(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】運転支援システムをテストするための可動のレーダ反射要素を備えたダミー装置
(51)【国際特許分類】
G01M 7/08 20060101AFI20240717BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01M7/08 A
G01M17/007 Z
(21)【出願番号】P 2021534944
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2020051023
(87)【国際公開番号】W WO2020148386
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】102019101100.0
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515345366
【氏名又は名称】4アクティブシステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハフェルナー、ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ、マーティン
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-274455(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02929814(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013113466(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356674(US,A1)
【文献】特表2014-515115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/08
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シミュレーション領域を有する基体と、
前記シミュレーション領域に配置されている少なくとも一つのシミュレーション要素とを備え、
前記基体は、シミュレートされるべき対象を模倣し、前記シミュレーション領域は、前記シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣し、
前記シミュレーション要素は、前記シミュレートされるべき対象の前記可動部分の運動がシミュレート可能であるように信号を反射及び/又は放射するように構成されてい
て、
前記シミュレーション要素の速度は、環境に対して相対的な、前記基体の速度に依存して、制御可能である、
運転支援システム用のテストを実施するためのダミー装置。
【請求項2】
前記シミュレーション要素は、前記シミュレーション領域に対して相対的に可動である、請求項1に記載のダミー装置。
【請求項3】
前記シミュレーション要素は、再帰反射
要素を有する、請求項1又は2に記載のダミー装置。
【請求項4】
前記シミュレーション要素は、凹面領域を含む表面を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項5】
前記シミュレーション要素は、凸面領域を含む別の表面を有し、
前記表面と前記別の表面とは互いに反対側にある、
請求項4に記載のダミー装置。
【請求項6】
前記シミュレーション要素は、表面と、前記表面の反対側にある別の表面とを有し、
前記表面と前記別の表面とは、本質的に平坦に形成されている、
請求項1又は2に記載のダミー装置。
【請求項7】
前記シミュレーション要素は、レーダ反射要素を有し、前記信号は、レーダ波である、請求項1から6までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項8】
前記シミュレーション要素は、旋回点で前記基体に固定されかつ旋回可能に支持されていて、
前記シミュレーション要素は、前記旋回点を中心とした回転運動及び振子運動の少なくとも一つを行うように構成されている、
請求項1から7までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項9】
前記シミュレーション要素は、
主延在方向が前記旋回点から本質的に半径方向に延びる棒状要素と、
前記棒状要素に取り付けられている少なくとも一つの反射及び/又は放射要素とを有する、
請求項8に記載のダミー装置。
【請求項10】
前記旋回点と前記反射及び/又は放射要素との間の半径方向の間隔は、前記シミュレーション領域の直径d
rよりも
小さい、請求項9に記載のダミー装置。
【請求項11】
前記棒状要素は、前記旋回点の両側から延在し、
前記シミュレーション要素は、第二の反射及び/又は放射要素を有し、
前記第二の反射及び/又は放射要素は、前記棒状要素に取り付けられていて、
前記反射及び/又は放射要素と前記第二の反射及び/又は放射要素とは、前記旋回点の反対側に取り付けられている、
請求項9又は10に記載のダミー装置。
【請求項12】
前記シミュレーション要素は、
前記旋回点に旋回可能に支持されているディスクと、
前記ディスクの円周に取り付けられている少なくとも一つの反射及び/又は放射要素とを有する、
請求項8に記載のダミー装置。
【請求項13】
前記反射及び/又は放射要素は、金属
要素である、請求項12に記載のダミー装置。
【請求項14】
前記シミュレーション要素は、少なくとも一つの別の反射及び/又は放射要素を有し、
前記反射及び/又は放射要素と、前記別の反射及び/又は放射要素とは、それぞれ表面と、それぞれ前記表面の反対側にある別の表面とを含み、
前記表面は、前記信号を、前記別の表面よりも強く反射及び/又は放射するように構成されていて、
前記反射及び/又は放射要素の前記表面と、前記別の反射及び/又は放射要素の前記表面とは、前記ディスクの円周に沿って反対方向を向く、
請求項12に記載のダミー装置。
【請求項15】
前記反射及び/又は放射要素と前記別の反射及び/又は放射要素とは、前記円周に沿って交互に取り付けられている、請求項14に記載のダミー装置。
【請求項16】
前記ディスクの直径d
sは、前記シミュレーション領域の直径d
rよりも
小さい、請求項12から15までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項17】
前記ディスクは、一つの角速度で旋回可能であるように構成されているため、前記反射及び/又は放射要素が、前記シミュレートされるべき対象の前記可動部分と本質的に同じ速度で可動である、請求項12から16までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項18】
前記シミュレーション要素は、
棒状要素と、
前記棒状要素の一端に取り付けられている少なくとも一つの反射及び/又は放射要素とを有する、
請求項1から7までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項19】
前記棒状要素は
、本質的に線形運動を行うように構成されている、請求項18に記載のダミー装置。
【請求項20】
前記反射及び/又は放射要素の再帰反射要素を含む表面は、
前記棒状要素の主延在軸に対して本質的に垂直に向けられている、請求項19に記載のダミー装置。
【請求項21】
前記棒状要素は、前記棒状要素が前記シミュレートされるべき対象の前記可動部分の速度成分に本質的に相応する速度で可動であるように、前記シミュレーション領域に配置されている、請求項18から20までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項22】
前記棒状要素の速度は、経時的に正弦波状に変化可能である、請求項18から21までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項23】
前記基体は、自動車、自動二輪、自転車、
人、及び
動物の少なくとも一つをシミュレートするように構成されている、請求項1から22までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項24】
前記シミュレーション領域は、大腿、膝、下腿、脚、上腕、肘、前腕、手、前脚、ホイール及びリムの少なくとも一つをシミュレートするように構成されている、請求項1から23までのいずれか一項に記載のダミー装置。
【請求項25】
請求項1から24までのいずれか一項に記載のダミー装置と、
信号を送信するように構成されている送信器と、
反射された信号を受信するように構成されている受信器と、
受信された信号を分析するように構成されている信号処理ユニットと
を備え、
前記ダミー装置の前記シミュレーション要素は、送信された信号を反射するように構成されている、
テストシステム。
【請求項26】
前記反射された信号の周波数分布は、前記基体の運動及び/又は前記シミュレーション要素の運動に関する情報を有する、請求項25に記載のテストシステム。
【請求項27】
シミュレーション領域を有する基体と、前記シミュレーション領域に配置されていてかつ前記シミュレーション領域に対して相対的に可動である少なくとも一つのシミュレーション要素とを備えたダミー装置を準備することと、
シミュレートされるべき対象の可動部分の運動をシミュレートするように、前記シミュレーション要素を、前記シミュレーション領域に対して相対的に運動させることと
を含み、
前記シミュレーション領域は、前記シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣し、
前記シミュレーション要素は、信号を反射及び/又は放射するように構成されてい
て、
前記シミュレーション要素の速度は、環境に対して相対的な、前記基体の速度に依存して、制御可能である、
ダミー装置の操作方法。
【請求項28】
シミュレーション要素が、シミュレートされるべき対象の可動部分の運動をシミュレート可能であるように信号を反射及び/又は放射するように構成されていて、
前記シミュレーション要素は、ダミー装置の基体のシミュレーション領域に固定可能であり、前記基体は、前記シミュレートされるべき対象を模倣し、前記シミュレーション領域は、前記シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣
し、
前記シミュレーション要素の速度は、環境に対して相対的な、前記基体の速度に依存して、制御可能である、
運転支援システム用のテストを実施するためのダミー装置用のシミュレーション要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システムをテストするためのダミー装置及びダミー装置の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の運転支援システムの多様なテストでは、例えば歩行者ダミー、オートバイダミー又は自動車ダミーのようなダミーが使用される。このようなダミーは、少なくとも一つの側面又は特性において、ダミーがシミュレートすべき対象と同じである。例えば、ダミーは、シミュレートされるべき対象と類似の幾何学形状又は類似の大きさを有することができる。
【0003】
運転支援システムの多くのテストでは、衝突又は衝突に近い状況は避けることはできず、それどころかしばしば、極端な状況を調査するか又は運転支援システムをトレーニングするために望ましい。衝突の際に引き起こされる万一のコスト又はそれどころか人的損害は、この場合、できる限り低く保つべきである。したがって、ダミーは低コストで製造できなければならず、深刻な機械的作用の後でも簡単にかつ低コストで修理できなければならない。同時に、ダミーは、シミュレートする対象をできる限り現実どおりに再現すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、機械的作用の後でも運転支援システム用のテストで繰り返して使用するのに適している、運転支援システムをテストするためのダミー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項による運転支援システム用のテストを実施するためのダミー装置及びダミー装置の操作方法によって解決される。
【0006】
本発明の第一の態様によると、運転支援システム用のテストを実施するためのダミー装置が記載される。ダミー装置は、シミュレーション領域を有する基体を備え、この基体は、シミュレートされるべき対象を模倣し、かつシミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣する。さらに、ダミー装置は、少なくとも一つのシミュレーション要素を備え、このシミュレーション要素は、シミュレーション領域に接するように配置されている。この場合、シミュレーション要素は、シミュレートされるべき対象の可動部分の運動をシミュレートすることができるように信号、特に信号波を反射及び/又は放射するように構成されている。
【0007】
本発明の別の態様によると、ダミー装置の操作方法が記載される。この方法は、ダミー装置を準備することを含み、このダミー装置は、シミュレーション領域を有する基体を備え、かつ少なくとも一つのシミュレーション要素を備え、このシミュレーション要素は、シミュレーション領域に接するように配置されていて、かつシミュレーション領域に対して相対的に可動である。さらに、この方法は、シミュレートされるべき対象の可動部分の運動をシミュレートするように、シミュレーション要素を、シミュレーション領域に対して相対的に運動させることを含み、このシミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣する。この場合、シミュレーション要素は、信号、特に信号波を反射及び/又は放射するように構成されている。
【0008】
「運転支援システム」は、車両、例えば自動車の運転者を車両運転時に支援するシステムである。運転支援システムは、車両運転を完全に又はほぼ完全に自律システムによって引き受ける自律型車両においても使用することができ、例えば人工知能により支援されるシステム、特に相応するコンピュータソフトウェアである。運転支援システムは、例えば、緊急ブレーキアシスタント、車線変更アシスタント、駐車アシスタント、間隔調節、交通標識アシスタント又は暗視アシスタントである。
【0009】
運転支援システムは、センサ、特にレーダセンサを備えていてよく、このセンサにより運転支援システムは周囲環境から信号を受信する。このような受信された信号の評価によって、運転支援システムは、周囲環境の様相、特に周囲環境中の様々な対象又は対象型の特性を認識することができる。この種の特性は、例えば対象の距離、幾何学的な大きさ又は速度であってよい。速度は、周囲環境に対して相対的に、例えば道路に対して相対的に、又は運転支援システムを備えた車両に対して相対的に決定されてよい。対象は、全体速度又は重心速度を有してよく、この対象の一部分は、任意に相互に相対的にかつ重心運動に対して相対的に運動可能であってもよい。運転支援システムは、センサによって少なくとも部分的に受信されるために、周囲環境から特徴的に変化する信号の送信器、例えばレーダ波の送信器も備えていてよい。
【0010】
運転支援システムのテストの際に、車両は、運転支援システムが装備されていてよい。このように装備された車両を、テストコース上で予定の状況に直面させることができ、この場合、予定の状況に対する運転支援システムの反応を観察し、かつ所定の基準に従って評価する。運転支援システムは、運転支援システムを車両に組み込まずにテストされてもよい。
【0011】
「シミュレートされるべき対象」は、運転支援システムの使用時に、例えば道路交通において運転支援システムにより認識可能であるべき対象であってよい。特に、シミュレートされるべき対象は、運転支援システムのセンサによって感知可能又は認識可能であってよい。シミュレートされるべき対象は、運転支援システムが組み込まれている車両の周囲環境内に存在してよい。例えば、シミュレートされるべき対象は、別の車両、特に自動車、自動二輪車、牽引車、鉄道車両、飛行機若しくは自転車、又は人物、特に歩行者若しくは遊んでいる子供、又は動物、特にイノシシ、ノロジカ若しくはヘラジカであってよい。このシミュレートされるべき対象は、周囲環境に対して可動であってよいが、周囲環境に対して動いていないか、又は不動であってもよい。
【0012】
シミュレートされるべき対象の「可動部分」は、対象の各々の部分であってよく、この部分は、シミュレートされるべき対象の他の部分に対して、少なくとも部分的に可動である。特に、可動部分は、一つ又は複数の旋回点を中心に、例えば関節によって又は軸によって、旋回可能に可動であってよい。この可動部分は、シミュレートされるべき対象によって所定の方向に沿って並進的に可動であってもよい。並進運動は、例えば、シミュレートされるべき対象上のレールによって決定されていてよい。原則的には、可動部分は任意に、特に回転運動と並進運動との組合せによっても運動可能であってよい。この可動部分は、信号波、特にレーダ波を特に強く反射し、特にシミュレートされるべき対象の他の領域、特に可動でない領域よりも強く、同等に又は弱く反射する、シミュレートされるべき対象の部分を表してよい。この可動部分は、シミュレートされるべき対象にとって又はシミュレートされるべき対象型にとって特徴的な運動プロファイルを有する部分、例えば車両のホイール又は人の四肢であってよい。この特徴的な運動プロファイルは、シミュレートされるべき対象又はシミュレートされるべき対象型を同定又は認識することができる特徴的な信号エコーを生成することができる。
【0013】
ダミー装置の「基体」は、シミュレートされるべき対象を模倣するか又はシミュレートしてよい。「模倣」又は「シミュレート」は、ここでは、基体及びシミュレートされるべき対象が、所定の特徴、例えば形状又は幾何学的大きさにおいて類似しているか、又は本質的に一致していることを意味してよい。特に、基体及びシミュレートされるべき対象は、運転支援システムのセンサにとって感知可能又は認識可能である特徴において一致してよい。例えば、信号エコー、特に信号の反射時に引き起こされる特徴的な周波数シフトが類似していてよい。
【0014】
基体の「シミュレーション領域」は、シミュレートされるべき対象の可動部分を少なくとも部分的に模倣するか又はシミュレートする基体の領域である。特に、基体に対してシミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象に対するシミュレートされるべき対象の可動部分と同様の幾何学的位置に配置されていてよい。シミュレーション領域は、基体に対して、シミュレートされるべき対象に対するシミュレートされるべき対象の可動部分と同様の幾何学的大きさを有していてもよい。このシミュレーション領域は、例えばホイール又は人の四肢を模倣していてよい。
【0015】
このシミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分を、光学的に、例えば光学的記録機器、例えば写真カメラ又はビデオカメラ用にシミュレートするように構成されていてよい。このために、シミュレーション領域は、可動部分の外観が印刷されている表面を含んでいてよい。例えば、シミュレーション領域は、印刷されたフォーム、印刷された厚紙及び/又は印刷された紙を有していてよい。シミュレーション領域は、基体に静的に配置されていてよい。シミュレーション領域は、形状及び/又は大きさにおいて全体の可動部分に相応していてよい。シミュレーション領域は、形状及び/又は大きさにおいて、可動部分、例えばホイールのリムの信号反射領域に、特にレーダ反射領域にだけ対応してもよい。
【0016】
「シミュレーション要素」は、シミュレーション領域に可動に配置されていてよい。シミュレーション要素は、シミュレーション領域と同様に、シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣するか又はシミュレートすることができる。特に、シミュレーション要素は、シミュレートされるべき対象の可動部分の運動状態又は運動順序を模倣することができる。特に、シミュレーション領域及び/又は基体に対して相対的なシミュレーション要素の運動状態は、シミュレートされるべき対象に対して相対的なシミュレートされるべき対象の可動部分の運動状態を模倣することができる。このため、シミュレーション要素の所定の領域、特に信号反射領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分の別の領域、特に信号反射領域と同じ速度で運動してよい。この場合に、この速度は、僅かに、例えば5パーセントまで、10パーセントまで又は20パーセントまで相違してよい。
【0017】
このシミュレーション要素は、シミュレーション要素の並進運動の際に、例えばアクチュエータ、例えば電気モータ、特にリニアモータを用いて駆動可能である。この駆動は、電磁的に、電気的に、機械的に、液圧により、空気圧により又は手動により行ってよい。とりわけ、駆動のためにコイル又はソレノイドを使用してよい。制御ユニットは、相応してシミュレーション要素の所望の反射特性を得るために、シミュレーション要素の運動及び運動の速度を制御してよい。
【0018】
シミュレーション要素は、信号波を反射及び/又は放射するように構成されている。例えば、シミュレーション要素は、シミュレートされるべき対象にとって、特にシミュレートされるべき対象の可動部分にとって、反射された信号が、特に入射される信号と反射された信号との差が特徴的であるように信号波を反射することができる。このシミュレーション要素は、シミュレートされるべき対象にとって、特にシミュレートされるべき対象の可動部分にとって、放射された信号が特徴的であるように信号波を放射してもよい。相応して、シミュレーション要素は、例えば信号波、例えばレーダ波の送信のために送信装置、例えばアンテナを有していてよい。特に、シミュレーション要素が放射体を有する場合、シミュレーション要素は、シミュレーション領域に静的に配置されていてもよい。
【0019】
信号波は、特に空間的に伝播する周期的振動を有するか、又は少なくとも波形の信号から構成可能である、波形で生じるあらゆる種類の信号であってよい。信号波は、横波又は縦波であってよい。信号波は、媒体に拘束された力学的な波又は真空中でも伝播する波であってよい。信号波は、例えば電磁波又は音波、特に電波、マイクロ波、光、X線又はレーダ波であってよい。信号波は、例えばレーザビーム又はライダ波、特にレーザパルスであってもよい。原則として、あらゆる信号波形、例えば矩形信号は、波の重なり又は重ね合わせにより表すことができる。「信号」の概念は、必ずしも波状に形成されていない情報キャリアも含む。
【0020】
本発明によるダミー装置を用いて、運転支援システムの機能を現実的にテストすることができる。特に、本発明によるダミー装置は、例えば道路交通における現実の対象を現実的に模倣し、特に運転支援システムによりダミー装置が所定のタイプの現実の対象として認識されるように模倣することができる。例えば、シミュレーション要素により反射及び/又は放射される信号波は、シミュレーション要素の運動状態についての情報を有することができる。この運動状態又は相応する運動順序は、シミュレートされるべき現実の対象にとって、特に現実の対象の可動部分にとって特徴的であることができる。相応して、シミュレーション要素により反射及び/又は放射される信号波は、シミュレートされるべき対象により反射及び/又は放射される信号波にとって、特に対象の可動部分により反射及び/又は放射される信号波にとって特徴的であることができる。運動プロファイルの記載された類似性及びそれに応じた反射及び/又は放射される信号波の類似性に基づき、ダミー装置によって、現実の対象を、運転支援システムに適切にシミュレートすることができる。
【0021】
シミュレーション要素は、例えばその幾何学形状及び大きさが、シミュレートされるべき対象の可動部分とも、基体のシミュレーション領域とも異なり、シミュレーション要素の運動に基づいて、信号波の反射は、シミュレートされるべき対象にとって、特にシミュレートされるべき対象の可動部分にとって特徴的である。したがって、例えばシミュレーション要素は、対象のシミュレートされるべき部分よりもよりロバストで、かつ場合によってはより小さな形態を有することができる。したがって、基体の全体のシミュレーション領域、例えばダミー装置のホイールイメージが運動する必要はなく、単に対象のシミュレートされるべき部分の特徴的な運動プロファイルについて特徴的な信号エコーを再現するようにシミュレーション要素が運動すればよい。
【0022】
運動状態と反射及び/又は放射する信号波との間の記載された関係にとって重要なのは、いわゆるドップラー効果である。ドップラー効果によると、波の周波数又は波長は、波の送信器と受信器の間の相対的な運動の際に、特に送信器と受信器とが互いに近づくか又は遠ざかるように運動する場合に変化する。ドップラー効果は、波のキャリア媒体の速度に依存することもある。
【0023】
対象での反射の際には、ドップラー効果は二回生じ、初回は、送信器と反射する対象との間の相対運動に基づいて生じ、二回目は反射する対象と受信器との間の相対運動に基づいて生じる。それに対して放射の場合には、ドップラー効果は、放射源と受信器との間の相対運動に基づいてだけ生じる。
【0024】
いわゆるマイクロドップラー効果は、ドップラー効果と同じ物理原則に基づく。マイクロドップラー効果により、対象の様々な部分の間の相対運動は分解される。特に、対象の大きな部分に対して、対象の様々な小さな部分の相対運動を分解することができる。小さな部分により反射及び/又は放射される波の振幅又は強度は、大きな部分により反射及び/又は放射される波の振幅又は強度よりも小さくなることができる。例えば、トラックのホイール、特にリムの運動により、又は航空機の場合の駆動装置の運動により、マイクロドップラー効果を引き起こすことができる。
【0025】
特に、マイクロドップラー効果は、対象の多様な構成要素間の特徴的な内部運動に基づき様々な対象又は対象型を同定することを可能にし、この場合、特に反射及び/又は放射された信号の周波数分布は、その特徴的な運動について表示する。したがって、運転支援システムのテストのために適したダミー装置は、ダミー装置が所定の対象又は対象型の周波数分布を再現又はシミュレートすることにより実現することができる。
【0026】
同時に、ダミー装置は、自動二輪又は自動車のような同等の現実の対象よりもはるかに低いコストで製造及び修理することができる。例えば、ダミー装置は、低コストの材料、例えば発泡体又はプラスチック材料から製造することができる。ダミー装置は、現実の対象の様々な部材の完全な複雑性を有することなく、シミュレートされるべき対象の輪郭を大まかにだけ再現できる。
【0027】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、シミュレーション領域に対して相対的に可動である。このシミュレーション要素は、シミュレートされるべき対象の可動部分をシミュレートするために有利であることがある。
【0028】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、再帰反射要素、特にトリプルミラー又はトリプルプリズムを有する。再帰反射要素は、入射する信号波を、入射方向に本質的に無関係にかつ入射方向に本質的に沿った再帰反射要素の向きに無関係に反射して戻す要素であることができる。このような反射は、入射角の所定の角度範囲に限定されていてよい。
【0029】
トリプルミラーは、再帰反射要素についての一例である。トリプルミラーの場合、三つの反射表面又は鏡面反射表面は、これら表面がそれぞれ相互に90°の角度をなすように配置される。別の角度も可能である。トリプルミラーは、例えば、その表面が三つの三角形から形成されている凹面領域であり、これらの三角形は、三つの全ての三角形が接する角部で、それぞれ90°の角度を形成する。レーダ波を反射するために、鏡面反射表面は、例えば金属、特に金属薄板から形成されていてよい。トリプルプリズムは、再帰反射要素についての別の例である。このようなトリプルプリズムは、トリプルミラーと同様に機能するが、凹面領域内に、信号波に対して少なくとも部分的に透過する付加的媒体を有する。さらに、例えば、再帰反射要素のレンズ型の実施も可能である。
【0030】
再帰反射要素のシミュレーション要素への取付けは、入射する信号波が信号源の方向に反射して戻されるという利点を有する。したがって、信号源と、反射された放射の評価のためのセンサとは、運転支援システム内で相互にすぐ近くに配置されていてよい。さらに、信号源から発せられる信号波の強度と比べたセンサにより感知される信号波の強度の比率を拡大することができる。例えば、約10cmのオーダーの大きさを有するトリプルミラーは、再帰反射要素なしで、現実のトラックと類似するレーダエコーを引き起こすことができる。
【0031】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、凹面領域を含む表面を有する。このような凹面の、つまり内側に湾曲した領域は、信号波をできる限り大きな強度で入射方向に反射するために適していることがある。このような凹面領域は、例えばトリプルミラーを形成してよい。
【0032】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、凸面領域を含む別の表面を有する。この場合、表面と別の表面とは互いに反対側にあることができる。凸面の、つまり外側に湾曲した領域は、信号波をできる限り小さな強度で入射方向に反射するために適していることがある。というのも入射する信号波は、凸面領域の表面によって相応して変向されるためである。シミュレーション要素の凸面及び凹面の表面領域は、特に強く反射する表面領域及び特に弱く反射する表面領域を形成するために利用することができる。例えば、シミュレーション要素の小板状の部分は、小板の第一の主面が凹面領域を形成し、この小板の僅かな厚みに基づいて相応する凸面領域は、小板の第二の主面に形成され、第二の主面は、第一の主面の反対側にあるように作製されていてよい。
【0033】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、表面と、この表面の反対側にある別の表面とを有し、この表面と別の表面とは本質的に平坦に形成されている。表面に凹面領域又は凸面領域が形成されていないことは、このような表面が同じ又は類似の反射挙動を有するという利点を有する。例えば、シミュレーション要素の小板状の部分は、反対側にある二つの主面が平坦でありかつ同じ又は類似の反射挙動を有するように形成されていてよい。
【0034】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、レーダ反射要素を有し、信号はレーダ波である。レーダ反射要素は、例えばレーダ再帰反射要素、特にレーダ反射トリプルミラーであってよい。例えば、ミラー面は、金属、例えば金属薄板を有してよい。レーダ反射要素の使用は、レーダセンサが多くの運転支援システム内で使用されているため目的にかなっている。これは、とりわけ、レーダ送信器とレーダ受信器とが低コストで実現可能であることに起因する。
【0035】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、再帰反射要素を有することができ、この再帰反射要素とは異なるシミュレーション要素の部分は、再帰反射要素よりも信号波を弱く反射及び/又は放射するように構成することができる。このような構成は、反射された信号が特に明らかでかつ支障ないことに寄与する。
【0036】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、旋回点で基体に固定されかつ旋回可能に支持されている。シミュレーション要素は、旋回点を中心とした回転運動及び振子運動の少なくとも一つを行うように構成されている。このような構成は、可動部分が同様に例えば軸又は関節で旋回可能に支持されている対象をシミュレートするために有利である。例えば、このような可動部分は、自動車、自動二輪若しくは自転車のホイールであってよく、又は人若しくは動物の四肢であってよい。
【0037】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、主延在方向が旋回点から本質的に半径方向に延びる棒状要素を有し、かつ棒状要素に取り付けられている少なくとも一つの反射及び/又は放射要素を有する。この反射及び/又は放射要素は、再帰反射要素を有し、及び/又は凹面領域を有する表面を有してもよい。しかしながら、この反射及び/又は放射要素は、それぞれ類似の反射特性を有する平坦な表面を有するだけであってもよい。この反射及び/又は放射要素は、旋回点を中心とする回転運動を行うか又は旋回点を中心とする運動方向が周期的に変化する振動運動若しくは振子運動を行ってよい。このような振子運動の場合には、例えば反射及び/又は放射要素の速度は、ほぼ正弦波状に変化してよい。このように、例えばホイール、又は例えばランニング若しくは走行の際に前後に振動する腕、特に上腕をシミュレートすることができる。
【0038】
別の例示的な実施形態によると、旋回点と、反射及び/又は放射要素との間の半径方向の間隔は、シミュレーション領域の相応する空間的拡がりよりも小さく、特にこの半分の拡がりよりも小さく、特にこの拡がりの三分の一よりも小さい。相応する空間的拡がりは、シミュレーション領域の直径であってよい。したがって、シミュレーション要素は、シミュレーション領域よりもはるかに小さくてよく、シミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分と同様の大きさを有していてよい。相応して、比較的小さな材料コストでシミュレートされるべき対象を再現することができる。
【0039】
別の例示的な実施形態によると、棒状要素は、一つの角速度で旋回可能であるように構成されているので、反射及び/又は放射要素は、本質的に、つまり、例えば3パーセントまで又は5パーセントまでの逸脱で、シミュレートされるべき対象の可動部分、特にシミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する可動部分と同じ速度で運動可能である。これは、特に、基体の速度が、シミュレートされるべき対象の速度に相応する場合に当てはまることができる。このような構成は、反射及び/又は放射する部分が、同じ速度で、同じドップラーシフトを生成するために有利であることができる。したがって、ダミー装置の反射及び/又は放射要素の信号エコーが、特にドップラー効果により引き起こされる周波数シフトに対して、シミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する部分の信号エコーと類似又は同じである。ダミー装置の反射及び/又は放射要素の信号エコーはさらに、シミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する部分の信号エコーと、例えば最大で十倍の逸脱で、類似の強度を有することができる。
【0040】
別の例示的な実施形態によると、棒状要素は、旋回点の両側から延在し、シミュレーション要素は、第二の反射及び/又は放射要素を有し、第二の反射及び/又は放射要素は、棒状要素に取り付けられている。この場合、反射及び/又は放射要素と、第二の反射及び/又は放射要素とは、旋回点の反対側に取り付けられている。第二の反射及び/又は放射要素は、また再帰反射要素であってよい。第二の反射及び/又は放射要素は、旋回点から、反射及び/又は放射要素と同じ間隔で配置されていてよいため、これらの両方の要素は、絶対値で同じ速度で運動する。このように、シミュレーション要素から反射及び/又は放射された信号は増強されてよく、適切な構成の場合には本質的に二倍になる。相応する反射及び/又は放射要素を含む別の棒状要素により、反射及び/又は放射された信号はさらに増強されてよい。
【0041】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、旋回点に旋回可能に支持されているディスクを有し、かつディスクの円周に取り付けられている少なくとも一つの反射及び/又は放射要素を有する。反射及び/又は放射要素は、例えば、再帰反射要素、特にトリプルミラー又はトリプルプリズムであってよく、これは鏡面反射表面の凹面領域又は平坦な鏡面反射表面であってよい。ディスクは中実に作製されていてよいか、又は一つ若しくは複数の穴を有していてよい。ディスクは、スポークあり又はなしのホイールの形状に形成されていてよい。このように、例示的に、ホイール、特にホイールの旋回運動及びホイールの信号エコーを適切にシミュレートすることができる。ディスクは、プラスチックディスク、特に薄いプラスチックディスクであってよい。
【0042】
別の例示的な実施形態によると、反射及び/又は放射要素は、金属要素、特に金属テープである。いくつかの金属要素が、ディスクの円周に取り付けられていてよく、例えば接着されていてよい。例えば、20~30の金属テープが、ディスクの円周に等間隔に分布されていてよい。金属要素は、棒状要素に又はシミュレーション要素の任意の他の形状に取り付けられていてもよい。この種の構成は、特に簡単でかつ低コストで実現することができる。
【0043】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、少なくとも一つの別の反射及び/又は放射要素を有し、反射及び/又は放射要素と別の反射及び/又は放射要素とはそれぞれ表面と、それぞれこの表面の反対側にある別の表面とを含み、この表面は、信号、特に信号波を別の表面よりも強く反射及び/又は放射するように構成されていて、反射及び/又は放射要素の表面と別の反射及び/又は放射要素の表面とは、ディスクの円周に沿って反対方向を向いている。
【0044】
このような配置は、信号波が、ホイールの両方の可能な走行方向に同等に反射されるため有利であることができる。特に、信号エコーは、ホイールを反対方向から見て、送信器と受信器とに対して同じ相対速度で、同じであってよい。また、信号波は、ホイールの上側又は下側のいずれかで、つまりホイールの路上に置かれた側で反射されるだけではない。これは、その点では、路上に置かれた点でのホイールの速度がほぼゼロであるために有利であってもよい。
【0045】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、反射及び/又は放射要素と別の反射及び/又は放射要素とを有し、反射及び/又は放射要素と、別の反射及び/又は放射要素とは、それぞれ表面と、それぞれこの表面の反対側にある別の表面とを有し、この表面は、信号、特に信号波を別の表面よりも強く反射及び/又は放射するように構成されていて、反射及び/又は放射要素の表面と別の反射及び/又は放射要素の表面とは、シミュレーション要素の回転に対して、反対方向を向いている。これらの利点は、上述の実施形態に対しても同様である。
【0046】
別の例示的な実施形態によると、反射及び/又は放射要素と、別の反射及び/又は放射要素とは、円周に沿って交互に取り付けられている。このことから、とりわけ、両方の型の要素の類似の数が存在することになる。相応して、ホイールを反対方向から見て、送信器と受信器とに対してホイールの同じ運動状態で、類似の信号エコーが生じる。これは、様々な対象型の同定の際に有利であることができる。この効果を、要素が円周上で相互に等間隔で配置されることにより、及び/又は円周の反対側の点でそれぞれ同じ型若しくはそれぞれ異なる型の要素が配置されることによりさらに増強することができる。
【0047】
別の例示的な実施形態によると、ディスクの直径dsは、シミュレーション領域の直径drよりも小さく、特に1/2drよりも小さい。直径dsは、2/3drより小さく、特に1/3drより小さく、特に1/4drより小さく、特に1/10drより小さくてもよい。したがって、シミュレーション要素は、シミュレーション領域よりもはるかに小さくてよく、この場合、シミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分と同様の大きさを有していてよい。相応して、比較的小さな材料コストでシミュレートされるべき対象を再現することができる。ディスクを用いて、シミュレートされるべき対象のホイールを再現する場合、ディスクの小さな直径は、例えばダミー装置が運動する地面にディスクが触れないため、ディスクがシミュレートされるべきホイールよりも少ない摩耗及び僅かな消耗現象を示すという利点を有することができる。
【0048】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素の幾何学的大きさは、シミュレーション領域の大きさよりも小さく、特にその半分よりも小さい。これらの利点は、上述の例示的な実施形態に対しても同様である。
【0049】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素の直径は、シミュレートされるべき対象の可動部分の直径よりも小さく、及び/又はシミュレーション領域の直径よりも小さく、特にシミュレートされるべき対象の可動部分の直径及び/又はシミュレーション領域の直径の5/6より小さく、特に4/5より小さく、特に2/3より小さく、特に1/2より小さい。シミュレートされるべき対象の可動部分の直径は、全体の可動部分の直径又は可動部分の信号反射する領域だけの直径であってよい。これらの利点は、また、上述の例示的な実施形態に対しても同様である。
【0050】
別の例示的な実施形態によると、ディスクは、一つの角速度で旋回可能であるように構成されているので、反射及び/又は放射要素は、本質的に、つまり、例えば3パーセントまで又は5パーセントまでの逸脱で、シミュレートされるべき対象の可動部分、特にシミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する可動部分と同じ速度で運動可能である。これは、特に、基体の速度が、シミュレートされるべき対象の速度に相応する場合に当てはまることができる。これは、反射及び/又は放射する部分が、同じ速度で、同じドップラーシフトを生成するために有利であることができる。したがって、ダミー装置の反射及び/又は放射要素の信号エコーが、特にドップラー効果により引き起こされる周波数シフトに対して、シミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する部分の信号エコーと類似又は同じである。相応して、ダミー装置は、シミュレートされるべき対象型のドップラーエコーを適切にシミュレートすることができる。ダミー装置の反射及び/又は放射要素の信号エコーはさらに、シミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する部分の信号エコーと、例えば最大で十倍の逸脱で、類似の強度を有することができる。
【0051】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、棒状要素を有し、かつ棒状要素の一端に取り付けられている少なくとも一つの反射及び/又は放射要素を有する。このような配置は、一方では極めて簡単であるが、他方では、別のシミュレートされるべき対象の多数の異なる可動部分、例えばホイール、又は関節に固定されている長く伸びた要素、例えば腕若しくは脚を模倣することができる。
【0052】
別の例示的な実施形態によると、棒状要素は、特に本質的に棒状要素の主延在軸に沿って、本質的に線形運動を行うように構成されている。このような線形運動は、例えば、簡単な手段を用いてホイールをシミュレートするために有利であることができる。この場合、棒状要素は、シミュレーション領域の中央に配置されていてよく、シミュレーション領域は、基体に対して、シミュレートされるべき対象のホイールの大きさ及び位置にほぼ相応することができる。シミュレーション領域の中央の配置は、シミュレートされるべきホイールの対称性を考慮に入れることができる。
【0053】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素の反射及び/又は放射要素は、シミュレーション領域及び/又は基体に対して線形運動を行うように構成されている。この場合、反射及び/又は放射要素は、シミュレートされるべき対象の可動部分の速度成分に相応する速度で運動可能であってよい。このために、この速度は経時的に変化可能で、例えば正弦波状に変化可能であってよい。
【0054】
別の例示的な実施形態によると、再帰反射要素を含む反射及び/又は放射要素の表面は、棒状要素の主延在軸及び/又は運動方向に対して本質的に垂直に向いている。換言すると、再帰反射面の法線ベクトルは、棒状要素の主延在軸及び/又は運動方向に対して本質的に平行に向いている。これは、再帰反射表面が運動方向を示す場合、ドップラーシフトが特に大きくかつ特に明らかに生じることができるために有利であることができる。
【0055】
別の例示的実施形態によると、棒状要素は、棒状要素が、シミュレートされるべき対象の可動部分の速度成分に本質的に相応する速度で運動可能であり、特に並進に運動可能であるようにシミュレーション領域に配置されている。これは、特に、基体の速度が、シミュレートされるべき対象の速度に相応する場合に当てはまることができる。所定の方向の速度成分は、この場合、速度ベクトルをこの所定の方向に(垂直に)投影することにより得られる。
【0056】
記載された構成は、反射及び/又は放射する部分が、同じ速度で、同じドップラーシフトを生成するために有利であることができる。したがって、ダミー装置の反射及び/又は放射部材の信号エコーが、少なくともドップラーシフトにより引き起こされる周波数シフトに対して、シミュレートされるべき対象の反射及び/又は放射する部分の信号エコーと類似又は同じである。相応して、ダミー装置は、シミュレートされるべき対象又は対象型のドップラーエコーを適切にシミュレートすることができる。
【0057】
例えば、棒状要素と反射及び/又は放射要素との線形運動は、ホイール及び/若しくはリム上の点又はホイール及び/若しくはリムに接する点の交互の前後運動を、棒状要素の主延在方向に対して類似する方向に投影してシミュレートすることができる。棒状要素の主延在方向は、ダミー装置が運動する表面、例えば道路に対して本質的に平行であることができる。主延在方向は、基体に沿って又は基体に対して平行に向けられていてよく、特にシミュレーション領域に沿って又はシミュレーション領域に対して平行に向けられていてよい。
【0058】
別の例示的な実施形態によると、棒状要素の速度は、経時的に正弦波状に変化可能である。これは、頻繁に正弦波速度分布により少なくとも近似的に特徴付けることができる振子運動を再現するために有利であることができる。さらに、ホイール上の点又はホイールに接する点の前述された前後運動が、正弦波速度分布を有するため、正弦波速度分布により、ホイールの運動を再現することができる。よって、特に簡単でかつ効率的に、ホイールの信号エコーをシミュレートすることができる。
【0059】
別の例示的な実施形態によると、基体は、自動車、自動二輪、自転車、人、特に歩行者、及び動物、特にイノシシ、ヘラジカ又はノロジカの少なくとも一つをシミュレートするように構成されていてよい。
【0060】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション領域は、大腿、膝、下腿、脚、上腕、肘、前腕、手、前脚、ホイール及びリムの少なくとも一つをシミュレートするように構成されていてよい。特に、シミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の強く反射及び/又は放射する可動部分を再現するように構成されていてよく、強く反射及び/又は放射する部分は、シミュレートされるべき対象の他の領域よりも強く反射及び/又は放射する。例えば、シミュレーション領域は、レーダ波を特に良好に反射するホイールのリムであってよい。
【0061】
他の例示的な実施形態によると、テストシステムは、本発明によるダミー装置を備える。さらに、このテストシステムは、信号、特に信号波を送信するように構成されている送信器を備え、ダミー装置のシミュレーション要素は、送信された信号を反射するように構成されている。さらに、テストシステムは、反射された信号を受信するように構成されている受信器と、受信された信号を分析するように構成されている信号処理ユニットとを備える。特に、送信器と受信器とは、相互に隣り合って配置されていてよい。これらは、同じ装置に、特に一つのテスト車両に配置されていてよい。つまり、送信器と受信器とは、同じ速度で運動することができる。さらに、送信器と受信器とは、本質的に同じ方向に向けられていてよく、それにより、受信器は、送信器から発せられかつ対象により反射された波、特に再帰反射波を受信することができる。
【0062】
テストシステムはさらに、例えば相応する制御信号をシミュレーション要素又はシミュレーション要素のアクチュエータに送信することができる制御ユニットを備える。したがって、制御ユニットは、相応してシミュレーション要素の所望の反射特性を得るために、シミュレーション要素の運動及び運動の速度を制御する。シミュレーション要素の速度は、基体の速度に依存して、周囲環境、例えば道路に対して相対して、制御可能であることができる。
【0063】
信号処理ユニットは、反射された波が受信される角度若しくは方向を考慮して、並びに/又は信号の送信と受信の間の時間の遅れ及び信号速度から生じる対象からの距離を考慮して、受信された波を分析することができる。さらに、対象の運動は、いくつかの連続した距離測定から決定されてよい。最後に、反射された信号の周波数シフトは、送信器と受信器との間の相対運動に関する説明を与えることができる。
【0064】
別の例示的な実施形態によると、反射された信号の周波数分布は、基体の運動及び/又はシミュレーション要素の運動に関する情報を有する。これらの情報は、特に運動する対象による反射の際の信号波の周波数シフトから生じることがあり、周波数シフトは、ドップラー効果により引き起こされる。周波数分布は、時間に依存してよい。
【0065】
別の例示的な実施形態によると、基体と可動のシミュレーション要素とは、反射された信号の周波数分布が、シミュレートされるべき対象により反射可能な別の反射された信号の別の周波数分布について表示するように形成されかつ運動可能であり、この周波数分布は、以下のパラメータ、すなわち周波数分布の幅、周波数分布の時間的変化の周期時間、周波数分布の強度、並びに周波数分布の少なくとも一つの極大値の振幅及び/又は頻度の少なくとも一つを用いて定義可能である。これは、特に、基体の速度が、シミュレートされるべき対象の速度に相応する場合に当てはまることができる。
【0066】
換言すると、ダミー装置により反射された信号の周波数分布は、シミュレートされるべき対象により反射された別の周波数分布に相応することができる。特に、シミュレーション要素により反射された信号の周波数分布は、対象の可動部分により反射された周波数分布に相応することができる。特に、シミュレーション要素の反射及び/又は放射要素により反射された信号の周波数分布は、対象の反射及び/又は放射する可動部分により反射された周波数分布に相応することができる。ここで、相応するとは、周波数分布の前述の特性の少なくとも一つにおける一致を意味することができる。この一致は、同様に生じるドップラー効果、特に同様に生じるマイクロドップラー効果により引き起こされてよい。ここで、一致とは、近似的に、例えば振幅における極大値及び/又は位置が、互いに5パーセント以下、特に10パーセント以下、特に50パーセント以下で相違することであると解釈することができる。
【0067】
別の例示的な実施形態によると、信号処理ユニットは、受信器で受信された周波数分布の所定の特性に基づいて対象及び/又は対象型を同定するように構成されている。これらの特性は、特に、上述の例示的な実施形態との関連で挙げられた特性であってよい。
【0068】
本発明の別の態様によると、運転支援システム用のテストを実施するためのダミー装置用のシミュレーション要素が記載される。シミュレーション要素は、シミュレートされるべき対象の可動部分の運動がシミュレート可能であるように信号を反射及び/又は放射するように構成されている。さらに、シミュレーション要素は、ダミー装置の基体のシミュレーション領域に固定可能であり、この基体は、シミュレートされるべき対象を模倣し、シミュレーション領域は、シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣する。
【0069】
別の例示的な実施形態によると、シミュレーション要素は、シミュレーション要素の運動を制御するために、エネルギー供給ユニット及び/又は制御ユニットを含む。それにより、モジュール式に使用可能な自立式の独立したユニットが達成される。
【0070】
ここに記載された実施形態は、本発明の可能な実施バリエーションに関して限定された選択だけを表していることが指摘される。したがって、個々の実施形態の特徴を相互に適切に組み合わせることが可能であるので、当業者にとって、ここでの詳細な実施バリエーションを用いて多くの異なる実施形態が明らかに開示されていると見なすことができる。特に、本発明のいくつかの実施形態は、装置の請求項により記載され、本発明の他の実施形態は、方法の請求項により記載されている。しかしながら、本出願を読めば、他に明示的に示されていない限り、本発明の主題の一つのタイプに所属する複数の特徴の組合せに加えて、本発明の主題の様々なタイプに所属する複数の特徴の任意の組合せも可能であることは、当業者には直ちに明らかとなる。
【0071】
以下に、本発明のさらなる説明のため及びより良い理解のために、添付図面を参照しながら実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】本発明の例示的な実施形態によるダミー装置の一部の斜視図を示す。
【
図2】本発明の例示的な実施形態によるダミー装置のシミュレーション要素の斜視図を示す。
【
図3】本発明の例示的な実施形態によるシミュレーション領域及びシミュレーション要素の斜視図を示す。
【
図4】
図3からのシミュレーション要素の側面図を示す。
【
図5】本発明の例示的な実施形態によるシミュレーション要素の側面図を示す。
【
図6】本発明の例示的な実施形態によるダミー装置の一部の斜視図を示す。
【
図7】本発明の例示的な実施形態によるテストシステムの略図を示す。
【
図8】本発明の例示的な実施形態によるダミー装置の斜視図を示す。
【
図9】本発明の例示的な実施形態によるダミー装置の斜視図を示す。
【
図10】本発明の例示的な実施形態によるダミー装置及び付属するシミュレーション要素の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
異なる図面内の同じ又は類似の構成要素は、同じ参照符号が付けられている。図内の描写は概略的である。
【0074】
図1は、本発明の例示的実施形態による運転支援システム用のテストを実施するためのダミー装置100を示す。ダミー装置100は、シミュレーション領域102を有する基体101を備え、基体は、シミュレートされるべき対象を模倣し、シミュレーション領域102は、シミュレートされるべき対象の可動部分を模倣する。さらに、ダミー装置100は、少なくとも一つのシミュレーション要素103を備え、このシミュレーション要素はシミュレーション領域102に配置されていて、かつシミュレーション領域102に対して相対的に可動である。シミュレーション要素103は、シミュレートされるべき対象の可動部分の運動がシミュレート可能であるように信号波704,705(
図7参照)を反射及び/又は放射するように構成されている。
【0075】
図1の実施例では、ダミー装置100は、部分的にだけ模倣されている自動二輪ダミーである。相応して、基体101は、自動二輪基体である。自動二輪基体は、自動二輪をシミュレートする。したがって、基体101は、その幾何学的大きさにおいて実際の自動二輪にほぼ相当することができる。基体101は、実際の自動二輪とは別の材料から製造されていてよく、かつ実際の自動二輪よりも複雑でない構造を有していてよい。
【0076】
基体101は、自動二輪の可動の要素をシミュレート又は再現するシミュレーション領域102を有する。
図1では、シミュレーション領域102は、基体101の、自動二輪の前輪を模倣する領域であり、ここではその大きさ及び/又は基体101に対するその位置について前輪に類似している。しかしながら、シミュレーション領域102は、前輪のリムに類似しているだけであってもよい。
【0077】
図1の例示的な実施形態によるシミュレーション要素103は、シミュレーション領域102に配置されていて、シミュレーション領域102に対して相対的に可動であり、特にシミュレーション領域102を有する基体101に対しても相対的に可動である。
図1の実施形態によるシミュレーション要素103は、棒状要素106を含み、この棒状要素は、旋回点105でシミュレーション領域102に固定されかつ旋回可能に支持されている。棒状要素の主延在方向107は、旋回点105から本質的に半径方向に延び、棒状要素は、旋回点の片側にだけ延在している。シミュレーション要素103はさらに、別の棒状要素109を有してよく、この別の棒状要素は、棒状要素106と接続されていて、棒状要素106に対して垂直に延び、かつその主延在方向はシミュレーション要素の回転軸に沿って延びるか又はシミュレーション要素の回転軸を形成する。
【0078】
反射及び/又は放射要素108は、棒状要素106の、別の棒状要素109と接続されていない端部に取り付けられている。反射及び/又は放射要素108は、再帰反射要素104を含んでよい。再帰反射要素104が含む表面は、表面の法線ベクトルが可能な旋回方向を示すように配置されていてよい。再帰反射要素104が、大きな強度又は最大強度で反射する角度範囲は、可能な旋回方向に関して対称に配置されてよい。さらに、反射及び/又は放射要素108は、別の再帰反射要素を含んでよく、この別の再帰反射要素は、再帰反射要素104の表面とは反対側の別の表面に配置されている。
【0079】
図2は、
図1からのシミュレーション要素の拡大図を示し、棒状要素106は、旋回点105の両側に延在する。しかしながら、これは、旋回点105の領域内での棒状要素106の連続性を意味することはできるがそれを意味する必要はない。棒状要素106は、旋回点の反対側で同じ方向に延在する二つの空間的に離れた領域からなることもできる。
【0080】
反射及び/又は放射要素108は、凹面領域202を含む表面201を有していてよい。このような凹面領域202は、例えば再帰反射要素、特にトリプルミラーを形成してよい。表面201は、反射及び/又は放射要素の可能な運動方向に向けられていてよい。
【0081】
別の反射及び/又は放射要素203は、反射及び/又は放射要素108と別の反射及び/又は放射要素203とが旋回点の反対側に取り付けられているように棒状要素106に取り付けられていてよい。別の反射及び/又は放射要素203は、同様に凹面領域及び/又は再帰反射要素を含む少なくとも一つの表面を有してよい。凹面領域及び/又は再帰反射要素を含む表面は、反射及び/又は放射要素108の場合と同様に、別の反射及び/又は放射要素203の可能な運動方向又は旋回方向に向けられていてよい。
【0082】
図3は、例示的な実施形態によるシミュレーション領域102とシミュレーション要素103とを示す。シミュレーション領域102は、ディスク状に形成されていてよく、例えば自動二輪又は自動車のホイール又はリムを模倣してよい。シミュレーション要素103は、旋回点105でシミュレーション領域102に固定されかつ旋回可能に支持されているディスク301を有していてよい。特に、旋回点105は、シミュレーション領域102の少なくともほぼ中央に配置されていて、かつディスク301の中央と接続されていてよいので、ディスク301とシミュレーション領域102とはほぼ同心に配置されている。ディスクは、半径d
sを有してよい。シミュレーション領域102は、半径d
rを有してよく、半径d
sは、半径d
rよりも小さく、特に2/3d
rより小さく、特に1/2d
rより小さく、特に1/3d
rより小さく、特に1/4d
rより小さく、特に1/10d
rより小さくてよい。半径d
sは、d
rと同じ大きさであるか又はd
rより大きくてもよい。「半径」の概念は、ここでは、一般化された意味で、物体の多様な方向への平均的拡がりとして解釈されてもよい。
【0083】
ディスク301の円周に接して又はその円周上に、反射及び/又は放射要素108が配置されていてよい。これらは、ディスク状又は小板状に形成されていてよい。反射及び/又は放射要素108の主面は、運動方向に向いていてよく、すなわち、主面の法線ベクトルは、反射及び/又は放射要素108の運動方向に対して本質的に平行に向いていてよく、換言すると、ディスク301の円周に対して接線方向に延びる方向に対して平行に向いていてよい。別の反射及び/又は放射要素302は、運動方向又は旋回方向に関して、反射及び/又は放射要素108とは異なる方向に向いているように配置されていてよい。
【0084】
図4は、例示的な実施形態による
図3からのシミュレーション要素103の側面図を示す。多数の反射及び/又は放射要素108と、多数の別の反射及び/又は放射要素302とが、ディスク301の円周に接して又はその円周上に配置されている。反射及び/又は放射要素108と、別の反射及び/又は放射要素302とは、それぞれ、凹面領域を含む表面201と、凸面領域402を含む別の表面401とを有し、各々の要素について、表面201は、別の表面401の反対側にある。表面201は、ディスクの円周方向に向いていてよく、すなわち、この表面の法線ベクトルは、ディスク301の円周に対して接線方向に延びる方向に対して本質的に平行であってよい。同様に、別の表面401は、ディスク301の円周方向に向いていてよい。凹面領域は、トリプルミラーとして形成されていてよい。凸面領域402は、トリプルミラーの背面によって形成されていてよい。凹面領域を含む表面は、再帰反射要素を表してよい。
【0085】
反射及び/又は放射要素108の表面201は、別の反射及び/又は放射要素302の表面401と比べて、ディスク301の円周に沿って反対方向に向いていてよい。反射及び/又は放射要素108と、別の反射及び/又は放射要素302とは、円周に沿って交互に配置されていてよい。これらの要素は、相互に本質的に等間隔を有していてよく、特に隣接する要素の間の間隔は、本質的に同じであってよい。ディスク301の円周上で又はその円周に接して反対側の位置には、それぞれ同じ型の要素が配置されていてよく、つまり、その都度反射及び/又は放射要素108か又はその都度別の反射及び/又は放射要素302が配置されていてよい。ディスク301の円周上で又はその円周に接して反対側の位置には、その都度異なる型の要素が配置されていてよく、つまり、その都度反射及び/又は放射要素108が、別の反射及び/又は放射要素302の反対側に配置されていてよい。
【0086】
図5は、例示的な実施形態によるシミュレーション要素103の側面図を示す。シミュレーション要素103は、ディスク301と多数の反射及び/又は放射要素108とを有する。反射及び/又は放射要素108は、ディスク状又は小板状に形成されている。反射及び/又は放射要素108の主面201,401は、ディスク301の円周方向に向いていて、つまり、その法線ベクトルは、ディスクの円周に対して平行に向いている。反射及び/又は放射要素の二つの主面201,401は、それぞれ相互に反対側にあり、反対方向に向いている。
図4による実施形態とは異なり、主面201と401とは同様に構成されている。特に、これらの主面は、同様の反射挙動を有する。
【0087】
図6は、例示的な実施形態によるダミー装置100を示す。このダミー装置100は、ここでは部分的に模倣さているだけの人物ダミーである。相応して、基体101は、人物基体である。人物基体は、人物をシミュレートする。したがって、人物基体は、その幾何学的大きさにおいて、実際の人物、例えば歩行者にほぼ対応してよいが、実際の歩行者とは異なる材料から製造されていてよく、実際の歩行者よりもはるかに複雑でない構造を有していてよい。
【0088】
人物基体は、シミュレーション領域102を含み、このシミュレーション領域は、人物の可動要素をシミュレート又は再現する。
図6では、シミュレーション領域102は、人物の上腕を模倣する基体101の領域であり、ここでは、その大きさ及び/又は基体101に対するその位置について、上腕に類似する。シミュレーション領域は、その大きさ及びその位置について、シミュレートされるべき対象の模倣される可動部分と一致する必要はない。
【0089】
図6の例示的な実施形態によるシミュレーション要素103は、シミュレーション領域102に配置されていて、かつシミュレーション領域102に対して相対的に可動であり、特にシミュレーション領域102を有する基体101に対しても相対的に可動である。
図6での実施形態によるシミュレーション要素103は、棒状要素106を含み、本質的に棒状要素106の主延在軸107に沿って本質的に線形運動を行うように、特に、棒状要素106が交互に前後に運動する、特に周期的に前後に運動するような線形運動を行うように構成されている。棒状要素の線形運動は、例えばレールに沿った運動により生じてもよい。
【0090】
反射及び/又は放射要素108は、棒状要素106の一端に取り付けられている。反射及び/又は放射要素108は、再帰反射要素104及び/又は凹面領域を含む表面を有していてよく、この表面は、本質的に棒状要素106の主延在軸107に沿う方向に向いている。換言すると、この表面の法線ベクトルは、本質的に主延在軸107に対して平行である。シミュレーション要素、特に反射及び/又は放射要素の運動は、例えば上腕の振子運動、特に肘の振子運動をシミュレートすることができる。
【0091】
例示的な実施形態によると、
図6からのシミュレーション要素103は、ホイール及び/又はリムをシミュレートしてもよい。シミュレーション要素103は、ホイール及び/又はリムを模倣するシミュレーション領域の中央に配置されていてよい。棒状要素106と反射及び/又は放射要素108との線形運動は、ホイール及び/若しくはリム上の点又はホイール及び/若しくはリムに接する点の交互の前後運動を、棒状要素の主延在方向に対して類似する方向に投影してシミュレートしてよい。この目的のために、シミュレーション領域102に対して相対的な棒状要素の線形運動は、特に正弦波速度分布を有していてよい。棒状要素の主延在方向はさらに、ダミー装置が運動する表面、例えば道路に対して本質的に平行であってよい。主延在方向は、基体に沿って又は基体に対して平行に向いていてよく、特にシミュレーション領域に沿って又はシミュレーション領域に対して平行に向いていてよい。
【0092】
図7は、例示的な実施形態によるテストシステム700を示す。このテストシステム700は、基体101とシミュレーション要素103とを有する本発明によるダミー装置100を備える。テストシステム700はさらに、テストユニット710を備える。このテストユニットは、信号波704を基体101及び/又はシミュレーション要素103に送信するように構成されている送信器701を有し、ダミー装置100のシミュレーション要素103及び/又は基体101は、送信された信号704を反射するように構成されている。テストユニット710はさらに、反射された信号705を受信するように構成されている受信器702を有し、テストユニット710は、受信された信号を分析するように構成されている信号処理ユニット703を有する。反射された信号705の周波数分布、特に送信された信号704の周波数分布と、受信された信号の周波数分布との差は、ダミー装置の基体101の運動及び/又はシミュレーション要素103の運動についての情報を有することができる。
【0093】
図8は、例示的な実施形態によるダミー装置100を示す。ダミー装置100は、ここでは、自動車ダミーである。相応して、この基体101は、自動車基体である。この自動車基体は、自動車を模倣する。したがって、自動車基体は、その幾何学的大きさにおいて、実際の自動車に近似的に相応してよいが、実際の自動車とは異なる材料から製造されていてよく、実際の自動車よりもはるかに複雑でない構造を有していてよい。自動車基体は、自動車の可動要素をシミュレートするシミュレーション領域102を有する。自動車のシミュレートされるべき可動要素は、ここでは、ホイール、特にリムであってよい。シミュレーション要素103は、シミュレーション領域102に接して配置されていて、シミュレーション領域102に対して相対的に可動である。シミュレーション要素103は、ディスク状の要素を含んでいてよい。
【0094】
図9は、例示的な実施形態によるダミー装置100を示す。ダミー装置100は、ここでは、自動二輪ダミーである。相応して、この基体101は、自動二輪基体である。この自動二輪基体は、自動二輪の可動要素をシミュレートするシミュレーション領域102を有する。自動二輪のシミュレートされるべき可動要素は、ここでは、ホイール、特にリムであってよい。シミュレーション要素103は、シミュレーション領域102に接して配置されていて、シミュレーション領域102に対して相対的に可動である。シミュレーション要素103は、ディスク状の要素を含んでいてよい。自動二輪の前輪と後輪とはそれぞれ、別々にシミュレートされてよい。
【0095】
図9にはさらに、別のダミー装置100′として運転者ダミーが表されている。基体101′は、運転者基体である。この運転者基体は、運転者の可動要素をシミュレートするシミュレーション領域102′を有する。シミュレートされるべき可動要素は、ここでは、運転者の腕、特に上腕である。シミュレーション要素103′は、シミュレーション領域102′に接して配置されていて、シミュレーション領域102′に対して相対的に可動、例えば振子状に可動である。シミュレーション要素103′は、例えば、棒状要素を有してよく、この棒状要素は、関節によってシミュレーション領域102′と接続されている。両方のダミー装置100と100′とは、いくつかのシミュレーション領域と相応するシミュレーション要素とを備えた個別のダミー装置と解釈することもできる。
【0096】
図10は、例示的な実施形態によるダミー装置100を示す。このダミー装置100は、ここでは、人型ダミーである。このダミーの基体101は、剛性であり、つまり可動部分を有しない。特に、ダミーの腕及び脚は不動である。各四肢には、つまり各脚及び各腕には、シミュレーション要素103が可動に取り付けられている。シミュレーション要素103は、それぞれ四肢の中央に、つまり膝又は肘の領域に固定されている。
図10の左上に詳細図で示すように、シミュレーション要素103は、
図6に示された実施形態に相応するように形成されている。シミュレーション要素103の運動方向は、四肢の延在方向に対して垂直及び/又はダミーの主延在方向に対して垂直であってよい。
【0097】
補足的に、「含む」は、他の要素又はステップを除外せず、「一つ」は複数を除外しないことに留意すべきである。さらに、上述の実施例の一つを参照して記載されている特徴又はステップは、別の上述の実施例の別の特徴又はステップと組み合わせて使用することができることにも留意すべきである。特許請求の範囲内の符号は、制限と見なされるべきではない。
【符号の説明】
【0098】
100 ダミー装置
101 基体
102 シミュレーション領域
103 シミュレーション要素
104 再帰反射要素
105 旋回点
106 棒状要素
107 主延在方向
108 反射及び/又は放射要素
201 シミュレーション要素の表面
202 凹面領域
203 第二の反射及び/又は放射要素
301 ディスク
302 別の反射及び/又は放射要素
401 シミュレーション要素の別の表面
402 凸面領域
700 テストシステム
701 送信器
702 受信器
703 信号処理ユニット
704 送信された信号
705 反射された信号
710 テストユニット
ds ディスクの半径
dr シミュレーション領域の半径