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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】医療用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A61B18/18
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023570262
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2023001842
(87)【国際公開番号】W WO2023140373
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022008340
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504373554
【氏名又は名称】サンエー精工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】萬福 康広
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】石関 康徳
(72)【発明者】
【氏名】森下 真裕
(72)【発明者】
【氏名】荻原 麻里帆
(72)【発明者】
【氏名】松崎 正博
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 朋樹
(72)【発明者】
【氏名】木下 良彦
(72)【発明者】
【氏名】浅野 拓司
(72)【発明者】
【氏名】西瀬 尚哉
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-055167(JP,A)
【文献】特表2001-522622(JP,A)
【文献】特開2012-005535(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147243(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0030448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波印加用アンテナA及びマイクロ波受手用アンテナBを含む第1電極、
マイクロ波印加用アンテナC及びマイクロ波受手用アンテナDを含む第2電極、
第1同軸ケーブル、ここで、該第1同軸ケーブルは、第1中心導体及び第1外部導体を含み、ここで、該第1中心導体の先端及び該第1外部導体の先端は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナAの末端及び該マイクロ波受手用アンテナBの末端に直接又は間接的に接続しており、
第2同軸ケーブル、ここで、該第2同軸ケーブルは、第2中心導体及び第2外部導体を含み、ここで、該第2中心導体の先端及び該第2外部導体の先端は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナCの末端及び該マイクロ波受手用アンテナDの末端に直接又は間接的に接続しており、
マイクロ波伝送用同軸ケーブル、ここで、該マイクロ波伝送用同軸ケーブルは、中心導体及び外部導体を含み、
マイクロ波分波器、ここで、該マイクロ波分波器は、先端側が二股に分かれたフォーク形状である分岐1及び分岐2を有する分波用導体を含み、該分波用導体の末端は該マイクロ波伝送用同軸ケーブルの中心導体に直接又は間接的に接続しており、該分岐1は該第1中心導体の末端に直接又は間接的に接続しており、及び該分岐2は該第2中心導体の末端に直接又は間接的に接続している、
第1電極及び第2電極の位置設定部、ここで、該位置設定部は、互いに向かい合う、勘合用突起部A、勘合用穴部A及び該第1同軸ケーブルを収納する収納部Aを含む該第1電極に設置された位置設定部A並びに勘合用突起部B、勘合用穴部B及び該第2同軸ケーブルを収納する収納部Bを含む該第2電極に設置された位置設定部Bを有し、ここで、該第1電極及び該第2電極が接した場合に、該勘合用突起部Aが該勘合用穴部B及び該勘合用突起部Bが該勘合用穴部Aに収納されるように構成されている、
アンテナカバーAを有し、該アンテナカバーAは、該アンテナカバーAの先端側の内腔に先端側内腔勘合用穴部を有し、
並びに、
該マイクロ波印加用アンテナA及び/又は該マイクロ波印加用アンテナCは、該マイクロ波印加用アンテナA及び/又は該マイクロ波印加用アンテナCの先端側の上端に先端側勘合用突起部を有し、ここで、該先端側勘合用突起部が該先端側内腔勘合用穴部に勘合している、
を含む医療用処置具。
【請求項2】
前記アンテナカバーAは、該アンテナカバーAの先端側に、先端側外側係合部を有し、
前記マイクロ波受手用アンテナB及び/又は前記マイクロ波受手用アンテナDは、該マイクロ波受手用アンテナB及び/又は該マイクロ波受手用アンテナDの先端側受口部を有し、
ここで、該先端側外側係合部が該先端側受口部に係合している、
請求項1に記載の医療用処置具。
【請求項3】
さらに、アンテナカバーBを有し、
該アンテナカバーBは、前記マイクロ波受手用アンテナB及び/又は前記マイクロ波受手用アンテナDの内腔に位置し、かつ、該アンテナカバーBの内腔でマイクロ波印加用アンテナA及び/又はマイクロ波印加用アンテナCの末端を収納している、
請求項1又は2に記載の医療用処置具。
【請求項4】
前記アンテナカバーBは、鍵形状であり、かつ
前記マイクロ波受手用アンテナB及び/又はマイクロ波受手用アンテナDの内腔は、該鍵形状に対応する鍵穴形状である、
請求項3に記載の医療用処置具。
【請求項5】
前記アンテナカバーBの先端は係合部1を有し、かつ
前記アンテナカバーAの内腔は係合部2を有し、
ここで、該係合部1と該係合部2が係合している、
請求項3又は4に記載の医療用処置具。
【請求項6】
前記分波用導体の末端は勘合用穴部を有し、かつ、
前記中心導体の先端は勘合用突起部を有し、
ここで、該勘合用突起部が該勘合用穴部に勘合している、
請求項1~5のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項7】
前記分波用導体の分岐1の先端は勘合用穴部を有し、かつ、前記第1中心導体の末端は勘合用突起部を有し、ここで、該勘合用突起部が該勘合用穴部に勘合している、並びに、
前記分波用導体の分岐2の先端は勘合用穴部を有し、かつ、前記第2中心導体の末端は勘合用突起部を有し、ここで、該勘合用突起部が該勘合用穴部に勘合している、
請求項1~6のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項8】
前記分岐1及び前記分岐2で形成される内角は、20°~80°である、請求項1~7のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項9】
前記マイクロ波印加用アンテナAの表面及び前記マイクロ波印加用アンテナCの表面は、それぞれのこぎり歯形状を有し、前記第1電極及び前記第2電極が接した場合に、該マイクロ波印加用アンテナAの該のこぎり歯形状の刃と該マイクロ波印加用アンテナCの該のこぎり歯形状の刃のみで接するように構成されている、請求項1~8のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項10】
前記マイクロ波受手用アンテナBの先端表面及び前記マイクロ波受手用アンテナDの先端表面は、それぞれ歯形状を有し、前記第1電極及び前記第2電極が接した場合に、該マイクロ波受手用アンテナBの先端の該歯形状と該マイクロ波受手用アンテナDの先端の該歯形状のみで噛み合うように構成されている、請求項1~9のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項11】
前記アンテナカバーAは、該アンテナカバーAの表面に前記第1電極又は前記第2電極の先端から特定の位置にマーキングを有する、請求項1~5のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項12】
前記マイクロ波分波器は、さらに、
2つの筐体カバーを含む筐体、該筐体カバーは外側カバーが設置されており、
2つの絶縁体(誘電体)カバー、
2つの金属カバー、及び、
2つの樹脂カバーを有し、並びに、
ここで、該2つの樹脂カバーは前記分波用導体を挟みこむように設置されており、該2つの金属カバーは、それぞれ、該2つの樹脂カバーを挟みこむように設置されており、該2つの絶縁体(誘電体)カバーは、それぞれ、該2つの金属カバーを挟みこむように設置されており、及び、該2つの筐体カバーは、それぞれ、該2つの絶縁体(誘電体)カバーを挟みこむように構成されている、
請求項1~11のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項13】
前記位置設定部Aは前記マイクロ波印加用アンテナA末端~前記第1同軸ケーブルの先端間の範囲に設置されており、かつ、前記位置設定部Bは前記マイクロ波印加用アンテナC末端~前記第2同軸ケーブルの先端間の範囲に設置されている、請求項1に記載の医療用処置具。
【請求項14】
前記勘合用穴部A及び前記勘合用穴部Bは貫通していない、請求項1に記載の医療用処置具。
【請求項15】
マイクロ波印加用アンテナAを含む第1電極、
マイクロ波受手用アンテナDを含む第2電極、
マイクロ波伝送用同軸ケーブル、ここで、該マイクロ波伝送用同軸ケーブルは、中心導体及び外部導体を含み、該中心導体は直接又は間接的に該マイクロ波印加用アンテナAに接続しており、かつ、該外部導体は直接又は間接的に該マイクロ波受手用アンテナDに接続しており、
並びに、
アンテナカバーA、ここで、該アンテナカバーAは、該マイクロ波印加用アンテナAを覆いかつ該アンテナカバーAの表面に該第1電極又は該第2電極の先端から特定の位置にマーキングを有する、
を含む医療用処置具。
【請求項16】
マイクロ波印加用アンテナAを含む第1電極、
マイクロ波受手用アンテナDを含む第2電極、
マイクロ波伝送用同軸ケーブル、ここで、該マイクロ波伝送用同軸ケーブルは、中心導体及び外部導体を含み、該中心導体は直接又は間接的に該マイクロ波印加用アンテナAに接続しており、かつ、該外部導体は直接又は間接的に該マイクロ波受手用アンテナDに接続しており、
並びに、
アンテナカバーAを有し、ここで、
該アンテナカバーAは、該アンテナカバーAの先端側の内腔に先端側内腔勘合用穴部を有し、該マイクロ波印加用アンテナAは、該マイクロ波印加用アンテナAの先端側の上端に先端側勘合用突起部を有し、該先端側勘合用突起部が該先端側内腔勘合用穴部に勘合している、
又は、
該アンテナカバーAは、該アンテナカバーAの先端側に、先端側外側係合部を有し、該マイクロ波受手用アンテナDは、該マイクロ波受手用アンテナDの先端側受口部を有し、該先端側外側係合部が該先端側受口部に係合している、
を含む医療用処置具。
【請求項17】
分波用導体、
2つの筐体カバーを含む筐体、
2つの絶縁体(誘電体)カバー、
2つの金属カバー、及び、
2つの樹脂カバーを有し、
並びに、
ここで、該2つの樹脂カバーは該分波用導体を挟みこむように設置されており、該2つの金属カバーは、それぞれ、該2つの樹脂カバーを挟みこむように設置されており、該2つの絶縁体(誘電体)カバーは、それぞれ、該2つの金属カバーを挟みこむように設置されており、及び、該2つの筐体カバーは、それぞれ、該2つの絶縁体(誘電体)カバーを挟みこむように構成されている、
を含むマイクロ波分波器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シザリング防止機構を有する両電極からマイクロ波を照射可能であることを特徴とする医療用処置具に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願2022-008340号優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
(マイクロ波を使用したデバイス)
マイクロ波は、消化器、肝臓、膀胱、前立腺、子宮、血管、腸管等の生体組織を低温で凝固(固定化)できることが知られている。そして、マイクロ波を用いた手術支援用の種々のデバイスが開発されている。
【0003】
(先行文献)
マイクロ波を使用したデバイスとして、以下の複数が報告されている。
特許文献1は、「医療用処置具であって、1又は複数のマイクロ波印加用アンテナ1及び1又は複数のマイクロ波受手用アンテナ1を含む第1電極、1又は複数のマイクロ波印加用アンテナ2及び1又は複数のマイクロ波受手用アンテナ2を含む第2電極、第1中心導体及び第1外部導体を含む第1同軸ケーブル、ここで、該第1中心導体及び該第1外部導体は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナ1及び該マイクロ波受手用アンテナ1に直接又は間接的に接続しており、第2中心導体及び第2外部導体を含む第2同軸ケーブル、ここで、該第2中心導体及び該第2外部導体は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナ2及び該マイクロ波受手用アンテナ2に直接又は間接的に接続しており、マイクロ波伝送用同軸ケーブル、及び該マイクロ波伝送用同軸ケーブルにより伝達されたマイクロ波を該第1中心導体及び該第2中心導体に分波するマイクロ波分波器を含み、該第1電極及び該第2電極の両方からマイクロ波を照射可能であることを特徴とする医療用処置具」を開示している。
本特許文献は、マイクロ波の分配回路を開示しているが、本発明の医療用処置具の構成を開示していない。
【0004】
特許文献2は、「生体組織にマイクロ波を照射するための電極部を有する手術器本体と、前記手術器本体に内蔵され、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記手術器本体に内蔵され、前記電極部と前記マイクロ波発振器との間に接続されており、前記マイクロ波発振器からのマイクロ波を増幅させて前記電極部に送る増幅器と、を備えた、マイクロ波手術器であって、前記増幅器と前記電極部との間に接続され、前記増幅器の出力インピーダンスと前記生体組織のインピーダンスとを整合させるための可変出力整合回路と、前記増幅器と電極部との間における反射電力及び入射電力を別々に検出する検出回路と、前記検出回路により検出された入射電力および反射電力の値に基づいて前記可変出力整合回路を制御する制御手段と、をさらに備えた、マイクロ波手術器。」を開示している。
本特許文献は、増幅器の出力インピーダンスと生体組織のインピーダンスとを整合させるための可変出力整合回路を開示しているが、本発明の医療用処置具の両電極からマイク
ロ波を照射可能であること及び電極の構成を開示していない。
【0005】
特許文献3は、「互いに関して旋回可能でその間の間隙を開閉する1組の顎要素、前記間隙へ隣接する前記1組の顎要素の一方に取り付けられた第1伝送線路構造、前記第1伝送線路構造に対向して前記間隙へ隣接する前記1組の顎要素の他方に取り付けられた第2伝送線路構造、マイクロ波周波数エネルギーを伝達する同軸ケーブル、及び前記同軸ケーブルの先端側にパワー・スプリッタ、を備え、前記パワー・スプリッタは、前記第1伝送線路構造及び前記第2伝送線路構造間で前記同軸ケーブルにより伝達された前記マイクロ波周波数エネルギーを分割するように配列され、各前記第1伝送線路構造及び前記第2伝送線路構造は、不平衡な損失伝送線路からなり、進行波として前記マイクロ波エネルギーを支援し、各前記第1伝送線路構造及び前記第2伝送線路構造は、前記マイクロ波エネルギーへ非共振である前記進行波沿いに電気長を有する、電気外科鉗子」を開示している。
本特許文献は、両電極からマイクロ波を照射可能であることを開示しているが、本発明の医療用処置具の電極の構成を開示していない。
【0006】
以上により、先行特許文献は、本発明の両電極からマイクロ波が効率的に照射される電極構造を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】再表2018/147243
【文献】特開2012-115384
【文献】特表2016-533862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の両電極からマイクロ波が照射される医療用処置具は、該両電極からのマイクロ波照射により、1)シザリング発生(スパーク発生)、2)両電極間が接する照射面の裏側への発熱放射、3)マイクロ波分波器使用によるマイクロ波照射の非効率性、4)両アンテナ脱落、5)把持力が弱い、6)膜などの薄い組織を掴みにくい、7)マイクロ波照射範囲を容易に把握することができない等の様々な問題が1以上あった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題の1以上を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明の医療用処置具の構成は上記課題の1以上を解決することを確認して、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下からなる。
1.医療用処置具であって、
マイクロ波印加用アンテナA及びマイクロ波受手用アンテナBを含む第1電極、
マイクロ波印加用アンテナC及びマイクロ波受手用アンテナDを含む第2電極、
第1同軸ケーブル、ここで、該第1同軸ケーブルは、第1中心導体及び第1外部導体を含み、ここで、該第1中心導体の先端及び該第1外部導体の先端は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナAの末端及び該マイクロ波受手用アンテナBの末端に直接又は間接的に接続しており、
第2同軸ケーブル、ここで、該第2同軸ケーブルは、第2中心導体及び第2外部導体を含み、ここで、該第2中心導体の先端及び該第2外部導体の先端は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナCの末端及び該マイクロ波受手用アンテナDの末端に直接又は間接的に接続しており、
マイクロ波伝送用同軸ケーブル、ここで、該マイクロ波伝送用同軸ケーブルは、中心導体及び外部導体を含み、
マイクロ波分波器、ここで、該マイクロ波分波器は、先端側が二股に分かれたフォーク形状である分岐1及び分岐2を有する分波用導体を含み、該分波用導体の末端は該マイクロ波伝送用同軸ケーブルの中心導体に直接又は間接的に接続しており、該分岐1は該第1中心導体の末端に直接又は間接的に接続しており、及び該分岐2は該第2中心導体の末端に直接又は間接的に接続している、並びに、
第1電極及び第2電極の位置設定部、該位置設定部は、互いに向かい合う、勘合用突起部A、勘合用穴部A及び該第1同軸ケーブルを収納する収納部Aを含む該第1電極に設置された位置設定部A並びに勘合用突起部B、勘合用穴部B及び該第2同軸ケーブルを収納する収納部Bを含む該第2電極に設置された位置設定部Bを有し、ここで、該第1電極及び該第2電極が接した場合に、該勘合用突起部Aが該勘合用穴部B及び該勘合用突起部Bが該勘合用穴部Aに収納されるように構成されている、
医療用処置具。
2.さらに、アンテナカバーAを有し、
該アンテナカバーAは、該カバーの先端側の内腔に先端側内腔勘合用穴部を有し、
前記マイクロ波印加用アンテナA及び/又は前記マイクロ波印加用アンテナCは、該アンテナの先端側の上端に先端側勘合用突起部を有し、
ここで、該先端側勘合用突起部が該先端側内腔勘合用穴部に勘合している、前項1に記載の医療用処置具。
3.前記アンテナカバーAは、該カバーの先端側に、先端側外側係合部を有し、
前記マイクロ波受手用アンテナB及び/又は前記マイクロ波受手用アンテナDは、該アンテナの先端側受口部を有し、
ここで、該先端側外側係合部が該先端側受口部に係合している、
前項1又は2に記載の医療用処置具。
4.さらに、アンテナカバーBを有し、
該アンテナカバーBは、前記マイクロ波受手用アンテナB及び/又は前記マイクロ波受手用アンテナDの内腔に位置し、かつ、該カバーの内腔でマイクロ波印加用アンテナA及び/又はマイクロ波印加用アンテナCの末端を収納している、
前項2又は3に記載の医療用処置具。
5.前記アンテナカバーBは、鍵形状であり、かつ
前記マイクロ波受手用アンテナB及び/又はマイクロ波受手用アンテナDの内腔は、該鍵形状に対応する鍵穴形状である、
前項4に記載の医療用処置具。
6.前記アンテナカバーBの先端は係合部1を有し、かつ
前記アンテナカバーAの内腔は係合部2を有し、
ここで、該係合部1と該係合部2が係合している、
前項4又は5に記載の医療用処置具。
7.前記分波用導体の末端は勘合用穴部を有し、かつ、
前記中心導体の先端は勘合用突起部を有し、
ここで、該勘合用突起部が該勘合用穴部に勘合している、
前項1~6のいずれか1に記載の医療用処置具。
8.前記分波用導体の分岐1の先端は勘合用穴部を有し、かつ、前記第1中心導体の末端は勘合用突起部を有し、ここで、該勘合用突起部が該勘合用穴部に勘合している、並びに、
前記分波用導体の分岐2の先端は勘合用穴部を有し、かつ、前記第2中心導体の末端は勘合用突起部を有し、ここで、該勘合用突起部が該勘合用穴部に勘合している、
前項1~7のいずれか1に記載の医療用処置具。
9.前記分岐1及び前記分岐2で形成される内角は、20°~80°である、前項1~8のいずれか1に記載の医療用処置具。
10.前記マイクロ波印加用アンテナAの表面及び前記マイクロ波印加用アンテナCの表面は、それぞれのこぎり歯形状を有し、前記第1電極及び前記第2電極が接した場合に、該マイクロ波印加用アンテナAの該のこぎり歯形状の刃と該マイクロ波印加用アンテナCの該のこぎり歯形状の刃のみで接するように構成されている、前項1~9のいずれか1に記載の医療用処置具。
11.前記マイクロ波受手用アンテナBの先端表面及び前記マイクロ波受手用アンテナDの先端表面は、それぞれ歯形状を有し、前記第1電極及び前記第2電極が接した場合に、該マイクロ波受手用アンテナBの先端の該歯形状と該マイクロ波受手用アンテナDの先端の該歯形状のみで噛み合うように構成されている、前項1~10のいずれか1に記載の医療用処置具。
12.前記アンテナカバーAは、該カバーAの表面に前記第1電極又は前記第2電極の先端から特定の位置にマーキングを有する、前項1~11のいずれか1に記載の医療用処置具。
13.前記マイクロ波分波器は、さらに、
2つの筐体カバーを含む筐体、該筐体カバーは外側カバーが設置されており、
2つの絶縁体(誘電体)カバー、
2つの金属カバー、及び、
2つの樹脂カバーを有し、並びに、
ここで、該2つの樹脂カバーは前記分波用導体を挟みこむように設置されており、該2つの金属カバーは、それぞれ、該2つの樹脂カバーを挟みこむように設置されており、該2つの絶縁体(誘電体)カバーは、それぞれ、該2つの金属カバーを挟みこむように設置されており、及び、該2つの筐体カバーは、それぞれ、該2つの絶縁体(誘電体)カバーを挟みこむように構成されている、
前項1~12のいずれか1に記載の医療用処置具。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医療用処置具は、以下のいずれか1以上の効果を有する。
1)シザリング発生(スパーク発生)の抑制
2)両電極間が接する照射面の裏側への発熱放射の抑制
3)マイクロ波分波器使用によるマイクロ波照射の非効率性の解消
4)両アンテナ脱落防止
5)把持力が強い
6)膜などの薄い組織を掴みやすい
7)マイクロ波照射範囲を容易に把握することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(1)医療用処置具(1)の側面全体図。(2)(1)のC-C断面図。
図2】(1)医療用処置具(1)の矢視A(拡大図)から見た第1電極(4)。(2)医療用処置具(1)の矢視B(拡大図)から見た第2電極(7)。
図3】(1)医療用処置具(1)の側面全体図。(2)(1)のD-D断面図。
図4】(1)第1電極(4)及び第2電極(7)の全体図。(2)矢視Eから見た第2電極(7)の図。
図5】マイクロ波印加用アンテナA(2)、マイクロ波印加用アンテナC(5)、マイクロ波受手用アンテナB(3)、マイクロ波受手用アンテナD(6)、アンテナカバーA(30)及びアンテナカバーB(38)の概要図。
図6】(1)マイクロ波印加用アンテナA(2)又はマイクロ波印加用アンテナC(5)をアンテナカバーA(30)に矢印の方向に挿入することを示した説明図。(2)マイクロ波印加用アンテナA(2)又はマイクロ波印加用アンテナC(5)が挿入されたアンテナカバーA(30)の断面図。
図7】(1)アンテナカバーA(30)を矢印の方向にマイクロ波受手用アンテナB(3)又はマイクロ波受手用アンテナD(6)に挿入することを示した説明図。(2)アンテナカバーA(30)が挿入されたマイクロ波受手用アンテナB(3)又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の断面図。
図8】(1)アンテナカバーB(38)をマイクロ波受手用アンテナB(3)又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の内腔に挿入することを示した説明図。(2)アンテナカバーB(38)が挿入されたマイクロ波受手用アンテナB(3)又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の断面図。
図9】R形状を有する鍵形状(40)のアンテナカバーB(38)並びに鍵穴形状(39)を有する内腔を有するマイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の説明図。
図10】アンテナカバーB(38)がマイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の内腔に位置していることを示す説明図。
図11】係合部1(55)及び係合部2(56)の説明図。
図12】係合部1(55)と係合部2(56)が係合している箇所(係合部(54))を示す説明図。
図13】公知のマイクロ波分波器(17)の説明図。
図14】好ましい内角(51)を有するマイクロ波分波器(17)の説明図。
図15】のこぎり歯形状を有するマイクロ波印加用アンテナ並びに先端の歯形状のみで噛み合うマイクロ波受手用アンテナの説明図。
図16】マーキング(63)の説明図。
図17】マイクロ波分波器(17)の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照して説明するが、本発明は図面に記載された医療器具に限定されるものではない。
図1(1)を正面から見える図を本発明の医療用処置具(1)の側面図、各図面を正面から見て図面の上下左右を、本発明の医療用処置具(1)の上下左右として説明する。
加えて、電極側を医療用処置具(1)の先端側、マイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)側を医療用処置具(1)の基端側とする。基端側から先端側に伸びる方向(矢(52))を医療用処置具(1)の伸長方向とする。
本発明での「勘合用穴部」と「勘合用突起部」は、突起部が穴部に勘合できていれば、穴部と突起部の形状は特に限定されない。例えば、突起部が突起形状、凸部等であり、穴部が穴形状、凹部、スリット形状等であっても良い。
本発明での「係合」とは、勘合を含み、各係合部が直接又は間接的に接する、結合等をしていれば、特に限定されない。
【0014】
(医療用処置具(1)の基本構成)
本発明の医療用処置具(1)の基本構成は、両電極からマイクロ波が照射できれば、特に限定されないが、以下のいずれか1以上の構成を有する(参照:図1~3)。
・マイクロ波印加用アンテナA(2)及びマイクロ波受手用アンテナB(3)を含む第1電極(4)
・マイクロ波印加用アンテナC(5)及びマイクロ波受手用アンテナD(6)を含む第2電極(7)
・第1同軸ケーブル(8)。第1同軸ケーブル(8)は、第1中心導体(9)及び第1外部導体(10)を含む。第1中心導体(9)の先端及び第1外部導体(10)の先端は、それぞれ、マイクロ波印加用アンテナA(2)の末端及びマイクロ波受手用アンテナB(3)の末端に直接又は間接的に接続している。
・第2同軸ケーブル(11)。第2同軸ケーブル(11)は、第2中心導体(12)及び第2外部導体(13)を含む。第2中心導体(12)の先端及び第2外部導体(13)の先端は、それぞれ、マイクロ波印加用アンテナC(5)の末端及びマイクロ波受手用アンテナD(6)の末端に直接又は間接的に接続している。
・マイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)。マイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)は、中心導体(15)及び外部導体(16)を含む。
・マイクロ波分波器(17)。マイクロ波分波器(17)は、先端側が二股に分かれたフォーク形状である分岐1(19)及び分岐2(20)を有する分波用導体(18)を含む。分波用導体(18)の末端はマイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)の中心導体(15)に直接又は間接的に接続しており、分岐1(19)の先端は第1中心導体(9)の末端に直接又は間接的に接続しており、分岐2(20)の先端は第2中心導体(12)の末端に直接又は間接的に接続している。
【0015】
なお、本発明の医療用処置具(1)は、第1電極(4)及び第2電極(7)である両電極間の隙間に組織を把持できるように可動であれば特に限定されないが、例えば鉗子、鑷子を例示することができる。鉗子の例としては、本発明で使用する鉗子は、自体公知の鉗子を使用可能であり、ケリー鉗子、コッヘル鉗子、ペアン鉗子、アリス鉗子等を例示することができるが、特に限定されない。
【0016】
(照射マイクロ波)
本発明の医療用処置具(1)のマイクロ波伝送用同軸ケーブルに伝送されるマイクロ波は、特に、限定されないが、300 MHz~300 GHz(波長:1m~ 1mm)、好ましくは、0.9 GHz~30 GHzである。なお、伝送方法は、自体公知の方法、例えば、自体公知のマイクロ波を発振するマイクロ波発振器にマイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)を接続すること、又は、該発振器を医療用処置具(1)に内蔵して、マイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)に接続することにより容易に達成することができる。
なお、本発明において使用される電力は0 .1 W ~ 200 W 、好ましくは1.0 W ~ 80 W である。
【0017】
(同軸ケーブル)
本発明で用いられる同軸ケーブルは、例えば、銅からなる導電体の中心導体と、中心導体を覆う絶縁体又は誘電体(例えば、テフロン(登録商標) 、ポリエチレン等からなる) のシールドチューブと、銅、ステンレス、真鍮等からなる外部導体(導電体) のアースパイプ又は編組銅線からなる。
なお、同軸ケーブルは、自体公知のセミリジット同軸ケーブルでも良い。
【0018】
(アンテナ)
本発明のマイクロ波印加用アンテナは、マイクロ波を供給することができる材質であれば特に、限定されない。例えば、銀、銅、金、鉄、チタン、ステンレス、リン青銅又は真鍮等広く導電性材料が使用可能である。好適には、SUS304、銀、銅、金、ステンレス、真鍮等が例示される。
本発明のマイクロ波受手用アンテナは、マイクロ波を受けることができる材質であれば特に、限定されない。例えば、銀、銅、金、鉄、チタン、ステンレス、リン青銅又は真鍮等広く導電性材料が使用可能である。好適には、SUS630、銀、銅、金、ステンレス、真鍮等が例示される。
アンテナの形状は、特に限定されないが、円錐、三角錐、四角錐、円柱、四角柱、三角柱、球、立方体、直方体等が例示される。さらに、アンテナの内表面(特に、組織との接触面) は、刃形状、平面型、丸型、棒状、凹凸型、のこぎり歯形状等が広く適用可能である。
本発明のマイクロ波印加用アンテナの具体的な構成は、四角柱であり、組織との接触面は組織が滑りにくいようにのこぎり歯形状であり、マイクロ波受手用アンテナの具体的な構成は、四角柱であり、組織との接触面は組織が滑りにくいようにのこぎり歯形状であってもよい。
【0019】
(マイクロ波印加用アンテナ)
マイクロ波印加用アンテナA(2)の表面(マイクロ波印加用アンテナC(5)と接する面)は、好ましくは、のこぎり歯形状(47)を有し、マイクロ波印加用アンテナC(5)の表面(マイクロ波印加用アンテナA(2)と接する面)は、好ましくは、のこぎり歯形状(48)を有する(参照:図15)。
マイクロ波印加用アンテナA(2)の表面及びマイクロ波印加用アンテナC(5)の表面が接した場合には、該マイクロ波印加用アンテナAの該のこぎり歯形状の刃と該マイクロ波印加用アンテナCの該のこぎり歯形状の刃のみで接する。
該のこぎり歯形状の刃のみで接する構成は、アンテナ同士の表面がフラットで接する場合と比較して、把持力を強くすることができる。
【0020】
(マイクロ波受手用アンテナ)
マイクロ波受手用アンテナB(3)の先端表面(マイクロ波受手用アンテナD(6)と接する面)は、好ましくは、歯形状(49)を有し、マイクロ波受手用アンテナD(6)の先端表面(マイクロ波受手用アンテナB(3)と接する面)は、好ましくは、歯形状(50)を有する。
さらに、マイクロ波受手用アンテナB(3)の表面及びマイクロ波受手用アンテナD(6)の表面が接した場合には、歯形状(49)と歯形状(50)のみで噛み合う。
それぞれのアンテナの先端の歯形状のみで噛み合う(参照:図15の円)ことにより、膜などの薄い組織を掴みやすい。
【0021】
(電極)
本発明の第1電極(4)及び第2電極(7)は、両電極間の隙間に組織を把持できるように可動である構成(特に、鉗子)、さらに必要に応じて、凝固機能及び切断機能を有すれば特に限定されない。
電極は、組織との接触において、凝固組織が付着し難いコーティングが一部又は全部にされていることがより好適である。コーティングは、金、テフロン系部材等で行なわれる。これにより、凝固後の組織が付着することなく、連続的に凝固、切断の処理が行える。
本発明の第1電極(4)及び/又は第2電極(7)の好ましい構成、より詳しくは効率的なマイクロ波照射可能な構成は、以下の通りである。
第1電極(4)において、マイクロ波印加用アンテナA(2)はマイクロ波受手用アンテナB(3)の内部空間(53)にアンテナカバーA(30)を介して設置されている(参照:図5)。
第2電極(7)において、マイクロ波印加用アンテナC(5)はマイクロ波受手用アンテナD(6)の内部空間(53)にアンテナカバーA(30)を介して設置されている(参照:図4図5)。
【0022】
(第1電極及び第2電極の位置設定部(21))
本発明の医療用処置具(1)は、好ましくは、第1電極及び第2電極の位置設定部(21)を含む(参照:図3)。第1電極及び第2電極の位置設定部(21)は、シザリング発生(スパーク発生)の抑制効果を有する。
第1電極及び第2電極の位置設定部(21)は、互いに向かい合う、勘合用突起部A(22)、勘合用穴部A(23)及び第1同軸ケーブル(8)を収納する収納部A(24)を含む第1電極(4)に設置された位置設定部A(25)並びに勘合用突起部B(26)、勘合用穴部B(27)及び該第2同軸ケーブル(11)を収納する収納部B(28)を含む該第2電極に設置された位置設定部B(29)を有する。
第1電極及び第2電極の位置設定部(21)は、第1電極(4)及び第2電極(7)が接した場合に、勘合用突起部A(22)が勘合用穴部B(27)及び勘合用突起部B(26)が勘合用穴部A(23)に収納されるように構成されている。詳しくは、勘合用突起部A(22)は第2電極に接する方向(下方向)に伸長しており、勘合用突起部B(26)は第1電極に接する方向(上方向)に伸長している。
それぞれの突起部はそれぞれの穴部に挿入されるので、第1電極(4)及び第2電極(7)が接した場合の図3(2)を正面から見た左右へのズレを防止することができ、シザリング発生(スパーク発生)を抑制する。
また、位置設定部A(25)の設置場所は、例えば、第1電極(4)の第2電極(7)に接する側のマイクロ波印加用アンテナA(2)の末端と第1電極(4)の末端間のいずれかの位置に設置されている。より詳しくは、マイクロ波印加用アンテナA(2)の末端~第1同軸ケーブル(8)の末端間の範囲、より好ましくはマイクロ波印加用アンテナA(2)末端~第1同軸ケーブル(8)の先端間の範囲であり、言い換えると、マイクロ波印加用アンテナA(2)の先端から(基端側へ)10mmの位置~60mm(又は40mm)の位置の範囲に存在する。
同様に、位置設定部B(29)の設置場所は、例えば、第2電極(7)の第1電極(4)に接する側のマイクロ波印加用アンテナC(5)の末端と第2電極(7)の末端間のいずれかの位置に設置されている。より詳しくは、マイクロ波印加用アンテナC(5)の末端~第2同軸ケーブル(11)の末端間の範囲、より好ましくはマイクロ波印加用アンテナC(5)末端~第2同軸ケーブル(11)の先端間の範囲であり、言い換えると、マイクロ波印加用アンテナC(5)の先端から(基端側へ)10mmの位置~60mm(又は40mm)の位置の範囲に存在する。
【0023】
(アンテナカバーA)
本発明の医療用処置具(1)は、好ましくは、アンテナカバーA(30)を有する。アンテナカバーA(30)は、両電極間が接する照射面の裏側(例えば、図6の矢印の方向)への発熱放射を防ぐことができる。
アンテナカバーA(30)は、該カバーの先端側の内腔に先端側内腔勘合用穴部(31)を有する。
また、マイクロ波印加用アンテナA(2)及び/又は前記マイクロ波印加用アンテナC(5)は、該アンテナの先端側の上端に先端側勘合用突起部(33)を有する。
図6(2)の点線円に記載のように、先端側勘合用突起部(33)が先端側内腔勘合用穴部(31)に勘合しているので、マイクロ波印加用アンテナA(C)の先端側の脱落を防止することができる。
【0024】
アンテナカバーA(30)は、該カバーの先端側に先端側外側係合部(35)を有する。
また、マイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又は前記マイクロ波受手用アンテナD(6)は、該アンテナの先端側に受口部(36)を有する。
図7(2)の点線円に記載のように、先端側外側係合部(35)が先端側受口部(36)に係合しているので、アンテナカバーA(30)の先端側の脱落を防止することができる。
アンテナカバーA(30)の材質は、マイクロ波照射による発熱放射を防ぐことができれば特に限定されないが、例えば、絶縁体又は誘電体を例示することができ、さらに、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)を例示することができる。
【0025】
アンテナカバーAは、好ましくは、該カバーの表面(外表面)に第1電極又は前記第2電極の先端から特定の位置(特に、マイクロ波受手用アンテナの末端の位置)にマーキング(63)を有する(参照:図16)。
本発明の医療用処置具(1)の使用者は、マーキング(63)の位置により、マイクロ波照射範囲を容易に把握することができる。
【0026】
(アンテナカバーB)
本発明の医療用処置具(1)は、好ましくは、アンテナカバーB(38)を有する。
アンテナカバーB(38)は、マイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の内腔に位置する(参照:図8)。
アンテナカバーB(38)は、好ましくは、マイクロ波印加用アンテナA(2)及び/又はマイクロ波印加用アンテナC(5)の末端側の一部(2つの基端側突起部(34))を該カバーの内腔で収納する(参照:図8)。
図8(2)に記載のように、アンテナカバーB(38)は、2つの基端側突起部(34)を収納することにより、マイクロ波印加用アンテナA(C)の基端側の脱落を防止することができる。
アンテナカバーB(38)の材質は、マイクロ波照射による発熱放射を防ぐことができれば特に限定されないが、例えば、絶縁体又は誘電体を例示することができ、さらに、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)を例示することができる。
【0027】
アンテナカバーB(38)は、好ましくは、R形状を有する鍵形状(40)である。
また、マイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)は、好ましくは、該アンテナの基端側開口部から続く内腔は、R形状を有する鍵形状(40)に対応する鍵穴形状(39)である(参照:図9)。
アンテナカバーB(38)は、マイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の基端側開口部から挿入されて、該アンテナの内腔に位置する。
鍵形状と鍵穴形状は、アンテナカバーB(38)がマイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の内腔に設置することができれば、自体公知の形状を採用することができる。
図10左図に記載のように、マイクロ波受手用アンテナB(3)及び/又はマイクロ波受手用アンテナD(6)の内腔のR形状とアンテナカバーB(38)の外周のR形状により、アンテナカバーB(38)は、矢印の方向に移動することを抑制している。
図10左図に記載のように、該鍵形状と該鍵穴形状により、矢印の方向に移動することを抑制している。
より詳しくは、鍵形状と鍵穴形状により、アンテナカバーB(38)は、図8の左右方向に移動しかすることができない。
【0028】
アンテナカバーB(38)の先端は、好ましくは、係合部1(55)を有する(参照:図11)。
アンテナカバーA(30)の内腔は、好ましくは、係合部2(56)を有する(参照:図11)。
図12に記載のように、係合部1(55)と係合部2(56)が係合している。詳しくは、係合部1(55)は、先端側の上側(図12)に突起形状を有し、下側(図12)は窪んだ形状を有する。係合部2(55)は、係合部1(55)の突起形状に対応した窪んだ形状かつ係合部1(55)の窪んだ形状に対応した突起形状を有する。これにより、アンテナカバーB(38)が図12中の上方向又は下方向に移動することを抑制している。
【0029】
(マイクロ波分波器)
本発明のマイクロ波分波器(17)は、マイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)より伝達されたマイクロ波を第1中心導体(9)及び第2中心導体(12)に分波することができれば、自体公知のマイクロ波分波器を採用することができる。例えば、ウィルキンソン電力分配器、3dBカプラ分波回路、ラットレース分波回路、90度ハイブリッド分波回路等を例示することができる。
また、マイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)のインピーダンス(マイクロ波発振インピーダンス)と第1同軸ケーブル(8)及び第2同軸ケーブル(11)のインピーダンスを整合するための必要な装置(回路)を設置しても良い。このような回路は、コイルと複数の可変コンデンサとを備えており、該可変コンデンサの静電容量を調節することで、または、長さ可変であるスタブ、スリーブ等を備え、それらの長さ等を調節することで、インピーダンス整合を行うことができる。
【0030】
(マイクロ波分波器の実施態様例)
本発明のマイクロ波分波器(17)の実施態様例(参照:図13、14)では、二股に分かれたフォーク形状の中空管(57)に格納された二股に分かれたフォーク形状の分波用導体(18)から形成されている。また、これらの構成を設置する(含む)筐体(70)(ケース)は、金属で形成されていることが好ましく、さらに該筐体の外装は特に限定されないが、プラスチック材質が好ましい。
中心導体(15)、該中心導体を覆う絶縁体(誘電体)(58)、該絶縁体を覆う外部導体(16)を含むマイクロ波伝送用同軸ケーブル(14)の中心導体(15)の先端は、中空管(57)の空間を形成する支柱1(60)を通過して、分波用導体(18)の末端(二股に分かれてない末端)と直接又は間接的に結合している。
第1中心導体(9)、該導体を覆う絶縁体(誘電体)、該絶縁体を覆う第1外部導体(10)を含む第1同軸ケーブル(8)の第1中心導体の末端(9)は、中空管(57)の空間を形成する支柱2(61)を通過して、分波用導体(18)の先端(二股に分かれている末端の一方)と直接又は間接的に結合している。
第2中心導体(12)、該導体を覆う絶縁体(誘電体)、該絶縁体を覆う第2外部導体(13)を含む第2同軸ケーブル(11)の第2中心導体(12)の末端は、中空管(57)の空間を形成する支柱3(62)を通過して、分波用導体(18)の先端(二股に分かれている末端の他方)と直接又は間接的に結合している。
中心導体の材質は、銅、銀、金、アルミ等を例示することができるが特に限定されない。また、二股の形状は、U字形状、V字形状等でも良い。
外部導体は、曲げることを防ぐために編組銅線が好ましい。
【0031】
本発明のマイクロ波分波器(17)は、好ましくは、分波用導体の末端の勘合用穴部(特にスリット)(41)を有し、かつ、中心導体(15)の先端は勘合用突起部(42)を有する。
中心導体の先端の勘合用突起部(42)が分波用導体の末端の勘合用穴部(41)に勘合しているので、中心導体(15)と分波用導体(18)の結合分離を抑制することができる。
【0032】
分波用導体(18)の分岐1(19)の先端は勘合用穴部(43)(特にスリット)を有し、第1中心導体(9)の末端は勘合用突起部(44)を有する。勘合用突起部(44)が勘合用穴部(43)に勘合しているので、第1中心導体(9)と中心導体(15)の結合分離を抑制することができる。
分波用導体(18)の分岐2(20)の先端は勘合用穴部(45)(特にスリット)を有し、第2中心導体(12)の末端は勘合用突起部(46)を有する。勘合用突起部(46)が勘合用穴部(45)に勘合しているので、第2中心導体(12)と中心導体(15)の結合分離を抑制することができる。
【0033】
本発明のマイクロ波分波器(17)は、好ましくは、図13に記載の従来のT字型分波用導体(18)の内角(約180°)とは異なり、分岐1(19)及び分岐2(20)で形成される内角(51)は、20°~80°であり、好ましくは、50°~75°である。
該内角の範囲により、マイクロ波を分岐1(19)及び分岐2(20)に効率的に照射することができる。
なお、該内角を有する分波用導体(18)の製造例として、銅板金かつ表面の金メッキを採用することが好ましい。
【0034】
本発明のマイクロ波分波器(17)は、図17(1)(2)の構成を例示することができる。
図17(1)に関し、筐体(70)は、分波用導体(18)のマイクロ波の流れの方向に対して略水平方向から2つの筐体カバー(71)により、分波用導体(18)、絶縁体(誘電体)カバー(73)を挟みこむように構成されている。さらに、2つの筐体カバー(71)は、マイクロ波の流れの方向に対して略垂直方向の空洞(76)を有し、外側カバー(72)は空洞(76)に設置されている。
外側カバー(72)は、マイクロ波の漏洩を防止するためのアース機能を有すれば特に材質は限定されないが、ステンレスが好ましい。絶縁体(誘電体)カバー(73)は、分波用導体(18)と筐体カバー(71)と間に設置されている。絶縁体(誘電体)カバー(73)の材質は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)を例示することができる。
図17(2)に関し、図17(1)に記載のマイクロ波分波器(17)の構成に加えて、2つの金属カバー(75)及び2つの樹脂カバー(74)を含む。
金属カバー(75)は、樹脂カバー(74)と絶縁体(誘電体)カバー(73)と間に設置されている。金属カバー(75)は、アースの機能を有すれば特に材質は限定されないが、銅箔を例示することができる。樹脂カバー(74)は、分波用導体(18)と金属カバー(75)と間に設置されている。樹脂カバー(74)は、筐体(70)内の誘電率を最適化できる材質であれば特に限定されないが、テフロン(フッ素樹脂)を例示することができる。
図17(2)の構成を有するマイクロ波分波器(17)は、図17(1)の構成を有するマイクロ波分波器(17)と比較して、約1.5~2倍のマイクロ波照射効率であることを確認している。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明では、シザリング発生が抑制された医療用処置具を提供できる。
【符号の説明】
【0036】
1.医療用処置具
2.マイクロ波印加用アンテナA
3.マイクロ波受手用アンテナB
4.第1電極
5.マイクロ波印加用アンテナC
6.マイクロ波受手用アンテナD
7.第2電極
8.第1同軸ケーブル
9.第1中心導体
10.第1外部導体
11.第2同軸ケーブル
12.第2中心導体
13.第2外部導体
14.マイクロ波伝送用同軸ケーブル
15.中心導体
16.外部導体
17.マイクロ波分波器
18.分波用導体
19.分岐1
20.分岐2
21.第1電極及び第2電極の位置設定部
22.勘合用突起部A
23.勘合用穴部A
24.収納部A
25.位置設定部A
26.勘合用突起部B
27.勘合用穴部B
28.収納部B
29.位置設定部B
30.アンテナカバーA
31.アンテナカバーAの先端側内腔勘合用穴部
33.マイクロ波印加用アンテナA及び/又はマイクロ波印加用アンテナCの先端側勘合用突起部
34.マイクロ波印加用アンテナA及び/又はマイクロ波印加用アンテナCの2つの基端側突起部
35.アンテナカバーAの先端側外側係合部
36.マイクロ波受手用アンテナB及び/又はマイクロ波受手用アンテナDの先端側受口部
38.アンテナカバーB
39.マイクロ波受手用アンテナB及び/又はマイクロ波受手用アンテナDの鍵穴形状
40.アンテナカバーBの鍵形状
41.分波用導体の末端の勘合用穴部
42.中心導体の先端の勘合用突起部
43.分岐1の先端の勘合用穴部
44.第1中心導体の末端の勘合用突起部
45.分岐2の先端の勘合用穴部
46.第2中心導体の末端の勘合用突起部
47.マイクロ波印加用アンテナAののこぎり歯形状
48.マイクロ波印加用アンテナCののこぎり歯形状
49.マイクロ波受手用アンテナBの歯形状
50.マイクロ波受手用アンテナDの歯形状
51.分岐1及び分岐2で形成される内角
52.矢印
53.内部空間
54.係合部
55.係合部1
56.係合部2
57.中空管
58.絶縁体(誘電体)
60.支柱1
61.支柱2
62.支柱3
63.マーキング
70.筐体
71.筐体カバー
72.外側カバー
73.絶縁体(誘電体)カバー
74.樹脂カバー
75.金属カバー
76.空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17