル、スポーツ関係及び快適性に富む衣服の製造に適している。
【背景技術】
【0002】
本発明技術分野において、ポリマー長繊維を含むコアを有するヤーンが知られている。特許文献1は、最も好ましくはスパンデックス及び/又はラストール長繊維である、少なくとも1種の弾性長繊維を有するコアと、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン及びこれらの混合物の仮撚加工されたポリマー又はコポリマーからなる非弾性の長繊維とを含むヤーンを開示している。特許文献1によると、仮撚加工制御された長繊維が、弾性長繊維に緩く巻き付けられている。
【0003】
本出願人の名義の出願である特許文献2は、複合伸縮性コア及び綿糸シースを有する伸縮性ヤーンを開示している。この伸縮性コアは、それぞれが異なる弾性を有する第1及び第2の長繊維を含み、第1の長繊維はエラストマーであり、第2の長繊維は、弾性が限定されたポリエステル系(共)重合体である。この第2のポリエステル系(共)重合体ファイバーは、前記伸縮性コアの60~90重量%(w/w)の範囲にある。
【0004】
特許文献3は、二成分ポリエステル長繊維及びエラストマーファイバーを有するコアスパンヤーンを開示している。弾性コアがグリニング(grinning)しないように、ポリエステル長繊維には、ポリ(トリメチレンテレフタレート)とポリ(エチレンテレフタレート)又はポリ(テトラメチレンテレフタレート)のいずれかが含まれ、エラストマーファイバーは伸縮性繊維であるスパンデックスで構成されている。二成分ポリエステル長繊維は、1.01~1.30の比率で引き伸ばされ、エラストマーファイバーは、元の長さの2.50~4.50倍まで引き伸ばされる。
特許文献4は、仮撚加工されたモノフィラメントコア及び短繊維シースを有するコアヤーンを開示している。このコアは、2~20デニールの繊度を有し、短繊維で撚られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】EP 3208371A1
【文献】US 2013/0260129A1
【文献】US 2008/0318485A1
【文献】US 2008/0299855A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複合弾性コアを有する既知のヤーン、特に伸縮性ヤーンの問題は、コアがファイバーのシースから透けて見えるようになること、すなわちコアが表面化するのを避けるために、最終ヤーンのコアの成分の量を少なくしなければならないことである。この要求を満たすために、大量の短繊維、特に綿糸が使用され、コストがかかる。関連する問題は、シースに使用されるファイバーの量が多いと、一定数の長いファイバーを使用する必要があり、そのため高価になるということである。
また、高度に撚られた短繊維を使用すると、ヤーンが「巻き毛」になり、凹凸が生じる可能性がある。そのため、このヤーンから得られた布の見た目が悪くなる。
【0007】
公知の技術のヤーンに関する別の問題は、綿花栽培は大量の水が必要であり、また綿を染色するのに大量の水及びエネルギーが必要であるため、綿の使用は環境に優しいものではないことである。
【0008】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、優れた外観を有し、かつ必要とされる優れた弾力性のある合成コアを有するヤーン及び布を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、ファイバーシース、好ましくは綿糸のシースにより完全に覆われる合成コアを有するヤーン、及びそのヤーンを使用する布及び衣服を提供することであり、特に布又は衣服の使用中又は使用後にコアがファイバーを通して表面から見えることのないヤーン、及びそのヤーンを使用する布及び衣服を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、環境に優しく、安価に製造できるヤーンを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、柔らかな手触りがあり、使用者にとって快適なヤーン及び布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、本願の特許請求の範囲の各請求項に記載された本発明によって達成される。
【0013】
特に、本発明は、独立請求項に記載されたヤーン、物品、及び方法に関する。また、本発明の好ましい態様は、従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明によれば、ヤーンは、少なくとも1つ、好ましくは複数のファイバーを含む合成コアを有する。前記ファイバーは、好ましくは、仮撚加工されていない長繊維であり、ヤーンの総重量に対して少なくとも35重量%の量だけ存在する。好ましい実施形態を、従属請求項に記載してある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、上記で定義されたヤーンを含む布、特にデニム織物と、この布を含む衣服又は物品を提供することである。
【0016】
本発明はまた、請求項15に記載の伸縮性ヤーンを製造する方法にも関する。この方法は、ポリマーコアファイバー、好ましくは仮撚加工されていない長繊維のコアを提供するステップと、複数の短繊維を提供するステップと、前記長繊維と前記短繊維を一体に紡糸して、前記コアを前記ファイバーのシースで覆うステップを含み、前記コア及びシースファイバーを紡糸することによる、前記コア内の前記コアファイバーの量は、前記ヤーンの総重量の少なくとも35重量%である。
一実施形態では、前記紡績ヤーンにおいて、前記シース中の前記ファイバーの少なくとも一部は、前記コアファイバーによって保持されている。
【0017】
前記コアファイバーは、好ましくは、非エラストマーファイバーからなる。エラストマー長繊維を前記コアに追加し、前記非エラストマーコアファイバーと組み合わせることもできる。従って、前記コアファイバーの上記の比率は、前記コア中に存在する前記非エラストマーファイバーのみを指している。言い換えれば、前記コアに存在する前記非エラストマーファイバーは、前記ヤーンの総重量の少なくとも35重量%である。
【0018】
その結果、可能な実施形態として、前記コアは、非エラストマーコアファイバーと、エラストマー長繊維を含んでいても良い。
【0019】
言い換えれば、前記「コアファイバー」は、通常、非エラストマーファイバー(通常、連続ファイバー)からなり、非エラストマーファイバーは、依然として弾性特性を有している。結果として、前記複合ヤーンの前記コアは、弾性特性を有する長繊維を含むことができ、これは、前記コアファイバーの一部である非エラストマー長繊維(すなわち、連続コアファイバー)、並びに前記エラストマー長繊維でも良い。
【0020】
「弾性特性を有する長繊維」という言葉は、エラスタン又はスパンデックスの長繊維等のエラストマー長繊維、及び、弾性非エラストマー長繊維(例えば、T400長繊維)を意味する。適切なエラストマー長繊維は、200%より高く、好ましくは400%より高く、典型的には200%~600%の、破断点伸びを有する。このエラストマー長繊維の量は、ヤーンの総重量の1%~20%、より好ましくは1.5%~10%の範囲が良い。弾性特性を有する複数の長繊維を、一体に組み合わせることもできる。好ましいエラストマー長繊維は、エラスタン、ポリウレタン尿素系ファイバー、ラストール、ダウXLA(Dow XLA:登録商標)である。
弾性特性を有する長繊維は、非エラストマー長繊維でも良く、好ましくは、15~50%の破断点伸びを有するものが良い。弾性非エラストマー長繊維に好ましいファイバーは、T400(ポリエステルのコポリマー、弾性マルチエステル)、PBTファイバー、及び、PBT-PTT、PET-PTT、PET-PTMT等の他の接合ヤーンである。弾性特性を有する長繊維の総量は、複合ヤーンの重量の1~60%、好ましくは10~45%である。
【0021】
上記の非エラストマー長繊維の破断点伸びは、DIN ISO 2062で測定でき、エラストマー長繊維については、国際標準のBISFA、露出したエラスタンヤーンの試験方法、第6章によりテストできる。非エラストマー長繊維の回復性は、少なくとも80%、できればファイバーの93%、最も好ましくは少なくとも96%又は97%以上である。この回復性は、0.2cN/tex(センチニュートンテックス)の引張強度と3%の伸びにおける、DIN 53835パート3で測定される。
【0022】
本発明で使用するのに適したエラストマー長繊維は、「ライクラ」(Lycra)という商標で市販されており、通常は、複数の長繊維が押し出しにより一体化された1つの束の形で市販されている。好ましい1つの実施形態では、前記エラストマー長繊維は、分離された複数の長繊維の束として提供されている。このタイプのエラストマー長繊維の詳細は、本出願人の名前で出願された同時係属中の欧州特許出願EP19169983.4に開示されている。
簡単に言えば、ある態様においては、1つの複合ヤーンは、少なくとも2つの「単一の弾性長繊維」を含んでいる。この「単一の弾性長繊維」という定義は、それらが、連続的に接続された長繊維の同じ弾性束の一部ではないことを意味している。実際、弾性ファイバー要素の場合、ある量の複数の長繊維を一体に束ねて、所望の厚さに生成できることが知られている。これは、例えば、1つのスパンデックスヤーンは、長繊維の束であり、このスパンデックスヤーンは、それらの表面の自然な粘着性のために互いに接着する複数のより小さな個々の長繊維で構成できるものであることが知られているからである。
一方、「単一の弾性長繊維」とは、1つのモノフィラメントヤーンを意味する。本発明の可能な態様によれば、複数の「単一の弾性長繊維」は、まず束に包装され、次に、互いに疎結合されて、ヤーンを製造するための後続のプロセスステップにおいて分離されている(そして「単一の長繊維」になる)こととなる。
【0023】
好ましくは、コアファイバーは、仮撚加工されていない長繊維であり、通常は平坦である。この「平坦」とは、要求に応じて選択することができるその断面ではなく、長繊維の仮撚加工されていない状態を指している。言い換えれば、本発明のヤーンのコアは、仮撚加工された長繊維を全く含んでいないか、又は実質的に含んでいない。
【0024】
「紡糸」又は「撚り」という言葉で、コアを短繊維のシースと組み合わせる既知のプロセスがある。このプロセスは、通常、コアファイバーをスライバー又はシースファイバーの束の上に又は隣接して配置し、コアをファイバーで撚ることを含んでいる。適切な撚り方法には、例えば、リング精紡機がある。従って、本発明のコア及びシースは、例えば、リング精紡機により、一体に紡糸することができる。
【0025】
コアファイバーの代表的な材料は、ポリエステルのポリマー及びコポリマーであり、すなわち、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PTMT(ポリテトラメチレンテレフタレート)、又は、ポリエステルのコポリマーであるPTT/PET、PTT/PBT、PTMT/PET等である。
他の適切なポリマーは、ポリアミド、すなわち、PA6(ポリアミド)、PA6,6等のナイロン又はナイロンのコポリマー、並びにアクリルポリマー及びポリアクリロニトリルである。さらなるエラストマー長繊維を備える実施形態では、コアファイバーは、コアの90~98重量%の範囲にある。コアファイバーに好ましい合成ファイバーは、PP、PET、PA6、及びPA6,6である。ただし、上記のリストに明示的に記載されていないコアファイバーに他の合成材料を使用することを除外するものではない。
【0026】
最終ヤーンにシースを提供するために使用される適切な短繊維は、当技術分野で知られており、例えば、綿、レーヨンとそのバリエーション(モーダル、リヨセル、キュプロ、ビスコース)、リネン、麻、ラミー、カポック、ウール、シルク、カシミア等がある。
【0027】
コアファイバーは、連続ファイバー(すなわち長繊維)、及び、例えば、長繊維を切断することによって得られる短繊維である。この短繊維は、連続した長繊維と混合することができる。
好ましいコアファイバーは、例えば、生糸(FDY: Fully Drawn Yarns)として知られる長繊維の束であり、この公知のFDYファイバーは、例えば、長繊維を製造するための機械の紡糸口金から出るポリマー長繊維を引くことによって得られる。FDYファイバーに好ましいポリマーは、上記の(共重合)ポリエステル及びナイロンである。
【0028】
FDYヤーンを得るための代表的なプロセスは、以下の通りである。
原材料(通常はPETチップ)が、乾燥、溶融、濾過された後、紡糸マニホールドに分配される。より詳細には、FDYヤーンを製造するために、PETチップが乾燥機に供給され、そこで水分が0.30%から0.0020%に低減される。
この後、チップは溶融され、ポリマーフィルターで濾過され、紡糸口金を通して押し出される。押出機は、(通常はマイクロプロセッサーを使用して)制御された温度で電気的に加熱される。押出機のスクリュー速度も、非常に正確に制御及び監視され、均一な品質が保証される。
押し出された長繊維は、正確な温度制御を備える急冷チャンバー内で濾過された空気によって冷却される。均一性を確保するために、乱流のない空気が使用される。
ヤーンの静電気を防ぐために、高品質の静電気防止潤滑油が塗布される。ヤーンは、残留伸びを維持するために、加熱ローラー(ゴデット)によって受け取られる。
エアパンチは、交絡ノズルによって一定の間隔で実行することができ、ヤーンは最終的に自動巻取機に巻かれる。紡糸ステップでは、高度な方向性のある長繊維巻きと、中程度の結晶化度により延伸効果を得ることができる。
【0029】
一般に、平らな長繊維は、仮撚加工されていない長繊維として定義することができる。本発明で使用される平坦な長繊維は、紡糸(又は撚り)ステップ中に仮撚りを受けるので、本発明のヤーンから仮撚りが除去されると、完全な平坦ではなくなる。平らな長繊維には仮撚りがないため、仮撚加工されていない長繊維として識別できる。
【0030】
一実施形態では、コアファイバーは、14デニール以下、好ましくは10デニール以下の線密度を有し、より好ましくは、線密度は、0.2~9.9デニールの範囲にある。
別の態様によれば、コアファイバーは連続的である。すなわち、それらは長繊維のコアであり、コア内の連続コアファイバー(長繊維のコア)の数は、少なくとも12、より好ましくは少なくとも15(長繊維/ヤーン)である。この数には、コア内に存在する可能性のあるエラストマー長繊維は含まれていない。
【0031】
本発明の実施形態では、コアファイバーは連続ファイバー、すなわち長繊維であり、連続コアファイバーとエラストマー長繊維は、既知の方法で、好ましくは混合、撚り、又は共押出しによって、一体に組み合わされる。これらの技術は、当技術分野で知られている。エラストマー長繊維は、連続コアファイバーと組み合わされる前に、引き伸ばすか又は伸長される。一実施形態では、エラストマー長繊維の延伸比は、1.5~5.5、より好ましくは2.5~5.5の範囲にある。
好ましい接続技術は、共押出しであり、同時供給としても知られている。長繊維の束の共押出し(同時供給)は、ファイバーが一体に圧縮される程度に制限手段を介して、長繊維の2つ(又はそれ以上)の束を(張力をかけた状態で)強制的に押出す(一緒に供給する)ことによって得られる。適切な制限手段は、例えば、「V」字型のロールであり、ファイバーはロールに供給され、一緒に供給されて「V」の底に押し込まれ、そこで一体に圧縮され、結合されたままになる。共押出し長繊維は、好ましくは、共押出しステップの直後に、シースのファイバーと共に紡糸される。
【0032】
本発明の実施形態では、コアファイバー(エラストマーファイバーを除く)の量は、ヤーン、すなわちシースを含むヤーン全体の総重量の少なくとも35重量%であり、ヤーン全体の重量の90%という多量でも良い。
コアファイバーの量は、好ましくは最終ヤーンの少なくとも37重量%又は38重量%である。コアファイバーの量は、好ましくは最終ヤーンの35~73重量%の範囲、より好ましくは、最終ヤーンの重量の37~53重量%、又は、最終ヤーンの重量の38~49重量%の範囲である。
【0033】
本発明による解決策の第1の利点は、ヤーンを低い撚り倍数にできることである。
代表的な実施形態によれば、ヤーンの撚りレベルを、劇的に低減させることができ、1.5~5.5、好ましくは2.0~3.5の撚り倍数を使用することができる。撚り倍数は、2.2~3.3であることが好ましく、撚り倍数はさらに、2.2~2.9であることが、より好ましい。この低いレベルの撚りにより、色が鮮やかな優れた光反射を備える非常に柔らかい布が得られる。
この撚り倍数は、次の式から取得できる。
撚り/インチ=撚り倍数×√英国式綿番手
ここで、1インチ(25.4mm)あたりの撚りの値は、次の式で計算できる。
撚り/インチ=スピンドルの毎分回転数/糸送り速度
【0034】
低撚糸とその製造方法の詳細については、本願の出願人の名義の欧州特許出願EP3064623(A2)を参照されたい。この出願における教示は、参照のために、本願の明細書に組み込まれるものとする。
【0035】
低い撚りを使用することにより、以下の比較例に示すように、本発明は、従来技術に対して、より粗いヤーン、すなわち従来技術に対して、より大きな寸法のヤーンを使用することが可能である。
【0036】
比較のために、3本のヤーンを用意した。ヤーンAは本発明によるヤーンであり、一方、ヤーンB及びCは、従来技術による100%リング紡糸綿ヤーンである。各ヤーンのデータは、表1の通りである。
【0037】
【表1】

【0038】
表からわかるように、本発明によるヤーンAは、ヤーンBよりも大きな直径を有する。ヤーンBは、ヤーンAと同じ番手(すなわち、14/1 NE)の一般的な100%綿糸である。ヤーンAの直径は、ヤーンCの直径に近い。つまり、ヤーンCは、ヤーンAよりも重い一般的な100%綿糸である(14/1 NE 対 8/1 NE)。
各ヤーンの直径は、ウスターテスター4(USTER TESTER4)により測定した。
【0039】
本発明により、従来技術に勝る幾つかのさらなる利点を提供することができる。
第1の利点は、従来技術による同様の対応するヤーンよりも、ヤーンの綿糸の量が少ないことである。同時に、本発明のヤーンは、非常に良好な外観を有し、コアに使用されるファイバーの量が多いにも拘わらず、実質的にコアファイバーが表面から見えないことである。さらに、従来の技術で可能な割合よりも高い割合の、短繊維をシースで使用することが可能であることが分かった。
【0040】
本発明のヤーンに使用される綿の量は、従来技術による対応するヤーンに必要な綿の量よりも、約30~40%少ない。綿糸の量の削減に伴う複数の利点の第1として、ヤーン製造プロセスに環境持続可能性がもたらされる。
【0041】
本発明の一態様によれば、シースは綿100%でも良い。シースファイバーの10%~90%が綿糸である他の実施形態とすることも可能である。シースの残りの部分は、他の市販のファイバーを含んでいても良い。綿糸は、通常の綿糸、消費前の綿糸、又は消費後の綿糸でも良い。これにより、水を節約し、ヤーン生産の持続可能性を高めることができる。
【0042】
すなわち、本発明によると、シースファイバー(例えば、綿)の量をより少なくすることができる。必要な綿の量が少ないので、綿の中の水を節約できる。従って、綿花栽培で使用される水が少なくなり、(染色する綿又は同様のシース繊維の量が少ないため)染色プロセスでの染料の使用量も減る。さらに、より短い時間及び/又はより低い温度での乾燥が可能になる。これは、従来のほぼ75~90%の綿を含むヤーンを乾燥させるプロセスと比較して、プロセスのコストを低減できることを意味する。
【0043】
前述のように、綿とは異なる他のファイバーを、シースに使用することもできる。
一例として、人工ファイバー(好ましくはセルロース系)、例えば、レーヨンと、そのバリエーション(モーダル、リヨセル、キュプロ、ビスコース)を使用することができる。リネン、麻、ラミー、カポック等の天然ファイバーも使用できる。考えられる方策として、羊毛、絹、カシミア等の動物ファイバーも使用できる。
【0044】
本発明によるヤーンの乾燥プロセスで使用されるエネルギーの量は少ない。
【0045】
本発明はまた、製造ステップにおいて、以下の利点をもたらす。
【0046】
ヤーン製造のボールラッピングステップでは、布のロープの破断率が、10メートルあたり10~20%減少する可能性がある。さらに、付着したパイルの量は、通常5~10%減少する。ロープ染色に送られる折れ端の数は、5%減少する可能性がある。
【0047】
ロープ染色ステップでは、布の染色に使用する水の量を、30~45体積%削減できる。同様に、ヤーンの吸水量が少ないため、ヤーンの種類にもよるが、使用する薬品や染料の量が、5~35重量%削減される。
【0048】
本発明のヤーンは、既知の、同じ番手で同じ材料から作られ、かつより高い割合の綿を有する対応するヤーンと比較して、より高い破断強度を有する。そのため、リビームにおける生産量(メートル)は10~35%増加する可能性がある。
ヤーン強度が高い結果として、10破断率(つまり、100万メートルのヤーンの生産で考えられる破断率)は、5~25%減少する可能性がある。ヤーン同士の摩擦も減少し、リード領域での綿基準での破損が15~30%減少する。さらに、ヤーン切れが減少するため、ロストエンドの問題が軽減される。
【0049】
サイジング中、ヤーンの性質により、サイジングエリアで発生する可能性のあるヤーン切れを5~25%低減できる。破損回数が減るため、織りセクションに対する欠けた先端の数を10~20%減らすことができる。サイジングステップに使用される化学薬品の量も、8~35%削減できる。ヤーンの乾燥に使用する蒸気の消費量を、30~50%削減できる。飛散するファイバーが減少するため、故障スコアは、5~8%減少する可能性がある。
【0050】
特に、好ましい態様によれば、本発明の複合コアヤーンは、このヤーンで得られる布に、柔らかな感触及び「面」を提供する毛羽立ちを備えている。
【0051】
ヤーンの毛羽立ちを測定するための可能な方法は、ASTM5647規格に定められている。複合ヤーンのASTM5647規格による毛羽立ち指数は、好ましくは1~20、より好ましくは5~20である。
【0052】
本発明による可能な態様として、複合ヤーンの引張強度は、5~160cN/tex、好ましくは10~25cN/tex、より好ましくは23cN/tex未満、さらにより好ましくは20cN/tex未満である。この引張強度は、EN ISO2062の規格に従って測定される。
【0053】
複合ヤーンの破断点伸びは、EN ISO 2062で測定して、3%~50%、より好ましくは15%~35%である。
【0054】
複合ヤーンの番手は、好ましくはNE 3/1~NE 100/1、より好ましくはNE 5/1~NE 80/1である。
【0055】
コアの総番手は、好ましくは5デニール~1000デニール、より好ましくは50デニール~300デニールである。
【0056】
コアの破断点伸びは、5%~160%、より好ましくは10%~50%である。
【0057】
本発明のヤーンは、上記の各特徴の組み合わせとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の複合ヤーンの第1の実施形態の概略図である。
図2】本発明の複合ヤーンの別の実施形態の概略図である。
図3】「共押出し」方式の概略図である。
図4】本発明による複合ヤーンを含む織物で得られた物品の概略図である。
図4A図4の概略拡大詳細である。
図5】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、1つの可能な実施形態を示す図である。
図6】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、別の実施形態を示す図である。
図7】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、さらに別の実施形態を示す図である。
図8】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、さらに別の実施形態を示す図である。
図9】本発明による代表的な複合ヤーンを製造する装置の、さらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、非限定的な図面を参照して、本発明を、さらに詳細に説明する。
本発明の1つの実施形態による複合ヤーン1は、コア2とシース3を有し、このシースは通常は短繊維3aを含んでいる。このコア2は、少なくとも1つ、好ましくは複数の、コアファイバー21を含んでいる。このコアファイバー21は、好ましくは、長繊維である。すなわち、例えば、図1に概略的に示すような、連続したエンドレスファイバーである。
本発明の他の実施形態では、コアファイバー21は、例えば、長繊維を切断して得られる短繊維を含んでいても良い(又は短繊維のみからなるものでも良い)。一つの実施形態によれば、コアファイバー21は、連続長繊維と短繊維の束の両方を含んでいても良い。
【0060】
コアファイバー21の線密度は、好ましくは14デニール以下、より好ましくは10デニール以下、さらにより好ましくは0.2~8デニールである。1つの可能な実施形態によれば、コアファイバー21のデニールは、2~8デニールである。
【0061】
コアファイバー21の好ましい材料は、ポリエステルのポリマー及びコポリマーである。他の適切なポリマーは、ポリアミドである。コアファイバー21の代表的な材料は、ポリエステルのポリマー及びコポリマーである。すなわち、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PTMT(ポリテトラメチレンテレフタレート)、又は、ポリエステルのコポリマーであるPTT/PET、PTT/PBT、PTMT/PETである。
代表的なポリアミド(すなわちナイロン)は、PA6(ポリアミド)、PA6,6又はナイロンのコポリマーである。材料として、またアクリルポリマー及びポリアクリロニトリルも挙げられる。コアファイバーは、通常、非エラストマーである。すなわち、それらは、エラストマーヤーンを含まない。
【0062】
複合ヤーン1にシース3を提供するために使用される適切な短繊維3aは、当技術分野で知られている。例えば、綿、レーヨンとその市販のバリエーション(モーダル、キュプロ、リヨセル、ビスコサ)、リネン、ウール、麻、ラミー、カポック、シルク、カシミア等がある。
【0063】
コアファイバー21の量は、複合ヤーン1の総重量の少なくとも35重量%である。本発明の実施形態では、コアファイバー21の量は、複合ヤーン1の総重量の90重量%にもなることがある。好ましくは、コアファイバー21の量は、最終複合ヤーンの少なくとも37重量%又は38重量%である。好ましくは、コアファイバーの量は、最終ヤーンの35重量%~73重量%の範囲にあり、より好ましくは、コアは、ヤーンの重量の37重量%~53重量%、又は38重量%~49重量%の範囲である。
【0064】
図1に概略的に示される実施形態では、コアファイバーの少なくとも一部は、ファイバーの束として、又はコアヤーン20、例えば、FDYヤーンとして提供することもできる。
他の実施形態、例えば、コア2がファイバー及び/又はヤーン20の2つ以上の束を含む実施形態も可能である。さらに、コアファイバー21は、FDYヤーンの一部ではない連続コアファイバーの一般的な束でも良い。好ましくは、一態様によれば、コア2は、少なくとも1つ、より好ましくは少なくとも12、より好ましくは少なくとも15の連続コアファイバー21を含んでいる。連続コアファイバーの数(すなわち、長繊維のコアの数)もまた、好ましくは1160以下である。
【0065】
コアの総番手は、好ましくは5~1000デニール、より好ましくは50~300デニールである。各コアファイバー21の破断時の伸びは、好ましくは15~50%、コアヤーンの破断点伸びは、好ましくは5%~160%、より好ましくは10%~50%である。
【0066】
本発明の可能な実施形態によれば、コア2(従って、複合ヤーン1)は、エラストマーファイバーを含まない。言い換えれば、コア2(従って、複合ヤーン1)は、本質的に非エラストマーファイバーからなっている。これらのファイバーの幾つかは、弾力性を有していても良い。
【0067】
別の実施形態によれば、コア2は、図2に概略的に示すように、少なくとも1つのエラストマー長繊維22(点線で示されている)を含んでいる。可能な実施形態によれば、複合ヤーン1のコア2は、少なくとも2つの単一の弾性長繊維22、すなわち、少なくとも2つの異なるモノフィラメントヤーンを含んでいる。
【0068】
前述のように、コアファイバー21の上記の比率(「少なくとも35%」、「少なくとも37%又は38%」、「35%から73%の範囲」等)は、コア2に存在する非エラストマーファイバーを指す。言い換えると、コア2の非エラストマーファイバー(すなわち、コアファイバー21)は、複合ヤーンの総重量の少なくとも35%である。好ましい範囲は、前に述べた通りである(「少なくとも37%又は38%」、「35%~73の範囲」等)。
【0069】
本発明の実施形態では、連続コアファイバー21及びエラストマー長繊維22は、複数の点で互いに接続されている。可能な実施形態では、連続コアファイバー21及びエラストマー長繊維22は、混合、撚り、又は共押出しによって接続される。これらの技術は当技術分野で知られている。
【0070】
上記のことを考慮して、コア2は、弾性特性を有する異なる長繊維を含んでいても良い。弾性特性を有する長繊維は、弾性の非エラストマーコアファイバー21であり、エラストマー長繊維22でも良い。
【0071】
弾性特性を有する長繊維の総番手は、好ましくは5~500デニール、より好ましくは20~240デニールの範囲である。
【0072】
図3は、ファイバー又はコアヤーン20(例えば、FDYヤーン)の束、及びエラストマー長繊維22の「共押出し」又は「同時供給」方法を概略的に示す図である。ファイバー又はコアヤーン20の束、及びエラストマー長繊維22は、制限手段51を介して供給され(好ましくは張力がかけられた状態で)、そこでそれらは一体に押し付けられ、制限手段を出た後も、一体に接続されたままになる程度に互いに接続される。
より詳細には、図3は、「V」字型の制限手段51を有するロール50を示している。ファイバー又はコアヤーン20の束及びエラストマー長繊維22は、ロール50に供給され、「V」字型の制限手段51の底部に押し込まれ、そこでそれらは互いに接続される。すなわち、ファイバー又はコアヤーン20の束及びエラストマー長繊維22は、少なくとも複数の点で接続され、その結果、それらは、シース3によって覆われた実質的に完成したコア2としてロール50から出る。

【0073】
前に述べたように、本発明の複合ヤーン1は、通常は柔らかい。柔らかな感触を与えるのに役立つ可能性のある要因は、ヤーンの毛羽立ちである可能性がある。
【0074】
ヤーンの毛羽立ちを測定するための可能な方法は、ASTM 5647規格に定められている。複合ヤーン1のASTM5647規格による毛羽立ち指数は、好ましくは1~20、より好ましくは5~20である。知られているように、毛羽立ち指数Hは、ヤーンの長さ1cmの測定フィールド内に突き出ているファイバーの全長に対応する。
【0075】
本発明の可能な1つの様相によると、複合ヤーン1の引張強度は、5~160cN/tex、より好ましくは10~25cN/tex、さらに好ましくは23cN/tex未満、さらにより好ましくは20cN/tex未満である。引張強度は、ENISO2062に従って測定される。
【0076】
複合ヤーン1の破断点伸びは、EN ISO 2062による測定で、3%~50%、より好ましくは15%~35%である。
【0077】
複合ヤーン1の番手は、好ましくはNE 3/1~NE 100/1、より好ましくはNE 5/1~NE 80/1である。
【0078】
好ましい実施形態では、複合ヤーン1は、リング精紡機により得られる。特に好ましい実施形態は、複合ヤーン1が、単一の粗糸(通常は綿粗糸)に結合されたコア2によって得られるものである。これは、コア2のセンタリングが良くなり(すなわち、グリニングの低減)、従って、より柔らかく、(外観の点で)より魅力的なヤーンを提供できる。ただし、後で詳しく説明するように、2つ以上の異なる粗糸を使用することもできる。
【0079】
図5及び図6は、本発明による代表的な複合ヤーン1を製造するためのリング精紡装置の一実施形態を示している。
【0080】
コア2をボビン6から取り出し、コアヤーン2を真っ直ぐに整列させるために、ヤーンに低い予張力を与えるのに使用される2つの予張力バー10の間に案内する。これは、コア2が、2つの異なる長繊維を混合することによって得られるものである場合に、非常に役立つ。
コア2を、予張力バー10から、重り12が配置されている2つの駆動ローラー11へ供給する。このコア2は、ローラー11に対するコアヤーンの自由な動きを回避するために、駆動ローラーと重り12との間に案内される。
なお、ローラー11と重り12との組み合わせの代わりに、コアヤーン2に制御された速度を与えるための他の適切な手段、例えば、当技術分野で知られているドラフトローラー等の手段を使用することもできる。
【0081】
上に開示された構成の利点は、主に、同じ装置を使用して、標準的なエラスタンコアヤーンを準備できるということにある。この場合、エラスタンファイバーは、重り12の代わりに、ローラー11上に配置されたパッケージに装填される。
【0082】
第1の引き伸ばし装置(11、12)から、コア2(好ましくは平坦なヤーン、例えば長繊維の束又はヤーン20)は、ローリングガイド13に導かれ、そこから、綿粗糸8用の複数のドラフトローラーの最前線のカップルである、引き伸ばしローラー14に導かれる。この引き伸ばしローラー14自体は、当技術分野で知られている。
【0083】
綿粗糸8は、スプール7から、予張力バー(ローラー)10、張力ローラー11を経て、第1のガイド15及び第2のガイド16に案内される。
図6に示すように、ガイド15は、粗糸に張力を生じさせ、粗糸を固定位置に保ち、粗糸が自由に動くことを回避するために、第2のガイド16に対し、装置の前部に対してずらされている。
【0084】
ガイド16から、綿粗糸8が引き伸ばしローラー14に送られる。この引き伸ばしローラー14は、コア2と粗糸8に共通である。
【0085】
本発明によれば、コア2は、綿粗糸と結合される前に張力がかけられ、この張力又は伸びは、ローラー11とローラー14との速度差、すなわちローラー11と最終段の引き伸ばしローラー14との速度差によって得られる。最終段のローラー14は、複合コア2に延伸比を与える。
【0086】
この延伸比は、ローラー14の速度とローラー11の速度の比として計算される。なお、これらの速度は、各ローラーの表面上の角速度である。
【0087】
予張力バー10も、必要な延伸比の取得に寄与することに留意するべきである。追加の予張力バー10は、コア2の整列及びわずかな張力を提供する。従って、さらなるストレッチステップを助けるので、延伸比をさらに増加させるのに有用である。これにより、コア2が、非常に高い精度で、最終ヤーン1の中心に保持されるという効果が得られる。
【0088】
追加のガイド15と、このガイドの第2のガイド16に対する位置のずれを利用することにより、綿粗糸を常に同じ位置に送り、長期間の生産中の、綿粗糸の移動を防ぐこともできる。綿粗糸8の位置を維持するためのより良い制御とコア2の高張力の組み合わせにより、コア2を常にヤーン1の中心に保ち、コアを短繊維3で完全に覆うことができる。
【0089】
引き伸ばしローラー14から出る最終ヤーン1の2つの部分は、ガイド17を経て紡績装置18に供給され、一体に紡糸される。この紡績装置18は、当技術分野でそれ自体が知られており、一つの実施形態では、リング、トラベラー、及びスピンドルを含んでいる。
【0090】
シース3の中心にコア2を有するヤーン1を製造するいかなる紡績方法も、本発明の範囲内である。この方法には、例えば、カバードヤーンシステム(JCBT、Menegato、OMM、RATT1、RPR、Jschikawa等の機械を使用)、又は、撚り機(Hamel、Volkmanの2for1、COGNETEX又はZinserのSiroSpin等の機械の使用)がある。
【0091】
生産された複合ヤーンは、特に、横糸として、伸縮性のあるデニム織物や衣服の生産に使用できる。デニムを製造する機械及び方法は、当技術分野で周知であり、一例として、モリソン繊維機械又はスルザー機械又はそれらの改造機械を使用し、優れた弾性及び優れた伸縮回復性を備えるデニム織物を製造することができる。
【0092】
図7及び図8は、本発明による複合ヤーン1の製造のための、他の可能な装置200及び製造方法の例を示す。これらの実施形態では、シース3は、2つの異なる粗糸から作製され、それらは、それらの経路の一部について別々に処理され、その後、組み合わされてシースを形成する。同様の方法は、当技術分野では「サイロ紡糸」として知られている。より多くの粗糸を伴うさらなる実施形態も可能である。
【0093】
コア2は、ポリエステル長繊維21及びエラストマー長繊維22としてのエラスタンを含んでいる。ポリエステル21は、ボビン201から供給され、第1の引き伸ばしが加えられる管202を通過する。管202の出口のローラー203によって、さらなる引き伸ばしを加えることができる。
【0094】
エラスタン22はボビン204から供給され、ローラー205に導かれ、そこでポリエステル21と組み合わされてコア2を形成する。一例として、ローラー205は、図2に示されている種類のものでも良い。
【0095】
シース3は、スプール206a、206bから供給される2つの綿粗糸8a、8bによって提供される。綿粗糸8a、8bは、(図8によく示されているように)、例えば、1つ又は複数の引き伸ばしローラー207によって別々に引き伸ばされる。コアヤーン2は、引き伸ばしローラー208に導かれ、そこで綿粗糸8a、8bも供給される。
【0096】
コアヤーン2と綿粗糸8a、8bは、次に、紡績装置210によって紡糸される。好ましくは、紡績装置210の前に、コアヤーン2と粗糸8a、8bの束は、さらに、図7に拡大して示した好ましい実施形態に示される、引き伸ばし及び圧縮装置209を通過する。
この実施形態では、引き伸ばし及び圧縮装置209は、2つの圧縮ローラー209aを含み、その間で、コアヤーン2、綿粗糸8a、8bの束(図7の拡大詳細ではより明確にするために示されていない)がプレスされる。各圧縮ローラー209は、エンドレスベルト209bを駆動する。ベルト209bは、ベルト209b間のコアヤーン2、綿粗糸8a、8bの束用の通路209cを規定するために、互いに向き合っている。この種の引き伸ばし及び圧縮装置は、当技術分野では「ダブルエプロン引き伸ばしシステム」として知られている。
【0097】
一般に、コアヤーン2、綿粗糸8a、8bの束は、引き伸ばし及び圧縮装置209によって案内及びプレスされ(例えば、図示の実施形態のベルト209bによる通路209cにおいて)、コアヤーン2、綿粗糸8a、8bの束、すなわちコアヤーン2のポリエステル21及びエラスタン22、並びにシース3を形成する綿粗糸8a、8bのすべての構成要素に対して、均一なプレス及び引き伸ばしを与える。
【0098】
前と同じように、コアヤーン2は、最終ヤーン1のシース3に対して中心になるように引き伸ばされ、案内される。
【0099】
他の実施形態では、引き伸ばし及び圧縮装置209は省略されてもよい。
【0100】
さらに、可能な実施形態では、複合ヤーン1の単一の粗糸リング精紡を実行するために、2つの綿粗糸8a、8bのうちの1つが省略される(又はいかなる場合でも使用されない)。
【0101】
1つの例として、図9は、粗糸8用の単一の供給源であるスプール7を備え、圧縮装置209を備えていないリング精紡装置の実施形態を示している。他の要素は、図7及び図8のものと同様であり、同じ符号で示されている。
【0102】
可能な実施形態によれば、ブレーキ要素19は、図10に概略的に示されるように、コア2の引き伸ばし手段の上流側に配置することができる。例えば、ブレーキ要素19を、管202内に配置することができる。ブレーキ要素19は、コア2と接触する要素であり(例えば、コア2は、ブレーキ要素19の周りを回り、その側面に接触する)、その結果、コア2の速度を調整するように、コア2との摩擦によってコア2に力が加えられる。ブレーキ要素19(又はブレーキ要素19の一部)は、実質的に円筒形又は角柱形であり、これにより、コアがブレーキ要素19の側面に対してスライドすることができる。
【0103】
複合ヤーン1は、通常、布100を製造するために使用される。そのような布100は、物品101、好ましくは衣服を製造するために使用することもできる。
一例として、図4では、複合ヤーン1は、デニム織物100に使用されており、これは、次に、ズボンを製造するために使用されている。
【0104】
最終布100に、異なる処理を行うことができる。一実施形態では、布100をエンボス加工して立体的なデザインを得ることができる。
【0105】
布に化学処理を施してセルロースファイバー(又はその一部)を溶解し、布100上に、デザイン又はパターンを得ることができる。この技術は、当技術分野では「バーンアウト」又は「デボレ」として知られている。
【0106】
最終布100に対する特別の効果として、コアファイバーとシースファイバーとの間で異なる色を使用することができる。
【0107】
本発明について、以下の実施例を参照してさらに詳細に説明する。
【0108】
ここでは、以下のリングヤーンを用意した。
ヤーンA-縦糸:NE 14/1;64%コットン、36%FDYポリエステル長繊維(PES)
ヤーンB-横糸:NE 18/1;47%コットン、46%FDYポリエステル、7%エラスタン
これらのヤーンは、綿糸のスライバーでPES連続長繊維の束をリング精紡することによって準備された。
コアは、36本の長繊維で形成された150デニールの束であり、各長繊維は、4.5デニールの長繊維である。ファイバーシースを通るコアファイバーのグリニングは検出されなかった。
【実施例1】
【0109】
2つの織物X1及びX2は、本発明によるヤーンを使用して準備され、比較ヤーンXcompは、先行技術によるヤーンを使用して準備されたものである。サンプルの横糸の組成は、表の「ヤーン組成」の列に記載されている。縦糸の組成は、エラスタンが存在せず、代わりに、綿の量がエラスタンの量に相当するだけ増加することを除いて、横糸の組成と同じである。
X1とX2のヤーンのPES(ポリエステル長繊維)コアは、36本の長繊維で形成された150デニールの束であり、各長繊維は4.5デニールの長繊維である。
縦糸と横糸を使用して、次の特徴を備えた完成織物を準備した。
横糸密度:20.35糸/cm;
縦糸密度:42糸/cm
この織物の引裂き及び引張強度を評価するために、織物の試験を実施した。
テスト結果は次の表に纏められている。この結果から、織物の性能が20%以上向上していることがわかる。
【0110】
【表2】

【実施例2】
【0111】
実施例2では、実施例1で準備した織物X1、X2、及びXcompの3つのサンプルについて、洗浄ステップにおけるそれらの挙動を試験した。結果は、次の表に纏められている。
この表から、Xcompの織物に対して本発明の織物は、乾燥時間が、サンプルX1で約7%、サンプルX2で10%以上、減少していることが理解できる。織物の乾燥時間のこの驚くべき短縮は、乾燥ステップに使用されるエネルギーの削減に反映され、乾燥コストの重要な節約につながる。
【0112】
【表3】

【0113】
本発明によるヤーンはまた、特に、スポーツウェア製品の使用にも適している。実際、ヤーン中の綿の量の減少の別の結果は、本発明によるヤーンを含む布が、人体上で、通常の綿製品よりも速く乾燥することができるということである。
この技術的効果が考えられる理由の1つは、本発明による布が綿ヤーンで作られた布よりも少ない汗を吸収し、従って人体の熱が、衣服の布を乾燥しやすくするためであると考えられる。
【符号の説明】
【0114】
1 複合ヤーン
2 コアヤーン
3 シース
3a 短繊維
6 ボビン
7 スプール
8 粗糸
8a 綿粗糸
8b 綿粗糸
10 予張力バー
11 張力ローラー
12 重り
13 ローリングガイド
14 引き伸ばしローラー
15 第1のガイド
16 第2のガイド
17 ガイド
18 紡績装置
19 ブレーキ要素
20 コアヤーン
21 ポリエステル長繊維(ポリマーコアファイバー)
22 エラスタン(エラストマー長繊維)
50 ロール
51 「V」字型の制限手段
100 布(デニム織物)
101 物品
200 装置
201 ボビン
202 管
203 ローラー
204 ボビン
205 ローラー
206a スプール
206b スプール
207 引き伸ばしローラー
208 引き伸ばしローラー
209 引き伸ばし及び圧縮装置
209a 圧縮ローラー
209b エンドレスベルト
209c 通路
210 紡績装置
図1
図2
図3
図4-4a】
図5
図6
図7
図8
図9
図10