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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】無線設定システム及び無線設定方法
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20240717BHJP
   H04W 4/02 20180101ALI20240717BHJP
   H04W 16/18 20090101ALI20240717BHJP
【FI】
H04Q9/00 301B
H04W4/02
H04W16/18 110
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021155837
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023046968
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】大久保 達弘
(72)【発明者】
【氏名】船山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】辰己 雅一
(72)【発明者】
【氏名】出口 信
(72)【発明者】
【氏名】野々下 愼二
(72)【発明者】
【氏名】小見山 佳之
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-057160(JP,A)
【文献】特開2019-036400(JP,A)
【文献】特開2019-192538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03J9/00-9/06
H04B7/24-7/26
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
H04W4/00-99/00
H05B39/00-39/10
45/00-45/59
47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器と、
前記無線機器と無線通信して当該無線機器に関する設定又は設定の補助を行う設定装置と、
を備え、
前記設定装置は、
表示部と、
前記設定装置と無線通信可能な前記無線機器を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける操作部と、
前記選択操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する設定制御部と、
を備え、
前記無線機器は、
視認可能な態様で応答を行う応答部と、
前記応答要求を受信した場合に前記応答部に応答を実行させる応答制御部と、
を備え
前記表示制御部は、前記設定装置との無線通信に係る電波強度が閾値以上である前記無線機器を抽出して前記表示部に表示させることを特徴とする無線設定システム。
【請求項2】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器と、
前記無線機器と無線通信して当該無線機器に関する設定又は設定の補助を行う設定装置と、
複数の前記無線機器のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報を記憶する記憶装置と、
を備え、
前記設定装置は、
表示部と、
前記設定装置と無線通信可能な前記無線機器を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける操作部と、
前記選択操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する設定制御部と、
を備え、
前記無線機器は、
視認可能な態様で応答を行う応答部と、
前記応答要求を受信した場合に前記応答部に応答を実行させる応答制御部と、
を備え
前記設定制御部は、前記記憶装置に記憶された前記通信情報に対して、前記無線機器のMACアドレスを追加して設定情報を作成することを特徴とする無線設定システム。
【請求項3】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器と、
前記無線機器と無線通信して当該無線機器に関する設定又は設定の補助を行う設定装置と、
複数の前記無線機器のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報を記憶する記憶装置と、
を備え、
前記設定装置は、
表示部と、
前記設定装置と無線通信可能な前記無線機器を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける操作部と、
前記選択操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する設定制御部と、
を備え、
前記無線機器は、
視認可能な態様で応答を行う応答部と、
前記応答要求を受信した場合に前記応答部に応答を実行させる応答制御部と、
を備え
前記設定制御部は、前記無線機器に対して、前記通信情報のうち送信先の前記無線機器に対応したIPアドレスを通知することを特徴とする無線設定システム。
【請求項4】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器と、
前記無線機器と無線通信して当該無線機器に関する設定又は設定の補助を行う設定装置と、
を備え、
前記設定装置は、
表示部と、
前記設定装置と無線通信可能な前記無線機器を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記表示部に表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける操作部と、
前記選択操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する設定制御部と、
を備え、
前記無線機器は、
視認可能な態様で応答を行う応答部と、
前記応答要求を受信した場合に前記応答部に応答を実行させる応答制御部と、
を備え、
天井から吊り下げられた軌道と、前記軌道に沿って走行する走行車と、を備える走行システムに対して前記無線機器が設けられることを特徴とする無線設定システム。
【請求項5】
請求項に記載の無線設定システムであって、
前記走行システムは、前記軌道に沿って設けられた給電線により、当該軌道を走行する前記走行車に対して非接触にて給電を行うものであり、
前記無線機器は、前記給電線が電気的に接続される端子台と当該給電線の接続箇所に設けられることを特徴とする無線設定システム。
【請求項6】
請求項に記載の無線設定システムであって、
前記無線機器は、前記端子台と前記給電線の接続箇所の温度を計測し、当該温度を無線通信で送信する無線温度センサであることを特徴とする無線設定システム。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の無線設定システムであって、
前記表示制御部は、前記無線機器が設置される領域のマップを前記表示部に表示させるとともに、前記無線機器の設置位置を前記マップ上に表示させることを特徴とする無線設定システム。
【請求項8】
請求項に記載の無線設定システムであって、
前記表示制御部は、前記マップ上の前記無線機器の設置位置をアイコンを用いて前記表示部に表示させ、
前記設定制御部は、前記アイコンが選択された場合、当該アイコンに応じた設定内容を適用する前記無線機器の選択を受け付けることを特徴とする無線設定システム。
【請求項9】
請求項に記載の無線設定システムであって、
前記表示制御部は、設定又は設定の準備が完了した前記無線機器に対応する前記アイコンと、設定及び設定の準備が行われていない前記アイコンと、の表示態様を異ならせて前記表示部に表示させることを特徴とする無線設定システム。
【請求項10】
請求項1からまでの何れか一項に記載の無線設定システムであって、
前記表示制御部は、前記設定装置と無線通信可能な複数の前記無線機器のリストを前記表示部に表示させ、
前記設定制御部は、前記選択操作により前記リストから選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信することを特徴とする無線設定システム。
【請求項11】
請求項10に記載の無線設定システムであって、
前記無線機器は、第1無線機器と第2無線機器を含み、
前記設定制御部は、前記選択操作により前記第1無線機器が選択された後に前記第2無線機器が選択された場合、前記第1無線機器に対して応答を中止する中止要求を送信し、前記第2無線機器に対して前記応答要求を送信することを特徴とする無線設定システム。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の無線設定システムであって、
前記応答部は発光部であり、
前記応答制御部は、前記応答要求を受信した場合に前記発光部を発光させることを特徴とする無線設定システム。
【請求項13】
請求項12に記載の無線設定システムであって、
前記発光部が発光ダイオードであることを特徴とする無線設定システム。
【請求項14】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器に対して設定装置を用いて設定を行う無線設定方法において、
無線通信可能な前記無線機器を前記設定装置に表示する表示工程と、
前記表示工程で表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する送信工程と、
前記送信工程で送信した応答要求を受けて無線機器の応答部に応答を実行させる応答工程と、
を含み、
前記表示工程では、前記設定装置との無線通信に係る電波強度が閾値以上である前記無線機器を抽出して前記設定装置に表示することを特徴とする無線設定方法。
【請求項15】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器に対して設定装置を用いて設定を行う無線設定方法において、
無線通信可能な前記無線機器を前記設定装置に表示する表示工程と、
前記表示工程で表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する送信工程と、
前記送信工程で送信した応答要求を受けて無線機器の応答部に応答を実行させる応答工程と、
を含み、
複数の前記無線機器のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報が記憶装置に記憶されており、
前記記憶装置に記憶された前記通信情報に対して、前記無線機器のMACアドレスを追加して設定情報を作成することを特徴とする無線設定方法。
【請求項16】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器に対して設定装置を用いて設定を行う無線設定方法において、
無線通信可能な前記無線機器を前記設定装置に表示する表示工程と、
前記表示工程で表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する送信工程と、
前記送信工程で送信した応答要求を受けて無線機器の応答部に応答を実行させる応答工程と、
を含み、
複数の前記無線機器のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報が記憶装置に記憶されており、
前記無線機器に対して、前記通信情報のうち送信先の前記無線機器に対応したIPアドレスを通知することを特徴とする無線設定方法。
【請求項17】
設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される複数の無線機器に対して設定装置を用いて設定を行う無線設定方法において、
天井から吊り下げられた軌道と、前記軌道に沿って走行する走行車と、を備える走行システムに対して前記無線機器が設けられ、
無線通信可能な前記無線機器を前記設定装置に表示する表示工程と、
前記表示工程で表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける受付工程と、
前記受付工程で受け付けた操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する送信工程と、
前記送信工程で送信した応答要求を受けて無線機器の応答部に応答を実行させる応答工程と、
を含むことを特徴とする無線設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、無線機器に関する設定を行う無線設定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無線機器に対して各種パラメータ等の固有情報を設定する方法を開示する。操作者は、固有情報設定装置を用いて、無線機器に対する設定を行う。具体的には、操作者は、固有情報設定装置を持ち運び、複数地点での無線機器の電波強度を計測する。固有情報設定装置は、複数地点での電波強度の計測結果に基づいて、フロアレイアウト図に無線機器の位置を表示する。操作者は、フロアレイアウト図に表示された無線機器を選択して、この無線機器に対応する固有情報を設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4974378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電波強度に基づいて推定された無線機器の位置は誤差を含むことがあるため、無線機器の正確な位置がフロアレイアウト図に表示されない可能性がある。この場合、操作者は、個々の無線機器の比較的近傍まで実際に近づいて無線機器を特定する情報(例えば、MACアドレス又は機器固有番号)を確認するという煩雑な作業を行う必要がある。また、無線機器が配置される場所によっては、この作業が更に煩雑になる可能性がある。例えば、無線機器が建屋の天井側に設置されている構成等においては、操作者が無線機器の近傍まで近づくために高所作業車を使用しなければならない場合があり、煩雑である。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、複数の無線機器の中から設定対象の無線機器を簡単かつ確実に特定できる無線設定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の無線設定システムが提供される。即ち、無線設定システムは、複数の無線機器と、設定装置と、を備える。前記無線機器は、設備に設置され、当該設備に対する位置が変化しないように固定される。前記設定装置は、前記無線機器と無線通信して当該無線機器に関する設定又は設定の補助を行う。前記設定装置は、表示部と、表示制御部と、操作部と、設定制御部と、を備える。前記表示制御部は、前記設定装置と無線通信可能な前記無線機器を前記表示部に表示させる。前記操作部は、前記表示部に表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける。前記設定制御部は、前記選択操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する。前記無線機器は、応答部と、応答制御部と、を備える。前記応答部は、視認可能な態様で応答を行う。前記応答制御部は、前記応答要求を受信した場合に前記応答部に応答を実行させる。
【0008】
これにより、作業者は、設定装置で選択した無線機器が設定対象の無線機器に合致しているか否かを無線機器に近づくことなく確認できる。従って、複数の無線機器の中から設定対象の無線機器を簡単かつ確実に特定できる。
【0009】
前記の無線設定システムにおいては、前記表示制御部は、前記無線機器が設置される領域のマップを前記表示部に表示させるとともに、前記無線機器の設置位置を前記マップ上に表示させることが好ましい。
【0010】
これにより、作業者は、マップ上の無線機器と実際の無線機器を比較して設定対象の無線機器を特定できる。従って、設定対象の無線機器を直感的に特定できる。
【0011】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記表示制御部は、前記マップ上の前記無線機器の設置位置をアイコンを用いて前記表示部に表示させる。前記設定制御部は、前記アイコンが選択された場合、当該アイコンに応じた設定内容を適用する前記無線機器の選択を受け付ける。
【0012】
これにより、アイコンを選択するだけで設定内容が切り替わるので、設定を容易に行うことができる。
【0013】
前記の無線設定システムにおいては、前記表示制御部は、設定又は設定の準備が完了した前記無線機器に対応する前記アイコンと、設定及び設定の準備が行われていない前記アイコンと、の表示態様を異ならせて前記表示部に表示させることが好ましい。
【0014】
これにより、作業者は、無線機器の設定の進捗状況を直感的に把握できる。
【0015】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記表示制御部は、前記設定装置と無線通信可能な複数の前記無線機器のリストを前記表示部に表示させる。前記設定制御部は、前記選択操作により前記リストから選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する。
【0016】
これにより、作業者は、リストに記載された無線機器と、目視で確認した無線機器と、の対応関係を容易に把握できる。
【0017】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記無線機器は、第1無線機器と第2無線機器を含む。前記設定制御部は、前記選択操作により前記第1無線機器が選択された後に前記第2無線機器が選択された場合、前記第1無線機器に対して応答を中止する中止要求を送信し、前記第2無線機器に対して前記応答要求を送信する。
【0018】
これにより、無線機器の選択を切り替えるだけで応答する無線機器が切り替わるので、応答を中止する操作が不要となり、作業者の手間を軽減できる。
【0019】
前記の無線設定システムにおいては、前記表示制御部は、前記設定装置との無線通信に係る電波強度が閾値以上である前記無線機器を前記表示部に表示させることが好ましい。
【0020】
これにより、設定装置から遠い位置に設置された無線機器が表示部に表示されにくい。言い換えれば、設定対象の可能性が低い無線機器が表示部に表示されにくいので、設定対象の無線機器を特定する作業を効率的に行うことができる。
【0021】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記応答部は発光部である。前記応答制御部は、前記応答要求を受信した場合に前記発光部を発光させる。
【0022】
これにより、作業者は、設定装置で選択した無線機器を容易に特定できる。
【0023】
前記の無線設定システムにおいては、前記発光部が発光ダイオードであることが好ましい。
【0024】
これにより、発光部を小型化し易いので、無線機器に搭載させ易くなる。
【0025】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、無線設定システムは、複数の前記無線機器のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報を記憶する記憶装置を備える。前記設定制御部は、前記記憶装置に記憶された前記通信情報に対して、前記無線機器のMACアドレスを追加して設定情報を作成する。
【0026】
これにより、複数の無線機器の通信に関する設定情報を作成できる。
【0027】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、無線設定システムは、複数の前記無線機器のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報を記憶する記憶装置を備える。前記設定制御部は、前記無線機器に対して、前記通信情報のうち送信先の前記無線機器に対応したIPアドレスを通知する。
【0028】
これにより、通信情報を無線機器側に設定することができる。
【0029】
前記の無線設定システムにおいては、天井から吊り下げられた軌道と、前記軌道に沿って走行する走行車と、を備える走行システムに対して前記無線機器が設けられることが好ましい。
【0030】
これにより、天井に設けられる無線機器に近づいて無線機器の情報を確認する作業を省略できる。
【0031】
前記の無線設定システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記走行システムは、前記軌道に沿って設けられた給電線により、当該軌道を走行する前記走行車に対して非接触にて給電を行うものである。前記無線機器は、前記給電線が電気的に接続される端子台と当該給電線の接続箇所に設けられる。
【0032】
これにより、接続箇所に設けられる無線機器に関する設定を容易に行うことができる。
【0033】
前記の無線設定システムにおいては、前記無線機器は、前記端子台と前記給電線の接続箇所の温度を計測し、当該温度を無線通信で送信する無線温度センサであることが好ましい。
【0034】
これにより、無線温度センサに関する設定を容易に行うことができる。
【0035】
本発明の第2の観点によれば、以下の無線設定方法が提供される。無線設定方法は、表示工程と、受付工程と、送信工程と、応答工程と、を含む。前記表示工程では、無線通信可能な前記無線機器を前記設定装置に表示する。前記受付工程では、前記表示工程で表示された前記無線機器を選択する選択操作を受け付ける。前記送信工程では、前記受付工程で受け付けた操作により選択された前記無線機器に対して、応答要求を送信する。前記応答工程では、前記送信工程で送信した応答要求を受けて無線機器の応答部に応答を実行させる。
【0036】
これにより、作業者は、設定装置で選択した無線機器が設定対象の無線機器に合致しているか否かを無線機器に近づくことなく確認できる。従って、複数の無線機器の中から設定対象の無線機器を簡単かつ確実に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る無線設定システムの概要を示す模式図。
図2】給電線と端子台の接続箇所の構成を示す模式図。
図3】無線設定システムのブロック図。
図4】通信情報及び設定情報の内容を示す表。
図5】無線機器に設定を行う処理の流れを示すシーケンス図。
図6】無線機器の設定時に設定装置に表示される画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1から図3を参照して、走行システム1及び無線設定システム100について説明する。
【0039】
図1に示す走行システム1は、半導体製造工場又は倉庫等の施設に設けられ、物品を搬送するために用いられる。走行システム1が搬送する物品は、ウエハ(半導体ウエハ)を収容するFOUP(Front-Opening Unified Pod)又はウエハカセットである。なお、物品は、レチクルを収容するレチクルポッドであってもよい。また、走行システム1が倉庫に設けられる場合、走行システム1が搬送する物品は、倉庫に保管される商品又は部品等である。
【0040】
図1に示すように、走行システム1は、軌道2と、走行車5と、を備える。軌道2は、工場又は倉庫の天井から吊り下げられている。本実施形態の走行車5は、OHT(Overhead Hoist Transfer)である。走行車5は、軌道2に沿って無人で走行して物品を搬送する車両である。走行車5は図略のモータ及び車輪を備えており、モータが発生させた駆動力が車輪に伝達されることで軌道2に沿って走行する。
【0041】
走行システム1は、軌道2に沿って設けられた給電線3を備える。走行車5は、電磁誘導により非接触で給電線3から電力を得る。これにより、走行車5は、軌道2に沿って走行しながら給電線3から電力を得ることができる。給電線3は、細長い形状の導体である。図2に示すように、給電線3の長手方向の端部同士は、端子台4により電気的及び機械的に接続されている。
【0042】
走行システム1には、無線設定システム100が設けられている。無線設定システム100は、複数の無線機器10と、設定装置20と、管理装置30と、を備える。無線設定システム100は、作業者が設定装置20を操作して、無線機器10に関する設定を行うためのシステムである。以下、無線機器10、設定装置20、及び管理装置30の詳細な構成について説明する。
【0043】
無線機器10は、無線通信が可能な機器である。無線機器10は、軌道2(設備)に対して位置が変化しないように固定されている。本実施形態の無線機器10は、給電線3と端子台4の接続箇所の温度を計測して、計測結果を無線で送信する無線温度センサである。本明細書において「給電線3と端子台4の接続箇所」とは、給電線3と端子台4が接触している箇所だけでなく、その周囲を含むものとする。従って、給電線3の端部のうち端子台4と接触していない箇所であっても「給電線3と端子台4の接続箇所」に該当する。
【0044】
図2に示すように、無線機器10は、温度センサ11と、通信部12と、応答制御部13と、応答部14と、を備える。
【0045】
温度センサ11は、給電線3と端子台4の接続箇所の温度を計測する。図2に示すように、本実施形態の給電線3は一対で設けられている。そのため、図2に示すように、給電線3と端子台4の接続箇所には、4つの給電線3が位置している。温度センサ11は、4つの給電線3の端部にそれぞれ設けられている。4つの温度センサ11は、計測結果を通信部12へ出力する。なお、温度センサ11が計測する箇所は一例であり、本実施形態とは異なる箇所を計測してもよい。
【0046】
通信部12は、無線通信を行う無線モジュールである。通信部12は、少なくとも設定装置20と無線通信を行うことができる。本実施形態の無線機器10は、更に、設定装置20以外の機器(例えば、他の無線機器10、管理装置30、図略の中継器又はアクセスポイント装置)と無線通信を行うこともできる。通信部12が行う無線通信の規格としては、例えばIEEE 802.11規格が用いられるが、異なる規格に基づく無線通信が行われてもよい。通信部12は、温度センサ11の計測結果を無線で外部へ送信する。計測結果の送信先は、例えば、他の無線機器10又は管理装置30である。
【0047】
応答制御部13及び応答部14は、無線機器10の設定のために用いられる構成である。応答制御部13は、応答制御を行うための制御基板を含んで構成される。応答制御とは、設定装置20から応答要求を受信したときに応答部14を応答させる制御である。具体的には、応答制御部13は応答要求に含まれるパラメータ(例えば、初期IPアドレス、指示内容、点灯時間など)に基づいて、応答部14を応答させる制御を行う。当該初期IPアドレスは、本実施形態においては、無線機器10それぞれに例えば工場出荷時に自動的に割り当てられたものであるが、作業者によって事前に割り当てられたものであってもよい。応答部14は、応答制御部13の制御に基づいて、作業者が視覚で確認できる態様で応答を行う。本実施形態の応答部14はLED(発光ダイオード)であり、LEDを発光(点灯又は点滅)させることで応答を行う。
【0048】
なお、応答部14は、LED以外の発光部(例えば、蛍光灯)であってもよい。また、応答部14は発光部に限られず、ディスプレイ(例えば、7セグメントディスプレイ又はドットマトリクス型ディスプレイ)であってもよい。応答部14がディスプレイである場合、表示内容を変化させることで応答を行う。また、応答部14は、所定の部材を搖動させることで視認可能な応答を行う構成であってもよい。
【0049】
設定装置20は、無線機器10の設定又は設定の補助を行うための装置である。設定の補助とは、例えば、無線機器10の設定の一部の処理を行ったり、無線機器10の設定を行うためのデータを取得したりすることである。設定装置20は、設定を行う作業者によって操作される装置であり、本実施形態ではタブレット端末である。設定装置20は、タブレット端末に限られず、例えば、スマートフォン、ウェアラブルデバイス、又はノートPCであってもよい。図3に示すように、設定装置20は、通信部21と、表示部22と、操作部23と、表示制御部24と、設定制御部25と、を備える。
【0050】
通信部21は、無線機器10及び管理装置30と無線通信を行うための無線モジュールである。通信部21が行う無線通信の規格としては、例えばIEEE 802.11規格が用いられるが、異なる規格に基づく無線通信が行われてもよい。
【0051】
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイであり、様々な情報を表示することができる。ここで、様々な情報とは、例えば走行システム1が設けられる領域のマップ(複数の無線機器10が設置される領域のマップ)、無線機器10の設置位置を示すアイコン、及び操作を受け付けるためのアイコン等である。操作部23は、作業者の操作を受け付ける。操作部23は、作業者が行った操作を検出し、操作内容に応じた電気信号を出力する。本実施形態の操作部23は、タッチパネルであり、作業者によるタッチ操作を受け付ける。操作部23はタッチパネルに限られず、ボタン又はキー等のハードウェアキーであってもよい。
【0052】
設定装置20は、CPU等の演算装置と、フラッシュメモリ又はSSD等の記憶媒体と、を備える。演算装置は、記憶媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより設定装置20に関する様々な処理を行う。演算装置及び記憶媒体により、表示制御部24及び設定制御部25が実現される。表示制御部24は、表示部22に画像を表示する制御を行う。設定制御部25は、無線機器10の設定に関する制御を行う(詳細は後述)。なお、設定装置20は、図2に示す温度センサ11の計測結果を受信できてもよい。
【0053】
管理装置30は、PC又はサーバであり、CPU等の演算装置と、フラッシュメモリ、HDD、SSD等の記憶媒体と、通信装置と、を備える。管理装置30は、走行車5に物品の搬送に関する指令を送信したり、無線機器10の設定を行うための情報を記憶したり、図2に示す温度センサ11の計測結果の受信等を行う。
【0054】
本実施形態では、1つの管理装置30が、走行システム1を管理する機能と、無線設定システム100を管理する機能と、を備える。これに代えて、走行システム1を管理する管理装置と、無線設定システム100を管理する管理装置と、が別のハードウェアであってもよい。なお、管理装置30は、走行システム1を管理する機能を備え、無線設定システム100との間に設けられた中継装置(情報収集装置)を介して、図2に示す温度センサ11の計測結果等を受信できてもよい。かかる構成において、中継装置は、例えば複数の無線機器10から図2に示す温度センサ11の計測結果を収集し、当該収集された計測結果をまとめて管理装置30に送信する。
【0055】
次に、図4から図6を参照して、無線機器10の設定を行う処理の流れを説明する。
【0056】
本実施形態において、無線機器10の設定とは、軌道2に設けられた複数の無線機器10のMACアドレスを取得して、無線機器10の識別情報と対応付けて登録することである。具体的には、管理装置30は、図4に示す通信情報を予め記憶している。なお、管理装置30に代えて又は加えて設定装置20が通信情報を記憶していてもよい。
【0057】
図4に示す通信情報の各行は、それぞれ1つの無線機器10に対応している。通信情報は、IPアドレス、無線グループID、端子台ID、ホスト名、SSIDを含む。IPアドレスは、無線機器10に割り当てられるローカルIPアドレスである。無線グループIDは、無線機器10の所属する無線グループのIDである。無線機器が数多く存在する場合には、それぞれの無線機器10は管理のため複数の無線グループに分類され、無線グループIDが割り当てられる。無線グループIDが同じ無線機器10は、同一の親機(例えばアクセスポイント等)に接続される。端子台IDは、端子台4毎に設けられるIDである。本実施形態では端子台4毎に1つの無線機器10が設けられるので、端子台IDは無線機器10を一意に特定する固有情報である。ホスト名及びSSIDは無線通信で用いられる情報である。
【0058】
また、無線機器10を軌道2に設置する段階では、無線機器10のMACアドレスを記録しない。従って、無線機器10の設置が完了した時点では、設置された無線機器10のMACアドレスは不明である。従って、通信情報のMACアドレスの欄は空欄である。ここで、無線機器10は天井に吊り下げられた軌道2に設けられているため、作業者が無線機器10に近づいて無線機器10に記載されたMACアドレスを確認する作業は非常に手間となる。この点、本実施形態では、設定装置20を用いて後述の処理を行うことにより、通信情報に記載されたそれぞれの無線機器10のMACアドレスを遠隔で特定でき、通信情報に対してMACアドレスを追記できる。通信情報に対してMACアドレスを追記した情報が設定情報である。本実施形態において、無線機器10の設定とは、通信情報のMACアドレスの欄に該当するMACアドレスを記入して設定情報を作成することである。
【0059】
図5に示すシーケンス図をもとに、無線機器10の設定を行う手順を説明する。なお、設定装置20は、無線機器10とは無線接続され、通信できる状況にあることを前提に説明する。具体的には、設定装置20は、無線機器10に予め設定されている初期IPアドレスをもとに無線接続がなされている。
【0060】
まず、無線機器10の設定を開始する場合、作業者は、設定装置20を操作して設定開始の指示を行う。設定装置20は、設定開始の指示を受領する(シーケンス番号S1)。この指示を受けて、設定装置20の表示制御部24は、マップ41及びアイコン42を表示部22に表示させる(シーケンス番号S2)。
【0061】
図6に示すように、表示部22に表示されるマップ41は、走行システム1が設けられる領域を示す。本実施形態のマップ41は、軌道及び他の設備を含む概略平面図であるが、他の態様で領域を表示してもよい。アイコン42は、無線機器10の設置位置を示す。マップ41、及びアイコン42の位置は、設定装置20又は管理装置30に予め記憶されている。特に、無線機器10各々の設置位置は、通信情報と対応付けて記憶されている。従って、無線機器10の設置位置が特定された場合、それに対応する通信情報を特定できる。
【0062】
設定装置20は、アイコン42の選択を受け付ける。作業者は、例えばマップ41に表示されたアイコン42をタップすることでアイコン42を選択可能である。作業者は、アイコン42を選択することにより設定を行う対象の無線機器10を指示する。
【0063】
アイコン42は、選択機器アイコン42a、設定済み機器アイコン42b、未設定機器アイコン42cの3種類に分類され、それぞれのアイコン42は表示態様が異なる。アイコン42の表示態様とは、例えば、アイコン42の色、形状、大きさ、点滅の有無等である。選択機器アイコン42aは、作業者が選択中の無線機器10であり、言い換えれば設定を行う対象の無線機器10を示す。設定済み機器アイコン42bは、設定が完了した又は設定の準備中の無線機器10を示す。設定の準備中とは、無線機器10に適用する設定情報が特定されているが、設定情報が反映されていない状態である。設定済みの機器アイコン42bを例えばグレーアウトして作業者が選択できないようにしてもよい。未設定機器アイコン42cは、設定が完了していない無線機器10を示す。なお、アイコン42は3種類に限られず、上述した3種類のうち何れか2種類に分類されてもよい。あるいは、4種類以上に分類されてもよい。
【0064】
設定装置20は、作業者によるアイコン42の選択を受けて、作業者が選択したアイコン42に対応する無線機器10の通信情報を読み出す(シーケンス番号S3)。即ち、設定装置20は、作業者が選択したアイコン42を特定し、当該アイコン42が示す無線機器10の通信情報を読み出す。設定装置20は、例えば、設定の開始時に全ての無線機器10の通信情報を管理装置30から取得し、自身の記憶媒体から通信情報を読み出す。これに代えて、設定装置20は、アイコン42が特定される毎に管理装置30にアクセスして、管理装置30から通信情報を読み出してもよい。以後は、作業者が選択したアイコン42が示す無線機器10が設定の対象となる。なお、作業者が選択するアイコン42を変更した場合、設定装置20は、新たに選択されたアイコン42が示す無線機器10の通信情報を読み出し、設定の対象となる無線機器10が変更される。また、設定装置20は、作業者によるアイコン42の選択を受けて、アイコン42の表示態様を変更する。これにより、選択されたアイコン42が選択機器アイコン42aとして表示される。
【0065】
次に、設定装置20は、設定装置20が接続可能な無線機器10を探索する(シーケンス番号S4)。この処理は、無線通信で一般的に行われる機器探索により行われる。次に、設定装置20の表示制御部24は、機器探索により見つかった無線機器10のリストである接続機器リストを表示部22に表示させる(シーケンス番号S5)。接続機器リストには、それぞれの無線機器10について、機器探索により得られた情報、例えば、MACアドレス、現在のIPアドレス、ホスト名等が表示される。
【0066】
本実施形態の設定装置20は、機器探索により見つかった無線機器10のうち、電波強度が閾値以上の無線機器10を抽出して、これらの無線機器10を電波強度の強い順に接続機器リストに表示する。これにより、作業者(即ち設定装置20)に近い無線機器10を優先的に表示できる。これに代えて、設定装置20は、機器探索により見つかった無線機器10の全てを接続機器リストに表示してもよいし、電波強度の強い順の所定数の無線機器10を接続機器リストに表示してもよい。従って、接続機器リストに電波強度が最も強い、ただ1つの無線機器10が表示される構成であってもよい。
【0067】
また、設定装置20は、接続機器リストに記載された無線機器10の選択を受け付ける。作業者は、例えば接続機器リストに記載された無線機器10(詳細には無線機器10に関する情報、以下同じ)をタップする選択操作を行うことで無線機器10を選択可能である。ここで作業者が選択した無線機器10を以下では第1無線機器と称する。また、選択操作は、タップに限られず、例えばポインタを移動させて無線機器10を選択する操作であってもよいし、上下キーを操作して無線機器10を選択する操作であってもよい。
【0068】
設定装置20は、作業者が選択した第1無線機器を特定する(シーケンス番号S6)。設定装置20の設定制御部25は、作業者が選択した第1無線機器に応答要求を送信する(シーケンス番号S7)。応答要求は設定制御部25により生成され、通信部21を介して第1無線機器に送信される。応答要求とは、上述した応答部14に応答を行わせるための信号である。応答要求には、初期IPアドレス、指示内容(例えばLED点灯指示)、LED点灯時間等を含む。
【0069】
第1無線機器の応答制御部13は、応答要求を受けて、応答部14に応答を実行させる(シーケンス番号S8)。具体的には、応答制御部13は、LEDに駆動電流を供給してLEDを所定の発光パターン(例えば赤色が周期的に点滅する等)で発光させる。作業者は、表示部22のマップ41上の選択機器アイコン42aの位置と、応答を行った実際の第1無線機器の位置と、を比較する。本実施形態では、第1無線機器の応答部14が発光しているため、作業者は、接続機器リストで選択した無線機器10の実際の位置を、一定の距離を離れていても視認できる。従って、複数の無線機器10の中から選択した無線機器10を簡単かつ確実に特定できる。
【0070】
ここでは、マップ41上で選択した無線機器10が第1無線機器とは合致しないものとする。具体的には、作業者が表示部22のマップ41上の選択機器アイコン42aに対応する位置に設置されているはずの無線機器10のLEDが所定の発光パターンで発光しない場合である。この場合、作業者は、接続機器リストから次の無線機器10を選択する。ここで作業者が選択した無線機器10を以下では第2無線機器と称する。設定装置20は、作業者が選択した第2無線機器を特定する(シーケンス番号S9)。
【0071】
設定装置20の設定制御部25は、作業者が選択した無線機器10が第2無線機器に切り替わったことを受けて、第1無線機器に中止要求を送信する(シーケンス番号S10)。中止要求とは、応答部14による応答を中止させるための信号である。第1無線機器の応答制御部13は、中止要求を受けて、応答部14の応答を中止する(シーケンス番号S11)。具体的には、第1無線機器の応答制御部13は、LEDに供給していた駆動電流を停止して、LEDの発光を中止する。このように、本実施形態では、接続機器リストから選択された無線機器10が切り替わることで、以前に選択されていた無線機器10に設定装置20が自動的に中止要求を送信する。従って、2つの無線機器10の応答部14が同時に応答を行うことを抑制できる。
【0072】
なお、中止要求の有無に関係なく、応答制御部13は、応答の開始から閾値時間(例えば1秒程度)が経過した後に、応答部14による応答を中止させる。これにより、応答部14が応答し続けることを抑制できる。
【0073】
次に、設定装置20の設定制御部25は、作業者が新たに選択した第2無線機器に応答要求を送信する(シーケンス番号S12)。第2無線機器の応答制御部13は、応答要求を受けて、応答部14に応答を実行させる(シーケンス番号S13)。本実施形態では、中止要求の送信後に応答要求が送信されるが、その時間差は殆どなく、実質的に同じタイミングである。従って、作業者からは、第1無線機器のLEDが消灯した瞬間に第2無線機器のLEDが発光したように見える。
【0074】
作業者は、再び、表示部22のマップ41上の選択機器アイコン42aの位置と、応答を行った実際の第2無線機器の位置と、を比較する。ここでは、これらの無線機器10の位置が合致したものとする。次に、作業者は、操作部23を操作して、選択して第2無線機器に対して設定を続行する旨の指示を行う。
【0075】
設定装置20の表示制御部24は、この設定続行の指示を受けて(シーケンス番号S14)、設定画面を表示部22に表示させる(シーケンス番号S15)。設定画面とは、設定の実行の指示を受け付けるための画面である。設定画面には、設定内容、即ち、マップ41上で選択した無線機器10の通信情報に、接続機器リストで選択した第2無線機器のMACアドレスを追記して、設定情報を作成することを確認するための画面である。
【0076】
作業者は、設定内容を確認した後に、設定を実行する指示を行う。設定装置20の設定制御部25は、設定の指示を受けて(シーケンス番号S16)、上述した設定情報を作成する(シーケンス番号S17)。また、設定装置20は、マップ41に含まれる情報に、無線機器10のIPアドレス及びMACアドレスの少なくとも一方を対応付けて記憶する。これにより、マップ41上の無線機器10の位置等の情報を、無線機器10のIPアドレス又はMACアドレス等の情報と関連付けて管理できる。
【0077】
次に、設定装置20は、設定を実行した第2無線機器に対して、設定情報が示すIPアドレスを通知して設定を反映させる(シーケンス番号S18)。その後、第2無線機器が再起動することにより、第2無線機器側での設定が完了する。
【0078】
以上により、1つの無線機器10についての設定が完了する。作業者は、この作業を軌道2に設けられた全ての無線機器10について行う。その後、設定装置20は、作成した設定情報を管理装置30へ送信する。以上により、全ての無線機器10についての設定が反映される。
【0079】
以上に説明したように、本実施形態の無線設定システム100は、複数の無線機器10と、設定装置20と、を備え、以下の無線設定方法を行う。無線機器10は、軌道2に設置され、軌道2に対する位置が変化しないように固定される。設定装置20は、無線機器10と無線通信して無線機器10に関する設定又は設定の補助を行う。設定装置20は、表示部22と、表示制御部24と、操作部23と、設定制御部25と、を備える。表示制御部24は、設定装置20と無線通信可能な無線機器10を表示部22に表示させる(表示工程)。操作部23は、表示部22に表示された無線機器10を選択する選択操作を受け付ける(受付工程)。設定制御部25は、選択操作により選択された無線機器10に対して、応答要求を送信する(送信工程)。無線機器10は、応答部14と、応答制御部13と、を備える。応答部14は、視認可能な態様で応答を行う。応答制御部13は、応答要求を受信した場合に応答部14に応答を実行させる(応答工程)。
【0080】
これにより、作業者は、設定装置20で選択した無線機器10が設定対象の無線機器10に合致しているか否かを無線機器10に近づくことなく確認できる。従って、複数の無線機器10の中から設定対象の無線機器10を簡単かつ確実に特定できる。
【0081】
本実施形態の無線設定システム100において、表示制御部24は、無線機器10が設置される領域のマップ41を表示部22に表示させるとともに、無線機器10の設置位置をマップ41上に表示させる。
【0082】
これにより、作業者は、マップ41上の無線機器10と実際の無線機器10を比較して設定対象の無線機器10を特定できる。従って、設定対象の無線機器10を直感的に特定できる。
【0083】
本実施形態の無線設定システム100において、表示制御部24は、マップ41上の無線機器10の設置位置をアイコン42を用いて表示部22に表示させる。設定制御部25は、アイコン42が選択された場合、アイコン42に応じた設定内容を適用する無線機器10の選択を受け付ける。
【0084】
これにより、アイコン42を選択するだけで設定内容が切り替わるので、設定を容易に行うことができる。
【0085】
本実施形態の無線設定システム100において、表示制御部24は、設定又は設定の準備が完了した無線機器10に対応する設定済み機器アイコン42bと、設定及び設定の準備が行われていない未設定機器アイコン42cと、の表示態様を異ならせて表示部22に表示させる。
【0086】
これにより、作業者は、無線機器10の設定の進捗状況を直感的に把握できる。
【0087】
本実施形態の無線設定システム100において、表示制御部24は、設定装置20と無線通信可能な複数の無線機器10の表示部22を表示部22に表示させる。設定制御部25は、選択操作により表示部22から選択された無線機器10に対して、応答要求を送信する。
【0088】
これにより、作業者は、接続機器リストに記載された無線機器10と、目視で確認した無線機器10と、の対応関係を容易に把握できる。
【0089】
本実施形態の無線設定システム100において、無線機器10は、第1無線機器と第2無線機器を含む。設定制御部25は、選択操作により第1無線機器が選択された後に第2無線機器が選択された場合、第1無線機器に対して応答を中止する中止要求を送信し、第2無線機器に対して応答要求を送信する。
【0090】
これにより、無線機器10の選択を切り替えるだけで応答する無線機器10が切り替わるので、応答を中止する操作が不要となり、作業者の手間を軽減できる。
【0091】
本実施形態の無線設定システム100において、表示制御部24は、設定装置20との無線通信に係る電波強度が閾値以上である無線機器10を抽出して表示部22に表示させる。
【0092】
これにより、設定装置20から遠い位置に設置された無線機器10が表示部22に表示されにくい。言い換えれば、設定対象の可能性が低い無線機器10が表示部に表示されにくいので、設定対象の無線機器10を特定する作業を効率的に行うことができる。
【0093】
本実施形態の無線設定システム100において、応答部14は発光部である。応答制御部13は、応答要求を受信した場合に発光部を発光させる。
【0094】
これにより、作業者は、設定装置20で選択した無線機器10を容易に特定できる。
【0095】
本実施形態の無線設定システム100において、応答部14が発光ダイオードである。
【0096】
これにより、応答部14を小型化し易いので、無線機器10に搭載させ易くなる。
【0097】
本実施形態の無線設定システム100は、複数の無線機器10のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報を記憶する管理装置30を備える。設定制御部25は、管理装置30に記憶された通信情報に対して、無線機器10のMACアドレスを追加して設定情報を作成する。
【0098】
これにより、複数の無線機器10の通信に関する設定情報を作成できる。
【0099】
本実施形態の無線設定システム100は、複数の無線機器10のそれぞれに対応して予め定められた、少なくともIPアドレスを含む通信情報を記憶する記憶装置を備える。設定制御部25は、無線機器10に対して、通信情報のうち送信先の無線機器10に対応したIPアドレスを通知する。
【0100】
これにより、通信情報を無線機器10側に設定することができる。
【0101】
本実施形態の無線設定システム100では、天井から吊り下げられた軌道2と、軌道2に沿って走行する走行車5と、を備える走行システム1に対して無線機器10が設けられる。
【0102】
これにより、天井に設けられる無線機器10に近づいて無線機器10の情報を確認する作業を省略できる。
【0103】
本実施形態の無線設定システム100において、走行システム1は、軌道2に沿って設けられた給電線3により、軌道2を走行する走行車5に対して非接触にて給電を行うものである。無線機器10は、給電線3が電気的に接続される端子台4と給電線3の接続箇所に設けられる。
【0104】
これにより、接続箇所に設けられる無線機器10に関する設定を容易に行うことができる。
【0105】
本実施形態の無線設定システム100において、無線機器10は、端子台4と給電線3の接続箇所の温度を計測し、温度を無線通信で送信する無線温度センサである。
【0106】
これにより、無線温度センサに関する設定を容易に行うことができる。
【0107】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0108】
無線機器10の設定において管理装置30は必須の構成要素ではなく省略可能である。この場合、設定装置20が無線機器10の設定に関する管理(設定情報の記憶及び更新等)を行ってもよい。
【0109】
上記実施形態で示したシーケンス図は一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、マップ41上のアイコン42を表示する処理を省略し、設定内容を示す表に基づいて無線機器10を選択してもよい。また、接続可能な無線機器10を探索する処理を随時行って、接続機器リストを適宜のタイミングで更新してもよい。
【0110】
設定装置20のマップ41上に設定装置20の位置を表示してもよい。具体的には、設定済みの無線機器10については、マップ41上の位置と電波強度が特定できる。従って、複数の無線機器10について設定が完了した後は、当該複数の無線機器10の電波強度に基づいて設定装置20の位置を推定できる。
【0111】
上記実施形態の無線機器10は無線温度センサであるが、走行システム1に設けられる別の無線機器(例えば、給電設備や走行設備を無線通信可能にするための無線機器)に無線設定システム100を適用できる。また、無線機器10の設置先は走行システム1に限られず、設定が必要な無線機器が設置される様々なシステム又は装置に無線設定システム100を適用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 走行システム
2 軌道(設備)
3 給電線
4 端子台
5 走行車
10 無線機器
20 設定装置
30 管理装置(記憶装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6