(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】自走式採蕾採葯機及びそれを用いた採蕾採葯方法
(51)【国際特許分類】
A01D 46/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A01D46/00 Z
(21)【出願番号】P 2021088738
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2023-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年3月2日、野波和好及び竹村圭弘が、関西農業食料工学会第145回例会にて、野波和好及び竹村圭弘が発明した自走式採蕾採葯機の開発について公開した。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業(うち輸入花粉に依存しない国産花粉の安定供給システムの開発)」、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100167645
【氏名又は名称】下田 一弘
(72)【発明者】
【氏名】野波 和好
(72)【発明者】
【氏名】竹村 圭弘
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-041720(JP,A)
【文献】特開2020-184977(JP,A)
【文献】実開昭60-182765(JP,U)
【文献】特開2020-152713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面にブラシを周設した花蕾採取手段と、前記花蕾採取手段に花蕾を付けた果樹枝を当接させる枝寄ガイドと、を備える花蕾採取部と、
前記花蕾採取手段の下方に設けられ
、前記花蕾採取部が採取した花蕾を移送する花蕾移送用スロワと、前記花蕾移送用スロワにより移送された花蕾を花蕾破砕手段の花蕾投入口へ移送する花蕾移送用昇降機と、を備える花蕾移送部と、
前記花蕾移送部から移送された花蕾を破砕する水平に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面に破砕刃を周設した花蕾破砕手段と、前記花蕾破砕手段の下方に設けた網状又は多孔状の破砕花蕾選別板と、前記破砕花蕾選別板の下方に設けた網状の揺動選別篩と、前記揺動選別篩の下方に設けた選別ファンと、選別した葯を収納する葯収納容器と、を備える葯採取部と、
前記花蕾採取部、前記花蕾移送部、前記葯採取部を載置する駆動機構を備える台車と、
からなる自走式採蕾採葯機。
【請求項2】
前記駆動機構を備える台車に運転台を設けた請求項1に記載した自走式採蕾採葯機。
【請求項3】
前記花蕾を付けた果樹枝が低樹高ジョイント仕立ての花粉採取用専用樹の徒長枝である請求項1または請求項2のいずれかに記載した自走式採蕾採葯機。
【請求項4】
自走して枝寄ガイドにより花蕾を付けた果樹枝を花蕾採取手段に当接させる枝寄ステップと、
花蕾を付けた果樹枝を花蕾採取手段により花蕾を採取する花蕾採取ステップと、
採取した花蕾を花蕾移送用スロワ及び花蕾移送用昇降機により花蕾破砕手段の花蕾投入口に移送する花蕾移送ステップと、
花蕾破砕手段により花蕾を減容化する花蕾破砕ステップと、
破砕した花蕾を破砕花蕾選別板、揺動選別篩及び選別ファンにより葯収納容器に葯を採取する葯選別採取ステップと、
からなる
請求項1~請求項3のいずれかに記載する自走式採蕾採葯機による採蕾採葯方法。
【請求項5】
前記葯選別採取ステップにおいて、揺動選別篩の振動数が5.2~7.0Hz、かつ、選別ファンによる風速が1.8~2.4m/sであることを特徴とする請求項4に記載する自走式採蕾採葯機による採蕾採葯方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、果樹栽培に必要な花粉を採取するための花蕾を採取して葯を採取する自走式採蕾採葯機及びそれを用いた採蕾採葯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナシ、スモモ等の果樹栽培では、結実を安定させるために人工授粉が必要である。人工授粉用花粉は、自家調達による国産花粉、輸入花粉が用いられている。輸入花粉には、新規病害侵入や検疫強化による輸入遅延、気候変動による供給不安や価格変動などの懸念があるため、国産花粉の安定供給システムを築く必要がある。一方、自家調達による国産花粉では、採花、採葯、花粉精選等の一連の作業が必要である。特に、採蕾作業は高所での手作業であるため省力化が必要である。
【0003】
採葯、花粉精選については、ブラシを植設した回転ドラムにより花蕾を砕壊し、篩により葯を分離する装置が開示されている(特許文献1)。採花作業については、モータで回転する可撓性の打ち落とし部材を備えた自走式の花蕾採取機が開示されている(特許文献2)。しかしながら、花蕾採取機に適した樹形に限定されるという問題がある。さらに、採花、採葯、花粉精選等の一連の作業を自動化した装置については、開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平2- 46276号公報
【文献】特開2019- 41720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記課題に鑑み、花粉採取専用樹から採花、採葯、花粉精選等の一連の作業を自動で行うことができる自走式採蕾採葯機及びそれを用いた採蕾採葯方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の課題は、以下の態様により解決できる。具体的には、
【0007】
(態様1) 垂直に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面にブラシを周設した花蕾採取手段と、前記花蕾採取手段に花蕾を付けた果樹枝を当接させる枝寄ガイドとを備える花蕾採取部と、前記花蕾採取手段の下方に設けられ、前記花蕾採取部が採取した花蕾を移送する花蕾移送用スロワと、前記花蕾移送用スロワにより移送された花蕾を花蕾破砕手段の花蕾投入口へ移送する花蕾移送用昇降機とを備える花蕾移送部と、前記花蕾移送部から移送された花蕾を破砕する水平に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面に破砕刃を周設した花蕾破砕手段と、前記花蕾破砕手段の下方に設けた網状又は多孔状の破砕花蕾選別板と、前記破砕花蕾選別板の下方に設けた網状の揺動選別篩と、前記揺動選別篩の下方に設けた選別ファンと、選別した葯を収納する葯収納容器とを備える葯採取部と、前記花蕾採取部、前記花蕾移送部、前記葯採取部を載置する駆動機構を備える台車と、からなる自走式採蕾採葯機である。
花蕾採取部、花蕾移送部、葯採取部を一体として駆動機構を備える台車に載置することで、花粉採取専用樹の徒長枝から採花、採葯、花粉精選等の一連の作業を自動で行うことができる。また、揺動選別篩と選別ファンを併用して破砕花蕾から葯を精度よく分離できるからである。
【0008】
(態様2) 前記駆動機構を備える台車に運転台を設けた(態様1)に記載した自走式採蕾採葯機である。
運転台を設けて作業者を自走式採蕾採葯機に添乗させることで、作業効率があがるからである。
【0009】
(態様3) 前記花蕾を付けた果樹枝が低樹高ジョイント仕立ての花粉採取用専用樹の徒長枝である(態様1)または(態様2)のいずれかに記載した自走式採花採葯機である。
枝寄ガイドを設けることにより、花粉採取用専用樹の徒長枝であても花蕾を採取することができるからである。花蕾採取手段等の設備、車高等を花粉採取用専用樹の徒長枝に合わせて設計することができるからである。
【0010】
(態様4) 自走して枝寄ガイドにより花蕾を付けた果樹枝を花蕾採取手段に当接させる枝寄ステップと、花蕾を付けた果樹枝を花蕾採取手段により花蕾を採取する花蕾採取ステップと、採取した花蕾を花蕾移送用スロワ及び花蕾移送用昇降機により花蕾破砕手段の花蕾投入口に移送する花蕾移送ステップと、花蕾破砕手段により花蕾を減容化する花蕾破砕ステップと、破砕した花蕾を破砕花蕾選別板、揺動選別篩及び選別ファンにより葯収納容器に葯を採取する葯選別採取ステップと、からなる(態様1)~(態様3)のいずれかに記載する自走式採蕾採葯機による採蕾採葯方法である。
花蕾採取部、花蕾移送部、葯採取部を一体として駆動機構を備える台車に載置することで、花粉採取専用樹から採花、採葯、花粉精選等の一連の作業を自動で行うことができるからである。
【0011】
(態様5) 前記葯選別採取ステップにおいて、揺動選別篩の振動数が5.2~7.0Hz、かつ、選別ファンによる風速が1.8~2.4m/sであることを特徴とする(態様4)に記載する自走式採蕾採葯機による採蕾採葯方法である。
揺動選別篩の振動数を5.2~7.0Hz、かつ、選別ファンによる風速を1.8~2.4m/sとすることで、揺動選別篩と選別ファンを併用して破砕花蕾から葯を精度よく分離できるからである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の自走式採蕾採葯機は、花蕾採取部、花蕾移送部、葯採取部を一体として駆動機構を備える台車に載置することで、花粉採取専用樹から採花、採葯、花粉精選等の一連の作業を自動で行うことができる。また、揺動選別篩と選別ファンを併用して破砕花蕾から葯を精度よく分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本願発明の自走式採蕾採葯機の外観構成図である。
【
図2】本願発明で採用する花蕾採取用専用樹示す写真と模式図である。
【
図3】本願発明の自走式採蕾採葯機の枝寄ガイドによる花蕾採取手段への花蕾の当接の態様を示す模式図である。
【
図4】本願発明の自走式採蕾採葯機の花蕾採取手段による花蕾採取の態様を示す模式図である。
【
図5】本願発明の自走式採蕾採葯機の花蕾移送部の構成を示す構成図である。
【
図6】本願発明の自走式採蕾採葯機の葯採取部の構成を示す構成図である。
【
図7】本願発明の自走式採蕾採葯機の葯採取部の駆動機構を示す写真である。
【
図8】本願発明の自走式採蕾採葯機による葯採取のステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明の自走式採蕾採葯機について、その実施態様を図面により説明する。
【0015】
(1)自走式採蕾採葯機
図1は、本願発明の自走式採蕾採葯機の外観構成図である。
図1(a)は自走式採蕾採葯機の正面図、
図1(b)は自走式採蕾採葯機の上面図、
図1(c)は自走式採蕾採葯機の右側面図、
図1(d)は自走式採蕾採葯機の左側面図である。
本願発明の自走式採蕾採葯機100は、花蕾採取部、花蕾移送部、葯採取部及び駆動機構を備える台車で構成される。
花蕾採取部10は、垂直に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面にブラシを周設した花蕾採取手段12と、花蕾採取手段12に花蕾を付けた果樹枝を当接させる枝寄ガイド11を備える。枝寄ガイド11は、格納が可能な構造となっており、採蕾作業を行わず移動するときには格納することでコンパクトとなり、安全に移動できる。枝掻き分けガイド11a、枝元押さえガイド11b、枝先押さえガイド11c、回動中心11dを備える。 花蕾移送部は、花蕾採取手段10の下方に設けられた花蕾移送用スロワ21と、花蕾移送用スロワ21により移送された花蕾を花蕾破砕手段の花蕾投入口へ移送する花蕾移送用昇降機22とを備える。
葯採取部30は、水平に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面に破砕刃を周設した花蕾破砕手段と、花蕾破砕手段の下方に設けた網状又は多孔状の破砕花蕾選別板と、破砕花蕾選別板の下方に設けた網状の揺動選別篩と、揺動選別篩の下方に設けた選別ファンと、選別した葯を収納する葯収納容器を備える。
花蕾採取部、花蕾移送部、葯採取部は、駆動機構3を備える台車2に載置されている。なお、花蕾採取部、花蕾移送部、葯採取部を筐体に収容して、駆動機構3を備える台車2に載置することができる。また、運転台4を設けて作業者1を乗せて駆動することもできる。
【0016】
(2)花蕾採取部
花蕾採取部10は、花蕾採取手段12に花蕾を付けた果樹枝を当接させる枝寄ガイド11と、垂直に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体の周面にブラシを周設した花蕾採取手段12で構成されている。以下、花蕾を付けた果樹枝13、枝寄ガイド11、花蕾採取手段12について説明する。
【0017】
(2-1)花蕾を付けた果樹枝
図2は、本願発明の自走式採蕾採葯機が花蕾を採取する花蕾採取用専用樹を示す。
図2(a)は花蕾採取用専用樹の写真であり、
図2(b)は花蕾採取用専用樹の模式図である。花蕾採取用専用樹は水平になった主枝先端部を同一方向に向かう1本の主枝を持つ隣接樹の主枝基幹部と接ぎ木することにより、樹木を連続的に連結したジョイント仕立ての樹形を有する。花蕾採取用専用樹は樹高800mで主幹をジョイントし上方に伸びた徒長枝(1年枝)で構成される。花蕾を付けた徒長枝(1年枝)(以下、「花蕾を付けた果樹枝」という。)から花蕾を採取する。本願発明の自走式採蕾採葯機は、枝寄ガイド11を設けることで、主幹をジョイントし上方に伸びた徒長枝(1年枝)から花蕾を採取できることが特徴である。
【0018】
(2-2)枝寄ガイド
図3は、本願発明の自走式採蕾採葯機の枝寄ガイド11により花蕾を付けた果樹枝13を花蕾採取手段に当接させる態様を示す。
図3(a)は自走式採蕾採葯機の正面を視点とした模式図であり、
図3(b)は自走式採蕾採葯機の上面を視点とした模式図である。自走式採蕾採葯機が進行方向へ移動するに従い、花蕾を付けた果樹枝13は、枝寄ガイド11により花蕾採取手段12へ誘導され、花蕾を付けた果樹枝13は花蕾採取手段12に当接して、花蕾が花蕾を付けた果樹枝13から採取される。具体的には、枝掻き分けガイド11aにより、徒長枝群を掻き分けて進み、掻き分けられた機体側の徒長枝は枝元押さえガイド11bによって下方に押されることにより、徒長枝の先端は徐々に機体側に向く。さらに枝先押さえガイドにより、徒長枝は徐々に水平になるように誘導され、枝元側から枝先側に向けて回転ブラシに接触する。
【0019】
(2-3)花蕾採取手段
図4は、花蕾採取手段12により花蕾を付けた果樹枝13から花蕾15が採取される態様を示す。
図4(a)は花蕾採取手段の斜視図であり、
図4(b)は花蕾採取手段の上面図である。花蕾採取手段12は垂直に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体16の周面にブラシ18を周設したものである。
図4ではブラシ18を回転胴体16の周面の対角位置に4箇所配置しているが、配置数、配置位置については適宜選択できる。周設するブラシの数は、複数個であれば特に限定されるものではない。ブラシの植毛材質としては、繊維状可撓性素材であれば特に限定されるものではない。天然繊維素材(例えば、獣毛)、合成繊維素材(例えば、ナイロン、ウレタン)を好適に用いることができる。繊維状可撓性素材の形態は線径が小さい可撓性素材を複数束ねた形態、線径が大きい可撓性素材1本形態のいずれも好適に用いることができる。線径(束径)は1mm~30mm、より好ましくは3mm~15mmであり、植毛間隔は花蕾を付けた果樹枝の形態により適宜選択でき、10mm~30mmが好適である。また、花蕾採取手段(ブラシを回転胴体)の周速度(回転速度)は、花蕾の採取率(花蕾を付けた果樹枝からの花蕾の除去率)を考慮して、適宜選択することができる。
【0020】
表1は、
図4(b)に示す態様の花蕾採取手段による花蕾除去率と周速度の関係を示すデータである。周速度は6.0~9.0m/secが好適である。なお、ブラシはナイロン素材(束径8mm,線径1mm)を取付間隔30mmで配置したものである。
【0021】
【0022】
(3)花蕾移送部
図5は、花蕾移送部20の構成を示す模式図であり、花蕾移送部20により花蕾15が移送される態様を示す。
図5(a)は花蕾移送部20の側面図であり、
図5(b)は花蕾移送部20の底面図である。花蕾移送部20は、花蕾採取手段12の下方に設けられた花蕾移送用スロワ21と、花蕾移送用スロワ21により移送された花蕾15を葯採取部30に設けた花蕾破砕手段の花蕾投入口へ移送する花蕾移送用昇降機22とを備える。花蕾採取手段12により採取された花蕾15を葯採取部30へ移送する役割を担う。
【0023】
(3-1)花蕾移送用スロワ
花蕾移送用スロワ21は、花蕾採取手段12の下方に設けられ、花蕾採取手段12によって打ち落された花蕾15を花蕾移送用昇降機22の入口へ移送する役割を担う。
【0024】
(3-2)花蕾移送用昇降機
花蕾移送用昇降機22は、花蕾15を葯採取部30に設けた花蕾破砕手段の花蕾投入口へ移送する役割を担う。なお、花蕾搬送用スロワ21により生じた風は、花蕾移送用昇降機22に併設した風路23により排出される。花柄、葉、花糸、花弁、萼(ガク)片などの不要物24(以下、「花弁等の不要物」という。)も風路23により排出される。
【0025】
(4)葯採取部
図6は、葯採取部30の構成を示す模式図である。
図6(a)は葯採取部30の上面図であり、
図6(b)は葯採取部30の側面図である。また、
図7は葯採取部30の駆動機構を示す写真である。
葯採取部30は、水平に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体31の周面に破砕刃32を周設した花蕾破砕手段33と、前記花蕾破砕手段33の下方に架設した網状又は多孔板状の破砕花蕾選別板34と、前記破砕花蕾選別板34の下方に設けた網状又は多孔板状の揺動選別篩35と、前記揺動選別篩35の下方に設けた選別ファン36と、選別した葯を収納する葯収納容器37と、を備える。
【0026】
(4-1)花蕾破砕手段
花蕾破砕手段33は、水平に軸架した駆動機構により軸回する回転胴体31の周面に破砕刃32を周設した態様である。破砕刃32により花蕾15を破砕する役割を担う。回転胴体31はモータ38からプーリ39、伝動用ベルト40を介して回転力を入手している。花蕾破砕手段33の下方には、破砕刃32の先端と少許の間隙を置いて破砕した花蕾のみを通過させるための半円筒状の曲面に網状の又は多孔板状の破砕花蕾選別板34を架設している。また、花蕾破砕手段33の上方には、破砕した花蕾の飛散を防ぐため半円筒状または方形のカバー筒26を設置し、カバー筒26の一端に花蕾投入口25を形成している。花蕾投入口25から投入された花蕾15は破砕刃32と破砕花蕾選別板34に押し付けられて破砕され、小さく破砕された葯と、花糸、花弁、萼(ガク)片などの不要物24が破砕花蕾選別板34の網目又は孔を通過して選別される。
破砕刃32は、花蕾15を破砕できる硬度を持つ金属素材または高分子素材で作製される。また、公知(実公平2-24457号公報)のように破砕刃とブラシを併用した態様も採用できる。
【0027】
(4-2)破砕花蕾選別板
破砕花蕾選別板34は、花蕾破砕手段33により破砕された花蕾を減容化する役割を担う。花蕾は水分が多く破砕刃32による破砕では団子状になる。このため、特定の大きさの網目又は孔径をもつ破砕花蕾選別板34を通過させ、下方に設けた揺動選別篩35上に載せる役割を担う。破砕花蕾選別板34の網目又は孔径は、減容化の程度により適宜選択できる。
【0028】
(4-3)揺動選別篩
揺動選別篩35は、モータ38により水平方向に揺動して、花蕾破砕手段33および破砕花蕾選別板34により減容化された花蕾から葯19(花糸付きを含む)のみを選別する役割を担う。揺動選別篩35の下方に設けた選別ファン36との協働により、花弁等の不要物24を上方へ風送し、葯19を下方に設けた葯収納容器37に落送する。揺動選別篩の揺動振動数は、5.2~7.0Hzが好適である。振動数5.2Hz未満では葯19(花糸付きを含む)の落送が遅くなり、振動数7.0Hzを超えると花弁等の不要物24を落送する頻度が高くなるからである。
【0029】
(4-4)選別ファン
選別ファン36は、揺動選別篩35により篩い分けられた葯19(花糸付きを含む)と花弁等の不要物24を選別する役割を担う。選別ファンの風速は、1.8~2.4m/sが好適である。風速1.8m/s未満では花弁等の不要物24の除去が十分でなく、風速2.4m/sを超えると葯19(花糸付きを含む)を排除する可能性が高くなるかからである。
【0030】
(5)駆動機構を備える台車
駆動機構を備える台車2は、走行用モータにより駆動される駆動機構3と走行を阻止する制動動作を行うブレーキ(図示せず)とを有する台車2であって、花蕾採取部10、花蕾移送部20、葯採取部30を載置できる大きさであれば、特に限定されない。また、作業者1を載せる運転台4を設けることができる。また、車高は花蕾採取用専用樹の樹高に合わせて適宜選択できる。
【0031】
(6)自走式採蕾採葯機による葯採取方法
図8は、本願発明の自走式採蕾採葯機100による葯採取のステップを示すフロー図である。本願発明の自走式採蕾採葯機100による葯採取方法は、自走して枝寄ガイド11により花蕾を付けた果樹枝13を花蕾採取手段12に当接させる枝寄ステップ(S01)と、花蕾を付けた果樹枝13を花蕾採取手段12により花蕾15を採取する花蕾採取ステップ(S02)と、採取した花蕾を花蕾移送用スロワ21及び花蕾移送用昇降機22により花蕾破砕手段33の花蕾投降口25に移送する花蕾移送ステップ(S03)と、花蕾破砕手段33により花蕾15を減容化する花蕾破砕ステップ(S04)と、破砕した花蕾を破砕花蕾選別板34、揺動選別篩35及び選別ファン36により葯収納容器37に葯19(花糸付きを含む)を落送して採取する葯選別採取ステップ(S05)と、からなる。
【0032】
(6-1)枝寄ステップ
枝寄ガイド11により花蕾を付けた果樹枝13を掻き分け機体前に押し、自走して枝寄ガイド11で花蕾を付けた果樹枝13を花蕾採取手段12に誘導する。
【0033】
(6-2)花蕾採取ステップ
花蕾採取手段12の回転ブラシ18に花蕾を付けた果樹枝13を当接して花蕾15を除去し、花蕾を付けた果樹枝12から採取した花蕾15を花蕾採取手段12の下方に設けた花蕾移送用スロワ21へ打ち落とす。
【0034】
(6-3)花蕾移送ステップ
花蕾採取手段12で打ち落とした花蕾15を花蕾移送用スワロ21で吸引し、花蕾移送用スロワ21の吐出口から花蕾移送用昇降機22下端に移送し、花蕾移送用昇降機22で花蕾破砕手段33の花蕾投入口25へ移送する。また空気は風路で、花弁等の不要物24と共に排出する。
【0035】
(6-4)花蕾破砕ステップ
花蕾15を花蕾破砕手段33により破砕し、破砕花蕾選別板34により、減容化して、揺動選別篩35へ落送する。
【0036】
(6-5)葯選別採取ステップ
揺動選別篩35と選別ファン36により、葯(花糸付きを含む)と花弁等の不要物24を分離し、葯19(花糸付きを含む)のみを葯収納容器37に落送して採取する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明により、花粉採取専用樹から採花、採葯、花粉精選等の一連の作業を自動で行うことができる。
【符号の説明】
【0038】
100 自走式採蕾採葯機
1 作業者
2 駆動機構を備える台車
3 走行用モータにより駆動される駆動機構
4 運転台
10 花蕾採取部
11 枝寄ガイド
11a 枝掻き分けガイド
11b 枝押さえガイド
11c 枝先押さえガイド
11d 回動中心
12 花蕾採取手段
13 花蕾を付けた果樹枝
14 主幹
15 花蕾
16 回転胴体
17 回転軸
18 ブラシ
19 葯
20 花蕾移送部
21 花蕾移送用スロワ
22 花蕾移送用昇降機
23 風路
24 花弁等の不要物
25 花蕾投入口
26 カバー筒
30 葯採取部
31 回転胴体
32 破砕刃
33 花蕾破砕手段
34 破砕花蕾選別板
35 揺動選別篩
36 選別ファン
37 葯収納容器
38 モータ
39 プーリ
40 伝動ベルト